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  • 特開-感知器ベース及び殺菌システム 図1
  • 特開-感知器ベース及び殺菌システム 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022076226
(43)【公開日】2022-05-19
(54)【発明の名称】感知器ベース及び殺菌システム
(51)【国際特許分類】
   G08B 17/00 20060101AFI20220512BHJP
   A61L 2/10 20060101ALI20220512BHJP
【FI】
G08B17/00 G
A61L2/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020186548
(22)【出願日】2020-11-09
(71)【出願人】
【識別番号】000233826
【氏名又は名称】能美防災株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100188547
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴野 幹夫
(72)【発明者】
【氏名】内田 真道
【テーマコード(参考)】
4C058
5G405
【Fターム(参考)】
4C058AA24
4C058AA30
4C058BB06
4C058DD01
4C058DD12
4C058DD13
4C058DD16
4C058KK02
4C058KK22
5G405AA01
5G405AD02
5G405AD07
5G405CA21
5G405FA07
(57)【要約】
【課題】
紫外線を用いて、空気中に浮遊するウィルスや細菌を殺菌すること。
【解決手段】
外周部を有し、外周部の内側に火災感知器を取り付けることができる感知器ベースであって、殺菌及びウィルスを不活性化する効果を有する紫外線を発する紫外線発光部を備え、外周部は、紫外線発光部を備えたことを特徴とする感知器ベースにより室内の殺菌を行う。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
設置された空間の火災を感知する火災感知器を、設置面に取り付けることができる感知器ベースであって、
前記感知器ベースは、殺菌及びウィルスを不活性化する効果を有する紫外線を発する紫外線発光部を備えたことを特徴とする感知器ベース。
【請求項2】
請求項1に記載された前記感知器ベースの前記紫外線発光部を、前記空間が無人であるときに駆動させる照射制御部を備えることを特徴とする殺菌システム。
【請求項3】
請求項2に記載された殺菌システムであって、
前記火災感知器が火災情報を感知すると、
前記照射制御部は、前記紫外線発光部を駆動しないようにすることを特徴とする殺菌システム。
【請求項4】
請求項2または3に記載された殺菌システムであって、
前記空間の外であって前記空間の近傍に設置され、前記火災感知器が火災情報を感知すると点灯する室外表示灯を備え、
前記紫外線発光部が駆動している期間は前記室外表示灯も駆動することを特徴とする殺菌システム。
【請求項5】
請求項2乃至4のいずれか一項に記載された殺菌システムであって、
前記感知器ベースは前記火災感知器と共に客室に設置され、
前記客室のルームキーが所定の場所から取られた場合に、前記照射制御部が前記紫外線発光部を駆動させることを特徴とする殺菌システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の天井等に取り付ける火災感知器の感知器ベースに関し、建物内の空気を殺菌する機能を有するものである。
【背景技術】
【0002】
煙感知器等の火災感知器は、天井等に直接取り付けるものと、天井等に設置した感知器ベースに取り付けるものがある。特許文献1,2には、天井等に設置する感知器ベースが記載されている。感知器ベースには、受信機等からの配線を繋ぐ端子と、火災感知器を電気的に接続し、機械的に保持する端子金具を備えている。そして、天井等に設置した感知器ベースに火災感知器を取り付けることにより、火災感知器を設置する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-154912号公報
【特許文献2】特開2018-67026号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
昨今、ウィルス等による感染症が問題となっている。ウィルスや細菌を含む飛沫や、飛沫の水分が蒸発した飛沫核により感染する感染症は、接触感染よりも感染しやすい。ウィルス等を含んだ飛沫は落下しやすいが、飛沫から水分が蒸発した飛沫核は小さく軽いために長時間にわたり空気中を浮遊して、空気感染の原因となる。空気中を飛沫核の形態で浮遊するウィルスや細菌を不活性化や殺菌するためには、紫外線LEDを用いた紫外線照射が有効である。
【0005】
本発明は、紫外線を用いて、室内の菌を殺菌し、ウィルスを不活性化することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、外周部を有し、前記外周部の内側に火災感知器を取り付けることができる感知器ベースであって、殺菌及びウィルスを不活性化する効果を有する紫外線を発する紫外線発光部を備え、前記外周部は、前記紫外線発光部を備えたことを特徴とする感知器ベース及び、感知器ベースを備えた殺菌システムである。
【発明の効果】
【0007】
煙感知器等の火災感知器は、消防法等の設置基準等により、壁の近くに設置されないことが一般的である。また、複数の火災感知器を設置する場合には、火災を早期に発見するために室内に略均等に配置される。本発明は、火災感知器の設置位置が、殺菌を行う紫外線LEDの設置位置として適していることを見いだし、火災感知器自体ではなく、火災感知器を取り付ける感知器ベースに紫外線LEDを設けることにより、通常の火災感知器を用いることができるようにしたものである。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態における感知器ベース1。
図2】実施形態におけるホテルの客室5での感知器ベース1等の設置場所を示す図。
図3】実施形態における殺菌システムの結線図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下の実施形態において、ウィルスの不活性化についても殺菌と記載する。実施形態では、火災を感知する火災感知器として煙感知器2を示す。
【0010】
はじめに、本願でいう上下、側方は、煙感知器2等を水平な天井に設置した状態を基準として示すものである。図1は、実施形態における感知器ベース1を示す。図1(a)は、天井板3に取り付けた感知器ベース1の側面図、図1(b)は、感知器ベース1を斜め下方から見た斜視図である。感知器ベース1は煙感知器2と共に客室5に設置され、煙感知器2が設置された空間の火災を感知する。感知器ベース1は外周部として円環状の鍔部11を有し、図1(a)に示すように鍔部11と係止板12との間に天井板3を挟んで設置面の天井に設置される。感知器ベース1を設置する際には、係止板12を係止ネジ13により天井板3の方向へ締め付けて固定する。感知器ベース1の上部には、複数の端子14が設けられており、そのうち2つは後述するS1、S2端子であって感知器線71により受信機4と電気的に接続する。また、本実施形態においては、殺菌する効果を有する紫外線を発する紫外線発光部である紫外線LED15を感知器ベース1に設けている。感知器ベース1には、鍔部11に4つの紫外線LED15を設けている。複数の端子14のうち2つは後述するX1、X2端子である。図1(b)に示すように、感知器ベース1の内側は凹部16となっており、その中に端子金具17が設けられている。感知器ベース1を天井板3に設置した後に、凹部16の中に煙感知器2を押し上げながら回転することによって端子金具17に係止し、煙感知器2を感知器ベース1に取り付ける。これにより、煙感知器2の固定と電気的接続が同時に行われる。
【0011】
図2は、実施形態におけるホテルの客室5での感知器ベース1等の設置場所を示す。煙感知器2の設置位置は感知器ベース1の設置位置と同じであるが、ベッド等が備えられた居室スペースの中心近傍の天井に設置される。そして、感知器ベース1に設けた紫外線LED15からの紫外線により、有効照射範囲51内を殺菌する。ルームドア52に近いスペースには、ルームキーを差し込み可能な所定の場所であるカードホルダに設けられた、カードスイッチ53が設置されている。また、通路6では、客室5の外側のルームドア52に近い位置に室外表示灯61が設置されている。
【0012】
宿泊者が外出の際にカードスイッチ53のカードホルダからルームキーを抜き取ると、所定時間後、2時間に亘って紫外線LED15が駆動されて点滅発光し、紫外線の照射によって殺菌が行われる。図2における円弧の内側で示す有効照射範囲51では、2時間の殺菌で細菌やウィルスを除去することができる。2時間以内に宿泊者が客室5に戻ってルームキーをカードスイッチ53に差し込むと、室内の照明が点灯するとともに紫外線LED15は駆動しない状態となり、紫外線照射は中止となる。カードスイッチ53の近傍は有効照射範囲51に含まれていないため、ルームキーを差し込む際に宿泊者が殺菌強度の紫外線に曝露されることはない。
【0013】
室外表示灯61は、煙感知器2が煙を感知した際に点灯する。室外表示灯61により、通路6の側から煙が感知された客室5を容易に判別することができる。紫外線の照射中には、室外表示灯61が点滅するため、紫外線を照射している状況を室外から判別することができる。
【0014】
図3は、実施形態における殺菌システムの結線図である。受信機4からは、感知器線71が導出され、複数の煙感知器2に繋がっている。図3では代表して一つの煙感知器2を記載しているが、煙感知器2、室外表示灯61、カードスイッチ53は、各客室5に設けられている。また、各客室5で煙感知器2が取り付けられている感知器ベース1には、紫外線LED15と紫外線照射スイッチ181が設けられている。受信機4のDC24V電圧は、各客室5に配線され、+配線72は室外表示灯61を介して感知器ベース1のX1端子に接続し、-配線73は感知器ベース1のX2端子に接続している。X1端子、X2端子は、感知器ベース1に取り付けられた煙感知器2の感知スイッチ21に接続している。煙感知器2が煙を感知すると、感知データを、感知器線71を介して受信機4に送信するとともに、感知スイッチ21がONになり、室外表示灯61が導通する。従って、客室5内の煙感知器2で煙を感知すると、通路6に設けた室外表示灯61が点灯して、煙を感知した客室5を通路6から容易に識別することができる。感知器線71、+配線72、-配線73は、他の客室5の感知器ベース1にも接続している。
【0015】
本実施形態では、さらに感知器ベース1が紫外線LED15等の構成を備えている。感知器ベース1では内部でX1端子が紫外線LED15に接続し、さらに照射制御部18の紫外線照射スイッチ181を介してX2端子に接続している。照射制御部18では、カードスイッチ53からの信号を受けて紫外線照射スイッチ181を制御する。
【0016】
<動作>
次に、紫外線LED15の発光動作について説明する。客室5のカードスイッチ53であるカードホルダからカードを抜くと、客室スイッチ(図示せず)が切れて室内灯等が消える。また、客室スイッチが切れた情報はカードスイッチ53を介して感知器ベース1内の照射制御部18に伝わり、客室スイッチが切れてから3分後になると、照射制御部18は紫外線LED15を駆動する。具体的には、紫外線照射スイッチ181を間欠的に接続して、紫外線LED15を間欠的に発光させ、点滅発光により部屋内を殺菌する。紫外線LED15と室外表示灯61と照射制御部18は、直列に接続されているため、紫外線LED15が駆動している期間は室外表示灯61も駆動する。紫外線LED15が点滅発光している駆動期間では、室外表示灯61も間欠的に発光するため、客室5内で紫外線による殺菌が行われていることが通路6から認識できる。間欠的な接続動作が開始してから2時間経つと照射制御部18は駆動を止め、紫外線LED15は発光を終え、紫外線による殺菌は終了する。また、紫外線LED15の駆動中にカードスイッチ53にカードが差し込まれても照射制御部18は駆動を止め、紫外線の照射は終了する。つまり、客室5の空間が無人であるときに紫外線LED15の駆動が行われる。
【0017】
紫外線LED15の駆動中に煙感知器2が火災情報である煙を感知した場合は、感知スイッチ21が導通して室外表示灯61が点灯状態となる。この時、X1端子とX2端子の間の電位差が無くなるため、紫外線LED15は駆動されず発光しない。したがって、客室5内の点検のために従業員等が入室しても紫外線が照射されることはない。なお、本実施形態では、煙感知器2が煙を感知してから蓄積等により受信機4が火災と判断して火災発報するため、火災発報の前に紫外線LED15の駆動は停止する。
【0018】
紫外線発光素子は4つだけでなく、いくつ設けてもよいが、外周部(鍔部11)に均等に配置することにより、感知器ベース1の位置から紫外線を均等に放射することができる。外周部である鍔部11が、周辺部よりも中心部の方が下方に位置している感知器ベースでは、複数設けた紫外線発光素子を、鍔部11の面に取り付けることにより若干外側を向いて取り付けることが容易である。このような取り付け方によって、複数の紫外線発光素子が若干外側を向くことになり、感知器ベース1の下部だけでなく、周辺にも均等に紫外線を照射しやすくなる。感知器ベース1の取り付け位置が偏っている場合には、紫外線発光素子を感知器ベース1の外周部に均等に配置せず、居室スペース等の中心方向を照射する紫外線発光素子を多くしたり、中心方向を向けて紫外線発光素子を設置したりしてもよい。特に強力に殺菌したいスペースがある場合にも、そのスペースがよく照射されるように紫外線発光素子の設置位置や設置方向等を設定してもよい。
【0019】
実施形態では、火災感知器は煙感知器であるが、感知器ベースに取り付ける火災感知器であれば、炎感知器等、他の火災感知器でもよい。
また、実施形態では、紫外線による人体の影響を考慮し、客室スイッチが切れてから3分後に紫外線LED15の駆動が開始し、紫外線照射を開始するものとしたが、安全な範囲でこれよりも短い時間として設定してもよいし、所定時間は任意で設定を変更することができる。さらに、紫外線LED15は2時間に亘って駆動するものとしたが、紫外線LED15の発光強度や天井高を考慮した最適な照射時間を任意で設定することができる。
また、実施形態では、照射制御部18は感知器ベース1内に設けたものとしたが、感知器ベース1外で別途設けるものとしてもよい。その場合、感知器ベース1は通常のものとすることができる。
【符号の説明】
【0020】
1 感知器ベース、11 鍔部、12 係止板、13 係止ネジ、14 端子、15 紫外線LED、16 凹部、17 端子金具、18 照射制御部、181 紫外線照射スイッチ、2 煙感知器、21 感知スイッチ、3 天井板、4 受信機、5 客室、51 有効照射範囲、52 ルームドア、53 カードスイッチ、6 通路、61 室外表示灯、71 感知器線、72 +配線、73 -配線
図1
図2
図3