(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022076668
(43)【公開日】2022-05-20
(54)【発明の名称】音程計算装置
(51)【国際特許分類】
G09B 15/00 20060101AFI20220513BHJP
G10G 1/04 20060101ALI20220513BHJP
【FI】
G09B15/00 B
G10G1/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020187159
(22)【出願日】2020-11-10
(71)【出願人】
【識別番号】596078005
【氏名又は名称】福田 充利
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100140914
【弁理士】
【氏名又は名称】三苫 貴織
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【弁理士】
【氏名又は名称】川上 美紀
(74)【代理人】
【識別番号】100172524
【弁理士】
【氏名又は名称】長田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】福田 充利
【テーマコード(参考)】
5D182
【Fターム(参考)】
5D182AA06
(57)【要約】
【課題】音程に関する計算結果を簡単かつ明確に表示することができ、ピアノなどの鍵盤楽器に結び付けて計算結果を容易に把握することを目的とする。
【解決手段】音程計算尺10は、白鍵部15及び黒鍵部16を含む鍵盤形状が表示された鍵盤表示部11と、鍵盤表示部11に沿って、白鍵部15と黒鍵部16のそれぞれに対して、音名や階名関する文字記号情報が等間隔に表示される結果提示部12とを備え、鍵盤表示部11と結果提示部12が互いにスライド移動可能であり、鍵盤表示部11の白鍵部15と黒鍵部16は、結果提示部12と接する端部である第1端部11aの幅がすべて同一であり、1つの黒鍵部16のみに接して配置される白鍵部15Aと、2つの黒鍵部16に接して配置される白鍵部15Bは、第2端部11bの幅が3:4の関係であり、黒鍵部16と接する隣り合う2つの白鍵部15の境界線は、黒鍵部16の幅方向中央において配置される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
隣り合う音の音程関係が半音となるように配置された白鍵部及び黒鍵部を含む鍵盤形状が表示された鍵盤表示部と、
前記鍵盤表示部に表示された前記白鍵部及び前記黒鍵部の配置方向に沿って、前記白鍵部と前記黒鍵部のそれぞれに対して、音名若しくは階名又は音程に関する文字記号情報が等間隔に表示される結果提示部と、
を備え、
前記結果提示部は前記鍵盤表示部に接しつつ、前記鍵盤表示部と前記結果提示部が互いにスライド移動可能であり、
前記鍵盤表示部の前記白鍵部と前記黒鍵部は、前記結果提示部と接する端部である第1端部の幅がすべて同一であり、
1つの前記黒鍵部のみに接して配置される前記白鍵部と、2つの前記黒鍵部に接して配置される前記白鍵部は、前記第1端部とは反対側の端部である第2端部の幅が3:4の関係であり、
前記黒鍵部と接する隣り合う2つの前記白鍵部の境界線は、前記黒鍵部の幅方向中央において配置される音程計算装置。
【請求項2】
前記鍵盤表示部は、長尺状の板材又はシート材であり、
前記結果提示部は、長尺状の板材又はシート材であって、前記鍵盤表示部に表示された前記白鍵部及び前記黒鍵部の配置方向に対して平行方向に移動可能に設置される請求項1に記載の音程計算装置。
【請求項3】
前記鍵盤表示部と前記結果提示部をディスプレイ装置に表示する表示制御部と、
ユーザーによって選択された前記結果提示部の前記文字記号情報を検出する検出部と、
を備え、
前記表示制御部は、前記検出部によって検出された前記文字記号情報を所定の位置に移動して、前記結果提示部に表示される前記文字記号情報による音階を変更する請求項1に記載の音程計算装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音程計算装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
楽器を演奏する際、選ばれた音に対して一定の音程差を加算又は減算することによって、移調、和音構成音を把握したり、倍音関係にある音を把握したりすることがある。また、音程間の差を取るため、度数を算出することがある。
【0003】
例えば、楽曲全体をそのまま一定の音程だけ異なる高さに移動する移調を行う場合、すべての音を同じ度数で移動させる。例えば、ハ長調の曲をト長調に移調する場合、すべての音を5度高くする。ある調で書かれた楽譜を他の調に移調して楽器を演奏することは、演奏に熟練するまで、多くの人が難しさを感じているのが現状である。また、移調した後の和音の構成音や音程間の倍音関係、音程間隔(度数)なども把握しづらい。
【0004】
なお、下記の特許文献1及び2で開示されているように、移調の把握や学習を比較的簡単に行えるように、平行移動可能な板材を備えるものが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開昭63-86680号公報
【特許文献2】特開2008-262139号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
例えば、移調の把握や学習に関して、従来、テキストや早見表などのツールが用いられているが、これらのツールを用いたとしても、使用者は移調の変化を容易に理解できない。また、特許文献1に記載の発明では、互いに平行移動可能な2枚の板材によって移調前後の音の関係が表示されるが、音名を表す文字や記号が表示されているだけで、ピアノなどの楽器に結び付けて把握したり習得したりすることが難しい。また、特許文献2に記載の発明では、ピアノの鍵盤が表示されており、互いに平行移動可能な2枚の板材を用いているが、具体的にどの調に変化しているのかが分かりづらい。
【0007】
上述した特許文献1又は2に記載の発明などの例に限定されず、以前より、移調の変化について初心者などに対しても把握したり習得したりしやすい教材などのツールが存在していない。また、移調前後の音名と階名の関係、移調した後の音程間隔(度数)、和音の構成音や音程間の倍音関係などを容易に理解できるものも存在していない。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、音程に関する計算結果を簡単かつ明確に表示することができ、ピアノなどの鍵盤楽器に結び付けて計算結果を容易に把握することが可能な音程計算装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の音程計算装置は以下の手段を採用する。
すなわち、本発明に係る音程計算装置は、隣り合う音の音程関係が半音となるように配置された白鍵部及び黒鍵部を含む鍵盤形状が表示された鍵盤表示部と、前記鍵盤表示部に表示された前記白鍵部及び前記黒鍵部の配置方向に沿って、前記白鍵部と前記黒鍵部のそれぞれに対して、音名又は音程に関する文字記号情報が等間隔に表示される結果提示部とを備える。前記結果提示部は前記鍵盤表示部に接しつつ、前記鍵盤表示部と前記結果提示部が互いにスライド移動可能であり、前記鍵盤表示部の前記白鍵部と前記黒鍵部は、前記結果提示部と接する端部である第1端部の幅がすべて同一であり、1つの前記黒鍵部のみに接して配置される前記白鍵部と、2つの前記黒鍵部に接して配置される前記白鍵部は、前記第1端部とは反対側の端部である第2端部の幅が3:4の関係であり、前記黒鍵部と接する隣り合う2つの前記白鍵部の境界線は、前記黒鍵部の幅方向中央において配置される。
【0010】
本発明に係る音程計算装置において、前記鍵盤表示部は、長尺状の板材又はシート材であり、前記結果提示部は、長尺状の板材又はシート材であって、前記鍵盤表示部に表示された前記白鍵部及び前記黒鍵部の配置方向に対して平行方向に移動可能に設置されてもよい。
【0011】
本発明に係る音程計算装置において、前記鍵盤表示部と前記結果提示部をディスプレイ装置に表示する表示制御部と、ユーザーによって選択された前記結果提示部の前記文字記号情報を検出する検出部とを備え、前記表示制御部は、前記検出部によって検出された前記文字記号情報を所定の位置に移動して、前記結果提示部に表示される前記文字記号情報による音階を変更してもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、音程に関する計算結果を簡単かつ明確に表示することができ、ピアノなどの鍵盤楽器に結び付けて計算結果を容易に把握することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る音程計算尺を示す平面図(a)及び正面図(b)である。
【
図2】本発明の第1実施形態に係る音程計算尺を示す平面図であり、結果提示部をスライド移動させた状態を示す。
【
図3】本発明の第1実施形態に係る音程計算尺を製作するためのシートを示す平面図である。
【
図4】本発明の第1実施形態に係る音程計算尺の鍵盤表示部を製作するためのシートを示す平面図である。
【
図5】本発明の第1実施形態に係る鍵盤表示部を示す平面図(a)及び正面図(b)である。
【
図6】本発明の第1実施形態に係る結果提示部を示す平面図(a)及び正面図(b)である。
【
図7】本発明の第1実施形態に係る音程計算尺の変形例を示す平面図である。
【
図8】本発明の第2実施形態に係る音程計算装置を示すブロック図である。
【
図9】本発明の第2実施形態に係る音程計算装置を示す平面図である。
【
図10】本発明の第2実施形態に係る音程計算装置を示す平面図であり、音階が変更された状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態に係る音程計算尺10について、
図1を用いて説明する。なお、音程計算尺10は、音程計算装置の一例である。
音程計算尺10は、
図1に示すように、鍵盤表示部11と、結果提示部12を備える。鍵盤表示部11と結果提示部12は、いずれも板材又はシート材である。板材である場合、例えば、金属製、合成樹脂製又は木製などであり、シート材である場合、例えば、合成樹脂製シート、紙、マグネットシートなどである。
図1では、音程計算尺10が紙製である場合を示している。
【0015】
鍵盤表示部11と結果提示部12は、互いに組み合わせて用いられ、結果提示部12は、鍵盤表示部11の白鍵部15及び黒鍵部16の配置方向に沿って、すなわち、白鍵部15及び黒鍵部16の幅方向に沿って、鍵盤表示部11に対して平行にスライド移動可能である。
【0016】
鍵盤表示部11は、隣り合う音の音程関係が半音となるように配置された白鍵部15及び黒鍵部16を含む鍵盤形状が表示されている。鍵盤形状は、鍵盤楽器における鍵盤に模した模様を有している。すなわち、鍵盤楽器と同様に、1オクターブの中に白鍵が7つ、黒鍵が5つ配置される。また、1オクターブの中の7つの白鍵部15のうち、1つの黒鍵部16のみに接して配置される白鍵部15Aが4つ、2つの黒鍵部16に接して配置される白鍵部15Bが3つである。隣り合う白鍵部15の境界や、白鍵部15と黒鍵部16の境界には境界線を示す直線が罫線状に表記される。
図1に示す例では、鍵盤表示部11に2オクターブ(24の半音)分の鍵盤模様が表記されている。
【0017】
鍵盤表示部11には、結果提示部12がスライド移動可能な溝部13が形成され、かつ、結果提示部12が溝部13に設置されてもよい。溝部13の長手方向は、鍵盤表示部11の白鍵部15及び黒鍵部16の配置方向に対して平行に形成されており、
図2に示すように、溝部13に沿って結果提示部12がスライドされる。溝部13によって、結果提示部12が位置ずれしたり、鍵盤表示部11から離れづらくなり、利用者は、鍵盤と音名若しくは階名又は音程の関係を安定的に参照できる。
【0018】
鍵盤表示部11は、結果提示部12と接する端部である第1端部11aと、結果提示部12と接する第1端部11aとは反対側の端部である第2端部11bを有する。
【0019】
第1端部11aには、白鍵部15と黒鍵部16の両方の端部がある。白鍵部15と黒鍵部16は、第1端部11a側の幅W1がすべて同一である。したがって、実際の楽器の場合と異なり、白鍵部15又は黒鍵部16のいずれか一方が他方に対して広くなっているのではなく、白鍵部15の第1端部11a側の幅W1と黒鍵部16の第1端部11a側の幅W1が同一である。
【0020】
第2端部11bには、黒鍵部16の端部はなく、白鍵部15の端部のみがある。これにより、利用者は、実際の鍵盤楽器を模した模様であることが簡単に分かり、鍵盤と音名若しくは階名又は音程の配置関係も把握しやすい。
【0021】
図1に示すように、白鍵部15の第2端部11b側の幅W
2,W
3について、1つの黒鍵部16のみに接して配置される白鍵部15Aの幅W
2と、2つの黒鍵部16に接して配置される白鍵部15Bの幅W
3は、1:1(幅が同一)ではなく、3:4である。したがって、白鍵部15と黒鍵部16は、第1端部11a側の幅W
1がすべて同一であることから、白鍵部15又は黒鍵部16の第1端部11a側の幅W
1と、1つの黒鍵部16のみに接して配置される白鍵部15の第2端部11b側の幅W
2と、2つの黒鍵部16に接して配置される白鍵部15の第2端部11b側の幅W
3は、2:3:4である。
【0022】
また、黒鍵部16と接する隣り合う2つの白鍵部15の境界線は、黒鍵部16の幅方向中央において鍵の長さ方向に対して平行に配置される。
【0023】
図1に示す例では、鍵盤表示部11において、黒鍵部16と白鍵部15のそれぞれには、ハ長調の音階を表す音名に関する文字(ハ,二,ホ,ヘ、ト,イ,ロ)や臨時記号(♯,♭)が表記されている。また、
図1に示す例では、黒鍵部16において、2種類の音名又は音程に関する文字記号情報が表記されている。例えば、黒鍵部16の結果提示部12側とは反対側には音名(嬰ハ/変ニ、嬰ニ/変ホ、嬰ヘ/変ト、嬰ト/変イ、嬰イ/変ロ)が表記され、黒鍵部16の結果提示部12側には1以上の臨時記号(♯,♭)が表記されている。なお、鍵盤表示部11には、音名又は音程に関する文字記号情報が表示されなくてもよい。また、黒鍵部16には、1種類の音名又は音程に関する文字記号情報が表記されてもよい。
【0024】
結果提示部12は、例えば、鍵盤表示部11の全体の長さと同一の長さを有する。結果提示部12は、鍵盤表示部11に接しつつ、鍵盤表示部11と結果提示部12が互いにスライド移動可能である。結果提示部12には、鍵盤表示部11に表示された白鍵部15及び黒鍵部16の配置方向に沿って、白鍵部15と黒鍵部16のそれぞれに対応して、音名・階名又は音程に関する文字記号情報が等間隔に配置される。すなわち、
図1に示すように、鍵盤表示部11に2オクターブ分の鍵盤模様が表記されているとき、結果提示部12には24の半音に関する音名若しくは階名又は音程に関する文字記号情報が表記される。また、結果提示部12は、1種類の音名若しくは階名又は音程に関する文字記号情報が表面側に表記されるように配置される。ただし、本発明はこの例に限定されず、2種類以上の音名若しくは階名又は音程に関する文字記号情報が表面側に表記されるように配置されてもよい。
【0025】
音名・階名又は音程に関する文字記号情報は、セル部17内に表記される。セル部17の境界には境界線を示す直線が罫線状に表記される。セル部17の幅は、鍵盤表示部11における白鍵部15又は黒鍵部16の第1端部11aの幅W1と同一である。
【0026】
鍵盤楽器において、1オクターブには12の半音が存在することから、結果提示部12では、例えば、鍵盤表示部11の1オクターブの幅と同一の幅の部分に12の音名・階名が等間隔に表記される。これにより、鍵盤表示部11の白鍵部15及び黒鍵部16の位置と、結果提示部12に表記された音名・階名又は音程に関する文字記号情報が1対1に対応する。また、結果提示部12をスライド移動させた場合も1対1の関係が維持される。
【0027】
なお、結果提示部12に表示される音名・階名又は音程に関する文字記号情報は、音名・階名の場合、幹音が日本語式、英語式、イタリア語式、中国式などのいずれでもよく、派生音は、音名・階名や、音名・階名と合わせた記号(♯,♭)が表記される。
図1に示す例では、結果提示部12において、各セル部17のそれぞれには、英語式音名・階名に関する文字(C,D,E,F,G,A,B)や臨時記号(♯,♭)が表記されている。
【0028】
文字記号情報は、音程の場合、「完全一度」、「短二度」、「二度」・・・のような度数が表記される。また、文字記号情報として、和音(コード)の要素(例えば「Root」、「♭9th」、「9th」、「Minor3rd」・・・など)、周波数、倍音の次数(「基本波」、「17倍音」、「9倍音」、「5倍音」・・・など)、1以上の臨時記号(♯,♭)、5度環などが表記されてもよい。
【0029】
なお、鍵盤表示部11においても、上述した結果提示部12に表示される文字記号情報と同様に、英語式音名に限られず、英語式、イタリア語式、中国式などの音名が表記されてもよい。また、鍵盤表示部11において、度数、和音(コード)の要素、周波数、倍音の次数などが表記されてもよい。さらに、鍵盤表示部11や結果提示部12に表記される文字記号情報は、上述した例に限定されない。したがって、音程計算尺10における鍵盤表示部11の表記と結果提示部12の表記の組み合わせは、図示した例に限られず、使用方法に応じて様々なものが可能である。
【0030】
利用者は、移調後の音階(移動させたい度数)に基づいて、結果提示部12を鍵盤表示部11に対してスライド移動させる。
図1に示す例では、例えば、鍵盤表示部11の白鍵部15及び黒鍵部16において、日本式音名(ハ,二,ホ,ヘ、ト,イ,ロ)が表記されおり、結果提示部12において英語式音名・階名(C,D,E,F,G,A,B)が表記されている場合、「ハ」が表記された鍵盤表示部11の白鍵部15に結果提示部12の「C」が表記された部分を合わせることで、ハ長調の場合の音階と鍵盤の関係を把握できる。また、ハ長調の音階が表示された状態から5度高い方向へ結果提示部12を移動させて、「ト」が表記された鍵盤表示部11の白鍵部15に結果提示部12の「C」が表記された部分を合わせることで、ト長調の場合の音階と鍵盤の関係を把握できる。
【0031】
また、鍵盤表示部11や結果提示部12に表記されている音名若しくは階名、度数、和音(コード)の要素、周波数、倍音の次数などの組み合わせに応じて、利用者は結果提示部12を鍵盤表示部11に対してスライド移動させることによって、移動後の音名・階名又は度数、和音の要素、周波数、倍音の次数などを取得することができる。
【0032】
次に、本実施形態に係る音程計算尺10が紙製であるときの製作方法について説明する。
図3に示すように、音程計算尺10を構成する鍵盤表示部11と結果提示部12は、例えば、1枚のシート1として準備される。シート1の一面側には、白鍵部15、黒鍵部16、罫線、音名若しくは階名又は音程に関する文字記号情報が印刷によって表記されている。
【0033】
そして、シート1において、鍵盤表示部11と結果提示部12を切断して、2つの部材にする。なお、
図4に示すように、鍵盤表示部11のみが一面側に表記されたシート2が準備されてもよい。シート1とシート2は、表記されている音名若しくは階名又は音程に関する文字記号情報が異なることによって、利用者は、様々な音名若しくは階名又は音程の種類について習得又は把握できる。
【0034】
鍵盤表示部11を製作するには、山折りと谷折りを行って、溝部13を形成する。これにより、
図5に示すような鍵盤表示部11が製作される。
【0035】
結果提示部12を製作するには、
図6に示すように、山折りを行って裏面同士を接合し、2面12A,12Bで音名・階名又は音程に関する文字記号情報が表記されるようにする。これにより、表記されている音名・階名又は音程に関する文字記号情報が異なることから、様々な音名・階名又は音程の種類について習得又は把握できる。
【0036】
最後に、鍵盤表示部11の溝部13内部に結果提示部12を設置して、両者を組み合わせることによって、
図1に示すように、音程計算尺10が完成される。また、鍵盤表示部11と結果提示部12の別の組合せや結果提示部12の面の向け方によって、
図7に示すように、音程計算尺10が完成される。
【0037】
次に、本実施形態に関し、白鍵部15の第2端部11b側の幅W2,W3について、1つの黒鍵部16のみに接して配置される白鍵部15Aの幅W2と、2つの黒鍵部16に接して配置される白鍵部15Bの幅W3は、3:4であり、黒鍵部16と接する隣り合う2つの白鍵部15の境界線は、黒鍵部16の幅方向中央において鍵の長さ方向に対して平行に配置される構成について説明する。
【0038】
鍵盤楽器は、1オクターブに12の半音が配置され、隣り合う音の音程関係が半音となるように白鍵部15と黒鍵部16が配置されている。そのため、
図11に示すように、3つの白鍵部15間に2つの黒鍵部16が配置されるグループG1と、4つの白鍵部15の間に3つの黒鍵部16が配置されるグループG2のように、1オクターブが2つのグループに分けられる配置となっている。したがって、結果提示部12において音名・階名等の文字記号情報を等間隔で配置しようとすると、本実施形態以外の構成としては、
図11に示す構成が考えられる。
【0039】
この場合、グループG1における3つの白鍵部15の幅wbと、グループG2における4つの白鍵部15の幅wcは、同じ幅とすることができず、異なる幅となる。すなわち、グループG1では半音が5つであり、グループG2では半音が7つである。したがって、結果提示部12側の白鍵部15と黒鍵部16の幅をwaとすると、wb=wa×5/3(=約1.67wa)であり、wc=wa×7/4(=1.75wa)である。また、黒鍵部16を間に挟む隣り合う2つの白鍵部15の境界は、黒鍵部16の幅方向の中央ではなく、中央からずれた位置になる。
【0040】
これに対して、
図1に示すように、本実施形態では、1つの黒鍵部16のみに接して配置される白鍵部15の幅W
2と、2つの黒鍵部16に接して配置される白鍵部15の幅W
3は、3:4である。したがって、白鍵部15の片側に黒鍵部16が配置されている場合と、白鍵部15の両側に黒鍵部16が配置されている場合に分けて、幅が決定されている。すなわち、白鍵部15の片側に黒鍵部16が配置されている場合は幅狭、白鍵部15の両側に黒鍵部16が配置されている場合は幅広という規則性があるため、利用者によって受け入れられやすい。
【0041】
そして、本実施形態では、wb:wc=1.67:1.75に配置されている比較例と比べて、利用者は、簡素かつ整然と配置された本実施形態に係る白鍵部15と黒鍵部16によって、白鍵部15又は黒鍵部16と音名又は音程との関係を容易に把握することができる。
【0042】
また、黒鍵部16と接する隣り合う2つの白鍵部15の境界線は、黒鍵部16の幅方向中央において鍵の長さ方向に対して平行に配置される。したがって、鍵盤表示部11の白鍵部15及び黒鍵部16に合わせて結果提示部12の音名・階名又は音程に関する文字記号情報を配置したとき、黒鍵部16と接する隣り合う2つの白鍵部15の境界線の延長線が、結果提示部12の各音名・階名又は各音程に関する文字又は記号の中心を横切る。したがって、結果提示部12を鍵盤表示部11の所定の位置に合わせやすく、白鍵部15及び黒鍵部16のそれぞれがどの音名・階名又は音程に対応しているのかが明確になる。
【0043】
さらに、
図11に示す比較例では、白鍵部15又は黒鍵部16の第1端部11aの幅w
aと、間に2つの黒鍵部16が配置される3つの白鍵部15の第2端部11bの幅wbと、間に3つの黒鍵部16が配置される4つの白鍵部15の第2端部11bの幅w
cは、12:20:21である。これに対して、本実施形態では、白鍵部15又は黒鍵部16の第1端部11aの幅W
1と、1つの黒鍵部16のみに接して配置される白鍵部15の第2端部11bの幅W
2と、2つの黒鍵部16に接して配置される白鍵部15の第2端部11bの幅W
3は、2:3:4である。したがって、本実施形態では、白鍵部15と黒鍵部16が簡単な整数比で構成されており、音程計算尺10における鍵盤表示部11及び結果提示部12を容易に製作することができる。
【0044】
以上より、1つの黒鍵部16のみに接して配置される白鍵部15の幅W2と、2つの黒鍵部16に接して配置される白鍵部15の幅W3は、3:4であり、黒鍵部16と接する隣り合う2つの白鍵部15の境界線は、黒鍵部16の幅方向中央において鍵の長さ方向に対して平行に配置される。これにより、鍵盤模様に対応して模式的に音名・階名又は音程が表示されるだけでなく、鍵盤表示部11における白鍵部15と黒鍵部16を表す境界線などの罫線が、結果提示部12における音名・階名又は音程を表す文字等の境界線などの罫線と一致することによって、白鍵部15又は黒鍵部16と音名・階名又は音程の対応関係が確実に把握される。
【0045】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態に係る音程計算装置20について、
図8~
図10を用いて説明する。
音程計算装置20は、ディスプレイ装置24を有するパーソナルコンピュータ、スマートフォン、タブレットなどの情報処理装置30において、プログラムによって実行されるものである。なお、音程計算装置20は、ブラウザ上で動作するようにしてもよいし、単独のアプリケーション上で動作するようにしてもよい。
【0046】
音程計算装置20は、
図8に示すように、表示制御部23などを含む制御部21と、検出部22などを有する。
【0047】
制御部21は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、及びコンピュータ読み取り可能な記憶媒体等から構成されている。そして、各種機能を実現するための一連の処理は、一例として、プログラムの形式で記憶媒体等に記憶されており、このプログラムをCPUがRAM等に読み出して、情報の加工・演算処理を実行することにより、各種機能が実現される。なお、プログラムは、ROMやその他の記憶媒体に予めインストールしておく形態や、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体に記憶された状態で提供される形態、有線又は無線による通信手段を介して配信される形態等が適用されてもよい。コンピュータ読み取り可能な記憶媒体とは、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、DVD-ROM、半導体メモリ等である。
【0048】
表示制御部23は、例えば
図9に示すように、鍵盤表示部31と結果提示部32をディスプレイ装置24に表示する。鍵盤表示部31と結果提示部32は、組み合わせて用いられ、結果提示部12は、鍵盤表示部11の白鍵部15及び黒鍵部16の配置方向に沿って、すなわち、白鍵部15及び黒鍵部16の幅方向に沿って表示される。結果提示部32は、鍵盤表示部31に接して表示される。また、表示制御部23によって、鍵盤表示部31と結果提示部32とのスライド移動が仮想的に実現される。
【0049】
鍵盤表示部31において表示される白鍵部15及び黒鍵部16や文字記号情報、結果提示部32において表示されるセル部17や文字記号情報は、それぞれ第1実施形態における鍵盤表示部31において表示された白鍵部15及び黒鍵部16や文字記号情報、結果提示部32において表示されたセル部17や文字記号情報と対応している。これらの構成要素に関しては、第1実施形態と第2実施形態の詳細な構成や作用効果が重複することから、詳細な説明を省略する。本実施形態の
図9では、鍵盤表示部31と結果提示部32において、それぞれ1種類の音名若しくは階名関する文字記号情報が表記される場合について図示したが、本発明はこの例に限定されず、鍵盤表示部31又は結果提示部32において、2種類以上の音名若しくは階名又は音程に関する文字記号情報が表記されてもよい。
【0050】
検出部22は、ユーザーによって選択された結果提示部32の文字記号情報を検出する。結果提示部32の文字記号情報の選択は、利用者によるマウス等の操作によってディスプレイ装置24に表示された文字等が選択される場合や、タッチパネル上の接触によってディスプレイ装置24に表示された文字等が選択される場合などがある。
【0051】
表示制御部23は、検出部22によって検出された文字記号情報を所定の位置(例えば、結果提示部32の一番上の位置、ハ長調であるときのCの白鍵部15の位置)に移動して、結果提示部32に表示される文字記号情報による音階を変更する。例えば、
図10に示す例では、結果提示部32において表示されている音名・階名Fが選択されて、選択された音名Fが検出されたとき、
図9に示した状態から、選択された音名・階名Fが結果提示部32の一番上へ移動された場合を示している。その結果、結果提示部32に表示される音階が変更される。
【0052】
なお、選択された文字や記号の移動位置は、上述した例(選択された音名・階名Fが結果提示部32の一番上へ移動される例)に限定されず、選択された文字や記号が音階の主音となる位置に移動するようにしてもよい。例えば、結果提示部32の音名・階名Gが選択されたとき、Gが主音となるト長調の音階が表示されるようにする。上述した例と異なる動作であるが、結果的に
図10に示した状態となる。すなわち、Gが表示された鍵盤表示部31の白鍵部15に対応して結果提示部32のCが表示されて、結果提示部32に表示される音階が変更される。
【0053】
第2実施形態においても、1つの黒鍵部16のみに接して配置される白鍵部15Aの幅W2と、2つの黒鍵部16に接して配置される白鍵部15Bの幅W3は、3:4であり、黒鍵部16と接する隣り合う2つの白鍵部15の境界線は、黒鍵部16の幅方向中央において鍵の長さ方向に対して平行に配置される。したがって、白鍵部15の両側に黒鍵部16が配置されている場合と、白鍵部15の片側に黒鍵部16が配置されている場合に分けて、幅が決定されている。これにより、wb:wc=1.67:1.75に配置されている比較例と比べて、利用者は、簡素かつ整然と配置された本実施形態に係る白鍵部15と黒鍵部16によって、白鍵部15又は黒鍵部16と音名・階名又は音程との関係を容易に把握することができる。
【0054】
また、本実施形態では、白鍵部15又は黒鍵部16の第1端部11aの幅W1と、1つの黒鍵部16のみに接して配置される白鍵部15の第2端部11bの幅W2と、2つの黒鍵部16に接して配置される白鍵部15の第2端部11bの幅W3は、2:3:4である。したがって、本実施形態では、白鍵部15と黒鍵部16が簡単な整数比で構成されており、音程計算装置20における鍵盤表示部31及び結果提示部32をプログラム上容易に設定することができる。
【符号の説明】
【0055】
1 :シート
2 :シート
10 :音程計算尺
11 :鍵盤表示部
11a :第1端部
11b :第2端部
12 :結果提示部
13 :溝部
15,15A,15B :白鍵部
16 :黒鍵部
17 :セル部
20 :音程計算装置
21 :制御部
22 :検出部
23 :表示制御部
24 :ディスプレイ装置
30 :情報処理装置
31 :鍵盤表示部
32 :結果提示部