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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022076545
(43)【公開日】2022-05-20
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 27/11568 20170101AFI20220513BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20220513BHJP
   H01L 27/11573 20170101ALI20220513BHJP
   G11C 11/54 20060101ALI20220513BHJP
   G11C 16/04 20060101ALI20220513BHJP
   G06N 3/063 20060101ALI20220513BHJP
【FI】
H01L27/11568
H01L29/78 371
H01L27/11573
G11C11/54
G11C16/04 150
G06N3/063
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020186941
(22)【出願日】2020-11-10
(71)【出願人】
【識別番号】302062931
【氏名又は名称】ルネサスエレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】特許業務法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川嶋 祥之
【テーマコード(参考)】
5B225
5F083
5F101
【Fターム(参考)】
5B225BA08
5B225DC02
5B225FA06
5B225FA07
5F083EP18
5F083EP23
5F083EP33
5F083EP35
5F083EP36
5F083EP47
5F083EP48
5F083EP63
5F083EP68
5F083ER04
5F083ER10
5F083ER22
5F083ER30
5F083GA01
5F083JA03
5F083JA04
5F083JA05
5F083JA19
5F083JA36
5F083JA37
5F083JA39
5F083PR09
5F083ZA01
5F101BA45
5F101BB02
5F101BC04
5F101BD22
5F101BE02
5F101BE05
5F101BE07
(57)【要約】
【課題】複数の不揮発性メモリセルを用いて、ニューラルネットワーク回路におけるシナプスを実現する。
【解決手段】半導体装置は、複数の不揮発性メモリセルMCがアレイ状に配置されたメモリセルアレイMCAを備える。複数の不揮発性メモリセルMCは、それぞれ、Y方向に延在する制御ゲート電極CGおよびメモリゲート電極MGと、ドレイン領域MDと、ソース領域MSとを有する。複数のドレイン領域MDは、それぞれ、Y方向に延在するビット線BLに電気的に接続され、複数の前記ソース領域MSは、それぞれ、X方向に延在するソース線に電気的に接続されている。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の不揮発性メモリセルを備える半導体装置であって、
前記複数の不揮発性メモリセルは、それぞれ、
半導体基板上に形成された第1ゲート絶縁膜と、
前記半導体基板上に形成され、且つ、電荷蓄積層を有する第2ゲート絶縁膜と、
前記第1ゲート絶縁膜上に形成された第1ゲート電極と、
前記第2ゲート絶縁膜上に形成された第2ゲート電極と、
前記第1ゲート電極側の前記半導体基板に形成されたドレイン領域と、
前記第2ゲート電極側の前記半導体基板に形成されたソース領域と、
を有し、
前記複数の前記第1ゲート電極および前記複数の第2ゲート電極は、それぞれ、平面視における第1方向に延在し、且つ、平面視において前記第1方向と交差する第2方向で互いに隣接し、
前記複数の前記ドレイン領域は、それぞれ、前記第1方向に延在するビット線に電気的に接続され、
前記複数の前記ソース領域は、それぞれ、前記第2方向に延在するソース線に電気的に接続されている、半導体装置。
【請求項2】
請求項1に記載の半導体装置において、
前記複数の不揮発性メモリセルの閾値電圧は、それぞれ、前記電荷蓄積層に蓄積された電荷量によって変更でき、
前記複数の不揮発性メモリセルの閾値電圧を変更させるための書込み動作および消去動作が、前記複数の不揮発性メモリセルに対して個別に行われる、半導体装置。
【請求項3】
請求項2に記載の半導体装置において、
前記書込み動作および前記消去動作において、前記第2ゲート電極と前記ソース領域との間の電圧差を異ならせることで、前記複数の不揮発性メモリセルの閾値電圧が、それぞれ異なる値となる、半導体装置。
【請求項4】
請求項3に記載の半導体装置において、
前記複数の不揮発性メモリセルの読出し動作において、前記ドレイン領域と前記ソース領域との間に流れる電流の値が、前記複数の不揮発性メモリセル毎に、それぞれ異なる、半導体装置。
【請求項5】
請求項4に記載の半導体装置において、
前記複数の不揮発性メモリセルは、ニューラルネットワーク回路の一部を構成し、
それぞれ異なる前記電流の値によって、シナプスの結合強度が実現される、半導体装置。
【請求項6】
請求項5に記載の半導体装置において、
前記電荷蓄積層は、窒化シリコンからなり、
前記書込み動作では、前記ドレイン領域から前記電荷蓄積層へ電子が注入され、
前記消去動作では、前記ソース領域から前記電荷蓄積層へ正孔が注入される、半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置に関し、例えば、複数の不揮発性メモリセルを有する半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、人工知能の発展が著しく、人工知能を搭載した様々なデバイスが普及し始めている。人工知能のうち機械学習と呼ばれるものとして、多数の手法が存在するが、その1つがニューラルネットワークを使った手法である。ニューラルネットワークとは、人間の脳内にある神経細胞(ニューロン)およびその繋がりからなる神経回路網を、人工ニューロンという数式的なモデルで表現したものである。
【0003】
例えば、特許文献1には、ニューラルネットワーク回路を実現するデバイスとして、ReRAM(抵抗変化型メモリ)などの不揮発性メモリセルを用いることが開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、不揮発性メモリセルの一例として、フラッシュメモリまたはEEPROM(Electrically Erasable and Programmable Read Only Memory)が開示され、MONOS(Metal Oxide Nitride Oxide Semiconductor)型のメモリセルが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2018-195285号公報
【特許文献2】特開2006-100531号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ニューロンでは、電気信号を伝達手段として情報伝達が行われる。その際に、情報伝達の接合部位となるシナプスの結合強度(繋がりの強さ)によって、情報の伝わり易さが変化する。
【0007】
特許文献2のようなMONOS型のメモリセルがアレイ状に配置されたメモリセルアレイを用いて、ニューラルネットワーク回路を構築しようと試みる場合、強さの異なる結合強度を有するシナプスを構成するために、各メモリセルに重み付けを行う必要がある。そのためには、ビット単位の書込み動作および消去動作が必要となる。
【0008】
図1は、特許文献2のような従来技術におけるメモリセルアレイMCAの平面図を示している。図2は、選択した不揮発性メモリセルMCの書込み電圧、消去電圧および読出し電圧の電圧値と、非選択の不揮発性メモリセルMCの書込み電圧値とを示している。
【0009】
図1に示されるように、ワード線となる制御ゲート電極CGと、電荷蓄積層上に形成されたメモリゲート電極MGと、ソース線SLとが、同じY方向に延在している。それ故、同じ制御ゲート電極CGおよびメモリゲート電極MGに接続された複数のメモリセルMCは、同じソース線SLにも接続されている。
【0010】
従って、消去動作は、同じ制御ゲート電極CGおよびメモリゲート電極MGに接続された複数のメモリセルMCに対して同時に行われ、所謂ワード線一括消去として行われる。すなわち、ビット単位の消去動作を行うことができないので、各メモリセルMCに重み付けを行うことができない。
【0011】
本願の主な目的は、複数の不揮発性メモリセルMCを用いて、ニューラルネットワーク回路におけるシナプスを実現することにある。その他の課題および新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
一実施の形態によれば、半導体装置は、複数の不揮発性メモリセルがアレイ状に配置されたメモリセルアレイを備える。前記複数の不揮発性メモリセルは、それぞれ、第1ゲート絶縁膜と、電荷蓄積層を有する第2ゲート絶縁膜と、第1ゲート電極と、第2ゲート電極と、ドレイン領域と、ソース領域とを有する。ここで、前記複数の前記第1ゲート電極および前記複数の第2ゲート電極は、それぞれ、平面視における第1方向に延在し、且つ、平面視において前記第1方向と交差する第2方向で互いに隣接し、前記複数の前記ドレイン領域は、それぞれ、前記第1方向に延在するビット線に電気的に接続され、前記複数の前記ソース領域は、それぞれ、前記第2方向に延在するソース線に電気的に接続されている。
【発明の効果】
【0013】
一実施の形態によれば、複数の不揮発性メモリセルを用いて、ニューラルネットワーク回路におけるシナプスを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】従来技術におけるメモリセルアレイを示す平面図である。
図2】不揮発性メモリセルの各動作における電圧値を示す図である。
図3】ニューラルネットワークを示す概念図である。
図4】ニューラルネットワークで使用される数式を示す図である。
図5】実施の形態1における半導体チップのレイアウトを示す平面図である。
図6】実施の形態1におけるニューラルネットワーク回路のレイアウトを示す平面図である。
図7】実施の形態1におけるメモリセルアレイを示す平面図である。
図8】実施の形態1における不揮発性メモリセルを示す断面図である。
図9】実施の形態1における不揮発性メモリセルの各動作における電圧値を示す図である。
図10】実施の形態1における不揮発性メモリセルの電流値の変化を示すグラフである。
図11】実施の形態1における不揮発性メモリセルの電流値の変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。また、以下の実施の形態では、特に必要なとき以外は同一または同様な部分の説明を原則として繰り返さない。
【0016】
また、本願で説明されるX方向、Y方向およびZ方向は、互いに交差し、互いに直交している。本願では、Z方向をある構造体の上下方向、高さ方向または厚さ方向として説明する。また、本願で用いられる「平面視」という表現は、X方向およびY方向によって構成される面を、Z方向から見ることを意味する。
【0017】
(実施の形態1)
<ニューラルネットワークについて>
以下に図3および図4を用いて、ニューラルネットワークの概念について説明する。ニューラルネットワークでは、情報伝達の接合部位となるシナプスの結合強度(繋がりの強さ)によって、情報の伝わり易さが変化する。
【0018】
図3に示されるように、ニューラルネットワークは、入力層、中間層および出力層によって構成され、シナプスの結合強度は、各層の間に存在する「重みw」として表現される。
【0019】
図3の画像を観察するために、入力層のサイズを画素数に対応させ、「入力x」を電気信号に対応させることができる。また、「入力x」および「重みw」から「出力y」を導くための計算は、図4に示される数式で表せることが知られている。
【0020】
画像から入力層にデータとして「入力x」が入ってくると、出力層には「出力y」として、「入力x」および「重みw」の積が算出される。所定の「出力y」は、「入力x」および「重みw」の種類が多い程に、それらの積が加算され、より詳細な情報となる。
【0021】
また、中間層では、前段の積(例えば、入力層からの「入力x」および「重みw」の積)に対して、更に「重みw」が掛けられ、重み付けが成される。中間層が多い程、その度に重み付けが成されるので、「出力y」は、更に詳細な情報となる。
【0022】
例えば画像が猿である場合、「出力y1」は哺乳類に関する情報に関し、「出力y2」は顔の形状に関する情報に関し、「出力y3」は手の形状に関する情報に関するなど、それぞれの情報を関連付けて、正解に近づけることができる。
【0023】
また、画像の正解は予め「正解t」としてデータ化されている。「出力y」と「正解t」との差分を用いて「誤差C」を求めることができ、「誤差C」の値が小さい程、正確な画像のデータを得ることができると言える。従って、「入力x」および「重みw」の各々の種類が多く、「出力y」の種類が多い程に、より正確な画像のデータを得ることができる。
【0024】
例えば、以下に説明するニューラルネットワーク回路C1を用いる場合、「入力x」を制御ゲート電極CGの信号に対応させ、「重みw」を不揮発性メモリセルMCの閾値電圧Vthに対応させ、「出力y」を不揮発性メモリセルMCを流れる電流の値(ドレイン領域とソース領域との間を流れる電流の値)に対応させることができる。
【0025】
<半導体チップCHPおよびニューラルネットワーク回路C1の構成>
図5は、実施の形態1における半導体装置である半導体チップCHPのレイアウトを示す平面図である。半導体チップCHPは、例えば、ニューラルネットワーク回路C1、ROM(Read Only Memory)回路C2、RAM(Random Access Memory)回路C3、ロジック回路C4を有する。ここでは図示はしないが、半導体チップCHPには、更に入出力回路(I/O回路)およびアナログ回路などが設けられていてもよい。
【0026】
ニューラルネットワーク回路C1は、記憶情報を電気的に書き換え可能であり、半導体素子として、EEPROMが形成されている領域である。
【0027】
ROM回路C2は、記憶情報の書込みを行わず、記憶情報の読出しのみを行う回路である。ROM回路C2では、半導体素子として、ニューラルネットワーク回路C1とほぼ同じ構造のEEPROMが適用できる。
【0028】
ロジック回路C3には、半導体素子として、1.5V程度の低電圧で駆動し、耐圧が低く、且つ、動作が速い低耐圧トランジスタが形成されている領域である。ロジック回路C3の半導体素子によって、例えばCPU(Central Processing Unit)が構成される。
【0029】
RAM回路C4は、例えばSRAM(Static RAM)であり、半導体素子として、ロジック回路C3とほぼ同様の構造の低耐圧トランジスタが形成されている領域である。
【0030】
図6は、図5に示されるニューラルネットワーク回路C1のレイアウトを示す平面図である。
【0031】
ニューラルネットワーク回路C1は、例えば、メモリセルアレイMCA、ワード線ドライバC5、入出力部C6、ビット線セレクタC7および演算回路C8を有する。
【0032】
ワード線ドライバC5は、入出力部C6を介してニューラルネットワーク回路の外部から供給された電圧を、ワード線ドライバC5へ供給する。
【0033】
ワード線ドライバC5には、昇圧回路などが設けられ、昇圧回路によって、書込み動作、消去動作または読出し動作において必要とされる電圧が生成される。各動作において、生成された各電圧のうち適切な電圧が、複数の制御ゲート電極CG、複数のメモリゲート電極MGおよび複数のソース線SLへ供給される。
【0034】
ビット線セレクタC7は、センスアンプを含み、選択された不揮発性メモリセルMCの記憶情報をビット線BLを介して読み出すことができる。また、ビット線セレクタC7は、ビット線BLを介して、記憶情報の書込みまたは消去の対象となる不揮発性メモリセルMCを選択できる。演算回路C8は、記憶情報の演算を行うことができる。
【0035】
<メモリセルアレイMCA(複数の不揮発性メモリセルMC)の構成>
図7は、実施の形態1におけるメモリセルアレイMCAを示す平面図である。図8は、図7に示されるA-A線に沿った不揮発性メモリセルMCの断面図である。
【0036】
実施の形態1における不揮発性メモリセルMCは、EEPROMであり、MONOS型のメモリセルである。複数の不揮発性メモリセルMCがアレイ状に配置されることで、メモリセルアレイMCAが構成されている。
【0037】
図8に示されるように、複数の不揮発性メモリセルMCは、それぞれ、ゲート絶縁膜GI1と、電荷蓄積層を有するゲート絶縁膜GI2と、制御ゲート電極CGと、メモリゲート電極MGと、ドレイン領域であるエクステンション領域EXDおよび拡散領域MDと、ソース領域であるエクステンション領域EXSおよび拡散領域MSとを有する。
【0038】
なお、実施の形態1では、ゲート絶縁膜GI1および制御ゲート電極CGを有するトランジスタを選択トランジスタと呼称し、ゲート絶縁膜GI2およびメモリゲート電極MGを有するトランジスタをメモリトランジスタと呼称する場合がある。
【0039】
半導体基板SUBは、例えばp型のシリコンからなる。半導体基板SUBには、p型のウェル領域PWが形成されている。
【0040】
半導体基板SUB上には、例えば酸化シリコンからなるゲート絶縁膜GI1が形成されている。ゲート絶縁膜GI1上には、例えば多結晶シリコンからなる制御ゲート電極CGが形成されている。
【0041】
また、半導体基板SUB上および制御ゲート電極CGの側面上には、ゲート絶縁膜GI2が形成されている。ゲート絶縁膜GI1上には、例えば多結晶シリコンからなり、且つ、サイドウォール状に加工されたメモリゲート電極MGが形成されている。制御ゲート電極CGおよびメモリゲート電極MGは、X方向においてゲート絶縁膜GI2を介して互いに隣接している。
【0042】
ゲート絶縁膜GI2は、例えば積層膜からなり、上記積層膜は、酸化シリコン膜、電荷蓄積層および酸化シリコン膜からなる。上記電荷蓄積層は、メモリセルMCのデータを蓄積するために設けられた膜であり、電荷の保持が可能なトラップ準位を備える絶縁膜であり、例えば窒化シリコンからなる。
【0043】
制御ゲート電極CGおよびメモリゲート電極MGの各々の側面上には、例えば窒化シリコン膜のような絶縁膜からなるサイドウォールスペーサSWが形成されている。そして、制御ゲート電極CG側の半導体基板SUBには、n型のエクステンション領域EXDおよびn型の拡散領域MDが形成され、メモリゲート電極MG側の半導体基板SUBには、n型のエクステンション領域EXSおよびn型の拡散領域MSが形成されている。拡散領域MDおよび拡散領域MSの各々は、エクステンション領域EXDおよびエクステンション領域EXSの各々よりも高い不純物濃度を有する。
【0044】
このような不揮発性メモリセルMCを覆うように、半導体基板SUB上には、例えば酸化シリコンからなる層間絶縁膜IL0が形成されている。層間絶縁膜IL0には、複数のコンタクトホールが形成され、上記コンタクトホールの内部に、例えばタングステンを主体とする導電性膜が埋め込まれることで、層間絶縁膜IL0中に複数のプラグが形成されている。このような複数のプラグのうち、プラグPGDは拡散領域MDに電気的に接続され、プラグPGSは拡散領域MSに電気的に接続されている。
【0045】
図7に示されるように、拡散領域MDは、プラグPGDを介してビット線BLに電気的に接続され、拡散領域MSは、プラグPGSを介してソース線SLに電気的に接続されている。ビット線BLは、例えば1層目の配線であり、ソース線SLは、例えば2層目の配線である。各配線は、アルミニウム膜または銅膜を主体とした導電性膜からなる。
【0046】
メモリセルアレイMCAには複数の不揮発性メモリセルMCが含まれているが、複数の制御ゲート電極CGおよび複数のメモリゲート電極MGは、それぞれ、Y方向に延在している。そして、図1の従来技術では、ソース線SLがY方向に延在し、ビット線BLがX方向に延在していたが、図7の実施の形態1では、ソース線SLがX方向に延在し、ビット線BLがY方向に延在している。
【0047】
このため、実施の形態1では、書込み動作および消去動作を、ビット単位で行うことができる。複数の不揮発性メモリセルMC(複数のメモリトランジスタ)の閾値電圧Vthは、それぞれ、電荷蓄積層に蓄積された電荷量によって変更できる。従って、複数の不揮発性メモリセルMCの閾値電圧Vthを変更させるための書込み動作および消去動作が、複数の不揮発性メモリセルMCに対して個別に行われる。
【0048】
<不揮発性メモリMCの各動作>
不揮発性メモリセルMCに対する書込み動作、消去動作および読出し動作の各電圧値は、図2に示されるものとほぼ同じであるが、後述の図9に示されるように、書込み動作および消去動作における電圧Vmgおよび電圧Vsが図2と異なっている。
【0049】
また、図2および図9に示される各電圧は、メモリゲート電極MGに印加する電圧Vmg、ソース領域である拡散領域MSに印加する電圧Vs、制御ゲート電極CGに印加する電圧Vcg、および、ドレイン領域である拡散領域MDに印加する電圧Vdである。
【0050】
なお、電圧値は一例であり、これらに限定されるものではなく、必要に応じて種々変更可能である。また、実施の形態1では、ゲート絶縁膜GF2中の電荷蓄積層への電子の注入が「書込み」であり、ゲート絶縁膜GF2中の電荷蓄積層へのホール(正孔)の注入が「消去」であると定義される。
【0051】
書込み動作は、SSI(Source Side Injection:ソースサイド注入)方式と呼ばれる、ホットエレクトロン注入で書込みを行う書込み方式を用いることができる。すなわち、ドレイン領域(拡散領域MD、エクステンション領域EXD)からソース領域(拡散領域MS、エクステンション領域EXS)へ向かって電子を加速させ、加速された電子を電荷蓄積層CSLへ注入することで、書込み動作が行われる。注入された電子は、電荷蓄積層中のトラップ準位に捕獲され、その結果、不揮発性メモリセルMC(メモリトランジスタ)の閾値電圧Vthが上昇する。すなわち、不揮発性メモリセルMCは、書込み状態となる。
【0052】
消去動作は、BTBT(Band-To-Band Tunneling:バンド間トンネル現象)方式と呼ばれる、ホットホール注入により消去を行う消去方式を用いることができる。すなわち、ソース領域において、BTBT現象によりホールを発生させ、電界加速することで電荷蓄積層にホールを注入する。これにより、不揮発性メモリセルMC(メモリトランジスタ)の閾値電圧Vthが低下する。すなわち、不揮発性メモリセルMCは、消去状態となる。
【0053】
読出し動作では、電圧Vmgが、書込み状態におけるメモリトランジスタの閾値電圧Vthと、消去状態におけるメモリトランジスタの閾値電圧との間の値に設定される。従って、ドレイン領域とソース領域との間に流れる電流の値を読み取ることで、不揮発性メモリセルMCが書込み状態であるか消去状態であるかを判別できる。
【0054】
上述のように、実施の形態1では、書込み動作および消去動作における電圧Vmgおよび電圧Vsに、図9に示される値が用いられる。このような値を用いることで、書込み動作および消去動作において、メモリゲート電極MGとソース領域との間の電圧差を異ならせることができる。そうすると、図9に示されるように、各々の閾値電圧Vthが異なる複数の不揮発性メモリセルMCを用意できる。ここでは、各々の閾値電圧Vthが異なる9つの複数の不揮発性メモリセルMCが、状態1~9として示されている。
【0055】
図10は、書込み後の不揮発性メモリセルMCの電流値の変化を示すグラフであり、図11は、消去後の不揮発性メモリセルMCの電流値の変化を示すグラフである。
【0056】
状態1~9のように、複数の不揮発性メモリセルMCの各々の閾値電圧Vthが異なっているので、複数の不揮発性メモリセルMCの読出し動作において、ドレイン領域とソース領域との間に流れる電流の値が、複数の不揮発性メモリセルMC毎に、それぞれ異なる。すなわち、複数の不揮発性メモリセルMCの閾値電圧Vthが、多段に設定され、複数の不揮発性メモリセルMCの各々に流れる電流の値も、多段に設定されている。
【0057】
<実施の形態1の主な効果>
実施の形態1によれば、図3および図4で説明した「入力x」、「重みw」および「出力y」を、ぞれぞれ、制御ゲート電極CGの信号、不揮発性メモリセルMCの閾値電圧Vth、および、不揮発性メモリセルMCを流れる電流の値(ドレイン領域とソース領域との間を流れる電流の値)に対応させることができる。
【0058】
まず、複数の不揮発性メモリセルMCでは、ソース線SLおよびビット線BLの各々の延在方向を、従来技術と異なるように設計したことで、ビット単位での書込み動作および消去動作が可能となっている。
【0059】
このため、図9の状態1~9のように、書込み動作および消去動作において、メモリゲート電極MGとソース領域との間の電圧差を異ならせることができ、各々の閾値電圧Vthが異なる複数の不揮発性メモリセルMCを用意することができる。
【0060】
これにより、図10および図11に示されるように、複数の不揮発性メモリセルMCの読出し動作において、ドレイン領域とソース領域との間に流れる電流の値を、複数の不揮発性メモリセルMC毎に、それぞれ異ならせることができる。そして、それぞれ異なる電流の値を用いて、ニューラルネットワーク回路C1のシナプスの結合強度を実現することができる。
【0061】
このように、実施の形態1における複数の不揮発性メモリセルMCを用いて、ニューラルネットワーク回路C1におけるシナプスを実現することができる。
【0062】
また、実施の形態1では、不揮発性メモリセルMCとして、トラップ準位を備える絶縁膜を電荷蓄積層とするMONOS型のメモリセルが適用されていた。MONOS型のメモリセルは、抵抗変化型メモリ(ReRAM)、磁気抵抗メモリ(MRAM)または強誘電体メモリ(FeRAM)などの他のメモリセルと比較して、不良ビットが少なく、書き換え耐性を長く維持できる。従って、実施の形態1における半導体装置は、長期に渡って信頼性を確保できる。
【0063】
また、図10および図11に示されるように、MONOS型の不揮発性メモリセルMCでは、安定した電流の推移を得られるので、「重みw」を安定して付与し易い。従って、他のメモリセルと比較して、ニューラルネットワーク回路C1の実現が容易である。
【0064】
以上、本発明を上記実施の形態に基づいて具体的に説明したが、本発明は、上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【符号の説明】
【0065】
BL ビット線
C1 ニューラルネットワーク回路
C2 ROM回路
C3 RAM回路
C4 ロジック回路
C5 ワード線ドライバ
C6 入出力部
C7 ビット線セレクタ
C8 演算回路
CG 制御ゲート電極
CHP 半導体チップ(半導体装置)
EXD エクステンション領域(ドレイン領域)
EXS エクステンション領域(ソース領域)
GI1、GI2 ゲート絶縁膜
IL0 層間絶縁膜
MC 不揮発性メモリセル
MCA メモリセルアレイ
MD 拡散領域(ドレイン領域)
MG メモリゲート電極
MS 拡散領域(ソース領域)
PGD プラグ
PGS プラグ
PW ウェル領域
SL ソース線
SUB 半導体基板
SW サイドウォールスペーサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11