(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022076411
(43)【公開日】2022-05-19
(54)【発明の名称】保存システム
(51)【国際特許分類】
B65D 81/20 20060101AFI20220512BHJP
【FI】
B65D81/20 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020186830
(22)【出願日】2020-11-09
(71)【出願人】
【識別番号】517065301
【氏名又は名称】株式会社MUSI サイエンス
(74)【代理人】
【識別番号】100177220
【弁理士】
【氏名又は名称】小木 智彦
(72)【発明者】
【氏名】吉川 辰美
(72)【発明者】
【氏名】吉川 雄一
【テーマコード(参考)】
3E067
【Fターム(参考)】
3E067AA11
3E067AB99
3E067BA01A
3E067BB08A
3E067BB14A
3E067BC06A
3E067EE25
3E067FA01
3E067FC01
3E067GB13
3E067GD10
(57)【要約】
【課題】気圧変化や温度変化により、密閉された内部の圧力変化を調整可能な保存システムを提供すること。
【解決手段】保存システム1は、内部に気密空間が形成されたケース2と、ケース2の内部に気体を給気する側に設けられた給気部10と、ケース2の内部から排気された気体を、給気部10に戻す排気部20と、を備え、排気部20は、排気部20における内圧を調圧する調圧部22を有し、調圧部22は、外部の気圧である外圧と内圧との差に応じて動作し、内圧と外圧との差を減ずる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に気密空間が形成されたケースと、
前記ケースの内部に気体を給気する側に設けられた給気部と、
前記ケースの内部から排気された気体を、前記給気部に戻す排気部と、を備え、
前記排気部は、前記排気部における内圧を調圧する調圧部を有し、
前記調圧部は、外部の気圧である外圧と前記内圧との差に応じて動作し、前記内圧と前記外圧との差を減ずる保存システム。
【請求項2】
前記調圧部は、
第1吸排気部を有し、内部に気体を貯留する第1貯留部と、
第2吸排気部を有し、前記第1貯留部の内部に配置され、内部に気体を貯留する第2貯留部と、を有し、
前記第1吸排気部には、前記排気部側又は外部の大気側のいずれか一方に接続され、
前記第2吸排気部には、前記排気部側又は外部の大気側のいずれか他方に接続され、
前記第2貯留部は、前記第1貯留部内部の気圧と前記第2貯留部内部の気圧との差に応じて、内部空間の大きさが変動する請求項1に記載の保存システム。
【請求項3】
前記調圧部は、第1調圧部と、第2調圧部と、を有し、
前記第1調圧部は、
前記第1吸排気部が、前記排気部側に接続され、
前記第2吸排気部が、外部の大気側に接続され、
前記第2調圧部は、
前記第1吸排気部が、外部の大気側に接続され、
前記第2吸排気部が、前記排気部側に接続されている請求項2に記載の保存システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保存システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、文化財等の保存対象物の保存は、脱酸素剤と保存物を酸素バリアー袋に入れたり、窒素ガス発生装置により発生した窒素ガスを、対象物を収容したケースに注入したりすることにより行われていた。
【0003】
また、現在、窒素ガス発生装置を用いた保存ケースの多くは、保存ケース内外の気圧差が考慮されていないエアータイト方式であり、完全密閉式ではない。このため、空気交換率が10%前後であり、保存ケース内外の気圧差により、汚染された外気が常に保存ケース内に流入しているのが現状である。
【0004】
このようなエアータイト方式の保存ケースに、窒素ガス発生装置やガスボンベで、窒素ガス等の不活性ガスを、常に保存ケース内に送り込み正圧状態に保ち酸素の流入を防いでいるのが現状である。
【0005】
更に、電源が必要な窒素ガス発生装置は、災害等により長期に停電になった場合に、保存ケース内の酸素濃度の維持が困難である。
【0006】
このため、発明者は、内部に気密空間が形成されたケースと、ケースの内部に気体を給気する側に設けられた給気側液封部と、ケースの内部の気体を排気する側に設けられた排気側液封部と、を備え、給気側液封部は、液体が貯留され、給気側液体部分と給気側気体部分とが形成された給気側タンクを有し、給気側タンクは、一端から外気が流入する外気菅の他端が、給気側液体部分内に配置され、ケースの内部側へ向かう気体が挿通する給気側挿通菅の一端が、給気側気体部分内に配置され、排気側液封部は、液体が貯留され、排気側液体部分と排気側気体部分とが形成された排気側タンクを有し、排気側タンクは、ケースの内部側から排気された気体が一端から流入する排気菅の他端が、排気側液体部分内に配置され、外部に向かう気体が挿通する排気側挿通菅の一端が、排気側気体部分内に配置されている液封システムを提案した(特許文献1参照)。
このような液封システムによれば、電源により駆動する動力や、高圧ボンベを用いることなく、ケース内外の気圧や温度差による差圧で、ケース内に封じ込めたガスを循環させることが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、対象物を収容したケース内を無酸素にするため、ケースを含む保存システムにおいて、全体を密閉し、ボンベによりガスを供給するボンベ式が採用される場合がある。
このようなボンベ式の保存システムでは、気圧変化や温度変化により、密閉された内部の圧力変化を調整する必要がある。
【0009】
本発明は、気圧変化や温度変化により、密閉された内部の圧力変化を調整可能な保存システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1) 内部に気密空間が形成されたケースと、
前記ケースの内部に気体を給気する側に設けられた給気部と、
前記ケースの内部から排気された気体を、前記給気部に戻す排気部と、を備え、
前記排気部は、前記排気部における内圧を調圧する調圧部を有し、
前記調圧部は、外部の気圧である外圧と前記内圧との差に応じて動作し、前記内圧と前記外圧との差を減ずる保存システム。
【0011】
(1)の発明によれば、保存システムは、ケースと、給気部と、排気部と、を備える。
ケースは、内部に気密空間が形成されている。
給気部は、ケースの内部に気体を給気する側に設けられている。
排気部は、ケースの内部から排気された気体を、給気部に戻す。
そして、排気部は、排気部における内圧を調圧する調圧部を有する。
調圧部は、外部の気圧である外圧と内圧との差に応じて動作し、内圧と外圧との差を減ずる。
【0012】
これにより、気圧変化や温度変化により、保存システムの内圧が変化した場合、排気部の調圧部が、外部の気圧である外圧と内圧との差に応じて動作し、内圧と外圧との差を減ずる。
したがって、気圧変化や温度変化により、密閉された内部の圧力変化を調整可能な保存システムを提供できる。
【0013】
(2) 前記調圧部は、
第1吸排気部を有し、内部に気体を貯留する第1貯留部と、
第2吸排気部を有し、前記第1貯留部の内部に配置され、内部に気体を貯留する第2貯留部と、を有し、
前記第1吸排気部には、前記排気部側又は外部の大気側のいずれか一方に接続され、
前記第2吸排気部には、前記排気部側又は外部の大気側のいずれか他方に接続され、
前記第2貯留部は、前記第1貯留部内部の気圧と前記第2貯留部内部の気圧との差に応じて、内部空間の大きさが変動する(1)に記載の保存システム。
【0014】
(2)の発明によれば、調圧部は、第1貯留部と、第2貯留部と、を有する。
第1貯留部と、第1吸排気部を有し、内部に気体を貯留する。
第2貯留部と、第2吸排気部を有し、第1貯留部の内部に配置され、内部に気体を貯留する。
第1吸排気部には、排気部側又は外部の大気側のいずれか一方に接続されている。
第2吸排気部には、排気部側又は外部の大気側のいずれか他方に接続されている。
そして、第2貯留部は、第1貯留部内部の気圧と第2貯留部内部の気圧との差に応じて、内部空間の大きさが変動する。
【0015】
これにより、第1貯留部は、第1吸排気部と連通する空間と、第2吸排気部と連通し第2貯留部で画された空間とを有する。そして、第2貯留部で画された空間は、第1貯留部内部の気圧と第2貯留部内部の気圧との差に応じて、内部空間の大きさが変動する。このため、第1貯留部内部の気圧が、第2貯留部内部の気圧より大きい場合には、第2貯留部で画された空間は小さくなり、一方、第1貯留部内部の気圧が、第2貯留部内部の気圧より小さい場合には、第2貯留部で画された空間は大きくなる。すなわち、第1貯留部内部の気圧が、第2貯留部内部の気圧より大きい場合には、第1貯留部における第1吸排気部と連通する空間は大きくなり(当該空間の気圧が下がり)、一方、第1貯留部内部の気圧が、第2貯留部内部の気圧より小さい場合には、第1貯留部における第1吸排気部と連通する空間は小さくなる(当該空間の気圧が大きくなる)。
【0016】
よって、気圧変化や温度変化により、保存システムの内圧が変化した場合、内圧と外圧の差で、第2貯留部が動作して、内圧と外圧との差を減ずるので、動力を用いることなく、気圧変化や温度変化により、密閉された内部の圧力変化を調整可能な保存システムを提供できる。
【0017】
(3) 前記調圧部は、第1調圧部と、第2調圧部と、を有し、
前記第1調圧部は、
前記第1吸排気部が、前記排気部側に接続され、
前記第2吸排気部が、外部の大気側に接続され、
前記第2調圧部は、
前記第1吸排気部が、外部の大気側に接続され、
前記第2吸排気部が、前記排気部側に接続されている(2)に記載の保存システム。
【0018】
(3)の発明によれば、調圧部は、第1調圧部と、第2調圧部と、を有する。
第1調圧部は、
第1吸排気部が、排気部側に接続され、
第2吸排気部が、外部の大気側に接続されている。
第2調圧部は、
第1吸排気部が、外部の大気側に接続され、
第2吸排気部が、排気部側に接続されている。
【0019】
これにより、保存システムの内圧が、外圧(大気圧)に対して負圧になった場合には、第1調圧部の第2貯留部が大きくなることで、内圧と外圧との差を減じ、一方、保存システムの内圧が、外圧(大気圧)に対して正圧になった場合には、第2調圧部の第2貯留部が大きくなることで、内圧と外圧との差を減ずることが可能となる。
【0020】
よって、保存システムの内圧が外に対して、負圧か正圧かで、それぞれ別の調圧部で、内圧と外圧との差を減ずることができるので、気圧変化や温度変化により、密閉された内部の圧力変化をより繊細に調整可能な保存システムを提供できる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、気圧変化や温度変化により、密閉された内部の圧力変化を調整可能な保存システムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の実施形態に係る保存システム1の概要を説明する図である。
【
図2】前記実施形態に係るケース台に収容された構成を模式的に示す図である。
【
図3】前記実施形態に係る第1調圧部の構成を模式的に示す図である。
【
図4】前記実施形態に係る第2調圧部の構成を模式的に示す図である。
【
図5】前記実施形態に係るゲルバルブの構成を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態について説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。また、以下の実施形態の説明にあたって、同一構成要件については同一符号を付し、その説明を省略もしくは簡略化する。
【0024】
まず、前記実施形態に係る保存システム1の構成について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る保存システム1の概要を説明する図である。
図1は、保存システム1の前面図である。
【0025】
本実施形態に係る保存システム1は、文化財等の保存対象物を展示品に悪影響を与えることなく展示品に殺虫・防虫処理を施すことができ、展示品の酸化や湿度による劣化も防止しつつ保存する。
保存システム1は、ケース2と、ケース2が載置されたケース台3と、を備える。
【0026】
ケース2は、透明のガラスやアクリル板が中空の箱形状に形成され、ケース台3に載置されることで、内部に気密空間が形成される。この気密空間に保存対象物が収容される。
このようにケース2を透明のガラスやアクリル板で形成することで、保存システム1を、例えば、博物館等に設置される展示ケースとすることができる。しかしながら、保存システム1は、展示ケースに限らず、酸化や湿度による劣化を防止するための任意の保存ケースに適用することが可能である。
【0027】
図2は、前記実施形態に係るケース台に収容された構成を模式的に示す図である。
保存システム1は、ケース台3の内部において、センサ30を介してケース2の内部に連通し、ケース2の内部に、気体を給気する側に設けられた給気部10と、センサ30を介してケース2の内部に連通し、ケース2の内部から排気された気体を、給気部10に戻す排気部20と、を備える。
【0028】
給気部10は、ボンベ11と、バッファタンク12と、バルブ13と、を備える。
ボンベ11は、ガスを貯留している。本実施形態において、ガスは、例えば、物質への影響が少ないガスが望ましく、例えば、窒素ガス、アルゴンガス、炭酸ガス等を用いることができる。
【0029】
バッファタンク12は、ボンベ11とレギュレータを介して、通気管で接続され、保存システム1内を流通するガスを貯留する。バッファタンク12は、内部に、酸素吸着材や、調湿材や、汚染物質吸着材等が配置されていてもよい。これにより、バッファタンク12に流入したガスに含まれる酸素や、水分や、汚染物質を除去することができる。
【0030】
バルブ13は、バッファタンク12からケース2に延びる通気管に設けられ、バッファタンク12からケース2に供給するガスの流量を調節する。
【0031】
また、給気部10は、ケース2に対するバッファタンク12の位置に応じて、通気装置14を備えてもよい。通気装置14は、バッファタンク12からケース2に延びる通気管に設けられ、例えば、エアーポンプや、ファン等で構成され、ケース2内に、バッファタンク12に貯留されたガスを送り出す。
【0032】
なお、図示は省略したが、給気部10は、バッファタンク12からケース2に供給されているガスの量や、保存システム1内部の気圧等を表示する表示盤を備えてもよい。
【0033】
排気部20は、ケース2の内部に連通し、バッファタンク12まで延びる排気側通気管21と、調圧部22と、ゲルバルブ23と、を備える。
排気側通気管21は、ケース2内のガスを、バッファタンク12に戻す管であり、ケース2内部におけるガスの対流状態に応じた位置に設けるのが望ましい。排気側通気管21は、1ヶ所でもよいし、複数箇所設けてもよい。
【0034】
調圧部22は、排気側通気管21に接続され、外部の気圧である外圧(大気圧)と、保存システム1の内部の気圧である内圧との差に応じて動作し、内圧と外圧との差を減ずる。調圧部22は、第1調圧部221と、第2調圧部222と、を有する。
【0035】
図3は、前記実施形態に係る第1調圧部の構成を模式的に示す図である。
第1調圧部221は、主に、内圧が外圧に対して負圧の場合に動作し、第1貯留部2211と、第2貯留部2212と、排気側通気管21に接続された連通管2213と、を備える。
【0036】
第1貯留部2211は、タンク形状に形成され、内部に気体(保存システム1内のガス)を貯留し、連通管2213が接続され第1吸排気部2211aを有する。
【0037】
第2貯留部2212は、第1貯留部2211の内部に配置され、内部に気体(保存システム1外の空気)を貯留し、外部の大気側に接続され、ナノフィルターが配置された第2吸排気部2212aを有する。
第2貯留部2212は、内部の容積が変動可能なベローズ形状に形成され、第1貯留部2211内部の気圧(保存システム1の内圧)と第2貯留部2212内部の気圧(保存システム1外の気圧(大気圧))との差に応じて、内部空間の大きさが変動する。
【0038】
外部の気圧である外圧(大気圧)に対し、保存システム1の内圧が負圧の場合、第1調圧部221は、第1貯留部2211内部の気圧が、第2貯留部2212内部の気圧より小さくなり、第2貯留部2212で画された空間は大きくなり(例えば、
図3に示すように第2貯留部2212が伸びる。)、内圧と外圧が平衡するように動作する。
【0039】
図4は、前記実施形態に係る第2調圧部の構成を模式的に示す図である。
第2調圧部222は、主に、内圧が外圧に対して正圧の場合に動作し、第1貯留部2221と、第2貯留部2222と、排気側通気管21に接続された連通管2223と、を備える。
【0040】
第1貯留部2221は、タンク形状に形成され、内部に気体(保存システム1外の空気)を貯留し、外部の大気側に接続された第1吸排気部2221aを有する。
【0041】
第2貯留部2222は、第1貯留部2221の内部に配置され、内部に気体(保存システム1内のガス)を貯留し、連通管2223が接続され、ナノフィルターが配置された第2吸排気部2222aを有する。
第2貯留部2222は、内部の容積が変動可能なベローズ形状に形成され、第1貯留部2221内部の気圧(保存システム1外の気圧(大気圧))と第2貯留部2222内部の気圧(保存システム1の内圧)との差に応じて、内部空間の大きさが変動する。
【0042】
外部の気圧である外圧(大気圧)に対し、保存システム1の内圧が正圧の場合、第2調圧部222は、第1貯留部2221内部の気圧が、第2貯留部2222内部の気圧より小さくなり、第2貯留部2222で画された空間は大きくなり(例えば、
図4に示すように第2貯留部2212が伸びる。)、内圧と外圧が平衡するように動作する。
【0043】
なお、本実施形態では、調圧部22を、内圧が外圧に対して負圧の場合に動作する第1調圧部221と、内圧が外圧に対して正圧の場合に動作する第2調圧部222とで、構成したが、これに限らず、いずれか一方の調圧部のみを設け、内圧が外圧に対して、正圧又は負圧のいずれの場合も動作させてもよい。
【0044】
図2に戻って、ゲルバルブ23は、第1ゲルバルブ23Aと、第2ゲルバルブ23Bと、を有する。
図5は、前記実施形態に係るゲルバルブの構成を模式的に示す図である。
ゲルバルブ23は、ゲル収容部231と、気体収容部232と、を備える。
【0045】
ゲル収容部231は、ゲル(例えば、フッ素・シリコンゲル)を収容し、ゲルバルブ23の外部と内部を連通し、ナノフィルターが配置された連通部231aを有する。
気体収容部232は、連通部231aからゲル収容部231に流入し、ゲル収容部231を通過した気体を収容し、連通部232aを有する。
【0046】
図2に示すように、第1ゲルバルブ23Aは、連通部231aが排気側通気管21に接続されている。第2ゲルバルブ23Bは、連通部232aが排気側通気管21に接続されている。
【0047】
ゲルバルブ23は、調圧部の一部として機能し、例えば、調圧部22だけで、内圧と外圧との差を減じきれない場合に機能する。例えば、内圧が外圧に対して正圧の場合に、第2調圧部222の動作だけで、内圧と外圧が平衡状態とならないときには、第1ゲルバルブ23Aから、保存システム1内部のガスが、外部に放出される。一方、内圧が外圧に対して負圧の場合に、第1調圧部221の動作だけで、内圧と外圧が平衡状態とならないときには、第2ゲルバルブ23Bから、外部の空気が、保存システム1内部に供給される。
【0048】
このように、調圧部の一部として、更に、ゲルバルブ23を設けることで、気圧の変化が大きい場合に、外圧と内圧の差から、保存システム1内部の気密が崩壊するのを防止することが可能となる。
【0049】
なお、ゲルバルブ23は、保存システム1の安全性をより高めるものであり、省略することもできる。また、本実施形態では、ゲルバルブ23を、内圧が外圧に対して正圧の場合に動作する第1ゲルバルブ23Aと、内圧が外圧に対して負圧の場合に動作する第2ゲルバルブ23Bとで、構成したが、これに限らず、いずれか一方のみを設け、内圧が外圧に対して正圧又は負圧のいずれの場合も動作させてもよい。
【0050】
図2に戻って、センサ30は、ケース2内の温度、内圧、外気温、外気圧等を検知する。なお、例えば、バルブ13を電磁弁で構成し、バルブ13を制御する制御部を設け、この制御部により、センサ30で検知した内圧と外圧との差に応じて、バルブ13の開閉を制御してもよい。
【0051】
本実施形態の保存システム1によれば、以下の作用効果を奏する。
従来の大気放出型の保存ケースは、通常、エアータイト式展示ケースでかなりの量のガスを放出しないと無酸素雰囲気には無理があった。具体的には、従来、少しずつの放出方法で無酸素を維持するのに3週間に1000L~半年に1000Lのガスを消費するが、本実施形態の保存システム1では1000Lで1年~2年維持出来る。このため、従来高価で使えなかった、いかなる物質にも影響を与えないアルゴンガスも使える。
【0052】
本実施形態の保存システム1は、ボンベ式であり、従来のエアータイト式と違い完全密閉に近い密閉型向きであり、密閉に近い機密性の高い保存展示ケース対応から機密性のあるエアータイト迄、内圧を調圧することが可能である。すなわち、気圧変化及び気温の変化によるガスのボリュームの調整を、調圧部22やゲルバルブ23を設けることで、より柔軟に内圧を調整できるので、ガスの排出を抑えることができ、急激な気圧及び気温の変化で、急激に外圧が変化が生じた時、安全面を考慮して直ちに吸排することが可能となる。
また、調圧部22やゲルバルブ23は、内圧と外圧の差により動作するので、調圧のための電源等の必要がないので災害時や電気事情の悪い地域でも活用できる。
【0053】
また、バルブは安全に配慮し、ゲルバルブを採用した。このため、従来の金属製、機械的作動バルブに代わりに金属劣化や機械的作動不良を起こさない。また、ゲルバルブは、液体バルと違い真逆にしてもこぼれないので、設置位置の自由度が向上する。
【0054】
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
【符号の説明】
【0055】
1 保存システム
2 ケース
3 ケース台
10 給気部
11 ボンベ
12 バッファタンク
13 バルブ
14 通気装置
20 排気部
21 排気側通気管
22 調圧部
23 ゲルバルブ
23A 第1ゲルバルブ
23B 第2ゲルバルブ
30 センサ
221 第1調圧部
222 第2調圧部
231 ゲル収容部
231a 連通部
232 気体収容部
232a 連通部