(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022076424
(43)【公開日】2022-05-19
(54)【発明の名称】関節サポーター
(51)【国際特許分類】
A41D 13/06 20060101AFI20220512BHJP
A61F 5/02 20060101ALI20220512BHJP
A41D 13/08 20060101ALI20220512BHJP
A61F 13/06 20060101ALI20220512BHJP
A61F 13/10 20060101ALI20220512BHJP
A63B 71/08 20060101ALI20220512BHJP
【FI】
A41D13/06 105
A61F5/02 N
A41D13/06
A41D13/08
A61F13/06 A
A61F13/10 S
A63B71/08 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020186867
(22)【出願日】2020-11-09
(71)【出願人】
【識別番号】517250790
【氏名又は名称】株式会社からだクリエイト
(74)【代理人】
【識別番号】100152700
【弁理士】
【氏名又は名称】泉谷 透
(72)【発明者】
【氏名】森村 良和
【テーマコード(参考)】
3B011
4C098
【Fターム(参考)】
3B011AA11
3B011AA13
3B011AA14
3B011AB18
3B011AC17
4C098AA01
4C098AA02
4C098BB09
4C098BB12
4C098BC03
4C098BC17
4C098BD02
(57)【要約】
【課題】
膝、肘、足首のいずれにも装着可能で、身体の安定性や運動時の筋出力の向上を図ることができる、簡易な構造の関節サポーターを提供する。
【解決手段】
身体の膝、肘、足首のいずれかに装着可能な関節サポータであって、伸縮性を有する第1のベルト、第2のベルト、第3のベルトの3本のベルトそれぞれの一端同士、及び、他端同士をそれぞれ第1の接合部、第2の接合部で接合することで一体化してなり、前記第3ベルト、前記第2ベルト、前記第1ベルトの順に緊縮力が強く、前記第1ベルトから第3ベルトのすべて、またはいずれかに長さ調節機構を設けてなり、前記第1の接合部と第2の接合部の少なくともいずれか一方の内側面に突起を設けたことを特徴とする関節サポーター。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
身体の膝、肘、足首のいずれかに装着可能な関節サポータであって、伸縮性を有する第1のベルト、第2のベルト、第3のベルトの3本のベルトそれぞれの一端同士、及び、他端同士をそれぞれ第1の接合部、第2の接合部で接合することで一体化してなることを特徴とする関節サポーター。
【請求項2】
前記第1のベルトの緊縮力が、前記第2のベルト及び前記第3のベルトの緊縮力よりも強いことを特徴とする、請求項1に記載の関節サポーター。
【請求項3】
前記第3のベルト、前記第2のベルト、前記第1のベルトの順に緊縮力が強くなるように構成したことを特徴とする、請求項2に記載の関節サポーター。
【請求項4】
前記第1のベルトから第3のベルトのすべて、またはいずれかに長さ調節機構を設けてなることを特徴とする、請求項1から請求項3のいずれかに記載の関節サポーター。
【請求項5】
前記第1の接合部と第2の接合部の少なくともいずれか一方の内側面に突起を設けたことを特徴とする、請求項1から請求項4のいずれかに記載の関節サポーター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人体の膝、肘、足首のいずれかに装着可能な関節サポーターに関する。より具体的には、伸縮性を有する3本のベルトのそれぞれの一端同士、他端同士を接合して一体化して構成したサポーターを関節に装着することで、関節の屈伸に関わる任意の屈筋または伸筋に対してベルトの緊縮力による刺戟を与え、刺戟が惹起する反射反応によって筋肉の活性化を図り、身体の安定性や運動時の筋出力の向上を図るものである。
【0002】
本発明に係る関節サポーターは、関節や特定の筋肉を覆って固定、保護あるいは圧迫(加圧)することにより疾患の改善や機能回復を支援することを目的とする従来技術のサポーターとは異なり、様々なスポーツごとに要求される膝、肘、足首の関節の屈伸運動ごとに、装着の仕方によって必要な筋肉に個別に刺戟を与えることで、積極的に身体姿勢の改善や身体機能の向上を目的とする。
【背景技術】
【0003】
身体の姿勢の改善等を目的とするサポーター、特に膝用のサポーターについては、たとえば特許文献1~3に開示されているような先行技術が知られている。しかし、それらは膝関節の動揺(ずれ)の抑制、関節周辺の筋力の補助、膝関節の軟骨の負担軽減といった作用によって膝関節疾患の患者の日常生活上の行動を支援する、いわば消極的な効果を期待するものである。
【0004】
特許文献1に開示されている膝関節用サポーターは、大腿部に装着される上部ベルトと、ふくらはぎ部に装着される伸縮自在な下部ベルトと、上部ベルトと下部ベルトに連結され、膝の表面および裏面のうちいずれかを覆うように設けられた伸縮自在な中央部とを備え、中央部には膝の折り曲げ方向に対して交差する方向に延びる複数のスリット状の切り込み部を設けた構成である。該膝関節用サポーターは、かかる構成により膝蓋骨の左右方向のずれを有効に防止し、膝関節の屈曲角に関係なく均一な圧迫を行えるが、膝関節の疾患がある部位を保護したり、膝関節の損傷を防止する効果を期待するものであって、運動の種類に応じた特定の筋肉の筋出力向上といった積極的な効果を期待するものではない。
【0005】
特許文献2に開示されている膝関節用サポーターは、伸縮性を有する第1ベルトに第2ベルトの基端部を所定の角度で取り付けた構成である。第1ベルトを大腿部に外旋方向から引っ張りながら巻締め、第2ベルトをその基端部の第1ベルトに対する取付角度に従って下方に引っ張り、更に下腿部の内旋方向から巻締めることで、大腿骨が内側に脛骨が外側に捻れないように逆方向に引き戻す力を働かせる。すわなち、この膝関節用サポーターは膝関節を適切な位置関係に機械的に保持することで、内側側副靱帯捻挫による膝関節の内側の痛みを緩和して再発を予防するものであり、やはり、運動の種類に応じた特定の筋肉の筋出力向上といった積極的な効果を期待するものではない。
【0006】
特許文献3に開示されている膝専用サポーターは、膝の上部と下部にそれぞれ巻きつけて固定する第1、第2の固定ベルトと、両固定ベルトの両端近傍にそれぞれ接合され膝の前面を覆うように固定する第1、第2の中間ベルトと、両固定ベルトの一端近傍に接合され、両中間ベルトに重ねてやはり膝の前面を覆う伸縮性のある第1、第2の山形ベルトから構成される。しかし、かかる膝専用サポーターは、膝蓋骨全体と膝蓋骨周辺の筋肉を適度に圧迫し、特に膝の内側の筋肉を他の部分よりも強く圧迫することで、O脚者等の変形性膝関節症患者の膝関節の動揺の抑制、関節周辺の筋力の補助、膝関節の軟骨の負担軽減を図るものであり、やはり、運動の種類に応じた特定の筋肉の筋出力向上といった積極的な効果を期待するものではない。
【0007】
一方、足首用のサポーターの先行技術としては、特許文献4に開示されている血行促進バンドがある。しかし、これは超極少の磁石を設けた弾力性のあるバンドを、両端に設けた面ファスナーによって足首に着脱可能とした構成である。しかし、該血行促進バンドは、名称のとおり、足裏の土踏まずのツボやアキレス腱を刺戟し、磁石の磁力によって刺激することで血行促進を図るものであり、やはり、運動の種類に応じた特定の筋肉の筋出力向上といった積極的な効果を期待するものではない。
【特許文献1】特開2002―65711号公開公報
【特許文献2】特開2006-6375号公開公報
【特許文献3】特開2009-72304号公開公報
【特許文献4】特開平11-76362号公開公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本願発明は、基本的には健常者の膝、肘、足首に装着することにより、それぞれの関節の屈伸に関わる任意の屈筋または伸筋に対して刺戟を与え、刺戟が惹起する反射反応、すなわち体性反射によって筋肉の活性化を図り、身体の安定性や運動時の筋出力の向上を積極的に図ろうとするものである。その点において、本願発明は、疾患のある関節の保護や機械的な矯正、ツボの刺戟や筋肉の血行促進の効果を目的とした従来技術に係るサポータとは、対象とする装着者や期待する効果が根本的に異なるものである。
【0009】
人体には多種の反射(生理反射)が備わっているが、その機能からは、自律神経系を介して内臓筋を収縮させたり腺の分泌を促進したりする内臓反射(自律神経反射)と、骨格筋を収縮させる体性反射とに大別される。木槌で膝蓋腱を叩くと下腿が跳ね上がる膝蓋腱反射は代表的な体性反射の一つであるが、皮膚や筋肉が一定の刺戟を受けると、刺戟を受けた部位を刺戟から遠ざけるように筋肉が収縮する反応も体性反射である。
【0010】
体性反射を惹起する刺戟は、いわゆるツボを押すといった刺戟のような強い押圧ではなく、皮膚や筋肉の感覚受容器官(メカノレセプター)が、異物が一定の力で接触していることを検知することで、その部位の筋肉が無意識に活性化して収縮する。特に、膝、肘、足首といった部位には、関節の屈伸に関わる筋肉の腱や支配神経が浅い位置に集中しているため、比較的小さな刺戟で体性反射を惹起することができる。また、関節に対して刺戟を与える位置を変えることにより、任意の屈筋または伸筋に体性反射を惹起することができ、それぞれ異なる運動に必要な筋肉の活性化を図ることができる。
【0011】
本発明は、かかる原理に基づき、膝、肘、足首のいずれにも装着可能で、身体の安定性や運動時の筋出力の向上を図ることができる、簡易な構造の関節サポーターを提供することを解決課題とするものである。
【0012】
上記課題を解決するために、本発明の請求項1に記載した関節サポーターは、身体の膝、肘、足首のいずれかに装着可能な関節サポータであって、伸縮性を有する第1のベルト、第2のベルト、第3のベルトの3本のベルトそれぞれの一端同士、及び、他端同士をそれぞれ第1の接合部、第2の接合部で接合することで一体化してなることを特徴とする。3本のベルトの材質は伸縮性を有する限り特に限定されず、帯状のゴム、あるいは芯にゴムを織り込んだナイロン又はポリエステル製のゴム糸を帯状に織ったものであってもよい。また、3本のベルトの接合方法も任意であり、縫い合わせ、熱溶着、あるいは、接合部材を介した接合であってもよい。なお、接合部におけるベルトの開き角度は、概ね120°間隔とする。
【0013】
各ベルトの緊縮力は、装着部位を締め付けるような強さは必要ではなく、あくまで皮膚や筋肉(主に腱)に異物の当接を感知させて体性反射を惹起する程度で十分であり、最も緊縮力の強い第1ベルトでさえ、従来技術に係るサポーターのように筋肉を圧迫したり、血流を制限したりするものではない。
【0014】
次に、請求項2に記載した発明は、請求項1に記載した関節サポーターであって、前記第1のベルトの緊縮力が、前記第2のベルト及び前記第3のベルトの緊縮力よりも強いことを特徴とする。
【0015】
次に、請求項3に記載した発明は、請求項2に記載した関節サポーターであって、前記第3のベルト、前記第2のベルト、前記第1のベルトの順に緊縮力が強くなるように構成したことを特徴とする。
【0016】
なお、個々のベルトの緊縮力は任意であり、装着者の体格(関節の大きさ)に合わせて適宜設定可能である。また、3本のベルトの緊縮力を異ならせることで、関節に装着した際には最も緊縮力の強い第1ベルトを当接させた部位の皮膚や筋肉に対して、選択的に体性反射を惹起させることができる。
【0017】
次に、請求項4に記載した発明は、請求項1から請求項3のいずれかに記載した関節サポーターであって、前記第1のベルトから第3のベルトのすべて、またはいずれかに長さ調節機構を設けてなることを特徴とする。長さ調節機構の構造や位置は特に限定されず、バックル等の部材を用いてもよいし、面ファスナーによる重ね合わせの位置によってベルトの長さを調節するようにしてもよい。
【0018】
次に、請求項5に記載した発明は、請求項1から請求項4のいずれかに記載の関節サポーターであって、前記第1の接合部と第2の接合部の少なくともいずれか一方の内側面に突起を設けたことを特徴とする。突起の大きさや材質は特に限定されないが、関節の側面に当接させた際に異物感を感じる程度の小さなものでよく、たとえばシリコン製の半球あるいは平たい三角錐を接合部の内側面に接着したものが好適である。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る関節サポーターは、3本の伸縮性を有するベルトを結合しただけの簡易な構成であるが、膝、肘、足首のいずれにも適用可能である。そして、装着者は、第1ベルトを当接させる部位を適宜選択して装着することで、運動の特性やスポーツ競技の種類に応じて、関節の屈伸に関する任意の筋肉の筋出力を向上させることができる。また、本発明に係る関節サポーターは、血流や筋肉の動きを阻害しないため、従来技術のサポーターに比べ運動時の筋肉温を低下させたり、運動を制約することもない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について図を用いて説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る関節サポーターSの斜視図であり、
図2は同側面図である。関節サポーターSは、第1ベルトB1、第2ベルトB2、第3ベルトB3の3本のベルトの、それぞれの一端同士、及び、他端同士を接合部J1、J2で接合することで一体化している。3本のベルトB1、B2、B3は、接合部J1、J2において、それぞれ120°間隔の開き角度で接合されている。また、接合部J1の内側面には突起Pが設けられている。
【0021】
3本のベルトB1、B2、B3はいずれも、芯にゴムを織り込んだナイロン又はポリエステル製のゴム糸を帯状に平織した伸縮性のあるベルトで、2枚に分かれた面ファスナー付のベルトを着脱可能に重ねて(F1~F3)長さを任意に調節可能としている。また、突起Pは、接合部J1の内側面にシリコン製の半球を接着して設けている。
【0022】
3本のベルトB1、B2、B3の緊縮力は、第3ベルト、前記第2ベルト、前記第1ベルトの順に強くなるように構成している。
【0023】
関節サポーターSは、3本のベルトB1、B2、B3の長さを面ファスナーによって適宜調節することで、膝、肘、足首のいずれの関節にも装着可能である。その際、最も緊縛力の強い第1ベルトB1を関節廻りのどの部位に当接させるように装着するかによって、得られる効果が異なる。なお、関節サポーターSは、基本的に突起Pが装着する関節の外側面に当接する方向に装着する。以下では、
図3~
図11を用いて、装着する関節ごと、第1ベルトB1を当接させる部位ごとに、関節サポーターSの作用・効果について、順次説明する。なお、膝に装着する場合には、突起Pが膝関節の外側に当接するように装着する。
【0024】
(1)膝に装着した場合
(1-1)膝関節の裏側に第1ベルトを当接させた場合(
図3)
(作用)
太腿裏のハムストリング筋群、特に大腿二頭筋の停止部、及び、ふくらはぎ上部の下腿三頭筋群、特に腓腹筋の起始部に第1ベルトB1の最も強い緊張力による刺戟が加わり、体性反射により大腿二頭筋、腓腹筋が収縮する。
(効果)
大腿二頭筋は膝関節を屈曲させつつ下腿を外旋させ、腓腹筋も膝関節を屈曲させるとともに、足首関節を底屈させる働きをする。これらの筋肉が体性反射によって活性化することにより、椅子に腰かけたり立ち上がったりする際に重力に抗して体重を支える力が発揮し易くなり、身体の安定性が高まる。
【0025】
(1-2)膝蓋骨の下部に第1ベルトを当接させた場合(
図4)
(作用)
膝蓋骨を跨いで脛骨上端に停止する大腿四頭筋(大腿直筋、外側広筋、中間広筋、内側広筋)の腱に第1ベルトB1の最も強い緊張力による刺戟が加わり、体性反射により大腿四頭筋が収縮することにより、膝蓋骨を上方に引き上げる作用が働く。また、突起Pが膝関節の外側に当接して刺戟を与えるため、体性反射により外側広筋が特に収縮し、膝蓋骨を内側に押す形となる。
(効果)
膝蓋骨の外旋(外側への移動)が抑止されるため、膝や足底が安定し、脚と体幹の連携が図られる。
【0026】
(1-3)膝蓋骨の上部に第1ベルトを当接させた場合(
図5)
(作用)
大腿四頭筋の停止部に近い膝蓋靭帯に第1ベルトB1の最も強い緊張力による刺戟が加えられ、体性反射により大腿四頭筋の収縮が活性化する。大腿四頭筋は、腸骨(骨盤)に起始・膝蓋骨及び腓骨粗面に停止し、膝関節を伸展及び股関節を屈曲させる働きをする。 また、2番目に緊張力の強い第2ベルトB2が膝蓋骨の下部に当接するため、体性反射によって膝蓋骨が上方に引き上げられる作用が生じる。さらに、突起Pが膝蓋骨の外側に当接して刺戟を与えるため、膝を屈曲させる際に膝蓋骨が外旋することが防がれ、結果として膝蓋骨が安定する。なお、一番緊張力の弱い第3ベルトは膝関節の裏側
(効果)
大腿四頭筋が活性化し、膝が安定することにより、歩行時に膝を上げる動作の負担が軽減され、階段や上り坂を上がる際の脚の動きがスムーズになる。
【0027】
(2)肘に装着した場合
(2-1)肘関節の内側(屈曲側)に第1ベルトB1を当接させた場合(
図6)
(作用)
肘関節を跨いで橈骨上部に停止する上腕二頭筋、また、肘関節を跨いで上腕骨下端で起始する橈骨手根屈筋、腕橈骨筋、円回内筋(図示せず)等の屈筋群に第1ベルトB1の最も強い緊張力による刺戟が加えられ、体性反射によりこれらの筋肉を収縮させる。
(効果)
腕を肘関節で屈曲させる力が増し、物を持ち上げたり、身体の方向に引き込んだりする運動における筋出力が向上する。相撲、レスリング、柔道等の競技において必要とされる相手を引き寄せる筋力の瞬発力において有利となる。
【0028】
(2-2)肘関節の外側(伸展側)の上腕側に第1ベルトB1を当接させた場合(
図7)
(作用)
肘関節を跨いで尺骨肘頭に停止する伸筋である上腕三頭筋に第1ベルトB1の最も強い緊張力による刺戟が加えられ、体性反射により上腕三頭筋を収縮させるとともに、筋肉収縮の上行連鎖により体幹側の伸筋群(広背筋、大円筋、小円筋、棘上筋、棘下筋、肩甲下筋:いずれも図示せず。)を働かせる。
(効果)
体幹の姿勢を保持したり、伸筋を使う運動(ボクシング、アメリカンフットボール、短距離走、投擲競技等)における筋出力が向上するほか、いわゆるモデルウォークなどにおける姿勢保持を助ける。
【0029】
(2-3)肘関節の外側(伸展側)の前腕側に第1ベルトB1を当接させた場合(
図8)
(作用)
上腕骨下端に起始し肘関節を跨いで手根骨に停止する手根伸筋群(長橈側手根伸筋、短橈側手根伸筋、尺側手根伸筋)といった前腕の新筋群に第1ベルトB1の最も強い緊張力による刺戟が加えられ、体性反射によりこれらの筋肉を収縮させる。
(効果)
2-2と同様に体幹の姿勢を保持したり、伸筋を使う運動における緊縮力を向上させる。
【0030】
(3)足首に装着した場合
(3-1)アキレス腱に第1ベルトB1を当接させた場合(
図9)
(作用)
アキレス腱に第1ベルトB1の最も強い緊張力による刺戟が加えられることで、体性反射によりふくらはぎの屈筋である腓腹筋、ヒラメ筋が収縮し、さらに、筋肉収縮の上行連鎖により、ふとももの屈筋である大腿二頭筋、半腱様筋、半膜様筋といったハムストリング筋群(図示せず。)、さらに大殿筋(図示せず。)等が収縮する。
(効果)
下腿の屈筋群全体が活性化されることで、脚を後ろに蹴り、前方への推進力を生みだす運動における筋出力が向上する。徒競走、サッカー、ラグビーのフォワードといった走力が要求される競技のパフォーマンスを向上させる。また、「第二の心臓」とも呼ばれる腓腹筋、ヒラメ筋といった下腿三頭筋の活性化により全身の血流が促進される。
【0031】
(3-2)足底に第1ベルトB1を当接させた場合(
図10)
(作用)
拇趾外転筋、拇趾内転筋、短拇趾屈筋、短趾屈筋、虫様筋等の足底筋膜を構成する屈筋群に第1ベルトB1の最も強い緊張力による刺戟が加えられることで、体性反射によって足裏のアーチ形状が活性化する。また、後脛骨筋、長腓骨筋等の下腿筋群(図示せず。)の、中足骨の裏面に停止する腱にも刺戟が加わり、体性反射によりこれら下腿筋を収縮させる。
(効果)
足底筋膜の活性化により身体の重心が安定し、また、足首関節を底屈・外反させる下腿筋群の筋出力向上により、レスリング、柔道、相撲、ウェイトリフティング、陸上の投擲競技といった下半身の瞬発的なふんばりが要求されるスポーツのパフォーマンスが向上する。
【0032】
(3-3)足の甲側に第1ベルトB1を当接させた場合(
図11)
(作用)
脛骨の該側面に起始し中足骨の底部に停止する前脛骨筋に第1ベルトB1の最も強い緊張力による刺戟が加えられることで、体性反射によりこの筋肉が収縮する。また、筋肉収縮の上行連鎖により、太腿前面の大腿四頭筋(大腿直筋、外側広筋、中間広筋、内側広筋、縫工筋:いずれも図示せず。)が収縮し、さらに、骨盤内のインナーマッスルである腸腰筋群(大腰筋、腸骨筋)も活性化される。
(効果)
足首関節を背屈させる前脛骨筋、膝関節を屈曲させる大腿四頭筋、股関節屈筋である腸腰筋群の活性化により、山登り、空手、キックボクシングといった膝を高く上げる動作やスポーツのパフォーマンスが向上する。
【0033】
以上、本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明したが、本発明は、必ずしも上述した構成にのみ限定されるものではなく、本発明の目的を達成し、効果を有する範囲内において、適宜変更実施することが可能なものであり、本発明の技術的思想の範囲内に属する限り、それらは本発明の技術的範囲に属する。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明に係る関節サポーターは、疾患等の障害のある関節の保護や痛みの軽減といった治療目的ではなく、基本的に健常者の運動能力の向上を目的とするものである。各種のスポーツや運動を行う際のパフォーマンスの向上、あるいは、筋力の衰えた高齢者のQOL向上のために、手軽に装着できる装具として普及可能である。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【符号の説明】
【0036】
S 関節サポーター
B1 第1ベルト
B2 第2ベルト
B3 第3ベルト
J1 第1の接合部(外側)
J2 第2の 接合部(内側)
F1、F2、F3 面ファスナーによる接合部
P 突起