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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022076391
(43)【公開日】2022-05-19
(54)【発明の名称】生体検知装置
(51)【国際特許分類】
   G01V 3/12 20060101AFI20220512BHJP
   A61B 5/11 20060101ALI20220512BHJP
   A61B 5/113 20060101ALI20220512BHJP
   A61B 5/0245 20060101ALI20220512BHJP
   G01S 13/34 20060101ALI20220512BHJP
【FI】
G01V3/12 A
A61B5/11 110
A61B5/113
A61B5/0245 C
G01S13/34
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020186797
(22)【出願日】2020-11-09
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大谷 隆史
【テーマコード(参考)】
2G105
4C017
4C038
5J070
【Fターム(参考)】
2G105AA01
2G105BB11
2G105CC01
2G105DD03
2G105FF16
2G105GG04
2G105GG05
2G105HH01
2G105KK01
4C017AA02
4C017AA09
4C017AA14
4C017AB04
4C017AC40
4C017BC11
4C017BC16
4C038VA04
4C038VA16
4C038VB31
4C038VB33
4C038VB40
4C038VC20
5J070AB17
5J070AC01
5J070AC02
5J070AC11
5J070AD06
5J070AE09
5J070AF03
5J070AH25
5J070AK07
(57)【要約】
【課題】車両の走行時にも車室内の人物を高精度に検知する。
【解決手段】実施形態の生体検知装置は、車両の車室内に、FMCW変調した送信波を送信する送信部と、反射波を受信する受信部と、反射波に基づいて車室内の三次元マップ情報を作成する作成部と、車両の停車時に作成された三次元マップ情報における反射源の位置を特定する特定部と、反射波のドップラシフトに基づいて車室内の物体の動きを検出して検出結果を出力する物体検出部と、所定の検知周期で、車両の停車時に、三次元マップ情報と検出結果に基づいて人物を検知し、車両の走行時に、三次元マップ情報と検出結果に基づいて人物を検知し、停車時と比べて検知された人物の数が増えた場合、人物が検知された位置のうち、直前の検知周期では人物が検知されていない位置であって、かつ、反射源の位置と略一致する当該位置には人物はいないと判定する人物検知部と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の車室内に、FMCW(Frequency Modulated Continuous Wave)変調した送信波を送信する送信部と、
前記送信波が前記車室内の物体によって反射することによって発生する反射波を受信する受信部と、
前記反射波に基づいて前記車室内の三次元マップ情報を作成する作成部と、
前記車両の停車時に作成された前記三次元マップ情報において前記送信波に対する所定以上の反射強度を有する物体である反射源の位置を特定する特定部と、
前記反射波のドップラシフトに基づいて前記車室内の物体の動きを検出して検出結果を出力する物体検出部と、
所定の検知周期で、
前記車両の停車時に、前記三次元マップ情報と前記検出結果に基づいて人物を検知し、
前記車両の走行時に、前記三次元マップ情報と前記検出結果に基づいて人物を検知し、前記停車時と比べて検知された人物の数が増えた場合、人物が検知された位置のうち、直前の検知周期では人物が検知されていない位置であって、かつ、前記反射源の位置と略一致する当該位置には人物はいないと判定する人物検知部と、
を備える生体検知装置。
【請求項2】
前記車両の走行時に、前記検出結果に基づいて人物に関する動きをともなう生体情報を算出し、当該人物の座っている座席の近くの前記反射源であって前記座席が振動するときに当該振動と相関のある振動をする当該反射源の動きに基づいて、前記生体情報から前記車両の振動に由来する成分を除去する算出部を、さらに備える、請求項1に記載の生体検知装置。
【請求項3】
前記生体情報は、前記人物の脈波、呼吸、体動の少なくともいずれかである、請求項2に記載の生体検知装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体検知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、電波を人物に照射し、反射波のドップラシフトを周波数解析することで生体情報(脈波、呼吸、体動等)を算出する技術がある。また、FMCW(Frequency Modulated Continuous Wave)方式の電波の送受信に基づいて、車両(乗用車等)の車室内の人物(乗員)の有無を判定する技術もある。FMCW方式では、電波を照射し、反射波が反射した位置とその位置の速度をドップラシフトから求めることができる。これらの技術を組み合わせれば、例えば、停車時には車室内の人物やその生体情報を高精度に検知できると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-126407号公報
【特許文献2】特開2020-101415号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述の従来技術では、車両の走行時には、車両の振動によって車室内の構造物や人物も振動し、人物の検知精度が低下すると考えられる。
【0005】
そこで、本発明の課題は、上記事情に鑑みてなされたものであって、車両の走行時にも車室内の人物を高精度に検知することができる生体検知装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するために、実施形態の生体検知装置は、車両の車室内に、FMCW変調した送信波を送信する送信部と、前記送信波が前記車室内の物体によって反射することによって発生する反射波を受信する受信部と、前記反射波に基づいて前記車室内の三次元マップ情報を作成する作成部と、前記車両の停車時に作成された前記三次元マップ情報において前記送信波に対する所定以上の反射強度を有する物体である反射源の位置を特定する特定部と、前記反射波のドップラシフトに基づいて前記車室内の物体の動きを検出して検出結果を出力する物体検出部と、所定の検知周期で、前記車両の停車時に、前記三次元マップ情報と前記検出結果に基づいて人物を検知し、前記車両の走行時に、前記三次元マップ情報と前記検出結果に基づいて人物を検知し、前記停車時と比べて検知された人物の数が増えた場合、人物が検知された位置のうち、直前の検知周期では人物が検知されていない位置であって、かつ、前記反射源の位置と略一致する当該位置には人物はいないと判定する人物検知部と、を備える。
【0007】
このような構成により、車両の走行時に、FMCW方式で作成した三次元マップ情報と、反射源の位置と、反射波のドップラシフトに基づく車室内の物体の動きの検出結果と、を用いて、検知人数が停車時の検知人数と比べて増えた場合に実際にはいない検知人物を識別することができるので、車室内の人物を高精度に検知することができる。
【0008】
また、上述の生体検知装置において、前記車両の走行時に、前記検出結果に基づいて人物に関する動きをともなう生体情報を算出し、当該人物の座っている座席の近くの前記反射源であって前記座席が振動するときに当該振動と相関のある振動をする当該反射源の動きに基づいて、前記生体情報から前記車両の振動に由来する成分を除去する算出部を、さらに備える。
【0009】
このような構成により、車両の走行時に、人物の生体情報から車両の振動に由来する成分を除去することで、生体情報を高精度に検知できる。
【0010】
また、上述の生体検知装置において、前記生体情報は、前記人物の脈波、呼吸、体動の少なくともいずれかである。このような構成により、生体情報として、具体的に人物の脈波、呼吸、体動の少なくともいずれかを高精度に検知できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、実施形態における車両の模式図である。
図2図2は、実施形態の電波センサと制御装置の機能構成を示すブロック図である。
図3図3は、実施形態におけるFMCW方式による信号処理の概要を示す説明図である。
図4図4は、実施形態における停車時と走行時の検知結果の違いを模式的に示す説明図である。
図5図5は、実施形態の制御装置による処理を示すフローチャートである。
図6図6は、図5におけるステップS10の処理の詳細を示すフローチャートである。
図7図7は、変形例における車両の模式図である。
図8図8は、変形例における車両の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の生体検知装置の実施形態について、図面を参照して説明する。
【0013】
図1は、実施形態における車両Cの模式図である。車両Cの車室内に、生体検知装置1を構成する電波センサ2と制御装置3が配置されている。電波センサ2は車室内の天井部分に設置されている。制御装置3は、例えば、車室内の前端部に設けられているダッシュボード内に設置されている。
【0014】
座席Sには乗員Mが座っている。以下では、生体検知装置1によって乗員M(人物)の存在を検知するとともに、乗員Mの生体情報(脈波、呼吸、体動等)を算出することについて説明する。また、以下では、車室内の物体のうち、電波センサ2の送信部21が発する送信波に対して所定以上の反射強度を有する物体を反射源と称する。反射源は主に金属である。
【0015】
図2は、実施形態の電波センサ2と制御装置3の機能構成を示すブロック図である。電波センサ2は、送信部21と、受信部22と、を備える。
【0016】
送信部21は、車両Cの車室内に、FMCW変調した送信波を広範囲に送信(照射)する。受信部22は、送信波が車室内の物体によって反射することによって発生する反射波を受信する。受信部22は、複数の受信アンテナを備えている。
【0017】
制御装置3は、例えば、ハードウェアプロセッサ、メモリ等が搭載された集積回路を有するMCU(Micro Controller Unit)等により構成される。制御装置3は、ADC(Analog-to-Digital Converter)31と、処理部32と、記憶部33と、を備える。
【0018】
ADC31は、電波センサ2の受信部22から取得したアナログ信号をデジタル信号に変換して処理部32に出力する。
【0019】
記憶部33は、例えば、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、SSD(Solid State Drive)、HDD(Hard Disk Drive)等の記憶装置である。記憶部33は、処理部32が実行するプログラム、プログラムの実行に必要なデータ、プログラムの実行によって生成されたデータ等を記憶する。記憶部33は、例えば、設定情報331と、三次元マップ情報332と、検出結果333と、生体情報334と、を記憶する。
【0020】
設定情報331は、人物の生体信号か否かを判定するための周波数範囲や、各種閾値(反射源を特定するための反射源閾値、人物を検知するための人物閾値等)等の各種設定情報を記憶する。
【0021】
三次元マップ情報332は、作成部322によって反射波情報に基づいて作成される、車室内の三次元の物体配置状態を示す情報である。
【0022】
検出結果333は、物体検出部324による検出結果の情報である。
【0023】
生体情報334は、算出部326によって算出される、人物の生体情報である。
【0024】
処理部32は、例えば、CPU(Central Processing Unit)等のハードウェアプロセッサによって構成される。処理部32は、記憶部33に格納されたプログラムを読み込んで演算処理を実行する。処理部32は、機能部として、取得部321と、作成部322と、特定部323と、物体検出部324と、人物検知部325と、算出部326と、制御部327と、を備える。なお、各部321~237の一部または全部は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field-Programmable Gate Array)を含む回路等のハードウェアによって構成してもよい。
【0025】
取得部321は、ADC31から反射波情報を取得する。
【0026】
作成部322は、反射波情報に基づいて車室内の三次元マップ情報を作成し、記憶部33に三次元マップ情報332として保存する。
【0027】
特定部323は、車両Cの停車時に作成された三次元マップ情報332における反射源の位置を特定する。
【0028】
物体検出部324は、反射波のドップラシフトに基づいて車室内の物体の動きを検出して、検出結果を記憶部33に検出結果333として保存する。
【0029】
人物検知部325は、所定の検知周期で、車両Cの停車時に、設定情報331、三次元マップ情報332、検出結果333に基づいて乗員Mを検知する。また、人物検知部325は、所定の検知周期で、車両Cの走行時に、設定情報331、三次元マップ情報332、検出結果333に基づいて乗員Mを検知し、停車時と比べて検知された乗員Mの数が増えた場合、乗員Mが検知された位置のうち、直前の検知周期では乗員Mが検知されていない位置であって、かつ、反射源の位置と略一致(完全一致の場合と一致に近い場合を含む。)する当該位置には乗員Mはいないと判定する。
【0030】
算出部326は、検出結果333等に基づいて乗員Mに関する動きをともなう生体情報を算出する。生体情報の一例は、乗員Mの心拍数である。送信部21からの送信波が乗員Mの胸部で反射する場合、前後に振動する胸部によるドップラー効果による影響が反射波に反映される。よって、算出部326は、反射波の信号から導出したドップラー周波数に基づいて生体情報を算出する。
【0031】
また、算出部326は、車両Cの走行時に、検出結果333等に基づいて乗員Mの生体情報を算出し、当該乗員Mの座っている座席Sの近くの反射源であって座席Sが振動するときに当該振動と相関のある振動をする当該反射源の動きに基づいて、生体情報から車両Cの振動に由来する成分を除去する。
【0032】
制御部327は、各部321~326が実行する演算以外の演算を実行する。
【0033】
なお、各部324~326の処理ついて、例えば、さらに具体的に、以下のように行うことができる。生体信号(人物信号)の伝搬速度と振幅に応じて、以下の(1)~(3)の3種類の解析方法を同時に行う。ここで、生体信号の伝搬速度がドップラシフトで検知可能な場合を速度大、十分な検知精度を得られない程度の速度の場合を速度小とする。また、生体信号の振幅が3D(Dimensions)ボクセルで検知できる大きさを振幅大、十分な検知精度を得られない程度の振幅の場合を振幅小と定義する。
【0034】
(1)速度大かつ振幅大の生体信号の抽出
予め座席Sの振動と相関のある反射源を複数決めておき、その反射源の振動と座席Sにいる人の人数、位置、振動から、座席Sの振動、そして座席Sから乗員Mに伝わる振動を予測する。例えば、座席Sのみのときの振動と乗員Mがいるときの振動などのデータを予め実験で取得し、それらの相関を特定しておくことで予測を行う。そして、例えば、予測された車両Cの振動のうち生体信号と周波数の等しい速度分布を、ドップラシフトから得られた乗員Mの速度分布から差し引くことで、生体信号と同じ周波数のノイズを除く。
【0035】
(2)速度大かつ振幅小の生体信号の抜出
生体信号の振幅が十分小さいので3Dボクセルの振動に含まれないと考えてよい。よって、人物由来の3Dボクセル信号の速度分布のうち生体信号と等しい周波数のものを抜き出し、これをドップラシフトから得られた人の速度分布から差し引くことで、生体信号と同じ周波数のノイズを除く。
【0036】
(3)速度小かつ振幅大の生体信号の抜出
予め座席Sの振動と相関のある反射源を複数決めておき、その反射源の振動と座席Sにいる人の人数、位置、振動から、座席Sの振動、そして座席Sから人に伝わる振動を予測する。例えば、座席Sのみの時の振動と乗員Mがいるときの振動などのデータを予め実験で取得し、それらの相関を特定しておくことで予測を行う。そして、例えば、人物由来の3Dボクセル信号から、車両Cの振動から人物に伝わった振動を差し引くことで、生体情報から車両Cの振動由来のノイズを除く。
【0037】
図3は、実施形態におけるFMCW方式による信号処理の概要を示す説明図である。図3(a)に示すように、まず、電波センサ2の送信部21から、車両Cの車室内に、FMCW変調した送信波が送信される。そして、電波センサ2の受信部22が反射波を受信する。
【0038】
次に、図3(b)に示すように、作成部322によって、反射波に基づいて車室内の三次元マップ情報が作成される。この三次元マップ情報は、乗員Mのほかに、反射率の高い金属などの物体(反射源)の情報が含まれている。つまり。この三次元マップ情報だけでは、認識された物体が金属なのか人物なのか等の区別がつかない。
【0039】
次に、図3(c)に示すように、物体検出部324による反射波のドップラシフトに基づく物体検出と、人物検知部325による人物検知によって、乗員Mが検知される。また、算出部326によってその乗員Mの生体情報を算出することもできる。
【0040】
図4は、実施形態における停車時と走行時の検知結果の違いを模式的に示す説明図である。まず、図4(a)に基づいて停車時の検知について説明する。図4(a1)は車室内の実際の状態を示し、図4(a2)は検知された乗員Mを示す。
【0041】
作成部322は、人物の信号を抜き出す前の3D信号を作成する。また、作成部322は、信号の強度の最大値等に基づいて、反射源閾値を決定する。例えば、強度の最大値の数十%の値と実験値の大きいほうの値を反射源閾値として決定する。
【0042】
次に、特定部323は、反射源閾値を用いて三次元マップ情報332における反射源の位置を特定する。
【0043】
次に、物体検出部324は、反射波のドップラシフトに基づいて車室内の物体の動きを検出する。
【0044】
次に、人物検知部325は、周波数解析により、人物信号を抽出する。また、人物検知部325は、人物信号の強度の最大値等に基づいて、人物閾値を決定する。例えば、強度の最大値の数十%の値と実験値の大きいほうの値を人物閾値として決定する。また、人物検知部325は、一人以上の乗員Mを検知し、乗員Mに対応する人物信号について、強度の大きいほうから順にラベリングをする。
【0045】
車室内に金属等の反射源Rがある場合、停車時は反射源Rが静止状態であるため、人物検知部325が反射源Rを人物であると誤検知することはない。
【0046】
次に、算出部326は、ラベリングされた人物信号のそれぞれについて周波数解析し、生体情報を算出する。その場合、例えば、エンジン始動後や強風等によって人物信号に人物以外の由来の振動による成分が混ざっている場合、後述の走行時の検知時と同様にして人物以外の由来の振動による成分を除去する。
【0047】
続いて、図4(b)に基づいて走行時の検知について説明する。図4(b1)は車室内の実際の状態を示し、図4(b2)は検知された乗員Mと誤検知結果(領域A)を示す。
【0048】
作成部322は、人物の信号を抜き出す前の3D信号を作成する。また、作成部322は、信号の強度の最大値等に基づいて、反射源閾値を決定する。例えば、強度の最大値の数十%の値と実験値の大きいほうの値を反射源閾値として決定する。
【0049】
次に、特定部323は、反射源閾値を用いて三次元マップ情報332における反射源の位置を特定する。
【0050】
次に、物体検出部324は、反射波のドップラシフトに基づいて車室内の物体の動きを検出する。
【0051】
次に、人物検知部325は、周波数解析により、人物信号を抽出する。また、人物検知部325は、人物信号の強度の最大値等に基づいて、人物閾値を決定する。例えば、強度の最大値の数十%の値と実験値の大きいほうの値を人物閾値として決定する。また、人物検知部325は、人物信号について、強度の大きいほうから順にラベリングをする。
【0052】
車室内に金属等の反射源Rがある場合、走行時は反射源Rが振動することがあるため、人物検知部325が反射源Rを人物であると誤検知することがある。そこで、以下のようにして誤検知を防止する。
【0053】
人物検知部325は、乗員Mを検知し、停車時と比べて検知された乗員Mの数が増えた場合、乗員Mが検知された位置のうち、直前の検知周期では乗員Mが検知されていない位置であって、かつ、反射源Rの位置と略一致する当該位置には乗員Mはいないと判定する。これにより、人物の誤検知を防止できる。また、実際には人物ではなかった人物信号を除外する場合、その後に再ラベリングをする。
【0054】
次に、算出部326は、ラベリングされた人物信号のそれぞれについて周波数解析し、生体情報を算出する。その場合、算出部326は、乗員Mの座っている座席Sの近くの反射源であって座席Sが振動するときに当該振動と相関のある振動をする当該反射源の動きに基づいて、生体情報から車両Cの振動に由来する成分を除去する。この相関については、例えば、乗員Mの数、位置、サイズなどを考慮の上、予め実験により、座席Sの振動と相関のある振動をする反射源を特定したり、そのときの座席Sの振動と反射源の振動の関係等についてデータを作成したりしておき、使用すればよい。
【0055】
図5は、実施形態の制御装置3による処理を示すフローチャートである。ステップS1において、取得部321は、ADC31から反射波情報を取得する。
【0056】
次に、ステップS2において、作成部322は、反射波情報に基づいて車室内の三次元マップ情報322を作成する。
【0057】
次に、ステップS3において、作成部322は、信号の強度の最大値等に基づいて、反射源閾値を決定する。
【0058】
次に、ステップS4において、特定部323は、反射源閾値を用いて三次元マップ情報332における反射源の位置を特定する。
【0059】
次に、ステップS5において、物体検出部324による車室内の物体検出の後、人物検知部325は、周波数解析により人物信号を抽出する。
【0060】
次に、ステップS6において、人物検知部325は、人物信号の強度の最大値等に基づいて、人物閾値を決定する。
【0061】
次に、ステップS7において、人物検知部325は、乗員Mを検知し、乗員Mに対応する人物信号について、強度の大きいほうから順にラベリングをする。
【0062】
次に、ステップS8において、算出部326は、ラベリングされた人物信号のそれぞれについて周波数解析し、生体情報を算出する。
【0063】
次に、ステップS9において、制御部327は、停車中か否かを判定し、Yesの場合はステップS1に戻り、Noの場合はステップS10に進む。ステップS10において、処理部32は、走行中処理を実行する。
【0064】
ここで、図6は、図5におけるステップS10の処理の詳細を示すフローチャートである。ステップS11~S17は、ステップS1~7と同様である。
【0065】
ステップS17の後、ステップS18において、人物検知部325は、停車時と比べて検知された乗員Mの数が増えたか否かを判定し、Yesの場合はステップS19に進み、Noの場合はステップS20に進む。
【0066】
ステップS19において、人物検知部325は、前フレーム(1回前の検知周期時)で乗員Mが検知されていない位置であって、かつ、反射源の位置と略一致する当該位置の人物信号を除外し、再ラベリングをする。
【0067】
例えば、停車中に、ステップS7で、運転席、後部座席左端に人物がいたと検知されたものとする。そして、走行中に、ステップS17で、運転席、助手席、後部座席左端に人物がいたと検知され、信号強度の大きさから、運転席の人物、後部座席左端の人物、助手席の人物の順番にラベリングしたものとする。
【0068】
そして、ステップS18で人数が二人から三人に増えていると認識する。その後、ステップS19で、ラベリングした人物信号のうち、助手席の人物信号については、前フレームで乗員Mが検知されておらず、反射源の位置と略一致したとすると、その人物信号を除外し、再ラベリングをする。
【0069】
ステップS20において、算出部326は、ラベリングされた人物信号のそれぞれについて周波数解析し、生体情報を算出する。
【0070】
次に、ステップS21において、算出部326は、反射源の振動情報を用いて、生体情報から車両Cの振動に由来する成分を除去する。このステップS20、S21によって、例えば上述の例では、運転席の人物と後部座席左端の人物について、生体情報を算出するとともに、生体情報から車両Cの振動に由来する成分を除去する。
【0071】
次に、ステップS22において、制御部327は、走行中か否かを判定し、Yesの場合はステップS11に戻り、Noの場合は処理を終了する。
【0072】
このように、本実施形態の生体検知装置1によれば、車両Cの走行時に、FMCW方式で作成した三次元マップ情報と、反射源の位置と、反射波のドップラシフトに基づく車室内の物体の動きの検出結果と、を用いて、検知人数が停車時の検知人数と比べて増えた場合に実際にはいない検知人物を識別することができるので、車室内の人物を高精度に検知することができる。
【0073】
また、車両Cの走行時に、人物の生体情報から車両Cの振動に由来する成分を除去することで、生体情報を高精度に検知できる。
【0074】
また、生体情報として、具体的に人物の脈波、呼吸、体動の少なくともいずれかを高精度に検知できる。したがって、例えば、走行時に乗員Mに急病が発生した場合に、乗員Mの脈波、呼吸、体動に所定の変化があるときは、その急病を高精度に検知できる。
【0075】
(変形例)
図7は、変形例における車両Cの模式図である。車両Cの車室内において、天井ではなくのフロント部分に電波センサ2を設置し、乗員検知と生体情報算出を行ってもよい。
【0076】
図8は、変形例における車両Cの模式図である。車両Cの車室内において、天井やフロント部分ではなくそれぞれの座席Sの内部に電波センサ2を設置し、乗員検知と生体情報算出を行ってもよい。
【0077】
なお、制御装置3で実行されるプログラムは、インストール可能な形式または実行可能な形式のファイルでCD-ROM、CD-R、メモリカード、DVD(Digital Versatile Disk)、フレキシブルディスク(FD)等のコンピュータで読み取り可能な記憶媒体に記憶されてコンピュータプログラムプロダクトとして提供されるようにしてもよい。また、当該プログラムを、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供するようにしてもよい。また、当該プログラムを、インターネット等のネットワーク経由で提供または配布するようにしてもよい。
【0078】
以上、本発明の実施形態を説明したが、上記実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。この実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0079】
例えば、電波センサ2において、広範囲に電波を照射して複数のアンテナで反射波を受信する代わりに、電波の照射方向を変えながら単数または複数のアンテナで反射波を受信するようにしてもよい。いずれの場合でも、受信した反射波の情報に基づいて三次元マップ情報を作成できる。
【0080】
また、電波センサ2の代わりに光センサを用いてもよい。
【符号の説明】
【0081】
1…生体検知装置、2…電波センサ、3…制御装置、21…送信部、22…受信部、31…ADC、32…処理部、33…記憶部、321…取得部、322…作成部、323…特定部、324…物体検出部、325…人物検知部、326…算出部、327…制御部、331…設定情報、332…三次元マップ情報、333…検出結果、334…生体情報、C…車両、M…乗員、S…座席。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8