(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022076492
(43)【公開日】2022-05-20
(54)【発明の名称】耐火被覆材及び耐火被覆材の製造方法
(51)【国際特許分類】
B29C 39/24 20060101AFI20220511BHJP
E04B 1/94 20060101ALI20220511BHJP
C09D 5/18 20060101ALI20220511BHJP
C09D 7/61 20180101ALI20220511BHJP
C09D 201/00 20060101ALI20220511BHJP
B05D 7/24 20060101ALI20220511BHJP
B05D 7/00 20060101ALI20220511BHJP
B05D 1/18 20060101ALI20220511BHJP
B29C 39/26 20060101ALI20220511BHJP
B29C 44/00 20060101ALI20220511BHJP
B29C 44/36 20060101ALI20220511BHJP
【FI】
B29C39/24
E04B1/94 D
C09D5/18
C09D7/61
C09D201/00
B05D7/24 303B
B05D7/24 301L
B05D7/00 K
B05D1/18
B29C39/26
B29C44/00 A
B29C44/36
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020185143
(22)【出願日】2020-11-05
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-09-22
(71)【出願人】
【識別番号】598153582
【氏名又は名称】化工機商事株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100140914
【弁理士】
【氏名又は名称】三苫 貴織
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【弁理士】
【氏名又は名称】川上 美紀
(74)【代理人】
【識別番号】100172524
【弁理士】
【氏名又は名称】長田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 雅彦
(72)【発明者】
【氏名】古賀 浩
【テーマコード(参考)】
2E001
4D075
4F202
4F204
4F214
4J038
【Fターム(参考)】
2E001DE01
2E001DE04
2E001EA05
2E001HD01
2E001LA04
2E001LA08
4D075AB05
4D075AB12
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4F202AA36
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4F214UF01
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4F214UK31
4J038HA426
4J038NA15
4J038PA15
4J038PC02
(57)【要約】
【課題】鉄骨構造の接合部分において、外観を損なわずに耐火性を確保することができ、また、安全、迅速かつ容易に施工することが可能な耐火被覆材及び耐火被覆材の製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】ナットキャップ1は、ポリりん酸アンモニウムを含む発泡性耐火塗料を材料とし、鉄骨材同士を接合するボルト20に締結されるナット22を収容可能な内部空間2が形成された被覆部3を有する。ナットキャップ1において、被覆部3は、鉄骨材の耐火性能を確保することが可能な厚さであることが望ましい。ナットキャップ1において、被覆部3がナット22を収容したとき、被覆部3の内面とボルト20の先端が離間するように被覆部3が形成されてもよい。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリりん酸アンモニウムを含む発泡性耐火塗料を材料とし、鉄骨材同士を接合するボルトに締結されるナットを収容可能な内部空間が形成された被覆部を有する耐火被覆材。
【請求項2】
前記被覆部は、前記鉄骨材の耐火性能を確保することが可能な厚さである請求項1に記載の耐火被覆材。
【請求項3】
前記被覆部が前記ナットを収容したとき、前記被覆部の内面と前記ボルトの先端が離間するように前記被覆部が形成されている請求項1又は2に記載の耐火被覆材。
【請求項4】
前記耐火塗料は、2液混合硬化型塗料である請求項1から3のいずれか1項に記載の耐火被覆材。
【請求項5】
被覆部の外周面形状を形成可能な第1成形型と、鉄骨材同士を接合するボルトに締結されるナットを収容可能な前記被覆部の内部空間を形成可能な第2成形型とを有する成形型を準備するステップと、
前記第1成形型と前記第2成形型の間に、ポリりん酸アンモニウムを含む発泡性耐火塗料を注入するステップと、
前記第1成形型と前記第2成形型の間に注入された前記耐火塗料を硬化させるステップと、
を有する耐火被覆材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐火被覆材及び耐火被覆材の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、建築物の鉄骨部分の耐火性能を保持するため、発泡性耐火塗料を鉄骨材に塗布することが行われている。発泡性耐火塗料は、塗布時は薄膜(例えば数mm程度)であり、火災等の温度上昇によって発泡して、数10mmの断熱層を形成する。
【0003】
発泡性耐火塗料は、通常の塗料と同様に、鉄骨表面において比較的厚みが少ない仕上げが可能である。そのため、巻物などの耐火被覆材を鉄骨に巻く場合と異なり、建築物の鉄骨形状を外観又は内観に露出させたデザインを損なわずに、耐火性能を確保させることができる。
【0004】
下記の特許文献1には、発泡性耐火塗料に関する発明が開示されている。なお、発泡性耐火塗料は、特許文献1に開示されたものに限られず、種々のものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
1液型の発泡性耐火塗料は、乾燥や薄膜の塗り重ねによって建築物の塗装工程として数週間の単位を要する。
【0007】
また、発泡性耐火塗料には、2液混合硬化型のものがあり、2液混合硬化型発泡性耐火塗料は、速乾性が高く約1時間で指触乾燥し、また1回の塗布で4mm程度の厚塗りが可能である。2液混合硬化型発泡性耐火塗料は、建築物の施工現場において、エアレススプレーガンや刷毛による塗布作業が通常行われている。しかし、2液混合硬化型発泡性耐火塗料は、粘度が約5Pas~10数Pas(約20℃)と高いため、1液型発泡性耐火塗料に比べて塗布作業の難易度が高い。
【0008】
発泡性耐火塗料の塗布工程は、すべての塗布面において耐火塗料が規定の膜厚となるように行って所定の耐火性を確保する必要がある。また、発泡性耐火塗料の塗布作業では、特に、鉄骨構造における鉄骨材同士の接合部分において複数本の高力ボルトが設置されている場所で、耐火性を確保しつつ、均一な塗布を行うには時間や手間がかかり、また、良好な仕上げとするのが難しい。この課題は、1液型発泡性耐火塗料、2液混合硬化型発泡性耐火塗料のいずれの場合でも生じる。
【0009】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、鉄骨構造の接合部分において、外観を損なわずに耐火性を確保することができ、また、安全、迅速かつ容易に施工することが可能な耐火被覆材及び耐火被覆材の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明の耐火被覆材及び耐火被覆材の製造方法は以下の手段を採用する。
すなわち、本発明に係る耐火被覆材は、ポリりん酸アンモニウムを含む発泡性耐火塗料を材料とし、鉄骨材同士を接合するボルトに締結されるナットを収容可能な内部空間が形成された被覆部を有する。
【0011】
上記発明に係る耐火被覆材において、前記被覆部は、前記鉄骨材の耐火性能を確保することが可能な厚さであることが望ましい。
【0012】
上記発明に係る耐火被覆材において、前記被覆部が前記ナットを収容したとき、前記被覆部の内面と前記ボルトの先端が離間するように前記被覆部が形成されてもよい。
【0013】
上記発明に係る耐火被覆材において、前記耐火塗料は、2液混合硬化型塗料でもよい。
【0014】
本発明に係る耐火被覆材の製造方法は、被覆部の外周面形状を形成可能な第1成形型と、鉄骨材同士を接合するボルトに締結されるナットを収容可能な前記被覆部の内部空間を形成可能な第2成形型とを有する成形型を準備するステップと、前記第1成形型と前記第2成形型の間に、ポリりん酸アンモニウムを含む発泡性耐火塗料を注入するステップと、前記第1成形型と前記第2成形型の間に注入された前記耐火塗料を硬化させるステップとを有する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、鉄骨構造の接合部分において、外観を損なわずに耐火性を確保することができ、また、安全、迅速かつ容易に施工することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施形態に係るナットキャップを示す縦断面図である。
【
図2】
図1のII-II線で切断した横断面図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係るナットキャップを製造するための成形型を示す縦断面図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係るナットキャップを製造するための第2成形型を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明の一実施形態に係るナットキャップ1について、
図1及び
図2を参照して説明する。
本発明の一実施形態に係るナットキャップ1は、ボルト20に締結されるナットを収容できる部材である。
【0018】
鉄骨材10は、例えばH型鋼など、鉄骨構造に一般的に用いられる鋼材である。ボルト20とナット22によって、建築物の鉄骨構造などに用いられる鉄骨材10同士が接合される。ボルト20は、例えば、鉄骨構造の接合部分に用いられる高力ボルトであり、ナット22は、鉄骨材10同士の接合時にボルト20に締結される。
【0019】
ボルト20及びナット22のサイズは、所定の接合強度を付与することが可能なサイズであり、鉄骨構造の接合部に一般的に用いられるときのサイズであればよい。
【0020】
ナットキャップ1は、耐火被覆材の一例である。
図1及び
図2に示すように、ナットキャップ1は、一つのナット22を覆うことが可能な被覆部3を備え、一つのナット22に対して1個のナットキャップ1が形成される。すなわち、鉄骨構造の接続部分における複数のナット22に対して一つずつナットキャップ1が設置される。
【0021】
被覆部3は、ナット22を収容可能な内部空間2を有する。被覆部3は、ナット22、ワッシャ24及びボルト20の先端20aの外周面に沿った形状を有する。
【0022】
なお、被覆部3は、被覆部3がナット22を収容したとき、被覆部3の内面とボルト20の先端20aが離間するように形成されてもよい。被覆部3がナット22に設置されるとき、被覆部3の内部に硬化前の耐火塗料又は接着剤(例えばエポキシ樹脂系)が適量注入される。これにより、耐火塗料又は接着剤がナットキャップ1とナット22の間に充填され、耐火塗料又は接着剤がナットキャップ1とナット22を接合する。
【0023】
被覆部3の厚さは、鉄骨材10の耐火性能を確保することが可能な厚さである。被覆部3の厚さは、例えば1.75mm以上である。被覆部3の厚さは、適用される鋼材において要求される耐火性能によって決定される。すなわち、ナット22以外の部分において塗布される耐火塗料12の硬化乾燥後の膜厚であるDRY膜厚の規定膜厚と同一の厚さを有する。これにより、鉄骨材10同士の接合部分のナット22にナットキャップ1を設置するだけで、ナット22周囲の耐火性能が確保される。
【0024】
また、被覆部3の端部には、フランジ3Aが設けられてもよい。フランジ3Aの厚さは、耐火性能を確保するための耐火塗料12の乾燥前の膜厚と同一であることが望ましい。耐火塗料12は、塗布後、乾燥によって厚みが例えば85%程度へ減少する。耐火塗料12の塗装直後の膜厚であるWET膜厚は、耐火塗料12の硬化乾燥後の膜厚であるDRY膜厚が規定膜厚となるように決定される。フランジ3Aの厚さは、耐火塗料12のDRY膜厚が規定膜厚となるように決定されたWET膜厚と同一とされる。これにより、平坦部分に耐火塗料12を塗布する際、フランジ3Aの厚さを基準にして塗布することができ、確保しなければならない要求膜厚の確認が容易になる。
【0025】
被覆部3の材料は、例えば、ポリりん酸アンモニウムを含む発泡性耐火塗料である。発泡性耐火塗料によれば、火災等の火炎によって温度上昇することによって、ポリりん酸アンモニウムが分解しつつ炭化層が形成され、また、発生する二酸化炭素、アンモニア等のガスによって発泡状の炭化層が形成される。すなわち、数mmの被覆部3が火災によって発泡し、10数mmの断熱性を有する炭化層が形成される。その結果、鉄骨部分の耐火性能(例えば1時間又は2時間の耐火性能)が確保される。
【0026】
本実施形態の被覆部3の材料である耐火塗料は、例えばウレタン樹脂を有する。また、耐火塗料は、可塑剤を含み、硬化したときにも弾力性を有する。ナットキャップ1が弾力性を有することにより、ナットキャップ1のナット22への装着が容易になり、作業性が向上する。
【0027】
耐火塗料は、例えば、2液混合硬化型塗料である。2液混合硬化型塗料は、速乾性が高く約1時間で指触乾燥し、また1回の塗布で4mm程度の厚塗りが可能である。混合前の2液は、主材と、硬化剤である。主材の主成分は、ポリりん酸アンモニウムであり、その他に、主材は、二酸化チタン、可塑剤、クレー、ヒマシ油、添加物などを含む。硬化剤の主成分は、ウレタン系複合ポリマーであり、硬化剤は、その他にアミノシランを含む。粘度(20℃)は、例えば、主材が14Pas、硬化剤が1Pas、混合時が8Pasである。耐火塗料の一例は、ナリファイア・ハイブリット・ベースコート SC902(商品名)であるが、本発明は、この例に限定されない。
【0028】
次に、ナットキャップ1の製造方法について説明する。
ナットキャップ1は、成形型30に注入された塗料を硬化させることによって製作される。
【0029】
図3に示すように、成形型30は、被覆部3の外周面形状を形成可能な第1成形型31と、鉄骨材10同士を接合するボルト20に締結されるナット22を収容可能な内部空間2を形成可能な第2成形型32とを有する。
【0030】
第1成形型31は、合成樹脂製であって、プレート状を有し、平面部に凹状の穴が形成されたキャビティ(雌型)である。第1成形型31には、1度に複数個のナットキャップ1を形成できるように、複数の凹状の穴が形成されることが望ましい。
【0031】
なお、第1成形型31は、ナット22のサイズに応じて、様々なサイズのナットキャップ1を形成できるように複数枚のプレートから形成されて、互いに重ね合わされて用いられるようにしてもよい。例えば、第1プレート33には、ナット22及びワッシャ24の長さに応じた板厚を有し、ナット22及びワッシャ24の外周形状に応じた貫通穴33Aが形成されている。第2プレート34には、ボルト20の先端20aの長さに応じた板厚を有し、ボルト20の先端20aの太さに応じた貫通穴34Aが形成されている。第3プレート35には、ボルト20の先端20aの形状に応じた底部を有する穴35Aが形成される。例えば、ナット22及びワッシャ24の長さや外周形状に対応して、厚さや貫通穴33Aの径の異なる第1プレート33が選択され、ボルト20の先端20aの長さや太さに対応して、厚さや貫通穴34Aの径の異なる第2プレート34が選択される。
【0032】
図3及び
図4に示すように、第2成形型32は、フッ素樹脂等の合成樹脂製などであって、被覆部3の内部空間2に対応した形状を有するコア(雄型)である。第2成形型32のコアは、ナット部36と、ワッシャ部37と、ボルト部38を有する。ナット部36と、ワッシャ部37と、ボルト部38は、鉄骨構造の接合部分に適用されるナット22、ワッシャ24、ボルト20の先端20aに対応した形状を有する。ナット部36と、ワッシャ部37と、ボルト部38は、それぞれ別の部材を組み合わせたものでもよいし、一体的に形成されたものでもよい。第2成形型32は、プレート材39を更に有し、プレート材39には、被覆部3の内部空間2に対応した形状を有する、上述したコア(ナット部36、ワッシャ部37、ボルト部38)が固定される。
【0033】
そして、第1成形型31と第2成形型32を有する成形型を準備した後、第1成形型31内に、上述したポリりん酸アンモニウムを含む発泡性耐火塗料を注入する。そして、コアが固定されたプレート材39からなる第2成形型32を第1成形型31に設置する。これにより、第1成形型31と第2成形型32の間に耐火塗料が注入され充填された状態となる。
【0034】
所定時間経過後、成形型内に注入された耐火塗料が硬化したとき、第2成形型32を第1成形型31から取り外して、耐火塗料が硬化することによって形成されたナットキャップ1を離型する。以上より、ナットキャップ1が製作される。
【0035】
なお、耐火塗料として2液混合硬化型塗料を用いる場合は、成形型に耐火塗料を注入する前に2液を混合し、混合した2液を硬化する前に成形型に注入する。なお、成形型においてナットキャップ1が形成されるまでの時間を短縮するため、2液を混合して半固化状となった耐火塗料を成形型に注入してもよい。また、2液混合硬化型塗料は、2液混合によって硬化するため、密閉容器内でも硬化し、ナットキャップ1を形成できる。
【0036】
次に、ナットキャップ1の鉄骨構造の接合部分への設置方法について説明する。
鉄骨構造の接合部分の貫通穴にボルト20が接続され、ボルト20にナット22が締結された後、ボルト20に所定のトルクをかけて、高力ボルトとしての要求性能が確保される。そして、耐火塗料の塗布工程において、下塗り塗料が塗布される。
【0037】
その後、本実施形態に係るナットキャップ1が接合部分のナット22に対して一つずつ設置される。なお、被覆部3において、被覆部3の内面とボルト20の先端20aが離間するように形成されている場合、被覆部3がナット22に設置される前に、被覆部3の内部に硬化前の耐火塗料又は接着剤が適量注入される。また、ナットキャップ1間における平坦部に対して耐火塗料12がエアレススプレーガン又は刷毛によって塗布される。2液混合硬化型塗料を用いる場合、2液混合硬化型塗料は、速乾性が高く約1時間で指触乾燥し、また1回の塗布で4mm程度の厚塗りが可能である。
【0038】
耐火塗料が硬化した後、上塗り塗料が塗布されて、塗布工程が完了する。
【0039】
発泡性耐火塗料の塗布工程は、すべての塗布面において耐火塗料が規定の膜厚となるように行って所定の耐火性を確保する必要がある。1液型発泡性耐火塗料は、乾燥や薄膜の塗り重ねによって建築物の塗装工程として数週間の単位を要する。また、2液混合型耐火塗料は、速乾性があるが、粘度が約5Pas~10数Pas(約20℃)と高いため、建築物の施工現場において、塗布作業の難易度が高い。1液型発泡性耐火塗料と2液混合硬化型発泡性耐火塗料のいずれの場合でも、鉄骨構造における鉄骨同士の接合部分において複数本の高力ボルトが設置されている場所で、耐火性を確保しつつ、均一な塗布を行うには、時間や手間がかかり、また、良好な仕上げとするのが難しい。
【0040】
これに対し、本実施形態によれば、ナットキャップ1が、所定の耐火性が確保された厚さを有する発泡性耐火塗料によって形成されており、ボルト20と締結されたナット22の形状を有して、ナット22を被覆可能である。そのため、作業者は、ボルト20に沿って耐火塗料をエアレススプレーガンや刷毛によって塗布する代わりに、ナットキャップ1をナット22に対して設置する作業を行うだけで、耐火塗料と同等の耐火性能を確保できる。
【0041】
したがって、鉄骨構造の接合部分において、外観を損なわずに耐火性を確保することができ、また、安全、迅速かつ容易に施工することが可能である。特に、建築現場における塗布工事の工期が短縮することによって、特に夜間のみに工事可能な現場ではコスト削減、安全確保に大きく寄与する。また、ナット22の形状に沿ったエアレススプレーガンや刷毛による塗布では、膜厚にばらつきが生じて大量の塗料が必要になったり、要求膜厚の確認に手間がかかったり、良好な仕上げとするのが難しかった。これに対し、本実施形態によれば、塗料の量を削減でき、要求膜厚を確実に確保できる。また、塗装面の仕上げについても改善する。
【0042】
なお、本発明に係る耐火被覆材は、上述した例に限定されない。例えば、鉄骨構造の接続部分における複数のナット22の間隔が予め分かる場合、耐火被覆材は、一つのナット22を収容する被覆部3が複数連結された、複数の被覆部3を有するものでもよい。複数の被覆部3間を連結する連結部についても被覆部3と同一の材料で形成される。これにより、複数のナット22に対して一つずつナットキャップ1を設置するという作業ではなく、ナット22に合わせて被覆部3を設置しながら一つの耐火被覆材を設置することによって、複数のナット22を覆うことができる。これにより、ナット22間の耐火塗料の塗布作業を省略することもできる。
【符号の説明】
【0043】
1 :ナットキャップ
2 :内部空間
3 :被覆部
3A :フランジ
10 :鉄骨材
12 :耐火塗料
20 :ボルト
20a :先端
22 :ナット
24 :ワッシャ
30 :成形型
31 :第1成形型
32 :第2成形型
33 :第1プレート
33A :貫通穴
34 :第2プレート
34A :貫通穴
35 :第3プレート
35A :穴
36 :ナット部
37 :ワッシャ部
38 :ボルト部
39 :プレート材
【手続補正書】
【提出日】2021-03-08
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリりん酸アンモニウムを含む発泡性耐火塗料を材料とし、鉄骨材同士を接合するボルトに締結されるナットを収容可能な内部空間が形成され、前記鉄骨材の耐火性能を確保することが可能な厚さである被覆部を有し、前記発泡性耐火塗料が硬化したものであって弾力性を有する耐火被覆材。
【請求項2】
前記被覆部の端部に設けられたフランジを更に有し、
前記フランジの厚さは、硬化乾燥後において前記鉄骨材の耐火性能を確保することが可能となる、前記発泡性耐火塗料の乾燥前の膜厚と同一である請求項1に記載の耐火被覆材。
【請求項3】
前記被覆部が前記ナットを収容したとき、前記被覆部の内面と前記ボルトの先端が離間するように前記被覆部が形成されている請求項1又は2に記載の耐火被覆材。
【請求項4】
前記耐火塗料は、2液混合硬化型塗料である請求項1から3のいずれか1項に記載の耐火被覆材。
【請求項5】
被覆部の外周面形状を形成可能な第1成形型と、鉄骨材同士を接合するボルトに締結されるナットを収容可能な前記被覆部の内部空間を形成可能な第2成形型とを有し、形成される前記被覆部が前記鉄骨材の耐火性能を確保することが可能な厚さとなる成形型を準備するステップと、
前記第1成形型と前記第2成形型の間に、ポリりん酸アンモニウムを含む発泡性耐火塗料を注入するステップと、
前記第1成形型と前記第2成形型の間に注入された前記耐火塗料を、弾力性を有するように硬化させるステップと、
を有する耐火被覆材の製造方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0010
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明の耐火被覆材及び耐火被覆材の製造方法は以下の手段を採用する。
すなわち、本発明に係る耐火被覆材は、ポリりん酸アンモニウムを含む発泡性耐火塗料を材料とし、鉄骨材同士を接合するボルトに締結されるナットを収容可能な内部空間が形成され、前記鉄骨材の耐火性能を確保することが可能な厚さである被覆部を有し、前記発泡性耐火塗料が硬化したものであって弾力性を有する。
上記発明に係る耐火被覆材において、被覆部の端部に設けられたフランジを更に有してもよく、前記フランジの厚さは、硬化乾燥後において前記鉄骨材の耐火性能を確保することが可能となる、前記発泡性耐火塗料の乾燥前の膜厚と同一である。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0014
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0014】
本発明に係る耐火被覆材の製造方法は、被覆部の外周面形状を形成可能な第1成形型と、鉄骨材同士を接合するボルトに締結されるナットを収容可能な前記被覆部の内部空間を形成可能な第2成形型とを有し、形成される前記被覆部が前記鉄骨材の耐火性能を確保することが可能な厚さとなる成形型を準備するステップと、前記第1成形型と前記第2成形型の間に、ポリりん酸アンモニウムを含む発泡性耐火塗料を注入するステップと、前記第1成形型と前記第2成形型の間に注入された前記耐火塗料を、弾力性を有するように硬化させるステップとを有する。
【手続補正書】
【提出日】2021-07-21
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリりん酸アンモニウムを主成分とする主材と、ウレタン樹脂を主成分とする硬化剤と、可塑剤と、を含む発泡性耐火塗料を材料とし、鉄骨材同士を接合するボルトに締結されるナットを収容可能な内部空間が形成され、前記ナット及び前記ボルトの先端の外周面に沿った形状であり、前記鉄骨材の耐火性能を確保することが可能な厚さである被覆部を有し、前記発泡性耐火塗料が硬化したものであって弾力性を有する耐火被覆材。
【請求項2】
前記被覆部の端部に設けられたフランジを更に有し、
前記フランジの厚さは、硬化乾燥後において前記鉄骨材の耐火性能を確保することが可能となる、前記発泡性耐火塗料の乾燥前の膜厚と同一である請求項1に記載の耐火被覆材。
【請求項3】
前記被覆部が前記ナットを収容したとき、前記被覆部の内面と前記ボルトの先端が離間するように前記被覆部が形成されている請求項1又は2に記載の耐火被覆材。
【請求項4】
前記発泡性耐火塗料は、2液混合硬化型塗料である請求項1から3のいずれか1項に記載の耐火被覆材。
【請求項5】
被覆部の外周面形状を形成可能な第1成形型と、鉄骨材同士を接合するボルトに締結されるナットを収容可能な前記被覆部の内部空間を形成可能な第2成形型とを有し、形成される前記被覆部が前記ナット及び前記ボルトの先端の外周面に沿った形状であり、前記鉄骨材の耐火性能を確保することが可能な厚さとなる成形型を準備するステップと、
前記第1成形型と前記第2成形型の間に、ポリりん酸アンモニウムを主成分とする主材と、ウレタン樹脂を主成分とする硬化剤と、可塑剤と、を含む発泡性耐火塗料を注入するステップと、
前記第1成形型と前記第2成形型の間に注入された前記発泡性耐火塗料を、弾力性を有するように硬化させるステップと、
を有する耐火被覆材の製造方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0010
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明の耐火被覆材及び耐火被覆材の製造方法は以下の手段を採用する。
すなわち、本発明に係る耐火被覆材は、ポリりん酸アンモニウムを主成分とする主材と、ウレタン樹脂を主成分とする硬化剤と、可塑剤と、を含む発泡性耐火塗料を材料とし、鉄骨材同士を接合するボルトに締結されるナットを収容可能な内部空間が形成され、前記ナット及び前記ボルトの先端の外周面に沿った形状であり、前記鉄骨材の耐火性能を確保することが可能な厚さである被覆部を有し、前記発泡性耐火塗料が硬化したものであって弾力性を有する。
上記発明に係る耐火被覆材において、被覆部の端部に設けられたフランジを更に有してもよく、前記フランジの厚さは、硬化乾燥後において前記鉄骨材の耐火性能を確保することが可能となる、前記発泡性耐火塗料の乾燥前の膜厚と同一である。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0013
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0013】
上記発明に係る耐火被覆材において、前記発泡性耐火塗料は、2液混合硬化型塗料でもよい。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0014
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0014】
本発明に係る耐火被覆材の製造方法は、被覆部の外周面形状を形成可能な第1成形型と、鉄骨材同士を接合するボルトに締結されるナットを収容可能な前記被覆部の内部空間を形成可能な第2成形型とを有し、形成される前記被覆部が前記ナット及び前記ボルトの先端の外周面に沿った形状であり、前記鉄骨材の耐火性能を確保することが可能な厚さとなる成形型を準備するステップと、前記第1成形型と前記第2成形型の間に、ポリりん酸アンモニウムを主成分とする主材と、ウレタン樹脂を主成分とする硬化剤と、可塑剤と、を含む発泡性耐火塗料を注入するステップと、前記第1成形型と前記第2成形型の間に注入された前記発泡性耐火塗料を、弾力性を有するように硬化させるステップとを有する。