(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022076553
(43)【公開日】2022-05-20
(54)【発明の名称】レールずれ止め装置
(51)【国際特許分類】
B66C 7/08 20060101AFI20220513BHJP
E01B 9/22 20060101ALI20220513BHJP
E01B 9/60 20060101ALI20220513BHJP
【FI】
B66C7/08
E01B9/22
E01B9/60
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020186954
(22)【出願日】2020-11-10
(71)【出願人】
【識別番号】000198363
【氏名又は名称】IHI運搬機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000512
【氏名又は名称】弁理士法人山田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石野 泰造
【テーマコード(参考)】
3F202
【Fターム(参考)】
3F202CB03
(57)【要約】
【課題】レールの疲労強度低下並びに遅れ割れ発生を回避しつつ長手方向のずれを防止し得、製造をも容易に行い得るレールずれ止め装置を提供する。
【解決手段】横行レール500のベースフランジ510が固定される平面に、横行レール500の長手方向へ所要間隔をあけて固定されるシャープレート310と、シャープレート310の間に配設されるよう横行レール500のウェブ520側面に締結され且つ横行レール500の長手方向への移動が拘束されるブロック530とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レールのベースフランジが固定される平面に、レールの長手方向へ所要間隔をあけて固定されるシャープレートと、
該シャープレートの間に配設されるよう前記レールのウェブ側面に締結され且つ前記レールの長手方向への移動が拘束されるブロックと
を備えたレールずれ止め装置。
【請求項2】
前記レールのウェブに穿設された貫通孔と、
該貫通孔に合致するよう前記ブロックに穿設されたボルト孔と、
該ボルト孔及び貫通孔に挿通されるボルトと、
該ボルトに螺着されるナットと
を備えた請求項1記載のレールずれ止め装置。
【請求項3】
前記レールは、コンテナクレーンのガーダに敷設され且つトロリが横行する横行レールである請求項1記載のレールずれ止め装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レールずれ止め装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、
図5に示される如く、港湾Hの岸壁Wに配備されたコンテナクレーン100は、クレーン本体200の上部に、陸側から海側に水平方向へ延びるガーダ300が設けられ、該ガーダ300の先端には、その延長線上に延びるブーム400が取り付けられている。
【0003】
前記ガーダ300とブーム400には、横行レール500が敷設され、該横行レール500に沿って、コンテナCを吊り上げ下げするトロリ600が横行するようになっている。
【0004】
前記ガーダ300とブーム400は、ヒンジ700によりピン連結され、前記ブーム400は、必要に応じて上方へ起立して収納できる構造となっている。
【0005】
そして、前記トロリ600の横行時の加減速や急停車、或いは横行レール500の撓み等により、該横行レール500が長手方向にずれて、前記ガーダ300とブーム400の連結部における横行レール500間に隙間が生じてしまうと、前記トロリ600の横行に支障をきたす虞がある。
【0006】
このため、従来、前記横行レール500のベースフランジが固定されるガーダ300に、前記横行レール500の長手方向へ所要間隔をあけてシャープレートを溶接等で固定し、該シャープレートの間に配設されるよう前記横行レール500のウェブ側面に、ずれ止め用のブロックを溶接したり、或いは、前記横行レール500のベースフランジに切欠部を形成し、該切欠部が当接するようにシャープレートをガーダ300に対して溶接等で固定したりすることが行われていた。
【0007】
因みに、前記コンテナクレーン100のクレーン本体200の支持脚210には、走行レール800に沿って転動自在な走行車輪910を有する走行装置900が取り付けられている。但し、前記クレーン本体200の支持脚210が岸壁Wに固定されるタイプのコンテナクレーン100もある。
【0008】
尚、前記コンテナクレーンと関連する一般的技術水準を示すものとしては、例えば、特許文献1がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、前記横行レール500は鋼製で、ウェブ側面にずれ止め用のブロックを溶接すること自体が非常に難しく、前記横行レール500のウェブ側面にずれ止め用のブロックを溶接できたとしても、溶接条件によっては溶接の入熱により横行レール500に歪が生じたり、疲労強度が低下したりする一方、遅れ割れが発生する虞もあり、製造が困難となっていた。
【0011】
又、前記横行レール500のベースフランジに切欠部を形成するのでは、該切欠部のコーナー部分に応力集中が生じて疲労強度が低下するという不具合を有していた。更に、前記切欠部の分だけベースフランジの接地面積が減少して、前記横行レール500の下面の面圧が上がってしまうため、該横行レール500の下面の摩擦に対する耐久性が低下する虞もあった。
【0012】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みてなしたもので、レールの疲労強度低下並びに遅れ割れ発生を回避しつつ長手方向のずれを防止し得、製造をも容易に行い得るレールずれ止め装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、レールのベースフランジが固定される平面に、レールの長手方向へ所要間隔をあけて固定されるシャープレートと、
該シャープレートの間に配設されるよう前記レールのウェブ側面に締結され且つ前記レールの長手方向への移動が拘束されるブロックと
を備えたレールずれ止め装置に係るものである。
【0014】
前記レールずれ止め装置においては、前記レールのウェブに穿設された貫通孔と、
該貫通孔に合致するよう前記ブロックに穿設されたボルト孔と、
該ボルト孔及び貫通孔に挿通されるボルトと、
該ボルトに螺着されるナットと
を備えることが好ましい。
【0015】
又、前記レールは、コンテナクレーンのガーダに敷設され且つトロリが横行する横行レールとすることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明のレールずれ止め装置によれば、レールの疲労強度低下並びに遅れ割れ発生を回避しつつ長手方向のずれを防止し得、製造をも容易に行い得るという優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明のレールずれ止め装置の実施例を示す分解斜視図である。
【
図2】本発明のレールずれ止め装置の実施例を示す斜視図である。
【
図3】本発明のレールずれ止め装置の実施例を示す側面図である。
【
図4】本発明のレールずれ止め装置の実施例を示す平面図である。
【
図5】一般的なコンテナクレーンの一例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照して説明する。
【0019】
図1~
図4は本発明のレールずれ止め装置の実施例であって、図中、
図5と同一の符号を付した部分は同一物を表わしている。
【0020】
本実施例の場合、コンテナクレーン100(
図5参照)の横行レール500のベースフランジ510が固定されるガーダ300の平面には、シャープレート310が横行レール500の長手方向へ所要間隔をあけて固定されている。図の例では、前記横行レール500の幅方向片側に二個ずつで合計四個のシャープレート310が配置されている。
【0021】
前記シャープレート310の間には、ブロック530が配設され、該ブロック530は、前記横行レール500のウェブ520側面に締結され、前記横行レール500の長手方向への移動が拘束されるようになっている。図の例では、前記ブロック530は、前記横行レール500のウェブ520を幅方向両側から挟み込むように二個配設されている。
【0022】
前記横行レール500のウェブ520には、貫通孔540が穿設され、該貫通孔540に合致するよう前記ブロック530にボルト孔550が穿設されている。
【0023】
前記ボルト孔550及び貫通孔540には、ボルト560が挿通され、該ボルト560には、ワッシャ570が嵌装されてナット580が螺着されるようになっている。図の例では、前記ボルト560は、前記ブロック530を固定するために二本設けられているが、その本数は必要に応じて適宜変更し得ることは言うまでもない。
【0024】
次に、上記実施例の作用を説明する。
【0025】
先ず、
図1に示す如く、横行レール500の長手方向へ所要間隔をあけて固定されたシャープレート310の間にブロック530を配置しつつ、該ブロック530により横行レール500のウェブ520を幅方向両側から挟み込むようにする。
【0026】
続いて、一方のブロック530のボルト孔550からボルト560を挿入してウェブ520の貫通孔540に通し、他方のブロック530のボルト孔550から前記ボルト560の先端部を突出させる。
【0027】
この後、前記ボルト560の先端部にワッシャ570を嵌装してナット580を螺着すると、
図2~
図4に示す如く、前記横行レール500へのずれ止め装置の取り付けが完了する。
【0028】
前記横行レール500にずれ止め装置が取り付けられると、前記コンテナクレーン100のトロリ600(
図5参照)の横行時の加減速や急停車、或いは横行レール500の撓み等により、該横行レール500が長手方向にずれようとしても、前記横行レール500のウェブ520に締結されたブロック530がシャープレート310によって拘束されているため、ガーダ300とブーム400の連結部における横行レール500間に隙間が生じてしまうことが避けられ、前記トロリ600の横行が安定して行われる。ここで、シャープレート310からブロック530が受ける横行レール500長手方向の反力は、ウェブ520とブロック530との接触面に発生する摩擦力によって横行レール500へ伝達される。又、シャープレート310からブロック530が受ける横行レール500長手方向の反力が前記摩擦力を上回った場合には、ボルト560の剪断力で前記反力が支持される形となる。
【0029】
本実施例のずれ止め装置においては、従来のように、前記横行レール500のウェブ520側面にずれ止め用のブロック530を溶接するのとは異なり、溶接の入熱により横行レール500に歪が生じたり、疲労強度が低下したりせず、又、遅れ割れも発生することがなくなり、製造が容易となる。
【0030】
又、前記横行レール500のベースフランジ510に切欠部を形成するのとは異なり、該切欠部のコーナー部分に応力集中が生じず疲労強度が低下することもない。更に、前記切欠部の分だけベースフランジ510の接地面積が減少することもなく、前記横行レール500の下面の面圧が上がらないため、該横行レール500の下面の摩擦に対する耐久性も低下しない。
【0031】
因みに、前記横行レール500のウェブ520に機械加工で貫通孔540を穿設することは、一見、強度低下につながって好ましくないと考えられがちであるが、実際の鉄道のレールでも見られるように数多くの実績があって技術的検証済みであり、特に問題はない。
【0032】
しかも、何らかの要因で横行レール500がその長手方向へずれようとした場合、シャープレート310からブロック530が受ける横行レール500長手方向の反力は、主にウェブ520とブロック530との接触面に発生する摩擦力によって横行レール500へ伝達される。このため、たとえ前記横行レール500のウェブ520に貫通孔540が穿設されていても、負荷が貫通孔540に作用することはなく、強度低下を避ける上で有利となる。
【0033】
こうして、横行レール500の疲労強度低下並びに遅れ割れ発生を回避しつつ長手方向のずれを防止し得、製造をも容易に行い得る。
【0034】
そして、本実施例の場合、前記横行レール500(レール)のウェブ520に穿設された貫通孔540と、該貫通孔540に合致するよう前記ブロック530に穿設されたボルト孔550と、該ボルト孔550及び貫通孔540に挿通されるボルト560と、該ボルト560に螺着されるナット580とを備えている。このように構成すると、前記横行レール500のウェブ520側面にずれ止め用のブロック530を溶接したり、或いは、前記横行レール500のベースフランジ510に切欠部を形成したりするのに比べ、前記横行レール500の疲労強度低下並びに遅れ割れ発生を回避しつつ長手方向のずれを防止し、製造をも容易にする上で好ましい。
【0035】
又、前記レールは、コンテナクレーン100のガーダ300に敷設され且つトロリ600が横行する横行レール500である。このように構成すると、ガーダ300と、該ガーダ300に対し上方へ起立して収納されるブーム400との連結部における横行レール500間に隙間が生じてしまうことを回避でき、前記トロリ600の横行を安定化させる上で非常に有効となる。
【0036】
尚、本発明のレールずれ止め装置は、上述の実施例にのみ限定されるものではなく、コンテナクレーンの横行レールに限らず、走行レール或いは他の機器のレールに適用しても良いこと等、その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0037】
100 コンテナクレーン
200 クレーン本体
210 支持脚
300 ガーダ
310 シャープレート
400 ブーム
500 横行レール(レール)
510 ベースフランジ
520 ウェブ
530 ブロック
540 貫通孔
550 ボルト孔
560 ボルト
570 ワッシャ
580 ナット
600 トロリ
700 ヒンジ
800 走行レール
900 走行装置
910 走行車輪
C コンテナ
H 港湾
W 岸壁