(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022076255
(43)【公開日】2022-05-19
(54)【発明の名称】業務用衣類処理装置
(51)【国際特許分類】
D06F 73/00 20060101AFI20220512BHJP
D06F 87/00 20060101ALI20220512BHJP
D06F 73/02 20060101ALI20220512BHJP
【FI】
D06F73/00 102Z
D06F87/00
D06F73/02
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020186586
(22)【出願日】2020-11-09
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-04-26
(71)【出願人】
【識別番号】509001674
【氏名又は名称】ワイズプラント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100177312
【弁理士】
【氏名又は名称】辰己 雄一
(72)【発明者】
【氏名】坂口 将清
(57)【要約】 (修正有)
【課題】クリーニング事業者による仕上がり品質のシワ伸ばしや消臭といった衣類の処理を行うことができる業務用衣類処理装置を提供する。
【解決手段】コインランドリーのスペースに設置される業務用衣類処理装置1は、内部に処理対象の衣類を配置可能な衣類処理筐体3と、衣類処理筐体3の内部において、業務用衣類処理装置1外部のボイラーからのスチームを処理対象の衣類に向けて噴霧するとともに、スチームの噴霧とは別に、外部のボイラーからのスチームを用いて衣類処理筐体3の内部を暖めるスチーム噴霧機構4と、衣類処理筐体3の内部において、クリーニング事業者が自己の業務に用いる業務用の消臭剤を処理対象の衣類に向けて噴射する消臭剤噴射機構5と、スチーム噴霧機構4と、消臭剤噴射機構5とに電気的に接続され、処理対象の衣類に対してシワ伸ばし及び消臭を含む処理を行うよう、それぞれの機構を制御する制御装置2と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コインランドリーのスペースに設置される業務用衣類処理装置であって、
内部に処理対象の衣類を配置可能な衣類処理筐体と、
前記衣類処理筐体の内部において、前記業務用衣類装置外部のボイラーからのスチームを前記処理対象の衣類に向けて噴霧するとともに、前記スチームの噴霧とは別に、前記外部のボイラーからのスチームを用いて前記衣類処理筐体の内部を暖めるスチーム噴霧機構と、
前記衣類処理筐体の内部において、クリーニング事業者が自己の業務に用いる業務用の消臭剤を前記処理対象の衣類に向けて噴射する消臭剤噴射機構と、
前記スチーム噴霧機構と、前記消臭剤噴射機構とに電気的に接続され、前記処理対象の衣類に対してシワ伸ばし及び消臭を含む処理を行うよう、前記スチーム噴霧機構と前記消臭剤噴射機構とをそれぞれ制御する制御装置と、
を備えることを特徴とする業務用衣類処理装置。
【請求項2】
前記スチーム噴霧機構は、前記制御装置の制御の下、前記衣類処理筐体の内部において前記処理対象の衣類の下側のみからスチームを噴霧する、ことを特徴とする請求項1に記載の業務用衣類処理装置。
【請求項3】
前記消臭剤噴射機構は、前記制御装置の制御の下、前記衣類処理筐体の内部において前記処理対象の衣類の上側及び下側の両方から消臭剤を噴射する、ことを特徴とする請求項1または2に記載の業務用衣類処理装置。
【請求項4】
前記スチーム噴霧機構は、前記衣類処理筐体の底面に設けられ、複数の噴霧孔からスチームを噴霧するスチームチャンバと、
前記衣類処理筐体の内部に設けられるスチームヒータと、
前記スチームチャンバと前記スチームヒータとのそれぞれの内部を連通する配管と、
を備え、
前記配管を介してスチームを前記スチームチャンバ及び前記スチームヒータのそれぞれの内部に供給することで、前記スチームチャンバ及び前記スチームヒータの内部をそれぞれ暖める、ことを特徴とする請求項1に記載の業務用衣類処理装置。
【請求項5】
さらに、前記制御装置に電気的に接続される送風機を備え、
前記送風機を駆動して前記送風機からの風を、内部にスチームが供給されて暖められたスチームヒータに当てることで、前記衣類処理筐体の内部で温風を循環させる、ことを特徴とする請求項4に記載の業務用衣類処理装置。
【請求項6】
前記衣類処理筐体は、開閉することで前記衣類処理筐体の内部を開閉する扉を備え、
前記制御装置と電気的に接続され、前記衣類処理筐体の内部の温度を検出する温度検出部と、
前記制御装置と電気的に接続され、前記制御装置の制御の下、前記扉をロックするとともに、前記扉が正常に閉じられたか否かを示す信号を前記制御装置に供給する扉ロック部と、
前記制御装置と電気的に接続され、前記衣類処理筐体の内部において底面に向かって落下した衣類の有無を示す信号を前記制御装置に供給する落下物検出部と、
をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の業務用衣類処理装置。
【請求項7】
前記制御装置の制御の下、スチームの噴霧と、噴霧したスチームによる前記処理対象の衣類の蒸らしと、温風の循環と、消臭剤の噴霧と、温風の循環と、前記スチームヒータの内部へスチームの供給を停止した状態で前記送風機を駆動することによる冷却と、を行うことを特徴とする請求項5に記載の業務用衣類処理装置。
【請求項8】
前記消臭剤噴射機構は、複数の消臭剤噴射ノズルを介して前記処理対象の衣類の上側及び下側から消臭剤を噴射する、ことを特徴とする請求項3に記載の業務用衣類処理装置。
【請求項9】
前記衣類処理筐体の内部のうち、前記処理対象の衣類が配置される衣類処理スペースと、前記スチームヒータが配置される配置用スペースとを仕切る仕切り板をさらに備え、
前記仕切り板の上端側及び下端側を介して、前記衣類処理スペースと前記配置用スペースとが連通する、ことを特徴とする請求項4に記載の業務用衣類処理装置。
【請求項10】
前記仕切り板は、前記衣類処理スペース内において、折り畳み可能なメッシュ状の棚を備える、ことを特徴とする請求項9に記載の業務用衣類処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衣類等のクリーニング事業者に用いられる業務用衣類処理装置に関し、より具体的には、コインランドリー等のスペースに設置され、処理対象の衣類にシワ伸ばし及び消臭等の処理を行う業務用衣類処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
密閉可能な筐体内に衣類を収納し、当該筐体内でスチーム(蒸気)を発生させ、当該スチームを衣類に向けて噴霧することで、衣類のシワ伸ばし等を図る衣類処理装置が知られている(例えば、特許文献1乃至6参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-067935号公報
【特許文献2】特開2015-167865号公報
【特許文献3】特許第5684772号明細書
【特許文献4】特許第5658215号明細書
【特許文献5】特許第5486063号明細書
【特許文献6】特開2009-247898号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のような従来の衣類処理装置には、以下のような点において技術的に改善の余地がある。
まず、従来の衣類処理装置は、一般家庭で用いられる装置であり、クリーニング事業者の視点からは、家庭用電源による電力では十分な量のスチームを発生させることができず、従って十分なシワ伸ばし等の効果が得られない。仮に、業務用電源を利用するように上記の衣類処理装置の構成を単に変更しただけでは、スチームを循環させる機構等を含む装置全体への更なる工夫を行わない限り、クリーニング事業者の視点から十分なシワ伸ばし等の効果を得ることが困難である。
また、上記の衣類処理装置では、スチームの噴霧パターンが画一的であり、筐体内に収容された衣類に満遍なくスチームを行き渡らせることが困難である。そのため、衣類は部分的にシワ伸ばし等が行われない箇所が発生し、ひいては、衣類全体に渡ってシワ伸ばし等を行う、といったユーザがクリーニング事業者に望む処理を達成することが困難である。
さらには、可能な限り人が介在することなく、シワ伸ばしや消臭といった衣類の処理をオートメーション化できれば、クリーニング事業者にとってはマンパワーや人件費を減らすことができ、好適である。
【0005】
本発明は上記実情を鑑みてなされたものであり、その目的は、クリーニング事業者による仕上がり品質のシワ伸ばしや消臭といった衣類の処理を行うことができる業務用衣類処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するため、本発明の業務用衣類処理装置は、コインランドリーのスペースに設置される業務用衣類処理装置であって、内部に処理対象の衣類を配置可能な衣類処理筐体と、衣類処理筐体の内部において、業務用衣類装置外部のボイラーからのスチームを処理対象の衣類に向けて噴霧するとともに、スチームの噴霧とは別に、外部のボイラーからのスチームを用いて衣類処理筐体の内部を暖めるスチーム噴霧機構と、衣類処理筐体の内部において、クリーニング事業者が自己の業務に用いる業務用の消臭剤を処理対象の衣類に向けて噴射する消臭剤噴射機構と、スチーム噴霧機構と、消臭剤噴射機構とに電気的に接続され、処理対象の衣類に対してシワ伸ばし及び消臭を含む処理を行うよう、スチーム噴霧機構と消臭剤噴射機構とをそれぞれ制御する制御装置と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、クリーニング事業者による仕上がり品質のシワ伸ばしや消臭といった衣類の処理を行うことができる業務用衣類処理装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1(a)は、業務用衣類処理装置の全体構成を示す図であり、
図1(b)は、
図1(a)に示す衣類処理筐体の側面図であって、その内部を示す部分透視図である。
【
図3】制御ボックスの機能的な構成を示すブロック図である。
【
図4】衣類処理筐体の衣類処理スペースを主に示す正面図である。
【
図5】
図5(a)は、衣類処理筐体の内部を上から見た図であり、
図5(b)は、衣類処理筐体の側面図であり、
図5(c)は、衣類処理筐体の背面図である。
【
図6】
図6(a)は、衣類処理筐体の内部を上から見た図であり、
図6(b)は、衣類処理筐体の側面図であり、
図6(c)は、衣類処理筐体の背面図である。
【
図7】
図7(a)は、消臭剤噴射機構を上から見た図であり、
図7(b)は、消臭剤噴射機構を横から見た図である。
【
図8】
図8(a)は、落下物検出部を正面から見た図であり、
図8(b)は、落下物検出部を横からみた図である。
【
図9】衣類処理装置の動作を示すフローチャートである。
【
図10】衣類処理装置の動作を示すフローチャートである。
【
図12】折りたたみ式の棚についての変形例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態に係る業務用衣類処理装置について、図面を参照して詳細に説明する。なお、「衣類」の用語は、本明細書においては狭義にはジャケット等の上着やスラックス等のボトムスに着眼したものであるが、広義には、例えば運動靴等の人間が着用する用品や、ペット等の動物が着用する用品、さらにはぬいぐるみや枕等、人間や動物が触れてクリーニングの対象とすることができるあらゆる用品を含む。
【0010】
(全体構成)
本実施の形態に係る業務用衣類処理装置の構成について、詳細に説明する。この業務用衣類処理装置(以下、省略して衣類処理装置と称する)は、例えば、コインランドリー事業を営む事業者のコインランドリースペースに設置され、コインランドリーを利用するユーザに利用され得る。
【0011】
図1(a)及び
図1(b)に示すように、衣類処理装置1は、主に、制御装置2と、衣類処理筐体3と、を含んで構成される。制御装置2と、衣類処理筐体3とは、図示しないケーブルを介して電気的に接続される。
【0012】
(制御装置の構成)
まず、制御装置2の外観について
図1(a)及び
図2を参照して詳細に説明する。制御装置2は、硬貨等のコインが投入されることで電源が投入されて起動し、衣類処理筐体3の動作全体を制御する据え置き型の装置である。この制御装置2は、衣類処理筐体3とは別体で設置され、例えば、衣類処理筐体3から1.8m以内の範囲に設置される。既存のコインランドリーのスペースの制約下で、衣類処理装置1の設置を行えるようにするためである。なお、既存のコインランドリーのスペースの制約がないような場合や、一体に設けたほうが衣類処理装置1の設置が容易となるような場合には、制御装置2は、衣類処理筐体3と一体に設けられてもよい。
【0013】
制御装置2は、制御ボックス21と、略直立して制御ボックス21を支える柱状のスタンド22と、を備える。スタンド22は、所定の高さ、例えば、ユーザが制御ボックス21にアクセスしやすい高さ、に制御ボックス21を支持する。スタンドの構成としては制御ボックス21が倒れないように支持できるのであればどのような構成であってもよいが、例えば、
図1(a)に示すように、制御ボックス21の底部に一端が結合される円柱形の柱部材と、当該柱部材の他端に結合され、この柱部材が倒れることを防止するようコインランドリーの床に固定される放射状に広がる円盤状の基部と、を備える。この基部は、例えば、図示しないボルトによってコインランドリーの床に設置される。
【0014】
図2に示すように、制御ボックス21の正面、つまり、衣類処理装置1のユーザがアクセス可能な面には、硬貨投入パネル211と、操作パネル212と、表示パネル213と、が設けられる。
【0015】
硬貨投入パネル211は、ユーザが硬貨を投入することで制御ボックス21を起動させる(ユーザの操作待ち状態にさせる)ためのパネルである。硬貨投入パネル211は、硬貨投入口、硬貨返却口、硬貨が詰まった場合の硬貨返却レバー、等を備える。投入された硬貨を収容する硬貨回収部214は、例えば、硬貨投入パネル211、操作パネル212、表示パネル213に対して制御ボックス21の下部側に設けられる。硬貨投入パネル211や硬貨回収部214の構成や仕組みについては、公知の様々な構成を採用可能であるため、本明細書では詳細な説明を省略する。
【0016】
操作パネル212は、一例として、硬貨投入パネル211の下側に設けられる。この操作パネル212は、所定の金額の硬貨が投入されたことを示す緑ランプ等のインジケータ212aと、所定の金額の硬貨が投入されて制御ボックス21が起動された後にユーザ操作を受付可能になるスタートボタン212bと、を備える。ユーザがスタートボタン212bを操作、例えば押圧することで、制御ボックス21は衣類処理筐体3の一連の動作を制御する処理を開始する。
【0017】
表示パネル213は、例えば、硬貨投入パネル211の上側、つまり、硬貨投入パネル211を挟んで操作パネル212と対向する側に設けられる。表示パネル213と操作パネル212とを連続して並んで配置しないようにすることで、ユーザにとって表示パネル213と操作パネル212とを区別して良好な視認性、操作性が得られるためである。この表示パネル213は、制御ボックス21の制御動作、例えば、シワ伸ばし処理、消臭処理(
図2においては、図示による説明の容易化のため「消臭」と記す)、冷却処理、それらの終了、をリアルタイムで表示する動作表示部213aと、衣類処理筐体3が動作中に衣類等が落下したことを示す赤ランプ等の落下物異常表示部213bと、衣類処理筐体3が動作中に当該衣類処理筐体3の扉のロックが正常に行われていない場合にその旨を示す赤ランプ等の扉ロック異常表示部213cと、を備える。
動作表示部213aは、例えば、液晶パネルにシワ伸ばし中等のメッセージを表示する構成を採用してもよいし、図示するように、シワ伸ばし、消臭処理、冷却中、終了、のそれぞれを示すインジケータを備え、各動作に応じたランプを表示する構成を採用してもよい。
【0018】
次に、制御ボックス21の機能的な構成について説明する。
図3に示すように、制御ボックス21は、機能的には、制御処理部215と、記憶部216と、検出処理部217と、硬貨投入パネル211と、操作パネル212と、表示パネル213と、を備える。
【0019】
制御処理部215は、例えばCPU、タイマ・カウンタ等を含んで構成され、記憶部216に記憶されたプログラムに従って衣類処理筐体3の各部を制御して当該衣類処理筐体3を動作させる。制御処理部215は、バスを介して各部に接続される。記憶部216は、ROM、RAM等を含んで構成され、上記のプログラムをROMに記憶する。制御処理部215は、ROMに記憶されたプログラムを読み出してRAMに展開し、展開したプログラムに従って、上記のように各種の制御をタイマ・カウンタで計時した時間だけ行う。また、制御処理部215は、衣類処理筐体3の各部に電気的に接続される。詳細については、後述する。
【0020】
硬貨投入パネル211は、硬貨投入口から所定の金額の硬貨が投入されると制御ボックス21に電源を投入し、制御処理部215に所定の金額の硬貨が投入された旨を示す信号を供給することで当該制御処理部215を起動、つまり、制御ボックス21をユーザの操作待ち状態にさせる。起動することで、制御処理部215は、操作パネル212のインジケータ212aに例えば緑ランプを点灯することで、所定の金額が入金されて衣類処理装置1が動作を開始可能な状態にあることを表示させる。ユーザが操作パネル212のスタートボタン212bを押圧すると、操作パネル212はその旨の信号を制御処理部215に供給する。供給された信号に応じて、制御処理部215は衣類処理筐体3の動作を制御する処理を開始し、現在行っている制御処理、つまり、衣類処理筐体3が現在行っている動作を表示パネル213の動作表示部213aに表示する。
【0021】
検出処理部217は、後述する落下物検出部、扉ロック部及び温度検出部等を含んで構成される。検出処理部217は機能的には制御ボックス21の一部であるが、構造的には衣類処理筐体3側に設けられる。落下物検出部が落下物を検出した場合、扉ロック部が扉ロック異常を検出した場合、さらには、温度検出部が衣類処理筐体3内部が所定の温度となったことを検出した場合に、その旨の信号を制御処理部215に供給する。供給された信号に応じて、制御処理部215は、表示パネル213の落下物異常表示部213b、扉ロック異常表示部213c、さらには動作表示部213aに、供給された信号に応じた表示を行わせるとともに、検出結果に応じた処理を行って衣類処理筐体3を制御する。
【0022】
以上のような構成を有する制御ボックス21は、衣類処理筐体3の動作、具体的には、衣類のシワ伸ばし処理、消臭・仕上げ処理、これら一連の処理の終了、を制御する。これらの処理の詳細については、後述して詳細に説明する。
【0023】
(衣類処理筐体3の構成)
次に、衣類処理筐体3の構成について、
図1及び
図4を参照して詳細に説明する。衣類処理筐体3は、その内部空間の大部分である衣類処理スペース34に収容された衣類に、制御ボックス21の制御処理部215の制御の下でシワ伸ばし処理、消臭・仕上げ処理等を行う機構であり、主に、一対の扉32と、ハンガー機構33と、スチーム噴霧機構4と、消臭剤噴射機構5と、検出機構6と、を備える。なお、
図1(b)では、図示による本発明についての理解を容易にするため、後述するスチーム噴霧機構4及び消臭剤噴射機構5の一部を省略している。
【0024】
一対の扉32は、略直方体状の衣類処理筐体3の正面、つまり、ユーザがアクセス可能な側の面に、衣類処理筐体3の両側面に固定されたヒンジ等を介して開閉自在に設けられ、衣類処理筐体3の衣類処理スペース34を開閉する。一対の扉32が閉じられると、衣類処理スペース34は、略気密に密閉される。一対の扉32は、閉じられた際に、後述する扉ロック部によって施錠される。また、一対の扉32は、ユーザが衣類処理スペース34を外部から視認できるようにするため、一部にガラス等の透明部材が用いられてよい。本実施の形態においては、一例として、少なくとも一方の扉32に、鉛直方向に長い略楕円形の視認部322が各扉32の取っ手321の上方に設けられる。なお、一対の扉32の内側、つまり、衣類処理スペース34内において一対の扉32の裏側には、当該一対の扉32に沿って鉛直方向に延伸し、所定の高さを有する侵入防止柵35が取り外し可能に設けられてよい。衣類処理筐体3は、コインランドリーのスペースに設けられるものであるので、一対の扉32を所定の高さまで侵入防止柵35で覆うことで、コインランドリーに滞在している幼児等が誤って衣類処理筐体3の衣類処理スペース34に入ってしまうことを防止できるようになる。侵入防止柵35としては、幼児等が誤って衣類処理スペース34に入ってしまうことを防止できるものであれば、どのようなものであってもよい。
なお、一対の開閉可能な扉32はあくまでも一例であって、衣類処理スペース34を開閉できるのであれば、開き扉に限定されず折れ扉等の他の種の扉を採用してもよい。
【0025】
衣類処理スペース34には、さらに、1または複数の棚36が設けられる。この棚36は、例えば、千鳥格子状の矩形の金属フレーム362と、各格子に設けられる複数の金属メッシュ363と、を備える。棚36が略メッシュ状であるため、後述する噴霧されたスチームや消臭剤のミストの衣類処理スペース34内での拡散が阻害されにくい。本実施の形態においては、この棚36は、衣類処理筐体3の底面から例えば2箇所の所定の高さ位置に折り畳み可能に設けられる。より具体的には、衣類処理スペース34には、奥行き方向において、衣類処理筐体3の背面から所定の距離だけ一対の扉32に向かって離間し、当該背面に沿って鉛直方向に延伸する例えば金属製の仕切り板38が設けられ、棚36は、衣類処理筐体3の鉛直方向において互いに離間して配置され、仕切り板38側の各1辺が、ロッキング式のブラケット361や図示しないヒンジを介して仕切り板38に取り付けられる。なお、ロッキング式ブラケット361については、公知の任意のものを採用可能であるため、
図4においては、図示による理解を容易にするため、ブラケット361の図示を省略する。例えば、一方の棚36は、衣類処理スペース34の底面から600mmの高さ位置に設けられ、他方の棚36は、一方の棚36から上方へ600mm離間した位置に設けられる。後述するスチームや消臭剤が可能な限り満遍なく衣類処理スペース34に行き渡るようにするためである。例えば、棚36を仕切り板38に対して引き起こすようにしてブラケット361をロックすることで棚36をセット、つまり、略水平に維持することができる。一方、ブラケット361のロックを解除することで、棚36を仕切り板38に対して折り畳むことができる。ユーザのニーズ等に応じて、棚36は2つ同時にセットされてもよいし、一方のみセットされてもよい。棚36を設けることで、後述するハンガーに吊すことが困難な衣類、例えばぬいぐるみや枕等にも処理を行うことが可能となる。
なお、棚36は、千鳥格子状に限定されず、例えば4辺を除いて全面が金属メッシュ363によって形成される構成を採用してもよい。
【0026】
仕切り板38は、幅方向における両側が衣類処理スペース34において衣類処理筐体3の両側面にそれぞれ固定される。つまり、衣類処理筐体3には、衣類処理スペース34に加え、仕切り板38と衣類処理筐体3の背面とによって画定され、様々な構成要素が配置される配置用スペース39が設けられる。配置用スペース39は、高さ方向において、例えば、衣類処理スペース34の天井側と底面側とで衣類処理スペース34と連通する。つまり、仕切り板38の高さ方向における上辺及び下辺は、それぞれ、衣類処理スペース34の天井及び底面から所定の距離だけ離間して接続されていない。
【0027】
配置用スペース39には、衣類処理スペース34内で後述するスチームヒータを利用して形成した温風の流れを形成する送風機37が設けられる。送風機37は、制御処理部215に電気的に接続され、当該制御処理部215の制御の下で動作してスチームヒータに風を当てることで、衣類処理スペース34内で温風の流れを形成する。送風機37は、所望の動作、つまり、衣類処理筐体3の動作において所定の風の流れを形成することができる限り、配置用スペース39内の任意の位置、あるいは衣類処理筐体3の外部に設けてよい。
【0028】
ハンガー機構33は、衣類処理スペース34の天井側に設けられ、衣類処理スペース34の幅方向、つまり、一対の扉32が開閉される方向に対して略直交する方向に延伸するハンガーバー331と、ハンガーバー331に吊される複数のハンガー332と、制御処理部215に電気的に接続され、衣類処理装置1の動作中にハンガーバー331を例えば延伸方向に揺動し、ひいては、ハンガー機構33のハンガー332に吊された衣類Cを揺動する揺動機構333と、を含んで構成される。なお、図示による理解を容易にするため、
図4においては、1のハンガー332のみ、及び当該1のハンガー332に吊された衣類(この例では、上着)Cを図示する。例えば、本実施の形態では、
図11に示すように等間隔で最大5つのハンガー332がハンガーバー331に吊される。後述する噴霧されたスチームや消臭剤がハンガー332に吊された衣類に略満遍なくかつ略均等に行き渡るようにするためである。例えば、ハンガーバー331の外周に等間隔に溝334を形成し、各溝334に各ハンガー332のフックを吊るすことで、等間隔配置が可能となる。揺動機構333の詳細な構成については、本技術分野において公知の様々な構成を採用可能であるため、本明細書では詳細な説明を省略する。
【0029】
次に、スチーム噴霧機構4について、
図5及び
図6を参照して詳細に説明する。スチーム噴霧機構4は、衣類処理装置1の外部にあるボイラー(図示せず)から例えば略170℃の熱を有するスチームを衣類処理スペース34に取り込むために設けられる。
図5に示すように、スチーム噴霧機構4は、主に、スチーム取り込み部41と、スチーム噴霧用電磁弁42と、ヒータ・チャンバ用電磁弁43と、スチームチャンバ44と、スチームヒータ45と、を含んで構成される。
【0030】
スチーム取り込み部41は、衣類処理筐体3の背面、つまり、一対の扉32の反対側の外面に設けられる。スチーム取り込み部41は、例えば、円筒状であり、その外周面に開口411が形成され、当該開口411が外部のボイラーの吹出し口に図示しない金属配管等を介して接続される。つまり、開口411は、ボイラーからのスチームの入口として機能する。開口411を介して供給された、ボイラーからのスチームは、スチーム取り込み部41内に一旦貯留される。
【0031】
スチーム噴霧用電磁弁42は、制御処理部215と電気的に接続され、制御処理部215の制御の下でスチームチャンバ44にボイラーからのスチームを供給することで図中矢印で示す様に衣類処理スペース34内にスチーム、いわゆる生蒸気を噴霧するために設けられる。スチームを噴霧することで、ハンガー332に吊された衣類C等に対してシワ伸ばし処理の一部が行われる。スチーム噴霧用電磁弁42は、衣類処理筐体3の背面の外側に設けられる。また、スチーム噴霧用電磁弁42は、例えば、その入口が第1の金属配管421を介してスチーム取り込み部41の上面と接続されてスチーム取り込み部41の内部と連通し、その出口が第2の金属配管422を介してスチームチャンバ44、ひいてはその複数のスチーム噴霧孔441と連通する。
【0032】
ヒータ・チャンバ用電磁弁43は、制御処理部215と電気的に接続され、主として制御処理部215の制御の下でボイラーからのスチームの熱でスチームヒータ45を暖めるとともに、スチームチャンバ44の内部を暖めて当該スチームチャンバ44内部に水滴が溜まることを防止するために設けられる。ヒータ・チャンバ用電磁弁43は、衣類処理筐体3の背面の外側に設けられる。また、ヒータ・チャンバ用電磁弁43は、その入口が第3の金属配管431を介してスチーム取り込み部41の底面と接続されてスチーム取り込み部41の内部と連通し、その出口が第4の金属配管432を介してスチームヒータ45内部と連通する。
【0033】
例えば、衣類処理スペース34内の温度が略60℃未満の場合、制御処理部215は検出機構6の後述する温度検出部を介してその旨を検出し、ヒータ・チャンバ用電磁弁43を開にする。これにより、後述するようにスチームヒータ45が暖められ、さらに制御処理部215が送風機37を駆動することで衣類処理スペース34内が暖められる。一方、衣類処理スペース34内の温度が60℃以上まで暖められた場合には、制御処理部215は後述する温度検出部を介してその旨を検出し、ヒータ・チャンバ用電磁弁43を閉にする。制御処理部215は、送風機37を駆動し続けることで、いわゆる予熱を衣類処理スペース34内で循環する。
【0034】
スチームヒータ45は、
図6に示すように、その内部においてヒータ・チャンバ用電磁弁43からのスチームを循環させることで衣類処理スペース34を暖める熱交換器として機能する。スチームヒータ45は、配置用スペース39において、所定の高さ位置に設けられる。ヒータ・チャンバ用電磁弁43からのスチームによって暖められたスチームヒータ45に、送風機37からの風を当てることで、温風が形成される。この温風は、例えば、送風機37を駆動することで仕切り板38の上辺側を介して配置用スペース39から衣類処理スペース34に送り出され、仕切り板38の下辺側を介して衣類処理スペース34から配置用スペース39に取り込まれ、ひいては、温風の循環が形成される。また、スチームヒータ45は、その入り口が第4の金属配管432を介してヒータ・チャンバ用電磁弁43と連通し、その出口が第5の金属配管451を介してスチームチャンバ44の内部スペース442と連通する。
【0035】
スチームチャンバ44は、衣類処理スペース34の下側、つまり、衣類処理筐体3の底面に設けられ、幅方向に延伸する。スチームチャンバ44は、延伸する方向に例えば等間隔に設けられた複数のスチーム噴霧孔441と、スチームヒータ45内を循環したスチームが供給される内部スペース442と、を備える。複数のスチーム噴霧孔441を介して、外部のボイラーからのスチームが衣類処理スペース34に噴霧される。複数のスチーム噴霧孔441を等間隔で設けることで、可能な限りスチームを均等に噴霧することができる。
【0036】
また、スチームチャンバ44は、一例として、複数のスチーム噴霧孔441と、内部スペース442とが非連通な構成を有する。例えば、複数のスチーム噴霧孔441が設けられた面と、内部スペース442とが、内壁443によって仕切られる。スチームヒータ45からのスチームが内部スペース442内を循環することで、当該内部スペース442、ひいては内壁443が暖められる。例えば、衣類処理装置1が動作を停止している間にスチームチャンバ44の温度が100℃以下となると、スチームチャンバ44内の複数のスチーム噴霧孔441側に水分が溜まり、次のスチーム噴霧の際に、水混じりの生蒸気が噴霧されてしまう。しかしながら、内部スペース442内を暖めることで、内壁443によって仕切られた、複数のスチーム噴霧孔441側に残留した水分を除去することができる。
【0037】
なお、内部スペース442を循環したスチームは、その後内部スペース442と衣類処理筐体3の外部とを連通するドレン機構46を介して衣類処理筐体3の外部に排出される。
【0038】
スチーム噴霧のパターンとして、例えば、衣類の上からの噴霧(パターンA)、下からの噴霧(パターンB)、及び横からの噴霧(パターンC)の3通りが考えられる。また、これらの組み合わせとして4パターン(パターンA+パターンB、パターンA+パターンC、パターンB+パターンC、及びパターンA+パターンB+パターンC)が考えられる。
【0039】
パターンAでは、スチームとハンガー332との距離が比較的近いため、高熱(略175℃)のスチームが直接ハンガー332に到達することでハンガー332の変形や破損、ハンガーに露が付く、といった問題が生じる。ハンガーバー331の位置を下げて、スチームの噴霧口から距離をとる、という方法も考えられるが、その分だけ、衣類処理筐体3の高さ方向の寸法を大きくしなければならなくなる。
パターンBでは、衣類処理筐体3の構造上、衣類とスチームとの距離が確保できるため、スチームの水滴が直接衣類にかかることがなく適度に衣類を蒸らすことができる。スチームには水滴が含まれるが、スチームと比較して重いため、乾燥度の高いスチームよりも重力で下に落下しやすく、従って衣類にいわゆる水ジミが生じるおそれが少ない。また、落下した水滴は、高熱のスチームが通過するスチームチャンバ44に落下するため、再沸騰されて揮発しやすい。
パターンCでは、横方向における左右の衣類にスチームが集中し、その間にある衣類にはスチームが直接届かず、十分なシワ伸ばしが行えない。また、横方向における左右両端に位置する衣類は、スチームと距離が近いため、水滴による水ジミが生じるおそれがある。
以上を考慮して、本実施の形態では、スチームを衣類の下から噴霧する構成を採用することとした。
【0040】
次に、消臭剤噴射機構5について、
図7を参照して詳細に説明する。消臭剤噴射機構5は、衣類処理スペース34に上下から消臭剤Dのミストを噴霧するために設けられる。消臭剤Dを噴射することで、衣類Cに対して消臭・仕上げ処理のうち主に消臭処理が行われる。消臭剤噴射機構5は、衣類処理筐体3の外部に設けられる。この消臭剤噴射機構5は、主に、タンク51と、消臭剤噴射用電磁弁52と、消臭剤供給配管53と、複数の消臭剤噴射ノズル54と、接続配管55と、を含んで構成される。
【0041】
タンク51は、消臭剤Dを内部に貯留する。タンク51は、内部が中空のマウント56に搭載されて当該マウント56を介して床に設置される。タンク51内の消臭剤Dは、例えば、残量に応じて、あるいは定期的に、衣類処理装置1の保守作業員によって適宜補充される。タンク51の上部は、図示しないコンプレッサ等に接続され、タンク51内の消臭剤Dは、図示しないコンプレッサ等からのエアAにより加圧された状態で貯留される。タンク51の底部は、接続配管55を介して消臭剤噴射用電磁弁52の入口に接続される。つまり、接続配管55は、マウント56の内部において一端がタンク51の底部に接続され、他端側がマウント56の内部から外部に延伸して消臭剤噴射用電磁弁52の入口まで延伸する。
【0042】
タンク51が貯留する消臭剤Dの一例は、クリーニング事業者が自己の業務に用いる業務用の消臭剤であって、葉緑素から形成されたいわゆるオーガニック系の消臭剤である。吸着式の消臭剤だと、臭いが発生するおそれがある。塩素系の消臭剤だと、有害なガスが発生するおそれがある。水酸化カルシウム系の消臭剤だと、危険物として扱われるものであり、またpHが高いのでニット系の衣類に使用できない。さらに、ミョウバンをベースとした消臭剤だと、消臭剤としての機能が比較的劣る。そこで、本実施の形態では、オーガニック系の消臭剤を用いることとした。
【0043】
消臭剤噴射用電磁弁52は、制御処理部215と電気的に接続され、タンク51と、消臭剤供給配管53との間に設けられる。つまり、消臭剤噴射用電磁弁52は、その入口が、接続配管55の他端と接続され、当該接続配管55を介してタンク51の内部と連通し、その出口が、消臭剤供給配管53と接続される。制御処理部215の制御の下、消臭剤噴射用電磁弁52は開閉し、消臭剤供給配管53にタンク51からの消臭剤Dを供給、あるいは供給を停止する。
【0044】
消臭剤供給配管53は、主に、消臭剤噴射用電磁弁52の出口から衣類処理筐体3の背面に向かって延伸する第1の部分531と、第1の部分531からT字ジョイント等を介して衣類処理筐体3の背面に沿って所定の高さ、例えば、ハンガー機構33の上方まで上方向に延伸する第2の部分532と、第1の部分531から上記のT字ジョイント等を介して衣類処理筐体3の背面に沿って下方向に延伸する第3の部分533と、第2の部分532からL字ジョイント等を介して衣類処理筐体3の背面から内部に延伸し、衣類処理スペース34においてハンガー機構33の上側で一対の扉32に向かって延伸する第4の部分534と、第3の部分533からL字ジョイント等を介して衣類処理筐体3の背面のうち底面付近から内部に延伸し、衣類処理スペース34においてスチームチャンバ44の上方で一対の扉32に向かって延伸する第5の部分535と、第4の部分534の途中の位置及び先端位置から、それぞれ、十字ジョイント及びT字ジョイント等を介して左右両側に向かって幅方向において延伸する一対の第6の部分536と、第5の部分535の途中の位置及び先端位置から、それぞれ、第6の部分536と同様に十字ジョイント及びT字ジョイント等を介して左右両側に向かって幅方向において延伸する一対の第7の部分537と、を備える。各部分531~537及び各ジョイントは、それぞれ、例えば金属のパイプから形成される。
【0045】
複数の消臭剤噴射ノズル54は、供給された消臭剤Dをミスト化するよう構成され、衣類処理スペース34に配置される衣類に向かって所定の長さだけ一対の第6の部分536及び一対の第7の部分537からそれぞれ延伸する。複数のノズル54は、例えば、一対の第6の部分536のそれぞれの両端と、一対の第7の部分537のそれぞれの両端と、に設けられる。つまり、一対の第6の部分536のそれぞれの両端に設けられた消臭剤噴射ノズル54は、衣類処理スペース34の上側から下側に所定の長さだけ延伸し、一対の第7の部分537のそれぞれの両端に設けられた消臭剤噴射ノズル54は、衣類処理スペース34の下側から上側に所定の長さだけ延伸する。衣類処理スペース34に配置された衣類に向けて効率よく消臭剤Dのミストを噴射するようにするためである。なお、一対の第6の部分536の少なくともいずれか一方の中間部分にも、消臭剤噴射ノズル54を設けてもよい。一対の第7の部分537についても同様である。
【0046】
制御処理部215の制御の下、消臭剤噴射用電磁弁52が開かれると、タンク51内でエアAによって加圧された消臭剤Dは、接続配管55、消臭剤噴射用電磁弁52、及び消臭剤供給配管53を介して複数の消臭剤噴射ノズル54に供給され、当該複数の消臭剤噴射ノズル54からミストとして衣類処理スペース34内に噴霧される。制御処理部215が消臭剤噴射用電磁弁52を閉じることで、その後消臭剤Dのミストの噴霧が停止される。
【0047】
消臭剤Dのミストの噴射パターンとしては、衣類の上からの噴射(パターン1)、下からの噴射(パターン2)及び横からの噴射(パターン3)の3通りが考えられる。また、これらの組み合わせとして4通り(パターン1+パターン2、パターン1+パターン3、パターン2+パターン3、及びパターン1+パターン2+パターン3)が考えられ、合計7通りのパターンが考えられる。
【0048】
パターン1では、衣類にミスト状の消臭剤Dが直接かかるため、消臭効果を得やすい。また、スチームよりも重いため、重力によって下に向けて満遍なく消臭剤Dのミストを噴射することができる。しかしながら、棚36をセットして、例えばクッション等面積のある衣類を配置した場合には、下まで噴射した消臭剤Dのミストが到達できないおそれがある。
パターン2では、エアAによる加圧を調整することで、パターン1同様に消臭剤Dのミストを満遍なく噴射することができるが、衣類との距離が比較的遠いため、このパターンのみでは消臭剤Dによる消臭効果を得にくい。また、上記のように、棚36をセットしてクッション等の衣類を配置した状態では、上まで噴射した消臭剤Dのミストが届かないおそれがある。
パターン3では、左右の両端にある衣類に直接消臭剤Dが噴射され、その間にある衣類にはほとんど届かないおそれがある。そのため、消臭処理の効果にムラが生じる。
以上を考慮して、本実施の形態では、消臭剤Dのミストを、上及び下の両側から噴射する構成を採用することとした。
【0049】
次に、検出機構6について、
図1を参照して詳細に説明する。検出機構6は、温度検出部61と、扉ロック部62と、落下物検出部63と、を含んで構成される。
温度検出部61は、例えばサーミスタであり、制御処理部215と電気的に接続され、衣類処理スペース34の天井側に配置される。温度検出部61は、例えば、ハンガー機構33の近傍に配置される。温度検出部61は、検出した温度を示す信号を制御処理部215に供給し、制御処理部215は、供給された信号に基づいて衣類処理スペース34の温度が略60℃以下か否か判別する。
【0050】
扉ロック部62は、いわゆる電気錠であり、制御処理部215に電気的に接続される。扉ロック部62は、一例として、一対の扉32の上側において、当該一対の扉32をロック可能な位置に設けられる。一対の扉32が正常に閉じられた後、扉ロック部62は、制御処理部215の制御の下で衣類処理筐体3の動作の間一対の扉32をロックする。一方、一対の扉32が正常に閉じられていない場合、例えば、衣類処理筐体3が動作を開始する前に一対の扉32が十分に閉じられていない場合や、衣類処理筐体3の動作の間にユーザ等によって強制的に一対の扉32の少なくともいずれかが開けられた場合に、その旨を示す信号を制御処理部215に供給する。これにより、制御処理部215は、一対の扉32が正常に閉じられているか否か、判別する。
【0051】
落下物検出部63は、
図8に示すように、主に、ロープ631と、ローラ632と、ヒンジレバー型のマイクロスイッチ633と、を備える。
ロープ631は、一端が衣類処理スペース34内において衣類処理筐体3の一の側面に固定され、他端がマイクロスイッチ633のヒンジレバーに固定される。
ローラ632は、衣類処理スペース34内において衣類処理筐体3の他方の側面に回転可能に固定され、ロープ631にたるみが生じないよう、ロープ631が掛けられる。ロープ631やローラ632は、衣類処理スペース34において所定の高さ、例えば、一対の第7の部分537に設けられた複数の消臭剤噴射ノズル54の上方に設けられる。
マイクロスイッチ633は、制御処理部215に電気的に接続され、衣類処理筐体3の底面において、ローラ632が設けられた側面側のスチームチャンバ44と干渉しない位置に設けられる。
【0052】
衣類処理筐体3が動作を開始する前、並びに衣類処理筐体3が動作中に、例えばハンガー332に吊された衣類Cが落下した際、たるみなくローラ632に掛けられたロープ631に当該衣類によって張力が加わる。この張力によってマイクロスイッチ633のヒンジレバーが持ち上げられると、マイクロスイッチ633はその旨の信号を制御処理部215に供給する。制御処理部215は、供給された信号に基づいて、衣類等の落下物があるか否か、判別する。
【0053】
(動作)
次に、以上のような構成を有する衣類処理装置1の動作について、
図9及び
図10のフローチャート、並びに
図11の動作概略図を参照しつつ説明する。本実施の形態においては、衣類処理装置1は、一例として、シワ伸ばし処理、消臭・仕上げ処理、の順で衣類に対して処理を行う。ここでは、予め、ユーザが処理をしたい複数の衣類Cを衣類処理筐体3内のハンガー332のそれぞれに掛け、衣類処理筐体3の一対の扉32を完全に閉じた場合を想定する。なお、以下に説明するステップの順序は、本発明の特徴的な動作を説明することを目的とした一例に過ぎず、同様の作用、効果が得られるのであれば適宜変更してよい。
【0054】
(シワ伸ばし処理)
まず、シワ伸ばし処理のフローについて、
図9並びに
図11を適宜参照しつつ説明する。
ユーザが、硬貨投入口から所定の金額の硬貨を投入すると(ステップS1:YES)、硬貨投入パネル211は、電源電力を制御処理部215に供給し、制御ボックス21を起動、つまり、ユーザの操作待ち状態にさせる(ステップS2)。制御処理部215は、操作パネル212のインジケータ212aを点灯して所定の金額が投入されたことを表示する(ステップS3)。所定の金額の硬貨が投入されるまで、硬貨投入パネル211は、制御処理部215をユーザの操作待ち状態にしない(ステップS1:NO)。
【0055】
次に、ユーザが、操作パネル212のスタートボタン212bを押圧すると(ステップS4:YES)、制御処理部215は、扉ロック部62の電気錠で扉32をロックして衣類処理筐体3の衣類処理スペース34を密閉できたか否か、判別する(ステップS5)。
【0056】
例えば、ユーザによる扉32の閉度が不十分な場合(ステップS5:NO)、制御処理部215は、扉ロック部62を介してその旨を検出し、扉ロック異常表示部213cを点灯してユーザに再度扉32を閉じるよう促すとともに、処理をステップS3に戻す。これに応じて扉32が適切に閉じられた場合、制御処理部215は、扉ロック異常表示部213cを消灯し、続くユーザによるスタートボタン212bの押圧操作を受け付け可能な状態となる。なお、扉32が閉じられているか否かについては、制御処理部215は、衣類処理筐体3の動作の間において、続く処理や各ステップの間においても扉ロック部62の電子錠を介してモニタし続け、例えばユーザによって衣類処理筐体3の動作中に扉32が開かれた場合には安全のためその時点での衣類処理筐体3の動作をいわゆる割り込み処理によって一旦停止する。再度扉32が適切に閉じられた場合には、ユーザがスタートボタン212bを再度押圧することで、中断した時点からの衣類処理筐体3の動作を再開する。
【0057】
ユーザによって一対の扉32が適切に閉じられていた場合には(ステップS5:YES)、制御処理部215は、落下物検出部63から信号が供給されたか否かに基づいて、落下物がないか否か、つまり、ハンガー332に掛けられた衣類等が衣類処理スペース34の底面に向かって落下していないか否か判別する(ステップS6)。落下物検出部63から信号が供給された場合、制御処理部215は落下物があると判別し(ステップS6:NO)、扉ロック部62の電子錠を開錠し、処理をステップS5に戻すとともに、落下物異常表示部213bを点灯する。これにより、ユーザに落下物があることを提示するとともに、一対の扉32を開けて落下物を除去、例えばハンガー332に落下物を掛け直すよう促す。ユーザによって落下物が除去されることで、制御処理部215は、落下物異常表示部213bを消灯し、再度ステップS5を実行する。落下物検出部63から供給される信号がない場合、制御処理部215は、落下物がないと判別し(ステップS6:YES)、処理を続くステップS7に進める。
なお、落下物があるか否かについては、制御処理部215は、衣類処理筐体3の動作の間において、続く処理や各ステップの間においても落下物検出部63から供給される信号があるか否か、判別し続け、例えば衣類処理筐体3の動作中に落下物が検出された場合には安全のためその時点での衣類処理筐体3の動作をいわゆる割り込み処理によって一旦停止する。ユーザによって落下物が除去された場合には、ユーザがスタートボタン212bを再度押圧することで、中断した時点からの衣類処理筐体3の動作を再開する。
【0058】
制御処理部215は、動作表示部213aにシワ伸ばし処理中である旨を表示する。また、衣類処理筐体3のヒータ・チャンバ用電磁弁43を開いてスチームヒータ45に外部のボイラーからのスチームを供給してスチームヒータ45を暖め、さらに送風機37を駆動してスチームヒータ45に風を当てて温風を形成する。送風機37の駆動によってこの温風を衣類処理スペース34内で循環させることで、当該衣類処理スペース34を暖める(ステップS7)。なお、ステップS4でスタートボタン212bが押圧されない場合(ステップS4:NO)、制御処理部215は処理をステップS3に戻し、ユーザによる操作を待機する状態を維持する。
【0059】
また、スチームヒータ45に送られたスチームの一部は、スチームチャンバ44にも送られる。外部のボイラーからのスチームは、例えば5kg/cm2で加圧されているため、スチームヒータ45内を循環しつつ、スチームチャンバ44にも流れ込む。また、外部のボイラーからのスチームは、略170℃の熱を有するので、この熱で、スチームチャンバ44の内部スペース442が暖められる(ステップS8)。
【0060】
制御処理部215は、温度検出部61を介して、衣類処理スペース34内が所定の温度、例えば略60℃まで暖められたか否か、判別する(ステップS9)。衣類処理スペース34内が略60℃未満の場合(ステップS9:NO)、制御処理部215は、処理をステップS8に戻す。衣類処理スペース34内が略60℃まで暖められた場合には(ステップS9:YES)、制御処理部215は、ヒータ・チャンバ用電磁弁43を閉じるとともに、送風機37を停止する(ステップS10)、スチームヒータ45へのスチームの供給を停止する。なお、以降の処理中においても、制御処理部215は、温度検出部61を介して衣類処理スペース34内の温度を常時検出し、衣類処理筐体3の動作が後述する冷却処理に移行するまでにおいて衣類処理スペース34内の温度が60℃未満となった場合には、後述するステップS24に加えて、例えば、他の処理と並列、あるいは他の処理における任意のステップ間において衣類処理スペース34内を略60℃まで暖める動作を行ってもよい。
【0061】
続いて、制御処理部215は、ハンガー機構33の作動を開始し(ステップS11)、ハンガーバー331及び複数のハンガー332を揺動し、ひいてはハンガー332に掛けられた衣類Cを揺動する。
【0062】
次に、制御処理部215は、スチーム噴霧用電磁弁42を開き、スチームチャンバ44の複数のスチーム噴霧孔441から衣類処理スペース34に外部のボイラーからのスチームを噴霧する(ステップS11)。外部のボイラーからのスチームは、例えば5kg/cm2で加圧されているため、この加圧により、衣類処理スペース34の底面側から噴霧しても勢いよく上に向かって噴霧される。例えば、制御処理部215は、タイマ・カウンタを用いて計時し、スチームの噴霧を所定の時間、例えば60秒間継続する。
【0063】
続いて、制御処理部215は、スチーム噴霧用電磁弁42を閉じ、タイマ・カウンタを用いて所定の時間待機する(ステップS13)、つまり、制御処理部215は、スチームの噴霧の後、例えば45秒間衣類処理スペース34に収容された衣類に対して蒸らしを行う。
【0064】
次に、制御処理部215は、送風機37を再び駆動して、送風機37の風をスチームヒータ45に当てることで形成される温風、つまり、衣類処理スペース34内の予熱を当該衣類処理スペース34において循環させる(ステップS14)。例えば、制御処理部215は、タイマ・カウンタを用いて計時を行い、温風を所定の時間、例えば120秒間循環させる。
以上により、シワ伸ばし処理が完了し、制御処理部215は、処理を続く消臭・仕上げ処理に移行する。
【0065】
(消臭・仕上げ処理)
次に、消臭・仕上げ処理のフローについて、
図10並びに
図11を適宜参照して詳細に説明する。
制御処理部215は、ステップS14において温風の循環が所定の時間行われたか否か、判別する(ステップS21)。ステップS14において所定の時間の温風の循環が完了していない場合(ステップS21:NO)、制御処理部215は、
図9のステップS14を継続する。一方、ステップS14において所定の時間の温風の循環が完了した場合には(ステップS21:YES)、制御処理部215は、まず、動作表示部213aにおける表示を変更し、消臭処理中である旨を表示する。また、制御処理部215は、消臭剤噴射用電磁弁52を開き、タンク51から消臭剤供給配管53に加圧された消臭剤Dを供給し、ひいては、複数の消臭剤噴射ノズル54から消臭剤Dのミストを処理対象の衣類Cに向かって上下から噴射する(ステップS22)。
【0066】
制御処理部215は、タイマ・カウンタを用いて計時を行い、消臭剤Dのミストが所定の時間、例えば10秒間噴射されたか否か判別する(ステップS23)。消臭剤Dのミストの噴射が所定の時間行われていない場合(ステップS23:NO)、制御処理部215は、処理をステップS22に戻す。一方、消臭剤Dのミストの噴射が所定の時間行われた場合には(ステップS23:YES)、制御処理部215は、消臭剤噴射用電磁弁52を閉じ、消臭剤供給配管53への消臭剤Dの供給を停止する(ステップS24)。
【0067】
制御処理部215は、衣類処理スペース34内の温度が略60℃以下か否か判別する(ステップS25)。ステップS25は、上述したステップS9の処理と同様である。衣類処理スペース34内の温度が略60℃未満の場合(ステップS25:NO)、制御処理部215は、衣類処理スペース34内の温度が略60℃になるまで上述したステップS7等の処理を行って衣類処理スペース34内を暖める。衣類処理スペース34内の温度が略60℃の場合には(ステップS25:YES)、制御処理部215は、送風機37を駆動して風をスチームヒータ45に当てて温風を形成し、さらには送風機37を駆動し続けることで衣類処理スペース34内において温風を循環させる(ステップS26)。
【0068】
次に、制御処理部215は、タイマ・カウンタを用いて計時を行い、温風の循環が所定の時間、例えば120秒間行われたか否か判別する(ステップS27)。所定の時間温風を循環させることで、衣類処理スペース34内の衣類Cに付着した消臭剤Dのミストを乾燥させて衣類Cに定着させることができるためである。温風の循環が所定の時間行われていない場合(ステップS27:NO)、制御処理部215は、処理をステップS26に戻す。一方、温風の循環が所定の時間行われた場合には(ステップS27:YES)、制御処理部215は、送風機37を一旦停止する(ステップS28)。
【0069】
次に、制御処理部215は、これまでの処理によって比較的高温となった衣類Cを冷却する処理を行う。具体的には、まず、制御処理部215は、動作表示部213aにおける表示を変更し、冷却中である旨を表示する。また、制御処理部215は、ヒータ・チャンバ用電磁弁43を閉じた状態で、送風機37を再度駆動して衣類処理スペース34内で風を循環させる(ステップS29)。ヒータ・チャンバ用電磁弁43が閉じられているので、スチームヒータ45がボイラーからのスチームで暖められることはないため、送風機37を駆動し続けて風を循環させることで衣類処理スペース34内の予熱の温度が徐々に低下してゆく。
【0070】
制御処理部215は、温度検出部61を介して、衣類処理スペース34内の温度が所定の温度、例えば略40℃以下になったか否か判別する(ステップS30)。衣類処理スペース34内の温度が所定の温度より高い場合(ステップS30:NO)、制御処理部215は、処理をステップS29に戻す。一方、衣類処理スペース34内の温度が所定の温度以下となった場合には(ステップS30:YES)、制御処理部215は、送風機37を再停止し(ステップS31)、ハンガー機構33を停止して扉ロック部62の電子錠を解錠する(ステップS32)。さらには、制御処理部215は、動作表示部213aの表示を変更し、衣類Cに対する処理が終了した旨を表示する。これにより、ユーザに、一連の処理が完了したことを提示するとともに、ユーザは、一対の扉32を開いて衣類処理スペース34内の処理済みの衣類Cの取り出しが行えるようになる。
【0071】
(作用・効果)
以上説明したように、本実施の形態によれば、以下のような作用・効果が得られる。
【0072】
本実施の形態に係る業務用衣類処理装置は、コインランドリーのスペースに設置される業務用衣類処理装置1であって、
内部に処理対象の衣類Cを配置可能な衣類処理筐体3と、
衣類処理筐体3の内部(衣類処理スペース)34において、衣類処理装置1の外部のボイラーからのスチームを処理対象の衣類Cに向けて噴霧するとともに、スチームの噴霧とは別に、外部のボイラーからのスチームを用いて衣類処理筐体3の内部(衣類処理スペース)34を暖めるスチーム噴霧機構4と、
衣類処理筐体3の内部(衣類処理スペース)34において、消臭剤Dを処理対象の衣類Cに向けて噴射する消臭剤噴射機構5と、
スチーム噴霧機構4と、消臭剤噴射機構5とに電気的に接続され、処理対象の衣類Cに対してシワ伸ばし及び消臭を含む処理を行うよう、スチーム噴霧機構4と消臭剤噴射機構5とをそれぞれ制御する制御装置2と、
を備える。
【0073】
この業務用衣類処理装置1は、コインランドリーを利用するユーザに利用される。例えば、コインランドリーを利用するユーザのなかには、衣類C等の洗濯を行うことなく衣類C等にシワ伸ばし処理や消臭処理を行いたいユーザも存在する。本実施の形態に係る業務用衣類処理装置1は、このようなユーザのニーズに応えることが可能である。
また、コインランドリーで使用されるボイラーからのスチームは、家庭用の機器で生成されるスチームよりも強力なため、ボイラーからのスチームを利用することで、家庭用の機器と比較して、クリーニング事業者の視点から見て十分なシワ伸ばし処理が行える。
さらに、クリーニング事業者が自己の業務に用いる業務用の消臭剤Dを用いるため、ユーザが比較的容易に入手可能な家庭用消臭剤を用いる場合と比較して、クリーニング事業者の視点から見て十分な消臭効果が得られる。
従って、本実施の形態によれば、クリーニング事業者による仕上がり品質のシワ伸ばしや消臭といった衣類の処理を行うことができる業務用衣類処理装置1を提供することが可能となる。
【0074】
スチーム噴霧機構4は、制御装置2の制御の下、衣類処理筐体3の内部(衣類処理スペース)34において処理対象の衣類Cの下側のみからスチームを噴霧するものであってもよい。
【0075】
スチームを処理対象の衣類Cの上側から噴霧する構成の場合、ボイラーからのスチームの熱により、衣類Cを掛けるハンガー等にダメージを与える場合がある。また、処理対象の衣類Cの横からスチームを噴霧する場合には、特定の衣類のみにスチームの噴霧が集中してしまい、処理対象の衣類Cに満遍なくスチームを噴霧する効果が得られにくい。本実施の形態によれば、このような問題を回避できる。
【0076】
消臭剤噴射機構5は、制御装置2の制御の下、衣類処理筐体3の内部(衣類処理スペース)34において処理対象の衣類Cの上側及び下側の両方から消臭剤Dを噴射するものであってもよい。
【0077】
処理対象の衣類Cに対して上及び下から消臭剤Dを噴射することで、消臭処理を行う上で消臭剤Dを満遍なく処理対象の衣類Cに対して噴射することができる。
【0078】
スチーム噴霧機構4は、衣類処理筐体3の底面に設けられ、複数のスチーム噴霧孔441からスチームを噴霧するスチームチャンバ44と、
衣類処理筐体3の内部(配置用スペース)39に設けられるスチームヒータ45と、
スチームチャンバ44とスチームヒータ45とのそれぞれの内部を連通する配管451と、
を備え、
配管451を介してスチームをスチームチャンバ44及びスチームヒータ45のそれぞれの内部に供給することで、スチームチャンバ44及びスチームヒータ45の内部をそれぞれ暖めるようにしてもよい。
【0079】
衣類処理筐体3の内部(衣類処理スペース)34を暖めるため、外部のボイラーからのスチームがスチームヒータ45内に供給される。また、複数の噴霧孔441からスチームを衣類処理筐体3の内部(衣類処理スペース)34に噴霧するスチームチャンバ44内には、水分が溜まりやすいが、スチームチャンバ44内にもボイラーからのスチームを供給することで、水分を除去することができる。また、配管451を介してスチームチャンバ44及びスチームヒータ45のそれぞれの内部を連通することで、スチームヒータ45に供給したスチームを、スチームチャンバ44にも供給できる。スチームチャンバ44及びスチームヒータ45のそれぞれに個別にスチームを供給する構成と比較して、構成の簡略化が図れる。
【0080】
衣類処理装置1は、さらに、制御装置2に電気的に接続される送風機37を備え、
送風機37を駆動して送風機37からの風を、内部にスチームが供給されて暖められたスチームヒータ45に当てることで、衣類処理筐体3の内部(衣類処理スペース)34で温風を循環させるようにしてもよい。
【0081】
送風機37からの風を、暖まったスチームヒータ45に当てることで、温風、つまり、予熱を衣類処理筐体3の内部(衣類処理スペース)34で循環させ、これによって衣類処理筐体3の内部(衣類処理スペース)34の温度を、処理対象の衣類Cに対して処理を行う上で好適な温度にすることができる。
【0082】
衣類処理筐体3は、開閉することで衣類処理筐体3の内部(衣類処理スペース)34を開閉する扉32を備え、
制御装置2と電気的に接続され、衣類処理筐体3の内部(衣類処理スペース)34の温度を検出する温度検出部61と、
制御装置2と電気的に接続され、制御装置2の制御の下、扉32をロックするとともに、扉32が正常に閉じられたか否かを示す信号を制御装置2に供給する扉ロック部62と、
制御装置2と電気的に接続され、衣類処理筐体3の内部(衣類処理スペース)34において底面に向かって落下した衣類Cの有無を示す信号を制御装置2に供給する落下物検出部63と、
をさらに備えてもよい。
【0083】
この種の安全機構を備えることで、衣類処理装置1の動作中における安全を担保できる。
【0084】
制御装置2の制御の下、スチームの噴霧と、噴霧したスチームによる処理対象の衣類Cの蒸らしと、温風の循環と、消臭剤Dの噴霧と、温風の循環と、スチームヒータ45の内部へスチームの供給を停止した状態で送風機37を駆動することによる冷却と、を行うようにしてもよい。
【0085】
このような動作を行うことで、処理対象の衣類Cに対し、シワ伸ばし処理、消臭処理、冷却処理(仕上げ処理)を行うことができる。
【0086】
消臭剤噴射機構5は、複数の消臭剤噴射ノズル54を介して処理対象の衣類Cの上側及び下側から消臭剤Dを噴射するようにしてもよい。
【0087】
複数位置から消臭剤Dを噴射することで、処理対象の衣類Cに対する消臭剤Dの噴射の効率が向上する。
【0088】
衣類処理筐体3の内部のうち、処理対象の衣類Cが配置される衣類処理スペース34と、スチームヒータ45が配置される配置用スペース39とを仕切る仕切り板38をさらに備え、
仕切り板38の上端側及び下端側を介して、衣類処理スペース34と配置用スペース39とが連通するようにしてもよい。
【0089】
衣類処理スペース34と、スチームヒータ45が配置される配置用スペース39とを連通させることで、送風機37による温風の循環を形成することができる。
【0090】
仕切り板38は、衣類処理スペース34内において、折り畳み可能なメッシュ状の棚36を備えてもよい。
【0091】
棚36を設けることで、ぬいぐるみや枕等、ハンガーに掛けにくい衣類の処理をも可能になる。
【0092】
(第2の実施の形態)
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。第2の実施の形態は、棚36についての変形例である。第1の実施の形態では、棚36は、衣類処理筐体3の衣類処理スペース34内の奥行き方向にある仕切り板38に対して折り畳み可能に取り付けられた。本実施の形態においては、棚は、衣類処理筐体3の衣類処理スペース34において両側面に折り畳み可能に取り付けられる。以下、
図12を参照して詳細に説明する。
【0093】
図12(a)及び(b)に示すように、本実施の形態の各棚136は、例えば、左右一対の千鳥格子状の矩形の金属フレーム1362と、各格子に設けられる複数の金属メッシュ1363と、各金属フレーム1362が引き上げられた際に当該金属フレーム1362を略水平に維持する折り畳み可能なロック式ブラケット1361であって、左右一対の金属フレーム1362のそれぞれの衣類処理筐体3の各側面側の一辺の略中央に設けられる左右一対のブラケット1361と、を備える。
【0094】
各金属フレーム1362は、衣類処理スペース34において、衣類処理筐体3の幅方向における各側面に対して、各ブラケット1361と、複数のヒンジ1364とを介して折り畳み可能に取り付けられる。各ブラケット1361は、いわゆるワンタッチ式のブラケットであり、
図12(b)に示すように、各金属フレーム1362が引き上げられて略水平に維持された状態で、ブラケット1361のワンタッチレバー1365を操作することでロックが解除され、各金属フレーム1362の折り畳みが可能になる。
【0095】
左右一対の金属フレーム1362が引き上げられて略水平に維持された状態で、左右一対の金属フレーム1362の対向する辺の間には、所定のクリアランス、例えば、50mmのクリアランスが設けられる。スチームや消臭剤Dのミストの衣類処理スペース34内での流れをより阻害しにくくするためである。
【0096】
本実施の形態によれば、棚136の使用に際し、左右一対の金属フレーム1362のいずれかのみを引き上げて略水平に固定して使用することが可能である。つまり、棚136に配置したい衣類Cの量によっては、左右一対の金属フレーム1362の両方ではなく、片方のみを使用することで十分な場合があるが、本実施の形態はこのような場合に対応可能である。加えて、片側の金属フレーム1362のみを略水平に固定することで、第1の実施の形態の棚36を使用する場合と比較してスチームや消臭剤Dのミストを衣類処理スペース34内において行き渡らせやすい。
【0097】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されず、本発明の技術的範囲を逸脱しない限りにおいて様々な置換、応用、変更が可能である。
例えば、上記の実施の形態では、衣類処理装置1は、硬貨等のコインが投入されることで動作を開始する場合を例にして説明した。しかしながら、本発明はこの例に限定されず、硬貨等のコインに代えて、ICカード等にチャージされた電子マネーを利用する構成とすることもできる。この場合は、硬貨投入パネル211等に代えて、公知の任意のICカードリーダ等を設け、ユーザが例えばICカードをICカードリーダにかざすことで当該ICカードを読み取り、当該ICカードにチャージされた電子マネーを処理することで動作を開始するよう、衣類処理装置1を構成してもよい。
【符号の説明】
【0098】
1 衣類処理装置
2 制御装置
3 衣類処理筐体
4 スチーム噴霧機構
5 消臭剤噴射気孔
32 一対の扉
34 衣類処理スペース
36、136 棚
37 送風機
38 仕切り板
39 配置用スペース
44 スチームチャンバ
45 スチームヒータ
54 噴射ノズル
61 温度検出部
62 扉ロック部
63 落下物検出部
441 スチーム噴霧孔
451 配管
C 衣類
D 消臭剤
【手続補正書】
【提出日】2022-03-14
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項1
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項1】
コインランドリーのスペースに設置される業務用衣類処理装置であって、
内部に処理対象の衣類を配置可能な衣類処理筐体と、
前記衣類処理筐体の内部において、前記業務用衣類処理装置外部のボイラーからのスチームを前記処理対象の衣類に向けて噴霧するとともに、前記スチームの噴霧とは別に、前記外部のボイラーからのスチームを用いて前記衣類処理筐体の内部を暖めるスチーム噴霧機構と、
前記衣類処理筐体の内部において、クリーニング事業者が自己の業務に用いる業務用の消臭剤を前記処理対象の衣類に向けて噴射する消臭剤噴射機構と、
前記スチーム噴霧機構と、前記消臭剤噴射機構とに電気的に接続され、前記処理対象の衣類に対してシワ伸ばし及び消臭を含む処理を行うよう、前記スチーム噴霧機構と前記消臭剤噴射機構とをそれぞれ制御する制御装置と、
を備えることを特徴とする業務用衣類処理装置。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0006
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0006】
上記の目的を達成するため、本発明の業務用衣類処理装置は、コインランドリーのスペースに設置される業務用衣類処理装置であって、内部に処理対象の衣類を配置可能な衣類処理筐体と、衣類処理筐体の内部において、業務用衣類処理装置外部のボイラーからのスチームを処理対象の衣類に向けて噴霧するとともに、スチームの噴霧とは別に、外部のボイラーからのスチームを用いて衣類処理筐体の内部を暖めるスチーム噴霧機構と、衣類処理筐体の内部において、クリーニング事業者が自己の業務に用いる業務用の消臭剤を処理対象の衣類に向けて噴射する消臭剤噴射機構と、スチーム噴霧機構と、消臭剤噴射機構とに電気的に接続され、処理対象の衣類に対してシワ伸ばし及び消臭を含む処理を行うよう、スチーム噴霧機構と消臭剤噴射機構とをそれぞれ制御する制御装置と、を備える。