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特開2022-76472電気生理学的検知のための互い違いの電極構成
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022076472
(43)【公開日】2022-05-19
(54)【発明の名称】電気生理学的検知のための互い違いの電極構成
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/287 20210101AFI20220512BHJP
【FI】
A61B5/287 200
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021181701
(22)【出願日】2021-11-08
(31)【優先権主張番号】17/092,627
(32)【優先日】2020-11-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】511099630
【氏名又は名称】バイオセンス・ウエブスター・(イスラエル)・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Biosense Webster (Israel), Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】エラド・ナカル
(72)【発明者】
【氏名】ヨアヴ・ベナロヤ
【テーマコード(参考)】
4C127
【Fターム(参考)】
4C127AA02
4C127LL08
(57)【要約】
【課題】電気生理学的検知のための装置を提供すること。
【解決手段】装置は、被験者の身体に挿入されるように構成されたシャフトと、シャフトの遠位端に結合された拡張可能な要素とを含む。拡張可能な要素は、拡張可能な要素が拡張されると六角形グリッド内に配置される複数の電極を含む。他の実施形態も、記述されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気生理学的検知のための装置であって、前記装置は、
被験者の体内に挿入されるように構成されたシャフトと、
拡張可能な要素であって、前記シャフトの遠位端に結合され、前記拡張可能な要素が拡張されると六角形グリッド内に配置される複数の電極を備える、拡張可能な要素と
を備える、装置。
【請求項2】
前記電極のうち各対の隣接する電極の間の距離が、1~5mmである、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記拡張可能な要素が、平行なスプラインのアセンブリを備え、
前記電極が、前記スプラインに結合された列にそれぞれグループ化され、前記列は、前記電極が前記六角形グリッド内に配置されるように、互いに対して互い違いになっている、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記電極の各々が、前記スプラインのうちの対応するスプラインの上に装着されたリングを備える、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記拡張可能な要素が、複数のループ要素を含み、前記ループ要素の各々が、前記スプラインの異なるそれぞれの対を含む、請求項3に記載の装置。
【請求項6】
前記拡張可能な要素が、少なくとも1つの巻き込める基板を備え、
前記基板が広げられたときに前記電極が前記六角形グリッド内に配置されるように、前記電極が前記基板に結合されている、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記基板がプリント回路基板(PCB)を含む、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記拡張可能な要素が膨張可能なバルーンを備え、
前記バルーンが膨張したときに前記電極が前記六角形グリッド内に配置されるように、前記電極が前記バルーンに結合されている、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
方法であって、
被験者の組織に接触するそれぞれの対の電極の間の複数のバイポーラ信号を取得することであって、前記電極が六角形グリッド内に配置されている、ことと、
前記バイポーラ信号に基づいて、前記組織に沿った生体電気伝播の推定経路を計算することと
を含む、方法。
【請求項10】
前記バイポーラ信号を取得することが、
前記電極からそれぞれのユニポーラ信号を測定することと、
それぞれの対の前記ユニポーラ信号を互いに減算することによって、前記バイポーラ信号のそれぞれを取得することと
を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記推定経路が、複数の線形セグメントを含み、前記複数の線形セグメントの各々が、前記対の電極のそれぞれの間を通過する、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記電極が、前記被験者の体内に配置されたシャフトの遠位端に結合された拡張可能な要素に属する、請求項9に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、体内電気生理学的検知に関する。
【背景技術】
【0002】
米国特許第5,873,849号は、電極と交差する平面内に三角形を形成するように配置された少なくとも3つの個別に指定可能な電極を有する電極アレイと、当該電極に電気波形を送達し、電極間に電気穿孔誘発電場を生成するために電極に動作可能に接続された電気信号生成装置とを利用することによって、電気波形をインビボ送達するための電極及び電極アレイ装置及びシステムを記載している。
【0003】
米国特許出願公開第2016/0317094号は、複数の電極を有するカテーテルを含む、組織をマッピングするための電気生理学システムを記載している。システムは、その先端に小さい電極を高密度に収集したカテーテルであってもよい。電極は、回転方向にかかわらず一定のパターンで配置されてもよい。システムは、カテーテルを有する電気生理学装置であってもよく、カテーテルは、近位端及び遠位端を有する本体を有する。カテーテル本体の遠位端には、複数の電極及び/又は同軸電極を備える遠位先端部がある。信号プロセッサは、複数の電極及び/又は同軸電極に動作可能に接続されてもよく、少なくとも1つの電気生理学的パラメータを測定できる。
【0004】
米国特許出願公開第2019/0239765号は、複数の微小電極を担持するカバーをされたスパインを有する遠位電極アセンブリを有する電気生理学カテーテルを記載している。各スパイン上の微小電極の位置は、隣接するスパイン上の微小電極に対して互い違いの配置を有するので、カテーテルの使用中に、隣接するスパイン上の電極どうしが互いに接触するリスクが最小限に抑えられる。電極を互い違いの配置とすることで、有効な同心状電極アレイが増加するか又は少なくとも倍増するため、より大きな有効接触面が遠位電極アセンブリに提供される。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一部の実施形態により、被験者の身体に挿入されるように構成されたシャフトと、シャフトの遠位端に結合された拡張可能な要素と、を含む装置が提供される。拡張可能な要素は、拡張可能な要素が拡張されると六角形グリッド内に配置される複数の電極を含む。
【0006】
いくつかの実施形態では、電極のうち各対の隣接する電極の間の距離は、1~5mmである。
【0007】
いくつかの実施形態では、拡張可能な要素は、平行なスプラインのアセンブリを含み、電極は、スプラインに結合された列にそれぞれグループ化され、列は、電極が六角形グリッド内に配置されるように、互いに対して互い違いになっている。
【0008】
いくつかの実施形態では、電極の各々は、スプラインのうちの対応するスプラインの上に装着されたリングを含む。
【0009】
いくつかの実施形態では、拡張可能な要素は複数のループ要素を含み、ループ要素の各々は、スプラインの異なるそれぞれの対を含む。
【0010】
いくつかの実施形態では、拡張可能な要素は、少なくとも1つの巻き込める基板を含み、基板が広げられたときに電極が六角形グリッド内に配置されるように、電極が基板に結合されている。
【0011】
いくつかの実施形態では、基板はプリント回路基板(PCB)を含む。
【0012】
いくつかの実施形態では、拡張可能な要素は膨張可能なバルーンを含み、バルーンが膨張したときに電極が六角形グリッド内に配置されるように、電極はバルーンに結合される。
【0013】
本発明のいくつかの実施形態によれば、被験者の体内にシャフトを挿入することを含む方法が更に提供される。方法は、シャフトを挿入することに続いて、シャフトの遠位端に結合された拡張可能な要素を拡張することであって、拡張可能な要素は、拡張可能な要素が拡張されると六角形グリッド内に配置される複数の電極を含む、ことを更に含む。方法は、電極を使用して、被験者の組織から電気信号を取得することを更に含む。
【0014】
本発明のいくつかの実施形態によれば、被験者の組織に接触するそれぞれの対の電極の間の複数のバイポーラ信号を取得することであって、電極が六角形グリッド内に配置されている、ことを含む方法が更に提供される。方法は、バイポーラ信号に基づいて、組織に沿った生体電気伝播の推定経路を計算することを更に含む。
【0015】
いくつかの実施形態では、バイポーラ信号を取得することは、
電極からそれぞれのユニポーラ信号を測定することと、
それぞれの対のユニポーラ信号を互いに減算することによって、バイポーラ信号の各々を取得することとを含む。
【0016】
いくつかの実施形態では、推定経路は、複数の線形セグメントを含み、複数の線形セグメントの各々は、対の電極のそれぞれの間を通過する。
【0017】
いくつかの実施形態では、電極は、被験者の体内に配置されたシャフトの遠位端に結合された拡張可能な要素に属する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
本発明は、以下の「発明を実施するための形態」を図面と併せて考慮することで、より完全に理解される。
図1】本発明のいくつかの実施形態による、電気生理学的マッピングシステムの概略例解図である。
図2】本発明のいくつかの実施形態による、電極の構成を示す概略図である。
図3】本発明のいくつかの実施形態による、生体電気伝播の推定経路を計算するためのアルゴリズムのフロー図である。
図4】本発明のいくつかの実施形態による、拡張可能な要素の概略図である。
図5】本発明のいくつかの実施形態による、拡張可能な要素の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
概論
従来、電極の矩形グリッドは、心臓内組織などの体内組織に沿った生体電気伝播の経路を推定するために使用される。しかしながら、矩形グリッドは、グリッド内の各電極が最大で4つの最近傍を有するという事実のために、精度が限られている。
【0020】
したがって、本発明の実施形態は、各電極が最大約6個の最近傍を有する、電極の六角形グリッドを提供する。六角形グリッドを展開及び使用するのを容易にするために、六角形グリッドは、例えば、巻き込める基板、膨張可能なバルーン、又はスプラインのアセンブリを含む拡張可能な要素に結合される。拡張可能な要素の拡張に続いて、六角形グリッドが組織に押し付けられ、対の電極の間のバイポーラ信号が得られる。バイポーラ信号に基づいて、プロセッサは、生体電気伝播の推定経路を計算する。
【0021】
システムの説明
最初に、本発明のいくつかの実施形態による、電気生理学的マッピングシステム20の概略例解図である図1を参照する。
【0022】
システム20は、被験者24の体内に挿入されるように構成されたシャフト30を備える体内プローブ26を含む。プローブ26は、シャフトの遠位端に結合された拡張可能な要素27を更に備える。拡張可能な要素27は、拡張可能な要素が拡張されると(すなわち、拡張可能な要素が拡張構成にあるとき)、六角形グリッド内に配置される複数の電極34を備える。電極34は、金、白金、パラジウム、及び/又は任意の他の好適な金属若しくは金属合金で作製されてもよい。
【0023】
電気生理学的マッピングを行うために、医師28は最初にプローブ26を被験者24の身体に挿入する。続いて、医師28は、被験者の心臓22の心室など、マッピングされる身体の標的部分にプローブをナビゲートする。続いて、電極34を使用して、被験者の組織にわたる電位図電圧を測定する。
【0024】
いくつかの実施形態では、拡張可能な要素27は、ニチノールなどの形状記憶材料から作製される。そのような実施形態では、拡張可能な要素は、拡張可能な要素が形状記憶効果によって拡張するという点で自己拡張型である。拡張可能な要素を展開するために、プローブは最初にシース31内に挿入され、シース31を通ってナビゲートされ、プローブの遠位端は本体の標的部分に位置する。プローブの遠位端が本体の標的部分に到達した後、拡張可能な要素が形状記憶材料から作製されることにより、拡張可能な要素がシースの内側にある間に、拡張可能な要素が、圧縮構成から拡張構成まで拡張するように、シース31を拡張可能な要素の上から引っ込める。
【0025】
他の実施形態では(例えば、図5を参照して以下に説明するように)、拡張可能な要素は、電気的エネルギー及び/又は機械的エネルギーの印加によって、その圧縮構成から拡張構成へと能動的に拡張される。
【0026】
いくつかの実施形態では、図1に示すように、拡張可能な要素は、平行なスプライン32のアセンブリを含み、電極はスプライン32に結合される。例えば、各電極は、スプラインのうちの対応するスプラインの上に装着されたリングを含んでもよい。より具体的には、電極は、スプラインに結合された列29にグループ化されてもよく、列29は、電極が六角形グリッド内に配置されるように互いに対して互い違いになっている。
【0027】
典型的には、そのような実施形態では、スプラインに加えられる異常に大きな力がない場合に、スプラインの相対位置が固定されるように、スプラインは互いに結合される。例えば、スプラインの対は、遠位接合部38で互いに結合される異なるそれぞれのループ要素36に属してもよい。具体的には、各ループ要素36は、一対のスプラインと、スプラインのそれぞれの遠位端の間に延びるアーチ状部分37と、ループ要素がシャフト30から突出するようにループ要素をシャフトの内壁に結合する一対の近位部分39とを備えてもよい。典型的には、各ループ要素は、円形の横断面形状を有する。
【0028】
例えば、図1に示されるように、プローブは、3つのループ要素、すなわちスプライン32a1及び32a2を含む第1のループ要素36aと、スプライン32b1及び32b2を含む第2のループ要素36bと、スプライン32c1及び32c2を含む第3のループ要素36cとを含んでもよい。
【0029】
いくつかの実施形態では、各スプラインが、他のループ要素に属する1つ又は2つの他のスプラインに隣接するように、ループ要素は互いに重なり合っている。例えば、図1に示すように、ループ要素36a~36cは、スプラインが以下の順序で互いに平行に配置されるように互いに重なり合ってもよい:32a1、32b1、32c1、32a2、32b2、32c2。
【0030】
他の実施形態では、ループ要素は、互いの中に配置される。例えば、スプラインが以下の順序で互いに平行に配置されるように、ループ要素36a~36cは互いに内部に配置されてもよい:32a1、32b1、32c1、32c2、32b2、32a2。
【0031】
いくつかの実施形態では、スプライン32のアセンブリは、アセンブリが拡張され、拡張可能な要素に力が加えられていない場合に平坦である(すなわち、スプラインは互いに同一平面上にある。)。それでもなお、アセンブリは、組織に押し付けられたときに湾曲するように十分に適合してもよい。したがって、有利には、スプラインのアセンブリは、全ての電極同時に組織と接触するように、組織に適合してもよい。他の実施形態では、スプラインのアセンブリは、拡張可能な要素に力が加えられていない場合でもわずかな湾曲を有する。
【0032】
システム20は、典型的にはコンソール42内に含まれる回路(CIRC)40を更に備える。回路40は、例えば、ポート又はソケットなどのコンソール42内の電気インタフェース44を介して、プローブ26の近位端に接続される。回路40は、以下に記載される機能を実行するように構成されたプロセッサ50を備える。典型的には、回路は、プロセッサ50とプローブ26との間を接続するためのアナログデジタル(A/D)及びデジタル-アナログ(D/A)変換回路を更に備える。
【0033】
プローブ26を通るワイヤは、電極34と回路40との間で電気信号を伝達する。電極34から得られた電位図電圧の測定に基づいて、プロセッサは、電気生理学的マップ52、及び任意選択的にディスプレイ54上にマップ52を表示してもよい。
【0034】
いくつかの実施形態では、プローブ26は、シャフトの遠位端に結合された電磁センサ33を更に備える。そのような実施形態では、プローブの位置は、電磁追跡システムによって追跡してもよい。具体的には、被験者の近傍で発生した磁場は、センサ33において、センサの位置及び向きと共に変化する信号を誘導してもよい。この信号に基づいて、例えば、Ben-Haimの米国特許第5,391,199号、米国特許第5,443,489号及び米国特許第6,788,967号、Ben-Haimらの米国特許第6,690,963号、Ackerらの米国特許第5,558,091号、並びにGovariの米国特許第6,177,792号に記載されており、これらの開示は、参照により本明細書に組み込まれるように、プロセッサ50は、プローブの位置及び配向を確認してもよい。
【0035】
電磁追跡システムの代替として、又は追加的に、他のタイプの追跡システムがプローブを追跡するために使用されてもよい。例えば、電流は、電極34と被験者24の身体上の1つ以上の電極パッチとの間を通過してもよい。電流の分布に及び/又はそこから計算された生理学的インピーダンス基づいて、プロセッサ50は、プローブの位置を確認してもよい。インピーダンスに基づく位置検知のための方法は、例えば、米国特許第5,983,126号、米国特許第6,456,864号及び米国特許第5,944,022号に開示されており、それぞれの開示は、参照により本明細書に組み込まれる。加えて、較正された電流位置マップを利用して、電流の分布に基づいてプローブの位置を確認する方法が、例えば、Govariらの米国特許第7,536,218号及びBar-Talらの米国特許第8,456,182号に開示されており、それぞれの開示は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0036】
いくつかの実施形態では、プローブ26は、コンソール42からシャフトの遠位端に、生理食塩水などの灌流している流体を送達するように構成された灌水チューブ(図示せず)を更に備える。灌流している流体は、例えば、近位部分39がシャフト30に結合されている領域付近で、被験者24の血液が拡張可能な要素27の近くに凝固することを阻止し得る。
【0037】
一般に、プロセッサ50の機能性は、例えば、1つ以上の固定機能又は汎用集積回路、特定用途向け集積回路(ASIC)、及び/又はフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)を使用して、ハードウェアにのみ実装されてもよい。あるいは、この機能は、少なくとも部分的にソフトウェアで実装されてもよい。例えば、プロセッサ50は、例えば、中央処理装置(CPU)を含むプログラムされたプロセッサとして具現化されてもよい。ソフトウェアプログラム及び/又はデータを含むプログラムコードは、CPUによる実行及び処理のためにロードされてもよい。プログラムコード及び/又はデータは、例えば、ネットワークを介して、電子形態でプロセッサにダウンロード可能である。代替的に又は追加的に、プログラムコード及び/又はデータは、磁気、光学、又は電子メモリなどの非一時的有形媒体上に提供及び/又は記憶され得る。このようなプログラムコード及び/又はデータは、コントローラに提供されると、本明細書に記載されているタスクを行うように構成された機械又は専用コンピュータを作り出す。
【0038】
図1は、主に心臓電位図に関するが、本発明の実施形態は、例えば、神経外科処置中に、脳電位図の取得に適用されてもよいことに留意されたい。
【0039】
六角形グリッド
ここで図2を参照し、これは、本発明のいくつかの実施形態による、電極34の構成の概略図である。
【0040】
図1を参照して上述したように、電極34は六角形グリッド内に配置されており、これはまた、最密パターンと呼ばれてもよい。この構成では、各電極は、六角形グリッド(又は「モザイク細工」)内のそれぞれの仮定的六角形の中心に位置する。典型的には1~5mmである距離D0は、各対の隣接する電極(又は、「最近傍」)を互いに分離する。請求項を含む本出願の文脈において、2つの要素間の距離は、要素のそれぞれの中心間の距離を指す。図1の実施形態のこの構成を達成するために、同じスプライン32上の連続する電極は、距離D0だけ互いに離間され、隣接するスプラインは、距離
【0041】
【数1】
だけ互いから離間している。
【0042】
図2に示される六角形グリッド構成は、矩形グリッド構成よりもいくつかの利点を有する。
【0043】
第1に、電極の列が互い違いになることにより、例えば、拡張可能な要素27(図1)が折り畳まれたときに、電極34が互いに衝突する可能性が少ない。したがって、電極から受信した信号にノイズが加えられないことがある。
【0044】
第2に、図1を参照して上述したように拡張可能な要素27がスプラインのアセンブリを含む実施形態では、異なるそれぞれのスプライン上にある各対の隣接する電極の間の距離は、矩形グリッド配置と比較して、スプライン間の距離の変化に対する感度が低い。例えば、スプライン32a1とスプライン32b1(図1)との間の距離がxD1だけ増加すると仮定すると、D1は2つのスプライン間の元の距離であり、スプライン32a1上の任意の電極とスプライン32b1上のその最近傍の各々との間の距離は、
【0045】
【数2】
だけ増加し、D0は各対の最近傍間の元の距離である。対照的に、矩形グリッド構成(D1=D0)では、電極間距離はxD0だけ増加する。
【0046】
第3に、電極の各々は、構成の縁部にある電極を除いて、電極から等距離に(距離D0で)離間した6つの最近傍を有する。対照的に、矩形グリッドでは、各電極は、最大で4つのそのような最近傍を有する。したがって、六角形グリッド配置は、より多数のバイポーラ信号を得ることを容易にし、各バイポーラ信号は、時間の関数として、それぞれ対の最近傍電極間の電圧を表す。
【0047】
より多数のバイポーラ信号を得るという固有の診断上の利点とは別に、より多数のバイポーラ信号は、被験者の組織に沿った生体電気伝播の推定経路56を計算する際により高い精度を提供してもよい。これに関して、本発明のいくつかの実施形態による、経路56を計算するためのアルゴリズム76のフロー図である図3を更に参照する。
【0048】
アルゴリズム76ごとに、プロセッサ50(図1)は、プローブの各位置について信号取得工程78を実行する。信号取得工程78において、プロセッサは、電極が組織に接触している間に、プローブから複数のバイポーラ信号を取得する。具体的にはプロセッサは、各電極とその最近傍の各々との間のバイポーラ信号を取得してもよい。したがって、例えば、図2に示す電極34aの場合、プロセッサは、6つのバイポーラ信号を取得してもよい。
【0049】
いくつかの実施形態では、プロセッサは、各バイポーラ信号を直接測定する。他の実施形態では、プロセッサは、各電極からのそれぞれのユニポーラ信号を測定し、ユニポーラ信号は、時間の関数として、電極と共通基準電極との間の電圧を表す。次いで、プロセッサは、対応する対のユニポーラ信号を互いに減算することによって各バイポーラ信号を取得する。
【0050】
続いて、バイポーラ信号に基づいて、プロセッサは、経路56の少なくとも一部を計算する。具体的には、プロセッサは、電極選択工程80において、現在経路の終わりにある電極を最初に選択する。続いて、隣接する電極識別工程82において、プロセッサは、選択された電極に隣接し、かつ生体電気波面伝播の方向にある電極を識別する(六角形グリッド構成によって提供される精度の程度まで)。隣接する電極の識別は、選択された電極のバイポーラ信号の振幅、時間に対する導関数、及び/又は任意の他の特性を比較することによって実行される。例えば、プロセッサは、バイポーラ信号の振幅又は時間導関数が最大である隣接する電極を識別してもよい。その後、経路延長工程84において、プロセッサは、識別された隣接する電極への経路を延長する。
【0051】
したがって、例えば、プロセッサは、波面が電極34bから電極34aへと移動していることを識別してもよい。これに応答して、プロセッサは、電極34bと電極34aとの間の線形セグメント58を経路56に追加してもよい。
【0052】
経路延長工程84に続いて、プロセッサは、第1のチェック工程86において、経路がグリッドの縁部に到達したかどうかをチェックする。そうでない場合、プロセッサは電極選択工程80に戻る。そうでなければ、プロセッサは、第2のチェック工程88で、プローブが新しい位置にあるかどうかをチェックする。プローブが新しい位置に到達すると、プロセッサは信号取得工程78に戻る。
【0053】
したがって、プロセッサがアルゴリズム76(又は任意の他の好適なアルゴリズム)を実行することによって、経路56は、各々がそれぞれの対の電極の間を通過する複数の線形セグメント58を含んでもよい。電極が矩形グリッド内に配置されている場合、各セグメント58には、可能な方向が4つだけ存在する。補間された方向を計算することは可能であり得るが、そのような補間は、精度が制限される可能性があり、及び/又は計算コストがかかる可能性がある。対照的に、六角形グリッド構成を考えると、各セグメント58には、6つの可能な方向が存在する。したがって、経路56は、安価に、かつより高い精度で計算されてもよい。上記にかかわらず、プロセッサは、六角形グリッド構成の場合であっても、補間方向を計算してもよいことに留意されたい。
【0054】
計算経路56に続いて、プロセッサは、経路をマップ52(図1)上及び/又は被験者の解剖学的構造に対するプローブの位置を示す画像上にオーバレイしてもよい。
【0055】
代替実施形態
ここで図4を参照して、これは本発明のいくつかの実施形態による、拡張可能な要素27の代替の実施形態の概略図である。
【0056】
いくつかの実施形態では、スプライン32(図1)のアセンブリの代わりに、拡張可能な要素27は、少なくとも1つの巻き込める基板60を備え、基板が広げられたときに電極が六角形グリッド内に配置されるように、電極34が基板60に結合されている。典型的には、基板60はプリント回路基板(PCB)を含み、電極はPCB上に印刷される。基板は、図1を参照して上述したように、シース31を拡張可能な要素の上から引っ込めることによって、広げられてもよい。
【0057】
例えば、その開示が参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願第16/852,165号に記載されているように、拡張可能な要素27は、ニチノールなどの形状記憶材料で作製され得る裏シート62を備えてもよい。単一の基板は、裏シート62の一方の側面に結合されてもよい。あるいは、2つの基板は、裏シート62の異なるそれぞれの側面に結合されてもよい。2つの基板の利点は、1つの基板上の電極が組織から信号を取得している間に、他の基板上の電極を使用して、任意の遠電界信号をキャンセルしてもよい点である。任意選択で、裏シートは、灌流している流体が流れてもよい灌注チャネル64を画定するように成形されてもよい。
【0058】
いくつかの実施形態では、図4に示すように、広げられ、拡張可能な要素に力が加えられていないとき、基板60は平坦である。それでもなお、拡張可能な要素は、組織に押し付けられたときに湾曲するように十分に適合してもよい。他の実施形態では、拡張可能な要素は、拡張可能な要素に力が加えられていない場合でもわずかな湾曲を有する。
【0059】
図5は、更に別の代替実施形態を示し、拡張可能な要素27は、膨張可能なバルーン66を含み、電極は、バルーン66が膨張したときに電極が六角形グリッド内に配置されるように、バルーンに(例えば、バルーンの遠位表面68に)結合される。図5は、バルーンの側面図及び正面図の両方を示す。電極をコンソール42(図1)に接続するワイヤ70は、シャフト30及びバルーン66を通って延びる。
【0060】
一般に、バルーン66の特徴は、その開示が参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願第16/992,224号に記載されているものと同様であってもよい。例えば、バルーンは、膨張チューブ72を介してバルーン内に流体を圧送することによって膨張されてもよい。必要に応じて、プローブは、図1を参照して上述したようにシース31と共に使用されてもよく、バルーンは、バルーンの上からシースを引っ込めた後に膨張されてもよい。シャフト30に近位に結合され、遠位表面68に遠位に結合された支持ロッド74は、遠位表面が組織に押し付けられる際に遠位表面を安定させるのに役立ってもよい。電極は、それぞれのPCBを含んでもよく、あるいは、電極はバルーン上にスエージングされるか、又は任意の他の好適な技術を使用してバルーンに結合されてもよい。
【0061】
いくつかの実施形態では、遠位表面68は、バルーンが膨張して、バルーンに加えられる力がない場合に平坦である。それでもなお、遠位表面は、組織に押し付けられたときに湾曲するように十分に適合してもよい。他の実施形態では、遠位表面は、図5に示されるように、バルーンに加えられる力がない場合であってもわずかな湾曲を有する。
【0062】
図4及び図5の実施形態の各々について、電極の六角形グリッドの特性、並びにグリッドが使用され得る方法は、概して、図2及び図3を参照して上述した通りであってもよい。
【0063】
本発明が、本明細書に具体的に示され、上述されたものに限定されない点が、当業者には理解されよう。むしろ、本発明の実施形態の範囲は、本明細書に上述されている様々な特徴の組み合わせ及び部分的組み合わせの両方、並びに、上記の説明を一読すれば当業者には想起されると思われる、先行技術には存在しない特徴の変更例及び改変例を含む。参照により本特許出願に援用される文献は、これらの援用文献において、いずれかの用語が本明細書において明示的又は暗示的になされた定義と矛盾して定義されている場合には、本明細書における定義のみを考慮するものとする点を除き、本出願の不可欠な部分と見なすものとする。
【0064】
〔実施の態様〕
(1) 電気生理学的検知のための装置であって、前記装置は、
被験者の体内に挿入されるように構成されたシャフトと、
拡張可能な要素であって、前記シャフトの遠位端に結合され、前記拡張可能な要素が拡張されると六角形グリッド内に配置される複数の電極を備える、拡張可能な要素と
を備える、装置。
(2) 前記電極のうち各対の隣接する電極の間の距離が、1~5mmである、実施態様1に記載の装置。
(3) 前記拡張可能な要素が、平行なスプラインのアセンブリを備え、
前記電極が、前記スプラインに結合された列にそれぞれグループ化され、前記列は、前記電極が前記六角形グリッド内に配置されるように、互いに対して互い違いになっている、実施態様1に記載の装置。
(4) 前記電極の各々が、前記スプラインのうちの対応するスプラインの上に装着されたリングを備える、実施態様3に記載の装置。
(5) 前記拡張可能な要素が、複数のループ要素を含み、前記ループ要素の各々が、前記スプラインの異なるそれぞれの対を含む、実施態様3に記載の装置。
【0065】
(6) 前記拡張可能な要素が、少なくとも1つの巻き込める基板を備え、
前記基板が広げられたときに前記電極が前記六角形グリッド内に配置されるように、前記電極が前記基板に結合されている、実施態様1に記載の装置。
(7) 前記基板がプリント回路基板(PCB)を含む、実施態様6に記載の装置。
(8) 前記拡張可能な要素が膨張可能なバルーンを備え、
前記バルーンが膨張したときに前記電極が前記六角形グリッド内に配置されるように、前記電極が前記バルーンに結合されている、実施態様1に記載の装置。
(9) 電気生理学的検知のための方法であって、前記方法が、
被験者の体内にシャフトを挿入することと、
前記シャフトを挿入することに続いて、前記シャフトの遠位端に結合された拡張可能な要素を拡張することであって、前記拡張可能な要素は、前記拡張可能な要素が拡張されると六角形グリッド内に配置される複数の電極を備える、ことと、
前記電極を使用して、前記被験者の組織から電気信号を取得することと
を含む、方法。
(10) 前記電極のうち各対の隣接する電極の間の距離が、1~5mmである、実施態様9に記載の方法。
【0066】
(11) 前記拡張可能な要素が、平行なスプラインのアセンブリを含み、
前記電極が、前記スプラインに結合された列にそれぞれグループ化され、前記列は、前記電極が前記六角形グリッド内に配置されるように、互いに対して互い違いになっている、実施態様9に記載の方法。
(12) 前記電極の各々が、前記スプラインのうちの対応するスプラインの上に装着されたリングを含む、実施態様11に記載の方法。
(13) 前記拡張可能な要素が複数のループ要素を含み、前記ループ要素の各々が、前記スプラインの異なるそれぞれの対を含む、実施態様11に記載の方法。
(14) 前記拡張可能な要素が、少なくとも1つの巻き込める基板を含み、
前記基板が広げられたときに前記電極が前記六角形グリッド内に配置されるように、前記電極が前記基板に結合される、実施態様9に記載の方法。
(15) 前記基板がプリント回路基板(PCB)を含む、実施態様14に記載の方法。
【0067】
(16) 前記拡張可能な要素が膨張可能なバルーンを含み、
前記バルーンが膨張したときに前記電極が前記六角形グリッド内に配置されるように、前記電極が前記バルーンに結合されている、実施態様9に記載の方法。
(17) 方法であって、
被験者の組織に接触するそれぞれの対の電極の間の複数のバイポーラ信号を取得することであって、前記電極が六角形グリッド内に配置されている、ことと、
前記バイポーラ信号に基づいて、前記組織に沿った生体電気伝播の推定経路を計算することと
を含む、方法。
(18) 前記バイポーラ信号を取得することが、
前記電極からそれぞれのユニポーラ信号を測定することと、
それぞれの対の前記ユニポーラ信号を互いに減算することによって、前記バイポーラ信号のそれぞれを取得することと
を含む、実施態様17に記載の方法。
(19) 前記推定経路が、複数の線形セグメントを含み、前記複数の線形セグメントの各々が、前記対の電極のそれぞれの間を通過する、実施態様17に記載の方法。
(20) 前記電極が、前記被験者の体内に配置されたシャフトの遠位端に結合された拡張可能な要素に属する、実施態様17に記載の方法。
図1
図2
図3
図4
図5
【外国語明細書】