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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022076435
(43)【公開日】2022-05-19
(54)【発明の名称】刻印装置
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/00 20140101AFI20220512BHJP
【FI】
B23K26/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021022655
(22)【出願日】2021-02-16
(62)【分割の表示】P 2020186364の分割
【原出願日】2020-11-09
(71)【出願人】
【識別番号】520437607
【氏名又は名称】株式会社刻守
(74)【代理人】
【識別番号】100104695
【弁理士】
【氏名又は名称】島田 明宏
(74)【代理人】
【識別番号】100114247
【氏名又は名称】奥田 邦廣
(74)【代理人】
【識別番号】100148459
【弁理士】
【氏名又は名称】河本 悟
(72)【発明者】
【氏名】藤井 紀幸
【テーマコード(参考)】
4E168
【Fターム(参考)】
4E168AA00
4E168JA02
(57)【要約】
【課題】足場を構成する仮設資材に刻印する際に刻印位置の位置決めを短時間で行うことによって、レーザー光による刻印の作業効率を上げることができる刻印装置を提供する。
【解決手段】刻印装置1は、建築用の仮設資材である手すりのパイプ本体の中央部の表面に識別情報を刻印するために、作業台に固定された第1アングル12とともに、手すりの長さに応じて第2アングル13または、取付位置の変更が可能な補助アングル14が設けられている。手すりの長さが長い場合には爪部を第2アングル13によって固定し、短い場合には固定位置の調整が可能な補助アングル14によって爪部を固定する。これにより、手すりの長さにかかわらず、手すりの刻印したい位置をレーザー照射装置21の照射部22の下方に配置することができ、また手すりの位置決めを短時間で確実にすることができるので、作業効率を上げることができる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築用の仮設資材として使用され、パイプ本体と前記パイプ本体の両端に固定された爪部を有する手すりまたはブラケットの前記パイプ本体の所望の位置に識別情報を刻印する刻印装置であって、
前記刻印装置は、前記手すりまたは前記ブラケットの刻印位置を決める位置決め装置と、前記刻印位置にレーザー光を照射して前記識別情報を刻印するレーザー照射装置とを備え、
前記位置決め装置は、
ボルトを差し込むことが可能な複数個の取付穴が形成された作業台と、
前記作業台に固定され、一方向に延びる第1アングルと、
前記第1アングルの端部において前記第1アングルと直交し、かつ前記作業台上に固定された第2アングルと、
前記第2アングルと平行に配置され、前記複数個の取付穴から選択された取付穴に前記ボルトを抜き差しすることによって取付位置の調整が可能な補助アングルとを含み、
前記パイプ本体の長さに合わせて前記第2アングルまたは前記取付位置が調整された前記補助アングルのいずれかを利用して前記刻印位置が決まるように構成されている、刻印装置。
【請求項2】
前記ブラケットの前記パイプ本体は上面に形成された突起部をさらに有し、
前記第1アングルは、前記ブラケットの前記パイプ本体の上面が前記第1アングルに押し当てられたときに前記突起部が嵌まる位置に形成された切込み部をさらに備える、請求項1に記載の刻印装置。
【請求項3】
建築用の仮設資材として使用され、パイプ本体と前記パイプ本体の両端に固定された爪部とを有する手すりにおいて、前記パイプ本体の所望の位置に識別情報を刻印する刻印装置であって、
前記刻印装置は、前記識別情報を刻印する刻印位置を決める位置決め装置と、前記刻印位置にレーザー光を照射して前記識別情報を刻印するレーザー照射装置とを備え、
前記位置決め装置は、前記パイプ本体の両端に固定された前記爪部を差し込むことが可能な複数個の差込み穴が形成された作業台を含み、
前記パイプ本体の長さに合わせて、前記複数個の差込み穴から選択された2個の差込み穴を利用して前記手すりの前記刻印位置が決まるように構成されている、刻印装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築用の仮設資材にレーザー光を照射することによって識別情報を刻印する刻印装置に関する。
【背景技術】
【0002】
多層階建物を新築したり、改装したりする際に、職人が高いところで作業しやすくするために、建物の周囲に仮設資材を用いて足場が組まれる。複数の建築業者が共同して工事を請け負った場合には、各建築業者は、仮設資材を持ち寄って足場を組み、工事が終了すると足場を解体して自社の仮設資材を持ち帰る。その際に、各建築業者は自社の仮設資材が一目で判別できるように各仮設資材の端部にペンキを塗り、その色によって自社のものか否かを判断することが一般的に行われている。
【0003】
しかし、建築業者の中には、他社の仮設資材に塗られているペンキの上から自社の仮設資材を表す色のペンキを塗ることによって、あたかも自社の仮設資材であるかのように偽装して持ち帰る業者がいる。他社が違法に持ち帰った仮設資材の中から自社の仮設資材を探して取り戻すことは困難であった。
【0004】
そこで、仮設資材の端部にペンキを塗る代わりに、社名やロゴマークなどの識別情報を刻印すれば、他社が仮設資材を持ち帰った場合でも、刻印を手がかりに自社の仮設資材を探すことが可能になる。仮設資材にも使用可能な刻印装置として、特許文献1には、レーザー光を照射することによってパイプに刻印する刻印装置が記載されている(段落[0013]、段落[0014])。また、特許文献2には、レーザー加工によって社名などを刻印したステンレスパイプが記載されている(段落[0009]、段落[0014])。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平4-284986号公報
【特許文献2】実用新案登録第3173000号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に記載の刻印装置は、レーザー光を照射するための刻印ヘッドを、パイプの刻印位置へ誘導するために、位置検出機構によってパイプの位置を検出する。次に、走行機構と昇降機構を制御することによって、検出したパイプの位置まで刻印ヘッドを誘導する。この場合、パイプの位置を検出したり、刻印ヘッドをパイプの位置まで誘導するための機構が複雑になるので、刻印装置の製造コストが高くなる。また、パイプをセットする毎に刻印ヘッドとパイプの位置合わせが必要になるので、刻印装置の処理能力が上がらない。また、特許文献2には、レーザー加工によって製造業者名やJIS認定番号などを刻印したパイプが開示されているが、それらを刻印するために必要な刻印装置の記載がない。
【0007】
そこで、足場を組むために必要な仮設資材に、識別情報を刻印する位置を決める位置決めを短時間で行うことによって、レーザー光による刻印を効率的に行うことができる刻印装置を提供することが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のいくつかの実施形態では、建築用の仮設資材として使用され、パイプ本体と前記パイプ本体の両端に固定された爪部を有する手すりまたはブラケットの前記パイプ本体の所望の位置に識別情報を刻印する刻印装置であって、
前記刻印装置は、前記手すりまたは前記ブラケットの刻印位置を決める位置決め装置と、前記刻印位置にレーザー光を照射して前記識別情報を刻印するレーザー照射装置とを備え、
前記位置決め装置は、
ボルトを差し込むことが可能な複数個の取付穴が形成された作業台と、
前記作業台に固定され、一方向に延びる第1アングルと、
前記第1アングルの端部において前記第1アングルと直交し、かつ前記作業台上に固定された第2アングルと、
前記第2アングルと平行に配置され、前記複数個の取付穴から選択された取付穴に前記ボルトを抜き差しすることによって取付位置の調整が可能な補助アングルとを含み、
前記パイプ本体の長さに合わせて前記第2アングルまたは前記取付位置が調整された前記補助アングルのいずれかを利用して前記刻印位置が決まるように構成されている。
【0009】
本発明の他のいくつかの実施形態では、前記ブラケットの前記パイプ本体は上面に形成された突起部をさらに有し、
前記第1アングルは、前記ブラケットの前記パイプ本体の上面が前記第1アングルに押し当てられたときに前記突起部が嵌まる位置に形成された切込み部をさらに備えるように構成されている。
【0010】
本発明のさらに他のいくつかの実施形態では、建築用の仮設資材として使用され、パイプ本体と前記パイプ本体の両端に固定された爪部とを有する手すりにおいて、前記パイプ本体の所望の位置に識別情報を刻印する刻印装置であって、
前記刻印装置は、前記識別情報を刻印する刻印位置を決める位置決め装置と、前記刻印位置にレーザー光を照射して前記識別情報を刻印するレーザー照射装置とを備え、
前記位置決め装置は、前記パイプ本体の両端に固定された前記爪部を差し込むことが可能な複数個の差込み穴が形成された作業台を含み、
前記パイプ本体の長さに合わせて、前記複数個の差込み穴から選択された2個の差込み穴を利用して前記手すりの前記刻印位置が決まるように構成されている。
【発明の効果】
【0011】
本発明の上記いくつかの実施形態によれば、刻印装置は、建築用の仮設資材である手すりまたはブラケットのパイプ本体の所望の位置に識別情報を刻印するために、作業台に固定された第1アングルとともに、手すりの長さに応じて、第2アングルまたは取付位置の変更が可能な補助アングルが設けられている。手すりが長い場合には、爪部を第2アングルによって固定し、短い場合には、第2アングルの代わりに固定位置の調整が可能な補助アングルによって爪部を固定する。これにより、手すりまたはブラケットの本体部の長さにかかわらず、刻印位置の位置決めを短時間で確実に行うことができるので、手すりまたはブラケットに刻印する作業の効率を上げることができる。
【0012】
本発明の他のいくつかの実施形態によれば、ブラケットのパイプ本体の上面に設けられている突起部が第1アングルに形成された切込み部に嵌まるので、ブラケットのパイプ本体を第1アングルに沿って固定することができる。これにより、ブラケットに識別情報を容易に刻印することができる。
【0013】
本発明のさらに他のいくつかの実施形態によれば、手すりの両端に設けられた爪部を2個の差込み穴のそれぞれに挿入する。これにより、手すりの本体部の長さにかかわらず、手すりの上面の刻印位置の位置決めを短時間で行うことができるので、手すりに刻印する作業の効率を上げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】建物の周囲に組まれた足場の構成の一部を示す斜視図である。
図2】本発明で使用する刻印装置の全体構成を示す斜視図である。
図3】長さが1800mmの手すりを作業台上に固定したときの状態を示す斜視図である。
図4】長さが900mmの手すりを作業台上に固定したときの状態を示す斜視図である。
図5】手すりの表面に刻印された識別情報の一例を示す斜視図である。
図6】手すりのパイプ本体の両端に固定された爪部を、作業台に設けられた差込み穴に差し込んで固定した状態を示す斜視図である。
図7】長さ400mmのブラケットを作業台上に固定したときの状態と、パイプ本体上に設けられた突起部が切込み部に嵌まった状態を示す拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<1.足場の構成>
図1は、建物の周囲に組まれた足場100の構成の一部を示す斜視図である。図1に示すように、手すり30はパイプ本体31の両端にそれぞれ固定された爪部32を支柱70の固定部72に差し込むことによって支柱70に固定される。ブラケット60はパイプ本体61の端部に固定された爪部62を支柱70の固定部73に差し込むことによって、手すりよりも1m程度低い位置に固定される。足場100は、支柱70と、手すり30の長さ分だけ離れた位置に設置された支柱(図示しない)とを接続する手すり30と、手すりに沿って設置される踏板(図示しない)と、踏板を支えるブラケット60とを含む。このため、職人は、足場100内で、手すり30によって安全を確保しながら踏板上を歩いて作業場所まで移動することができる。
【0016】
以下では、仮設資材に含まれる手すり30とブラケット60に、自社の所有物であることを示す社名、ロゴマーク、電話番号などの識別情報をレーザー光によって刻印するための刻印装置1、および刻印装置1を使用して識別情報を刻印する方法について説明する。
【0017】
<2.第1の実施形態>
<2.1 手すりの形状>
【0018】
手すりには、形状は同じであるが、長さが異なるものが複数あり、例えば長さが1800mm、1200mm、900mm、600mm、400mmの手すりがある。そこで、図1で説明した長さが1800mmの手すり30を例に挙げてその形状を説明する。手すり30は、外径が約45mmの円筒形状のパイプ本体31と、パイプ本体31の両側の端部にパイプ本体31に対して垂直方向に延びるように溶接された爪部32とからなる。爪部32の長さは、手すりの長さによらず同じ長さで、200mmである。手すり30は強度が要求されるので鉄によって形成されているが、鉄は錆びやすい。そこで、錆びないようにその表面全体に亜鉛メッキが施されている。
【0019】
<2.2 刻印装置の構成>
長さが1800mmの手すり30に刻印する場合を例に挙げて、本発明で使用する刻印装置1の構成を説明する。図2は、本発明で使用する刻印装置1の全体構成を示す斜視図である。図2に示すように、刻印装置1は、手すり30の刻印位置を決定する位置決め装置10と、手すり30にレーザー光を照射するレーザー照射装置21とを含む。
【0020】
まず、位置決め装置10の構成について説明する。なお、本発明では、手すり30の位置を固定するために、鉄製のL形アングルを使用するが、本明細書では単に「アングル」と記載する。図2に示すように、位置決め装置10は、縦200mm、横160mmの長方形の鉄板からなる作業台11と、作業台11の中央に縦方向に延びる第1アングル12と、第1アングル12の一端付近から横方向に垂直に延びる第2アングル13が作業台11に溶接されている。第1アングル12の長さは、位置決め装置10で刻印する最も長い手すり30の長さと同程度の1800mmであり、第2アングル13の長さは、手すりに固定された爪部32の長さと同程度の200mmである。また第1アングル12および第2アングル13の高さは手すり30のパイプ本体31の外径と同程度の45mmである。
【0021】
第2アングル13から、第1アングル12に沿って手前側に所定の距離だけ離れた位置に、第2アングル13と平行に補助アングル14が取り付けられている。補助アングル14も、第1アングル12に対して垂直になるように取り付けられている。ただし、補助アングル14は、第1および第2アングル12,13のように作業台11に溶接されているのではなく、作業台11の予め決められた位置に取り外し可能なように取り付けられる。具体的には、補助アングル14を取り付ける作業台11上の位置に取付穴15が2個ずつ形成され、補助アングル14にも取付穴15(図示しない)が2個ずつ形成されている。このため、作業台11に形成された取付穴15に、補助アングル14に形成された取付穴15の位置を合わせ、ボルトを作業台11の下面から上面に向かって挿入して作業台11上でナットにより固定する。これにより、補助アングル14が作業台11に固定される。このようにして、補助アングル14を作業台11に固定したり、作業台11から外したりすることが容易にできる。なお、図2では、補助アングル14が取り付けられている箇所以外にも、2個ずつ3組の取付穴15が形成されているので、手すりの長さに応じて補助アングル14を取り付ける位置を適宜選ぶことができる。なお、各補助アングル14は、手すり30の爪部32がストッパとして十分機能する長さであればよいので、その長さは140mm程度あればよい。
【0022】
さらに、補助アングル14の端部と第1アングル12とに挟まれた作業台11上の位置に、手すり30の爪部32を挿入することが可能な大きさの差込み穴16が設けられている。差込み穴16は長方形状の開口部であり、その大きさは例えば幅が10mm、長さが600mm程度である。
【0023】
補助アングル14の役割は、長さの異なるすべての手すりの中央部の位置を、長さが1800mmと最も長い手すり30の中央部の位置と一致させることである。具体的には、手すり30の爪部32を第2アングル13に押し当てたときの中央部の位置はわかっているので、補助アングル14を使用することにより、長さが短い手すりの中央部の位置を手すり30の中央部の位置と一致させる。例えば、手すりの長さが1200mmの場合には、第2アングル13の位置から300mmだけ手前側の位置に補助アングル14を取り付ける。同様にして、手すりの長さが900mm、600mm、400mmの場合には、第2アングル13の位置からそれぞれ450mm、600mm、700mmだけ手前側の位置に補助アングル14を取り付ける。
【0024】
また、手すりの両端に設けられた爪部をそれぞれ挿入する差込み穴16は、補助アングル14と第1アングル12とに接して設けられているだけでなく、さらに上記の方法で求めた手すりの中央部の位置に対して左右対称となる位置にもそれぞれ設けられている。詳しくは後述する。
【0025】
さらに、第1アングル12には切込み部17が設けられている。これは、後述するブラケット60の位置決め時に、パイプ本体61の上面に設けられた突起部64の影響を避けるために設けられている。詳しくは第2の実施形態において説明する。
【0026】
また、図2に示すように、第1アングル12を挟んで手前側の補助アングル14などが設けられた領域と反対側の領域には、レーザー照射セット20が配置されている。レーザー照射セット20は、レーザー照射装置21と、レーザー照射装置21からレーザー光を照射する照射部22と、レーザー照射装置21の高さを調整する支持台23と、それらを作業台11上にする設置台24とを含む。
【0027】
レーザー光を照射する照射部22の位置が、上記の方法によって求めた手すりの中央部の位置と一致するようにレーザー照射装置21を支持台23に固定する。また、セットした手すりの上面と照射部22との距離が、レーザー照射装置21の焦点距離と一致するように支持台23の高さを調整する。レーザー光を照射することによって刻印する文字の種類や大きさは、レーザー照射装置21に接続されたノート型パーソナルコンピュータ(ノート型パソコン)25により制御される。
【0028】
<2.3 手すりに識別情報を刻印する方法>
<2.3.1 第1の刻印方法>
長さ1800mmの手すり30にレーザー光を照射して識別情報を刻印する場合の方法について説明する。図3は、長さが1800mmの手すり30を作業台11上に固定したときの状態を示す斜視図である。図3に示すように、手すり30に刻印する前に、補助アングル14を作業台11からすべて取り外しておく。この状態で、作業者は、倒した状態の手すり30を作業台11上で手前から右側奥に向かって滑らせて、手すり30のパイプ本体31を第1アングル12に押し付けるとともに、爪部32を第2アングル13に押し付ける。これにより、レーザー照射装置21の照射部22の直下の作業台11上の位置に手すり30の側面の中央部が配置される。
【0029】
この状態で、レーザー照射装置21の電源をオンして、レーザー光を手すり30の表面に照射することにより、識別情報を刻印する。刻印が終了すると、作業者はレーザー照射装置21の電源をオフし、作業台11上を滑らせて手すり30を手前に引き出し、片付ける。次に、刻印する手すり30を取り出し、倒した状態で作業台11上を滑らせながら位置決め装置10にセットし、レーザー光を照射して刻印する。このように、同一の長さの手すり30に刻印する場合には、位置決め装置10を使用することによって、手すり30の中央部がレーザー照射装置21の照射部22の直下の作業台11上の位置に簡単にセットすることができる。このため、手すり30に刻印する作業の効率を上げることができる。
【0030】
また、手すり30を位置決め装置10にセットしたり、取り出したりする際に、手すり30をすぐに持ち上げるのではなく、作業台11板上を滑らせてから持ち上げることが好ましい。その理由は、滑らせた方が刻印が終わった手すり30を取り出して次の手すり30をセットしやすいことと、レーザー照射装置21の焦点距離が短いので、手すり30が照射部22にぶつかることを避けるためである。
【0031】
なお、手すり30に刻印をしている間に、直前に刻印した手すり30の表面に残った削り滓をワイヤブラシで落としてから、透明な保護膜を形成する。これにより、刻印によって露出した鉄の表面が酸化されにくくなるので、識別情報を認識できる期間を長くすることができる。
【0032】
<2.3.2 第2の刻印方法>
長さが短い手すりに刻印する場合について、長さが900mmの手すり40に刻印する場合を例に挙げて説明する。図4は、長さが900mmの手すり40を倒して作業台11上にセットした状態を示す斜視図である。長さが1800mmの手すりの場合と同様に、手すり40の爪部42を第2アングル13に押し付けると、手すり40の中央部の位置は、レーザー照射装置21の照射部22の位置に対応する作業台11上の位置から第2アングル13側に450mmずれた位置になる。
【0033】
そこで、長さが900mmの手すり40に合わせて、第2アングル13から第1アングル12に沿って手前側に450mmだけ離れた位置の取付穴15にボルトとナットで補助アングル14を固定する。これにより、手すり40のパイプ本体41を第1アングル12に押し当て、爪部42を取り付けた補助アングル14に押し当てると、手すり40の中央部の位置が照射部22の直下の位置になるようにセットされる。この状態で、レーザー照射装置21の電源をオンしてレーザー光を照射することにより、識別情報を手すり40の側面中央部に刻印することができる。このように、手すり40の長さに応じた作業台11上の位置にボルトを挿入するための取付穴15をあらかじめ設けておくだけで、手すり40の中央部に識別情報を刻印することができる。
【0034】
この場合、第1アングル12と補助アングル14との間に手すり40のパイプ本体41の外径よりも少し広い隙間が設けられている。これは、連続して刻印する手すりの中に、例えば長さが1800mmと900mmの手すりが混在している場合でも、その都度補助アングル40を取り付けたり、外したりすることなく、手すりの一端を少しだけ持ち上げて、爪部の位置をずらすことにより、いずれの手すりでもその中央部に識別情報を刻印することができる。このため、長さの異なる手すりが混在している場合には、刻印の作業効率を上げることができる。なお、刻印する手すりの長さがすべて同じ場合には、第1アングル12と補助アングル14との間の隙間は不要になる。このため、補助アングル14を第1アングル12と接するまで長くしてもよい。
【0035】
図5は、手すり40の表面に刻印された識別情報の一例を示す斜視図である。図5に示すように、手すり40の中央部側面に、例えば所有者の社名と電話番号などの識別情報45が刻印される。これにより、手すりの所有者は自社の手すりと他社の手すりを容易に見分けることができる。
【0036】
<2.3.3 第3の刻印方法>
上記第2の刻印方法では、図4に示すように、手すり40を倒した状態でパイプ本体41の側面に刻印したが、手すり40を立ててパイプ本体41の上面に刻印してもよい。図6は、長さが400mmの手すり50のパイプ本体51の両端に固定された爪部52を、作業台11に設けられた差込み穴16に差し込んで固定した状態を示す斜視図である。図6に示すように、手すり50のパイプ本体51の両端に固定された爪部52を、作業台11に設けられた差込み穴16に差し込むことにより、手すり50を立てた状態で作業台11上に位置決めする。なお、位置決め装置10の構成において説明したように、対応する2つの差込み穴16は、手すりの長さにかかわらず、レーザー照射装置21の照射部22の直下の作業台11上の位置を中心として左右対称になる位置に形成されている。このため、手すりの長さに応じた位置に設けられた各差込み穴16に両端の爪部52をそれぞれ差し込むことによって、長さが異なる手すりであってもパイプ本体の上面の中央部に刻印することができる。
【0037】
なお、刻印が終わった手すり50を取り出して新しい手すりをセットする動作が迅速に行えるように、差込み穴16の大きさは爪部52よりも少し大きく形成されている。そこで、刻印しているときに、手すり50が動かないように固定しておくため、刻印を開始する前に手すり50の下にL型アングルを差し込んで、第1アングル12とともに両側から手すり50を支えるようにしてもよい。この場合、作業者が両手を放しても手すり50は動かないように固定されるので、刻印している時間を利用して、作業者は、例えば直前に刻印が終了した手すり50の刻印した表面に透明な保護膜を形成する作業を行うこともできる。
【0038】
<3.第2の実施形態>
<3.1 ブラケットの形状>
本実施形態では、ブラケット60に刻印する場合について説明する。図1に示すように、ブラケット60は外径が45mm、長さが400mmのパイプ本体61と、パイプ本体61の両側の端部にそれぞれ溶接された爪部62とを含み、さらに踏板と踏板上を歩く職人を支えるために、一端がパイプ本体61の下側に斜めに取り付けられ、他端が支柱70で支える構造の補強部63を含む。ブラケットには、その他にもパイプ本体の長さが600mmのものもあるが、爪部62の長さはいずれも200mmである。
【0039】
図1に示すように、ブラケット60のパイプ本体61の上面には、高さが20mm、円周方向の幅が10mmで、厚さが3mmの突起部64が形成されている。この突起部64は、パイプ本体61に取り付けられた踏板が横方向にずれてブラケット60から落下しないようにするためのストッパとして機能する。
【0040】
<3.2 ブラケットに刻印する方法>
図7は、長さ400mmのブラケット60を作業台11上に固定したときの状態と、パイプ本体61の上面に設けられた突起部64が切込み部17に嵌まった状態を示す拡大斜視図である。図7を参照して、長さが400mmのブラケット60にレーザー光を照射して刻印する場合について説明する。ブラケット60に刻印する前に、補助アングル14を作業台11に取り付けておく。この状態で、作業者は、補強部63が手前側になるように倒してブラケット60を作業台11上の手前から右側奥に向かって滑らせて、ブラケット60のパイプ本体61を第1アングル12に押し付けるとともに、爪部62を補助アングル14に押し付ける。これにより、図7の各拡大図に示すように、ブラケット60のパイプ本体61の上面に設けられている突起部64が第1アングル12に形成された切込み部17に嵌まるので、パイプ本体61は第1アングル12に密着する。その結果、ブラケット60が安定した状態で位置決めされる。なお、拡大図は、突起部64が第1アングル12に形成された切込み部17に嵌まっている状態をより分かりやすくするために、全体図に比べてより高い位置から見た図になっている。
【0041】
レーザー照射装置21によってブラケット60のパイプ本体61の側面に刻印する方法は、第1の実施形態の場合と同じであるので、その説明を省略する。なお、ブラケット60の場合、パイプ本体61の下面に補強部63が形成されているので、手すりの場合のようにブラケット60を立てた状態でパイプ本体61の上面に刻印することはできない。
【0042】
<4.その他の変形例>
上記各実施形態では、位置決め装置10の作業台11として鉄板を使用したが、鉄板の代わりに木製の板を使用してもよい。このため、本明細書では、それらを含めて「作業台」と呼ぶ場合がある。また、上記実施形態では、第1アングル12だけでなく、第2アングル13も作業台11に溶接されているとして説明した。しかし、第2アングル13は補助アングル14の場合と同様に、作業台11にあらかじめ設けておいた取付穴15にボルトとナットを使用して取り付けるアングルであってもよい。また、木製の板を作業台として使用する場合には、L型アングルでなくてもよく、手すりなどを密着して押し付けることができる木製の角材であってもよい。このため、本明細書では、それらをまとめて「アングル」と呼ぶ場合がある。
【0043】
また、上記各実施形態では、手すりまたはブラケットに識別情報を刻印する位置は、所有者を識別するためのペンキが塗られる可能性が最も低い中央部として説明した。しかし、識別情報を刻印する位置をパイプ本体の中央部に限定されず、端部から1/3だけ離れた位置、1/4だけ離れた位置などの所望の位置にしたい場合がある。その場合、刻印を開始する前にレーザー照射装置21の照射部22を移動させれば、その後長さの異なる手すりを位置決め装置10にセットした場合でも照射部22を移動させる必要はない。このため、刻印位置を変更する場合にも、補助アングル14を取り付ける取付穴15や手すりの爪部を差し込む差込み穴16を新たに設ける必要はない。
【符号の説明】
【0044】
1 … 刻印装置
10 … 位置決め装置
11 … レーザー照射装置
12 … 第1アングル
13 … 第2アングル
14 … 補助アングル
15 … 取付穴
16 … 差込み穴
17 … 切込み部
21 … レーザー照射装置
22 … 照射部
25 … ノート型パソコン
30、40、50 … 手すり
60 … ブラケット
31、41、51、61 … パイプ本体
32、42、52,62 … 爪部
64 … 突起部
45 … 識別情報
64 … 突起部
70 … 支柱
72、73 … 固定部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7