(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022076392
(43)【公開日】2022-05-19
(54)【発明の名称】生体検知装置
(51)【国際特許分類】
G01V 3/12 20060101AFI20220512BHJP
A61B 5/11 20060101ALI20220512BHJP
A61B 5/0245 20060101ALI20220512BHJP
G01S 13/34 20060101ALI20220512BHJP
【FI】
G01V3/12 A
A61B5/11 110
A61B5/0245 C
G01S13/34
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020186798
(22)【出願日】2020-11-09
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大谷 隆史
【テーマコード(参考)】
2G105
4C017
4C038
5J070
【Fターム(参考)】
2G105AA01
2G105BB11
2G105CC01
2G105DD03
2G105EE02
2G105FF13
2G105HH01
4C017AA02
4C017AA10
4C017AC40
4C017BC11
4C017BC16
4C017DD14
4C017FF05
4C038VA04
4C038VB40
4C038VC20
5J070AB17
5J070AC01
5J070AC02
5J070AC11
5J070AC19
5J070AD06
5J070AE09
5J070AF03
5J070AH25
5J070AK25
(57)【要約】
【課題】車両の車室内の人物を検知するときに、検知した人物がゴーストか否かを高精度で判定する。
【解決手段】実施形態の生体検知装置は、電波センサと、反射波に基づいて車室内の三次元マップ情報を作成する作成部と、三次元マップ情報における反射源の位置および反射強度を特定する特定部と、反射波のドップラシフトに基づいて車室内の物体の動きを検出して検出結果を出力する物体検出部と、三次元マップ情報と検出結果に基づいて一人以上の乗員を検知する人物検知部と、人物検知部によって検知されたそれぞれの乗員について、乗員の位置と、反射源の位置および反射強度と、に基づいて、乗員に対応するゴーストに関して位置を含む情報を予測してゴースト情報を生成する予測部と、人物検知部によって検知されたそれぞれの乗員について、乗員の位置と、ゴースト情報に基づいて、当該乗員がゴーストか否かを判定する判定部と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の車室内にFMCW(Frequency Modulated Continuous Wave)変調した送信波を送信する送信部、および、前記送信波が前記車室内の物体によって反射することによって発生する反射波を受信する受信部を備える電波センサと、
前記反射波に基づいて前記車室内の三次元マップ情報を作成する作成部と、
前記三次元マップ情報において前記送信波に対する所定以上の反射強度を有する物体である反射源の位置および反射強度を特定する特定部と、
前記反射波のドップラシフトに基づいて前記車室内の物体の動きを検出して検出結果を出力する物体検出部と、
前記三次元マップ情報と前記検出結果に基づいて一人以上の人物を検知する人物検知部と、
前記人物検知部によって検知されたそれぞれの前記人物について、前記人物の位置と、前記反射源の位置および反射強度と、に基づいて、前記人物に対応するゴーストに関して位置を含む情報を予測してゴースト情報を生成する予測部と、
前記人物検知部によって検知されたそれぞれの前記人物について、前記人物の位置と、前記ゴースト情報に基づいて、当該人物がゴーストか否かを判定する判定部と、
を備える生体検知装置。
【請求項2】
前記予測部は、
前記人物検知部によって検知されたそれぞれの前記人物について、前記人物の位置から前記反射源の位置までの距離と、前記反射源の位置から前記電波センサまでの距離と、に基づいて、前記送信波の当該人物による反射波が前記反射源でさらに反射してから前記電波センサに入射する場合に検知される前記ゴーストの位置を予測する、請求項1に記載の生体検知装置。
【請求項3】
前記予測部は、
前記人物検知部によって検知されたそれぞれの前記人物について、前記電波センサから前記人物の位置までの距離と、前記電波センサから前記反射源の位置までの距離と、に基づいて、前記送信波の当該人物による反射波と前記送信波の当該反射源による反射波が干渉することで検知される前記ゴーストの位置を予測する、請求項1に記載の生体検知装置。
【請求項4】
前記予測部は、前記人物検知部による時系列に複数の検知結果に基づいて、前記ゴースト情報として、さらに、前記ゴーストに対応する前記人物が動いたときの前記ゴーストの動きを予測し、
前記判定部は、前記人物検知部による時系列に複数の検知結果に基づいて、前記人物検知部によって検知されたそれぞれの前記人物について、当該人物の動きと、前記ゴースト情報における前記ゴーストの動きの情報と、に基づいて、当該人物がゴーストか否かを判定する、請求項1に記載の生体検知装置。
【請求項5】
前記予測部は、予測した前記ゴーストの位置が前記車両の外部である場合、当該ゴーストを除外する、請求項1に記載の生体検知装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体検知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、電波を人物に照射し、反射波のドップラシフトを周波数解析することで生体情報(脈波、呼吸、体動等)を算出する技術がある。また、FMCW(Frequency Modulated Continuous Wave)方式の電波の送受信に基づいて、車両(乗用車等)の車室内の人物(乗員)の有無を判定する技術もある。FMCW方式では、電波を照射し、反射波が反射した位置とその位置の速度をドップラシフトから求めることができる。これらの技術を組み合わせれば、車室内の人物やその生体情報を検知できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-126407号公報
【特許文献2】特開2020-101415号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述の従来技術では、車室内で人物がいない場所に人物がいるように検知してしまう現象(以下、ゴーストと称する。)が発生する場合がある。
【0005】
そこで、本発明の課題は、上記事情に鑑みてなされたものであって、車両の車室内の人物を検知するときに、検知した人物がゴーストか否かを高精度で判定することができる生体検知装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するために、実施形態の生体検知装置は、車両の車室内にFMCW変調した送信波を送信する送信部、および、前記送信波が前記車室内の物体によって反射することによって発生する反射波を受信する受信部を備える電波センサと、前記反射波に基づいて前記車室内の三次元マップ情報を作成する作成部と、前記三次元マップ情報において前記送信波に対する所定以上の反射強度を有する物体である反射源の位置および反射強度を特定する特定部と、前記反射波のドップラシフトに基づいて前記車室内の物体の動きを検出して検出結果を出力する物体検出部と、前記三次元マップ情報と前記検出結果に基づいて一人以上の乗員を検知する人物検知部と、前記人物検知部によって検知されたそれぞれの前記乗員について、前記乗員の位置と、前記反射源の位置および反射強度と、に基づいて、前記乗員に対応するゴーストに関して位置を含む情報を予測してゴースト情報を生成する予測部と、前記人物検知部によって検知されたそれぞれの前記乗員について、前記乗員の位置と、前記ゴースト情報に基づいて、当該乗員がゴーストか否かを判定する判定部と、を備える。
【0007】
このような構成により、乗員の位置と、反射源の位置および反射強度と、に基づいて、ゴースト情報を生成しておくことで、検知した人物がゴーストか否かを高精度で判定することができる。
【0008】
また、上述の生体検知装置において、前記予測部は、前記人物検知部によって検知されたそれぞれの前記乗員について、前記乗員の位置から前記反射源の位置までの距離と、前記反射源の位置から前記電波センサまでの距離と、に基づいて、前記送信波の当該乗員による反射波が前記反射源でさらに反射してから前記電波センサに入射する場合に検知される前記ゴーストの位置を予測する。
【0009】
このような構成により、検知した人物がマルチパス由来のゴーストか否かを高精度で判定することができる。
【0010】
また、上述の生体検知装置において、前記予測部は、前記人物検知部によって検知されたそれぞれの前記乗員について、前記電波センサから前記乗員の位置までの距離と、前記電波センサから前記反射源の位置までの距離と、に基づいて、前記送信波の当該乗員による反射波と前記送信波の当該反射源による反射波が干渉することで検知される前記ゴーストの位置を予測する。
【0011】
このような構成により、検知した人物が干渉由来のゴーストか否かを高精度で判定することができる。
【0012】
また、上述の生体検知装置において、前記予測部は、前記人物検知部による時系列に複数の検知結果に基づいて、前記ゴースト情報として、さらに、前記ゴーストに対応する前記乗員が動いたときの前記ゴーストの動きを予測し、前記判定部は、前記人物検知部による時系列に複数の検知結果に基づいて、前記人物検知部によって検知されたそれぞれの前記乗員について、当該乗員の動きと、前記ゴースト情報における前記ゴーストの動きの情報と、に基づいて、当該乗員がゴーストか否かを判定する。
【0013】
このような構成により、ゴーストに対応する乗員が動いたときのゴーストの動きを予測しておくことで、検知した人物がゴーストか否かをさらに高精度で判定することができる。
【0014】
また、上述の生体検知装置において、前記予測部は、予測した前記ゴーストの位置が前記車両の外部である場合、当該ゴーストを除外する。
【0015】
このような構成により、不要なゴーストを処理対象から除外し、処理を軽くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、実施形態における車両の模式図である。
【
図2】
図2は、実施形態の電波センサと制御装置の機能構成を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、実施形態におけるFMCW方式による信号処理の概要を示す説明図である。
【
図4】
図4は、実施形態におけるマルチパス由来のゴースト発生の説明図である。
【
図5】
図5は、実施形態における干渉由来のゴースト発生の説明図である
【
図6】
図6は、実施形態の制御装置による処理を示すフローチャートである。
【
図7】
図7は、
図6のステップS8の詳細の第1の例を示すフローチャートである。
【
図8】
図8は、
図6のステップS8の詳細の第2の例を示すフローチャートである。
【
図9】
図9は、変形例における車両の模式図である。
【
図11】
図11は、変形例における電波センサ2の設置の様子の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の生体検知装置の実施形態について、図面を参照して説明する。
【0018】
図1は、実施形態における車両Cの模式図である。車両Cの車室内に、生体検知装置1を構成する電波センサ2と制御装置3が配置されている。電波センサ2は車室内の天井部分に設置されている。制御装置3は、例えば、車室内の前端部に設けられているダッシュボード内に設置されている。
【0019】
座席Sには乗員Mが座っている。以下では、生体検知装置1によって乗員M(人物)の存在を検知するとともに、ゴースト判定することについて説明する。また、以下では、車室内の物体のうち、電波センサ2の送信部21が発する送信波に対して所定以上の反射強度を有する物体を反射源と称する。反射源は主に金属である。
【0020】
図2は、実施形態の電波センサ2と制御装置3の機能構成を示すブロック図である。電波センサ2は、送信部21と、受信部22と、を備える。
【0021】
送信部21は、車両Cの車室内に、FMCW変調した送信波を広範囲に送信(照射)する。受信部22は、送信波が車室内の物体によって反射することによって発生する反射波を受信する。受信部22は、複数の受信アンテナを備えている。
【0022】
制御装置3は、例えば、ハードウェアプロセッサ、メモリ等が搭載された集積回路を有するMCU(Micro Controller Unit)等により構成される。制御装置3は、ADC(Analog-to-Digital Converter)31と、処理部32と、記憶部33と、を備える。
【0023】
ADC31は、電波センサ2の受信部22から取得したアナログ信号をデジタル信号に変換して処理部32に出力する。
【0024】
記憶部33は、例えば、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、SSD(Solid State Drive)、HDD(Hard Disk Drive)等の記憶装置である。記憶部33は、処理部32が実行するプログラム、プログラムの実行に必要なデータ、プログラムの実行によって生成されたデータ等を記憶する。記憶部33は、例えば、設定情報331と、三次元マップ情報332と、検出結果333と、生体情報334と、ゴースト情報335と、を記憶する。
【0025】
設定情報331は、人物の生体信号か否かを判定するための周波数範囲や、各種閾値(反射源を特定するための反射源閾値、人物を検知するための人物閾値等)等の各種設定情報を記憶する。
【0026】
三次元マップ情報332は、作成部322によって反射波情報に基づいて作成される、車室内の三次元の物体配置状態を示す情報である。
【0027】
検出結果333は、物体検出部324による検出結果の情報である。
【0028】
生体情報334は、算出部328によって算出される、人物の生体情報である。
【0029】
ゴースト情報335は、予測部326によって生成される、乗員Mに対応するゴーストに関して位置や強度を含む情報である。
【0030】
ここで、
図3は、実施形態におけるFMCW方式による信号処理の概要を示す説明図である。
図3(a)に示すように、まず、電波センサ2の送信部21から、車両Cの車室内に、FMCW変調した送信波が送信される。そして、電波センサ2の受信部22が反射波を受信する。
【0031】
次に、
図3(b)に示すように、作成部322によって、反射波に基づいて車室内の三次元マップ情報が作成される。この三次元マップ情報は、乗員Mのほかに、反射率の高い金属などの物体(反射源)の情報が含まれている。つまり。この三次元マップ情報だけでは、認識された物体が金属なのか人物なのか等の区別がつかない。
【0032】
次に、
図3(c)に示すように、物体検出部324による反射波のドップラシフトに基づく物体検出と、人物検知部325による人物検知によって、乗員Mが検知される。また、算出部328によってその乗員Mの生体情報を算出することもできる。以下、処理部32の処理の詳細について説明する。
【0033】
処理部32は、例えば、CPU(Central Processing Unit)等のハードウェアプロセッサによって構成される。処理部32は、記憶部33に格納されたプログラムを読み込んで演算処理を実行する。処理部32は、機能部として、取得部321と、作成部322と、特定部323と、物体検出部324と、人物検知部325と、予測部326と、判定部327と、算出部328と、制御部329と、を備える。なお、各部321~237の一部または全部は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field-Programmable Gate Array)を含む回路等のハードウェアによって構成してもよい。
【0034】
取得部321は、ADC31から反射波情報を取得する。
【0035】
作成部322は、反射波情報に基づいて車室内の三次元マップ情報を作成し、記憶部33に三次元マップ情報332として保存する。
【0036】
特定部323は、車両Cの停車時に作成された三次元マップ情報332における反射源の位置を特定する。
【0037】
物体検出部324は、反射波のドップラシフトに基づいて車室内の物体の動きを検出して、検出結果を記憶部33に検出結果333として保存する。
【0038】
人物検知部325は、車両Cの停車時に、設定情報331、三次元マップ情報332、検出結果333に基づいて一人以上の乗員Mを検知する。また、人物検知部325は、乗員Mを検知した場合、乗員Mに対応する人物信号について、強度の大きいほうから順にラベリングをする。
【0039】
予測部326は、人物検知部325によって検知されたそれぞれの乗員について、乗員の位置と、反射源の位置および反射強度と、に基づいて、乗員に対応するゴーストに関して位置を含む情報を予測してゴースト情報を生成する。つまり、着目するのは、人物信号を抜き出す前の三次元マップ情報で信号強度(以下、単に「強度」とも称する。)の大きい箇所が反射率の高い部分でそれがゴーストの原因となっているという点であるので、乗員の位置と、反射源の位置および反射強度と、に基づいて、ゴーストの発生位置を予測する。以下、マルチパス由来のゴーストと干渉由来のゴーストのそれぞれについての予測部326の処理について説明する。
【0040】
図4は、実施形態におけるマルチパス由来のゴースト発生の説明図である。
図4(a)は車室内の実際の状態を示し、
図4(b)は検知された乗員Mとゴースト(領域A1)を示す。
【0041】
乗員Mで反射した信号が反射率の高い反射源Rに当たってさらに反射してから電波センサ2に戻ると、マルチパス由来のゴーストが発生する。特に、車両Cには多くの金属が含まれていることや、車室内が密閉空間であること等からこの問題が発生しやすい。
【0042】
また、ゴーストの場合の信号は元の信号より信号強度が小さくなるが、元の信号が大きい場合は、検知された人物信号が実際の乗員Mに対応したものなのか、ゴーストなのか区別できないケースがある。なお、
図4では乗員Mを一人しか示していないが、乗員Mは二人以上であってもよい(
図5も同様)。
【0043】
予測部326は、マルチパス由来のゴーストの位置や信号強度を以下のようにして計算する。予測部326は、人物検知部325によって検知されたそれぞれの乗員Mについて、乗員Mの位置から反射源Rの位置までの距離と、反射源Rの位置から電波センサ2までの距離と、に基づいて、送信波の当該乗員Mによる反射波が反射源Rでさらに反射してから電波センサ2に入射する場合に検知されるゴーストの位置と強度を予測し、位置が車室内で強度が人物閾値以上の場合、予測結果を記憶部33にゴースト情報335として保存する。
【0044】
ゴーストの位置については、例えば、乗員Mの位置から反射源Rの位置までの距離と、反射源Rの位置から電波センサ2までの距離と、反射源Rの位置と、電波センサ2の位置と、などに基づいて予測する。また、ゴーストの強度は、乗員Mの信号強度と、反射源Rの信号強度と、反射源Rと電波センサ2の位置関係と、などに基づいて予測する。
【0045】
図5は、実施形態における干渉由来のゴースト発生の説明図である。
図5(a)は車室内の実際の状態を示し、
図5(b)は検知された乗員Mとゴースト(領域A2)を示す。
【0046】
電波センサ2から反射源Rまでの距離と、電波センサ2から乗員Mまでの距離が等しい(ほぼ等しい場合も含む。)と、電波センサ2の受信部22が受信する2つの反射波が干渉し、干渉由来のゴーストが発生する。特に、車両Cには多くの金属が含まれていることや、車室内が密閉空間であること等からこの問題が発生しやすい。
【0047】
また、ゴーストの場合の信号は元の信号より信号強度が小さくなるが、元の信号が大きい場合は、検知された人物信号が実際の乗員Mに対応したものなのか、ゴーストなのか区別できないケースがある。
【0048】
そこで、予測部326は、干渉由来のゴーストの位置や信号強度を以下のようにして計算する。予測部326は、人物検知部325によって検知されたそれぞれの乗員Mについて、電波センサ2から乗員Mの位置までの距離と、電波センサ2から反射源Rの位置までの距離と、などに基づいて、送信波の当該乗員Mによる反射波と送信波の当該反射源Rによる反射波が干渉することで検知されるゴーストの位置を予測する。
【0049】
さらに具体的には、予測部326は、干渉後の信号の強度が人物閾値以上のものをゴーストとする。干渉後の信号の強度は、電波センサ2から反射源Rまでの距離と角度や、電波センサ2から乗員Mまでの距離と角度や、反射源Rにより反射した信号の強度や、乗員Mにより反射した信号の強度などから計算する。
【0050】
図2に戻って、また、予測部326は、予測したゴーストの位置が車両Cの外部である場合、当該ゴーストを処理対象から除外する。なお、ゴーストは信号の反射や干渉を伴い、一般に、人物信号よりも小さいので、ラベリング番号の大きいものほどゴーストの可能性が高い。
【0051】
判定部327は、人物検知部325によって検知されたそれぞれの乗員Mについて、乗員Mの位置と、ゴースト情報に基づいて、当該乗員Mがゴーストか否かを判定する。
【0052】
また、予測部326は、人物検知部325による時系列に複数の検知結果に基づいて、ゴースト情報335として、さらに、ゴーストに対応する乗員Mが動いたときのゴーストの動きを予測するようにしてもよい。その場合、判定部327は、人物検知部325による時系列に複数の検知結果に基づいて、人物検知部325によって検知されたそれぞれの乗員Mについて、当該乗員Nの動きと、ゴースト情報335におけるゴーストの動きの情報と、に基づいて、当該乗員Mがゴーストか否かを判定する。
【0053】
算出部328は、検出結果333等に基づいて乗員Mに関する動きをともなう生体情報を算出する。生体情報の一例は、乗員Mの心拍数である。送信部21からの送信波が乗員Mの胸部で反射する場合、前後に振動する胸部によるドップラー効果による影響が反射波に反映される。よって、算出部328は、反射波の信号から導出したドップラー周波数に基づいて生体情報を算出する。
【0054】
制御部329は、各部321~328が実行する演算以外の演算を実行する。
【0055】
図6は、実施形態の制御装置3による処理を示すフローチャートである。ステップS1において、取得部321は、ADC31から反射波情報を取得する。
【0056】
次に、ステップS2において、作成部322は、反射波情報に基づいて車室内の三次元マップ情報322を作成する。
【0057】
次に、ステップS3において、作成部322は、信号の強度の最大値等に基づいて、反射源閾値を決定する。
【0058】
次に、ステップS4において、特定部323は、反射源閾値を用いて三次元マップ情報332における反射源の位置を特定する。
【0059】
次に、ステップS5において、物体検出部324による車室内の物体検出の後、人物検知部325は、周波数解析により人物信号を抽出する。
【0060】
次に、ステップS6において、人物検知部325は、人物信号の強度の最大値等に基づいて、人物閾値を決定する。
【0061】
次に、ステップS7において、人物検知部325は、乗員Mを検知し、乗員Mに対応する人物信号について、強度の大きいほうから順にラベリングをする。
【0062】
次に、ステップS8において、処理部32はゴースト処理を行う。ここで、
図7は、
図6のステップS8の詳細の第1の例(マルチパス由来のゴーストの場合)を示すフローチャートである。
【0063】
まず、ステップS801~S806において、検知されたすべての人物(人物信号)について、ステップS802~S805の処理を行う。
【0064】
ステップS802において、予測部326は、乗員Mから反射源を経由して電波センサ2に入射する信号の強度と検知位置を算出する。
【0065】
次に、ステップS803において、予測部326は、強度が人物閾値以上か否かを判定し、Yesの場合はステップS804に進み、Noの場合はステップS804、S805をスキップする。
【0066】
次に、ステップS804において、予測部326は、検知位置が車室内か否かを判定し、Yesの場合はステップS805に進み、Noの場合はステップS805をスキップする。
【0067】
ステップS805において、予測部326は、算出結果(ゴーストの位置、強度等)を記憶部33にゴースト情報335として保存する。
【0068】
ステップS801~S806の処理の後、ステップS807~S810において、検知されたすべての人物(人物信号)について、ステップS808、S809の処理を行う。
【0069】
ステップS808において、判定部327は、乗員M(人物)の位置と、ゴースト情報(ゴーストの位置、強度等)に基づいて、乗員Mがゴーストか否かを判定し、Yesの場合はステップS809に進み、Noの場合はステップS809をスキップする。
【0070】
ステップS809において、判定部327は、判定結果を記憶部33に保存する。例えば、人物検知部325による人物の検知結果からゴーストと判定された分を削除する。
【0071】
ステップS807~S810の処理の後、ステップS811において、人物検知部325は、ゴーストだった人物(人物信号)があったか否かを判定し、Yesの場合はステップS812に進み、Noの場合は処理を終了する。
【0072】
ステップS812において、人物検知部325は、残った人物信号について、強度の大きいほうから順に再ラベリングをする。
【0073】
図8は、
図6のステップS8の詳細の第2の例(干渉由来のゴーストの場合)を示すフローチャートである。
【0074】
まず、ステップS821~S827において、検知されたすべての人物(人物信号)について、ステップS822~S826の処理を行う。
【0075】
ステップS822において、予測部326は、電波センサ2から乗員M(人物)までの距離である第1距離を算出する。
【0076】
次に、ステップS803において、予測部326は、電波センサ2までの距離が第1距離と同じ(所定の距離閾値以下である場合も含む。)反射源があるか否かを判定し、Yesの場合はステップS824に進み、Noの場合はステップS824~S826をスキップする。
【0077】
ステップS824において、予測部326は、反射源から電波センサ2に入射する信号について、乗員Mによる反射波(信号)との干渉後の強度を算出する。
【0078】
次に、ステップS825において、予測部326は、強度が人物閾値以上か否かを判定し、Yesの場合はステップS826に進み、Noの場合はステップS826をスキップする。
【0079】
ステップS826において、予測部326は、算出結果(ゴーストの位置、強度等)を記憶部33にゴースト情報335として保存する。
【0080】
ステップS821~S827の処理の後、ステップS828~S831において、検知されたすべての人物(人物信号)について、ステップS829、S830の処理を行う。
【0081】
ステップS829において、判定部327は、乗員M(人物)の位置と、ゴースト情報(ゴーストの位置、強度等)に基づいて、乗員Mがゴーストか否かを判定し、Yesの場合はステップS830に進み、Noの場合はステップS830をスキップする。
【0082】
ステップS830において、判定部327は、判定結果を記憶部33に保存する。例えば、人物検知部325による人物の検知結果からゴーストと判定された分を削除する。
【0083】
ステップS828~S831の処理の後、ステップS832において、人物検知部325は、ゴーストだった人物(人物信号)があったか否かを判定し、Yesの場合はステップS833に進み、Noの場合は処理を終了する。
【0084】
ステップS833において、人物検知部325は、残った人物信号について、強度の大きいほうから順に再ラベリングをする。
【0085】
図6に戻って、ステップS8の後、ステップS9において、算出部328は、ラベリングされた人物信号のそれぞれについて周波数解析し、生体情報を算出する。
【0086】
このようにして、本実施形態の生体検知装置1によれば、乗員Mの位置と、反射源の位置および反射強度と、に基づいて、ゴースト情報を生成しておくことで、検知した人物がゴーストか否かを高精度で判定することができる。つまり、ゴーストによる誤検知を防止し、人物を高精度で検知することができる。
【0087】
また、検知した人物がマルチパス由来のゴーストの場合と干渉由来のゴーストの場合のいずれにも対応することができる。
【0088】
また、ゴーストに対応する乗員Mが動いたときのゴーストの動きを予測しておくことで、検知した人物がゴーストか否かをさらに高精度で判定することができる。
【0089】
また、ゴーストの位置が車両Cの外部である場合、当該ゴーストを除外することで、不要なゴーストを処理対象から除外し、処理を軽くすることができる。
【0090】
(変形例)
図9は、変形例における車両Cの模式図である。車両Cの車室内において、天井ではなくのフロント部分に電波センサ2を設置し、乗員検知と生体情報算出を行ってもよい。
【0091】
図10は、変形例における車両Cの模式図である。車両Cの車室内において、天井やフロント部分ではなくそれぞれの座席Sの内部に電波センサ2を設置し、乗員検知と生体情報算出を行ってもよい。
【0092】
図11は、変形例における電波センサ2の設置の様子の模式図である。浴室の浴槽Bの上の天井部分に電波センサ2を設置し、乗員検知と生体情報検知を行ってもよい。そうすれば、例えば、入浴中の老人に急病が発生した場合に、その老人の脈波、呼吸、体動に所定の変化があるときは、その急病を高精度に検知できる。
【0093】
なお、制御装置3で実行されるプログラムは、インストール可能な形式または実行可能な形式のファイルでCD-ROM、CD-R、メモリカード、DVD(Digital Versatile Disk)、フレキシブルディスク(FD)等のコンピュータで読み取り可能な記憶媒体に記憶されてコンピュータプログラムプロダクトとして提供されるようにしてもよい。また、当該プログラムを、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供するようにしてもよい。また、当該プログラムを、インターネット等のネットワーク経由で提供または配布するようにしてもよい。
【0094】
以上、本発明の実施形態を説明したが、上記実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。この実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0095】
例えば、車室内の反射源のうち、その反射源と電波センサ2の間に別の反射源があるものについては、ゴースト発生の原因となりにくいので、ゴースト計算の対象から外してもよい。
【0096】
また、検知された人物信号のうち、強度が最大の人物信号については、ゴーストである可能性が低いので、ゴースト計算の対象から外してもよい。
【符号の説明】
【0097】
1…生体検知装置、2…電波センサ、3…制御装置、21…送信部、22…受信部、31…ADC、32…処理部、33…記憶部、321…取得部、322…作成部、323…特定部、324…物体検出部、325…人物検知部、326…算出部、327…制御部、331…設定情報、332…三次元マップ情報、333…検出結果、334…生体情報、C…車両、M…乗員、S…座席。