(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022076541
(43)【公開日】2022-05-20
(54)【発明の名称】不動産居室画像の構図呈示方法
(51)【国際特許分類】
H04N 5/232 20060101AFI20220513BHJP
G03B 15/00 20210101ALI20220513BHJP
G03B 17/18 20210101ALI20220513BHJP
【FI】
H04N5/232 220
H04N5/232 290
G03B15/00 U
G03B17/18 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020186936
(22)【出願日】2020-11-10
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り (1)令和1年11月28日に映像情報メディア学会冬季大会2019の予稿集にて発表。 (2)令和1年12月13日に映像情報メディア学会冬季大会2019の講演にて発表。 (3)令和2年2月26日に映像メディア学会研究会申込システムにて講演論文詳細を発表。
(71)【出願人】
【識別番号】504133110
【氏名又は名称】国立大学法人電気通信大学
(71)【出願人】
【識別番号】518069003
【氏名又は名称】アヴァント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100167863
【弁理士】
【氏名又は名称】大久保 恵
(72)【発明者】
【氏名】高橋 裕樹
(72)【発明者】
【氏名】赤間 大樹
(72)【発明者】
【氏名】木村 久男
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 啓介
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 将親
(72)【発明者】
【氏名】浅田 良夫
【テーマコード(参考)】
2H102
5C122
【Fターム(参考)】
2H102AA41
2H102AA71
5C122DA04
5C122EA48
5C122FA01
5C122FK04
5C122FK37
5C122FK41
5C122HB01
5C122HB10
(57)【要約】
【課題】構図のみで構成される不動産居室画像の撮影支援を行うための不動産居室画像の構図呈示方法を提供する。
【解決手段】不動産居室の画像を撮影する際に、カメラに構図を呈示するための不動産居室画像の構図呈示方法であって、居室画像に対して、エッジ検出42を行い、エッジ検出42を行った居室画像に対して、直線検出43を行い、直線検出43によって得られた線分51から構図特徴点11の検出44を行う。また、居室画像をX軸およびY軸を用いて4つの象限に分類し、4つの象限のそれぞれでコーナー10を検出する。さらに、検出した構図特徴点11とコーナー10を通る延長した線分51に基づいて、構図特徴線20を推定した。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
不動産居室の画像を撮影する際に、カメラに構図を呈示するための不動産居室画像の構図呈示方法であって、
居室画像に対して、エッジ検出を行い、
前記エッジ検出を行った前記居室画像に対して、直線検出を行い、
前記直線検出によって得られた線分から構図特徴点を検出する
ことを特徴とする不動産居室画像の構図呈示方法。
【請求項2】
前記居室画像をX軸およびY軸を用いて4つの象限に分類し、4つの前記象限のそれぞれでコーナーを検出したことを特徴とする請求項1に記載の不動産居室画像の構図呈示方法。
【請求項3】
検出した前記構図特徴点と前記コーナーとを通る延長した線分に基づいて、構図特徴線を推定したことを特徴とする請求項2に記載の不動産居室画像の構図呈示方法。
【請求項4】
前記構図特徴点および前記構図特徴線に基づいて、3分割構図または4分割構図を選択することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1つに記載の不動産居室画像の構図呈示方法。
【請求項5】
推定した前記構図特徴線のアスペクト比を用いて、選択した前記3分割構図または前記4分割構図の補正を行うことを特徴とする請求項4に記載の不動産居室画像の構図呈示方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不動産居室画像の撮影時に、カメラに構図を呈示するための不動産居室画像の構図呈示方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、インターネットを用いて不動産物件や情報を探す住宅購入者が増えてきている。その際、不動産会社の選定のポイントとして不動産居室画像を挙げる方も多く、画像の見栄えが重要視されている。しかしながら、このような居室画像は、写真撮影の専門家ではない不動産会社の社員が撮影するため、画像の出来映え、品質にばらつきがある。そのため、このばらつきを少なく、品質の安定した居室画像が求められている。
【0003】
一方、特許文献1には、画像撮影の支援を行うために、撮影者の撮影操作を誘導して、被写体情報と撮影構図情報とを合致させる撮影装置に関する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
不動産居室画像は、一般的な写真とは異なり被写体は存在せず、構図(或いは、構図全体が被写体となる)のみで構成される。上述した特許文献1では、被写体と構図の関係を調整する技術について記載されているが、構図のみの構成で撮影支援を行う方法については開示されていない。
【0006】
本発明は、構図のみで構成される不動産居室画像の撮影支援を行うための不動産居室画像の構図呈示方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は、不動産居室の画像を撮影する際に、カメラに構図を呈示するための不動産居室画像の構図呈示方法であって、居室画像に対して、エッジ検出を行い、前記エッジ検出を行った前記居室画像に対して、直線検出を行い、前記直線検出によって得られた線分から構図特徴点を検出することを特徴とする。
【0008】
また、前記居室画像をX軸およびY軸を用いて4つの象限に分類し、4つの前記象限のそれぞれでコーナーを検出してもよい。
【0009】
さらに、検出した前記構図特徴点と前記コーナーとを通る延長した線分に基づいて、構図特徴線を推定してもよい。
【0010】
また、前記構図特徴点および前記構図特徴線に基づいて、3分割構図または4分割構図を選択することができる。
【0011】
さらにまた、推定した前記構図特徴線のアスペクト比を用いて、選択した前記3分割構図または前記4分割構図の補正を行うようにしてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、検出した構図特徴点に基づいて居室画像に最適な構図を選択・適用することができる。そのため、この構図によって居室画像のバランスを撮影者の感覚ではなく機械的に確認できるので、画像の出来映え、品質にばらつきが少なく、品質の安定した居室画像を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施の形態に係る不動産居室画像の構図呈示方法を用いて作成した居室画像であって、(A)は1消失点画像、(B)は2消失点画像である。
【
図2】1消失点画像の呈示構図であって、(A)は3分割構図、(B)は4分割構図を示す。
【
図3】2消失点画像の呈示構図であって、(A)は3分割構図で構図特徴点を3:1、(B)は1:1、(C)は1:3の比率で配置したものである。
【
図4】2消失点画像の呈示構図であって、(A)は4分割構図で構図特徴点を3:1、(B)は1:1、(C)は1:3の比率で配置したものである。
【
図7】1消失点画像の構図特徴点検出の概要を示すものであり、(A)は線分検出結果、(B)は構図特徴点検出結果である。
【
図8】構図特徴点を4つの象限に分類したものを示す概要図である。
【
図10】3分割構図におけるアスペクト比の補正結果であって、(A)は補正なし、(B)は水平補正をしたもの、(C)は鉛直補正をしたものを示す。
【
図11】4分割構図におけるアスペクト比の補正結果であって、(A)は補正なし、(B)は水平補正をしたもの、(C)は鉛直補正をしたものを示す。
【
図12】2消失点画像であって、(A)は線分検出結果、(B)は構図特徴点検出結果である。
【
図13】
図12とは異なる他の2消失点画像であって、(A)は線分検出結果、(B)は構図特徴点検出結果である。
【
図14】2消失点画像の構図選択を示す概要図であって、(A)は構図特徴点位置、(B)は分割構図選択を示すものである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態に係る不動産居室画像の構図呈示方法について説明する。
【0015】
本明細書における構図特徴とは、
図1(A)および
図1(B)に示すように、居室画像上に現れる構図特徴点11および構図特徴線20をいう。また、構図特徴点11は、遠近法でいうところの消失点をいい、遠近法の種類によっては消失点が複数存在することになる。本発明では、1消失点または2消失点の画像(以下、1消失点画像、2消失点画像という)を対象にし、本明細書で居室画像という場合には、1消失点画像または2消失点画像をいうものとする。
【0016】
1消失点画像1は、
図1(A)で示すように、正面および左右の壁の3面が写る画像である。また、構図特徴線20は、床と3面の壁の境界線、天井と3面の壁の境界線、および3面の壁と壁とのそれぞれの境界線となる。
【0017】
2消失点画像2は、
図1(B)で示すように、2面の壁と床、天井が写る画像である。また、2消失点画像2における構図特徴線20は、
図1(B)で示すように、2面の壁の境界線、2面の壁と天井の境界線、2面の壁と床の境界線となる。
【0018】
【0019】
1消失点画像1の構図は、撮影構図として一般的に用いられる3分割構
図31と4分割構
図32の2種類を用意する。また、建築における居室のパース画像(一定の図法にあてはめて撮影される画像)を作成する際に、消失点の位置はアイライン上に位置することから、撮影時はカメラを目線の高さに構えると仮定して、構図特徴点11の位置が画像の中心に位置するようにする。
【0020】
2消失点画像2における2つの構図特徴点11の位置は、
図3(A)~
図3(C)および
図4(A)~
図4(C)に示すように、画像の中央との距離の比が3:1、1:1、1:3のいずれかになるような3種類を用意する。これはパース画像における等角投影法、および2等角投影法を参考に、コーナー10の位置が、直角2等辺3角形、および30度、60度、90度の直角3角形となるように決めるためである。また、鉛直方向の位置は1消失点画像1と同様に、画像中央とする。
【0021】
また、構図特徴線(
図2~
図4において、鉛直および水平に描かれた線)の位置は、
図3および
図4に示すように、3分割構
図31と4分割構
図32の2種類を用いる。分割構
図2種類と、構図特徴点の位置3種類の組み合わせで、計6種類の構図を用意する。
【0022】
図5は、1消失点画像1または2消失点画像2の処理概要を示すフローチャート図である。
【0023】
不動産物件の居室は、その特徴として向かい合う壁が平行であり、床と天井が平行になっている。これらの境界線は、構図特徴線20とすることができる。また、床、天井や壁に境界線を用いることで、構図特徴点11の検出が可能になる。そのため、上述した境界線を検出するために、エッジ検出42を行なうのであるが、居室画像では壁と床の色が同系色であることや、白い壁が多いことからエッジ検出42が困難な場合がある。そこで、前処理Aとして画像のコントラスト調整41を行った後にエッジ検出42を行なうようにする。
【0024】
コントラスト調整41の方法としては、CLAHE(Contrast Limited Adaptive HistogramEqualization)を用いる。CLAHEは、コントラストの制限を設けた適応的ヒストグラム平坦化である。画像を小領域に分割し、その領域ごとにヒストグラム平坦化を行う。しかし。小領域内に極端に明るい画素がある場合などには、コントラストの調整が適切に行えない。そこで、ヒストグラムに上限値を設け、上限値を超えたヒストグラムを小領域内に均等に分配してからヒストグラム平坦化を行う。CLAHEを用いることで、画像内に光源が写っている場合や、外の光が強いような部屋画像でもエッジを強調したコントラスト調整が可能である。本発明では、8×8pixelに画像を分割し、コントラストの上限値を40としている。
【0025】
エッジ検出42は、コントラスト調整を行った画像に対して、canny法を用いて行う。まず、画像に5×5pixelのガウシアンフィルタをかけ、平滑化を行う。次に、RGBカラー画像をR,G,B各成分に分解し、それぞれに対してcanny法を用いてエッジ検出42を行う。その後、
図6に示すように、各成分の出力値の最大値を用いて2値画像48(エッジ検出画像)を生成する。
【0026】
次に、構図特徴検出段階Bとして、Hough変換を用いて直線検出43を行い、得られた直線から構図特徴点検出44を行う。また、構図特徴点11を用いて構図特徴線を推定45し、前述した3分割構
図31または4分割構
図32のいずれか適する構図を選択し、補正46を行った後に呈示を行う。
【0027】
直線検出43、構図特徴点検出44、および構図特徴線の推定45は、エッジ検出42で得られた2値画像48に対して、Hough変換を用いて線分と直線の検出を行う。
図7(a)は、Hough変換で検出した線分を51で、線分の端点を丸点52で表している。検出した直線に角度に対して閾値を設け、鉛直・水平、およびカメラの光軸に平行な直線成分を検出する。
【0028】
また、
図7(b)では、鉛直成分と水平成分を2点鎖線53、平行成分のうち傾きθが20度<θ<70度の直線を実線54、110度<θ<160度の直線を点線55で表している。また、点線55と実線54の直線の交点の座標の平均値を構図特徴点11として検出している。黒丸は検出された構図特徴点11を表している。
【0029】
Hough変換で得られた線分51の2つの端点52を用いて構図特徴線20の推定45を行う。
図8に示すように、コーナー10を原点として、4つの象限に分類を行う。その後、それぞれの4つの象限から端点52を選択し、正面の壁の境界となる長方形を形成できる4つのコーナー候補52aを選択する。
【0030】
まず、第2象限の端点52aを一つ選択する。選択した端点52aと同じY座標の点を第1象限から探索する。端点52aが存在する場合、最初に選択した点と同じX座標の点を第3象限から探索する。端点52aが存在しない(検出されない)場合は、第2象限の次の端点52aを選択し、同様に第1象限の端点を探索する。第3象限の端点52aが存在した場合、第1象限の端点のX座標、第3象限の端点のY座標を持つ端点52aを第4象限で探索を行う。
【0031】
端点52aが存在する場合、これらの4点を用いて壁と天井、壁と床の境界線の推定を行う。第3象限または第4象限に探索した端点52が存在しない場合は、次の第2象限の端点52を選択する。このとき、探索する端点の座標は±3pixelの幅を有して探索する。長方形を形成する4つのコーナー候補52aを取り出した後、4つのコーナー候補52aへ構図特徴点11から直線を伸ばす。その直線上にある端点52の数をその4つのコーナー候補52aのスコアとしてカウントする。このとき、4つのコーナー候補52aの座標を(Cx,Cy)、構図特徴点を(VPx,VPy)、端点を(x1,y1)として、次の式を満たす端点52aが直線上にあるとする。
【数1】
【0032】
長方形を形成できる全ての4つのコーナー候補52aでスコアのカウントを行い、スコアが一番大きいものを繋ぐ線分を構図特徴線20とする。
図9に構図特徴線20の推定結果を示す。
【0033】
推定した構図特徴線20を基に、用意した構図の中から適切なものを決定し呈示する。その際、居室によって壁のアスペクト比は異なるため、分割構図をそのまま呈示しても、構図特徴線20と一致しない。そのため、構図特徴線20のアスペクト比を用いて用意した構図の補正46を行う。3分割構
図31、4分割構
図32の分割線を検出した構図特徴線20を基に、
図10(a)~
図10(c)、
図11(a)~
図11(c)のようにアスペクト比を鉛直方向、水平方向に補正を行う。
【0034】
得られた構図特徴線20の長方形の各辺と、各構図の分割線との距離を計算し、距離の合計が一番短い構図を選択し呈示する。この画像の場合、鉛直方向に補正を行った4分割構図が選択される。
【0035】
上述した
図7~
図11を用いた説明は、1消失点画像1における構図呈示方法を示しているが、2消失点画像2についても、同様に行うことができる。以下、
図12および
図13を用いて、2消失点画像2の場合について説明する。
【0036】
1消失点画像1と同様に、エッジ画像からHough変換を用いて線分と直線の検出を行う。
図12(a)は、Hough変換で検出した線分を実線51で、線分の端点を丸点52で表している。検出した直線に角度に対して閾値を設けて分類し、水平成分と2つの構図特徴点11へ収束する直線の検出を行う。
【0037】
図12(B)では、鉛直成分を2点鎖線61、左の構図特徴点11へ収束する直線を点線63、右の構図特徴点11へ収束する直線を実線62で表している。2つの構図特徴点11は、点線63の交点および実線62の交点のそれぞれを平均値を用いて検出する。このとき、検出した構図特徴点11から80pixel以上距離のあるノイズとなる交点を除外して残りの交点の平均値で再検出する。これを除外点がなくなるまで繰り返し、構図特徴点11を決定する。
【0038】
実線51の端点52(丸点)を用いて構図特徴線20の推定を行う。検出した端点52を構図特徴点11よりY座標が大きいものと小さいものに分類する。その後、上側の端点を順番に選択し、同じX座標の端点52を下側の端点52から探索する。下側の端点52が存在する場合、2端点52を用いて構図特徴線20の推定を行う。2端点52へ構図特徴点11から直線を伸ばし、1消失点画像1と同様に、直線上にある端点52の数をスコアとしてカウントする。
【0039】
下側の端点52が存在しない場合は、再び上側の点を選択し、下側の端点52の探索を行う。しかし、2消失点画像2の場合、居室のコーナー10が奥にあることから、
図13(a)のZ部に示すように、影の影響などにより線分検出でコーナー10まで検出されない場合がある。そのため、検出した直線からコーナー候補52aの点を追加する。
図13(b)は点線63と実線62の交点を4角点64で表している。この4角点64をコーナー候補52aの点として追加することで、部屋の奥にあるコーナー10を検出することができる。
【0040】
同じX座標となるすべての2点でスコアのカウントを行い、スコアが一番大きいものを構図特徴線20とする。また、2点を結んだ線分を壁と壁の境界線とする。
【0041】
推定した構図特徴線20を基に、用意した構図の中から適切な構図を決定し呈示する。まず、構図特徴点11の位置を決定する。検出した2つの構図特徴点11の距離を測定し、その距離を4等分した距離をdとする。
図14(a)に示すように、構図特徴点11の位置が中心からの距離の比が1:3、1:1、3:1となる点11a、11b、11cを用意する。それぞれの点11a、11b、11cと構図特徴点11の距離を測定し、一番近いものを選択する。
【0042】
次に、分割構図の決定を行う。検出された構図特徴線20の中で、壁と壁の境界線を用いる。
図14(b)のように、3分割構
図31の分割線31aと4分割構
図32の分割線32aをそれぞれ用意する。壁と壁の境界線と分割線31a、32aとの距離を測定し、一番近い分割線31a、31bを選択する。呈示構図の選択後、分割線31a、31bの決定と同様に、構図特徴線20の壁と壁の境界線を用いて補正を行う。この補正は、構図特徴線20の距離を測定し、中心から同じ距離になる位置に構図の呈示位置を決定する。
【0043】
以上の方法によって、1消失点画像1および2消失点画像2についてそれぞれ構図呈示の検証を行った。1消失点画像1では、9枚の画像のうち、5枚に対して構図を呈示することができた。また、2消失点画像2では、27枚の画像のうち、22枚に対して構図を呈示することができた。
【0044】
本発明に係る不動産居室画像の構図呈示方法は、撮影者である不動産会社の社員が使用するカメラ付き携帯やスマートフォン(以下、携帯端末という)にアプリケーションとしてインストール(格納)することで使用することができる。例えば、本発明の方法によって携帯端末の画面上に構図を呈示し、撮影者の撮影動作の支援を行うようにする。この撮影支援は、例えば、画面上の画像と構図とを対比して、撮影者にカメラの向きを上下左右のいずれかの方向に動かす動作を指示したり、画面上に表示されている居室画像のバランスが良いこと或いは悪いことを示唆したりする。このような動作の指示或いは示唆は、携帯端末の画面上に文字或いは記号で表示することもできるし、音声によって撮影者に伝達することもできる。
【0045】
また、撮影者が携帯端末で撮影する際に、画面上の画像と呈示された構図とが一致したときに、自動的に画像を撮影する(データとして取り込む)ような自動撮影モードを設けることもできる。この自動撮影モードによれば、瞬間的なシャッターチャンスを逃すおそれがなくなり、写真撮影を容易に行えるようになる。また、撮影者がシャッターを手動で操作する手間を省くことで、撮影者の撮影操作を軽減することができる。さらには、自動撮影モードと手動撮影モードを選択可能なモード切り替え機能を設け、必要に応じて手動でシャッターを操作できるようにしてもよい。
【0046】
また、サーバーとして機能するパーソナルコンピュータと、このサーバーとインターネット回線を通じて連結されたカメラを使用し、このカメラの画面上にパーソナルコンピュータからの指令によって構図を呈示したり、撮影支援を行うようにする。
【0047】
さらに、画像処理機能を備えるパーソナルコンピュータに撮影した居室画像データを取り込み、撮影した居室画像に構図を呈示することで、全体的に撮影バランスの悪い画像の一部から、バランスのとれた構図の画像を抽出することができる。この場合、画像の中で不必要な領域をトリミングする機能なども付加することもできる。
【0048】
また、携帯端末やカメラを用いて動画を撮影し、この動画データに構図を呈示することで、動画中のバランスのとれたワンショット画像をスクリーンショットとして抜き出すようにすることもできる。このスクリーンショットは、自動或いは手動で行えるようにすることができる。この作業は、携帯端末やカメラにインストールされたアプリケーションによって自動的に行うようにしてもよく、動画データを取り込んだパーソナルコンピュータ上でソフトウェアを用いて行うようにしてもよい。
【0049】
上述したパーソナルコンピュータは、例えば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、GPU(Graphical Processing Unit)、I/F(Interface)、バス、および、表示装置を有している。なお、HDDの代わりに、または、HDDに加えてSSD(Solid State Drive)を備えるようにしてもよい。HDD或いはSSDの内部には、本発明の不動産居室画像の構図呈示方法を実行するためのソフトウェア(プログラム)が格納されており、これらのハードウエア資源とソフトウェア資源とが協働して処理を行うようになっている。
【0050】
本発明の実施の形態に係る不動産居室画像の構図呈示方法では、居室画像に対して、canny法を用いてエッジ検出42を行い、エッジ検出42を行った居室画像に対して、Hough変換を用いて直線検出43を行い、直線検出43によって得られた線分51から構図特徴点11を検出しているので、検出した構図特徴点11に基づいて居室画像に最適な構図を選択・適用することができる。そのため、この構図によって居室画像のバランスを撮影者の感覚ではなく機械的に確認できるので、画像の出来映え、品質にばらつきが少なく、品質の安定した居室画像を提供することができる。
【0051】
また、居室画像をX軸およびY軸を用いて4つの象限に分類し、4つの象限のそれぞれでコーナー10を検出しているので、画像の正面に四角く撮影される壁の4隅をコーナー10として検出し易い。また、4つのコーナー10から、消失点を容易に決定することができる。
【0052】
さらに、検出したコーナー10を通る延長した線分51に基づいて、構図特徴線20を推定しているので、居室画像から壁、床、天井のそれぞれの境界線が把握し難い場合であっても、構図特徴線20を推定するこができる。
【0053】
また、構図特徴点11および構図特徴線20に基づいて、3分割構図または4分割構図を選択しているので、居室画像を撮影する際に、複数のカメラのアングルが選択でき、選択したそれぞれでバランスのよい画像を撮影することができる。
【0054】
さらにまた、推定した構図特徴線20のアスペクト比を用いて、選択した3分割構図または4分割構図の補正を行うので、居室によって壁のアスペクト比が異なっていても、用意した構図に適応させてバランスのよい画像を撮影することができる。
【0055】
以上、本発明の実施の形態に係る不動産居室画像の構図呈示方法について述べたが、本発明は既述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術思想に基づいて各種の変形および変更が可能である。
本発明の方法では、canny法やHough変換を用いて構図特徴を決定しているが、他の手法を用いることもできる。他の方法とは、例えば、LSD(Line Segment Detector)である。このLSDとは、画像上の局所的に直線の輪郭を検出することを目的とするものである。輪郭とは、グレーレベルが暗から明、またはその逆に十分に速く変化している画像のゾーンをいう。LSDの特徴としては、Hough変換よりも短い線分をたくさん検出する傾向があるため、LSDを用いる場合には、複数の線分を統合して処理する工程を追加する必要がある。
【0056】
また、将来的にcanny法やHough変換に代替する他の方式が開発された場合であっても、これらの方式と同等な性能を有し、本発明の思想に基づき代替して使用することができるものである場合には、これらの他の方式も権利範囲に含まれるものとする。
【符号の説明】
【0057】
1 居室画像(1消失点画像)
2 居室画像(2消失点画像)
10 コーナー
11 構図特徴点
11a 構図特徴点位置(1:3)
11b 構図特徴点位置(1:1)
11c 構図特徴点位置(3:1)
20 構図特徴線
31 3分割構図
31a 3分割線
32 4分割構図
32a 4分割線
41 コントラスト調整
42 エッジ検出
43 直線検出
44 構図特徴点検出
45 構図特徴線推定
46 撮影構図の補正・選択
48 2値画像
51 線分
52 端点
52a コーナー候補
A 前処理
B 構図特徴検出
C 構図呈示