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特開2022-76570ごみ焼却処理施設の燃焼制御装置及び燃焼制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022076570
(43)【公開日】2022-05-20
(54)【発明の名称】ごみ焼却処理施設の燃焼制御装置及び燃焼制御方法
(51)【国際特許分類】
   F23G 5/50 20060101AFI20220513BHJP
【FI】
F23G5/50 N ZAB
F23G5/50 H
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020186985
(22)【出願日】2020-11-10
(71)【出願人】
【識別番号】800000068
【氏名又は名称】学校法人東京電機大学
(71)【出願人】
【識別番号】000136804
【氏名又は名称】株式会社プランテック
(74)【代理人】
【識別番号】100209129
【弁理士】
【氏名又は名称】山城 正機
(72)【発明者】
【氏名】加藤 政一
(72)【発明者】
【氏名】菅原 秀雄
(72)【発明者】
【氏名】増田 倹吾
(72)【発明者】
【氏名】鮫島 良二
【テーマコード(参考)】
3K062
【Fターム(参考)】
3K062AA01
3K062AA11
3K062AB01
3K062AC01
3K062BA02
3K062CA01
3K062CB09
3K062DA01
3K062DA07
3K062DA27
3K062DB06
3K062DB08
3K062DB28
(57)【要約】
【課題】追加の計測器や複雑な計算アルゴリズムを必要とする高価な制御装置を使用することなく、廃熱ボイラの時定数による影響を低減して応答性を向上させることが可能なごみ焼却処理施設の燃焼制御装置を提供する。
【解決手段】本発明の燃焼制御装置は、ごみを燃焼する焼却炉と、焼却炉で発生した燃焼排ガスの排熱を利用して蒸気を発生させる廃熱ボイラとを備えたごみ焼却処理施設の燃焼制御装置であって、廃熱ボイラから発生する蒸気量が制御目標値に追従するよう焼却炉のフィードバック制御を行う燃焼制御装置において、蒸気量によるフィードバック制御に加え、廃熱ボイラ入口における燃焼排ガスが有する熱量を先行要素として焼却炉の制御を行う。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ごみを燃焼する焼却炉と、前記焼却炉で発生した燃焼排ガスの排熱を利用して蒸気を発生させる廃熱ボイラとを備えたごみ焼却処理施設の燃焼制御装置であって、前記廃熱ボイラから発生する蒸気量が制御目標値に追従するよう前記焼却炉のフィードバック制御を行う燃焼制御装置において、
前記蒸気量によるフィードバック制御に加え、前記廃熱ボイラ入口における燃焼排ガスが有する熱量を先行要素として前記焼却炉の制御を行う、
燃焼制御装置。
【請求項2】
前記制御目標値と前記蒸気量との差分に基づいて第一の制御量を出力する第一調節部と、
前記焼却炉で発生した燃焼排ガスが有する熱量を先行要素として第二の制御量を出力する第二調節部とを備え、
前記焼却炉は前記第一の制御量と前記第二の制御量との差分に基づいて制御が行われる、
請求項1に記載の燃焼制御装置。
【請求項3】
前記燃焼排ガスが有する熱量を、前記廃熱ボイラ入口における燃焼排ガスの温度と流量とから算出する、
請求項1又は2に記載の燃焼制御装置。
【請求項4】
前記ごみ焼却処理施設は前記燃焼排ガス中の有害物質をろ過するろ布を備えたバグフィルタをさらに備え、
前記バグフィルタ出口で計測した前記燃焼排ガスの流量を用いて前記熱量を算出する、
請求項3に記載の燃焼制御装置。
【請求項5】
ごみを燃焼する焼却炉と、前記焼却炉で発生した燃焼排ガスの排熱を利用して蒸気を発生させる廃熱ボイラとを備えたごみ焼却処理施設の燃焼制御方法であって、前記廃熱ボイラから発生する蒸気量が制御目標値に追従するよう前記焼却炉のフィードバック制御を行う燃焼制御方法において、
前記蒸気量によるフィードバック制御に加え、前記廃熱ボイラ入口における燃焼排ガスが有する熱量を先行要素として前記焼却炉の制御を行うステップを有する、
燃焼制御方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ごみ焼却処理施設の燃焼制御装置及び燃焼制御方法に関し、特に、焼却炉で発生した排熱を利用して蒸気を発生させる廃熱ボイラを備えたごみ焼却処理施設において、廃熱ボイラから発生する蒸気量を時間遅れなく目標値に追従させる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
図4に、従来から用いられている、ごみを燃焼する焼却炉410と、焼却炉410で発生した燃焼排ガスの排熱を利用して蒸気を発生させる廃熱ボイラ420とを備えたごみ焼却処理施設4の模式図を示す。
【0003】
ごみ焼却処理施設4に搬入されるごみはその大きさや組成が一定ではないため、焼却炉410に投入される前に図示しないごみピット内で撹拌・混合され、ある程度均質化されたうえで、図示しない投入装置によって焼却炉410に投入される。焼却炉410に投入されたごみは、図示しない送り装置によって焼却炉410内をゆっくりと移動しながら、一次燃焼空気供給装置411a及び二次燃焼空気供給装置411bから供給される燃焼空気によって焼却処理される。焼却炉410内でごみが焼却されるに伴い、高温の燃焼排ガスが発生する。なお、個別の要素についての詳細な説明は省略するが、ごみ焼却処理施設4は他に、排ガス冷却装置430、バグフィルタ440、排ガス煙道450、誘引通風機460、煙突470等によって構成される。
【0004】
焼却炉410で発生した高温の燃焼排ガスは排ガス煙道450を介して廃熱ボイラ420に供給される。廃熱ボイラ420においては、多数の水管内にボイラ給水が流通しており、水管内の水が燃焼排ガスの排熱によって加熱されて蒸気を発生する。発生した蒸気は図示しない蒸気タービンを駆動し、主に発電のために供される。
【0005】
廃熱ボイラ420から発生する蒸気量の変動を抑制し所定の目標値に保持することは、ごみ焼却処理施設を安定して運用するために非常に重要である。そのため、従来においては、廃熱ボイラ420で発生した蒸気の蒸気量を蒸気量計測手段421を用いて計測し、計測された蒸気量が予め設定された制御目標値に追従するよう焼却炉410の燃焼制御を行うフィードバック制御が行われている。
【0006】
つまり、上述した通り、焼却炉410に投入されたごみは可燃成分(C、H、S等)の組成が一定ではないため、ごみピット内で撹拌・混合処理を行ったとしても、発生する燃焼排ガスの温度や量が変動することがある。そのため、燃焼空気の供給量、焼却炉410内へのごみの投入頻度、又は焼却炉410内におけるごみの送り速度を調整することによって、廃熱ボイラ420から発生する蒸気量が所定値になるよう制御を行う制御装置480を備える。このような従来型の単純フィードバック制御装置480によって行われる制御をブロック図に表すと、図5のようになる。
【0007】
図5において、従来型の単純フィードバック制御装置480によって行われる制御系は、焼却炉410の入出力関係について演算を行う焼却炉演算部4F、廃熱ボイラ420の入出力関係について演算を行う廃熱ボイラ演算部4B、調節部4C、比較部481及び加算部482によって構成される。ここで、R(s)は入力、つまり、図示しない設定器で設定される蒸気量の制御目標値のラプラス変換を、C(s)は出力、つまり、廃熱ボイラ420から発生する蒸気量のラプラス変換を、G(s)は調節部Cにおける入力から出力への伝達関数を、G(s)は焼却炉410における入力から出力への伝達関数を、G(s)は廃熱ボイラ420における入力から出力への伝達関数を、D(s)は外乱のラプラス変換を示す。なお、ここでいう外乱とは、ごみの発熱量の変動等を意味するもので、廃熱ボイラ420から発生する蒸気の蒸気量に影響を与えるものである。
【0008】
このフィードバック制御系の出力C(s)は、入力R(s)及び外乱D(s)を用いて式(1)のように表される。なお、式(1)においては、各伝達関数におけるラプラス変数表示の(s)は全て省略した(以下、式中の(s)は省略)。
【0009】
【数1】
【0010】
式(1)より、入力R(s)及び外乱D(s)の項いずれにも、分母に焼却炉410の伝達関数G(s)と廃熱ボイラ420の伝達関数G(s)との積G(s)G(s)が存在することが分かる。ここで、G(s)及びG(s)は、それぞれ、式(2)及び式(3)のように表される。
【0011】
【数2】
【0012】
【数3】
【0013】
ここで、式(2)及び式(3)において、T及びKはそれぞれ焼却炉10の時定数及びゲインを、T及びKはそれぞれは廃熱ボイラ420の時定数及びゲインを表す。ところで、焼却炉410の時定数Tに対して、廃熱ボイラ420の時定数Tは、廃熱ボイラ420の保有熱量が大きいことに伴い、数倍以上の大きさとなる。具体的には、Tが数分以内であるのに対し、Tは10分以上となる。そのため、燃焼排ガスの熱量等の変動に伴う発生蒸気量の変動は、燃焼排ガスの変動よりもかなり遅れて発現することとなる。そのため、蒸気量の変動を検出してから制御を行うと、出力に時間遅れが発生するとともに、振動を伴う時間変動が生じることとなる。従来においては、このような発生蒸気量の変動に追従するために、調節部CにおいてPID(Propotional-Integral-Differential)制御を行い、主として微分動作(Differential Action:D動作)により時間遅れを補償する制御を行うよう設計される。または、ごみピットに投入されたごみの性状をAI(Artificial Intelligence)を用いて予測し、予測されたごみの性状から所望の熱量を有する燃焼排ガスが発生するようごみの送り速度の調整等を行っている。しかしながら、このようなPID制御には限界があり、また、AIを用いた予測制御には、複雑な計算アルゴリズムを使用するための高価な制御装置が必要となる。
【0014】
また、特許文献1に示されるように、燃焼後の排ガス組成を実測し、燃焼排ガス中の実測成分濃度(O及びHO)からごみの発熱量を推算した上でボイラ発熱量を推算する先行制御を行う技術が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開2017-96517号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
特許文献1に開示された技術によると、ごみの発熱量を推算するためには焼却炉内の水蒸気及び酸素濃度を計測する必要があり、計測機器が増えコスト増となるという問題があるとともに、水蒸気及び酸素濃度から二酸化炭素濃度を、二酸化炭素濃度から発熱量を、発熱量から蒸発量を、という三重の推算を行うものであり、計算の精度を担保しにくいという問題があった。
【0017】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、追加の計測機器や複雑な計算アルゴリズムを必要とする高価な制御装置を使用することなく、廃熱ボイラの時定数による影響を低減して応答性を向上させることが可能なごみ焼却処理施設の燃焼制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明では、以下のような解決手段を提供する。
【0019】
第1の特徴に係る発明は、ごみを燃焼する焼却炉と、焼却炉で発生した燃焼排ガスの排熱を利用して蒸気を発生させる廃熱ボイラとを備えたごみ焼却処理施設の燃焼制御装置であって、廃熱ボイラから発生する蒸気量が制御目標値に追従するよう焼却炉のフィードバック制御を行う燃焼制御装置において、蒸気量によるフィードバック制御に加え、廃熱ボイラ入口における燃焼排ガスが有する熱量を先行要素として焼却炉の制御を行う燃焼制御装置、を提供する。
【0020】
第1の特徴に係る発明によれば、廃熱ボイラに流入する燃焼排ガスが保有する熱量を蒸気量の先行要素として、つまり、蒸気量の変動に先行して燃焼排ガスの熱量の変動に基づいて制御を行うことで、廃熱ボイラの時定数の影響を受けることなく、時間遅れの少ない燃焼制御装置を実現することができる。
【0021】
第2の特徴に係る発明は、第1の特徴に係る発明であって、制御目標値と蒸気量との差分に基づいて第一の制御量を出力する第一調節部と、焼却炉で発生した燃焼排ガスが有する熱量を先行要素として第二の制御量を出力する第二調節部とを備え、焼却炉は第一の制御量と第二の制御量との差分に基づいて制御が行われる燃焼制御装置、を提供する。
【0022】
第2の特徴に係る発明によれば、実際の蒸気量の出力のラプラス変換を制御目標値である入力及び外乱のラプラス変換を用いて立式した際、廃熱ボイラの時定数に依存しない項が発現し、廃熱ボイラの時定数の大きさに依存しない応答を得ることが可能となる。
【0023】
第3の特徴に係る発明は、第1又は2の特徴に係る発明であって、燃焼排ガスが有する熱量を、廃熱ボイラ入口における燃焼排ガスの温度と流量とから算出する燃焼制御装置、を提供する。
【0024】
第3の特徴に係る発明によれば、新たな計測機器を設置することなく、既設の設備を活かして応答性の高い制御を行うことが可能となる。
【0025】
第4の特徴に係る発明は、第3の特徴に係る発明であって、ごみ焼却処理施設は燃焼排ガス中の有害物質をろ過するろ布を備えたバグフィルタをさらに備え、バグフィルタ出口で計測した燃焼排ガスの流量を用いて熱量を算出する燃焼制御装置、を提供する。
【0026】
第4の特徴に係る発明によれば、バグフィルタ出口における排ガス流量を検出し、検出された排ガス流量を排ガスの熱量の算出に用いることによって、廃熱ボイラ入口で検出するのと同様に時間遅れなく、しかも、ダストによる影響を低減してより精度の高い測定が可能となるため、より高精度の燃焼制御が可能となる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、追加の計測器や複雑な計算アルゴリズムを必要とする高価な制御装置を使用することなく、廃熱ボイラの時定数による影響を低減して応答性を向上させることが可能なごみ焼却処理施設の燃焼制御装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1図1は、本実施形態に係るごみ焼却処理施設を示す模式図である。
図2図2は、本実施形態に係る先行制御系を示すブロック図である。
図3図3は、本実施形態に係る先行制御系を用いて応答性を検証した結果を示す。
図4図4は、従来のごみ焼却処理施設を示す模式図である。
図5図5は、従来の単純フィードバック制御系を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しながら説明する。なお、これはあくまでも一例であって、本発明の技術的範囲はこれに限られるものではない。
【0030】
[ごみ焼却処理施設の全体構成]
図1を用いて、本実施形態に係るごみ焼却処理施設の全体構成を説明する。
【0031】
図1に示すように、本実施形態のごみ焼却処理施設1は、焼却炉10と、廃熱ボイラ20と、排ガス冷却装置30と、バグフィルタ40と、排ガス煙道50と、誘引通風機60と、煙突70と、燃焼制御装置80によって構成される。
【0032】
焼却炉10は、不定形の一般廃棄物や、産業廃棄物等の廃棄物を焼却処理するものである。本実施形態においては、竪型ごみ焼却炉を例にとって図示しているが、焼却炉10の形式は、ストーカ炉や流動層炉など、他の形式であってもよい。
【0033】
焼却炉10には、一次燃焼空気を供給する一次燃焼空気供給手段11a、二次燃焼空気を供給する二次燃焼空気供給手段11b、炉内冷却用の冷却水を供給する冷却水供給手段12等が配設される。これらは、後述する燃焼制御装置80からの信号によって、それぞれの供給量を変化させることができるよう構成される。
【0034】
廃熱ボイラ20は、焼却炉10で廃棄物を焼却処理した際に発生する高温の燃焼排ガスから排熱を回収し、給水を加熱して蒸気を発生するものであり、ボイラ給水を加熱するエコノマイザ、エコノマイザで加熱されたボイラ給水をさらに加熱して蒸発させる蒸発器、及び、蒸発器で発生した蒸気と水分とを気液分離する蒸気ドラム等から構成される。また、廃熱ボイラ20で発生した蒸気を取り出す主蒸気配管には、蒸気量を検出する蒸気量検出手段21が配設される。
【0035】
排ガス冷却装置30は、廃熱ボイラ20から排出された燃焼排ガスをバグフィルタ40に供給可能な温度、好ましくは200℃以下まで減温するものであり、例えば、冷却水を噴霧して燃焼排ガスを冷却する減温塔等によって構成される。
【0036】
バグフィルタ40は、排ガス冷却装置30で減温された燃焼排ガスをろ過することで、燃焼排ガス中に含まれる煤塵や有害成分を除去するものであって、煤塵や有害成分をろ過するためのろ布を含む。
【0037】
排ガス煙道50は、焼却炉10、廃熱ボイラ20、排ガス冷却装置30、バグフィルタ40等の各装置の間を接続し燃焼排ガスを流通させるための煙道である。焼却炉10と廃熱ボイラ20との間における排ガス煙道50には、燃焼排ガスの温度を検出する排ガス温度検出手段51、及び、燃焼排ガスの流量を検出する排ガス流量検出手段52が配設される。なお、このような排ガス温度検出手段51や排ガス流量検出手段52は、従来のごみ焼却処理施設にも設置されているものである。
【0038】
誘引通風機60は、バグフィルタ40の下流に配設される通風機であり、バグフィルタ30で浄化された排ガスを吸引して、煙突70から排ガスを大気に放出するためのものである。
【0039】
燃焼制御装置80は、蒸気量検出手段21で検出された蒸気量、排ガス温度検出手段51で検出された排ガス温度、排ガス流量検出手段52で検出された排ガス流量に基づいて、一次燃焼空気供給手段11aや二次燃焼空気供給手段11bから焼却炉10へ供給される燃焼空気流量及び/又は冷却水供給手段12から焼却炉10内へ供給される冷却水流量などを制御するものである。
【0040】
〔燃焼制御装置の構成〕
図2を用いて、本実施形態におけるごみ焼却処理施設の燃焼制御装置80が行う制御について説明する。図2は、本実施形態に係るごみ焼却処理施設の燃焼制御装置80が行う制御における信号の流れを示すブロック図である。なお、図5で説明した従来型の単純フィードバック制御装置480と重複する箇所については説明を簡略化または省略し、主に図5と異なる点について説明する。
【0041】
本実施形態に係る燃焼制御装置80においては、焼却炉10で発生した燃焼排ガスが有する熱量、つまり、廃熱ボイラ20入口における燃焼排ガスが有する熱量を先行要素として、従来型のフィードバック制御に付加して制御を行う。
【0042】
具体的に説明すると、本実施形態に係る燃焼制御装置80で実行される制御のブロック線図は、焼却炉10の入出力関係について演算を行う焼却炉演算部F、廃熱ボイラ20の入出力関係について演算を行う廃熱ボイラ演算部B、第一調節部C1、第一比較部81及び加算部82に加え、第二調節部C2及び第二比較部83によって構成される。
【0043】
なお、R(s)は入力、つまり、図示しない設定器で設定される蒸気量の制御目標値のラプラス変換を、C(s)は出力、つまり、蒸気量検出手段21で検出された廃熱ボイラ20から発生する蒸気量のラプラス変換を、Gc1(s)は第一調節部C1における入力から出力への伝達関数を、Gc2(s)は第二調節部C2における入力から出力への伝達関数を、G(s)は焼却炉10における入力から出力への伝達関数を、G(s)は廃熱ボイラ20における入力から出力への伝達関数を、D(s)は外乱のラプラス変換を示す。
【0044】
第一比較部81は、図示しない設定器で設定される蒸気量の制御目標値である入力R(s)と、蒸気量検出手段21で検出された廃熱ボイラ20から発生する蒸気量である出力C(s)の差分を算出する。
【0045】
第一調節部C1は、従来型の単純フィードバック制御装置480で示された調節部4Cと同様に、第一比較部81で算出される入力R(s)と出力C(s)の差分を入力とし伝達関数Gc1(s)にしたがって算出される操作量を出力する。このとき第一調節部C1から出力される操作量を第一操作量MV1とする。
【0046】
第二調節部C2は、排ガス温度検出手段51で検出された排ガス温度と、排ガス流量検出手段52で検出された排ガス流量とを用いて、図示しない排ガス熱量算出手段によって算出される燃焼排ガスが有する熱量、つまり廃熱ボイラ20入口における燃焼排ガスの熱量を入力とし伝達関数Gc2(s)にしたがって算出される操作量を先行要素として出力する。このとき第二調節部C2から出力される操作量を第二操作量MV2とする。
【0047】
なお、第一調節部C1及び第二調節部C2によって調整されるのは、一次燃焼空気供給手段11aや二次燃焼空気供給手段11bから焼却炉10内に供給される燃焼空気の空気量及び/又は冷却水供給手段12から焼却炉10内に供給される冷却水の供給量である。
【0048】
第二比較部83は、第一調節部C1から出力される第一操作量MV1と、第二調節部C2から出力される第二操作量MV2との差分を算出するものである。
【0049】
加算部82は、第二比較部83から出力される第一操作量MV1と第二操作量MV2との差分に対し、外乱D(s)を加算するものである。加算部82からの出力は、焼却炉演算部Fへの入力となる。
【0050】
次に、このように構成された本実施形態に係る燃焼制御装置80を用いた燃焼制御方法について説明する。
【0051】
本実施形態に係る燃焼制御装置80を用いた燃焼制御方法は、蒸気量によるフィードバック制御に加え、廃熱ボイラ20入口における燃焼排ガスが有する熱量を先行要素として焼却炉10の制御を行うステップを備える。
【0052】
具体的には、第一調節部C1において制御目標値と蒸気量との差分に基づいて第一操作量MV1を出力するステップ、第二調節部C2において焼却炉で発生した燃焼排ガスが有する熱量を先行要素として第二操作量MV2を出力するステップ、第一操作量MV1と第二操作量MV2との差分に対し外乱D(s)を加えたものを焼却炉10への入力とするステップ、を備える。
【0053】
このような構成であるため、焼却炉演算部Fには第一操作量MV1と第二操作量MV2との差分に対し外乱D(s)を加えたものが入力される。そして、排ガス温度検出手段51で検出された排ガス温度と排ガス流量検出手段52で検出された排ガス流量とを用いて燃焼排ガスの熱量が算出され、燃焼排ガスの熱量に対応する信号は二つに分岐し、一方は廃熱ボイラ演算部Bに対する入力となり、他方は第二調節部C2に対する入力となる。そして燃焼排ガスの熱量に応じて第二調節部C2で算出される第二操作量MV2が第二比較部83に入力されて第一操作量MV1との差分が算出され、さらに外乱D(s)を加えたものが焼却炉演算部Fに入力される。
【0054】
このように、廃熱ボイラ20の入口から焼却炉10の入口に至る一巡伝達関数が構成され、廃熱ボイラ20から発生する蒸気の蒸気量の先行要素として燃焼排ガスの熱量を用いた操作を付加したフィードバック系の制御装置の出力C(s)は、入力R(s)及び外乱D(s)を用いて式(4)のように表される。
【0055】
【数4】
【0056】
本実施形態に係る燃焼制御装置80における入出力関係を表した式(4)を、従来型の単純フィードバック制御装置480における入出力関係を表した式(1)と比較すると、その違いは、入力R(s)及び出力C(s)の分母にGc2(s)G(s)という、廃熱ボイラ20の伝達関数G(s)に依存しない項が発現するところにある。この項の存在によって、廃熱ボイラ20の時定数の大きさに関わらず、制御目標値は焼却炉10で発生する燃焼排ガスの熱量に応じた制御を行うことが可能となり、ごみの発熱量等の変動や設定変更に対する応答性が向上する。
【0057】
図3に、本実施形態に係る燃焼制御装置80を用いて燃焼制御を行った場合の応答性を検証した結果について示す。図3においては、(A)定常状態から設定を変更した場合、(B)実際の運転データに基づく外乱を与えた際のランダム応答について検討を行い、それぞれ、従来型の単純フィードバック制御装置480を用いて制御を行った場合の結果との比較を行った。また、(a)はGc2(s)のゲインKp2を2とした場合、(b)は同ゲインを10とした場合についての結果を示す。
【0058】
図3を参照すると、いずれの場合においても、本実施形態に係る燃焼制御装置においては、従来型の単純フィードバック系よりもオーバーシュートや変動幅の小さい応答が得られていることが確認できる。これは廃熱ボイラ20の大きな時定数の影響を軽減できた結果である。
【0059】
本実施形態に係る燃焼制御装置80の効果を物理的に説明すると以下のようになる。すなわち、焼却炉10で発生した燃焼排ガスは所定の温度と所定の流量をもって廃熱ボイラ20に流入する。燃焼排ガスが有する熱量は、温度と流量とによって算出されるが、焼却炉10と廃熱ボイラ20との間における排ガス煙道50からの熱の流出は無視できるほど小さいため、ごみ燃焼部10から排出される燃焼排ガスが保有する熱量と廃熱ボイラ20に流入する燃焼排ガスが保有する熱量は等しい。本実施形態においては、廃熱ボイラ20に流入する燃焼排ガスが保有する熱量を検知し、その熱量を蒸気量の先行要素として、つまり、蒸気量の変動に先行して燃焼排ガスの熱量の変動に基づいて燃焼空気量及び/又は冷却水量を調節することで、廃熱ボイラ20の時定数の影響を受けることのない因子を操作量として制御系に加味して、時間遅れの少ない制御系を実現している。その結果、廃熱ボイラ20から発生する蒸気量の変動を、従来の5%から3%以内に抑制することが可能となる。
【0060】
このとき、廃熱ボイラ20に流入する燃焼排ガスが有する熱量を入力として所定の伝達関数にしたがって操作量を出力する調節部を第二調節部C2として設け、第二調節部C2から出力される操作量を第二操作量MV2として、第一操作量MV1と第二操作量MV2の差分を焼却炉10の調節に使用する。
【0061】
このようにすることで、出力のラプラス変換を入力及び外乱のラプラス変換を用いて立式した際、廃熱ボイラ20の時定数に依存しない項が発現し、廃熱ボイラ20の時定数の大きさに依存しない応答を得ることが可能となる。
【0062】
また、ごみの熱量の算出に、排ガス煙道50における排ガス温度検出手段51及び排ガス流量検出手段52で検出された排ガス温度及び排ガス流量を使用するため、従来から設置されている検出手段をそのまま用いて制御を行うことが出来る。つまり、制御のために新たな計測機器を設置することなく、既設の設備を活かして応答性の高い制御を行うことが可能となる。
【0063】
〔変形例〕
図1においては、排ガス流量検出手段52を焼却炉10と廃熱ボイラ20の間の排ガス煙道50に設置したが、変形例として、排ガス流量検出手段52をバグフィルタ40出口に設置した例を挙げることが出来る。
【0064】
排ガス煙道50における燃焼排ガスの流速は15m/s程度と速く、廃熱ボイラ20入口からバグフィルタ40出口までの時間遅れは蒸気量の遅れと比して小さい。一方で、バグフィルタ40において燃焼排ガスに含有される煤塵やダスト等の不純物がろ過されるため、バグフィルタ40の出口においてはダストの影響を受けずに精度の高い排ガス流量の測定が可能となる。
【0065】
つまり、バグフィルタ40出口における排ガス流量を検出し、検出された排ガス流量を排ガスの熱量の算出に用いることによって、廃熱ボイラ20入口で検出するのと同様に時間遅れなく、しかも、ダストの影響を低減したより精度の高い測定が可能となる。そのため、より高精度な燃焼制御が可能となる。また、高温でダストを含む燃焼排ガスにセンサが晒されることがないため、検出手段自体を高寿命化することが可能となる。
【0066】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述したこれらの実施形態に限るものではない。また、本発明の実施形態に記載された効果は、本発明から生じる最も好適な効果を列挙したに過ぎず、本発明による効果は、本発明の実施形態に記載されたものに限定されるものではない。
【0067】
例えば、焼却炉10は、その下流に廃熱ボイラ20を備えるものであれば、ストーカ式、流動層式、キルン式等、任意の形式の焼却炉が用いられる。
【0068】
また、廃熱ボイラ20は焼却炉10と別体のものである必要はなく、焼却炉10の炉壁を水管で構成してボイラ構造とした焼却炉・ボイラ一体型のものも本願発明に含み得る。その場合、熱量を計算するための温度を検出する位置は、二次燃焼空気を吹き込む位置の下流で、排ガスと二次燃焼空気が混合された位置であればよい。
【0069】
また、上記した実施の形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施の形態の構成の一部を他の実施の形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施の形態の構成に他の実施の形態の構成を加えることも可能である。また、各実施の形態の構成の一部について、他の構成の追加、削除、置換しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0070】
この発明のごみ焼却処理施設の燃焼制御装置及び燃焼制御方法は、廃熱ボイラを備える各種ごみ焼却処理施設に適用することができる。
【符号の説明】
【0071】
1 ごみ焼却処理施設
10 焼却炉
11a 一次燃焼空気供給手段
11b 二次燃焼空気供給手段
12 冷却水供給手段
20 廃熱ボイラ
21 蒸気量検出手段
30 排ガス冷却装置
40 バグフィルタ
50 排ガス煙道
51 排ガス温度検出手段
52 排ガス流量検出手段
60 誘引通風機
70 煙突
80 燃焼制御装置
81 第一比較部
82 加算部
83 第二比較部
C1 第一調節部
C2 第二調節部

図1
図2
図3
図4
図5
【手続補正書】
【提出日】2022-01-07
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ごみを燃焼する焼却炉と、前記焼却炉で発生した燃焼排ガスの排熱を利用して蒸気を発生させる廃熱ボイラとを備えたごみ焼却処理施設の燃焼制御装置であって、前記廃熱ボイラから発生する蒸気量が制御目標値に追従するよう前記焼却炉のフィードバック制御を行う燃焼制御装置において、
前記蒸気量によるフィードバック制御に加え、前記廃熱ボイラ入口における燃焼排ガスが有する熱量を先行要素として前記焼却炉の制御を行うものであり、
前記制御目標値と前記蒸気量との差分に基づいて第一操作量を出力する第一調節部と、
前記焼却炉で発生した燃焼排ガスが有する熱量を先行要素として第二操作量を出力する第二調節部とを備え、
前記焼却炉は前記第一操作量と前記第二操作量との差分に基づいて制御が行われる、
燃焼制御装置。
【請求項2】
前記燃焼排ガスが有する熱量を、前記廃熱ボイラ入口における燃焼排ガスの温度と流量とから算出する、
請求項に記載の燃焼制御装置。
【請求項3】
前記ごみ焼却処理施設は前記燃焼排ガス中の有害物質をろ過するろ布を備えたバグフィルタをさらに備え、
前記バグフィルタ出口で計測した前記燃焼排ガスの流量を用いて前記熱量を算出する、
請求項に記載の燃焼制御装置。
【請求項4】
ごみを燃焼する焼却炉と、前記焼却炉で発生した燃焼排ガスの排熱を利用して蒸気を発生させる廃熱ボイラとを備えたごみ焼却処理施設の燃焼制御方法であって、前記廃熱ボイラから発生する蒸気量が制御目標値に追従するよう前記焼却炉のフィードバック制御を行う燃焼制御方法において、
前記蒸気量によるフィードバック制御に加え、前記廃熱ボイラ入口における燃焼排ガスが有する熱量を先行要素として前記焼却炉の制御を行うステップを有するものであり、
前記制御目標値と前記蒸気量との差分に基づいて第一操作量を出力するステップと、
前記焼却炉で発生した燃焼排ガスが有する熱量を先行要素として第二操作量を出力するステップとを備え、
前記焼却炉は前記第一操作量と前記第二操作量との差分に基づいて制御が行われる、
燃焼制御方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0020
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0020】
また、第1の特徴に係る発明は、制御目標値と蒸気量との差分に基づいて第一操作量を出力する第一調節部と、焼却炉で発生した燃焼排ガスが有する熱量を先行要素として第二操作量を出力する第二調節部とを備え、焼却炉は第一操作量と第二操作量との差分に基づいて制御が行われる。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0021
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0021】
第1の特徴に係る発明によれば、廃熱ボイラに流入する燃焼排ガスが保有する熱量を蒸気量の先行要素として、つまり、蒸気量の変動に先行して燃焼排ガスの熱量の変動に基づいて制御を行うことで、廃熱ボイラの時定数の影響を受けることなく、時間遅れの少ない燃焼制御装置を実現することができる。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0022
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0022】
また、第1の特徴に係る発明によれば、制御目標値と蒸気量との差分に基づいて第一操作量を出力する第一調節部と、焼却炉で発生した燃焼排ガスが有する熱量を先行要素として第二操作量を出力する第二調節部とを備え、焼却炉は第一操作量と第二操作量との差分に基づいて制御が行われるため、実際の蒸気量の出力のラプラス変換を制御目標値である入力及び外乱のラプラス変換を用いて立式した際、廃熱ボイラの時定数に依存しない項が発現し、廃熱ボイラの時定数の大きさに依存しない応答を得ることが可能となる。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0023
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0023】
の特徴に係る発明は、第の特徴に係る発明であって、燃焼排ガスが有する熱量を、廃熱ボイラ入口における燃焼排ガスの温度と流量とから算出する燃焼制御装置、を提供する。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0024
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0024】
の特徴に係る発明によれば、新たな計測機器を設置することなく、既設の設備を活かして応答性の高い制御を行うことが可能となる。
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0025
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0025】
の特徴に係る発明は、第の特徴に係る発明であって、ごみ焼却処理施設は燃焼排ガス中の有害物質をろ過するろ布を備えたバグフィルタをさらに備え、バグフィルタ出口で計測した燃焼排ガスの流量を用いて熱量を算出する燃焼制御装置、を提供する。
【手続補正8】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0026
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0026】
の特徴に係る発明によれば、バグフィルタ出口における排ガス流量を検出し、検出された排ガス流量を排ガスの熱量の算出に用いることによって、廃熱ボイラ入口で検出するのと同様に時間遅れなく、しかも、ダストによる影響を低減してより精度の高い測定が可能となるため、より高精度の燃焼制御が可能となる。