(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022076222
(43)【公開日】2022-05-19
(54)【発明の名称】異常予測装置、送出装置及び異常予測方法
(51)【国際特許分類】
B65H 7/02 20060101AFI20220512BHJP
【FI】
B65H7/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020186542
(22)【出願日】2020-11-09
(71)【出願人】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】株式会社FUJI
(71)【出願人】
【識別番号】000000295
【氏名又は名称】沖電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000017
【氏名又は名称】特許業務法人アイテック国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】内田 剛
(72)【発明者】
【氏名】大池 博史
(72)【発明者】
【氏名】江嵜 弘健
(72)【発明者】
【氏名】天野 雅史
(72)【発明者】
【氏名】杉山 健二
(72)【発明者】
【氏名】松平 正樹
【テーマコード(参考)】
3F048
【Fターム(参考)】
3F048AA05
3F048AB01
3F048BA05
3F048BB10
3F048CA06
3F048CC02
3F048CC12
3F048DA06
3F048DC11
3F048DC12
(57)【要約】
【課題】ギアの異常をより適切に予測する。
【解決手段】本開示の異常予測装置は、駆動部と、駆動部に接続されたギアと、ギアの駆動に応じて送り出される媒体の位置を検出する検出部とを有し、媒体を間欠的に送り出す送出装置に用いられるものである。この異常予測装置は、検出部により経時的に検出された媒体の位置に基づく媒体の送出量に関する検出情報を取得し、取得した検出情報をギアの移動平均に関するトレンド成分と、ギアの周期に基づく周期成分と、トレンド成分及び周期成分を除外して得られるランダム成分と、に分解し、分解して得られた周期成分に基づいてギアの異常度を求め、求めた前記異常度を出力する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動部と、前記駆動部に接続されたギアと、前記ギアの駆動に応じて送り出される媒体の位置を検出する検出部とを有し、前記媒体を間欠的に送り出す送出装置に用いられる異常予測装置であって、
前記検出部により経時的に検出された前記媒体の位置に基づく前記媒体の送出量に関する検出情報を取得し、取得した前記検出情報を前記ギアの移動平均に関するトレンド成分と、前記ギアの周期に基づく周期成分と、前記トレンド成分及び前記周期成分を除外して得られるランダム成分と、に分解し、分解して得られた前記周期成分に基づいて前記ギアの異常度を求め、求めた前記異常度を出力する制御部、
を備えた異常予測装置。
【請求項2】
前記制御部は、所定期間内ごとに前記周期成分の最大値と最小値との差分値を前記異常度として求める、請求項1に記載の異常予測装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記検出部により検出された前記媒体の位置、前記媒体の位置に基づいて求められる前記送出量の実測値、及び前記実測値と前記媒体を間欠的に送り出す1ステップあたりの送出量との誤差、のうち1以上を前記媒体の位置を検出した時刻に対応付けた前記検出情報を取得する、請求項1又は2に記載の異常予測装置。
【請求項4】
前記制御部は、分解して得られた前記トレンド成分の経時変化に基づいて前記ギアの偶発的異常度を求める、請求項1~3のいずれか1項に記載の異常予測装置。
【請求項5】
前記制御部は、所定期間内ごとに前記トレンド成分の最大値と最小値との差分値を前記偶発的異常度として求める、請求項4に記載の異常予測装置。
【請求項6】
駆動部と、
前記駆動部に接続されたギアと、
前記ギアの駆動に応じて送り出される媒体の位置を検出する検出部と、
請求項1~5のいずれか1項に記載の異常予測装置と、
を備えた送出装置。
【請求項7】
駆動部と、前記駆動部に接続されたギアと、前記ギアの駆動に応じて送り出される媒体の位置を検出する検出部とを有し、前記媒体を間欠的に送り出す送出装置に用いられコンピュータにより実行される異常予測方法であって、
(a)前記検出部により経時的に検出された前記媒体の位置に基づく前記媒体の送出量に関する検出情報を取得するステップと、
(b)前記ステップ(a)で取得した前記検出情報を前記ギアの移動平均に関するトレンド成分と、前記ギアの周期に基づく周期成分と、前記トレンド成分及び前記周期成分を除外して得られるランダム成分と、に分解するステップと、
(c)前記ステップ(b)で分解して得られた前記周期成分に基づいて前記ギアの異常度を求めるステップ、
を含む異常予測方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書では、異常予測装置、送出装置及び異常予測方法を開示する。
【背景技術】
【0002】
従来、送出装置としては、部品が配置されたテープを間欠的に送り出すテープフィーダがあった。このテープフィーダに関連する装置としては、例えば、テープフィーダの部品取出部を撮像する撮像ユニットと、その画像データに基づきテープの送り位置を測定し、その測定結果に基づき、テープフィーダの特性をランク付けにより評価する特性検査装置が提案されている(例えば、特許文献1など参照)。この装置では、フィーダの特性(固体差)を検知することによって、フィーダの使用をより合理的に行えるようにする、としている。また、このような送出装置としては、テープ送り機構のロータにブレーキパッドを摺接してトルク負荷を与えながら、各種のフィーダー診断を行うことによって、テープをテープフィーダーに取り付けていないテープ非取付状態でありながらも、テープ取付状態と同じあるいは近似した状況でフィーダー診断が実行されるものが提案されている(例えば、特許文献2など参照)。この装置では、テープフィーダーの診断を良好に、しかも高い信頼性で行うことができる、としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009-123895号公報
【特許文献2】特開2009-302475号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した特許文献1では、単にフィーダの特性(個体差)を検知するのみであり、異常の検出や異常の予測を行うものではなかった。また、特許文献2では、テープを用いずにテープ使用時に近似した診断を行うことができるがテープを用いた実際の使用時に、異常の検出や異常の予測を行うことは困難であった。
【0005】
本開示は、このような課題に鑑みなされたものであり、ギアの異常をより適切に予測することができる異常予測装置、送出装置及び異常予測方法を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示では、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
【0007】
本開示の異常予測装置は、
駆動部と、前記駆動部に接続されたギアと、前記ギアの駆動に応じて送り出される媒体の位置を検出する検出部とを有し、前記媒体を間欠的に送り出す送出装置に用いられる異常予測装置であって、
前記検出部により経時的に検出された前記媒体の位置に基づく前記媒体の送出量に関する検出情報を取得し、取得した前記検出情報を前記ギアの移動平均に関するトレンド成分と、前記ギアの周期に基づく周期成分と、前記トレンド成分及び前記周期成分を除外して得られるランダム成分と、に分解し、分解して得られた前記周期成分に基づいて前記ギアの異常度を求め、求めた前記異常度を出力する制御部、
を備えたものである。
【0008】
この異常予測装置では、経時的に検出された媒体の位置に基づく媒体の送出量に関する検出情報をギアの移動平均に関するトレンド成分と、ギアの周期に基づく周期成分と、トレンド成分及び周期成分を除外して得られるランダム成分と、に分解する。そして、この異常予測装置は、分解して得られた周期成分に基づいてギアの異常度を求め、求めた異常度を出力する。検出情報を分解して得られた周期成分は、例えば、ギアの劣化や摩耗などにより強く影響した成分であるため、ギアの異常をより適切に予測することができる。ここで、「媒体」は、送出装置によって送り出されるものをいい、例えば、印刷装置では紙などの印刷媒体が挙げられ、実装装置では部品を供給するテープ部材などが挙げられる。また、「ギアの異常」には、ギアの劣化や摩耗のほか、破損や回転軸のずれなどが含まれる。
【0009】
本開示の異常予測装置において、前記制御部は、所定期間内ごとに前記周期成分の最大値と最小値との差分値を前記異常度として求めるものとしてもよい。周期成分の値は、ギアの回転周期に依存して変化することから、この異常予測装置では、周期成分の差分値を用いてギアの異常をより適切に予測することができる。
【0010】
本開示の異常予測装置において、前記制御部は、前記検出部により検出された前記媒体の位置、前記媒体の位置に基づいて求められる前記送出量の実測値、及び前記実測値と前記媒体を間欠的に送り出す1ステップあたりの送出量との誤差、のうち1以上を前記媒体の位置を検出した時刻に対応付けた前記検出情報を取得するものとしてもよい。この異常予測装置では、媒体の位置、送出量の実測値、送出量の誤差などを用いて、周期成分を分解することができる。
【0011】
本開示の異常予測装置において、前記制御部は、分解して得られた前記トレンド成分の経時変化に基づいて前記ギアの偶発的異常度を求めるものとしてもよい。この異常予測装置では、周期成分以外の成分をも用いて、ギアに関する異常をより適切に予測することができる。
【0012】
偶発的異常度を求める本開示の異常予測装置において、前記制御部は、所定期間内ごとに前記トレンド成分の最大値と最小値との差分値を前記偶発的異常度として求めるものとしてもよい。トレンド成分の最大値及び最小値は、ギアの偶発的異常に起因することがあることから、この異常予測装置では、トレンド成分の差分値を用いてギアの異常をより適切に予測することができる。
【0013】
本開示の送出装置は、駆動部と、前記駆動部に接続されたギアと、前記ギアの駆動に応じて送り出される媒体の位置を検出する検出部と、上述したいずれかの異常予測装置と、を備えたものである。この送出装置では、上述したいずれかの異常予測装置を備えるため、採用した態様に応じた効果を得ることができる。
【0014】
本開示の異常予測方法は、
駆動部と、前記駆動部に接続されたギアと、前記ギアの駆動に応じて送り出される媒体の位置を検出する検出部とを有し、前記媒体を間欠的に送り出す送出装置に用いられコンピュータにより実行される異常予測方法であって、
(a)前記検出部により経時的に検出された前記媒体の位置に基づく前記媒体の送出量に関する検出情報を取得するステップと、
(b)前記ステップ(a)で取得した前記検出情報を前記ギアの移動平均に関するトレンド成分と、前記ギアの周期に基づく周期成分と、前記トレンド成分及び前記周期成分を除外して得られるランダム成分と、に分解するステップと、
(c)前記ステップ(b)で分解して得られた前記周期成分に基づいて前記ギアの異常度を求めるステップ、
を含むものである。
【0015】
この異常予測方法は、上述した異常予測装置と同様に、例えばギアの劣化や摩耗などにより強く影響した周期成分を用いることによって、ギアの異常をより適切に予測することができる。なお、この異常予測方法において、上述した異常予測装置の種々の態様を採用してもよいし、また、上述した異常予測装置の各機能を実現するようなステップを追加してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図2】記憶部35に記憶された情報の一例を示す説明図。
【
図4】媒体送出処理ルーチンの一例を示すフローチャート。
【
図5】検出したデータ及び各分離成分の一例を示す説明図。
【
図6】劣化異常予測処理ルーチンの一例を示すフローチャート。
【
図8】偶発的異常検出処理ルーチンの一例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本実施形態を図面を参照しながら以下に説明する。
図1は、本開示である処理システム10の一例を示す概略説明図である。
図2は、記憶部35に記憶された情報の一例を示す説明図である。
図3は、媒体12の位置検出の一例を示す説明図である。
【0018】
処理システム10は、例えば、シート状の部材を間欠的に送り出し、所定の処理を行うものである。この処理システム10は、例えば、媒体12としての印刷媒体を送り出しその印刷媒体に印刷処理を行う印刷装置としてもよい。また、処理システム10は、媒体12としてのテープ状の台紙に貼付または収容された部品を送り出し、部品を実装ヘッドへ供給する実装装置としてもよい。この処理システム10は、送出装置20と、異常予測装置30と、管理装置40とを備えている。
【0019】
送出装置20は、媒体12を送り出す処理を行う。送出装置20は、制御部21と、駆動部22と、ギア機構23と、送出部材26と、通信部27と、操作パネル28とを備えている。制御部21は、コントローラであり、例えば、CPUを中心とするマイクロプロセッサとして構成され、装置全体の制御を司る。この処理システム10において、制御部21は、送出装置20の制御と異常予測装置30の制御とを司る、即ち兼用されるものとして説明するが、異常予測装置30が別の制御部を有するなど、別々の制御部で制御されるものとしてもよい。この制御部21は、図示しない時刻管理部を備えており、処理を実行している日時などを把握可能に構成されている。駆動部22は、ギア機構23が接続されたモータである。この駆動部22は、間欠的に媒体12を送り出すよう駆動力を生じるものであるが、例えば、間欠的に動作するステッピングモータとしてもよいし、連続動作するモータを間欠的に駆動制御するものとしてもよい。ギア機構23は、駆動部22の回転駆動力を送出部材26へ伝達するものであり、例えば、第1ギア24と第2ギア25とを有している。第1ギア24は、駆動部22の回転軸に固定されている。第2ギア25は、送出部材26の回転軸に固定されている。第1ギア24は、第2ギア25に噛合している。送出部材26は、媒体12の表面に当接して媒体12を送り出す送出ローラである。通信部27は、管理装置40などの外部機器と情報のやりとりを行うインタフェースである。操作パネル28は、情報を表示する表示部と、作業者による操作入力を行う操作部とを備えている。この操作パネル28は、例えば、タッチパネルとしてもよい。
【0020】
異常予測装置30は、送出装置20の異常を予測、検知する装置である。この異常予測装置30は、制御部21と、記憶部35と、検出部38とを備えている。制御部21は、異常予測装置30の全体の制御を司る。制御部21は、機能ブロックとして情報取得部31と、成分分解部32と、周期成分処理部33と、トレンド成分処理部34とを有している。これらの機能ブロックは、制御部21が後述するルーチンを実行することによって実現される。情報取得部31は、検出部38により経時的に検出された媒体12の位置に基づく送出量に関する検出情報を取得する。成分分解部32は、取得した検出情報をギア機構23に含まれるギアの移動平均に関するトレンド成分と、ギアの周期に基づく周期成分と、トレンド成分及び周期成分を除外して得られるランダム成分と、に分解する。周期成分処理部33は、分解して得られた周期成分に基づいてギア機構23のギアの劣化異常度を求める。周期成分処理部33は、所定期間内ごとに得られる周期成分の最大値と最小値との差分値を劣化異常度として求めるものとしてもよい。トレンド成分処理部34は、分解して得られたトレンド成分の経時的変化に基づいてギアの偶発的異常の発生の有無を判定する。トレンド成分処理部34は、所定期間内ごとにトレンド成分の最大値と最小値との差分値を偶発的異常度として求めるものとしてもよい。
【0021】
記憶部35は、各種アプリケーションプログラムや各種データファイルを記憶する、HDDやフラッシュメモリなどの大容量の記憶媒体である。この記憶部35は、送出装置20の記憶部としても用いられるものとするが、送出装置20が別の記憶部を有するものとしてもよい。この記憶部35には、検出情報36や異常度情報37が記憶されている。
図2に示すように、記憶部35には、例えば、検出情報36や異常度情報37が記憶される。検出情報36は、検出部38により検出された媒体12の位置、媒体12の位置に基づいて求められる送出量の実測値、媒体12を間欠的に送り出す1ステップあたりの送出量と実測値との誤差、のうち1以上を媒体12の位置を検出した時刻に対応付けた情報である。この検出情報36は、送出装置20により送り出された媒体12の経時的な変化を含んでいる。異常度情報37は、検出情報36から求められたギア機構23に含まれるギアの劣化異常度を経時的に記録したものであり、所定期間の時期と劣化異常度とが対応付けられている。
【0022】
検出部38は、媒体12の位置を検出するセンサであり、例えば、接触式のセンサとしてもよいし、非接触式のセンサとしてもよい。非接触式のセンサとしては、例えば、レーザの反射を検知して媒体12の位置を検出するものや、媒体12の画像を撮像して画像処理を行うことで媒体12の位置を検出するものとしてもよい。
図3に示すように、媒体12にマーカを設け、このマーカの位置を認識することによって、媒体12の位置を検出するものとしてもよい。
【0023】
管理装置40は、処理システム10の各装置の使用状況や使用状態などを記憶、管理するサーバとして構成されている。管理装置40は、表示部41と、入力装置42とを備える。表示部41は、画面を表示するディスプレイである。入力装置42は、作業者が入力するキーボードやマウスなどを含む。
【0024】
次に、こうして構成された本実施形態の処理システム10の動作、まず、送出装置20が媒体12を送り出す処理について説明する。
図4は、送出装置20の制御部21により実行させる、媒体送出処理ルーチンの一例を示すフローチャートである。このルーチンは、送出装置20の記憶部35に記憶され、作業者による媒体12の送出処理の実行開始の指令を受けたあと実行される。このルーチンを開始すると、制御部21は、駆動部22を駆動し、媒体12を送り出させる(S100)。駆動部22がステッピングモータの場合、設定された角度、例えば、ステップ数60とすると、360°÷60=6°回転軸とともに第1ギア24が回転し、その回転に応じて送出部材26が回転して媒体12を送り出す。
【0025】
次に、制御部21は、媒体12の位置を検出した位置情報を検出部38から取得し(S110)、媒体12の送出量の実測値を算出し、送出量の誤差を算出する(S120)。検出部38は、媒体12の先端、あるいは媒体12に付されたマーカから、例えば、画像処理によって媒体12の位置を検出し、その位置情報を制御部21へ出力する。制御部21は、今回と前回とに検出された位置の差分から送出量の実測値を求め、予め定められている送出量の設定値とこの実測値との差分から誤差を算出する。次に、制御部21は、位置情報と送出量の実測値と誤差とを検出された日時に対応付けて検出情報36として記憶部35に記憶させる(S130)。制御部21は、このように、媒体12の送り出しに応じて、媒体12の位置に関する情報を経時的に検出情報36として更新する処理を行う。
【0026】
次に、制御部21は、所定期間が経過したか否か判定する(S140)。制御部21は、例えば、毎日起動時、予め設定した時刻、予め設定された時間、予め設定されたステップ数だけ媒体12を送り出したとき、データが予め設定された個数に至ったとき、などのいずれかに基づいてこの判定を行うことができる。この期間経過の判定は、作業者が予め設定することができるものとする。ここでは、制御部21は、予め設定された個数、例えば周期60×設定値10=600個のデータが新たに蓄積されたときに所定期間経過を判定するものとする。制御部21は、所定期間が経過していないときには、送出処理が全て完了したか否かを判定し(S180)、送出処理がすべて完了していないときには、S100以降の処理を実行する。
【0027】
一方、S140で所定期間が経過したときには、その所定期間内の検出情報36を読み出し、トレンド成分と、周期成分と、ランダム成分とに分解する処理を行う(S150)。分解処理において、トレンド成分は、第1ギア24や第2ギア25のギア数のデータの移動平均に基づく成分である。周期成分は、第1ギア24や第2ギア25のギア数を周期とする各周期要素の平均に基づく成分である。制御部21は、第1ギア24の周期成分と、第2ギア25の周期成分と、など、ギア機構23の各ギアに対して周期成分を分離するものとしてもよい。ランダム成分は、検出情報36での位置データ(元データ)からトレンド成分と周期成分とを除いた成分である。この成分分解は、例えば、統計関数Rのdecompose関数で実装されており、「R基本統計関数マニュアル」に記載された「時系列の成分への分解」に規定された内容を用いるものとしてもよい。
【0028】
図5は、検出したデータ及び各分離成分の一例を示す説明図であり、上段から順に1段目が位置データ、2段目がトレンド成分、3段目が周期成分、4段目がランダム成分である。
図5では、3000個の位置データを周期10で成分分解した例を示す。周期成分は、ギアの周期に対応する変動を示す。もし、ギアが理想的な挙動を示す場合は、トレンド成分、周期成分及びランダム成分は、平坦な線を示す。ギアに摩耗などの劣化が生じると、それに応じた変動が各成分のいずれかに反映される。
【0029】
S150で成分分解を実行すると、制御部21は、周期成分に基づく劣化異常予測処理を実行し(S160)、トレンド成分に基づき偶発的異常検出処理を実行する(S170)。そして、制御部21は、全ての送出処理を完了したか否かを判定し(S180)、全ての送出処理を完了していないときには、S100以降の処理を実行し、全ての送出処理を完了したときには、このルーチンを終了する。
【0030】
ここで、S160の劣化異常予測処理について説明する。
図6は、制御部21が実行する劣化異常予測処理ルーチンの一例を示すフローチャートである。このルーチンは、送出装置20の記憶部35に記憶され、媒体送出処理ルーチンのS160で実行される。このルーチンを開始すると、制御部21は、所定期間内の周期成分を検出情報36から取得し(S200)、周期成分の変動幅を算出する(S210)。制御部21は、例えば、所定期間内ごとに得られる周期成分の最大値と最小値との差分値を劣化異常度とする。そして、制御部21は、得られた変動幅(差分値)をその所定期間の劣化異常度として異常度情報37に記憶し、この異常度情報37を出力する(S220)。制御部21は、例えば処理システム10が有する操作パネル28の表示部に劣化異常度を表示出力してもよいし、異常度情報37を管理装置40へ出力し表示部41に劣化異常度を表示出力してもよい。
【0031】
図7は、管理装置40の表示部41に表示出力される異常度表示画面50の一例を示す説明図である。この異常度表示画面50は、異常度情報37に記録された劣化異常度の経時変化を示すものであり、横軸が所定期間の時期、縦軸が劣化異常度である。作業者は、異常度表示画面50を確認し、この劣化異常度が所定の閾値を超えると、または、この劣化異常度が前回の値よりも大きく増加すると、ギア機構23のメンテナンスなどを行う必要があると判断することができる。
【0032】
S220のあと、制御部21は、得られた劣化異常度が所定の許容範囲内であるか否かを判定し(S230)、劣化異常度が所定の許容範囲内であるときには、そのままこのルーチンを終了する。一方、劣化異常度が所定の許容範囲内でないときには、制御部21は、劣化異常が発生したものと判定して、その旨の情報を出力し(S240)、このルーチンを終了する。制御部21は、周期成分の異常度が所定の許容閾値を超えたときに、ギアの劣化異常が発生したものと判定してもよい。あるいは、制御部21は、周期成分の異常度が、前回得られた異常度に比して所定の許容閾値を超えて増加している場合に、ギアの劣化異常が発生したものと判定してもよい。この許容範囲や許容閾値は、例えば、ギア機構23の異常動作によって媒体12の送出処理に大きな影響を与えるような範囲に経験的に定められているものとしてもよい。また、制御部21は、操作パネル28に、ギア機構23の劣化異常の発生を表示出力してもよいし、管理装置40の表示部41に、ギア機構23の劣化異常の発生を表示出力してもよい。この情報を確認した作業者は、該当するギア機構23の使用を中断し、ギアの交換などを行う。
【0033】
次に、S170の偶発的異常検出処理について説明する。
図8は、制御部21が実行する偶発的異常検出処理ルーチンの一例を示すフローチャートである。このルーチンは、送出装置20の記憶部35に記憶され、媒体送出処理ルーチンのS170で実行される。このルーチンを開始すると、制御部21は、所定期間内のトレンド成分を検出情報36から取得し(S300)、トレンド成分の変動幅を算出する(S310)。制御部21は、例えば、所定期間内ごとに得られるトレンド成分の最大値と最小値との差分値を偶発的異常度とする。そして、制御部21は、得られた偶発的異常度が所定の許容範囲内であるか否かを判定する(S320)。なお、制御部21は、トレンド成分の偶発的異常度が、所定の許容閾値を超えるか否かを判定することにより、偶発的異常度が所定の許容範囲を超えるか否かを判定するものとしてもよい。あるいは、制御部21は、トレンド成分の偶発的異常度が、前回得られた異常度に比して所定の許容閾値を超えて増加しているか否かを判定することにより、偶発的異常度が所定の許容範囲を超えるか否かを判定するものとしてもよい。この許容範囲や許容閾値は、例えば、媒体12の送出処理において、所定の処理(例えば印刷処理)に大きな影響を与えるような範囲に経験的に定められているものとしてもよい。制御部21は、偶発的異常度が許容範囲内であるときには、このルーチンを終了する。一方、偶発的異常度が許容範囲内でないときには、制御部21は、偶発的異常が発生しているものとしてその旨の情報を出力し(S330)、このルーチンを終了する。制御部21は、例えば、偶発的異常が発生した旨を操作パネル28の表示部に表示出力してもよいし、管理装置40へ出力してもよい。これを確認した作業者は、例えば、送出装置20のメンテナンスなどを行う。
【0034】
ここで、本実施形態の構成要素と本開示の構成要素との対応関係を明らかにする。本実施形態の駆動部22が本開示の駆動部に相当し、ギア機構23の第1ギア24や第2ギア25がギアに相当し、検出部38が検出部に相当し、制御部21が制御部に相当し、送出装置20が送出装置に相当し、異常予測装置30が異常予測装置に相当する。なお、本実施形態では、異常予測装置30の動作を説明することにより本開示の異常予測方法の一例も明らかにしている。
【0035】
以上説明した本実施形態の異常予測装置30では、経時的に検出された媒体12の位置に基づく媒体の送出量に関する検出情報36をギア機構23のギアの移動平均に関するトレンド成分と、ギアの周期に基づく周期成分と、トレンド成分及び周期成分を除外して得られるランダム成分と、に分解する。そして、この異常予測装置30は、分解して得られた周期成分に基づいてギアの劣化異常度を求め、求めた劣化異常度を管理装置40へ出力する。検出情報36を分解して得られた周期成分は、例えば、ギアの劣化や摩耗などにより強く影響した成分であるため、ギアの異常をより適切に予測することができる。
【0036】
また、制御部21は、所定期間内ごとに周期成分の最大値と最小値との差分値を劣化異常度として求める。周期成分の値は、ギアの回転周期に依存して変化することから、この異常予測装置30では、周期成分の差分値を用いてギアの異常をより適切に予測することができる。更に、制御部21は、検出部38により検出された媒体12の位置、媒体12の位置に基づいて求められる送出量の実測値、及び媒体12を間欠的に送り出す1ステップあたりの送出量と実測値との誤差を媒体12の位置を検出した時刻に対応付けて検出情報36として記憶する。この異常予測装置30では、媒体12の位置、送出量の実測値、送出量の誤差などを用いて、周期成分を分解することができる。更にまた、制御部21は、分解して得られたトレンド成分の経時変化に基づいてギアの偶発的異常度を求めるものとしてもよい。この異常予測装置30では、周期成分以外の成分をも用いて、ギアに関する異常をより適切に予測することができる。また、制御部21は、所定期間内ごとにトレンド成分の最大値と最小値との差分値を偶発的異常度として求める。トレンド成分の最大値及び最小値は、ギアの偶発的異常に起因することがあることから、この異常予測装置30では、トレンド成分の差分値を用いてギアの異常をより適切に予測することができる。
【0037】
なお、本開示は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本開示の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
【0038】
例えば、上述した実施形態では、所定期間内ごとに周期成分の最大値と最小値との差分値を劣化異常度として求めるものとしたが、周期成分を利用するものとすれば、特にこれに限定されない。例えば、所定期間内の1ステップごとの周期成分の振幅値を求め、これを平均したものを劣化異常度とするものとしてもよい。この異常予測装置においても、周期成分を用いて、ギアの異常をより適切に予測することができる。
【0039】
上述した実施形態では、検出情報36には、媒体12の位置、送出量の実測値、送出量の誤差を含むものとしたが、特にこれに限定されず、これらのうち1以上を含むものとすればよい。これらのうちいずれかがあれば、制御部21は、劣化異常度を求めることができる。
【0040】
上述した実施形態では、劣化異常度が所定の許容範囲を超えたときに、劣化異常を判定して表示出力するものとしたが、特にこれに限定されず、劣化異常の判定処理を省略してもよい。作業者は、例えば、異常度表示画面50や異常度情報37の内容を確認することによって、劣化異常の状況を判断することもできる。また、上述した実施形態では、偶発的異常度が所定の許容範囲を超えたときに、偶発的異常を判定して表示出力するものとしたが、特にこれに限定されず、偶発的異常の判定処理を省略してもよい。例えば、制御部21は、偶発的異常度のデータなどを記憶部35に記憶するものとすれば、作業者は、その内容を確認することによって、偶発的異常の状況を判断することもできる。
【0041】
上述した実施形態では、所定期間内ごとにトレンド成分の最大値と最小値との差分値を偶発的異常度として求めるものとしたが、トレンド成分を用いるものとすれば、特にこれに限定されない。例えば、トレンド成分の振幅を求め、この平均を偶発的異常度としてもよい。この異常予測装置30においても、トレンド成分を用いて送出装置20の異常を検知することができる。あるいは、上述した実施形態では、制御部21は、トレンド成分に基づいてギアの偶発的異常度を求めるものとしたが、特にこれに限定されず、この処理を省略してもよい。この異常予測装置30においても、周期成分を用いて劣化異常度を求めるため、ギアの異常をより適切に予測することができる。
【0042】
上述した実施形態では、ギア機構23は、第1ギア24と第2ギア25とを有するものとしたが、特にこれに限定されず、これら以外の1以上のギアを更に含むものとしてもよい。制御部21は、各ギアに対して周期成分を分離するものとしてもよい。
【0043】
上述した実施形態では、本開示の異常予測装置の機能を送出装置20が備えるものとして説明したが、特にこれに限定されず、本開示の異常予測装置の機能を管理装置40などの外部装置が有するものとしてもよい。
【0044】
上述した実施形態では、本開示を異常予測装置30として説明したが、特にこれに限定されず、異常予測方法としてもよいし、この異常予測方法をコンピュータが実行するプログラムとしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本開示の異常予測装置、送出装置及び異常予測方法は、ギアにより部材を送出する機械の異常を検知及び予測する方法に関する実装分野に利用可能である。
【符号の説明】
【0046】
10 処理システム、12 媒体、20 送出装置、21 制御部、22 駆動部、23 ギア機構、24 第1ギア、25 第2ギア、26 送出部材、27 通信部、28 操作パネル、30 異常予測装置、31 情報取得部、32 成分分解部、33 周期成分処理部、34 トレンド成分処理部、35 記憶部、36 検出情報、37 異常度情報、38 検出部、40 管理装置、41 表示部、42 入力装置、50 異常度表示画面。