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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022007643
(43)【公開日】2022-01-13
(54)【発明の名称】半導体装置および非接触通信媒体
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/822 20060101AFI20220105BHJP
【FI】
H01L27/04 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020110727
(22)【出願日】2020-06-26
(71)【出願人】
【識別番号】520233375
【氏名又は名称】富士通セミコンダクターメモリソリューション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】山本 高史
【テーマコード(参考)】
5F038
【Fターム(参考)】
5F038AC02
5F038AR09
5F038AR11
5F038AR27
5F038BH02
5F038BH03
5F038BH07
5F038BH09
5F038BH10
5F038BH12
5F038BH13
5F038DF03
5F038DF04
5F038EZ14
(57)【要約】
【課題】半導体装置の基板から印加される電圧ストレスを緩和し、半導体装置内の回路の破壊を抑止する。
【解決手段】半導体装置は、半導体基板と、前記半導体基板上に交互に設けられる所定数の絶縁層および配線層と、前記半導体基板上に設けられる素子と前記絶縁層および前記配線層を使用して設けられる配線とを含む回路が設けられる回路領域と、前記回路領域の周囲に設けられ、前記配線層および前記絶縁層を貫通して前記半導体基板に接続される第1導電部材と、前記半導体基板の裏面側に設けられる低抵抗領域と、前記半導体基板の表面側から前記裏面側にかけて設けられ、前記第1導電部材を前記低抵抗領域に電気的に接続する拡散領域とを有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板と、
前記半導体基板上に交互に設けられる所定数の絶縁層および配線層と、
前記半導体基板上に設けられる素子と前記絶縁層および前記配線層を使用して設けられる配線とを含む回路が設けられる回路領域と、
前記回路領域の周囲に設けられ、前記配線層および前記絶縁層を貫通して前記半導体基板に接続される第1導電部材と、
前記半導体基板の裏面側に設けられる低抵抗領域と、
前記半導体基板の表面側から前記裏面側にかけて設けられ、前記第1導電部材を前記低抵抗領域に電気的に接続する拡散領域と、
を有する半導体装置。
【請求項2】
前記回路領域の周囲に、前記第1導電部材に隣接して設けられ、前記絶縁層および前記配線層を貫通して前記半導体基板に接続される第2導電部材を
有する請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記第2導電部材と前記半導体基板との間に接続される抵抗素子を有する請求項2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記半導体基板は、前記低抵抗領域であるベース基板上にエピタキシャル層を成長させたエピタキシャル基板であり、
前記拡散領域は、前記エピタキシャル層の表面に設けられる第1拡散領域と、前記第1拡散領域を覆って設けられ、前記エピタキシャル層の表面から前記ベース基板まで届く第2拡散領域とを含み、
前記第1導電部材は、前記第1拡散領域に接続される
請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記第1導電部材は、前記回路領域の周囲に設けられるガードリングである
請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項6】
半導体装置と、前記半導体装置に接続され、外部に対して信号を送受信するアンテナとを含む非接触通信媒体であって、
前記半導体装置は、
半導体基板と、
前記半導体基板上に交互に設けられる所定数の絶縁層および配線層と、
前記半導体基板上に設けられる素子と前記絶縁層および前記配線層を使用して設けられる配線とを含む回路が設けられる回路領域と、
前記回路領域の周囲に設けられ、前記配線層および前記絶縁層を貫通して前記半導体基板に接続される第1導電部材と、
前記半導体基板の裏面側に設けられる低抵抗領域と、
前記半導体基板の表面側から前記裏面側にかけて設けられ、前記第1導電部材を前記低抵抗領域に電気的に接続する拡散領域と、
を有する非接触通信媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置および非接触通信媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体基板上に設けたエピタキシャル層にCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)デバイス等が形成された半導体装置が知られている。この種の半導体装置において、基板の電位を取るためにチップ外周部に設けた電源ラインに、埋込拡散層に達する深い拡散層を設け、保護素子を接続することで、サージ電流を内部回路に流すことなくバイパスする手法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、エピタキシャル層に形成される半導体素子の周囲に、エピタキシャル基板の表面から低抵抗の半導体基板に到達する高濃度拡散層を形成してグランドまたは電源に接続した半導体集積回路装置が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002-289779号公報
【特許文献2】特開平4-147668号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、非接触ICカード等の非接触通信媒体は、外部端子を持たないため、非接触通信媒体に搭載される半導体装置の外部端子も、非接触通信媒体の外部に露出しない。このため、気中放電等により非接触通信媒体に印加されるサージ電圧は、半導体装置の外部端子を介して半導体装置に侵入するとは限らず、半導体装置の外部端子に接続された保護回路では、サージ電圧から内部回路を保護することができないおそれがある。
【0006】
1つの側面では、本発明は、半導体装置の基板から印加される電圧ストレスを緩和し、半導体装置内の回路の破壊を抑止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一つの観点によれば、半導体装置は、半導体基板と、前記半導体基板上に交互に設けられる所定数の絶縁層および配線層と、前記半導体基板上に設けられる素子と前記絶縁層および前記配線層を使用して設けられる配線とを含む回路が設けられる回路領域と、前記回路領域の周囲に設けられ、前記配線層および前記絶縁層を貫通して前記半導体基板に接続される第1導電部材と、前記半導体基板の裏面側に設けられる低抵抗領域と、前記半導体基板の表面側から前記裏面側にかけて設けられ、前記第1導電部材を前記低抵抗領域に電気的に接続する拡散領域と、を有する。
【発明の効果】
【0008】
1つの側面では、本発明は、半導体装置の基板から印加される電圧ストレスを緩和し、半導体装置内の回路の破壊を抑止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】一実施形態における半導体装置の一例を示す断面図である。
図2図1の半導体装置を表面側からみた一例を示す平面図である。
図3図2の回路領域に設けられる入出力回路部の一例を示す回路図である。
図4図1の半導体チップが搭載される非接触ICカードの一例を示す側面図である。
図5】別の実施形態における半導体装置の一例を示す断面図である。
図6】別の実施形態における半導体装置の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を用いて実施形態が説明される。
【0011】
図1は、一実施形態における半導体装置の一例を示す。図2は、図1の半導体装置を表面側からみた一例を示す。図1および図2に示す半導体装置100は、ベース基板SUB上にエピタキシャル層EPIを成長させたエピタキシャル基板110と、エピタキシャル基板110上に設けられた配線層120とを有する半導体チップである。以下では、半導体装置100を半導体チップ100とも称し、エピタキシャル層EPIをエピ層EPIとも称する。エピタキシャル基板110は、半導体基板の一例である。
【0012】
半導体チップ100に搭載される回路は、回路領域CIRに含まれ、エピ層EPI上に設けられる図示しないトランジスタ等の素子と、配線層120を使用して設けられる図示しない配線とを有する。配線層120は、エピ層EPI上に交互に積層される所定数の絶縁層と所定数の配線層とを有する。以下では、配線層120に設けられる配線を配線M(M1~M6)と称する。また、配線層120の絶縁層に設けられ、配線M間を接続する導電体をプラグP(P1~P6)と称する。配線M1~M6およびプラグP1~P6の番号は、エピ層EPIからの並び順を示す。プラグP1~P6は、配線の一例である。絶縁層と配線層の数は、6つに限定されない。
【0013】
特に限定されないが、例えば、配線M1~M5の厚さは、400~600nm(ナノメートル)であり、配線M6の厚さは、700~1000nmである。プラグP1の高さは、1400~2000nmであり、プラグP2~P6の高さは、600~900nmである。なお、図1では、半導体チップ100の表面SURF側が露出しているように見えるが、例えば、回路領域CIR上は、図示しない保護膜で覆われている。
【0014】
回路領域CIRは、図2に示すように、ロジック回路およびアナログ回路等が配置されるコア部COREと、コア部COREの回路に信号を入力または出力する複数の入出力回路部IOとを有する。入出力回路部IOは、外部端子(パッド)と保護回路とを有する。コア部COREの周囲には、半導体チップ100の外周端に沿ってガードリングRING1が設けられる。ガードリングRING1は、配線層および絶縁層を貫通して半導体基板に接続される第1導電部材の一例である。
【0015】
なお、図1では、半導体チップ100の断面を示しているため、左右にガードリングRING1があるように見えるが、実際には、図2に示すように、ガードリングRING1は、環状に設けられる。このため、図1の右側のガードリングRING1の配線M6等の各要素は、左側のガードリングRING1の各要素とつながっている。図1では、右側のガードリングRING1のみに符号を付している。
【0016】
半導体チップ100の外周端は、ウェハ上に形成された複数の半導体装置100を個々に切り離して半導体チップ100を製造する場合の切断線であるスクライブラインSCRBに対応する。ガードリングRING1は、半導体チップ100の外周端から回路領域CIRへの水分(湿気)の侵入を抑止する機能と、ウェハ状態の半導体装置100を切断するときの外周端のクラックを抑止する機能とを有する。
【0017】
図1に示すように、ガードリングRING1の下端はエピ層EPIの表面に設けられた拡散領域DIFF1に電気的に接続される。拡散領域DIFF1は、エピ層EPIからベース基板SUBにかけて設けられたウェル領域WELL1内に設けられる。拡散領域DIFF1は、第1拡散領域の一例である。ウェル領域WELL1は、第2拡散領域の一例であり、拡散領域DIFF1を覆って設けられ、エピ層EPIの表面からベース基板SUBまで届く深さを有する。
【0018】
特に限定されないが、例えば、ベース基板SUBの厚さは、100~150μm(ミクロン)であり、エピ層の厚さは、4~6μmである。拡散領域DIFF1の深さは、0.25~0.35μmであり、ウェル領域WELL1の深さは、エピ層の厚さより大きい。
【0019】
ここで、ベース基板SUB、エピ層EPI、ウェル領域WELL1および拡散領域DIFF1は、例えば、p型であり、不純物濃度は、拡散領域DIFF1>ベース基板SUB>ウェル領域WELL1>エピ層EPIの順に高く設定される。このため、抵抗値は、拡散領域DIFF1<ベース基板SUB<ウェル領域WELL1<エピ層EPIの順に低くなる。ベース基板SUBは、低抵抗領域の一例である。なお、ベース基板SUBの電圧レベルは、グランドレベルである。
【0020】
ガードリングRING1は、エピ層EPIに比べて抵抗値が低い拡散領域DIFF1およびウェル領域WELL1を介して、ベース基板SUBに電気的に接続される。このため、例えば、静電気等によるサージ電圧が半導体チップ100の裏面BACK等に印加された場合に、サージ電流をベース基板SUB、ウェル領域WELL1および拡散領域DIFF1を介してガードリングRING1に流すことができる。これにより、サージ電圧に応じてコア部COREに印加される電圧ストレスを緩和することができ、コア部CORE内の回路が静電破壊することを抑止することができる。
【0021】
図3は、図2の回路領域CIRに設けられる入出力回路部IOの一例を示す。入出力回路部IOは、正の電源パッド(+)、負の電源パッド(-)および入力パッドと、コア部COREとの間に配置される保護回路ESDを有する。また、入出力回路部IOは、電源パッド(+)と電源パッド(-)との間に接続される電源クランプ回路CLMPを有する。電源パッド(+)および電源パッド(-)は、コア部COREの正側電源端子および負側電源端子にそれぞれ接続される。
【0022】
保護回路ESDは、電源パッド(+)と入力パッドとの間に接続されたpMOSトランジスタ、入力パッドと電源パッド(-)との間に接続されたnMOSトランジスタとを有する。pMOSトランジスタのゲートは、抵抗素子を介して電源パッド(+)に接続される。nMOSトランジスタのゲートは、抵抗素子を介して電源パッド(-)に接続される。また、入力パッドは、抵抗素子を介してコア部COREに接続される。
【0023】
図3に示す保護回路ESDでは、例えば、入力パッドに正のサージ電圧が印加された場合、破線の矢印で示すように、サージ電流がnMOSトランジスタのドレインとソースとを介して電源パッド(-)に流れる。これにより、サージ電流がコア部COREに流れて、コア部CORE内の回路が破壊されることを抑止することができる。例えば、半導体装置100の試験工程または組み立て工程において、入力パッド等にサージ電圧が印加された場合にも、コア部CORE内の回路が破壊されることを抑止することができる。
【0024】
一方、例えば、気中放電等により、半導体装置100の裏面BACK(図1)に過電圧が印加された場合、保護回路ESDを介してサージ電流を逃がすことは困難である。しかしながら、図1に示す半導体チップ100では、上述したように、裏面BACKに印加された過電圧によるサージ電流をベース基板SUB、ウェル領域WELL1および拡散領域DIFF1を介してガードリングRING1に流すことができる。この結果、コア部COREに入力されるサージ電流を緩和することができ、コア部CORE内の回路が破壊されることを抑止することができる。
【0025】
図4は、図1の半導体チップ100が搭載される非接触ICカードの一例を示す。図4の非接触ICカード200は、アンテナ端子TM+、TM-を介して半導体チップ100に接続されるアンテナ基板ANTと、アンテナ基板ANTおよび半導体チップ100の外側にそれぞれ設けられる絶縁基板INSL1、INSL2とを有する。そして、非接触ICカード200は、アンテナ基板ANTを介して無線により電力の供給を受けることで、非接触で外部と通信し、データ処理を実行することが可能である。非接触ICカード200は、非接触通信媒体の一例である。
【0026】
例えば、アンテナ端子TM+、TM-は、バンプである。例えば、アンテナ基板ANTは、渦巻き状のコイルを含み、外部に対して信号を送受信する。アンテナ基板ANTは、アンテナの一例である。アンテナ基板ANTと半導体チップ100との間の空間は、異方性導電膜等の接合材料AFCが配置される。非接触ICカード200では、半導体チップ100の外部端子(パッド)は、アンテナ基板ANT等の非接触ICカード200内の要素に接続され、非接触ICカード200の外部に露出しない。
【0027】
例えば、気中放電等により非接触ICカード200の表面(筐体)にサージ電圧が印加され、半導体チップ100の裏面BACKに印加されるとする。この場合、サージ電圧により発生するサージ電流をガードリングRING1に流すことができる。この結果、回路領域CIRに印加される電圧ストレスを緩和することができ、コア部CORE内の回路が静電破壊することを抑止することができる。
【0028】
このように、コア部CORE内の回路への電圧ストレスを緩和する図1に示す構造は、外部端子を持たないことによりサージ電圧が筐体から印加される非接触ICカード200等の非接触通信媒体に搭載される半導体チップ100に適用することが好ましい。なお、半導体チップ100は、無線タグ等の他の非接触通信媒体に搭載されてもよい。半導体チップ100を搭載可能な無線タグとして、コイン型無線タグ、シール型無線タグまたはリストバンド型無線タグ等がある。
【0029】
以上、図1から図4に示す実施形態では、半導体チップ100の裏面BACK等に印加されたサージ電圧に伴って発生するサージ電流を、ベース基板SUB、ウェル領域WELL1および拡散領域DIFF1を介してガードリングRING1に流すことができる。このため、コア部COREに印加される電圧ストレスを緩和することができ、コア部CORE内の回路が静電破壊することを抑止することができる。
【0030】
また、半導体チップ100を搭載する非接触ICカード200の表面(筐体)への気中放電等により発生するサージ電圧が半導体チップ100の裏面BACK等に印加される場合にも、サージ電流をガードリングRING1に流すことができる。この結果、非接触ICカード200への気中放電に伴ってコア部COREに印加される電圧ストレスを緩和することができ、コア部CORE内の回路が静電破壊することを抑止することができる。
【0031】
図1に示す半導体チップ100では、エピタキシャル基板110に設けられる拡散領域DIFF1、WELL1と既存のガードリングRING1とを利用して、半導体チップ100の裏面BACKからの電圧サージに対してコア部COREの回路を保護可能にする。このため、新たな保護構造を設けることなく、コア部CORE内の回路を電圧サージから保護することができ、半導体チップ100のチップサイズが増加することを抑制することができる。
【0032】
例えば、エピタキシャル基板110を使用して半導体チップ100を製造する場合、ウェル領域WELL1は、エピ層EPIからベース基板SUBに届くまで形成される。これにより、ベース基板SUBをガードリングRING1に接続される低抵抗領域として使用することができる。この結果、半導体チップ100を製造する半導体基板に、イオン注入等により低抵抗領域を新たに形成することなく、コア部CORE内の回路への電圧ストレスを緩和する図1に示す構造を得ることができる。
【0033】
図5は、別の実施形態における半導体装置の一例を示す。図1と同じ要素については、同じ符号を付し、詳細な説明は省略する。図5に示す半導体装置102は、ガードリングRING1の内側に隣接して、ガードリングRING1に沿って設けられるガードリングRING2を有する。ガードリングRING2は、第2導電部材の一例である。ガードリングRING2は、図2に示した環状のガードリングRING1の内側に環状に設けられる。以下では、半導体装置102を半導体チップ102とも称する。なお、ガードリングRING2は、ガードリングRING1の外側に隣接して設けられてもよい。また、半導体チップ102に、複数のガードリングRING2が設けられてもよい。
【0034】
半導体チップ102を表面SURF側からみた構成は、ガードリングRING1の内側にガードリングRING2が設けられることを除き、図2の半導体チップ100と同様である。図5の回路領域CIRに設けられる入出力回路部IOの例は、図3と同様である。また、半導体チップ102は、図4に示す非接触ICカード200等の非接触通信媒体に搭載可能である。この場合、図4の非接触ICカード200は、半導体チップ100の代わりに半導体チップ102を有する。
【0035】
ガードリングRING2は、抵抗素子R1を介して、エピ層EPIに設けられた拡散領域DIFF2に接続される。拡散領域DIFF2は、エピ層EPIに設けられたウェル領域WELL2内に設けられる。拡散領域DIFF2およびウェル領域WELL2は、p型であり、グランドレベルである。
【0036】
この実施形態では、ガードリングRING1は、寄生容量C1を介して、ガードリングRING2に接続される。これにより、半導体チップ102の裏面BACK等に印加されるサージ電圧により発生する電荷を寄生容量C1に一時的に蓄積することができる。この結果、コア部COREに印加される電圧ストレスをさらに緩和することができ、コア部CORE内の回路が静電破壊する可能性を下げることができる。また、ガードリングRING2とエピ層EPIとの間を、抵抗素子R1を介して接続することで、サージ電圧に伴って充電される寄生容量C1の充電速度を緩和することができ、例えば、絶縁層の絶縁破壊を抑止することができる。
【0037】
また、半導体チップ102を搭載する非接触ICカード200では、非接触ICカード200の表面に印加されたサージ電圧が、さらに半導体チップ102の裏面BACKに印加された場合、サージ電流をガードリングRING1に流すことができる。さらに、ガードリングRING1に流れるサージ電流により寄生容量C1を充電することができる。この結果、コア部COREに印加される電圧ストレスを緩和することができ、コア部CORE内の回路が静電破壊することを抑止することができる。
【0038】
なお、図5では、構造を分かりやすくするために、抵抗素子R1が配線M1を含む配線層に記載されているが、抵抗素子R1は、金属抵抗に限定されない。抵抗素子R1は、抵抗値をある程度高くするため、例えば、ポリシリコン等のトランジスタのゲート材料または拡散領域を使用して形成されることが好ましい。
【0039】
また、抵抗素子R1をゲート材料または拡散領域を使用して形成する場合、ガードリングRING2の下端は、プラグP1を含む絶縁層に設けられる図示しないプラグを介してゲート材料の配線または拡散領域に接続される。さらに、抵抗素子R1の抵抗成分を拡散領域DIFF2自体で確保できる場合、抵抗素子R1は省略されてもよい。この場合、ガードリングRING2は、抵抗素子R1を介することなく、エピ層EPIに設けられた拡散領域DIFF2に直接接続される。
【0040】
以上、図5に示す実施形態においても、図1から図4に示す実施形態と同様の効果を得ることができる。さらに、図5に示す実施形態では、ガードリングRING1の周囲にエピ層EPIに接続されるガードリングRING2を設けることで、サージ電圧により発生する電荷をガードリングRING1、RING2間の寄生容量C1に一時的に蓄積することができる。この結果、半導体チップ102の裏面BACK等に印加されるサージ電圧に伴ってコア部COREに印加される電圧ストレスをさらに緩和することができ、コア部CORE内の回路が静電破壊する可能性を下げることができる。また、ガードリングRING2とエピ層EPIとの間を、抵抗素子R1を介して接続することで、サージ電圧に伴って充電される寄生容量C1の充電速度を緩和することができ、例えば、絶縁層の絶縁破壊を抑止することができる。
【0041】
図6は、別の実施形態における半導体装置の一例を示す。図1と同じ要素については、同じ符号を付し、詳細な説明は省略する。図6に示す半導体装置104は、図1に示したエピタキシャル基板110の代わりに、例えば、シリコンウェハをアルゴン雰囲気中で熱処理したアニールウェハの半導体基板112を有する。配線層120および回路領域CIRは、図1の配線層120および回路領域CIRと同様である。
【0042】
半導体チップ104を表面SURF側からみた構成は、図2の半導体チップ100と同様である。図6の回路領域CIRに設けられる入出力回路部IOの例は、図3と同様である。また、半導体チップ104は、図4に示す非接触ICカード200等の非接触通信媒体に搭載可能である。この場合、図4の非接触ICカード200は、半導体チップ100の代わりに半導体チップ104を有する。
【0043】
半導体基板112は、図1と同様の拡散領域DIFF1およびウェル領域WELL1が形成された単一層構造のp型基板PSUBである。p型基板PSUBの電圧レベルは、グランドレベルである。p型基板PSUBにおける回路領域CIRの裏面BACK側には、ウェル領域WELL3が形成される。ウェル領域WELL3は、ウェハ状態の半導体基板112の全面にイオン注入を行うことで、ウェル領域WELL1の裏面BACK側の先端部に対応する深さに、埋め込み拡散層として形成される。
【0044】
p型基板PSUBの不純物濃度は、図1のエピ層EPIの不純物濃度と同程度であり、p型基板PSUBの抵抗値は、図1のエピ層EPIの抵抗値と同程度である。ウェル領域WELL3の不純物濃度は、図1のベース基板SUBの不純物濃度と同程度であり、ウェル領域WELL3の抵抗値は、図1のベース基板SUBの抵抗値と同程度ある。ウェル領域WELL3は、低抵抗領域の一例である。
【0045】
これにより、図1に示したエピタキシャル基板110の内部構造と同様の構造をp型基板に形成することができる。したがって、静電気等によるサージ電圧が半導体チップ104の裏面BACK等に印加された場合に、サージ電流をp型基板PSUB、ウェル領域WELL3、ウェル領域WELL1および拡散領域DIFF1を介してガードリングRING1に流すことができる。このため、コア部COREに印加される電圧ストレスを緩和することができ、コア部CORE内の回路が静電破壊することを抑止することができる。
【0046】
また、半導体チップ104を搭載する非接触ICカード200では、非接触ICカード200の表面(筐体)に印加されたサージ電圧が、さらに半導体チップ104の裏面BACKに印加された場合、サージ電流をガードリングRING1に流すことができる。この結果、コア部COREに印加される電圧ストレスを緩和することができ、コア部CORE内の回路が静電破壊することを抑止することができる。
【0047】
以上、図6に示す実施形態では、単一層構造のp型基板PSUBを有する半導体装置104においても、図1から図5に示す実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0048】
以上の詳細な説明により、実施形態の特徴点および利点は明らかになるであろう。これは、特許請求の範囲がその精神および権利範囲を逸脱しない範囲で前述のような実施形態の特徴点および利点にまで及ぶことを意図するものである。また、当該技術分野において通常の知識を有する者であれば、あらゆる改良および変更に容易に想到できるはずである。したがって、発明性を有する実施形態の範囲を前述したものに限定する意図はなく、実施形態に開示された範囲に含まれる適当な改良物および均等物に拠ることも可能である。
【符号の説明】
【0049】
100、102、104 半導体装置(半導体チップ)
110 エピタキシャル基板
112 半導体基板
120 配線層
200 非接触ICカード
AFC 接合材料
ANT アンテナ基板
BACK 裏面
C1 寄生容量
CIR 回路領域
CLMP 電源クランプ回路
CORE コア部
DIFF1、DIFF2 拡散領域
EPI エピタキシャル層
ESD 保護回路
INSL1、INSL2 絶縁基板
IO 入出力回路部
M(M1~M6) 配線
P(P1~P6) プラグ
PSUB p型基板
R1 抵抗素子
RING1、RING2 ガードリング
SCRB スクライブライン
SUB 半導体基板
SURF 表面
TM+、TM- アンテナ端子
WELL1、WELL2、WELL3 ウェル領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6