(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022076661
(43)【公開日】2022-05-20
(54)【発明の名称】救命胴衣
(51)【国際特許分類】
B63C 9/125 20060101AFI20220513BHJP
B63C 9/13 20060101ALI20220513BHJP
【FI】
B63C9/125 100
B63C9/13 300
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020187149
(22)【出願日】2020-11-10
(71)【出願人】
【識別番号】000002495
【氏名又は名称】グローブライド株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】390019301
【氏名又は名称】高階救命器具株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】平井 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】亀井 祐樹
(57)【要約】
【課題】浮袋体が膨張状態となる緊急時に、浮袋体が装着者にとって適切な位置において膨張すると共に、浮袋体が収縮状態である平常時に、カバー体が装着者にとって邪魔になり難い位置となるように装着することができる救命胴衣の実現
【解決手段】救命胴衣1は、装着体10と、浮袋体20と、第1固定部31と浮袋体20に固定された第2固定部32とを備える連結体30と、装着体10に固定された第3固定部41を備え浮袋体20を収納するカバー体40と、を備え、第1固定部31と第2固定部32とは、連結体30における連結距離だけ離れた位置に配置され、装着体10は、連結体固定部11と、カバー体固定部12と、を有し、連結体固定部11とカバー体固定部12とが、装着体10における巻き付け方向Xの異なる位置に配置され、連結体固定部11とカバー体40との間隔が連結距離以下である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
装着者の身体の対象部位に巻きつけて装着される装着体と、
内部に気体が供給されることによって、収縮状態から膨張状態に変化する浮袋体と、
前記装着体に固定された第1固定部と前記浮袋体に固定された第2固定部とを備え、前記装着体と前記浮袋体とを連結する連結体と、
前記装着体に固定された第3固定部を備え、前記収縮状態の前記浮袋体を収納するカバー体と、を備え、
前記第1固定部と前記第2固定部とは、前記連結体における連結距離だけ離れた位置に配置され、
前記装着体は、前記第1固定部が固定された連結体固定部と、前記第3固定部が固定されたカバー体固定部と、を有し、
前記装着体が前記対象部位に巻き付けられる方向を巻き付け方向として、
前記連結体固定部と前記カバー体固定部とが、前記装着体における前記巻き付け方向の異なる位置に配置され、前記連結体固定部と前記カバー体との間隔が前記連結距離以下である、救命胴衣。
【請求項2】
前記連結体を前記巻き付け方向に沿わせた状態で前記装着体に保持させる保持部材と、前記保持部材による保持を解除する保持解除機構と、を更に備える、請求項1に記載の救命胴衣。
【請求項3】
前記装着体が前記対象部位に装着された状態において、前記連結体固定部が、前記カバー体固定部よりも、前記装着者の身体の正面における幅方向中央側に位置するように、前記装着体における前記連結体固定部及び前記カバー体固定部の位置が設定されている、請求項1又は2に記載の救命胴衣。
【請求項4】
着水を検知して前記浮袋体の内部に気体を自動的に供給する気体供給装置を更に備え、
前記カバー体は、前記浮袋体の前記収縮状態から前記膨張状態への変化に伴って前記浮袋体を外部に放出する放出口を備える、請求項1から3のいずれか一項に記載の救命胴衣。
【請求項5】
前記浮袋体は、前記膨張状態において前記装着者の身体に装着されるように構成されているとともに、1つの不連続箇所を有する環状に形成されており、前記不連続箇所を連結する連結具を備えている、請求項1から4のいずれか一項に記載の救命胴衣。
【請求項6】
前記対象部位は、前記装着者の腰部又は胴部であり、
前記装着体は、帯状に形成されて前記対象部位に巻き付けられる本体部と、前記対象部位に巻き付けられた前記本体部の会合部分を互いに連結し、及び、その連結を解除するバックルと、を備え、
前記装着体が前記対象部位に装着された状態において、前記カバー体固定部が、前記装着者の身体の側面又は背面に配置され、前記連結体固定部が、前記装着者の身体の正面であって前記バックルと前記カバー体固定部との間に配置されている、請求項1から5のいずれか一項に記載の救命胴衣。
【請求項7】
前記対象部位は、前記装着者の左右の肩部であり、
前記装着体は、帯状に形成された一対の肩ベルト部を備え、
一対の前記肩ベルト部が前記対象部位に装着された状態において、前記カバー体固定部が前記装着者の身体の背面に配置され、前記連結体固定部が前記装着者の身体の正面に配置されている、請求項1から5のいずれか一項に記載の救命胴衣。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、装着者の身体の対象部位に巻きつけて装着される装着体と、内部に気体が供給されることによって収縮状態から膨張状態に変化する浮袋体とを備えた救命胴衣に関する。
【背景技術】
【0002】
このような救命胴衣の一例が、特許第3508930号公報(特許文献1)に開示されている。以下、背景技術の説明において括弧内に示された各部の名称及び符号は、特許文献1のものである。
【0003】
特許文献1の救命胴衣は、浮袋体(ライフジャケット3)が収縮状態である平常時には、収縮状態の浮袋体が折り畳まれて、カバー体(ウエストポーチ4)に収納される構成となっている。そして、カバー体(ウエストポーチ4)は、装着体(ウエストベルト5)に取り付けられており、浮袋体(ライフジャケット3)は、連結体(連結ベルト13)によって、カバー体(ウエストポーチ4)の内部において装着体(ウエストベルト5)と連結されている。そして、装着者が水中に落下した場合のような緊急時には、気体供給装置(ガスボンベ2)から供給される気体によって、浮袋体(ライフジャケット3)が膨張する。この際、浮袋体(ライフジャケット3)がウエストポーチ(4)から放出されて展開するため、装着者は、膨張状態の浮袋体(ライフジャケット3)を装着し、身体を水中で浮遊させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような救命胴衣では、緊急時に、膨張した浮袋体(ライフジャケット3)が装着者の体の前方に放出されることが望ましい。そのため、特許文献1の段落0020に記載されているように、通常は、カバー体(ウエストポーチ4)が装着者の身体の正面(前面)に位置するように、装着体(ウエストベルト5)が装着される。しかしながら、平常時においては、カバー体(ウエストポーチ4)が装着者の身体の正面(前面)に位置していると、様々な作業を行う場合に邪魔になることがあった。
【0006】
つまり、特許文献1に記載されたような救命胴衣では、浮袋体(ライフジャケット3)が膨張して放出されることが望ましい位置に合わせてカバー体(ウエストポーチ4)を位置させるように、装着者が装着体(ウエストベルト5)を装着する必要があった。そのため、平常時においては、カバー体(ウエストポーチ4)が装着者にとって邪魔になる場合があるという問題があった。
【0007】
そこで、浮袋体が膨張状態となる緊急時に、浮袋体が装着者にとって適切な位置において膨張すると共に、浮袋体が収縮状態である平常時に、カバー体が装着者にとって邪魔になり難い位置となるように装着することができる救命胴衣の実現が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記に鑑みた救命胴衣の特徴構成は、装着者の身体の対象部位に巻きつけて装着される装着体と、内部に気体が供給されることによって、収縮状態から膨張状態に変化する浮袋体と、前記装着体に固定された第1固定部と前記浮袋体に固定された第2固定部とを備え、前記装着体と前記浮袋体とを連結する連結体と、前記装着体に固定された第3固定部を備え、前記収縮状態の前記浮袋体を収納するカバー体と、を備え、前記第1固定部と前記第2固定部とは、前記連結体における連結距離だけ離れた位置に配置され、前記装着体は、前記第1固定部が固定された連結体固定部と、前記第3固定部が固定されたカバー体固定部と、を有し、前記装着体が前記対象部位に巻き付けられる方向を巻き付け方向として、前記連結体固定部と前記カバー体固定部とが、前記装着体における前記巻き付け方向の異なる位置に配置され、前記連結体固定部と前記カバー体との間隔が前記連結距離以下であるように構成されている点にある。
【0009】
この構成によれば、前記連結体固定部と前記カバー体固定部とが、前記装着体における前記巻き付け方向の異なる位置に配置されているため、連結体固定部とカバー体とを装着者の対象部位の異なる位置に配置させることができる。また、装着体に固定された第1固定部と浮袋体に固定された第2固定部とが、連結体における連結距離だけ離れた位置に配置され、連結体固定部とカバー体との間隔が連結距離以下であるため、連結体固定部から離れた位置にあるカバー体固定部に固定されたカバー体に、収縮状態の浮袋体を適切に収納することができる。
【0010】
そして、この構成によれば、浮袋体が膨張状態となってカバー体から外に出た場合には、装着者に対する浮袋体の位置は、カバー体(カバー体固定部)の位置ではなく、連結体固定部の位置によって定まる。すなわち、カバー体(カバー体固定部)の位置と、膨張状態の浮袋体の位置とを異ならせることができる。従って、浮袋体が膨張状態となる緊急時に、浮袋体が装着者にとって適切な位置において膨張するようにしつつ、それとは異なる位置にカバー体を配置することができるため、浮袋体が収縮状態である平常時に、カバー体が装着者にとって邪魔になり難い位置となるように、救命胴衣を装着することが可能となる。
【0011】
本開示に係る技術のさらなる特徴と利点は、図面を参照して記述する以下の例示的かつ非限定的な実施形態の説明によってより明確になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】第1の実施形態に係る救命胴衣における、膨張状態の浮袋体がカバー体から外部に放出された状態の斜視図
【
図2】第1の実施形態に係る救命胴衣における、収縮状態の浮袋体がカバー体に収納された状態の斜視図
【
図3】第1の実施形態に係る救命胴衣における、装着体の及び保持部材を拡大した平面図
【
図4】第1の実施形態に係る救命胴衣における、連結体を拡大した平面図
【
図5】第2の実施形態に係る救命胴衣における、収縮状態の浮袋体がカバー体に収納された状態の斜視図
【
図6】第2の実施形態に係る救命胴衣における、膨張状態の浮袋体がカバー体から外部に放出された状態の斜視図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、救命胴衣の実施形態について図面に基づいて説明する。
【0014】
1.第1の実施形態
図1及び
図2は、第1の実施形態に係る救命胴衣1の斜視図である。これらの図に示すように、この救命胴衣1は、主要な構成として、装着体10と、浮袋体20と、連結体30と、カバー体40とを備えている。また、本実施形態では、この救命胴衣1は、更に、保持部材50と、保持解除機構55と、気体供給装置60とを備えている。
【0015】
なお、以下の説明において「巻き付け方向X」とは、装着体10が対象部位Oに巻き付けられる方向、より詳細には、装着体10が対象部位Oの周囲に沿って巻き付けられる場合に当該装着体10が延在する方向である。
【0016】
1-1.装着体
装着体10は、装着者Pの身体の対象部位Oに巻きつけて装着される部材である。ここで、装着体10は、対象部位Oに対して着脱自在に構成されている。対象部位Oとは、装着者Pの身体における、装着体10を巻きつける部位を指す。装着体10は、装着者Pの身体に装着することによって救命胴衣1を身体に保持させるための部材である。本実施形態では、
図1及び
図2に示すように、対象部位Oは腰部O1であり、装着体10は、腰回りに装着されるベルトである。装着体10は、連結体固定部11とカバー体固定部12とを有している。また、本実施形態では、装着体10は、本体部13とバックル15と保持部材固定部16とを更に有している。
【0017】
図1及び
図2に示すように、本体部13は帯状に形成されて対象部位Oに巻きつけられる部分である。また、バックル15は、対象部位Oに巻きつけられた本体部13の会合部分を互いに連結し、及び、解除する部材である。装着体10の本体部13は、バックル15の連結及び解除操作により、対象部位Oに対して着脱自在である。本体部13における「会合部分」とは、本体部13が対象部位Oを1周して同じ位置となる部分をいう。ここで、「会合部分」に関して、「同じ位置となる部分」とは、対象部位Oを1周した本体部13が互いに重なる部分の他、対象部位Oを1周した本体部13の先端同士が対向する部分も含まれる。このような会合部分で本体部13を連結することにより、装着体10を環状にすることができる。そして、対象部位Oを1周した本体部13を環状にすることで、本体部13は対象部位Oに適切に装着される。本実施形態では、本体部13は対象部位O(ここでは、腰回り)に巻きつけられる帯状部材である。また本例では、バックル15は、互いに着脱可能な雌バックル部15aと雄バックル部15bとを備えている。雌バックル部15aは本体部13の一端に固定されている。雄バックル部15bは、後述するカバー体40をはさんで、巻き付け方向Xにおいて雌バックル部15aとは反対側に配置されている。本例においては、雄バックル部15bは、本体部13のベルトの長さを調節する、第1調節機構17を有している。具体的には、第1調節機構17は、本体部13に対する雄バックル部15bの係止位置を、本体部13の延在方向に沿って移動できるようにする機構となっている。装着者Pは、本体部13を自身の対象部位Oに巻き、雌バックル部15aと雄バックル部15bとを互いに係合させ、第1調節機構17により雄バックル部15bが会合部分に位置するように本体部13に対する係止位置を移動させる。これにより、本体部13のベルトの長さを、装着者Pの対象部位Oの周囲長に合わせて調節することができる。このようにして、装着者Pは対象部位Oに装着体10を適切に装着することができる。
【0018】
連結体固定部11は、後述する連結体30の第1固定部31が固定された部位である。すなわち、連結体固定部11は、装着体10における、連結体30を固定するための部位である。また、連結体固定部11は、装着体10における、連結体30を介して浮袋体20が連結される部位でもある。従って、膨張状態の浮袋体20がカバー体40から外部に放出された状態では、連結体固定部11は、装着体10における浮袋体20が連結された部位、すなわち、装着者Pの身体における浮袋体20が連結された部位となる。
図1及び
図3に示すように、連結体固定部11は、本体部13の表側(装着時に身体に接する面とは反対側の面)に設けられており、連結体30の第1固定部31が重ね合わされた状態で固定されている。本実施形態では、
図1及び
図3に示すように、連結体固定部11は、第1連結体固定部11aと第2連結体固定部11bとを有している。第1連結体固定部11aと第2連結体固定部11bとは、本体部13の巻き付け方向Xに並んで配置されている。第1連結体固定部11aと第2連結体固定部11bとには、それぞれに対応する第1固定部31が重ね合わされて固定されている。本例では、第1連結体固定部11a及び第2連結体固定部11bのそれぞれと、第1固定部31とは、縫合によって固定されている。
【0019】
カバー体固定部12は、後述するカバー体40の第3固定部41が固定された部位である。すなわち、カバー体固定部12は、装着体10における、カバー体40を固定するための部位である。
図1及び
図3に示すように、本実施形態では、カバー体40は、カバー体固定部12を覆うように固定されている。カバー体固定部12は装着体10の本体部13の表側に設けられている。カバー体固定部12とカバー体40とは、互いに重ね合わされて固定されている。本例では、カバー体固定部12とカバー体40とは、縫合によって固定されている。カバー体固定部12の大きさは、カバー体40と装着体10の重複部分の大きさに合わせて設定されると好適である。本例では、カバー体固定部12が、カバー体40と装着体10の重複部分の巻き付け方向Xの寸法と、装着体10の本体部13の幅方向(帯状面に沿って巻き付け方向Xに直交する方向)の寸法とに応じた大きさの矩形状に設けられている。これにより、カバー体40が装着体10に適切に固定されている。
【0020】
図3に示すように、連結体固定部11とカバー体固定部12とが、装着体10における巻き付け方向Xの異なる位置に配置されている。本例では、連結体固定部11(第1連結体固定部11a,第2連結体固定部11b)とカバー体固定部12とが、巻き付け方向Xに互いに間隔を空けて配置されている。これにより、装着体10の連結体固定部11とカバー体固定部12に固定されたカバー体40との間にも、間隔L(
図3参照)が形成されている。このように構成することで、装着者Pが装着体10を装着した状態において、カバー体40の装着体10に対する固定位置と、連結体30が装着体10に固定された位置とを異ならせることができる。ここで、浮袋体20が膨張状態となってカバー体40から外に出た場合には、装着者Pに対する浮袋体20の位置は、カバー体40の位置ではなく、連結体固定部11の位置によって定まる。よって、この構成によれば、カバー体40の位置と、カバー体40から放出された状態の浮袋体20の位置とを、異ならせることができる。本実施形態では、
図3に示すように、巻き付け方向Xにおいて、雌バックル部15aの側から、第1連結体固定部11a,第2連結体固定部11b,カバー体固定部12の順で本体部13に配置されている。また、本例では、第2連結体固定部11bとカバー体固定部12との間に、保持部材固定部16が配置されている。
【0021】
本実施形態では、装着体10が対象部位Oに装着された状態において、連結体固定部11が、カバー体固定部12よりも、装着者Pの身体の正面における幅方向中央側に位置するように、装着体10における連結体固定部11及びカバー体固定部12の位置が設定されている。このように設定すれば、装着体10が対象部位Oに装着された状態において、カバー体固定部12は、連結体固定部11よりも装着者Pの身体の正面における幅方向中央から離れた位置に配置される。一般的に、装着者Pがベルトを身体(例えば腰回り)に巻き付ける場合、当該ベルトのバックル等の留め具が身体の正面に近い位置となるように装着することが多い。そこで、本実施形態では、装着体10が対象部位Oに装着された状態で、バックル15が装着者Pの身体の正面における幅方向中央領域に配置されるものとして、各部の配置を設定している。具体的には、
図1に示すように、バックル15が装着者Pの身体の側面より正面側に位置するように装着体10を装着した場合に、連結体固定部11(第1連結体固定部11a,第2連結体固定部11b)が、カバー体固定部12よりも、装着者Pの身体の正面における幅方向中央側に配置されるように、連結体固定部11とカバー体固定部12との配置が設定されている。
【0022】
更に具体的には、本例では、装着体10が対象部位O(ここでは、腰部O1)に装着された状態において、カバー体固定部12が、装着者Pの身体の側面に配置され、連結体固定部11が、装着者Pの身体の正面であってバックル15とカバー体固定部12との間に配置されている。図示の例では、カバー体固定部12が、装着者Pの腰部O1の側面(体側部)に配置されるように、雌バックル部15aから巻き付け方向Xに離間して配置されている。また、本例では、連結体固定部11は、雌バックル部15aと保持部材固定部16との間に設けられ、装着体10を装着した場合に、身体の正面に位置するよう配置されている。従って、浮袋体20が収縮状態である平常時においては、装着者Pによって邪魔になりにくい腰部O1の側面に配置されたカバー体40に浮袋体20を収納することができ、緊急時においては、装着者Pの身体の正面において浮袋体20を膨張させることができる。
【0023】
保持部材固定部16は、装着体10の本体部13における、後述する保持部材50を装着体10に固定するための部位である。本実施形態では、
図3に示すように、保持部材固定部16は、第1保持部材固定部16aと、第2保持部材固定部16bとを有している。第1保持部材固定部16aと第2保持部材固定部16bとは、本体部13の巻き付け方向Xに並んで配置されている。また、本例では、第1保持部材固定部16aと第2保持部材固定部16bとは、巻き付け方向Xにおける、第2連結体固定部11bとカバー体固定部12との間に配置されている。
【0024】
1-2.浮袋体
浮袋体20は、密閉された袋体であり、内部に気体が供給されることによって、収縮状態から膨張状態に変化する。浮袋体20は、内部に気体が入っていない収縮状態ではシート状になる。従って、
図2に示すように、浮袋体20は、収縮状態では折り畳まれてカバー体40に収納することができる。また、浮袋体20は、内部に気体が充填された膨張状態では、水面上又は水中で装着者Pの身体を浮かせるフロートになる。
図1に示すように、浮袋体20は、膨張状態ではカバー体40から飛び出して外部に露出する。
【0025】
図1に示すように、浮袋体20は、膨張状態において装着者Pの身体に装着されるように構成されている。ここでは、浮袋体20は、1つの不連続箇所28を有する環状に形成されている。更に本実施形態では、浮袋体20は、不連続箇所28を連結する連結具21を有している。また、浮袋体20は、連結体30に固定される部位である浮袋体固定部26を有する。ここで、「環状」とは、浮袋体20が空隙を囲むように配置される形状であれば、様々な形状を含む意図である。従って、
図1に示したようなU字状の他、角ばったU字状(コの字状)、V字状、円環形状、多角形環状等、様々な形状が含まれる。本例では、浮袋体20は、膨張状態において、装着者Pの首の後ろ側から両胸の前側にかけて延在するように装着されることを想定している。そのため、浮袋体20は、膨張状態において装着者Pの一方の腕側に配置される第1浮袋部24と、装着者Pの他方の腕側に配置される第2浮袋部25と、装着者Pの首の後ろ側に配置される第3浮袋部27とを有している。第1浮袋部24と第2浮袋部25とは第3浮袋部27を介して接続され、互いに連続している。一方、第1浮袋部24と第2浮袋部25とは、装着者Pの胸側において不連続となっている。装着者Pは、この不連続箇所28を通して首部を浮袋体20の内側へ挿入することで、浮袋体20を容易に装着することができる。
【0026】
連結具21は、浮袋体20の不連続箇所28を連結する部材である。そのため、
図1に示すように、連結具21は、浮袋体20の不連続箇所28に対応する位置に配置されている。本実施形態では、連結具21は、浮袋体20における装着者Pの胸部に対応する領域に配置されている。また、連結具21は、第1浮袋部24における第2浮袋部25に対向する部分と、第2浮袋部25における第1浮袋部24に対向する部分とに分かれて設けられ、これらの部分を互いに連結し、及び、当該連結を解除することができるように構成されている。本実施形態では、
図1に示すように、連結具21は、第2雌バックル21aと第2雄バックル22bとを有している。そして、第2雌バックル21aと第2雄バックル22bとのいずれか一方が、第1浮袋部24に取り付けられ、他方が第2浮袋部25に取り付けられる。図示の例では、第2雌バックル21aが第1浮袋部24に取り付けられ、第2雄バックル22bが第2浮袋部25に取り付けられている。
【0027】
浮袋体固定部26は、後述する連結体30の第2固定部32が固定された部位である。すなわち、浮袋体固定部26は、浮袋体20を連結体30に固定するための部位である。本実施形態では、浮袋体固定部26は第1浮袋体固定部26aと第2浮袋体固定部26bとを有している。本例では、
図1に示すように、第1浮袋体固定部26aは、第1浮袋部24における第2浮袋部25に対向する側の縁に沿って設けられている。第2浮袋体固定部26bは、第2浮袋部25における第1浮袋部24に対向する側の縁に沿って設けられている。
【0028】
1-3.連結体
連結体30は、装着体10に固定された第1固定部31と浮袋体20に固定された第2固定部32とを備え、装着体10と浮袋体20とを連結している。本実施形態では、更に、連結体30は第2調節機構35を備えている。連結体30は、浮袋体20が膨張状態となる水中又は水面での緊急時において、浮袋体20が装着者Pの手が届かない位置に移動しないように、浮袋体20を装着体10に繋ぎ留める機能を果たす。本実施形態では、
図1に示すように連結体30は帯状に形成されており、装着体10とは別部材である。また本例では、連結体30は、第1連結ベルト33と第2連結ベルト34とを備えている。第1連結ベルト33は、装着体10の第1連結体固定部11aと浮袋体20の第1浮袋体固定部26a(第1浮袋部24)とを連結している。第2連結ベルト34は、装着体10の第2連結体固定部11bと浮袋体20の第2浮袋体固定部26b(第2浮袋部25)とを連結している。
【0029】
本実施形態では、第1固定部31は、第1連結ベルト33と第2連結ベルト34とのそれぞれにおける長手方向の一端部に設けられている。上記のとおり、本実施形態では、第1連結ベルト33の第1固定部31と、装着体10の第1連結体固定部11aとが重ね合わされて固定されている。また、第2連結ベルト34の第1固定部31と、装着体10の第2連結体固定部11bとが重ね合わされて固定されている。本例では、これらの固定は、縫合によって行われている。
【0030】
本実施形態では、第2固定部32は、第1連結ベルト33と第2連結ベルト34とのそれぞれにおける、第1固定部31とは反対側の端部に設けられている。ここで、第1連結ベルト33の第2固定部32と、浮袋体20の第1浮袋体固定部26aとが重ね合わされて固定されている。また、第2連結ベルト34の第2固定部32と、浮袋体20の第2浮袋体固定部26bとが重ね合わされて固定されている。本例では、第1連結ベルト33の第2固定部32と第1浮袋体固定部26aとは、縫合によって固定されている。また、第2連結ベルト34の第2固定部32と第2浮袋体固定部26bとも、縫合によって固定されている。
【0031】
連結体30の第2調節機構35は、連結体30による連結距離Rを調整する機構である。具体的には、第2調節機構35は、装着体10に固定された第1固定部31と浮袋体20に固定された第2固定部32との間の連結体30による連結距離Rを調整する。本実施形態では、第2調節機構35は、第1連結ベルト33と第2連結ベルト34とのそれぞれに設けられている。この第2調節機構35を備えることにより、装着者Pは救命胴衣1を装着する場合において、自身の体格等に応じて装着体10に対して適切な位置に浮袋体20が位置するように、連結距離Rの長さを調整することができる。本例では、第2調節機構35は、連結体30(ここでは、第1連結ベルト33及び第2連結ベルト34のそれぞれ)の長さ調節を行うことができるバックルを備えている。このバックルとしては、公知の各種構成のものを利用することができる。
【0032】
図4に示すように、第1固定部31と第2固定部32とは、連結体30における連結距離Rだけ離れた位置に配置されている。連結距離Rは、第1固定部31と第2固定部32との間の連結体30に沿った距離を示している。すなわち、連結体30(ここでは、第1連結ベルト33及び第2連結ベルト34のそれぞれ)は可撓性を有する帯状部材であるため、連結体30の曲げやたわみの状態に応じて第1固定部31と第2固定部32との間の距離(直線距離)は変化する。しかし、「連結距離R」は、このような連結体30の曲げやたわみの状態に関係なく、連結体30の長さによって定まる距離である。
図4に示すように、連結体30を直線状に伸ばした状態で計測した第1固定部31と第2固定部32との間の距離は、連結距離Rと一致する。なお、本例では、上記のように、連結体30は第2調節機構35を備えている。従って、本例における連結距離Rは、当該第2調節機構35による調整可能範囲内で変化する距離となっている。
【0033】
図3に示すように、上記のとおり、連結体固定部11(第1連結体固定部11a,第2連結体固定部11b)とカバー体固定部12とは、巻き付け方向Xに互いに間隔を空けて配置されており、装着体10の連結体固定部11とカバー体固定部12に固定されたカバー体40との間にも、間隔Lが形成されている。そして、この装着体10の連結体固定部11とカバー体40との間隔Lは、連結距離R以下となるように設定されている(R≧L)。ここで、間隔Lは、装着体10における、連結体固定部11とカバー体40との間に挟まれた領域の巻き付け方向Xの距離である。本例では、連結体固定部11として、第1連結体固定部11aと第2連結体固定部11bとが設けられている。よって、間隔Lは、第1連結体固定部11aと第2連結体固定部11bとのうちのカバー体40に近い側である第2連結体固定部11bと、カバー体40との間の距離である。このように、本構成によれば、連結体固定部11とカバー体40との間隔Lが、連結体30による装着体10に固定された第1固定部31と浮袋体20に固定された第2固定部32との連結距離R以下となっている。これにより、連結体固定部11に固定された連結体30を、装着体10に沿って巻き付け方向Xに延在させて、カバー体固定部12に固定されたカバー体40の位置に浮袋体20を配置することができる。従って、連結体固定部11から離れた位置にあるカバー体40に、収縮状態の浮袋体20を適切に収納することができる。
【0034】
1-4.カバー体
図1~
図3に示すように、カバー体40は、装着体10に固定された第3固定部41を備え、収縮状態の浮袋体20を収納する。本実施形態では、カバー体40は、収縮状態で折り畳んだ浮袋体20を収納できる容積を備えたバッグ状に形成されている。本例では、
図3に示すように、縦長のウエストポーチ状に形成されている。
図1及び
図2に示すように、本実施形態では、カバー体40は、装着体10を対象部位O(腰部O1)に装着した状態で、装着者Pの身体の左右いずれかの腰部側面に配置されるように、カバー体固定部12の位置が設定されている。従って、カバー体40が装着者Pの身体の正面に配置される場合に比べて、装着者Pの動作の妨げになり難いようにすることができる。
【0035】
また、
図2に示すように、カバー体40は、浮袋体20の収縮状態から膨張状態への変化に伴って浮袋体20を外部に放出する放出口43を備えている。本実施形態では、カバー体40の外周部の一部に開口部が設けられており、当該開口部が放出口43となっている。本例では、放出口43は、スリット状の開口部とされている。また、本実施形態では、放出口43に、当該放出口43を閉塞するためのファスナ42(留め具)が設けられている。このファスナ42を備えることにより、浮袋体20を外部に放出するとき以外には、放出口43を閉塞し、カバー体40の中に浮袋体20を適切に収納しておくことができるようになっている。また、ファスナ42は、浮袋体20が収縮状態から膨張状態に変化する際の当該浮袋体20から受ける圧力によって係合が解除されるように構成されている。これにより、浮袋体20が収縮状態である平常時に、当該収縮状態の浮袋体20を折り畳んでカバー体40に収容しておいたとしても、装着者Pが水中に落下した場合のような緊急時には、膨張する浮袋体20をカバー体40から外部に放出することができる。具体的には、カバー体40に収容された浮袋体20の内部に、後述する気体供給装置60から気体が供給され、浮袋体20が膨張した場合には、当該膨張する浮袋体20の圧力によってファスナ42の係合が解除されて放出口43が開口する。これにより、膨張する浮袋体20が放出口43からカバー体40の外部に放出される。従って、緊急時にも、装着者Pは、浮袋体20を適切に利用することができる。なお、装着者Pは、ファスナ42の係合と分離とを行うことにより、放出口43の開閉を手動でも行うことができる。すなわち、カバー体40は、収縮状態の浮袋体20を出し入れ自在に構成されている。図示の例では、ファスナ42は、放出口43としてのスリット状の開口部の対向面に沿うように取り付けられた面ファスナとされている。このように、ファスナ42として、面ファスナを用いたことにより、浮袋体20の膨張に伴う放出口43の開放が適切に行われる構成とすることができる。なお、面ファスナに代えてスナップボタン等の他の係合部材を用いても良い。
【0036】
1-5.保持部材、保持解除機構
保持部材50は、連結体30を巻き付け方向Xに沿わせた状態で装着体10に保持させるための部材である。この保持部材50によって、連結体30を巻き付け方向Xに沿わせた状態で装着体10に保持させることで、収縮状態の浮袋体20がカバー体40に収納された状態において、連結体30がカバー体40の外部で弛んで垂れ下がることを抑制することができる。保持部材50は、巻き付け方向Xに沿う連結体30を装着体10と共に結束することができる部材とされると好適である。本例では、
図3に示すように、保持部材50は巻き付け方向Xに直交する方向(装着体10の幅方向)に長い帯状部材である。保持部材50は、装着体10に対し、巻き付け方向Xに直交する方向(装着体10の幅方向)の両側へ突出するように、装着体10に取り付けられている。そして、保持部材50と装着体10とは、互いに重複する部分を有するように重ね合わせて配置されており、その重複部分において互いに固定されている。本例では、保持部材50と装着体10とは、縫合によって固定されている。本実施形態では、
図3に示すように、保持部材50は、第1帯状部材51と第2帯状部材52とを備えている。これらは、巻き付け方向Xに沿って、装着体10の雌バックル部15a側から、第1帯状部材51、第2帯状部材52の順に並んで配置されている。
【0037】
図1及び
図3に示すように、保持解除機構55は、保持部材50による連結体30の保持を解除するための機構である。本実施形態では、保持解除機構55は、保持部材50の両端部を互いに係合させる係合部材を備えている。ここで、保持部材50の両端部とは、保持部材50における、装着体10に対して巻き付け方向Xに直交する方向(装着体10の幅方向)の両側へ突出した部分である。保持解除機構55を構成する係合部材として、本例では、面ファスナを用いている(
図1及び
図3参照)。なお、面ファスナに代えてスナップボタン等の他の係合部材を用いても良い。本実施形態では、保持解除機構55は、第1帯状部材51に設けられた第1解除部材55aと第2帯状部材52に設けられた第2解除部材55bとを有している。第1解除部材55aは、第1帯状部材51の両端部のそれぞれに設けられている。第2帯状部材52は、第2帯状部材52の両端部のそれぞれに設けられている。
【0038】
上述したように、第2連結体固定部11bとカバー体固定部12との巻き付け方向Xの間に、保持部材固定部16が配置されている。よって、保持部材50は、連結体固定部11とカバー体固定部12との巻き付け方向Xの間に設けられている。従って、収縮状態の浮袋体20がカバー体40に収納されている状態において、連結体30(第1連結ベルト33,第2連結ベルト34)を、装着体10の本体部13に対して巻き付け方向Xに沿わせて重ね合わせることができる。この状態で、保持部材50によって連結体30を装着体10に保持させる。ここでは、第1帯状部材51及び第2帯状部材52により、連結体30を装着体10に結束させる。具体的には、第1帯状部材51の両端部に取り付けた第1解除部材55aとしての面ファスナを係合させることで、第1帯状部材51により連結体30を包囲する。同様に、第2帯状部材52の両端部に取り付けた第2解除部材55bとしての面ファスナを係合させることで、第2帯状部材52により連結体30を包囲する。これにより、保持部材50としての第1帯状部材51及び第2帯状部材52が、連結体30を装着体10に結束させる。
【0039】
そして、浮袋体20が膨張状態となる緊急時においては、浮袋体20が膨張してカバー体40から外部に放出される勢いによって、第1解除部材55a及び第2解除部材55bのそれぞれの面ファスナの係合が解除される。これにより、連結体30の連結体固定部11を除く部分が、装着体10に対して自由に動くことができる状態となる。なお、カバー体40から手動で浮袋体20を取り出す場合においても、浮袋体20又は連結体30を連結体固定部11へ向けて引っ張ることで、保持部材50による連結体30の保持を解除することが可能である。
【0040】
1-6.気体供給装置
図1に示すように、気体供給装置60は、着水を検知して浮袋体20の内部に気体を自動的に供給する装置である。本実施形態では、気体供給装置60は、浮袋体20に取り付けられている。気体供給装置60が浮袋体20に気体を供給することにより、浮袋体20は収縮状態から膨張状態へと変化する。気体供給装置60としては、公知の各種の構成のものを使用することができる。本実施形態では、気体供給装置60は、炭酸ガス等の圧縮気体を納めたボンベ61と、浮袋体20の内部に連通する連通孔を有し、作動時にボンベ61内の気体を浮袋体20に供給する供給装置と、着水を検知して自動的に供給装置を作動させる自動作動装置と、操作紐62の操作を受けて供給装置を作動させる手動作動装置と、を有している。なお、気体供給装置60の配置は特に限定されないが、ここでは、装着者Pの動作の邪魔になり難い位置として、浮袋体20が膨張状態のとき、第2浮袋部25における、装着者Pに対向する側とは反対側となる面に気体供給装置60を配置している。また、気体供給装置60として、前記自動作動装置を備えず、操作紐62の手動操作のみによって浮袋体20を膨張させる手動式の供給装置を採用しても良い。
【0041】
また、
図1に示すように、充填量調節管8が浮袋体20に設けられている。本実施形態では、充填量調節管8は、浮袋体20の内部に連通する管8aと、管8aの先端開口部を覆うように嵌め込み可能なキャップ8bと、管8aの先端開口部付近の内部に設けられ、浮袋体20の内部へ流れる気体のみを通過させる逆止弁(図示せず)と、を有している。装着者Pは、浮袋体20の膨張の程度が足りない場合には、充填量調節管8から息を吹き込み、浮袋体20の膨張の程度が過ぎる場合には、前記逆止弁を開放する操作をして浮袋体20内の気体を放出する。これにより、装着者Pは、浮袋体20の膨張の程度を調節できる。なお、充填量調節管8の配置は、装着者Pが息を吹き込む作業を行い易い配置であれば良い。ここでは、浮袋体20が膨張状態のとき、第1浮袋部24における、装着者Pに対向する側とは反対側となる面に充填量調節管8を配置している。
【0042】
2.第2の実施形態
次に、救命胴衣1の第2の実施形態について、
図5及び
図6を用いて説明する。上記第1の実施形態では、対象部位Oが装着者Pの腰部O1であり、装着体10が装着者Pの腰回りに装着されるベルトである構成を例として説明した。一方、本実施形態に係る救命胴衣1では、対象部位Oが装着者Pの左右の肩部O2であり、装着体10が帯状に形成された一対の肩ベルト70を備える点で上記第1の実施形態とは異なる。
図5及び
図6に示すように、本実施形態に係る救命胴衣1は、装着体10の形状が、上記第1の実施形態とは異なっており、それに伴って、連結体固定部11の位置、並びに、カバー体固定部12及びカバー体40の位置も、上記第1の実施形態と異なっている。以下では、本実施形態に係る救命胴衣1について、上記第1の実施形態との相違点を中心として説明する。なお、特に説明しない点については、上記第1の実施形態と同様とする。
【0043】
本実施形態では、装着体10は、一対の肩ベルト70に加えて、腰部ベルト71と、肩部連結ベルト72とを更に備えている。一対の肩ベルト70は、対象部位Oとしての装着者Pの左右の肩部O2にそれぞれ巻き付けられて装着される。本例では、一対の肩ベルト70のそれぞれは、装着者Pの正面における腰部O1から胸、肩、背を通って装着者Pの背面の腰部O1まで延在するように配置されている。そして、一対の肩ベルト70のそれぞれの長手方向の両端部が腰部ベルト71に固定されている。腰部ベルト71は、装着者Pの腰部O1に巻き付けられた帯状部材である。腰部ベルト71には、バックル15が設けられており、腰部O1に対して着脱自在に構成されている。肩部連結ベルト72は、装着者Pの身体の幅方向に延在し、一対の肩ベルト70を互いに連結する帯状部材である。肩部連結ベルト72の両端部は、一対の肩ベルト70のそれぞれに固定されている。
【0044】
そして、本実施形態では、カバー体40が、装着者Pの身体の背面に位置するようにされている。そのため、
図5に示すように、一対の肩ベルト70が肩部O2に装着された状態において、カバー体固定部12が装着者Pの身体の背面に配置されている。そして、連結体30が固定される連結体固定部11が装着者Pの身体の正面に配置されている。このように構成することで、カバー体40を、装着者Pにとって邪魔になり難い装着者Pの背部に配置することができる。また上記のとおり、浮袋体20が膨張状態となってカバー体40から外に出た場合には、装着者Pに対する浮袋体20の位置は、カバー体40の位置ではなく、連結体固定部11の位置によって定まる。従って、連結体固定部11が装着者Pの身体の正面に配置されていることにより、浮袋体20が膨張状態となる緊急時には、浮袋体20を装着者Pの身体の正面に放出することができる。本例では、カバー体固定部12は装着者Pの身体の背面における首の後部に配置されている。より具体的には、カバー体固定部12は肩部連結ベルト72に設けられている。また、連結体固定部11は、一対の肩ベルト70のそれぞれにおける、装着者Pの身体の正面に位置する部分に設けられている。その結果、連結体固定部11は、装着体10が装着された状態において、装着者Pの胸部に左右に分かれて配置されている。保持部材50は、一対の連結体固定部11より巻き付け方向Xの上側(図面上側、装着者Pの胸から肩に向かう側)において、一対の肩ベルト70のそれぞれに設けられている。
【0045】
8.その他の実施形態
次に、救命胴衣1のその他の実施形態について説明する。
【0046】
(1)上記実施形態では、装着体10と浮袋体20とを連結する連結体30が、帯状の第1連結ベルト33と第2連結ベルト34とを有する構成を例として説明した。しかしそのような構成に限定されることなく、連結体30が1本の連結ベルト(例えば第2連結ベルト34)のみを有する構成であっても良い。或いは、連結体30が3本以上の連結ベルトを有する構成であっても良い。また、連結体30の形状は特に限定されず、ベルト状(帯状)である必要はない。従って、連結体30が、紐状の部材やワイヤ、チェーン等を用いて構成されていても良い。
【0047】
(2)上記実施形態では、保持部材50は第1帯状部材51と第2帯状部材52とを有し、保持解除機構55は第1解除部材55aと第2解除部材55bとを有する構成を例として説明した。しかしそのような構成に限定されることなく、保持部材50が帯状部材を1つのみ有する構成であってもよいし、3つ以上の帯状部材を有する構成であっても良い。或いは、救命胴衣1が、保持部材50と保持解除機構55とを備えていない構成であっても良い。
【0048】
(3)上記実施形態では、バックル15が装着者Pの身体の側面よりも正面側に位置するように装着体10を装着することによって、連結体固定部11が、カバー体固定部12よりも、装着者Pの身体の正面における幅方向中央側に位置する構成を例として説明した。しかしそのような構成には限定されない。例えばバックル15が装着者Pの身体の背面側に配置された状態で、連結体固定部11が、カバー体固定部12よりも、装着者Pの身体の正面における幅方向中央側に位置するように、装着体10における連結体固定部11及びカバー体固定部12の位置が設定されていても良い。なお、バックル15の位置に関わらず、連結体固定部11の位置は、カバー体固定部12及びカバー体40と重複しない範囲で、想定される装着体10の装着位置及び装着向きに応じて、適宜設定することが可能である。
【0049】
(4)上記実施形態では、バッグ状のカバー体40の外周部の一部に設けられたスリット状の開口部が放出口43であり、当該放出口43に面ファスナ等で構成されたファスナ42を取付けた例について説明した。しかしそのような構成には限定されず、カバー体40や放出口43の構成を、上記とは異なる構成としても良い。例えば、カバー体40を二つ折り可能なシート状部材とし、ファスナ42が、二つ折りしたシート状のカバー体40の周縁部を、当該周縁部の延在方向に沿って係合する係合部材としても良い。この場合にも、ファスナ42として面ファスナやスナップボタン等を用いることができる。そして、二つ折りしたシート状のカバー体40によって、収縮状態の浮袋体20を挟んで収容し、カバー体40の周縁部に配置されたファスナ42を係合することで、浮袋体20を適切に収納することができる。このような構成では、二つ折りしたシート状のカバー体40における、ファスナ42で係合される周縁部が、放出口43となる。このような構成であっても、浮袋体20の膨張に伴う圧力により、適切に放出口43から浮袋体20をカバー体40の外部に放出することができる。
【0050】
(5)上記実施形態では、膨張状態の浮袋体20は、1つの不連続箇所28を有する環状に形成されている構成を例として説明した。しかし、浮袋体20の構成は、これには限定されない。例えば、浮袋体20が、不連続箇所28を備えない環状に形成されていても良い。或いは、浮袋体20が、中央に空隙を備えない板状(円板状や矩形板状等)に形成されていても良い。
【0051】
(6)上記の実施形態では、対象部位Oが装着者Pの腰部O1であり、装着体10が腰回りに装着される構成を例として説明した。しかしそのような構成に限定されることなく、対象部位が装着者Pの胴部であり、装着体10は装着者Pの胴回りに装着される構成であっても良い。ここで、胴部とは、腰部O1よりも上の腹部及び胸部を含む意図である。またこれに限らず、対象部位Oは、装着者Pの身体の各部に設定することができる。例えば、装着者Pの脚部や腕部などを対象部位Oとしても良い。
【0052】
(7)上記の実施形態では、装着体10が装着者Pに装着された状態で、カバー体固定部12が、装着者Pの腰部O1の側面に配置される構成を例として説明した。しかしそのような構成に限定されることなく、カバー体固定部12が、装着者Pの腰部O1又は胴部の背面に配置された構成としても良い。なお、カバー体固定部12の位置は、連結体固定部11と重複しない範囲で、想定される装着体10の装着位置及び装着向きに応じて、適宜設定することが可能である。
【0053】
(8)なお、上述した各実施形態で開示された構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示された構成と組み合わせて適用することも可能である。その他の構成に関しても、本明細書において開示された実施形態は全ての点で単なる例示に過ぎない。従って、本開示の趣旨を逸脱しない範囲内で、適宜、種々の改変を行うことが可能である。
【0054】
〔上記実施形態の概要〕
以下、上記において説明した救命胴衣について説明する。
【0055】
上記に鑑みた救命胴衣の特徴構成は、装着者の身体の対象部位に巻きつけて装着される装着体と、内部に気体が供給されることによって、収縮状態から膨張状態に変化する浮袋体と、前記装着体に固定された第1固定部と前記浮袋体に固定された第2固定部とを備え、
前記装着体と前記浮袋体とを連結する連結体と、前記装着体に固定された第3固定部を備え、前記収縮状態の前記浮袋体を収納するカバー体と、を備え、前記第1固定部と前記第2固定部とは、前記連結体における連結距離だけ離れた位置に配置され、前記装着体は、前記第1固定部が固定された連結体固定部と、前記第3固定部が固定されたカバー体固定部と、を有し、前記装着体が前記対象部位に巻き付けられる方向を巻き付け方向として、前記連結体固定部と前記カバー体固定部とが、前記装着体における前記巻き付け方向の異なる位置に配置され、前記連結体固定部と前記カバー体との間隔が前記連結距離以下であるように構成されている点にある。
【0056】
この構成によれば、前記連結体固定部と前記カバー体固定部とが、前記装着体における前記巻き付け方向の異なる位置に配置されているため、連結体固定部とカバー体とを装着者の対象部位の異なる位置に配置させることができる。また、装着体に固定された第1固定部と浮袋体に固定された第2固定部とが、連結体における連結距離だけ離れた位置に配置され、連結体固定部とカバー体との間隔が連結距離以下であるため、連結体固定部から離れた位置にあるカバー体固定部に固定されたカバー体に、収縮状態の浮袋体を適切に収納することができる。
【0057】
そして、この構成によれば、浮袋体が膨張状態となってカバー体から外に出た場合には、装着者に対する浮袋体の位置は、カバー体(カバー体固定部)の位置ではなく、連結体固定部の位置によって定まる。すなわち、カバー体(カバー体固定部)の位置と、膨張状態の浮袋体の位置とを異ならせることができる。従って、浮袋体が膨張状態となる緊急時に、浮袋体が装着者にとって適切な位置において膨張するようにしつつ、それとは異なる位置にカバー体を配置することができるため、浮袋体が収縮状態である平常時に、カバー体が装着者にとって邪魔になり難い位置となるように、救命胴衣を装着することが可能となる。
【0058】
ここで、前記連結体を前記巻き付け方向に沿わせた状態で前記装着体に保持させる保持部材と、前記保持部材による保持を解除する保持解除機構と、を更に備えると好適である。
【0059】
本構成によれば、収縮状態の浮袋体がカバー体に収納された収納状態において、浮袋体と装着体の連結体固定部とを繋ぐ連結体が、カバー体の外部で弛んで垂れ下がることがないように、連結体を装着体に沿わせた状態で保持部材によって保持することができる。従って、カバー体の外部において弛んで垂れ下がった連結体が、装着者の動作の妨げになるようなことを回避することができる。また、本構成によれば、保持解除機構を備えているため、浮袋体が膨張してカバー体から外に出る際に、保持部材による連結体の保持を解除して、浮袋体が装着者にとって適切な位置になるようにする連結体の動きを妨げないようにすることができる。
【0060】
また、前記装着体が前記対象部位に装着された状態において、前記連結体固定部が、前記カバー体固定部よりも、前記装着者の身体の正面における幅方向中央側に位置するように、前記装着体における前記連結体固定部及び前記カバー体固定部の位置が設定されていると好適である。
【0061】
本構成によれば、装着体が対象部位に装着された状態において、カバー体固定部は、連結体固定部よりも装着者の身体の正面における幅方向中央から離れた位置に配置される。従って、浮袋体が膨張状態となる緊急時には、浮袋体が装着者の身体の正面における幅方向中央側に近い位置において膨張するようにしつつ、装着者の身体の正面における幅方向中央から離れた位置にカバー体を配置することができる。従って、浮袋体が収縮状態である平常時に、カバー体が装着者にとって邪魔になり難い位置となるようにすることが容易となっている。
【0062】
着水を検知して前記浮袋体の内部に気体を自動的に供給する気体供給装置を更に備え、
前記カバー体は、前記浮袋体の前記収縮状態から前記膨張状態への変化に伴って前記浮袋体を外部に放出する放出口を備える、と好適である。
【0063】
本構成によれば、装着者が水中に落下した際に、収縮状態の浮袋体が自動的に膨張し、カバー体の放出口から水面上に放出される。従って、装着者は、手動でカバー体から浮袋体を取り出したり、膨張させたりする必要がなく、容易に救命胴衣を使用することができる。
【0064】
前記浮袋体は、前記膨張状態において前記装着者の身体に装着されるように構成されているとともに、1つの不連続箇所を有する環状に形成されており、前記不連続箇所を連結する連結具を備えている、と好適である。
【0065】
本構成によれば、装着者は、浮袋体の不連続箇所から内側に身体を入れることができる。従って、水中で装着者が容易に浮袋体を装着することができる。また、装着者が容易に浮袋体を装着した後は、連結具によって不連続箇所を連結することにより、浮袋体の形状を安定させることができ、装着者の浮遊姿勢を安定させることも容易となる。
【0066】
前記対象部位は、前記装着者の腰部又は胴部であり、前記装着体は、帯状に形成されて前記対象部位に巻き付けられる本体部と、前記対象部位に巻き付けられた前記本体部の会合部分を互いに連結し、及び、その連結を解除するバックルと、を備え、前記装着体が前記対象部位に装着された状態において、前記カバー体固定部が、前記装着者の身体の側面又は背面に配置され、前記連結体固定部が、前記装着者の身体の正面であって前記バックルと前記カバー体固定部との間に配置されている。
と好適である。
【0067】
本構成によれば、帯状の装着体の会合部分が互いにバックルにより連結されるため、装着者の腰部又は胴部に装着体を適切に保持することができ、装着体の取り外しも容易に行うことができる。また、装着体が対象部位に装着された状態において、連結体固定部が、装着者の身体の正面であってバックルとカバー体固定部との間に配置されているため、バックル及びカバーと干渉しない位置に連結体固定部を配置できると共に、浮袋体が膨張状態となる緊急時には、浮袋体を装着者の身体の正面において膨張させることができる。従って、装着者にとって使用しやすい位置に、膨張状態の浮袋体を位置させることができる。また、装着体が対象部位に装着された状態において、カバー体が装着者の身体側面又は背面に配置されるため、浮袋体が収縮状態である平常時に、カバー体が装着者にとって邪魔になり難いようにすることができる。
【0068】
前記対象部位は、前記装着者の左右の肩部であり、前記装着体は、帯状に形成された一対の肩ベルト部を備え、一対の前記肩ベルト部が前記対象部位に装着された状態において、前記カバー体固定部が前記装着者の身体の背面に配置され、前記連結体固定部が前記装着者の身体の正面に配置されている、と好適である。
【0069】
本構成によれば、カバー体が装着者の背面に配置されるため、浮袋体が収縮状態である平常時に、カバー体が装着者にとって邪魔になり難いようにすることができる。また、連結体固定部が、装着者の身体の正面に配置されているため、浮袋体が膨張状態となる緊急時には、浮袋体を装着者の身体の正面において膨張させることができる。従って、装着者にとって使用しやすい位置に、膨張状態の浮袋体を位置させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本開示に係る技術は、装着者の身体の対象部位に巻きつけて装着される装着体と、内部に気体が供給されることによって収縮状態から膨張状態に変化する浮袋体とを備える救命胴衣に利用することができる。
【符号の説明】
【0071】
1 :救命胴衣
10 :装着体
11 :連結体固定部
12 :カバー体固定部
20 :浮袋体
30 :連結体
31 :第1固定部
32 :第2固定部
40 :カバー体
41 :第3固定部
50 :保持部材
55 :保持解除部材
60 :気体供給装置
70 :肩ベルト
O :対象部位
P :装着者
R :連結距離
X :巻き付け方向