(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022076596
(43)【公開日】2022-05-20
(54)【発明の名称】深紫外線殺菌装置
(51)【国際特許分類】
C02F 1/32 20060101AFI20220513BHJP
H01L 33/00 20100101ALI20220513BHJP
【FI】
C02F1/32
H01L33/00 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020187040
(22)【出願日】2020-11-10
(71)【出願人】
【識別番号】500221563
【氏名又は名称】ナイトライド・セミコンダクター株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504136993
【氏名又は名称】独立行政法人国立病院機構
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】村本 宜彦
(72)【発明者】
【氏名】西村 秀一
【テーマコード(参考)】
4D037
5F142
【Fターム(参考)】
4D037AA01
4D037AB03
4D037BA18
5F142DB03
5F142EA31
5F142GA31
(57)【要約】
【課題】深紫外線を照射するDUV-LEDを用い、水中においてレジオネラ菌を確実に殺菌できる装置を提供する。
【解決手段】深紫外線殺菌装置は、給水タンクなどの水中に設置され、水中のレジオネラ菌を殺菌する。深紫外線殺菌装置は、深紫外線を照射する、光出力1.5mW以上の複数の一対のDUV-LEDユニット120a・120b、130a・130b、140a・140b、150a・150b、160a・160bと、これらDUV-LEDユニットを格子状に3次元配置する格子構造を構成するバーであり、水中の任意の1点を中心とする半径30cmの球内に少なくとも1個のDUV-LEDユニットが配置されるように3次元配置する格子構造を構成するバー12~16を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水中に設置され、水中のレジオネラ菌を殺菌する深紫外線殺菌装置であって、
深紫外線を照射する、光出力1.5mW以上の複数のLEDユニットと、
前記複数のLEDユニットを格子状に3次元配置する格子構造であり、水中の任意の1点を中心とする半径30cmの球内に少なくとも1個の前記LEDユニットが配置されるように3次元配置する格子構造と、
を備える深紫外線殺菌装置。
【請求項2】
前記格子構造は、XYZ直交座標系において、X軸方向に延在するバーをY方向に第1の間隔だけ離間して複数個配置し、かつ、Z方向にも第2の間隔だけ離間して複数個配置して構成され、前記複数個のLEDユニットは、各バーに第3の間隔で配置される、
請求項1に記載の深紫外線殺菌装置。
【請求項3】
前記複数のLEDユニットは、斜方格子、菱形格子、中心矩形格子、二等辺三角格子、六角格子状、あるいは正三角格子のいずれかの格子状に3次元配置される、
請求項2に記載の深紫外線殺菌装置。
【請求項4】
前記格子構造は、RθZ円筒座標系において、Z方向に延在する中心バーの回りに放射状にバーを所定角度間隔で複数個配置し、かつZ方向にも第4の間隔だけ離間して放射状にバーを所定角度間隔で複数個配置して構成され、前記複数個のLEDユニットは、各バーに第5の間隔で配置される、
請求項1に記載の深紫外線殺菌装置。
【請求項5】
前記複数のLEDユニットは、複数の一対のLEDユニットから構成され、前記一対のLEDユニットは、その照射面が互いに反対方向となるように配置される、
請求項1~4のいずれかに記載の深紫外線殺菌装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、深紫外線殺菌装置に関し、特にレジオネラ菌の殺菌に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば24時間風呂等において、大腸菌やレジオネラ菌を殺菌するための装置が提案されている。
【0003】
特開平10-244257号公報には、放電ランプの発生する紫外線によりレジオネラ菌を殺菌する技術が記載されている。高圧放電ランプは250Wのランプ電力を有し、ジャケットの半径を1.25cmとし、殺菌流水管の内半径を2.5cm、ジャケットの紫外線透過率を0.72とすると、殺菌流水管の内表面で、紫外線強度が35mW秒/cm2程あり、流速10cm/秒で、1回温水が殺菌流水管内を通過することで、温水中のレジオネラ菌の99.9%が死滅するとしている。また、高圧放電ランプから照射される365nm、435nmの紫外線はジャケットの外表面及び殺菌流水管の内表面に塗布されている酸化チタンなどの光触媒に当たって、活性電子を発生し、この活性電子による温水の殺菌も行われるとしている。
【0004】
他方で、殺菌作用を有する紫外線の発光光源として、深紫外線発光ダイオード(DUV-LED)を用いた殺菌装置も提案されている。特許文献2には、紫外線光源としてDUV-LEDを用いた紫外線殺菌装置であって、携帯用としても使用可能であり、更に物の殺菌の操作性を向上させることが可能な、紫外線殺菌装置が記載されている。すなわち、開口部を有する筐体と、内側面および該内側面と反対側の外側面を有し、筐体の開口部を塞ぐように内側面を筐体の内部に向けて配置された、紫外線を透過する紫外線透過窓と、一つ以上の紫外発光ダイオードを有し紫外線を帯状の光束として出射する光源と、光源からの紫外線が紫外線透過窓に入射する位置を帯状の光束の幅方向に交差する方向にずらしながら光源からの紫外線を照射することによって筐体の内部から紫外線透過窓の内側面の全面にわたって光源からの紫外線を照射することができる走査手段とを有する紫外線殺菌ユニットを含み、紫外線透過窓の外側面に対向して配置された被殺菌体に紫外線を照射して殺菌を行う。
【0005】
また、特許文献3には、260nm~290nm付近の紫外線を発するLEDを用いた流体殺菌装置が記載されている。この流体殺菌装置は、通過する流体が殺菌処理される処理流路が形成されている流路管と、処理流路に向かって紫外線を照射する第1光源と、流路管の外周面と交差する向きに形成された流入路と、流入路と処理流路とを連通する連通路を備え、連通路は、流入路から流路管の第1端部の開口へ向かう途中に、流入路側よりも狭くなった狭路を有する構成である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10-244257号公報
【特許文献2】特許第5989854号
【特許文献3】特許第6404404号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、DUV-LEDを用いた深紫外線殺菌装置は、種々の殺菌への適用が検討されているが、水中における殺菌、特にレジオネラ菌に対する殺菌の効果については未だ十分に検討されていない。特許文献1では、石英製のジャケットに放電ランプを収容し、これを温水が流出入する所定形状の殺菌流水管内に設置して殺菌しているが、構成が複雑であり、より簡易に設置し得る技術が望まれる。また、特許文献3では、経路内の流体の流れを整流することで紫外線を照射するように構成しているものの、LED光源は流路管の端部に配置されているため、流体全域を漏れなく照射して殺菌することが困難である。
【0008】
本発明の目的は、DUV-LEDを用い、水中においてレジオネラ菌を確実に殺菌し得る装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、水中に設置され、水中のレジオネラ菌を殺菌する深紫外線殺菌装置であって、深紫外線(DUV)を照射する、光出力1.5mW以上の複数のLEDユニットと、前記複数のLEDユニットを格子状に3次元配置する格子構造であり、水中の任意の1点を中心とする半径30cmの球内に少なくとも1個の前記LEDユニットが配置されるように3次元配置する格子構造とを備える深紫外線殺菌装置である。
【0010】
本発明の1つの実施形態では、前記格子構造は、XYZ直交座標系において、X軸方向に延在するバーをY方向に第1の間隔だけ離間して複数個配置し、かつ、Z方向にも第2の間隔だけ離間して複数個配置して構成され、前記複数個のLEDユニットは、各バーに第3の間隔で配置される。
【0011】
また、本発明の他の実施形態では、前記複数のLEDユニットは、斜方格子、菱形格子、中心矩形格子、二等辺三角格子、六角格子状、あるいは正三角格子のいずれかの格子状に3次元配置される。
【0012】
また、本発明のさらに他の実施形態では、前記格子構造は、RθZ円筒座標系において、Z方向に延在する中心バーの回りに放射状にバーを所定角度間隔で複数個配置し、かつZ方向にも第4の間隔だけ離間して放射状にバーを所定角度間隔で複数個配置して構成され、前記複数個のLEDユニットは、各バーに第5の間隔で配置される。
【0013】
また、本発明のさらに他の実施形態では、前記複数のLEDユニットは、複数の一対のLEDユニットから構成され、前記一対のLEDユニットは、その照射面が互いに反対方向となるように配置される。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、給水タンク等に設置することで、当該給水タンク内のレジオネラ菌を殺菌することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】実施形態の深紫外線殺菌装置の平面図である。
【
図2】実施形態のDUV-LEDユニットの斜視図である。
【
図3】実施形態のDUV-LEDユニットの平面図である。
【
図4A】実施形態の給水タンク内の深紫外線殺菌装置の配置図(その1)である。
【
図4B】実施形態の給水タンク内の深紫外線殺菌装置の配置図(その2)である。
【
図5A】実施形態のDUV-LEDユニットの照射範囲説明図(その1)である。
【
図5B】実施形態のDUV-LEDユニットの照射範囲説明図(その2)である。
【
図6】実施形態のDVD-LEDユニットの照射範囲説明図(その3)である。
【
図7】他の実施形態の深紫外線殺菌装置の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面に基づき本発明の実施形態について説明する。
【0017】
図1は、本実施形態における深紫外線殺菌装置10の平面図を示す。深紫外線殺菌装置10は、複数のバー12,13,14,15,16,・・・を備える。これら複数のバー12,13,14,15,16,・・・は、3次元において格子状に配列される。具体的には、XYZ座標系において、XY平面上でX方向に延在する所定長のバーが、Y方向に等間隔で複数個整列し、かつ、Z方向に等間隔で複数個整列して格子状に配列される。図において、バー12,14,16は同一XY平面上に整列しており、バー13,15はこれと異なるXY平面(Z方向、すなわち紙面に垂直な方向に異なる平面)上に整列している。各バー12,13,14,15,16,・・・の断面形状は任意であり、円形、正方形、多角形のいずれであってもよい。
【0018】
それぞれのバーには、等間隔に一対のDUV-LEDユニットが配置される。例えば、バー12に関しては、バー12の所定位置における一面にはDUV-LEDユニット120aが配置され、反対面にはDUV-LEDユニット120bが配置され、これら一対のDUV-LEDユニット120a、120bが所定ピッチPで複数配置される。一対のDUV-LEDユニット120a、120bは、その照射面が互いに反対方向となるように背中合わせに配置される。同様に、バー13に関しては、バー13の所定位置における一面にはDUV-LEDユニット130aが配置され、反対面にはDUV-LEDユニット130bが配置され、これら一対のDUV-LEDユニット130a、130bが所定ピッチPで複数配置される。バー14に関しては、バー14の所定位置における一面にはDUV-LEDユニット140aが配置され、反対面にはDUV-LEDユニット140bが配置され、これら一対のDUV-LEDユニット140a、140bが所定ピッチPで複数配置される。バー15に関しては、バー15の所定位置における一面にはDUV-LEDユニット150aが配置され、反対面にはDUV-LEDユニット150bが配置され、これら一対のDUV-LEDユニット150a、150bが所定ピッチPで複数配置される。バー16に関しては、バー16の所定位置における一面にはDUV-LEDユニット160aが配置され、反対面にはDUV-LEDユニット160bが配置され、これら一対のDUV-LEDユニット160a、160bが所定ピッチPで複数配置される。
【0019】
これらのバー12,13,14,15,16,・・・に配置されるDUV-LEDユニットは、
図1に示されるように、互いに千鳥状に配置される。すなわち、バー12に配置されるDUV-LEDユニット120a、120bに対し、バー13に配置されるDUV-LEDユニット130a、130bは、図中X軸方向に所定量だけオフセットして配置される。X軸方向のオフセット量は、図では所定ピッチPに対してP/2である。また、バー13に配置されるDUV-LEDユニット130a、130bに対し、バー14に配置されるDUV-LEDユニット140a、140bは、図中X軸方向に所定量だけオフセットして配置される。X軸方向のオフセット量は、図では所定ピッチPに対してP/2である。同様に、バー14に配置されるDUV-LEDユニット140a、140bに対し、バー15に配置されるDUV-LEDユニット150a、150bは、図中X軸方向に所定量だけオフセットして配置される。X軸方向のオフセット量は、図では所定ピッチPに対してP/2である。バー15に配置されるDUV-LEDユニット150a、150bに対し、バー16に配置されるDUV-LEDユニット160a、160bは、図中X軸方向に所定量だけオフセットして配置される。X軸方向のオフセット量は、図では所定ピッチPに対してP/2である。バー12,14,16のDUV-LEDユニットは、X軸方向に互いに同一位置に配置され、バー13,15のDUV-LEDは、X軸方向に互いに同一位置に配置される。
【0020】
バー12,13,14,15,16に配置されるDUV-LEDユニットは同一構造であり、例えば、バー12に所定ピッチPで複数配置されるDUV-LEDユニット120a、120bは、それぞれ1個又は複数個のDUV-LEDと防水構造から構成される。
【0021】
DUV-LEDは、深紫外線、すなわち一般に100~280nmの「UV-C」と呼ばれる波長領域の光を発するLEDであり、本実施形態のUV-LEDは、
発光波長:260nm~290nm
光出力:1.5mW
指向角:120度以下
の深紫外光を発する。DUV-LEDの構造は公知であり、基板上にn-AlGaN層、AlGaN活性層、p-AlGaN層が積層され、n-AlGaN層にn型電極、p-AlGaN層にp-GaNコンタクト層を介してp型電極が設けられる構造であるが、必ずしもこれに限定されない。
【0022】
防水構造は、UV-LEDを密閉する構造であればよく、例えば外観形状が円柱形状に成形される。防水構造の少なくとも一部は、石英(SiO2)やサファイア(Al2O3)、これらの成分を適宜混合したガラス、あるいは非晶質のフッ素系樹脂等の深紫外線の透過率が相対的に高い材料で構成され得る。
【0023】
図2及び
図3は、バー12に配置されるDUV-LEDユニット120aの拡大図を示す。
図2は、DUV-LEDユニット120aの模式的斜視図であり、
図3は、バー12に取り付けた状態のDUV-LEDユニット120aの模式的平面図である。
【0024】
DUV-LEDユニット120aは、DUV-LEDを円柱形状のアウターガード121で密閉した構造である。アウターガード121の一部、すなわちDUV-LEDの射出面には石英ガラス122が形成される。アウターガード121は、例えばPOM(ポリアセタール)等の樹脂で構成される。DUV-LEDは、アウターガード121内に収容され、駆動電流を供給するためのワイヤが配線される。当該ワイヤは、例えばバー12の内部空洞を通って電源に接続される。DUV-LEDユニット120aは、取付構造を介してバー12の所定位置に設置されるが、所定位置に固定されてもよく、あるいはバー12に沿って移動自在に取り付けられてもよい。なお、防水保護等級は、例えば給水タンク内に配置する場合には、IPX8程度とするのが望ましい。
【0025】
図4A及び
図4Bは、本実施形態の深紫外線殺菌装置10を給水タンク50内に設置する例を示す。
図4Aは、YZ平面上における配置説明図であり、
図4BはXYZ座標系における斜視図である。
【0026】
図1で説明したように、深紫外線殺菌装置10は、XY平面上でX方向に延在する所定長のバーが、Y方向に等間隔で複数個整列し、かつ、Z方向に等間隔で複数個整列して格子状に配列される。従って、
図4に示されるように、YZ平面上において、バー12,14,16はあるZ位置で所定間隔で配置され、バー13,15,17は異なるZ位置で所定間隔で配置される。このような配置パターンがZ方向に必要な数だけ繰り返されて配置される。
【0027】
図4A、
図4Bに示されるように、複数のバー12,13,14,15,16,17,・・・は、斜方格子、菱形格子、中心矩形格子、あるいは二等辺三角格子状に配置される。要するに、均等な間隔で並べられた列の上に均等な間隔でバーが並び、かつ、各列は配置間隔の半分ずつ互い違いにずれている配置である。なお、必ずしも当該格子に限定されるものではなく、例えば六角格子状、あるいは正三角格子状に配置されてもよい。
【0028】
バーの数、及びそれぞれのバーに配置されるDUV-LEDユニットの数は任意であり、給水タンク50の容量に応じて適宜調整される。但し、隣接するバーの間隔、より特定的には隣接するDUV-LEDユニットの間隔は、DUV-LEDユニットから照射される深紫外線の波長や指向角、光出力に応じ、レジオネラ菌を十分に殺菌し得る程度の間隔に調整することが必要である。
【0029】
図5A及び
図5Bは、
図4Aに示すような均等な間隔で並べられた列の上に均等な間隔でバーが並び、かつ、各列は配置間隔の半分ずつ互い違いにずれている配置での、YZ平面におけるDUV-LEDユニットから照射される深紫外線の照射範囲を示す。
図5Aは、例えばバー13に配置されるDUV-LEDユニット130a、130bの深紫外線の照射範囲であり、DUV-LEDユニット130aの照射範囲131a、及びDUV-LEDユニット130bの照射範囲131bを示す。図では、DUV-LEDの指向角を120度としている。
【0030】
図5Bは、例えばバー13に配置されるDUV-LEDユニット130a、130bに着目し、これに隣接するバー12のDUV-LEDユニット120a、120bの照射範囲121a、121b、及びバー14のDUV-LEDユニット140a、140bの照射範囲141a、141bを模式的に示す。
【0031】
バー13のDUV-LEDユニット130aの照射範囲131aについては、隣接する左隣のDUV-LEDユニット130bの照射範囲131bと一部重複するとともに、バー12のDUV-LEDユニット120bの照射範囲121b、及びバー14のDUV-LEDユニット140bの照射範囲141bとそれぞれ一部重複する。バー13のDUV-LEDユニット130aの照射範囲131aは、バー12の左上のDUV-LEDユニット120bの近傍、及びバー14の左下のDUV-LEDユニット140bの近傍まで延在する。
【0032】
また、バー13のDUV-LEDユニット130bの照射範囲131bについては、隣接する右隣のDUV-LEDユニット130aの照射範囲131aと一部重複するとともに、バー12のDUV-LEDユニット120aの照射範囲121a、及びバー14のDUV-LEDユニット140aの照射範囲141aとそれぞれ一部重複する。バー13のDUV-LEDユニット130bの照射範囲131bは、バー12の右上のDUV-LEDユニット120aの近傍、及びバー14の右下のDUV-LEDユニット140aの近傍まで延在する。
【0033】
また、
図6は、XY平面におけるDUV-LEDユニットから照射される深紫外線の照射範囲を示す。例えばバー13に配置されるDUV-LEDユニット130a、130bに着目し、これに隣接するバー12のDUV-LEDユニット120bの照射範囲121b、及びバー14のDUV-LEDユニット140aの照射範囲141aを模式的に示したものである。
【0034】
バー13のDUV-LEDユニット130aの照射範囲131aについては、バー12の隣接する左上のDUV-LEDユニット120bの照射範囲121bと一部重複するとともに、右上のDUV-LEDユニット120bの照射範囲121bとそれぞれ一部重複する。バー13のDUV-LEDユニット130aの照射範囲131aは、バー12の左上のDUV-LEDユニット120bの近傍、及びバー12の右上のDUV-LEDユニット120bの近傍まで延在する。
【0035】
また、バー13のDUV-LEDユニット130bの照射範囲131bについては、バー14の隣接する左下のDUV-LEDユニット140aの照射範囲141aと一部重複するとともに、右下のDUV-LEDユニット140aの照射範囲141aとそれぞれ一部重複する。バー13のDUV-LEDユニット130bの照射範囲131bは、バー14の左下のDUV-LEDユニット140aの近傍、及びバー14の右下のDUV-LEDユニット140aの近傍まで延在する。
【0036】
以上のように、複数のバーに配置されるDUV-LEDユニットの間隔を調整することで、給水タンク内のほぼ全ての領域を漏れなく照射することができる。以下の実施例に記載されているように、DUV-LEDユニットから265nm~285nmの波長の深紫外線を照射する場合、DUV-LEDユニットからの距離が30cm未満であれば、レジオネラ菌を確実に殺菌し得ることから、給水タンク内の任意の1点を中心とした半径30cmの球を想定し、この球内に少なくとも1つのDUV-LEDユニットが存在するように配置するのが望ましい。
【0037】
なお、DUV-LEDユニットの3次元配置は、XYZ直交座標系に限らず、他の座標系に基づいて決定してもよい。具体的には、レジオネラ菌を殺菌すべき給水タンクの形状に応じた座標系に基づいて決定すればよい。
【0038】
例えば、給水タンクが立方体あるいは直方体形状であればXYZ直交座標系に基づいて決定し、給水タンクが円筒形状であればRθZ円筒座標系に基づいて決定する等である。
【0039】
図7は、円筒形状の給水タンク50内の水のレジオネラ菌を殺菌するための深紫外線殺菌装置10の格子構造を模式的に示す。
【0040】
図7において、深紫外線殺菌装置10の格子構造は、RθZ円筒座標系におけるZ方向に延在する中心バー40の回りに、複数のバーが放射状に設置される。すなわち、中心バー40の同一Z位置において、バー52,54,56,58,60,62, 64、66が放射状に互いにθ=45度の角度をなして設置される。また、中心バー40の異なるZ位置において、バー51,53,55,57,59,61,63,65が放射状に互いにθ=45度の角度をなして設置される。バー52,54,56,58,60,62, 64、66の放射角度と、バー51,53,55,57,59,61,63,65の放射角度は、互いに22.5度だけずれて配置される。
【0041】
バー52,54,56,58,60,62, 64、66のそれぞれには、所定間隔で一対のDUV-LED120a、120bが設置される。一対のDUV-LED120a、120bは、その照射面が互いに反対方向となるように背中合わせに配置される。同様に、バー51,53,55,57,59,61,63,65のそれぞれにも、所定間隔で一対のDUV-LED120a、120bが設置される。
図7では、バー52,58に設置された複数の一対のDUV-LED120a、120bを模式的に示す。この場合においても、各バーの間隔及び一対のDUV-LEDユニットの間隔を調整することで、給水タンク50内の任意の1点を中心とした半径30cmの球を想定し、この球内に少なくとも1つのDUV-LEDユニットが存在するように配置するのが望ましい。
【実施例0042】
直方体の水槽(縦50mm、横1000mm、高さ100mm)の一端部にDUV-LEDユニットを取り付け、水槽に水を入れた。DUV-LEDユニットは、265nm、275nm、285nmの波長の3種類を用意した。水とレジオネラ菌の入った筒を用意し、水槽内に横方向に移動自在に挿入した。DUV-LEDユニットの光出力はいずれも1.5mW以上であり、指向角は120度以下、半値幅は20nm未満であった。
【0043】
3種類のDUV-LEDユニットを順次、水槽の端部に取り付け、それぞれのDUV-LEDユニットからレジオネラ菌の入った筒までの距離を順次変化させて深紫外線を30min照射し、照射後の筒の中のレジオネラ菌の数をカウントして殺菌性能を評価した。距離は、各波長において、5cm、10cm、15cm、20cm、30cm、40cm、50cm、100cmと変化させた。
【0044】
図8は、その評価結果を示す。
図において、265nm、285nmの波長については、光出力は1.5mWとしたが、275nmの波長については、1.5mWと3.5mWの2段階に変化させた。各波長において、「Control」は照射前のレジオネラ菌のカウント数を示す。
【0045】
265nm:1.5mWの照射では、距離が5cm、10cm、15cm、20cmにおいて照射前と比べてレジオネラ菌のカウント数が大幅に減少し、レジオネラ菌が効果的に殺菌されたことが確認された。距離5cm~20cmでは、レジオネラ菌の殺菌効果はほぼ同程度であった。例えば、距離20cmでは、照射前の3.70E+06に対し、照射後では10まで減少していた。他方で、距離が30cm、40cm、50cm、100cmでは照射前と比べてレジオネラ菌のカウント数はあまり減少しておらず、レジオネラ菌が殺菌されていないことが確認された。例えば、距離30cmでは、照射前の3.70E+06に対し、照射後でも3.40E+03であった。
【0046】
275nm:1.5mWの照射では、距離が5cm、10cm、15cm、20cmにおいて照射前と比べてレジオネラ菌のカウント数が大幅に減少し、レジオネラ菌が効果的に殺菌されたことが確認された。距離5cm~20cmでは、レジオネラ菌の殺菌効果はほぼ同程度であった。例えば、距離20cmでは、照射前の3.50E+06に対し、照射後では210まで減少していた。他方で、距離が30cm、40cm、50cm、100cmでは照射前と比べてレジオネラ菌のカウント数はあまり減少しておらず、レジオネラ菌が殺菌されていないことが確認された。例えば、距離30cmでは、照射前の3.50E+06に対し、照射後でも6.10E+04であった。
【0047】
275nm:3.5mWの照射では、距離が5cm、10cm、15cm、20cmにおいて照射前と比べてレジオネラ菌のカウント数が大幅に減少し、レジオネラ菌が効果的に殺菌されたことが確認された。距離5cm~20cmでは、レジオネラ菌の殺菌効果はほぼ同程度であった。例えば、距離20cmでは、照射前の2.40E+05に対し、照射後では10まで減少していた。他方で、距離が30cm、40cm、50cm、100cmでは照射前と比べてレジオネラ菌のカウント数はあまり減少しておらず、レジオネラ菌が殺菌されていないことが確認された。例えば、距離30cmでは、照射前の2.30E+05に対し、照射後でも2.10E+04であった。
【0048】
285nm:1.5mWの照射では、距離が5cm、10cm、15cm、20cmにおいて照射前と比べてレジオネラ菌のカウント数が大幅に減少し、レジオネラ菌が効果的に殺菌されたことが確認された。距離5cm~20cmでは、レジオネラ菌の殺菌効果はほぼ同程度であった。例えば、距離20cmでは、照射前の3.70E+06に対し、照射後では40まで減少していた。他方で、距離が30cm、40cm、50cm、100cmでは照射前と比べてレジオネラ菌のカウント数はあまり減少しておらず、レジオネラ菌が殺菌されていないことが確認された。例えば、距離30cmでは、照射前の3.70E+06に対し、照射後でも2.00E+04であった。
【0049】
なお、
図8には示されていないが、285nmの光出力を1.0mWまで低下させた場合には、距離5cm、10cmでは照射後のレジオネラ菌のカウント数が10まで減少したものの、距離15cm及び20cmでは照射後のレジオネラ菌のカウント数がそれぞれ4.50E+03、5.10E+04となり、殺菌性能が低下することが確認された。
【0050】
以上の結果より、波長265nm~285nmの深紫外線照射によりレジオネラ菌を殺菌できること、光出力を1.5mW以上とし、DUV-LEDユニットからの距離が30cm未満、特に20cm以下ではレジオネラ菌を効果的に殺菌できること、光出力を1.5mWから3.5mWに増大しても、距離が30cm未満の殺菌効果はほぼ変わらないこと、波長265nm~285nmの深紫外線照射においてDUV-LEDユニットからの距離が30cm以上ではレジオネラ菌の殺菌効果が大幅に低下すること、光出力を1.5mWから3.5mWに増大しても、距離が30cm以上では殺菌効果はほぼ変わらないことが確認された。
【0051】
従って、DUV-LEDユニットから波長265nm~285nmの深紫外線を、1.5mW以上の光出力で、DUV-LEDユニットからの距離が30cm未満となるように一定時間照射することで、レジオネラ菌を効果的に殺菌できる。
【0052】
なお、一般に、260nm~290nm付近の深紫外線であればレジオネラ菌の殺菌に効果があるが、短波長ほど作製することが困難であって効率も低下するため、比較的波長の長い270nm~290nmとし得る。
【0053】
また、DUV-LEDユニットからの距離が30cm未満、例えば20cmでもレジオネラ菌を十分殺菌し得るため、例えば特定の流路管に沿って水を流し、この水に至近距離から深紫外線を照射する等の複雑な構造は不要であり、給水タンク内にDUV-LEDユニットを一定間隔で格子状に3次元配置し、給水タンク内の任意の1点を中心として半径30cmの球内に少なくとも1つのDUV-LEDユニットを配置して照射するようにすればよく、設計の自由度が確保され得る。簡易的には、隣接するDUV-LEDユニット間の間隔が30cm未満となるように格子状に配置する構成であるが、必ずしもこれに限定されない。
【0054】
また、本実施形態では、深紫外線殺菌装置10を給水タンク内に設置する場合について説明したが、ビルの給水塔以外にも、ビルの空調用の冷却塔のタンク内に設置してもよい。これら給水タンクに設置する場合、例えばタイマで1日に30分間から1時間程度、DUV-LEDユニットを駆動して深紫外線を照射し、レジオネラ菌を殺菌すればよい。
また、本実施形態では、DUV-LEDユニットとして
図2に示すような形状としたが、円筒状のDUV-LEDユニットを格子状に3次元配置してもよい。
さらに、本実施形態において、給水タンク内において深紫外線殺菌装置10を一定方向に往復運動、あるいは回転運動させてもよい。例えば、
図2BにおいてZ軸方向に往復駆動する、あるいは
図7において中心バー40の回りに回転駆動する等である。
10 深紫外線殺菌装置、12,13,14,15,16,17 バー、120a,120b,130a,130b,140a,140b,150a,150b DUV-LEDユニット。