(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022076491
(43)【公開日】2022-05-20
(54)【発明の名称】容器移送装置
(51)【国際特許分類】
G01N 35/04 20060101AFI20220513BHJP
【FI】
G01N35/04 G
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020182937
(22)【出願日】2020-10-30
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-05-12
(71)【出願人】
【識別番号】000161932
【氏名又は名称】京都電子工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141586
【弁理士】
【氏名又は名称】沖中 仁
(72)【発明者】
【氏名】奥村 直洸
(72)【発明者】
【氏名】渡部 信明
【テーマコード(参考)】
2G058
【Fターム(参考)】
2G058CA02
2G058CF02
2G058CF09
2G058GE10
(57)【要約】
【課題】容器が交換エリアに位置しているときには容器を容易に交換でき、容器がサンプリングエリアに位置しているときには容器を上方に抜け止め状態に固定することで意図しない容器の浮き上がりを確実に防ぐことができる容器移送装置を提供する。
【解決手段】容器移送装置5Aは、試料を収容した容器200が載置され、容器200を交換エリア(K)とサンプリングエリア(S)との間で移動させる回転テーブル31と、回転テーブル31に載置されている容器200を上方に引き抜き可能に保持する保持体32と、サンプリングエリア(S)で容器200を上方に抜け止め状態に固定する可動体33とを備えるものとする。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料を収容した容器が載置され、前記容器を交換エリアとサンプリングエリアとの間で移動させる回転テーブルと、
前記回転テーブルに載置されている前記容器を上方に引き抜き可能に保持する保持体と、
サンプリングエリアで前記容器を上方に抜け止め状態に固定する固定手段と、
を備える容器移送装置。
【請求項2】
前記容器は、括れ部を有しており、
前記固定手段は、前記括れ部に対し相対移動可能な可動体によって前記括れ部を引っ掛けることで前記容器を上方に抜け止め状態に固定するように構成されている請求項1に記載の容器移送装置。
【請求項3】
前記容器の括れ部に対する前記可動体の引っ掛け状態と非引っ掛け状態とを、サンプリングエリアと交換エリアとで切り換える切換手段を備える請求項2に記載の容器移送装置。
【請求項4】
前記切換手段は、
前記容器の括れ部に向けて前記可動体を付勢する付勢部材と、
前記回転テーブルを回転させるための回転動力を利用して、交換エリアにおいて前記容器の括れ部から前記可動体を引き離す方向に前記可動体を移動させるカムと、
を含む請求項3に記載の容器移送装置。
【請求項5】
交換エリアにおいて前記容器に対する前記可動体の非引っ掛け状態を維持するピン部材を備える請求項3又は4に記載の容器移送装置。
【請求項6】
前記ピン部材は、前記保持体に上下動可能に取り付けられ、
前記ピン部材が下降位置のときに前記可動体と係合状態となって非引っ掛け状態が維持され、前記ピン部材が上昇位置のときに前記可動体と非係合状態となって非引っ掛け状態が維持されないように構成されており、
前記回転テーブルを回転させるための回転動力を利用して、サンプリングエリアにおいて前記ピン部材を前記上昇位置へと押し上げるピン押上げブロックを備える請求項5に記載の容器移送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、薬液、飲料等の液体の試料を収容した容器を移送する容器移送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
試料の成分等を連続的に分析する自動分析装置において、容器内の試料をサンプリング位置で抽出するように構成されたものが知られている(例えば、特許文献1を参照)。また、閉栓したままの容器から直接液体試料を吸引する分注機構を備えた自動分析装置が知られている(例えば、特許文献2を参照)。
【0003】
特許文献1に係る自動分析装置は、上方が開口された試料格納体と、試料格納体の内部に回転自在に設置される試料ディスクと、試料格納体の開口部を塞ぐ表蓋とを備えている。試料ディスクには、複数の穴が設けられており、試料を収容した複数の容器がそれらの穴に差し込まれた状態で試料ディスクに載置されている。表蓋には、相対的に摺動可能に内蓋が一体的に組み合わされており、試料格納体の開口部を表蓋で閉じたときに内蓋が容器の開口部に接触して容器を密閉状態に固定することができるとともに、内蓋のみを容器の開口部から引き離すように移動させることができるようになっている。特許文献1に係る自動分析装置では、試料ディスクを回転させて分注対象の容器を分注位置に移動させる。分注位置においては、表蓋及び内蓋にそれぞれ貫通孔が設けられており、それらの貫通孔を通してサンプリングプローブを容器内に挿入することにより、容器内の試料をサンプリングプローブで吸引することができる。
【0004】
特許文献2に係る自動分析装置に備え付けられた分注機構は、容器の開口部を塞ぐゴム栓を貫通可能な先端が鋭利なノズルを備え、ノズルでゴム栓を貫通し容器内の液体試料を吸引するように構成されている。液体試料を収容した複数の容器は、搬送機構上に設置されたラックに載置されている。ラックには、容器内の液体試料の吸引動作後に行うノズルの引き抜き動作の際に、ノズルとゴム栓との間に生じる摩擦によって容器が引き上げられるのを防止するために、複数の容器の上方に位置するようにストッパが取り付けられている。ストッパには、容器の外径より小さいノズル通過孔が形成されており、ノズルと共に上昇しようとする容器は、ストッパの下面に当接することで意図しない浮き上がりが阻止されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003-215134号公報
【特許文献2】特開2010-25804号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に係る自動分析装置では、試料格納体に対し表蓋を取り外せば、試料ディスクに載置されている複数の容器の全てに対する内蓋による固定が解除されてそれらの容器を容易に交換することができる。一方、試料格納体に対し表蓋を取り付ければ、試料ディスクに載置されている複数の容器の全てに対して内蓋により固定することができる。しかしながら、このような、試料格納体に対する表蓋の取り付けと、取り外しとによって、試料ディスクに載置されている複数の容器の全てに対する内蓋による固定と、固定解除とがなされる構成では、試料格納体に対する表蓋の取り付けを忘れた場合、試料ディスクに載置されている複数の容器の全てが固定されないため、万一、表蓋の取り付けを忘れたままで試料ディスクを回転させてしまうと、容器が傾いたり、容器の位置がずれたりすることがある。このような状態でサンプリングプローブを容器内に挿入すると、サンプリングプローブが容器と干渉して、サンプリングプローブ及び/又は容器が破損する虞がある。また、サンプリングプローブと容器との干渉が回避できたとしても、試料の吸引失敗による測定不能を招く虞がある。
【0007】
特許文献2に係る自動分析装置では、液体試料の吸引後に行うノズルの引き抜き動作の際の容器の浮き上がりを、ラックに取り付けられたストッパによって阻止することができるものの、ストッパを取り外さなければ、ラックに載置されている複数の容器を交換することができない。このため、容器の交換の際には、ストッパの取外し作業を行わなければならず、面倒であり、容器を容易に交換することができない。
【0008】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、容器が交換エリアに位置しているときには容器を容易に交換でき、容器がサンプリングエリアに位置しているときには容器を上方に抜け止め状態に固定することで意図しない容器の浮き上がりを確実に防ぐことができる容器移送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための本発明に係る容器移送装置の特徴構成は、
試料を収容した容器が載置され、前記容器を交換エリアとサンプリングエリアとの間で移動させる回転テーブルと、
前記回転テーブルに載置されている前記容器を上方に引き抜き可能に保持する保持体と、
サンプリングエリアで前記容器を上方に抜け止め状態に固定する固定手段と、
を備えることにある。
【0010】
本構成の容器移送装置によれば、試料を収容した容器が回転テーブルに載置され、回転テーブルにより、容器が交換エリアとサンプリングエリアとの間で移動される。回転テーブルに載置されている容器は、上方に引き抜き可能に保持体に保持されている。容器が交換エリアに位置しているときには、回転テーブルに載置されている容器を持ち上げることにより、容器を保持体から引き抜くことができ、容器を容易に交換することができる。容器がサンプリングエリアに位置しているときには、固定手段によって容器が上方に抜け止め状態に固定される。このため、例えば、容器の開口部がシール材で塞がれている場合、当該シール材を貫通可能なノズルでシール材を貫通させて容器内の試料を吸引後に行うノズルの引き抜き動作の際に、ノズルとシール材との間に生じる摩擦によって容器が引き上げられるのを固定手段によって阻止することができ、意図しない容器の浮き上がりを防ぐことができる。
【0011】
本発明に係る容器移送装置において、
前記容器は、括れ部を有しており、
前記固定手段は、前記括れ部に対し相対移動可能な可動体によって前記括れ部を引っ掛けることで前記容器を上方に抜け止め状態に固定するように構成されていることが好ましい。
【0012】
本構成の容器移送装置によれば、固定手段は、容器の括れ部に対し相対移動可能な可動体によって容器の括れ部を引っ掛けることで容器を上方に抜け止め状態に固定するように構成されている。このような構成により、意図しない容器の浮き上がりを確実に防ぐことができるとともに、可動体として、例えば、容器の括れ部に入り込むことが可能な板状部材を採用することができるので、装置の薄型化を図ることができる。
【0013】
本発明に係る容器移送装置において、
前記容器の括れ部に対する前記可動体の引っ掛け状態と非引っ掛け状態とを、サンプリングエリアと交換エリアとで切り換える切換手段を備えることが好ましい。
【0014】
本構成の容器移送装置によれば、容器の括れ部に対する可動体の引っ掛け状態と非引っ掛け状態とが、切換手段により、サンプリングエリアと交換エリアとで切り換えられる。サンプリングエリアにおいては、切換手段により、容器の括れ部に対し可動体が引っ掛かった引っ掛け状態に切り換えられる。これにより、意図しない容器の浮き上がりを可動体によってより確実に防ぐことができる。一方、交換エリアにおいては、切換手段により、容器の括れ部に対し可動体が引っ掛かっていない非引っ掛け状態に切り換えられる。これにより、回転テーブルに載置されている容器を持ち上げれば、容器を保持体から容易に引き抜くことができ、容器を容易に交換することができる。
【0015】
本発明に係る容器移送装置において、
前記切換手段は、
前記容器の括れ部に向けて前記可動体を付勢する付勢部材と、
前記回転テーブルを回転させるための回転動力を利用して、交換エリアにおいて前記容器の括れ部から前記可動体を引き離す方向に前記可動体を移動させるカムと、
を含むことが好ましい。
【0016】
本構成の容器移送装置によれば、回転テーブルに載置されている容器が回転テーブルの回転によって交換エリアへと移動されると、回転テーブルを回転させるための回転動力の一部が、カムにより、容器の括れ部から可動体を引き離す方向に駆動する駆動力に変換される。これにより、容器の括れ部から離れる方向に可動体が移動されて、容器の括れ部に対し可動体が引っ掛かっていない非引っ掛け状態とされる。また、回転テーブルに載置されている容器が交換エリアからサンプリングエリアへと移動されると、容器の括れ部に向けて付勢されている可動体が容器の括れ部に向かって進み、可動体が容器の括れ部に引っ掛かり、容器が上方に抜け止め状態に固定される。このように、容器が載置されている回転テーブルを回転させて、容器を交換エリアとサンプリングエリアとの間で移動させるだけで、容器の括れ部に対し可動体が引っ掛かっていない非引っ掛け状態と、容器の括れ部に対し可動体が引っ掛かった引っ掛け状態とを、自動的に切り換えることができる。
【0017】
本発明に係る容器移送装置において、
交換エリアにおいて前記容器に対する前記可動体の非引っ掛け状態を維持するピン部材を備えることが好ましい。
【0018】
本構成の容器移送装置によれば、交換エリアにおいて容器に対する可動体の非引っ掛け状態を維持するピン部材を備える構成とされる。このような構成により、交換エリアにおいて、容器を保持体から上方へと引き抜き可能な状態がピン部材によって確実に維持されるので、交換エリアにおいて容器の交換をより安定的に行うことができる。
【0019】
本発明に係る容器移送装置において、
前記ピン部材は、前記保持体に上下動可能に取り付けられ、
前記ピン部材が下降位置のときに前記可動体と係合状態となって非引っ掛け状態が維持され、前記ピン部材が上昇位置のときに前記可動体と非係合状態となって非引っ掛け状態が維持されないように構成されており、
前記回転テーブルを回転させるための回転動力を利用して、サンプリングエリアにおいて前記ピン部材を前記上昇位置へと押し上げるピン押上げブロックを備えることが好ましい。
【0020】
本構成の容器移送装置によれば、回転テーブルに載置されている容器が交換エリアにあるときには、保持体に上下動可能に取り付けられたピン部材が、重力作用によって下降して下降位置に位置される。ピン部材が下降位置のときには、ピン部材が可動体と係合状態となって、容器の括れ部に対し可動体が引っ掛かっていない非引っ掛け状態が維持される。回転テーブルに載置されている容器が回転テーブルの回転によってサンプリングエリアへと移動されると、回転テーブルを回転させるための回転動力の一部が、ピン押上げブロックにより、ピン部材を上昇位置へと上昇させるための駆動力に変換される。これにより、ピン部材が上昇位置へと押し上げられる。ピン部材が上昇位置のときには、ピン部材が可動体と非係合状態となって、非引っ掛け状態が維持されずに、容器の括れ部に対し可動体が引っ掛かった引っ掛け状態となり、容器が上方に抜け止め状態に固定される。このように、容器が載置されている回転テーブルを回転させて、容器を交換エリアからサンプリングエリアへと移動させるだけで、容器の括れ部に対し可動体が引っ掛かっていない非引っ掛け状態から、容器の括れ部に対し可動体が引っ掛かった引っ掛け状態へと自動的に切り換えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】
図1は、本発明の第一実施形態に係る容器移送装置を具備する自動分析装置の全体を正面側から見た斜視図である。
【
図3】
図3は、複数の容器が載置された状態の回転体の平面図である。
【
図4】
図4は、
図3のC-C線要部断面図を示し、(a)は非引っ掛け状態図、(b)は引っ掛け状態図である。
【
図5】
図5は、容器非載置状態の回転体の全体斜視図である。
【
図6】
図6は、回転体における回転テーブルと保持体との間の部分の分解斜視図である。
【
図7】
図7は、回転体における保持体と複数の可動体との間の部分の分解斜視図である。
【
図8】
図8は、可動体の一部を破断して示す容器非載置状態の回転体の平面図である。
【
図11】
図11は、複数の容器が載置された状態の回転体の全体斜視図である。
【
図12】
図12は、
図5のD部拡大図を示し、(a)はピン部材が下降位置にある状態図、(b)はピン部材が上昇位置にある状態図である。
【
図13】
図13は、本発明の第二実施形態に係る容器移送装置を具備する自動分析装置の全体を正面側から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明について、図面を参照しながら説明する。なお、以下の実施形態では、例えば、薬液、飲料等の液状の試料を収容した容器を移送する本発明の容器移送装置を具備する自動分析装置を例に挙げて説明する。ただし、本発明は、以下に説明する実施形態や図面に記載される構成に限定されることは意図しない。
【0023】
〔第一実施形態〕
<自動分析装置の全体構成>
図1は、本発明の第一実施形態に係る容器移送装置を具備する自動分析装置の全体を正面側から見た斜視図である。
図1に示す自動分析装置1Aは、試料を収容した容器を交換エリアとサンプリングエリアとの間で移送する容器移送装置5Aと、サンプリングエリアにおいて容器から試料を吸引し分注する分注装置10とを備えている。交換エリア及びサンプリングエリアに関する定義については後に詳述する。また、本例で使用される容器の形状・構造についても後に詳述する。
【0024】
<分注装置>
分注装置10は、ノズルユニット11と駆動ユニット12とを備えて構成され、容器移送装置5Aにおける後述するケーシング20の後側右コーナ部に設置されている。ノズルユニット11は、上下方向に延びる先端(下端)が鋭利なノズル13を備え、ノズル13を介して試料を吸引したり吐出したりすることができるように構成されている。駆動ユニット12は、詳細図示による説明は省略するが、水平Y軸方向(前後方向)にノズルユニットを直線移動させるためのY軸駆動機構と、鉛直Z軸方向(上下方向)にノズルユニットを直線移動させるためのZ軸駆動機構とが組み合わされてなり、ノズルユニット11を前後方向と上下方向との二方向に移動させることができるように構成されている。
【0025】
<容器移送装置>
図2は、
図1のA-A線断面図である。
図2に示すように、容器移送装置5Aは、ケーシング20と、ケーシング20上に配設される回転体21と、ケーシング20の内部に配設される回転駆動機構22とを備えている。ここで、ケーシング20は、上下方向に所定間隔を存して配される平面視矩形状の上面板25及び下面板26と、上面板25及び下面板26の外周部同士を繋ぐように配設される枠体27とにより構成されている。
【0026】
<交換エリア、サンプリングエリア>
図3は、複数の容器が載置された状態の回転体の平面図である。
図3に示すように、回転体21は、複数の容器200を交換エリアとサンプリングエリアとの間で移動させるものである。ここで、回転体21の平面視において、回転体21の回転中心に原点Oを一致させるようにX-Y直交軸を設定し、左向きを正の向きとして左右方向に延びる軸をX軸とし、後ろ向きを正の向きとして前後方向に延びる軸をY軸とし、X軸の正の向きの軸を基準(0°)として、原点Oを中心に時計回りを正の回転方向(正転方向)と定める。この場合、例えば、回転体21における0°以上120°以下の回転エリアを、容器200から試料を抽出するためのサンプリングエリア(
図3中記号「S」で示す両矢印の範囲)と定め、回転体21における180°を超え360°未満の回転エリアを、容器200を交換するための交換エリア(
図3中記号「K」で示す両矢印の範囲)と定める。なお、サンプリングエリア及び交換エリアに関し、上記に例示した角度の数値範囲については、これに限定されるものではなく、後述する可動体33の設置個数や周方向長さ等の調整により、適宜に設定し得るものである。
【0027】
<容器、括れ部>
図4は、
図3のC-C線要部断面図を示し、(a)は非引っ掛け状態図、(b)は引っ掛け状態図である。
図4(a)に示すように、容器200は、容器本体201と蓋体202とにより構成されている。容器本体201は、上方に開放された開口を形成する円筒部205と、円筒部205より大径で試料を収容可能な有底円筒部206と、円筒部205と有底円筒部206とを接続する傾斜部207とを有し、有底円筒部206、傾斜部207及び円筒部205が下側から上側に向けてこの記載順に一体的に連設されて構成されている。蓋体202は、円筒部205の開口を覆うシール材208と、シール材208の平面視中央部を外部に露出させた状態でシール材208を保持するシール材保持部209とを有し、円筒部205の外周面に形成された雄螺子とシール材保持部209の内周面に形成された雌螺子とを螺合させて蓋体202を締め付けることにより、容器本体201を蓋体202により密閉状態に閉じることができる。容器200においては、円筒部205と傾斜部207との境界及びその境界の上下近傍部分(有底円筒部206と蓋体202との間の部分)により、括れ部210が形成されている。
【0028】
図5は、容器非載置状態の回転体の全体斜視図である。
図5に示すように、回転体21は、回転テーブル31、保持体32、及び複数の可動体33を備えている。
【0029】
<回転テーブル>
図6は、回転体における回転テーブルと保持体との間の部分の分解斜視図である。
図6に示すように、回転テーブル31は、複数(本例では最大で30個)の容器200を同時に載置するのに十分な広さの載置面を有する所定厚みの中空円盤状部材により構成されている。回転テーブル31の中央には、後述するロータ93が通過可能な大きさの円形孔状の中央開口部34が形成されている。回転テーブル31と保持体32との間には、支持円盤35が配設されている。
【0030】
<保持体>
図7は、回転体における保持体と複数の可動体との間の部分の分解斜視図である。
図7に示すように、保持体32は、中空円盤状部材により構成されている。保持体32の中央部には、円形孔状の中央開口部36が形成されている。保持体32における中央開口部36の周辺の内周縁近傍部と外周との間の平坦面には、上下方向に貫通する複数(本例では30個)の丸孔状の保持体貫通孔部40が形成されている。
【0031】
保持体32に設けられる複数の保持体貫通孔部40は、同心円状に規則的に半径方向に2列で並ぶように配置されている。すなわち、保持体32における内周縁近傍部と外周との間の平坦面における内周縁近傍部寄りの円環帯状領域には、15個の保持体貫通孔部40が、等角度(24°毎)で各々の保持体貫通孔部40の中心を、保持体32の中心を基準とする第一ピッチ円〔C1〕の円周上に一致させるように配置されている。また、保持体32における内周縁近傍部と外周との間の平坦面における外周寄りの円環帯状領域には、15個の保持体貫通孔部40が、等角度(24°毎)で各々の保持体貫通孔部40の中心を、保持体32の中心を基準とする、第一ピッチ円〔C1〕より大きい第二ピッチ円〔C2〕の円周上に一致させるように配置されている。これらの合計30個の保持体貫通孔部40は、保持体32の円周方向に向かって1個ずつ互い違いに保持体32の半径方向にずれつつ、全体として円周方向に整列するように配置されている。こうして、保持体32のコンパクト化を図りつつ、より多くの容器200を保持することができる。
【0032】
保持体貫通孔部40は、容器本体201の有底円筒部206(
図4(a)参照)が挿通可能な大きさの開口面積に設定されている。これにより、保持体貫通孔部40に対し容器200を上下方向に抜き差しすることができる。また、容器本体201の有底円筒部206が保持体貫通孔部40に挿通されている状態では、有底円筒部206が保持体貫通孔部40の内周面に取り囲まれる。こうして、保持体32は、容器本体201の有底円筒部206を保持体貫通孔部40に挿通した状態で回転テーブル31上に載置されている容器200を上方に引き抜き可能に保持する。
【0033】
保持体32における内周縁近傍部寄りの部分には、半径方向に延在する角丸長方形状の内側主スリット41が、円周方向に120°毎に合計3個形成されている。保持体32における外周縁近傍部には、半径方向に延在する角丸長方形状の外側主スリット42が、内側主スリット41と所定間隔を存して半径方向に並ぶように円周方向に120°毎に合計3個形成されている。さらに、保持体32における外周縁近傍部には、外側主スリット42に対して、円周方向の一方側及び他方側にそれぞれ所定間隔を存して外側主スリット42と平行を成すように角丸長方形状の副スリット43が、合計6個形成されている。
【0034】
<可動体>
複数(本例では3個)の可動体33は、保持体32の円周方向に沿って並ぶように、保持体32の上方に配設されている。各可動体33は、保持体32の中央開口部36の半径よりも若干大きい半径で中心角が約110°程度の扇形の円弧に相当する円弧長さの内側円弧部45と、保持体32の半径と同程度の大きさの半径で中心角が110°程度の扇形の円弧に相当する外側円弧部46とを有し、保持体32の平面視の全領域の1/3程度の領域よりも若干小さい領域を覆うように保持体32の円周方向に沿って延在する所定厚みの部分円環状部材により構成されている。可動体33は、容器200括れ部210に対し相対移動可能であり、括れ部210を引っ掛けることで容器200を上方に抜け止め状態に固定する固定手段として機能する。
【0035】
可動体33における部分内周縁近傍部と部分外周との間の平坦面には、上下方向に貫通する複数(本例では7個)の丸孔状の可動体貫通孔部50が形成されている。可動体33に設けられる複数の可動体貫通孔部50は、同心円状に規則的に半径方向に2列で並ぶように配置されている。すなわち、可動体33における部分内周縁近傍部と部分外周との間の平坦面における部分内周縁近傍部寄りの部分円環帯状領域には、可動体33が後述する非引っ掛け位置にある場合において、3個の可動体貫通孔部50が、等角度(24°毎)で各々の可動体貫通孔部50の中心を、保持体32の中心を基準とする第一ピッチ円〔C1〕の円周上に平面視で一致させるように配置されている。また、可動体33における部分内周縁近傍部と部分外周との間の平坦面における部分外周寄りの部分円環帯状領域には、可動体33が後述する非引っ掛け位置にある場合において、4個の可動体貫通孔部50が、等角度(24°毎)で各々の可動体貫通孔部50の中心を、保持体32の中心を基準とする、第一ピッチ円〔C1〕より大きい第二ピッチ円〔C2〕の円周上に平面視で一致させるように配置されている。これら合計7個の可動体貫通孔部50は、可動体33の周方向に向かって1個ずつ互い違いに可動体33の半径方向にずれつつ、全体として周方向に整列するように配置されている。可動体33に設けられる7個の可動体貫通孔部50のそれぞれは、保持体32に設けられる可動体貫通孔部50と同じ大きさに設定されている。
【0036】
可動体33における部分内周縁部寄りの部分円環帯状領域の周方向両端部には、可動体貫通孔部50の全周長さの半分を超える円弧長さの大円弧状切欠き部51が形成されている。また、可動体33における部分外周寄りの部分円環帯状領域の周方向一方端部には、可動体貫通孔部50の全周長さの半分未満の略1/4程度の円弧長さの小円弧状切欠き部52が形成されている。
【0037】
可動体33の部分内周縁近傍部及び部分外周縁近傍部には、保持体32に設けられた内側主スリット41、外側主スリット42及び副スリット43のそれぞれに対応するように、小貫通孔部53が形成されている。可動体33の部分内周縁近傍部における周方向中央寄りの部分には、異形孔部55が形成されている。異形孔部55は、内側円弧部45に近い側に配される中心角が180°を超える円弧状孔部56と、円弧状孔部56と連続するように円弧状孔部56から外側円弧部46に向かって延在する角丸半長方形状孔部57とを有している。角丸半長方形状孔部57は、角丸長方形の長手方向略半部分のような形状である。
【0038】
保持体32と可動体33との間には、保持体32の内側主スリット41とその内側主スリット41に対応する可動体33の小貫通孔部53との間に位置するように摺動部材60が介在されている。そして、保持体32と可動体33とは、内側主スリット41、摺動部材60及び小貫通孔部53を貫通するナベ小ねじ61と、ナベ小ねじ61のねじ軸に螺合する袋ナット62とよりなる締結具によって締着されている。また、保持体32と可動体33との間には、保持体の外側主スリット42とその外側主スリット42に対応する可動体33の小貫通孔部53との間に位置するように摺動部材60が介在されている。そして、保持体32と可動体33とは、外側主スリット42、摺動部材60及び小貫通孔部53を貫通するナベ小ねじ61と、ナベ小ねじ61のねじ軸に螺合する袋ナットの機能を兼ねる摘み部63とよりなる締結具によって締着されている。さらに、保持体32と可動体33との間には、保持体32の副スリット43とその副スリット43に対応する可動体33の小貫通孔部53との間に位置するように摺動部材60が介在されている。そして、保持体32と可動体33とは、副スリット43、摺動部材60及び小貫通孔部53を貫通するナベ小ねじ61と、ナベ小ねじ61のねじ軸に螺合する袋ナット62とよりなる締結具によって締着されている。
【0039】
<付勢部材>
図8は、可動体の一部を破断して示す容器非載置状態の回転体の平面図である。
図9(a)は、
図8のE-E線要部断面図、
図9(b)は、
図8のF-F線要部断面図である。
図8及び
図9(a)に示すように、保持体32の内周縁近傍部には、円周方向に等角度(60°毎)で6個の柱状の起立ピン71が立設されている。可動体33の部分内周縁近傍部寄りの周方向両端部には、下方に垂れるように垂下ピン72が垂設されている。起立ピン71と垂下ピン72との間には、引張コイルばね75が架設されている。
図8に示すように、各々の可動体33と保持体32との間には、一対の引張コイルばね75が、外周側に進むに従って互いの距離が大きくなるように配置されている。このような配置により、一対の引張コイルばね75の弾性力の合力(ベクトル)が、保持体32の半径方向に沿って保持体32の中心に向かって作用する。引張コイルばね75は、容器200の括れ部210(
図4(a)参照)に向けて可動体33を付勢する付勢部材として機能する。
【0040】
<ピン部材>
図8及び
図9(b)に示すように、回転体21においては、各々の可動体33に対応するように、ピン部材80が上下動可能に取り付けられている。
図9(b)に示すように、ピン部材80は、大径軸部81と小径軸部82と細長軸部83とを有し、上側から下側に向かって大径軸部81、小径軸部82及び細長軸部83が、互いの軸心を一致させた状態でこの記載順に一体的に連設されてなるものである。ピン部材80において、小径軸部82は、可動体33に設けられた異形孔部55における円弧状孔部56に嵌合可能である。大径軸部81は、小径軸部82が円弧状孔部56に嵌合したときに円弧状孔部56の周縁部上に載ることができるとともに、手指で掴むことができる程度の外径と高さとに設定されている。細長軸部83は、保持体32と回転テーブル31とを貫通するように上下方向に延在し、上下方向に移動可能で水平方向に移動不能に保持体32及び回転テーブル31に支持されている。細長軸部83の下端部には、回転テーブル31の下面に当接可能なストッパ84が取り付けられている。ストッパ84は、小径軸部82が円弧状孔部56に嵌合し、且つ大径軸部81が円弧状孔部56の周縁部上に載っている状態からピン部材80を引き上げ、円弧状孔部56から小径軸部82が抜け出て非嵌合状態となり、更にピン部材80を引き上げようとしたときに、回転テーブル31の下面に当接してピン部材80のそれ以上の引き上げ動作を止めて、回転テーブル31から細長軸部83が抜け出ないようにする。
【0041】
図6に示すように、支持円盤35と保持体32の内周縁近傍部とは、円周方向に等角度(120°)で両者間に配置される3個の内側六角柱部材85を介して所要のナベ小ねじ61や皿ねじ87によって締着されている。また、保持体32の内周縁近傍部寄りの部分と回転テーブル31とは、円周方向に等角度(90°)で両者間に配置される4個の外側六角柱部材86を介して所要のナベ小ねじ61によって締着されている。支持円盤35は、後述するロータ93に着脱可能に固定されており、ロータ93からの回転動力が、支持円盤35、3個の内側六角柱部材85、保持体32、及び4個の外側六角柱部材86を介して回転テーブル31に伝達されるようになっている。
【0042】
図4(a)に示すように、保持体32は、可動体貫通孔部50及び保持体貫通孔部40を通して回転テーブル31上に載置されている容器200の容器本体201における有底円筒部206の上部に対応する高さ位置に配されている。また、可動体33は、容器200の括れ部210に対応する高さ位置に配されている。
【0043】
<非引っ掛け位置、引っ掛け位置>
図7に示すように、保持体32と可動体33とは、両者間に所要の摺動部材60が介在された状態で締結具により締着されている。このような構成により、可動体33は、保持体32に対し、摺動部材60と共に、内側主スリット41及び外側主スリット42の延在する方向、つまり保持体32の半径方向に摺動可能とされ、保持体32の半径方向に沿って非引っ掛け位置と引っ掛け位置との間で往復移動可能とされている。ここで、可動体33の非引っ掛け位置とは、
図4(a)に示すように、可動体貫通孔部50及び保持体貫通孔部40を通して回転テーブル31上に載置されている容器200の括れ部210に可動体33が引っ掛かっていない位置である。すなわち、可動体33に設けられる可動体貫通孔部50の位置と保持体32に設けられる保持体貫通孔部40の位置とが平面視で一致するとともに、可動体33に設けられる大円弧状切欠き部51及び小円弧状切欠き部52(
図7参照)のそれぞれの位置と保持体32に設けられる保持体貫通孔部40の位置とが平面視で一致するような保持体32に対する可動体33の相対位置である。また、可動体33の引っ掛け位置とは、容器200の括れ部210に可動体33が引っ掛かっている位置である。すなわち、可動体33が非引っ掛け位置から保持体32の半径方向に沿って保持体32の中心側に所定距離進み、可動体33に設けられる可動体貫通孔部50、大円弧状切欠き部51及び小円弧状切欠き部52(
図7参照)のそれぞれの縁部が容器200の括れ部210に入り込んでいるような保持体32に対する可動体33の相対位置である。
【0044】
<回転駆動機構>
図2に示すように、回転駆動機構22は、駆動モータ91、回転軸92及びロータ93を備えている。駆動モータ91は、当該駆動モータ91の出力軸がケーシング20の上面板25を貫通してケーシング20の内部に配されるように、ケーシング20における後側左コーナ部に設置されている。回転軸92は、回転体21と同軸を成すように上下方向に延在し、駆動モータ91の出力軸と所定の軸間距離を存してケーシング20の上面板25を貫通するように配設されている。回転軸92は、ケーシング20の上面板25に軸受部材94を介して回転自在に支持されている。駆動モータ91の出力軸には、駆動タイミングプーリ95が固定されている。回転軸92の下端部には、従動タイミングプーリ96が固定されている。駆動タイミングプーリ95と従動タイミングプーリ96とには、タイミングベルト97が巻き掛け装着されている。ロータ93は、回転軸92の上端部に、回転軸92と同軸を成して固定されている。ロータ93には、回転体21における支持円盤35が同軸を成して着脱可能に固定されている。回転駆動機構22においては、駆動モータ91の出力軸からの回転動力が、駆動タイミングプーリ95、タイミングベルト97、従動タイミングプーリ96、回転軸92及びロータ93を介して回転体21に伝達される。これにより、駆動モータ91の正転/逆転作動により、回転体21を正転方向/逆転方向に回転させることができる。
【0045】
<ピン押上げブロック>
図10は、
図2のB部拡大図である。ケーシング20の上面板25における回転体21のサンプリングエリアに対応する部分には、回転テーブル31の下面から突出しているピン部材80の細長軸部83の下端部と接触可能にピン押上げブロック100が固定状態で載置されている。ピン押上げブロック100は、回転テーブル31の接線方向と平行な平面視長方形状のブロック材で構成されている。ピン押上げブロック100は、回転体21の正転方向に向かって上向きに傾斜する第一傾斜面部101と、回転体21の逆転方向に向かって上向きに傾斜する第二傾斜面部102と、水平面部103とを有し、回転体21の正転方向に向かって第一傾斜面部101、水平面部103及び第二傾斜面部102がこの記載順に配されている。第一傾斜面部101は、回転体21の正転方向への回転時に、回転体21と共に移動する、下降位置にあるピン部材80における細長軸部83の下端側と当接し、回転体21の回転に伴い、ピン部材80を上昇位置へと押し上げる。第二傾斜面部102は、回転体21の逆転方向への回転時に、回転体21と共に移動する、下降位置にあるピン部材80における細長軸部83の下端側と当接し、回転体21の回転に伴い、ピン部材80を上昇位置へと押し上げる。こうして、下降位置にあるピン部材80は、回転体21の正転方向及び逆転方向の回転により、サンプリングエリアを移動中に、上昇位置へと押し上げられる。
【0046】
以上に述べたように構成される自動分析装置1Aの作動について説明する。
図11は、複数の容器が載置された状態の回転体の全体斜視図である。
図12は、
図5のD部拡大図を示し、(a)はピン部材が下降位置にある状態図、(b)はピン部材が上昇位置にある状態図である。
【0047】
図11に示すように、容器200を交換する際には、交換エリア(K)に位置している可動体33を、手動操作により、非引っ掛け位置に移動させて、非引っ掛け状態とする。すなわち、交換エリア(K)に位置している可動体33における摘み部63を手指で摘み、回転体21の回転中心から可動体33を引き離すように操作して、非引っ掛け位置へと移動させ、容器200の括れ部に可動体33が引っ掛かっていない非引っ掛け状態とする。
【0048】
図12(a)に示すように、可動体33が非引っ掛け位置へと移動すると、異形孔部55における円弧状孔部56とピン部材80における小径軸部82との平面視の位置が一致し、ピン部材80に作用する重力作用により、異形孔部55における円弧状孔部56の周縁部上に、ピン部材80における大径軸部81の下面(大径軸部81と小径軸部82との段差面)が当接する位置(下降位置)までピン部材80が下降する。ピン部材80が下降位置のときには、ピン部材80における小径軸部82が異形孔部55における円弧状孔部56に嵌合し、ピン部材80が可動体33と係合状態となり、一対の引張コイルばね75(
図8参照)によって可動体33が保持体32の中心に向かって付勢されていても、可動体33はピン部材80によって非引っ掛け位置から動くことができず係止され、非引っ掛け状態が維持される。こうして、
図11の交換エリアに位置している容器200の周辺の部分拡大図に示すように、容器200を保持体32から上方へと引き抜き可能な状態がピン部材80によって確実に維持され、容器200の交換をより安定的に行うことができる状態となる。そして、交換エリア(K)において、現在、回転テーブル31上に載置されている、例えば、試料のサンプリングが済んだ容器200を上方に引き抜き、これから試料のサンプリングを行おうとする新しい容器200を、可動体貫通孔部50及び保持体貫通孔部40を通して回転テーブル31上に載置して、容器200を交換する。
【0049】
上記のようにして、交換エリア(K)において容器200を交換した後、回転駆動機構22(
図2参照)により回転体21を正転方向に回転させて容器200をサンプリングエリア(S)へと移動させる。サンプリングエリア(S)へ移動したピン部材80は、
図10に示すように、ピン押上げブロック100上を通過する。ピン押上げブロック100上を通過する際、下降位置にあるピン部材80における細長軸部83の下端側がピン押上げブロック100の第一傾斜面部101に当接される。このとき、回転体21を回転させるための回転動力の一部が、ピン押上げブロック100の第一傾斜面部101により、ピン部材80を上昇位置へと上昇させるための駆動力に変換される。これにより、ピン部材80が上昇位置に向けて上昇し、
図12(b)に示すように、ピン部材80における小径軸部82が異形孔部55における円弧状孔部56から抜ける位置(上昇位置)までピン部材80が上昇すると、ピン部材80が可動体33と非係合状態となり、一対の引張コイルばね75(
図8参照)によって保持体32の中心に向かって付勢されている可動体33が、異形孔部55における角丸半長方形状孔部57の存在により、引っ掛け位置への移動が許容されて、引っ掛け位置へと移動される。こうして、
図11のサンプリングエリアに位置している容器200の周辺の部分拡大図に示すように、可動体33が引っ掛け位置に移動すると、可動体33に設けられる可動体貫通孔部50、大円弧状切欠き部51及び小円弧状切欠き部52(
図7参照)のそれぞれの縁部が容器200の括れ部210に入り込み(
図11では可動体貫通孔部50の縁部の括れ部210への入り込み状態のみを示す。)、可動体33が容器200の括れ部210に引っ掛かっている引っ掛け状態とされる。そして、可動体33によって引っ掛け状態とされたサンプリング対象の容器200に収容されている試料を分注する。すなわち、駆動ユニット12(
図1参照)の駆動制御により、サンプリング対象の容器200の上方にノズル13が位置するようにノズルユニット11を位置決めし、ノズル13でシール材208を貫通させて容器200内の試料を吸引できる位置までノズルユニット11を下降させたら、ノズルユニット11による吸引作動により、容器200内の試料を吸引する。吸引動作後、シール材208からノズル13を引き抜くようにノズルユニット11を上昇させる。このとき、ノズル13とシール材208との間に生じる摩擦によって、ノズル13と共に容器200が上昇しようとする。容器200がサンプリングエリア(S)に位置しているときには、
図11のサンプリングエリアに位置している容器200の周辺の部分拡大図に示すように、容器200の括れ部210に引っ掛かっている可動体33によって容器200が上方に抜け止め状態に固定されている。従って、容器200内の試料を吸引後に行うノズル13の引き抜き動作の際に、ノズル13とシール材208との間に生じる摩擦によって容器200が引き上げられるのを可動体33によって阻止することができ、意図しない容器200の浮き上がりを防ぐことができる。このような容器浮き上がり防止効果は、容器200の括れ部210に入り込むことが可能な比較的厚みが小さい板状部材よりなる可動体33を容器200の括れ部210に引っ掛ける構成によって達成することができるので、装置(回転体21)の薄型化を図ることができる。
【0050】
上記の自動分析装置1Aにおける容器移送装置5Aによれば、サンプリングエリアにおいて、容器200に対し可動体33が自動的に引っ掛け状態となって、容器200が上方に抜け止め状態に固定されるので、容器200の固定忘れを確実に防止することができる。また、交換エリアにおいて、保持体32に対する容器200の抜き差し操作により、容器を容易に交換できるので、容器交換作業の安全性を高めることができる。また、ロータ93に対する支持円盤35の固定・固定解除操作により、回転体21の取り付け、取り外しを容易に行うことができ、メンテナンス性を向上させることができるとともに、様々な容器200に応じて複数種類の回転体21を用意しておけば、回転体21の交換のみで様々な容器200に対して適用可能となる。
【0051】
さらに、容器移送装置5Aでは、可動体33の設置個数や周方向長さを調整することにより、交換エリア及びサンプリングエリアの範囲を調整することができる。
【0052】
〔第二実施形態〕
図13は、本発明の第二実施形態に係る容器移送装置を具備する自動分析装置の全体を正面側から見た斜視図である。第二実施形態において、第一実施形態と同一又は同様のものについては図に同一符号を付すに留めてその詳細な説明を省略することとし、以下においては、第二実施形態に特有の部分を中心に説明することとする。
【0053】
図13に示す第二実施形態の自動分析装置1Bにおいて、容器移送装置5Bは、容器200の括れ部210に対する可動体33の引っ掛け状態と非引っ掛け状態とを、サンプリングエリア(S)と交換エリア(K)とで自動的に切り換える切換手段110を備えている。
【0054】
<切換手段>
切換手段110は、容器200の括れ部210に向けて可動体33を付勢する付勢部材としての引張コイルばね75と、回転体21を回転させるための回転動力を利用して、交換エリア(K)において容器200の括れ部210から可動体33を引き離す方向に移動させるカム111とにより構成されている。
【0055】
<カム>
カム111は、保持体32の中心を基準として略90°程度の中心角の略扇形状に形成された所定厚みの板状部材で構成され、全体として中空円盤状に形成された回転体21の中空状の中心部における交換エリア(K)内において可動体33の内側円弧部45と当接可能な高さ位置に配設されている。カム111は、回転駆動機構22におけるロータ93及び回転軸92(
図2参照)のそれぞれの軸中心部を貫通してケーシング20の下面板26上に固定状態で設置される支持軸112の上端部に固定されている。
【0056】
カム111は、周方向中央位置に形成される膨出部113と、膨出部113の両側に形成される非膨出部114とを有している。膨出部113は、引っ掛け位置にある可動体33の内側円弧部45と保持体32の中心との平面視の距離と同じ長さの半径の第一仮想円から、非引っ掛け位置にある可動体33の内側円弧部45と保持体32の中心との平面視の距離と同じ長さの半径の第二仮想円に到達するように丸みを持って膨らんだ形状に形成されている。非膨出部114は、前記第一仮想円の内側において保持体32の接線方向に延在するような形状に形成されている。
【0057】
以上に述べたように構成される自動分析装置1Bにおいて、回転駆動機構22により正転方向に回転される回転体21における可動体33が、サンプリングエリア(S)から交換エリア(K)へと移動すると、可動体33の内側円弧部45にカム111の膨出部113が当接され、回転体21を回転させるための回転動力の一部が、カム111により、容器200の括れ部210から可動体33を引き離す方向に駆動する駆動力に変換される。これにより、容器200の括れ部210から離れる方向に可動体33が非引っ掛け位置へと移動されて、括れ部210に対し可動体33が引っ掛かっていない非引っ掛け状態とされる。可動体33が非引っ掛け位置へと移動すると、
図12(a)に示すように、異形孔部55における円弧状孔部56とピン部材80における小径軸部82との平面視の位置が一致し、ピン部材80に作用する重力作用により、異形孔部55における円弧状孔部56の周縁部上に、ピン部材80における大径軸部81の下面(大径軸部81と小径軸部82との段差面)が当接する位置(下降位置)までピン部材80が下降する。ピン部材80が下降位置のときには、ピン部材80における小径軸部82が異形孔部55における円弧状孔部56に嵌合し、回転テーブル31及び保持体32に上下動可能に取り付けられたピン部材80が可動体33と係合状態となり、一対の引張コイルばね75(
図8参照)によって可動体33が保持体32の中心に向かって付勢されていても、可動体33はピン部材80によって非引っ掛け位置から動くことができず係止され、非引っ掛け状態が維持される。こうして、容器200を保持体32から上方へと引き抜き可能な状態がピン部材80によって確実に維持され、容器200の交換をより安定的に行うことができる状態となる。そして、交換エリア(K)において、現在、回転テーブル31上に載置されている、試料のサンプリングが済んだ容器200を上方に引き抜き、これから試料のサンプリングを行おうとする新しい容器200を、可動体貫通孔部50及び保持体貫通孔部40を通して回転テーブル31上に載置して、容器200を交換する。
【0058】
上記のようにして、交換エリア(K)において容器を交換した後、回転駆動機構22により回転体21を正転方向に回転させて容器200をサンプリングエリア(S)へと移動させると、第一実施形態の自動分析装置1Aと同様に、ピン押上げブロック100の作用により、ピン部材80が上昇位置に向けて上昇し、
図12(b)に示すように、ピン部材80が可動体33と非係合状態となり、一対の引張コイルばね75(
図8参照)によって保持体32の中心に向かって付勢されている可動体33が引っ掛け位置へと移動される。これにより、可動体33に設けられる可動体貫通孔部50、大円弧状切欠き部51及び小円弧状切欠き部52のそれぞれの縁部が容器200の括れ部210に入り込み、可動体33が括れ部210に引っ掛かっている引っ掛け状態とされ、容器200内の試料を吸引後に行うノズル13の引き抜き動作の際に、容器200が引き上げられるのを可動体33によって阻止することができ、意図しない容器200の浮き上がりを確実に防ぐことができる。
【0059】
自動分析装置1Bでは、回転テーブル31上に容器200が載置されている回転体21を正転方向(又は逆転方向)に回転させて、容器200を交換エリア(K)とサンプリングエリア(S)との間で移動させるだけで、容器200の括れ部210に対し可動体33が引っ掛かっていない非引っ掛け状態と、容器200の括れ部210に対し可動体33が引っ掛かった引っ掛け状態とを、自動的に切り換えることができる。
【0060】
以上、本発明の容器移送装置について、複数の実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に記載した構成に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができる。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明の容器移送装置は、研究機関、検査機関、大学、病院、医薬品メーカー、工業薬品メーカー、化粧品メーカー、食品メーカー等において、例えば、薬液、飲料等の液体試料を収容した容器を移送する用途に利用可能である。
【符号の説明】
【0062】
1A,1B 自動分析装置
5A,5B 容器移送装置
31 回転テーブル
32 保持体
33 可動体(固定手段)
75 引張コイルばね(付勢部材)
80 ピン部材
100 ピン押上げブロック
110 切換手段
111 カム
200 容器
210 括れ部
K 交換エリア
S サンプリングエリア
【手続補正書】
【提出日】2022-03-03
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料を収容した容器が載置され、前記容器を交換エリアとサンプリングエリアとの間で移動させる回転テーブルと、
前記回転テーブルに載置されている前記容器を上方に引き抜き可能に保持する保持体と、
サンプリングエリアで前記容器を上方に抜け止め状態に固定する固定手段と、
を備え、
前記容器は、括れ部を有しており、
前記固定手段は、前記括れ部に対し相対移動可能な可動体によって前記括れ部を引っ掛けることで前記容器を上方に抜け止め状態に固定するように構成され、
前記容器の括れ部に対する前記可動体の引っ掛け状態と非引っ掛け状態とを、サンプリングエリアと交換エリアとで切り換える切換手段を備える容器移送装置。
【請求項2】
前記切換手段は、
前記容器の括れ部に向けて前記可動体を付勢する付勢部材と、
前記回転テーブルを回転させるための回転動力を利用して、交換エリアにおいて前記容器の括れ部から前記可動体を引き離す方向に前記可動体を移動させるカムと、
を含む請求項1に記載の容器移送装置。
【請求項3】
交換エリアにおいて前記容器に対する前記可動体の非引っ掛け状態を維持するピン部材を備える請求項1又は2に記載の容器移送装置。
【請求項4】
前記ピン部材は、前記保持体に上下動可能に取り付けられ、
前記ピン部材が下降位置のときに前記可動体と係合状態となって非引っ掛け状態が維持され、前記ピン部材が上昇位置のときに前記可動体と非係合状態となって非引っ掛け状態が維持されないように構成されており、
前記回転テーブルを回転させるための回転動力を利用して、サンプリングエリアにおいて前記ピン部材を前記上昇位置へと押し上げるピン押上げブロックを備える請求項3に記載の容器移送装置。