(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022076470
(43)【公開日】2022-05-19
(54)【発明の名称】抗菌・抗ウイルス剤組成物、物品、及び物品の製造方法
(51)【国際特許分類】
A01N 33/12 20060101AFI20220512BHJP
A01P 3/00 20060101ALI20220512BHJP
A01P 1/00 20060101ALI20220512BHJP
D06M 13/463 20060101ALI20220512BHJP
【FI】
A01N33/12 101
A01P3/00
A01P1/00
D06M13/463
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021181122
(22)【出願日】2021-11-05
(31)【優先権主張番号】P 2020186714
(32)【優先日】2020-11-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000226161
【氏名又は名称】日華化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100195213
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 健治
(74)【代理人】
【識別番号】100173107
【弁理士】
【氏名又は名称】胡田 尚則
(74)【代理人】
【識別番号】100202441
【弁理士】
【氏名又は名称】岩田 純
(72)【発明者】
【氏名】坂下 真一
(72)【発明者】
【氏名】柘植 好揮
(72)【発明者】
【氏名】上田 香奈
【テーマコード(参考)】
4H011
4L033
【Fターム(参考)】
4H011AA02
4H011AA04
4H011BA06
4H011BB04
4H011BB19
4H011DA13
4H011DF03
4H011DG16
4H011DH02
4H011DH03
4H011DH25
4L033AA02
4L033AA07
4L033AB06
4L033AC10
4L033BA86
(57)【要約】 (修正有)
【課題】物品に対して第1の効果としての抗菌性・抗ウイルス性に加えて、第2の効果としての吸水性又は耐久抗菌・抗ウイルス性を付与可能な組成物を提供する。
【解決手段】式(1)で示される第1化合物、ケイ素を含まず分子量1,500以下のカチオン性化合物である第2化合物、(A-1)等の構成単位を備えるポリマー、ポリアルキレンポリアミン又はその酸塩とジシアンジアミドとの反応縮合物等からなる群より選択される第3化合物、のうちの少なくとも2種類の化合物を含有する、抗菌・抗ウイルス剤組成物とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗菌・抗ウイルス剤組成物であって、第1化合物、第2化合物及び第3化合物のうちの少なくとも2種類の化合物を含有し、
前記第1化合物が、下記一般式(1)で示される化合物であり、
前記第2化合物が、カチオン基を有し、ケイ素を含まず、且つ、1,500以下の分子量を有し、
前記第3化合物が、下記一般式(A-1)~(C-2)の少なくとも1種に由来する構成単位を備えるポリマー、ポリアルキレンポリアミン又はその酸塩とジシアンジアミドとの反応縮合物、及び、下記一般式(D)で示されるポリマー、からなる群より選択される少なくとも1種である、
抗菌・抗ウイルス剤組成物。
【化1】
式(1)において、
R
1は炭素数10~22のアルキル基であり、
R
2はメチル基、エチル基、プロピル基又はブチル基であり、
R
3はメチル基、エチル基、プロピル基又はブチル基であり、
R
4は炭素数2~4のアルキレン基であり、
R
5はメチル基又はエチル基であり、
R
6はメチル基又はエチル基であり、
R
7はメチル基又はエチル基であり、
Z
1はハロゲンである。
【化2】
(式中、R
21は水素原子又はメチル基を表し、R
22は炭素数1~4のアルキレン基又はヒドロキシアルキレン基を表し、R
23は同一であっても相異なっていてもよく、炭素数1~4のアルキル基若しくはヒドロキシアルキル基又は炭素数2~4のアルケニル基若しくはヒドロキシアルケニル基を表し、-Y-は-O-又は-N(H)-を表し、X
p-はp価のアニオンを表し、pは任意の自然数である。)
【化3】
(式中、R
24は同一であっても相異なっていてもよく、炭素数1~4のアルキル基若しくはヒドロキシアルキル基又は炭素数2~4のアルケニル基若しくはヒドロキシアルケニル基を表し、X
p-はp価のアニオンを表し、pは任意の自然数である。)
【化4】
(式中、R
25は水素原子又はメチル基を表し、R
26は炭素数1~4のアルキレン基又はヒドロキシアルキレン基を表し、R
27は同一であっても相異なっていてもよく、炭素数1~4のアルキル基若しくはヒドロキシアルキル基又は炭素数2~4のアルケニル基若しくはヒドロキシアルケニル基を表し、-Z-は-O-又は-N(H)-を表す。)
【化5】
(式中、R
28は、水素原子、炭素数1~4のアルキル基若しくはヒドロキシアルキル基又は炭素数2~4のアルケニル基若しくはヒドロキシアルケニル基を表す。)
【化6】
(式中、R
29は同一であっても相異なっていてもよく、水素原子、炭素数1~4のアルキル基若しくはヒドロキシアルキル基又は炭素数2~4のアルケニル基若しくはヒドロキシアルケニル基を表す。)
【化7】
(式中、R
30は同一であっても相異なっていてもよく、水素原子、炭素数1~4のアルキル基若しくはヒドロキシアルキル基又は炭素数2~4のアルケニル基若しくはヒドロキシアルケニル基を表し、X
p-はp価のアニオンを表し、pは任意の自然数である。)
【化8】
(式中、R
31は炭素数1~4のアルキレン基であり、R
32はメチル基又はエチル基であり、R
33はメチル基又はエチル基であり、R
34は炭素数3又は4のアルキレン基であり、R
35はメチル基又はエチル基であり、R
36はメチル基又はエチル基であり、R
37は炭素数1~4のアルキレン基であり、Z
31はハロゲンであり、kは任意の自然数である。)
【請求項2】
前記第2化合物が、アルキル第4級アンモニウム塩である、
請求項1に記載の抗菌・抗ウイルス剤組成物。
【請求項3】
前記第2化合物が、下記一般式(2)で示される化合物である、
請求項1又は2に記載の抗菌・抗ウイルス剤組成物。
【化9】
式(2)において、
R
8は炭素数10~20のアルキル基又はアリール基であり、
R
9はメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基又は(AO)
pHで表される基であり、AOは炭素数2~4のアルキレンオキサイドであり、pは1~10の整数であり、
R
10はメチル基、エチル基、ベンジル基又は炭素数2~4のヒドロキシアルキル基であり、
nは1又は2であり、
mは1又は2であり、
n+mは3であり、
lは1又は2であり、
Z
2はモノアルキルリン酸、ジアルキルリン酸、ハロゲン、メチル硫酸、エチル硫酸又は芳香族アニオンである。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の抗菌・抗ウイルス剤組成物が付着している、
物品。
【請求項5】
抗菌・抗ウイルス性を付与する対象物に、請求項1~3のいずれか1項に記載の抗菌・抗ウイルス剤組成物を付着させて、抗菌・抗ウイルス性を有する物品を得ること、
を含む、物品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は抗菌・抗ウイルス剤組成物、物品、及び物品の製造方法を開示する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、硫酸塩界面活性剤の存在下において第4級アンモニウム塩によって合成繊維を処理することで、合成繊維に抗菌性を付与する方法が開示されている。特許文献2には、オルガノシリコーン第4級アンモニウム塩とグリシジルエーテル系化合物とを用いてセルロース系繊維を処理することで、セルロース系繊維に対して抗菌性及び吸水性を付与する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭62-177284号公報
【特許文献2】国際公開第2012/014762号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
第1の効果としての抗菌・抗ウイルス性に加えて、第2の効果を付与可能な抗菌・抗ウイルス剤組成物が求められている。従来技術においては、例えば、(i)抗菌・抗ウイルス性と吸水性との両立について改善の余地がある。具体的には、オルガノシリコーン第4級アンモニウム塩は物品に対して抗菌・抗ウイルス性を付与可能であるが、物品の吸水性を低下させやすいという課題があった。オルガノシリコーン第4級アンモニウム塩とともに界面活性剤等を併用することで初期の吸水性をある程度向上させることは可能であるが、この場合、水などで洗浄した場合に吸水性が低下しやすい。
【0005】
或いは、従来技術においては、例えば、(ii)抗菌・抗ウイルス性とその耐久性(耐久抗菌・抗ウイルス性)との両立について改善の余地がある。具体的には、オルガノシリコーン第4級アンモニウム塩等の抗菌・抗ウイルス剤を物品に付着させて抗菌・抗ウイルス性を発現させたとしても、当該物品を洗濯等することで抗菌・抗ウイルス性が低下し易いという問題がある。
【0006】
本願は、上記の課題(i)及び(ii)のうちの少なくとも一方を解決することが可能な抗菌・抗ウイルス剤組成物を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願は上記課題を解決するための手段の一つとして、
抗菌・抗ウイルス剤組成物であって、第1化合物、第2化合物及び第3化合物のうちの少なくとも2種類の化合物を含有し、
前記第1化合物が、下記一般式(1)で示される化合物であり、
前記第2化合物が、カチオン基を有し、ケイ素を含まず、且つ、1,500以下の分子量を有し、
前記第3化合物が、下記一般式(A-1)~(C-2)の少なくとも1種に由来する構成単位を備えるポリマー、ポリアルキレンポリアミン又はその酸塩とジシアンジアミドとの反応縮合物、及び、下記一般式(D)で示されるポリマー、からなる群より選択される少なくとも1種である、
抗菌・抗ウイルス剤組成物
を開示する。
【0008】
【化1】
式(1)において、
R
1は炭素数10~22のアルキル基であり、
R
2はメチル基、エチル基、プロピル基又はブチル基であり、
R
3はメチル基、エチル基、プロピル基又はブチル基であり、
R
4は炭素数2~4のアルキレン基であり、
R
5はメチル基又はエチル基であり、
R
6はメチル基又はエチル基であり、
R
7はメチル基又はエチル基であり、
Z
1はハロゲンである。
【0009】
【化2】
(式中、R
21は水素原子又はメチル基を表し、R
22は炭素数1~4のアルキレン基又はヒドロキシアルキレン基を表し、R
23は同一であっても相異なっていてもよく、炭素数1~4のアルキル基若しくはヒドロキシアルキル基又は炭素数2~4のアルケニル基若しくはヒドロキシアルケニル基を表し、-Y-は-O-又は-N(H)-を表し、X
p-はp価のアニオンを表し、pは任意の自然数である。)
【0010】
【化3】
(式中、R
24は同一であっても相異なっていてもよく、炭素数1~4のアルキル基若しくはヒドロキシアルキル基又は炭素数2~4のアルケニル基若しくはヒドロキシアルケニル基を表し、X
p-はp価のアニオンを表し、pは任意の自然数である。)
【0011】
【化4】
(式中、R
25は水素原子又はメチル基を表し、R
26は炭素数1~4のアルキレン基又はヒドロキシアルキレン基を表し、R
27は同一であっても相異なっていてもよく、炭素数1~4のアルキル基若しくはヒドロキシアルキル基又は炭素数2~4のアルケニル基若しくはヒドロキシアルケニル基を表し、-Z-は-O-又は-N(H)-を表す。)
【0012】
【化5】
(式中、R
28は、水素原子、炭素数1~4のアルキル基若しくはヒドロキシアルキル基又は炭素数2~4のアルケニル基若しくはヒドロキシアルケニル基を表す。)
【0013】
【化6】
(式中、R
29は同一であっても相異なっていてもよく、水素原子、炭素数1~4のアルキル基若しくはヒドロキシアルキル基又は炭素数2~4のアルケニル基若しくはヒドロキシアルケニル基を表す。)
【0014】
【化7】
(式中、R
30は同一であっても相異なっていてもよく、水素原子、炭素数1~4のアルキル基若しくはヒドロキシアルキル基又は炭素数2~4のアルケニル基若しくはヒドロキシアルケニル基を表し、X
p-はp価のアニオンを表し、pは任意の自然数である。)
【0015】
【化8】
(式中、R
31は炭素数1~4のアルキレン基であり、R
32はメチル基又はエチル基であり、R
33はメチル基又はエチル基であり、R
34は炭素数3又は4のアルキレン基であり、R
35はメチル基又はエチル基であり、R
36はメチル基又はエチル基であり、R
37は炭素数1~4のアルキレン基であり、Z
31はハロゲンであり、kは任意の自然数である。)
【0016】
本開示の抗菌・抗ウイルス剤組成物において、
前記第2化合物が、アルキル第4級アンモニウム塩であってもよい。
【0017】
本開示の抗菌・抗ウイルス剤組成物において、
前記第2化合物が、下記一般式(2)で示される化合物であってもよい。
【0018】
【化9】
式(2)において、
R
8は炭素数10~20のアルキル基又はアリール基であり、
R
9はメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基又は(AO)
pHで表される基であり、AOは炭素数2~4のアルキレンオキサイドであり、pは1~10の整数であり、
R
10はメチル基、エチル基、ベンジル基又は炭素数2~4のヒドロキシアルキル基であり、
nは1又は2であり、
mは1又は2であり、
n+mは3であり、
lは1又は2であり、
Z
2はモノアルキルリン酸、ジアルキルリン酸、ハロゲン、メチル硫酸、エチル硫酸又は芳香族アニオンである。
【0019】
本願は上記課題を解決するための手段の一つとして、
上記本開示の抗菌・抗ウイルス剤組成物が付着している、物品
を開示する。
【0020】
本願は上記課題を解決するための手段の一つとして、
抗菌・抗ウイルス性を付与する対象物に、上記本開示の抗菌・抗ウイルス剤組成物を付着させて、抗菌・抗ウイルス性を有する物品を得ること、
を含む、物品の製造方法
を開示する。
【発明の効果】
【0021】
本開示の抗菌・抗ウイルス剤組成物は、物品に対して優れた抗菌・抗ウイルス性を付与可能であり、さらに、吸水性及び耐久抗菌・抗ウイルス性のうちの少なくとも一方を付与可能である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
1.抗菌・抗ウイルス剤組成物
本開示の抗菌・抗ウイルス剤組成物は、第1化合物、第2化合物及び第3化合物のうちの少なくとも2種類の化合物を含有する。ここで、前記第1化合物は、下記一般式(1)で示される化合物であり、前記第2化合物は、カチオン基を有し、ケイ素を含まず、且つ、1,500以下の分子量を有し、前記第3化合物は、下記一般式(A-1)~(C-2)の少なくとも1種に由来する構成単位を備えるポリマー、ポリアルキレンポリアミン又はその酸塩とジシアンジアミドとの反応縮合物、及び、下記一般式(D)で示されるポリマー、からなる群より選択される少なくとも1種である。尚、「第1化合物、第2化合物及び第3化合物のうちの少なくとも2種類の化合物」とは、第1化合物と第2化合物とを含むもの、第1化合物と第3化合物とを含むもの、第2化合物と第3化合物とを含むもの、及び、第1化合物と第2化合物と第3化合物とを含むもの、のうちのいずれかである。
【0023】
1.1 第1形態
第1形態に係る抗菌・抗ウイルス剤組成物は、第1化合物と第2化合物とを含有する。第1形態に係る抗菌・抗ウイルス剤組成物によれば、例えば、物品に対して抗菌・抗ウイルス性と吸水性とを付与することができる。
【0024】
1.1.1 第1化合物
第1化合物は下記一般式(1)で示される化合物である。式(1)に示される通り、第1化合物はケイ素を含む第4級アンモニウム塩である。このような第4級アンモニウム塩は優れた抗菌性とともに優れた抗ウイルス性を有する。
【0025】
【化10】
式(1)において、
R
1は炭素数10~22のアルキル基であり、
R
2はメチル基、エチル基、プロピル基又はブチル基であり、
R
3はメチル基、エチル基、プロピル基又はブチル基であり、
R
4は炭素数2~4のアルキレン基であり、
R
5はメチル基又はエチル基であり、
R
6はメチル基又はエチル基であり、
R
7はメチル基又はエチル基であり、
Z
1はハロゲンである。
【0026】
式(1)において、R1の具体例としては、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、エイコシル基、ウンエイコシル基、ドエイコシル基、トリエイコシル基、テトラエイコシル基等が挙げられる。R2とR3とは、互いに同じ基であってもよい。また、R5~R7は、互いに同じ基であってもよい。Z1は塩素であっても、臭素であっても、これ以外のハロゲンであってもよいが、特に塩素である場合に高い性能が期待できる。式(2)におけるハロゲンについても同様である。
【0027】
式(1)で表される第4級アンモニウム塩のうち、メトキシシラン系第4級アンモニウム塩の具体例としては、オクタデシルジメチル(3-トリメトキシシリルプロピル)アンモニウムクロライド、ドデシルジメチル(3-トリメトキシシリルプロピル)アンモニウムクロライド、ドデシルジイソプロピル(3-トリメトキシシリルプロピル)アンモニウムクロライド、テトラデシルジメチル(3-トリメトキシシリルプロピル)アンモニウムクロライド、テトラデシルジエチル(3-トリメトキシシシリルプロピル)アンモニウムクロライド、テトラデシルジ-n-プロピル(3-トリメトキシシリルプロピル)アンモニウムクロライド、ペンタデシルジメチル(3-トリメトキシシリルプロピル)アンモニウムクロライド、ペンタデシルジエチル(3-トリメトキシシリルプロピル)アンモニウムクロライド、ペンタデシルジ-n-プロピル(3-トリメトキシシリルプロピル)アンモニウムクロライド、ヘキサデシルジメチル(3-トリメトキシシリルプロピル)アンモニウムクロライド、ヘキサデシルジエチル(3-トリメトキシシリルプロピル)アンモニウムクロライド、ヘキサデシルジ-n-プロピル(3-トリメトキシシリルプロピル)アンモニウムクロライド、オクタデシルジエチル(3-トリメトキシシリルプロピル)アンモニウムクロライド、オクタデシルジ-n-プロピル(3-トリメトキシシリルプロピル)アンモニウムクロライド等が挙げられる。中でも、テトラデシルジメチル(3-トリメトキシシリルプロピル)アンモニウムクロライドは、抗菌・抗ウイルス性が良好となる。
【0028】
式(1)で表される第4級アンモニウム塩のうち、エトキシシラン系第4級アンモニウム塩の具体例としては、上記メトキシシラン系第4級アンモニウム塩として例示したものにおいて、トリメトキシシリル基をトリエトキシシリル基に置換したものが挙げられる。
【0029】
1.1.2 第2化合物
第2化合物は、カチオン基を有し、ケイ素を含まず、且つ、1,500以下の分子量を有する。本発明者の知見によると、上記の第1化合物は、物品に付着した場合に当該物品に高い抗菌・抗ウイルス性を付与するものの、当該物品の吸水性を阻害し易い。これに対して、第1化合物と第2化合物をそれぞれ単独で使用するよりも、第1形態に係る抗菌・抗ウイルス剤組成物のように第1化合物とともに第2化合物を共存させることで、高い抗菌性・抗ウイルス性とともに、吸水性が確保され易い。第2化合物単独では洗濯時に脱落し、洗濯後に十分な吸水性は得られないが、第1化合物と第2化合物を共存させることで、洗濯時の脱落を抑止し、洗濯後も残留することで、洗濯後においても十分な吸水性が得られる。
【0030】
第2化合物を構成するカチオン基としてはアンモニウムカチオン基、ポリオキシアルキレンアルキルアンモニウムカチオン基が挙げられる。特にアンモニウムカチオン基を有する第2化合物は、吸水性とともに抗菌・抗ウイルス性を発揮し得る。アンモニウムカチオン基としては、例えば、第4級アンモニウムカチオン基が挙げられる。
【0031】
第2化合物はケイ素を含まない。第2化合物がケイ素を含まないことで、所望の吸水性が確保され易い。第2化合物は、炭素、水素及び窒素を含んでいてもよく、さらに、酸素、ハロゲン、リン、硫黄等を含んでいてもよい。
【0032】
第2化合物は1,500以下の分子量を有する。第2化合物の分子量は、1,000以下又は800以下であってもよい。第2化合物がこのような分子量を有する場合、所望の吸水性が確保され易い。第2化合物の分子量の下限は特に限定されるものではなく、例えば、200以上であってもよい。
【0033】
抗菌・抗ウイルス性と吸水性とが一層高まる観点から、第2化合物は、アルキル第4級アンモニウム塩であってもよい。「アルキル第4級アンモニウム塩」とは、第4級アンモニウムカチオン基を有する塩であって、窒素に結合している有機基のうちの少なくとも一つがアルキル基である塩を意味する。これらアンモニウムカチオン基の対イオンであるアニオンの種類は特に限定されるものではない。例えば、モノアルキルリン酸、ジアルキルリン酸、塩素、臭素などのハロゲン、メチル硫酸、エチル硫酸又は芳香族アニオンであってよい。芳香族アニオンとしては、例えば、パラトルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸、安息香酸又はアルキルベンゼンスルホン酸等が挙げられる。
【0034】
第1形態に係る抗菌・抗ウイルス剤組成物においては、第2化合物が、下記一般式(2)で示される化合物である場合においても、抗菌・抗ウイルス性と吸水性とが一層高まる。
【0035】
【化11】
式(2)において、
R
8は炭素数10~20のアルキル基又はアリール基であり、
R
9はメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基又は(AO)
pHで表される基であり、AOは炭素数2~4のアルキレンオキサイドであり、pは1~10の整数であり、
R
10はメチル基、エチル基、ベンジル基又は炭素数2~4のヒドロキシアルキル基であり、
nは1又は2であり、
mは1又は2であり、
n+mは3であり、
lは1又は2であり、
Z
2はモノアルキルリン酸、ジアルキルリン酸、ハロゲン、メチル硫酸、エチル硫酸又は芳香族アニオンである。
【0036】
式(2)において、R8の炭素数は10以上又は12以上であってもよく、20以下又は18以下であってもよい。
【0037】
式(2)において、R9がメチル基である場合、抗菌・抗ウイルス性に一層優れる。
【0038】
式(2)において、R10が炭素数2~4のヒドロキシアルキル基、特にヒドロキシエチル基である場合、抗菌・抗ウイルス性に一層優れる。
【0039】
式(2)において、Z2がモノアルキルリン酸又はジアルキルリン酸である場合、抗菌・抗ウイルス性に一層優れる。モノアルキルリン酸、ジアルキルリン酸のアルキル基としては炭素数1~12のアルキル基を挙げることができる。その中でも炭素数1~6のアルキル基が好ましく、炭素数2~4のアルキル基がより好ましい。
【0040】
式(2)で表される化合物の具体例としては、ドデシルジメチルヒドロキシエチルアンモニウム-ブチルリン酸エステル塩、テトラデシルジメチルヒドロキシエチルアンモニウム-ブチルリン酸エステル塩、ドデシルジメチルヒドロキシエチルアンモニウム-エチルリン酸エステル塩、テトラデシルジメチルヒドロキシエチルアンモニウム-エチルリン酸エステル塩等が挙げられる。中でも、ドデシルジメチルヒドロキシエチルアンモニウム-ブチルリン酸エステル塩を採用した場合、抗菌・抗ウイルス性とともに耐久吸水性が一層向上する。
【0041】
1.1.3 組成比
第1形態に係る抗菌・抗ウイルス剤組成物において、第1化合物と第2化合物との割合は特に限定されるものではなく、物品に求められる抗菌性、抗ウイルス性及び吸水性に応じて適宜決定されればよい。例えば、第1化合物と第2化合物との合計を100質量%として、第1化合物の含有量が30質量%以上又は40質量%以上であってもよく、90質量%以下又は95質量%以下であってもよい。
【0042】
1.1.4 付着量
第1形態に係る抗菌・抗ウイルス剤組成物において、物品と、物品に付着した第1化合物及び第2化合物の合計と、の割合は特に限定されるものではない。例えば、物品100質量部に対して、第1化合物と第2化合物との合計が0.1質量部以上付着していてもよく、5質量部以下付着していてもよい。
【0043】
1.1.5 任意成分
第1形態に係る抗菌・抗ウイルス剤組成物は、上記の抗菌・抗ウイルス剤に加えて、その他の成分を含んでいてもよい。例えば、第1形態に係る抗菌・抗ウイルス剤組成物は、界面活性剤及び水を含んでいてもよく、界面活性剤、有機溶媒及び水を含んでいてもよい。また、第1形態に係る抗菌・抗ウイルス剤組成物は、酸成分、アルカリ成分、キレート剤、防腐剤等を含んでいてもよい。或いは、所望の吸水性が確保される範囲で、上記した化合物以外の抗菌・抗ウイルス化合物を含んでいてもよい。
【0044】
1.2 第2形態
第2形態に係る抗菌・抗ウイルス剤組成物は、第1化合物及び第2化合物のうちの少なくとも一方と、第3化合物とを含有する。第2形態に係る抗菌・抗ウイルス剤組成物によれば、例えば、物品に対して抗菌・抗ウイルス性とともに、その耐久性(耐久抗菌・抗ウイルス性)を付与することができる。中でも、第2化合物と第3化合物とを含有する抗菌・抗ウイルス剤組成物によれば、例えば、物品に対して抗菌・抗ウイルス性とともに、その耐久性(耐久抗菌・抗ウイルス性)と吸水性とを付与することができる。第1化合物及び第2化合物については上述した通りである。
【0045】
第3化合物は、下記一般式(A-1)~(C-2)の少なくとも1種に由来する構成単位を備えるポリマー、ポリアルキレンポリアミン又はその酸塩とジシアンジアミドとの反応縮合物、及び、下記一般式(D)で示されるポリマー、からなる群より選択される少なくとも1種である。中でも、下記一般式(A-2)及び(B-2)のうちの少なくとも1種に由来する構成単位を含むポリマーが好ましい。当該ポリマーは、例えば、下記一般式(A-2)に由来する構成単位と下記一般式(B-2)に由来する構成単位とを、モル比で、100:0~0:100の割合で含むものであってもよく、80:20~20:80の割合で含むものであることがより好ましい。尚、当該ポリマーは、下記一般式(A-1)、(A-2)、(B-1)、(B-2)、(C-1)及び(C-2)のうちの少なくとも1種に由来する構成単位に加えて、これら以外の構成単位を備えるものであってもよく、例えば、トリアリルアミンに由来する構成単位を備えるものであってもよい。
【0046】
1.2.1 一般式(A-1)~(C-2)
第2形態に係る抗菌・抗ウイルス剤組成物は、第3化合物として、下記一般式(A-1)~(C-2)の少なくとも1種に由来する構成単位を備えるポリマーを含む場合に、物品に対して抗菌・抗ウイルス性とその耐久性とを付与することができる。
【0047】
【化12】
(式中、R
21は水素原子又はメチル基を表し、R
22は炭素数1~4のアルキレン基又はヒドロキシアルキレン基を表し、R
23は同一であっても相異なっていてもよく、炭素数1~4のアルキル基若しくはヒドロキシアルキル基又は炭素数2~4のアルケニル基若しくはヒドロキシアルケニル基を表し、-Y-は-O-又は-N(H)-を表し、X
p-はp価のアニオンを表し、pは任意の自然数である。)
【0048】
【化13】
(式中、R
24は同一であっても相異なっていてもよく、炭素数1~4のアルキル基若しくはヒドロキシアルキル基又は炭素数2~4のアルケニル基若しくはヒドロキシアルケニル基を表し、X
p-はp価のアニオンを表し、pは任意の自然数である。)
【0049】
一般式(A-1)において、繊維製品の抗ウイルス性とその耐久性をより向上させるという観点からは、R22は炭素数1~2のアルキレン基及びヒドロキシアルキレン基が好ましく、炭素数1~2のアルキレン基がより好ましい。また、繊維製品の抗ウイルス性とその耐久性をより向上させるという観点からは、R23は炭素数1~2のアルキル基及びヒドロキシアルキル基が好ましく、炭素数1~2のアルキル基がより好ましい。
【0050】
一般式(A-1)及び(A-2)において、Xp-で表されるアニオンとしては、第四級アンモニウムイオンと対イオンを形成することができるアニオンであれば特に制限はなく、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、グルコン酸、乳酸、フマル酸、マレイン酸、アジピン酸などの一価又は多価カルボン酸のイオン、アルキルリン酸イオン、アルキル硫酸イオン、ハロゲン化物イオン(例えば、フッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン)、硫酸水素イオン、硫酸イオン、硝酸イオン、リン酸2水素イオン、リン酸1水素イオンなどを挙げることができる。中でも、繊維製品の抗ウイルス性をより向上させるという点からは、ハロゲン化物イオン、炭素数が1~2のアルキル硫酸イオン、カルボン酸イオン、アルキルリン酸イオン、硝酸イオンが好ましく、ハロゲン化物イオン、炭素数が1~2のアルキル硫酸イオンがより好ましい。Xp-で表されるアニオンにおいてpは任意の自然数であってよいが、繊維製品の抗ウイルス性をより向上させるという観点からは、pは1~3の整数であるのが好ましく、より好ましくは1又は2であり、さらに好ましくは1である。
【0051】
一般式(A-1)で表される化合物の具体例としては、[2-((メタ)アクリロイルオキシ)エチル]トリメチルアンモニウムサルフェート、[2-((メタ)アクリロイルオキシ)エチル]トリメチルアンモニウムクロライド、(3-(メタ)アクリルアミドプロピル)トリメチルアンモニウムクロライドなどが挙げられる。市販品としては、例えば、DMAEA-Q(2-(アクリロイルオキシ)エチルトリメチルアンモニウムクロライド)、DMAPAA-Q(3-アクリルアミドプロピル)トリメチルアンモニウムクロライド)(以上、株式会社興人製)、ブレンマー(登録商標)QA(N,N,N,-トリメチル-N-(2-ヒドロキシ-3-メタクリロイルオキシプロピル)アンモニウムクロライド)(日油株式会社製)などが挙げられる。
【0052】
一般式(A-1)で表される化合物は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0053】
一般式(A-2)において、R24は、繊維製品の抗ウイルス性とその耐久性をより向上させるという観点からは、炭素数1~2のアルキル基及びヒドロキシアルキル基が好ましく、炭素数1~2のアルキル基がより好ましい。
【0054】
一般式(A-2)で表される化合物の具体例としては、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド、ジアリルジエチルアンモニウムクロライドなどが挙げられる。市販品としては、例えば、DADMAC(ジアリルジメチルアンモニウムクロライド、ダイソー株式会社製)などが挙げられる。
【0055】
一般式(A―2)で表される化合物は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0056】
【化14】
(式中、R
25は水素原子又はメチル基を表し、R
26は炭素数1~4のアルキレン基又はヒドロキシアルキレン基を表し、R
27は同一であっても相異なっていてもよく、炭素数1~4のアルキル基若しくはヒドロキシアルキル基又は炭素数2~4のアルケニル基若しくはヒドロキシアルケニル基を表し、-Z-は-O-又は-N(H)-を表す。)
【0057】
【化15】
(式中、R
28は、水素原子、炭素数1~4のアルキル基若しくはヒドロキシアルキル基又は炭素数2~4のアルケニル基若しくはヒドロキシアルケニル基を表す。)
【0058】
一般式(B-1)で表される化合物において、R25、R26、R27は、それぞれ一般式(A-1)のR21、R22、R23と同じであってよい。
【0059】
一般式(B-1)で表される化合物の具体例としては、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチルなどが挙げられる。市販品としては、例えば、アクリエステルDM(メタクリル酸ジメチルアミノエチル)、アクリエステルDE(メタクリル酸ジエチルアミノエチル)(以上、三菱ケミカル株式会社製)、アロン(登録商標)DA(アクリル酸ジメチルアミノエチル)(東亞合成株式会社製)などが挙げられる。
【0060】
一般式(B-1)で表される化合物は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0061】
一般式(B-2)において、R28は、繊維製品の抗ウイルス性とその耐久性をより向上させるという観点からは、水素原子、炭素数1~2のアルキル基及びヒドロキシアルキル基が好ましく、水素原子及び炭素数1~2のアルキル基がより好ましい。
【0062】
一般式(B-2)で表される化合物の具体例としては、例えば、ジアリルアミン、メチルジアリルアミンなどが挙げられる。
【0063】
一般式(B-2)で表される化合物は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0064】
【化16】
(式中、R
29は同一であっても相異なっていてもよく、水素原子、炭素数1~4のアルキル基若しくはヒドロキシアルキル基又は炭素数2~4のアルケニル基若しくはヒドロキシアルケニル基を表す。)
【0065】
【化17】
(式中、R
30は同一であっても相異なっていてもよく、水素原子、炭素数1~4のアルキル基若しくはヒドロキシアルキル基又は炭素数2~4のアルケニル基若しくはヒドロキシアルケニル基を表し、X
p-はp価のアニオンを表し、pは任意の自然数である。)
【0066】
一般式(C-1)及び(C-2)において、R29及びR30は、繊維製品の抗ウイルス性とその耐久性をより向上させるという観点からは、水素原子、炭素数1~2のアルキル基及びヒドロキシアルキル基が好ましく、水素原子及び炭素数1~2のアルキル基がより好ましい。
【0067】
一般式(C-2)において、Xp-で表されるアニオンとしては、第四級アンモニウムイオンと対イオンを形成することができるアニオンであれば特に制限はなく、一般式(A-1)や(A-2)におけるものと同様であっても異なっていてもよい。アニオンの具体例については、上述した通りである。
【0068】
一般式(C-1)及び(C-2)で表される化合物は、各々、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0069】
1.2.2 ポリアルキレンポリアミン又はその酸塩とジシアンジアミドとの反応縮合物
第2形態に係る抗菌・抗ウイルス剤組成物は、第3化合物として、上記の一般式(A-1)~(C-1)に係る構成単位を有するポリマーに替えて、或いは、これとともに、ポリアルキレンポリアミン又はその酸塩とジシアンジアミドとの反応縮合物(ポリアルキレンポリアミン又はその酸塩に由来する構造と、ジシアンジアミドに由来する構造とを備えるもの)を含む場合にも、物品に対して抗菌・抗ウイルス性とその耐久性とを付与することができる。また、第2形態に係る抗菌・抗ウイルス剤組成物においては、上記の反応縮合物とともに、元素周期律表における第II族金属の酸塩を併用してもよい。
【0070】
ポリアルキレンポリアミンは、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、イミノビスプロピルアミンなどの直鎖状ポリアミンが好ましい。これらのポリアルキレンポリアミンは、その塩、例えば、塩酸、硫酸、ギ酸、酢酸などの塩であってもよい。
【0071】
第II族金属の酸塩は、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、ラジウム、亜鉛、カドミウム又は水銀の塩であってよく、特に亜鉛、カルシウム又はマグネシウムの塩、特に塩化物、硫酸塩、ギ酸塩、硝酸塩等が好ましい。
【0072】
1.2.3 一般式(D)
第2形態に係る抗菌・抗ウイルス剤組成物は、第3化合物として、上記の一般式(A-1)~(C-1)に係る構成単位を有するポリマーや上記の反応縮合物に替えて、或いは、これらのうちの少なくとも1種とともに、下記一般式(D)で示されるポリマーを含む場合にも、物品に対して抗菌・抗ウイルス性とその耐久性とを付与することができる。
【0073】
【0074】
式(D)において、R31は炭素数1~4のアルキレン基であり、R32はメチル基又はエチル基であり、R33はメチル基又はエチル基であり、R34は炭素数3又は4のアルキレン基であり、R35はメチル基又はエチル基であり、R36はメチル基又はエチル基であり、R37は炭素数1~4のアルキレン基であり、Z31はハロゲンであり、kは任意の自然数である。
【0075】
1.2.4 組成比
第2形態に係る抗菌・抗ウイルス剤組成物において、第1化合物と第2化合物と第3化合物との割合は特に限定されるものではなく、物品に求められる抗菌性、抗ウイルス性及びその耐久性等に応じて適宜決定されればよい。例えば、第1化合物と第2化合物と第3化合物との合計を100質量%として、第3化合物の含有量が、10質量%以上、15質量%以上又は25質量%以上であってもよく、また、99質量%以下であってもよい。
【0076】
1.2.5 付着量
第2形態に係る抗菌・抗ウイルス剤組成物において、物品と、物品に付着した第1化合物、第2化合物及び第3化合物の合計と、の割合は特に限定されるものではない。例えば、物品100質量部に対して、第1化合物と第2化合物と第3化合物との合計が0.1質量部以上、0.2質量部以上又は0.3質量部以上付着していてもよく、5質量部以下、4質量部以下又は3質量部以下付着していてもよい。
【0077】
1.2.6 任意成分
第2形態に係る抗菌・抗ウイルス剤組成物は、上記の第1化合物及び/又は第2化合物と第3化合物とに加えて、その他の成分を含んでいてもよい。例えば、第2形態に係る抗菌・抗ウイルス剤組成物は、界面活性剤及び水を含んでいてもよく、界面活性剤、有機溶媒及び水を含んでいてもよい。また、第2形態に係る抗菌・抗ウイルス剤組成物は、酸成分、アルカリ成分、キレート剤、防腐剤等を含んでいてもよい。或いは、所望の特性が確保される範囲で、上記した化合物以外の抗菌・抗ウイルス化合物を含んでいてもよい。
【0078】
2.物品
上記本開示の抗菌・抗ウイルス剤組成物が付着した物品は、抗菌・抗ウイルス性に優れるとともに、吸水性又は耐久抗菌・抗ウイルス性にも優れる。
【0079】
物品の種類は特に限定されるものではなく、抗菌・抗ウイルス性が必要とされるものであればよい。物品の具体例としては、例えば、繊維製品が挙げられる。或いは、本開示の抗菌・抗ウイルス剤組成物は、繊維製品以外の物品に付与されてもよい。
【0080】
物品が繊維製品である場合、当該繊維製品を構成する繊維の種類は特に限定されるものではなく、天然繊維であってもよいし化学繊維であってもよい。繊維の具体例としては、綿、麻、絹、羊毛等の天然繊維、レーヨン、アセテート等の半合成繊維、ポリアミド(ナイロン等)、ポリエステル、ポリウレタン、ポリプロピレン等の合成繊維、及びこれらの複合繊維、混紡繊維が挙げられる。ポリアミドとしてはナイロン6、ナイロン6,6等が挙げられる。ポリエステルとしてはポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリ乳酸等が挙げられる。繊維は、糸、編物(交編を含む)、織物(交織を含む)、不織布、紙、木材などの形態を採るものであってもよい。繊維は染色されたものであってもよい。繊維は、その表面に何らかの修飾処理が施されたものであってもよい。
【0081】
3.物品の製造方法
本開示の技術は、抗菌性及び抗ウイルス性を有する物品を製造する方法としての側面も有する。すなわち、本開示の物品の製造方法は、抗菌・抗ウイルス性を付与する対象物に、上記本開示の抗菌・抗ウイルス剤組成物を付着させて、抗菌・抗ウイルス性を有する物品を得ること、を含む。上述したように、対象物は繊維であってもよく、物品は繊維製品であってもよい。
【0082】
物品に上記の抗菌・抗ウイルス剤組成物を付着させる方法としては、特に限定されるものではない。例えば、本開示の方法は、抗菌・抗ウイルス剤組成物を含む処理液に対象物を接触させることで、当該対象物に当該抗菌・抗ウイルス剤組成物を付着させてもよい。処理液による処理を行うタイミングは特に限定されるものではない。
【0083】
処理液は、例えば、上記の第1化合物と第2化合物とを含むもの、或いは、上記の第1化合物及び第2化合物のうちの少なくとも一方と第3化合物とを含むものであればよい。また、処理液は、酸成分、アルカリ成分、界面活性剤、キレート剤、防腐剤等のその他の成分を含んでいてもよい。処理液のpHは、特に限定されないが、例えば、2以上7以下であってもよい。上記の本開示の抗菌・抗ウイルス剤組成物が液状である場合は、当該液状の組成物をそのまま処理液として用いてもよい。
【0084】
処理液で対象物を処理する方法の具体例としては、パディング処理、浸漬処理、スプレー処理、コーティング処理等が挙げられる。このときの処理液の濃度や付与後の熱処理等の処理条件は、その目的や性能等の諸条件を考慮して、適宜調整すればよい。処理液で対象物を処理した後は、余分な抗菌・抗ウイルス剤を除去するために、水洗等の洗浄処理を行ってもよい。また、処理液が水を含有する場合は、対象物に処理液を付着させた後に水を除去するために、乾燥処理を行ってもよい。乾燥方法としては、特に制限はなく、乾熱法、湿熱法のいずれであってもよい。乾燥温度や乾燥時間も特に制限されず、例えば、室温~200℃で10秒~数日間乾燥させればよい。乾燥温度は40~130℃であってもよく、乾燥時間は20秒~10分であってもよい。必要に応じて、乾燥後に100~190℃の温度で10秒~5分間程度加熱処理してもよい。加熱処理の温度は130~190℃であってもよく、加熱処理の時間は30秒~5分であってもよい。
【0085】
4.効果
以上の通り、本開示の抗菌・抗ウイルス剤組成物は、第1化合物とともに第2化合物を含有することで、物品に対して優れた抗菌性と抗ウイルス性と吸水性とを付与可能である。或いは、本開示の抗菌・抗ウイルス剤組成物は、第1化合物及び第2化合物のうちの少なくとも一方と第3化合物とを含有することで、物品に対して優れた抗菌・抗ウイルス性を付与することができ、且つ、当該物品が耐久抗菌・抗ウイルス性にも優れたものとなる。
【実施例0086】
以下、実施例を示しつつ本開示の技術による効果等について、より詳細に説明するが、本開示の技術は以下の実施例に限定されるものではない。
【0087】
1.第1形態
1.1 第1化合物の準備
本実施例で用いた第1化合物は以下の通りである。
【0088】
化合物1A:下記一般式(1)において、R1が炭素数14のアルキル基であり、R2がメチル基であり、R3がメチル基であり、R4がプロピレン基であり、R5がメチル基であり、R6がメチル基であり、R7がメチル基であり、Z1が塩素である化合物。
【0089】
化合物1B:下記一般式(1)において、R1が炭素数18のアルキル基であり、R2がメチル基であり、R3がメチル基であり、R4がプロピレン基であり、R5がエチル基であり、R6がエチル基であり、R7がエチル基であり、Z1が塩素である化合物。
【0090】
化合物1C:下記一般式(1)において、R1が炭素数18のアルキル基であり、R2がメチル基であり、R3がメチル基であり、R4がプロピレン基であり、R5がメチル基であり、R6がメチル基であり、R7がメチル基であり、Z1が塩素である化合物。
【0091】
【0092】
化合物1A~1Cの合成条件は以下の通りとした。尚、以下の合成条件から明らかなように、化合物1A~1Cは、各々、当該化合物を40重量%含む溶液として使用した。
【0093】
1.1.1 化合物1Aの合成条件
反応容器にトリメトキシシリルプロピルクロライド199質量部、ジメチルテトラデシルアミン240質量部、トリエチレングリコールモノメチルエーテル539質量部を入れ、窒素雰囲気下、150℃で20時間反応させ、テトラデシル[3-(トリメトキシシリル)プロピル]ジメチルアンモニウムクロライドが40重量%の溶液1100質量部を得た。
【0094】
1.1.2 化合物1Bの合成条件
反応容器にトリエトキシシリルプロピルクロライド240質量部、ジメチルオクタデシルアミン298質量部、エタノール606質量部を入れ、窒素雰囲気下、150℃で20時間反応させ、オクタデシル[3-(トリエトキシシリル)プロピル]ジメチルアンモニウムクロライドが40重量%の溶液1342質量部を得た。
【0095】
1.1.3 化合物1Cの合成条件
反応容器にトリメトキシシリルプロピルクロライド199質量部、ジメチルオクタデシルアミン298質量部、エタノール744質量部を入れ、窒素雰囲気下、150℃で20時間反応させ、オクタデシル[3-(トリメトキシシリル)プロピル]ジメチルアンモニウムクロライドが40重量%の溶液1204質量部を得た。
【0096】
1.2 第2化合物の準備
本実施例で用いた第2化合物は以下の通りである。以下の化合物2A~2Dは、カチオン基を有し、ケイ素を含まず、且つ、1,500以下の分子量を有する。
【0097】
化合物2A:下記一般式(2)において、R8が炭素数12のアルキル基であり、R9がメチル基であり、R10がヒドロキシエチル基であり、nが1であり、mが2であり、lが1であり、Z2がブチルリン酸である化合物αと、R8が炭素数12のアルキル基であり、R9がメチル基であり、R10がヒドロキシエチル基であり、nが1であり、mが2であり、lが2であり、Z2がジブチルリン酸である化合物βと、の混合物(化合物αと化合物βとのモル比は1:1)。
【0098】
化合物2B:下記一般式(2)において、R8が炭素数18のアルキル基であり、R9がメチル基であり、R10がメチル基であり、nが1であり、mが2であり、lが1であり、Z2が塩素である化合物。
【0099】
化合物2C:下記一般式(2)において、R8が炭素数12のアルキル基であり、R9がメチル基であり、R10がベンジル基であり、nが1であり、mが2であり、lが1であり、Z2が塩素である化合物。
【0100】
化合物2D:下記一般式(2)において、R8が炭素数10のアルキル基であり、R9がメチル基であり、R10がメチル基であり、nが2であり、mが1であり、lが1であり、Z2が塩素である化合物。
【0101】
【0102】
化合物2A~2Dの合成条件は以下の通りとした。尚、以下の合成条件から明らかなように、化合物2A~2Dは、各々、当該化合物を15重量%含む溶液として使用した。
【0103】
1.2.1 化合物2Aの合成条件
n-ブタノール3モルと無水リン酸1モルとから調整したモノ体/ジ体の混合比が約1/1のアルキルリン酸エステル143質量部と水500質量部とを反応容器に仕込み、ドデシルジメチルアミン260質量部を加えて中和した。この中和物のなかにエチレンオキサイド100質量部を仕込み、100℃で3時間反応させ、ドデシルジメチルヒドロキシエチルアンモニウム-ブチルリン酸エステル塩を50.0質量%含む組成物1000質量部を得た。これをドデシルジメチルヒドロキシエチルアンモニウム-ブチルリン酸エステル塩が15重量%となるように調整した。
【0104】
1.2.2 化合物2Bの合成条件
反応容器にステアリルジメチルアミン297質量部を仕込んだ。塩化メチル50質量部を加え、80℃で2時間反応後、水653質量部を加えて、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライドを34.7質量%含む組成物1000質量部を得た。これをステアリルトリメチルアンモニウムクロライドが15重量%となるように調整した。
【0105】
1.2.3 化合物2Cの合成条件
反応容器にジメチルラウリルアミン213質量部を仕込んだ。60℃でベンジルクロライド127質量部を滴下し、60℃で2時間反応後、水660質量部を加えて、ジメチルベンジルラウリルアンモニウムクロライドを34質量%含む組成物1000質量部を得た。これをジメチルベンジルラウリルアンモニウムクロライドが15重量%となるように調整した。
【0106】
1.2.4 化合物2Dの合成条件
反応容器にジデシルメチルアミン311質量部を仕込んだ。塩化メチル50.5質量部を仕込み、80℃で2時間反応させた後、水638質量部を加えて、ジデシルジメチルアンモニウムクロライドを36.2質量%含む組成物1000質量部を得た。これをジデシルジメチルアンモニウムクロライドが15重量%となるように調整した。
【0107】
1.2.5 比較化合物の合成条件
上記第2化合物の比較化合物として、以下の化合物3を準備した。以下の化合物3は、カチオン基を有し、ケイ素は含まないものの、1,500超の分子量を有する高分子化合物である。化合物3についても、化合物2A~2Dと同様に、当該化合物を15重量%含む溶液として使用した。
【0108】
化合物3:下記一般式(3)において、R11がエチレン基であり、R12がメチル基であり、R13がメチル基であり、R14がプロピレン基であり、R15がメチル基であり、R16がメチル基であり、R17がエチレン基であり、重量平均分子量が30,000である高分子化合物。
【0109】
【0110】
1.3 処理液(抗菌・抗ウイルス剤組成物)の調製
上記の第1化合物と第2化合物とを、溶媒等とともに、下記表1、2に示される所定の比率にて混合して処理液を得た。
【0111】
1.4 物品に対する抗菌・抗ウイルス性の付与
1.4.1 実施例1~8
綿ニット(目付165g/m2、株式会社色染社製)又はポリエステルニット(目付120g/m2、株式会社色染社製)を上記の処理液に浸漬させ、絞り率90%(綿)又は110%(ポリエステル)にて処理し、次いで、130℃で2分間熱処理することで、抗菌・抗ウイルス性を有する繊維製品を得た。
【0112】
1.4.2 比較例1、2
処理液の調製において第2化合物に替えて第1化合物を混合し(第2化合物を混合せずに、その分、第1化合物を増加させて)、表2に示されるような組成を有する処理液を用いたこと以外は、実施例と同様にして処理を行い、抗菌・抗ウイルス性を有する繊維製品を得た。
【0113】
1.4.3 比較例3
処理液の調製において第1化合物に替えて第2化合物を混合し(第1化合物を混合せずに、その分、第2化合物を増加させて)、表2に示されるような組成を有する処理液を用いたこと以外は、実施例と同様にして処理を行い、抗菌・抗ウイルス性を有する繊維製品を得た。
【0114】
1.4.4 比較例4
特許文献1(特開昭62-177284号公報)に記載された方法にしたがって、抗菌性を有する繊維製品を得た。具体的には、化合物1Cが30g/L、ラウリルアルコールエチレンオキサイド3モル付加物の硫酸エステルNa塩5g/Lとなるように処理液を調整し、処理浴を準備した。綿ニット又はポリエステルニットを処理浴に浸漬させ、絞り率90%(綿)又は110%(ポリエステル)にて処理し、次いで、130℃で2分間熱処理することで、抗菌・抗ウイルス性を有する繊維製品を得た。
【0115】
1.4.5 比較例5
特許文献2(国際公開第2012/014762号)に記載された方法にしたがって、抗菌性を有する繊維製品を得た。具体的には化合物1Cが30g/L、エチレングリコールジグリシジルエーテルが10g/Lとなるように処理液を調整し、処理浴を準備した。綿ニット又はポリエステルニットを処理浴に浸漬させ、絞り率90%(綿)又は110%(ポリエステル)にて処理し、次いで、130℃で2分間熱処理することで、抗菌・抗ウイルス性を有する繊維製品を得た。
【0116】
1.4.6 比較例6
処理液への浸漬をせずに綿ニット又はポリエステルニットそのものを用いた。
【0117】
1.4.7 比較例7
処理液の調製において第2化合物に替えて第3化合物を混合し、表2に示されるような組成を有する処理液を用いたこと以外は、実施例と同様にして処理を行い、抗菌・抗ウイルス性を有する繊維製品を得た。
【0118】
1.5 洗濯
JIS L1930(2014) C4G法に準じて、繊維製品を洗濯した。洗剤はJAFET標準配合洗剤(繊維評価技術評議会)を使用し、洗濯液の洗剤濃度を1.33g/Lとして使用した。吸水性の変化を確認すべく、繰り返し洗濯を10回行った。
【0119】
1.6 抗菌性の評価
JIS L1902(2015)定量試験(8.2菌液吸収法)により抗菌活性値を測定し、洗濯前における繊維製品の抗菌性能を評価した。使用菌として黄色ぶどう球菌Staphylococcus aureus NBRC12732および、肺炎桿菌Klebsiella pneumoniae NBRC13277を用いた。結果を下記表1、2に示す。表1、2に示される活性値が高いもの程、抗菌性に優れる。
【0120】
1.7 抗ウイルス性の評価
JIS L1922(2016)により抗ウイルス活性値を測定し、洗濯前における繊維製品の抗ウイルス性能を評価した。使用ウイルスとして、A型インフルエンザウイルス(H3N2) ATCC VR-1679を使用した。抗ウイルス活性値=log(Va)-log(Vc)として評価した。結果を下記表1、2に示す。抗菌性と同様に、表1、2に示される活性値が高いものほど抗ウイルス性に優れる。
【0121】
1.8 吸水性の評価
JIS L1907(2020)(7.11滴下法)に準じ、水1滴(約12mg)を試験布に滴下し、水滴による反射がなくなるまでの時間(秒)を測定して、吸水性を評価した。数値が小さいほど、吸水性が高いことを示す。
【0122】
【0123】
【0124】
表1、2に示される結果から明らかなように、第1化合物と第2化合物とを含む組成物によって繊維製品を処理した場合、当該繊維製品は、高い抗菌性及び抗ウイルス性を有するとともに、高い吸水性を有し、且つ、洗濯前後において吸水性が維持される(実施例1~8)。
【0125】
一方で、抗菌・抗ウイルス剤組成物が第2化合物を含まない場合、吸水性を確保できない(比較例1、2)。
【0126】
また、抗菌・抗ウイルス剤組成物が第1化合物を含まない場合、繊維製品において抗ウイルス性が低下するほか、洗濯後において吸水性が失われる(比較例3)。
【0127】
また、第2化合物に替えて、メラミン樹脂や硫酸塩界面活性剤やポリアクリル酸/アクリルエチル共重合体を採用した場合、吸水性を確保できない(比較例4、5)。
【0128】
また、綿ニットやポリエステルニットそのものに抗菌性や抗ウイルス性はない(比較例6)。
【0129】
さらに、第2化合物に替えて分子量が1,500超の化合物3を採用した場合、初期および耐久吸水性が低下する(比較例7)。
【0130】
以上のことから、以下の要件を満たす抗菌・抗ウイルス剤組成物によって、物品に対して優れた抗菌性と抗ウイルス性と吸水性とを付与することが可能であるといえる。
(1)抗菌・抗ウイルス剤組成物が、上記式(1)で示される所定の第1化合物を含有すること。
(2)抗菌・抗ウイルス剤組成物が、カチオン基を有し、ケイ素を含まず、且つ、1,500以下の分子量を有する第2化合物を含有すること。
【0131】
2.第2形態
2.1 第3化合物の準備
本実施例で用いた第3化合物の詳細は以下の通りである。
【0132】
化合物3A:下記一般式(D)において、R31がエチレン基であり、R32がメチル基であり、R33がメチル基であり、R34がプロピレン基であり、R35がメチル基であり、R36がメチル基であり、R37がエチレン基でありZ31が塩素であり、重量平均分子量が30,000である高分子化合物。
【0133】
【0134】
化合物3B:反応容器にジアリルアミン(広栄化学製)(435質量部)とイオン交換水(100質量部)を仕込み、工業用塩酸35%(465質量部)を滴下しながら仕込み、ジアリルアミン塩酸塩を60質量%含む組成物1を得た。別の反応容器に組成物1(175質量部)とDADMAC(ダイソー株式会社製、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド(不揮発分65質量%))(430質量部)とイオン交換水(382質量部)と重合開始剤として過硫酸アンモニウム(13質量部)とを仕込み、窒素ガス存在下で80~90℃で4時間反応させて、化合物3Bとしてのポリマーを含む組成物2(化合物3Bの溶液)を得た。
【0135】
化合物3C:反応容器にメタクリレートDMA-200(三洋化成工業株式会社製、メタクリル酸ジメチルアミノエチル)(110質量部、0.70モル)と、イソプロピルアルコール(50質量部)とを仕込み、窒素ガス存在下で60~70℃で4級化剤としてジメチル硫酸(90質量部、0.71モル)を6時間かけて滴下した。その後、60~70℃で1時間反応させることで、下記一般式(A-1)で表される化合物を80質量%含む組成物3を得た。当該組成物3(250質量部)と、イオン交換水(500質量部)と、重合開示剤としての過硫酸カリウム(1.5質量部)とを仕込み、窒素ガス存在下で80~90℃で4時間反応させ、その後イオン交換水250質量部を加えて、所定のポリマーを20質量%含む組成物4(化合物3Cの溶液)を得た。
【0136】
【0137】
化合物3D:上記の組成物3(235質量部、不揮発分換算で188質量部)と、下記一般式(B-1)で表される化合物としてのメタクリレートDMA-200(10質量部)と、イオン交換水(753質量部)と、重合開始剤としての過硫酸カリウム(1.5質量部)とを仕込み、窒素ガス存在下で80~90℃で4時間反応させた。次いで、グリシジル基を有する架橋剤としてデナコールEX-830(商品名、ナガセケムテックス(株)製、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル(分子量482))(2質量部)を仕込み75~80℃で4時間反応させ、所定のポリマーを20質量%含む組成物5(化合物3Dの溶液)を得た。
【0138】
【0139】
化合物3E:206質量部のジエチレントリアミンに128質量部の塩化アンモニウムを60~140℃で撹拌しながら徐々に添加した。さらに、160℃まで昇温し、4質量部の塩化亜鉛、218質量部のジシアンジアミドを添加した。この混合反応物を230~250℃で2時間加熱して縮合させ、450質量部の淡黄色の反応縮合物を得たうえで、当該反応縮合物を45質量%含む溶液(化合物3Eの溶液)を得た。
【0140】
2.2 処理液(抗菌・抗ウイルス剤組成物)の調製
上記の第1化合物及び第2化合物のうちの少なくとも一方と、上記の第3化合物とを、溶媒等とともに、下記表3に示される所定の比率にて混合して処理液を得た。
【0141】
2.3 物品に対する抗菌・抗ウイルス性の付与
2.3.1 実施例9~16、比較例8
ポリエステル/綿=50%/50%からなるニット(白布、目付200g/m2)を上記の処理液に浸漬させ、絞り率100%にて処理し、次いで、130℃で2分間熱処理して乾燥し、さらに150℃で1分間の熱処理をすることで、抗菌・抗ウイルス性を有する繊維製品を得た。
【0142】
2.3.2 比較例9
化合物2Aの溶液が40g/L、ユニカレジン380-K(メラミン樹脂:ユニオン化学製)1.5g/L、ユニカカタリストP-3(触媒:ユニオン化学製)0.5g/Lとなるように処理液を調整し、処理浴を準備した。ポリエステル/綿=50%/50%からなるニット(白布、目付200g/m2)を処理浴に浸漬させ、絞り率100%にて処理し、次いで、130℃で2分間熱処理して乾燥し、さらに150℃で1分間の熱処理をすることで、抗菌・抗ウイルス性を有する繊維製品を得た。
【0143】
2.3.3 比較例10
化合物2Aの溶液が40g/L、ラウリルアルコールエチレンオキサイド3モル付加物の硫酸エステルNa塩5g/Lとなるように処理液を調整し、処理浴を準備した。ポリエステル/綿=50%/50%からなるニット(白布、目付200g/m2)を処理浴に浸漬させ、絞り率100%にて処理し、次いで、130℃で2分間熱処理して乾燥し、さらに150℃で1分間の熱処理をすることで、抗菌・抗ウイルス性を有する繊維製品を得た。
【0144】
2.4 洗濯
JIS L1930(2014) C4G法に準じて、繊維製品を洗濯した。洗剤はJAFET標準配合洗剤(繊維評価技術評議会)を使用し、洗濯液の洗剤濃度を1.33g/Lとして使用した。吸水性の変化を確認すべく、繰り返し洗濯を10回行った。
【0145】
2.5 抗菌性及び耐久抗菌性の評価
JIS L1902(2015)定量試験(8.2菌液吸収法)により抗菌活性値を測定し、洗濯前後における繊維製品の抗菌性能を評価した。使用菌として黄色ぶどう球菌Staphylococcus aureus NBRC12732および、肺炎桿菌Klebsiella pneumoniae NBRC13277を用いた。結果を下記表3に示す。表3に示される活性値が高いもの程、抗菌性に優れる。
【0146】
2.6 抗ウイルス性及び耐久抗ウイルス性の評価
JIS L1922(2016)により抗ウイルス活性値を測定し、洗濯前後における繊維製品の抗ウイルス性能を評価した。使用ウイルスとして、A型インフルエンザウイルス(H3N2) ATCC VR-1679を使用した。抗ウイルス活性値=log(Va)-log(Vc)として評価した。結果を下記表3に示す。抗菌性と同様に、表3に示される活性値が高いものほど抗ウイルス性に優れる。尚、JISにおいては、抗ウイルス性の活性値が2.0以上の場合を効果ありとしているが、活性値2.0以下でもウイルスは減少する。本実施例では活性値が1.4でも抗ウイルス効果があるものと判定する。
【0147】
2.7 吸水性の評価
JIS L1907(2020)(7.11滴下法)に準じ、水1滴(約12mg)を試験布に滴下し、水滴による反射がなくなるまでの時間(秒)を測定して、吸水性を評価した。数値が小さいほど、吸水性が高いことを示す。
【0148】
【0149】
表3に示される結果から明らかなように、第1化合物及び第2化合物のうちの少なくとも一方と、第3化合物とを含む組成物によって繊維製品を処理した場合、当該繊維製品は、高い抗菌性及び抗ウイルス性を有し、且つ、洗濯後において抗菌性及び抗ウイルス性が維持され、すなわち、優れた耐久抗菌・抗ウイルス性を有する(実施例9~16)。また、第2化合物と第3化合物とを含む組成物によって繊維製品を処理した場合、当該繊維製品は、高い抗菌性及び抗ウイルス性を有し、且つ、洗濯後において抗菌性及び抗ウイルス性が維持されるとともに、高い吸水性を有するものとなる(実施例9~14、16)。
【0150】
一方で、抗菌・抗ウイルス剤組成物が第3化合物を含まない場合、耐久抗ウイルス性が確保できない(比較例8)。
【0151】
また、第3化合物に替えて、メラミン樹脂や硫酸塩界面活性剤を採用した場合も、耐久抗ウイルス性が確保できない(比較例9、10)。
【0152】
また、ポリエステル/綿ニットそのものに抗菌性や抗ウイルス性はない(比較例11)。
【0153】
以上のことから、以下の要件を満たす抗菌・抗ウイルス剤組成物によって、物品に対して優れた抗菌性と抗ウイルス性とともに、その耐久性(耐久抗菌・抗ウイルス性)を付与することが可能であるといえる。
(1)抗菌・抗ウイルス剤組成物が、上記式(1)で示される所定の第1化合物、及び、カチオン基を有し、ケイ素を含まず、且つ、1,500以下の分子量を有する第2化合物、のうちの少なくとも一方を含有すること。
(2)抗菌・抗ウイルス剤組成物が、上記一般式(A-1)~(C-2)の少なくとも1種に由来する構成単位を備えるポリマー、ポリアルキレンポリアミン又はその酸塩とジシアンジアミドとの反応縮合物、及び、上記一般式(D)で示されるポリマー、からなる群より選択される少なくとも1種である第3化合物を含有すること。