(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022076580
(43)【公開日】2022-05-20
(54)【発明の名称】組み立て式フェイスシールド
(51)【国際特許分類】
A41D 13/11 20060101AFI20220513BHJP
A62B 18/02 20060101ALI20220513BHJP
【FI】
A41D13/11 H
A41D13/11 L
A62B18/02 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020187004
(22)【出願日】2020-11-10
(71)【出願人】
【識別番号】504150461
【氏名又は名称】国立大学法人鳥取大学
(71)【出願人】
【識別番号】719003086
【氏名又は名称】株式会社メディビート
(71)【出願人】
【識別番号】595121928
【氏名又は名称】有限会社サンパック
(71)【出願人】
【識別番号】520439900
【氏名又は名称】株式会社R0
(74)【代理人】
【識別番号】100118393
【弁理士】
【氏名又は名称】中西 康裕
(72)【発明者】
【氏名】藤井 政至
(72)【発明者】
【氏名】才木 直史
(72)【発明者】
【氏名】森 和美
(72)【発明者】
【氏名】森 貴洋
(72)【発明者】
【氏名】山岸 大輔
(72)【発明者】
【氏名】木村 勝典
【テーマコード(参考)】
2E185
【Fターム(参考)】
2E185AA06
2E185BA08
2E185CC36
(57)【要約】
【課題】本発明は、額バンドが適切な方向に簡単に傾斜できて、組み立てが容易で、安価な組み立て式フェイスシールドを提供することを目的とする。
【解決手段】展開状態から組み立てる組み立て式フェイスシールドであって、組み立て状態で、透明フィルムを有して着用者の顔面を覆うシールド部と、該シールド部を頭部に保持する額バンドと後頭部バンドからなる組み立て式フェイスシールドにおいて、前記額バンドは、右額バンドと左額バンドとからなり、展開状態で、前記右額バンドと前記左額バンドは、一端が前記シールド部の両側の上方にそれぞれ折り目を設けて連結されるとともに前記シールド部のサイドに沿って下方に延在しており、前記折り目は、前記右額バンドと前記左額バンドが折り曲げられると、前記右額バンドと前記左額バンドの延在方向が、それぞれ水平に対して上向きに傾斜するようになっている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
展開状態から組み立てる組み立て式フェイスシールドであって、
組み立て状態で、
着用者の顔面を覆うシールド部と、
該シールド部を頭部に保持する額バンドと後頭部バンドと、
からなる組み立て式フェイスシールドにおいて、
前記額バンドは、右額バンドと左額バンドとからなり、
展開状態で、前記右額バンドと前記左額バンドは、一端が前記シールド部の両側の上方にそれぞれ折り目を設けて連結されるとともに前記シールド部のサイドに沿って下方に延在する展開シートを構成し、
前記後頭部バンドは、前記展開シートとは別体となっていることを特徴とする組み立て式フェイスシールド。
【請求項2】
前記シールド部は、透明フィルムで構成された透視窓部と透明フィルムを固定するフレームからなることを特徴とする請求項1に記載の組み立て式フェイスシールド。
【請求項3】
前記シールド部の上方に前記右額バンドと前記左額バンドの一端がそれぞれ連結する箇所に設けられた前記折り目は、前記右額バンドと前記左額バンドが折り曲げられると、前記右額バンドと前記左額バンドの延在方向が、水平に対してそれぞれ上向きに傾斜するようになることを特徴とする請求項1に記載の組み立て式フェイスシールド。
【請求項4】
前記後頭部バンドは、右後頭部バンドと左後頭部バンドからなることを特徴とする請求項1に記載の組み立て式フェイスシールド。
【請求項5】
前記右後頭部バンドと前記左後頭部バンドは、前記透視窓部に収まる寸法であることを特徴とする請求項4に記載の組み立て式フェイスシールド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組み立て式フェイスシールドに関し、詳しくは、透明フィルムを有して着用者の顔面を覆うシールド部と右額バンドと左額バンドが一体の展開シートになっている組み立て式フェイスシールドに関する。
【背景技術】
【0002】
ウイルスの飛沫が顔面に付着するのを防御するために、非特許文献1のようなフェイスシールドが用いられている。非特許文献1のフェイスシールドの顔面をシールドするシールド部は全てPETの明なプラスチックである。そして、フェイスシールドの額部分にスポンジが配設されることによって、シールド部と顔面の距離が離間し、メガネを掛けられるように、また、吐息で透明プラスチックが曇らないようになっている。
【0003】
しかしながら、非特許文献1のフェイスシールドは高額である。また、ウイルスが付着したフェイスシールドを再使用することは衛生上からも、消毒の作業追加からも好ましいことではない。そこで、使い捨てできるように、安価なフェイスシールドとして、非特許文献2のような1枚もののPETシートを使った簡易なフェイスシールドが考えられた。
【0004】
しかしながら、緊急時(たとえば、世界的な伝染病の流行による部品供給の途切れ事態)におけるPETの供給不足が生じたりすると、非特許文献1や非特許文献2のフェイスシールドは生産できなくなってしまう。従って、予期せぬような緊急事態に備え、選択肢を増やす意味においても、他の材料を用いた簡易なフェイスシールドは必要である。
【0005】
そこで、本願の発明者は特許文献1のフェイスシールドを考案した。このフェイスシールドのシールド部は、安価かつ供給不足の心配が少ない薄いプラスチック(例えば、厚み0.03mmポリプロピレンやセロファンやなど)を紙製のフレームで囲んだ組み立て式フェイスシールドである。具体的には透視窓部を抜いた紙に薄いプラスチックをラミネートし、これを歯形でくり抜いたものを展開シートとし、これを組み立てて着用するものである。この薄い透明プラスチックは紙のフレームで囲むことにより補強されるので、安価なフェイスシールドを供給することができる。そして、このフェイスシールドは、非特許文献3にもあるように実際に市販もされている。
また、その他の組み立て式のフェイスシールドとして、非特許文献4や非特許文献5のものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】au payマーケット|フェイスシールド、[令和2年9月12日検索]、インターネット〈https://wowma.jp/item/446107386〉
【非特許文献2】デザインと3Dのプロが伝える3Dプリンタや最新テクノロジー 3DP id.artsサイト|1枚のPETシートから作製可能な安価でシンプルなフェイスシールド「Simple face shield」、[令和2年9月12日検索]、インターネット〈https://idarts.co.jp/3dp/adam-miklosi-simple-face-shield/〉
【非特許文献3】Medi Beat In. |紙製フェイスシールド “ORIGAMI”(特許文献1)、[令和2年9月15日検索]、インターネット〈https://medibeat-inc.co.jp/products/products-88/〉
【非特許文献4】エクセルパック・カバヤ株式会社|ペパシル、[令和2年9月12日検索]、インターネット〈https://www.exl-kabaya.co.jp/images/papershield.pdf〉
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
当初フェイスシールドは医療関係での使用が主なものであると考えられていたが、医療関係に限らず、音楽やスポーツのイベントや、相談会、会議等、様々な場面で使用されるようになってきている。また、学校での使用もあり大人だけでなく子供の使用も増えている。
このように様々な人が様々な場面で使用される場合、組み立て式フェイスシールドは、安価で使い捨てということもあり、非常に適している。
【0009】
その一方で、組み立て式フェイスシールドは、様々な人が使用するためにできるだけ簡単に組み立てられる必要がある。また多くの人が使用するため安価なものが必要であり、多数必要となるので保管等しておくために収納性や運搬性も重要となる。
【0010】
本願の発明者が考案した特許文献1の組み立て式フェイスシールドの市販品である非特許文献3の製品は、その感想として、組み立て難いという感想が多数あった。特に、使用者の額と接する額バンドは使用者の額と同方向に傾斜するように折る必要がある一方、この額バンド部分の組み立てが非常に難しいという感想があった。
【0011】
また、この非特許文献3の組み立て式フェイシールドは、額バンドと後頭部バンドがシールド部の両サイドから横方向に大きく延在するために、材料取りが悪くなってしまい、また、収納性や運搬性にも問題がある。
【0012】
また、非特許文献4の組み立て式フェイシールドは、前バンドと後頭部バンドが最初から一体となっているため、前バンドが使用者の額と平行になってしまうことから、バンドで強く固定しておかなければ脱げやすくなり、また強く締め付けると使用感が悪くなるという問題がある。
そこで、本発明は、組み立てが容易で、また、安価であり、使用感のよい組み立てが容易な組み立て式フェイスシールドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するため、本発明の組み立て式フェイスシールドは、展開状態から組み立てる組み立て式フェイスシールドであって、組み立て状態で、着用者の顔面を覆うシールド部と、該シールド部を頭部に保持する額バンドと後頭部バンドと、からなる組み立て式フェイスシールドにおいて、前記額バンドは、右額バンドと左額バンドとからなり、展開状態で、前記右額バンドと前記左額バンドは、一端が前記シールド部の両側の上方にそれぞれ折り目を設けて連結されるとともに前記シールド部のサイドに沿って下方に延在する展開シートを構成し、前記後頭部バンドは、前記展開シートとは別体となっていることを特徴とする。
【0014】
本発明の組み立て式フェイスシールドは、シールド部と右額バンドと左額バンドが展開シートを構成しており、この展開シートにおいて、右額バンドと左額バンドがシールド部のサイドに沿って下方に延在する構成となっているので、右額バンドと左額バンドが横方向に伸びる長い舌片の構成に比べ材料取りが良くなり、安価なものとすることができる。また、右額バンドと左額バンドがシールド部のサイドに沿って延在するので、小型となり、運搬性や保管時の収納性がよい。また、逆さまにした展開シートと組み合わせて製造することで(
図2B参照)材料取りを更によくすることができる。
【0015】
また、本発明の組み立て式フェイスシールドは、前記シールド部が、透明フィルムで構成された透視窓部と透明フィルムを固定するフレームからなることを特徴とする。
【0016】
また、本発明の組み立て式フェイスシールドは、前記シールド部の上方に前記右額バンドと前記左額バンドの一端がそれぞれ連結する箇所に設けられた前記折り目が、前記右額バンドと前記左額バンドが折り曲げられると、前記右額バンドと前記左額バンドの延在方向が、水平に対してそれぞれ上向きに傾斜するようになることを特徴とする。
【0017】
このために、組み立て状態において、額バンドの接触面が額と同方向に傾斜することになるので、頭部への当接面が額と同方向に傾斜し、頭部の形状にフィットして使用感がよく、また、しっかりフィットするので激しく動いてもずれ難い。
【0018】
また、本発明の組み立て式フェイスシールドを実際に組み立ててもらったところ、非特許文献3の組み立て式フェイスシールドに比べ組み立てやすいとの感想を得ることができた。具体的には、6人に感想を聞いたところ、6人中5人から今回のフェイスシールドの方が組み立てやすいとの感想があった。非特許文献3の組み立て式フェイスシールドは、展開状態において、後頭部バンドの上に額バンドが位置しており、組み立て時にこの額バンドを後頭部バンド側に折りたんで組み立てる必要があり、この時の額バンドの組み立てが難しいという感想が多かったが、本発明においては、この点が改善されている。
【0019】
本発明の組み立て式フェイスシールドは、前記後頭部バンドが、右後頭部バンドと左後頭部バンドからなることが好ましい。また、この場合、本発明の組み立て式フェイスシールドは、前記右後頭部バンドと前記左後頭部バンドは、前記透視窓部に収まる寸法であることが好ましい。このような構成により、透視窓部の廃材で右後頭部バンドと左後頭部バンドを製造することができるので、組み立て式フェイスシールドをより安価に提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】Aは本発明の実施形態の組み立て式フェイスシールドの組み立て後の正面から見た撮像であり、Bは実施形態の組み立て式フェイスシールドの組み立て前の正面から見た展開図である。
【
図2】Aは右額バンドと左額バンドのみを折り曲げた状態を示す正面から見た展開図であり、Bは組み立て式フェイスシールドの材料取りを示す正面から見た平面図であり、Cは組み立て式フェイスシールドの製造工程を示すフローチャートである。
【
図3】Aは組み立て式フェイスシールドの組み立て方法を記す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、実施形態及び図面を参照にして本発明を実施するための形態を説明するが、以下に示す実施形態は、本発明をここに記載したものに限定することを意図するものではなく、本発明は特許請求の範囲に示した技術思想を逸脱することなく種々の変更を行ったものにも均しく適用し得るものである。なお、この明細書における説明のために用いられた各図面においては、各部材を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各部材毎に縮尺を異ならせて表示しており、必ずしも実際の寸法に比例して表示されているものではない。
【0022】
[実施形態]
図1を用いて本実施形態の組み立て式フェイスシールド100の要部の構成を説明する。組み立て式フェイスシールド100(以下、適宜単にフェイスシールド100と記す)はその名のとおり、展開状態から組み立てて使用するものである。
図1Aは組み立て後の試作品のフェイスシールド100を示す撮像であり、
図1Bは組み立て前のフェイスシールド100の正面から見た展開図である。
【0023】
図1Bに示すように、本実施形態のフェイスシールド100は、透明フィルム11を有して着用者の顔面を覆うシールド部1と、シールド部1を頭部に保持する前頭部側の額バンド2と後頭部バンド3と、からなる。
【0024】
シールド部1は、ポリプロピレン(PP)の透明フィルム11と、透明フィルム11を保持するフレーム12とからなる。フレーム12は、
図1Bに示すように、上底1Uよりも下底1Dが短い等脚台形の透視窓部121を有し、この透視窓部121に透明フィルム11がラミネートで貼られている。そして、透明フィルム11は、全周がフレーム12に固着されている。
【0025】
額バンド2は右額バンド2Rと左額バンド2Lからなり、後頭部バンド3は右、後頭部バンド3Rと左後頭部バンド3Lからなる。なお、ここで、左右は着用者側からみた方向である。
【0026】
そして、展開状態において、シールド部1と右額バンド2Rと左額バンド2Lは一体の展開シート101(
図1Bの構成)を構成しており、後頭部バンド3は展開シート101とは別体として形成されている。また、この展開シート101は表面が白色の厚紙に透明なポリプロピレンのフィルムがラミネートされたものとなっている。
【0027】
また、フレーム12には、コの字形に折り曲げて左右のシールド壁を形成するための山折りの第1~第4折り目A1~A4が上下左右に形成されている。そして、第1折り目A1が右上で、第2折り目A2が右下で同一垂線上にあり、第3折り目A3が左上で、第4折り目A4が左下で同一垂線上にある。
【0028】
また、フレーム12の第2折り目A2と第4折り目A4の間には、下庇122が山折りの折り目A5で連結されている。この下庇122は飛沫防御と撓みの補強を兼ねている。
【0029】
図1Bに示すように、右額バンド2Rと左額バンド2Lは、一端がシールド部1のフレーム12の両側の上方にそれぞれ山折りの第6折り目A6、第7折り目A7を設けて連結されるとともにシールド部1のサイドに沿って下方に延在している。シールド部1のサイドは透視窓部121の台形のそれぞれの脚1Sと平行になっており、右額バンド2Rと左額バンド2Lも脚1Sと平行に延在している。
【0030】
そして、右額バンド2Rと左額バンド2Lは、第6折り目A6、第7折り目A7で折り曲げられると、
図2Aに示すように、右額バンド2Rと左額バンド2Lの延在方向が、水平に対して上向きにθ傾斜するようになっている。
【0031】
図1Bに示すように、右額バンド2Rの先端には第1舌片U1が形成され、その近傍に第2舌片U2が形成されている。左額バンド2Lの先端近傍には、右額バンド2Rの第1舌片U1、第2舌片U2に対応して第1長孔H1、第2長孔H2が形成されている。そして、第2舌片U2が第2長孔H2に嵌入し、第1舌片U1が第1長孔H1に嵌入することによって、折り曲げられた右額バンド2Rと左額バンド2Lが連結されることになる。
【0032】
また、
図2Bに示すように、後頭部バンド3を構成する右後頭部バンド3Rと左後頭部バンド3Lは透視窓部121内に収まる寸法に設計されている。このために、右後頭部バンド3Rと左後頭部バンド3Lは、ラミネートされる前の透視窓部121の打ち抜き時に、透視窓部121の繰り抜き部材から抜き取っている。すなわち、後頭部バンド3は、廃材を利用して、展開シート101の製造工程の中で製造されている。
【0033】
そして、
図1Bに示すように、右後頭部バンド3Rの一端には第3舌片U3が形成され、その近傍に第4舌片U4が形成されている。また、左後頭部バンド3Lの一端には第5舌片U5が形成され、その近傍に第6舌片U6が形成されている。
【0034】
そして、フレーム12の上右端部には、右後頭部バンド3Rの第3舌片U3に対応して第3長孔H3が形成され、その横端側に、第4舌片U4に対応して第4長孔H4が形成されている。また、フレーム12の上左端部には、左後頭部バンド3Lの第5舌片U5に対応して第5長孔H5が形成され、その横端側に、第6舌片U6に対応して第6長孔H6が形成されている。
【0035】
そして、第3舌片U3が第3長孔H3に嵌入し、第4舌片U4が第4長孔H4に嵌入することによって、右後頭部バンド3Rがフレーム12に連結される。同様にして、左後頭部バンド3Lがフレーム12に連結される。
【0036】
また、
図1Bに示すように、右後頭部バンド3Rの他端には第7舌片U7が形成され、その近傍に第8舌片U8が形成されている。また、左後頭部バンド3Lの他端側には7つの第7長孔H7が等間隔で形成されている。そして、右後頭部バンド3Rの第8舌片U8が左後頭部バンド3Lの1つの第7長孔H7に嵌入され、その第7長孔H7の2つ隣の第7長孔H7に第7舌片U7が嵌入されることにより、フレーム12に連結された右後頭部バンド3Rと左後頭部バンド3Lが連結される。
【0037】
図2Bはフェイスシールド100の6セット分の材料取りを示す平面図である。前述のとおり、後頭部ベルト3は展開シート101の透視窓部121内に入っている。そして、
図2に示すように、180度回転させた他の展開シート101を隣接させている。従って、横方向の材料取り寸法が下底と上底の差の半分(
図2BのL)程度減少することになり、額バンドが横方向に延在する組み立て式フェイスシールドに比べ、効率よく製造することができる。
【0038】
次に、
図2Cを用いて本実施形態のフェイスシールド100の製造方法を説明する。材料の厚紙に右後頭部バンド3Rと左後頭部バンド3Lを含む透視窓部121を型抜きする(S11参照)。そして、透視窓部121が抜かれた厚紙に透明フィルム11をラミネートする(S12参照)。これにより透視窓部121は透明フィルム11が透けて透視することができ、他の厚紙の表面は抗菌性や耐水性が向上する。そして、残りの部分が型抜きされて(S13参照)、
図1Bに示す展開シート101と右後頭部バンド3Rと左後頭部バンド3Lからなる、組み立て前の組み立て式フェイスシールド100が完成する。
次に、
図3を用いて本実施形態のフェイスシールド100の組み立て方法の一例を説明する。
図3のフェイスシールド100は試作品の撮像である。
【0039】
S1は組み立てる前のフェイスシールド100の展開シート101の展開画像であり、
図1Bとは逆の、背面(顔面側)からの撮像であるので、
図1Bの展開図とは山折りと谷折りの方向が逆となる。
【0040】
まず、右額バンド2Rの第6折り目A6と左額バンド2Lの第7折り目A7が谷折りされる(S2参照)。この折り目により、右額バンド2Rと左額バンド2Lの延在方向が、水平に対してそれぞれ上向きに傾斜するような折り目部分となる。このため、使用中額バンド2に加わる荷重が、折り目部分に集中することなく、フレーム12側にも加わることになるので、折り目部分での裂けが生じ難い。
【0041】
次に、透視窓部121の左右の第1~第4折り目A1~A4が谷折りされる(S3参照)。
次に、右額バンド2Rの第2舌片U2が左額バンド2Lの長孔H2に嵌入され、次いで右額バンド2Rの第1舌片U1が左額バンド2Lの長孔H1に嵌入されて、右額バンド2Rと左額バンド2Lが連結される(S4参照)。
次に、下庇122の第5折り目A5が谷折りされる(S5参照)。
【0042】
次に、右後頭部バンド3Rの第3、第4舌片U3、U4がフレーム12の第3、第4長孔H3、H4に嵌入されて、右後頭部バンド3Rがフレーム12に接続され、左後頭部バンド3Lの第5、第6舌片U5、U6がフレーム12の第5、第6長孔H5、H6に嵌入されて、左後頭部バンド3Lがフレーム12に接続される(S6参照)。
【0043】
次に、右後頭部バンド3Rの第7、第8舌片U7、U8が左後頭部バンド3Lの7つの第7長孔H7の2つに選択的に嵌入されて、右後頭部バンド3Rと左後頭部バンド3Lが連結され(S7参照)、組み立てが完成する(S8参照。なお、S8の撮像では、第7舌片U7の無いフェイスシールドとなっている。)。
なお、組み立て方法はあくまでも一例であり、他の順番で組み立てても構わない。
【0044】
このように本実施形態のフェイスシールド100は、材料としては紙とポリプロピレンの透明フィルム11のみからなる単純構造であることから、安価で大量に生産することができる。なお、本実施形態ではフレーム12は紙製であったが必ずしも紙製に限定されるわけではなく、プラスチック製のフレームでも構わない。
【0045】
図1Aに示すように、本実施形態のフェイスシールド100は、顔面の正面の透明フィルム11が湾曲しない平面となる構成であるので、透明フィルム11を透視する画像が光の屈折でゆがむことが無い。
【0046】
また、額バンド2の第6、第7折り目A6、A7から透視窓部121の第1~第4折り目A1~A4までの距離D(
図2A参照)が長くなっているので、透明フィルム11が顔面から離間し、吐息によって透明フィルム11が曇り難くなっている。また、いわゆるN95と呼ばれるような高性能で立体的なマスクであっても問題なく着用することができる。また、メガネをはめたままでも組み立て式フェイスシールド100を着用することができる。
【0047】
なお、本実施形態の右額バンド2Rにおいて、フレーム12との連結部にあたる第6折り目A6と、右額バンド2Rの先端(第1舌片U1側)との間において、第6折り目A6の他に折り目はとくに設けられていない。しかし、ここに短手方向の折り目を2つ、3つ程度設けておくことで右額バンド2Rは組み立てた際に折り目により弧を描く状態になるので、フェイスシールド100は額によりフィットし易くなり、装着感を高めることができる。そして、左額バンド2Lにおいても同様である。なお、折り目の数は2つ、3つに限定されるわけではなく、もっと多くの折り目を設けても構わない。
【0048】
また、本実施形態の透明フィルム11はポリプロピレンのフィルムであるので、ステップS3の折り曲げのときにも、透明フィルム11を容易に曲げることができる。なお、透明フィルム11はポリプロピレンに限定されるものではなく、例えばセロファンのようなものでも構わない。なお、本発明者の知る限りポリプロピレンやセロファンは、ファイスシールドの材料として、従来使われていなかったため、世界的な伝染病の流行によるPET樹脂の供給が途切れたような場合にも入手し易い。
【0049】
また、
図2Aに示す第6、第7折り目A6、A7の傾斜θによって、頭部への当接面が額と同方向に傾斜し、組み立て式フェイスシールド100が頭部の形状にフィットして装着が心地よく、ずれ難い。また、この傾斜θによって、シールド部の下方が着用者の口から離間する方向に傾斜するので、シールド部がより曇りにくい。
【0050】
本実施形態の後頭部バンド3は展開シート101とは別体である。これにより、展開シート101は、長い後頭部バンド3を延在する必要がないので、材料取りが悪くなることを防止できる。また、後頭部バンド3を透視窓部121の廃材で製造することが、より効率よく製造することができるため、フェイシールド100のコストを下げることができる。
【0051】
なお、後頭部バンド3は、透視窓部121の廃材から作られるものに限定するものではない。また、後頭部バンド3は、フェイスシールド100の組み立て状態における使用時に存在していればよいので、必ずしも展開シート101と共に最初からセットになっている必要はない。例えば、一般家庭の輪ゴムを連結し、フレーム12に輪ゴムを掛ける舌片を設ければ、後頭部バンド3をわざわざ添付しなくてもよく、また、頭のサイズ調整も容易にできる。
【0052】
また、本実施形態では後頭部バンド3は、右後頭部バンド3Rと左後頭部バンド3Lとからなっていたが、必ずしも別体である必要はなく、一本の後頭部バンドでも構わない。
また、本発明における折り目は着用者が折る部分であって、型で付けると強度が弱くなるので、必ずしも型で付けなくてもよく、印刷のラインでもよい。
【0053】
また、フェイスシールド100における透明フィルムの保持方法は、上述の実施形態のラミネートによる接着に限定するものではない。例えば、接着剤の塗布や、粘着剤や粘着テープのような粘着でもよい。また、展開シート101を組み立てた後に透明フィルムを接着するよう構成でも構わない。
【符号の説明】
【0054】
100 組み立て式フェイスシールド
101 展開シート
1 シールド部
11 透明フィルム
12 フレーム
121 透視窓部
2 額バンド
2R 右額バンド
2L 左額バンド
3 後頭部バンド
3R 右後頭部バンド
3L 左後頭部バンド
A1~A7 第1~第7山折り部
H1~H7:第3~第6長孔
U1~U8:第1、第2舌片