IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 青島海爾洗衣机有限公司の特許一覧 ▶ ハイアールアジアインターナショナル株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-洗濯機 図1
  • 特開-洗濯機 図2
  • 特開-洗濯機 図3
  • 特開-洗濯機 図4
  • 特開-洗濯機 図5
  • 特開-洗濯機 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022076707
(43)【公開日】2022-05-20
(54)【発明の名称】洗濯機
(51)【国際特許分類】
   D06F 33/74 20200101AFI20220513BHJP
   D06F 37/42 20060101ALI20220513BHJP
【FI】
D06F33/74
D06F37/42
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020187228
(22)【出願日】2020-11-10
(71)【出願人】
【識別番号】512128645
【氏名又は名称】青島海爾洗衣机有限公司
【氏名又は名称原語表記】QINGDAO HAIER WASHING MACHINE CO.,LTD.
(71)【出願人】
【識別番号】307036856
【氏名又は名称】アクア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137486
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 雅直
(72)【発明者】
【氏名】川邉 慶久
【テーマコード(参考)】
3B165
3B167
【Fターム(参考)】
3B165AA05
3B165BA28
3B165CA01
3B165CA11
3B165CA15
3B165CB01
3B165CB31
3B165CB59
3B165DW03
3B165DW05
3B165GA02
3B165GA12
3B165GA25
3B165JM02
3B165JM03
3B167AA05
3B167AE05
3B167AE12
3B167BA28
3B167KA71
3B167KB16
3B167LA03
3B167LA04
3B167LA23
3B167LC01
3B167LG02
(57)【要約】      (修正有)
【課題】プログラムや制御部の不具合・誤動作のほか外乱ノイズによってもドアロック状態が解除されるのを防止する。
【解決手段】ドラムの回転数が予め定めた所定閾値を下回る場合にドアロック装置6Aを制御する駆動回路31の動作を許可し、且つ、上回る場合に制御部20からの操作信号に基づいた駆動回路31の動作を禁止する。安全回路50、50aは、ドラムに設けた回転センサからの回転パルスのエッジを検出するパルス検出部53と、パルス検出部53によって検出される回転パルスに基づきドラムの回転数の判定を行う回転数判定部54とを含み、回転数判定部54を、回転パルスのON、OFF時間を積分する積分回路54aと、積分回路54aの出力が所定の第1積分閾値β1を上回ったときにHigh、この第1積分閾値β1より小さい所定の第2積分閾値β2を下回ったときにLowを出力する積分ヒステリシス要素54bとを用いて構成している。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体内に配置されたドラムと、
前記筐体に開閉可能に設けられたドアをドアロック状態またはロック解除状態に切り替えるドアロック装置と、
前記ドアロック装置を制御する駆動回路に対して供給される操作信号を出力する制御部と、
前記ドラムの回転数が予め定めた所定回転数を下回ると判定される場合に前記制御部からの操作信号に基づいた前記駆動回路の動作を許可し、且つ、前記ドラムの回転数が予め定めた所定回転数を上回ると判定される場合に前記制御部からの操作信号に基づいた前記駆動回路の動作を禁止する安全回路とを備える洗濯機であって、
前記安全回路は、
前記ドラムに設けた回転センサからの回転パルスのエッジを検出するパルス検出部と、
前記パルス検出部によって検出される回転パルスに基づき前記ドラムの回転数の判定を行う回転数判定部とを含み、
前記回転数判定部を、前記回転パルスのON、OFF時間を積分する積分回路と、前記積分回路の出力が所定の第1積分閾値を上回ったときにHighを出力し、この第1積分閾値より小さい所定の第2積分閾値を下回ったときにLowを出力する積分ヒステリシス要素とを用いて構成したことを特徴とする洗濯機。
【請求項2】
前記パルス検出部を、前記回転パルスを微分する微分回路と、この微分回路の出力が所定の第1微分閾値を上回ったときにHigを出力し、この第1微分閾値より小さい所定の第2微分閾値を下回ったときにLowを出力する微分ヒステリシス要素とを用いて構成したことを特徴とする、請求項1に記載の洗濯機。
【請求項3】
前記ヒステリシス要素が、シュミットトリガ回路を用いたものである、請求項1又は2に記載の洗濯機。
【請求項4】
前記安全回路を複数備え、
前記複数の安全回路は直列に接続されており、
各安全回路は、前記駆動回路への給電ラインを共通にし、この給電ラインの断接状態を切り替える駆動電源遮断部を備え、
前記複数の安全回路の全てが許可した場合に前記給電ラインが導通して、前記制御部からの操作信号に基づいた前記駆動回路の動作を許可することを特徴とする請求項1~3の何れかに記載の洗濯機。
【請求項5】
前記安全回路が、ハードウェアによって構成されていることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の洗濯機。
【請求項6】
前記安全回路が、前記制御部とは別異の回路基板によって構成されていることを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の洗濯機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばドアの開放を阻止するためのドアロック装置を備える洗濯機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、洗濯機はドアの開放を阻止するためのドアロック装置を有するものが一般的である。ドアロック装置は、制御部からの制御信号に従ってドアのロックおよびロック解除を行う。制御部は、洗濯機の動作を制御するためのプログラムを記憶しており、そのプログラムにしたがってドアロック装置を制御する。
【0003】
従来のドアロック装置の制御について、図5に基づいて説明する。ドアロック装置106Aは、ドアを係止する係止部118の位置を係止位置及び解除位置のいずれかに切り替えるために、駆動装置としてのソレノイド118aを含む駆動回路131を有している。駆動回路131は、制御部120からの操作信号を受け付ける操作受付部151に接続される。制御部120は、操作受付部151に対して、ソレノイド118aを駆動するためのソレノイド電源PSを供給すると共に、ドアロック信号またはロック解除信号を供給する。
【0004】
よって、従来の洗濯機において、ドラムの回転数が所定回転数を上回る場合、制御部120から操作受付部151に対して、ソレノイド電源PS及びドアロック信号が供給されたときに、その操作信号に基づいて駆動回路131が動作して、ドアロック状態に切り替えられる。その後、ドラムの回転数が所定回転数を下回ると、制御部120から操作受付部151に対して、ソレノイド電源PS及びロック解除信号が供給されて、その操作信号に基づいて駆動回路131が動作して、ロック解除状態に切り替えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2018-33512号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の洗濯機では、仮に、ドアロック状態においてプログラムや制御部の不具合・誤動作により、制御部120から操作受付部151に対して、ソレノイド電源及びロック解除信号が供給された場合、ドラムの回転数が所定回転数を超えているにもかかわらず、ドアロック状態が誤って解除されてしまうことがある。
【0007】
そこで、このようなプログラムや制御部の不具合・誤動作による誤ったドアロック解除動作を防止する洗濯機として、図6に示すような安全回路101を搭載した安全基板130を採用することが有効な手段として考えられる。図6は後で本発明の比較の対象となる比較例である。
【0008】
安全回路101は制御部120から独立しており、回転センサ153aからの回転パルスの入力を検知すると、断接用トランジスタTr1がOFFとなることによって一定時間ソレノイド電源PSを遮断する機能を有する。一定時間経過後は、断接用トランジスタTr1がONになってソレノイド電源PSを通電する。しかし、回転数が上昇して断接用トランジスタTr1がONになるまでに回転センサ153aから次の回転パルスの入力を検知すると、断接用トランジスタTr1がOFFの状態を維持する。そして、これらの機能を実現するため、Dフリップフロップ111および周辺部品を使用している。
【0009】
Dフリップフロップ111は回転パルスがCK端子(ゲート3)に入ると出力端子Q(ゲート5)がON、反転出力端子Q´(ゲート6)がOFFにセットされる。Dフリップフロップ111には出力端子QがONの時間をカウントする積分部112が設けてあり、再び回転パルスが入力されるとリセット用トランジスタTr2によって積分値がリセットされる。また積分値が一定時間リセットされないとクリア用トランジスタTr3がONになり、これがDフリップフロップ111のCLR端子に入力されることで、Q´端子がリセット(ON)されて断接用トランジスタTr1がONになる。
【0010】
回転センサ153aから入力される回転パルスはドラム回転が速いと入力間隔が短く、ドラム回転が遅くなると入力間隔が長くなる。そのため、ドラム回転数が所定回転数を上回る場合、安全回路101は連続して回転パルスの入力を検知し、積分部112をリセットするため、ソレノイド電源PSを遮断し続ける。このため、ドアロック解除操作をしてもドアロック解除は禁止される。一方、ドラム回転数が所定回転数を下回る場合、回転パルスの間隔が長いため、積分部112が所定回転数に対応する積分閾値を超えたときにクリア用トランジスタTr3がONにされ、断接用トランジスタTr1がONとなって、ソレノイド電源PSが通電される。このため、ドアロック操作をすることによってドアロック解除が可能になる。
【0011】
しかしながら、このような構成を採用すると、積分部112の出力は不安定であり、動作点である積分閾値付近で電圧がふらつくと、Dフリップフロップの出力端子Qや反転出力端子Q´の出力も不安定に動作する。このため、ドラム回転数が上がっているのにDフリップフロップのQ´端子が電源断接用トランジスタTr1をターンオンし、ソレノイド電源PSを導通してドアロックが解除可能となったり、逆にドラム回転数が低いのにDフリップフロップのQ´端子が電源断接用トランジスタTr1をターンオンせず、ソレノイド電源PSが導通しないことでドアロック解除が禁止される、といった誤検出が生じ得る。
【0012】
また、回転パルスエッジの立ち上がりや立下り波形にノイズが乗ると、この回路ではダイレクトにDフリップフロップ111の出力端子QやQ´を反転させてしまう。このため、回転パルスが生じていないのにQ´端子がOFFになったり、逆に回転パルスが生じているのにQ´端子がONを維持するといった誤検出が生じることも考えられる。
【0013】
そして、Dフリップフロップ111のようなデジタル部品は外乱ノイズに対する耐性が低いため、誤検出のみならず、デジタル部品の破壊、故障などが発生する可能性がある。すなわち、安全回路101によってプログラムや制御部120の不具合・誤動作に対する安全性は向上できても、安全回路101への外乱ノイズによる影響が懸念される。
【0014】
本発明は、プログラムや制御部の不具合・誤動作のみならず、外乱ノイズによってもドアロック状態が誤って解除される事を防止できる洗濯機を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、かかる目的を達成するために、次のような手段を講じたものである。
【0016】
すなわち、本発明の洗濯機は、筐体内に配置されたドラムと、前記筐体に開閉可能に設けられたドアをドアロック状態またはロック解除状態に切り替えるドアロック装置と、前記ドアロック装置を制御する駆動回路に対して供給される操作信号を出力する制御部と、前記ドラムの回転数が予め定めた所定回転数を下回ると判定される場合に前記制御部からの操作信号に基づいた前記駆動回路の動作を許可し、且つ、前記ドラムの回転数が予め定めた所定回転数を上回ると判定される場合に前記制御部からの操作信号に基づいた前記駆動回路の動作を禁止する安全回路とを備えるものであって、前記安全回路は、前記ドラムに設けた回転センサからの回転パルスのエッジを検出するパルス検出部と、前記パルス検出部によって検出される回転パルスに基づき前記ドラムの回転数の判定を行う回転数判定部とを含み、前記回転数判定部を、前記回転パルスのON、OFF時間を積分する積分回路と、前記積分回路の出力が所定の第1積分閾値を上回ったときにHighを出力し、この第1積分閾値より小さい所定の第2積分閾値を下回ったときにLowを出力する積分ヒステリシス要素とを用いて構成したことを特徴とする。
【0017】
本発明の洗濯機において、前記パルス検出部を、前記回転パルスを微分する微分回路と、この微分回路の出力が所定の第1微分閾値を上回ったときにHighを出力し、この第1微分閾値より小さい所定の第2微分閾値を下回ったときにLowを出力する微分ヒステリシス要素とを用いて構成することが好適である。
【0018】
本発明の洗濯機において、前記ヒステリシス要素が、シュミットトリガ回路を用いたものであることが好適である。
【0019】
本発明の洗濯機において、前記安全回路を複数備え、前記複数の安全回路は直列に接続されており、各安全回路は、前記駆動回路への給電ラインを共通にし、この給電ラインの断接状態を切り替える駆動電源遮断部を備え、前記複数の安全回路の全てが許可した場合に前記給電ラインが導通して、前記制御部からの操作信号に基づいた前記駆動回路の動作を許可することが好適である。
【0020】
本発明の洗濯機において、前記安全回路が、ハードウェアによって構成されていることが好適である。
【0021】
本発明の洗濯機において、前記安全回路が、前記制御部とは別異の回路基板によって構成されていることが好適である。
【発明の効果】
【0022】
本発明の洗濯機は、ドラムの回転数が予め定めた所定回転数を下回ると判定される場合に制御部からの操作信号に基づいた駆動回路の動作を許可し、且つ、ドラムの回転数が予め定めた所定回転数を上回ると判定される場合に制御部からの操作信号に基づいた駆動回路の動作を禁止する安全回路を備えている。これにより、ドラムの回転数が予め定めた所定回転数を上回る場合、安全回路が制御部からの操作信号に基づいた駆動回路の動作を禁止するため、プログラムや制御部の不具合・誤動作により、制御部から操作信号が駆動回路に供給されて、その操作信号によりドアロック状態が解除されるのを防止することができる。
【0023】
しかも、回転数判定に回転センサからの回転パルス信号を積分する積分回路を採用し、積分値に対して所定回転数に対応する2つの積分閾値を設けるとともに、これらの積分閾値で出力を反転させる積分ヒステリシス要素を用いている。これにより、外乱が入っても積分ヒステリシス要素が直ぐに反応して出力を反転させることがなく、外乱ノイズによる破壊、故障、誤出力の不具合を低減することができる。
【0024】
本発明の洗濯機では、回転パルスを微分する微分回路と、微分値に対して2つの微分閾値で反転する微分ヒステリシス要素とを用いている。これにより、外乱が入っても微分ヒステリシス要素が直ぐに反応して出力を反転させることがなく、外乱ノイズによる破壊、故障、誤出力の不具合を低減することができる。
【0025】
本発明の洗濯機では、ヒステリシス要素にシュミットトリガ回路を用いており、シュミットトリガ回路はコンパレータ1つと抵抗部品で実現することができる。このため、外乱ノイズに対する耐性の低いデジタル部品の数を減らすことができる。すなわち、前述した比較例の回路等と比べて論理演算部品の員数を半減することで、外乱ノイズに起因する不具合発生率を改善することが期待できる。
【0026】
本発明の洗濯機では、複数の安全回路の全てが許可した場合に給電ラインが導通して駆動回路の動作を許可する。このため、安全回路の安全性監視を二重化し、ドアロック状態が解除されるのを給電停止によって確実に防止できる。
【0027】
本発明の洗濯機では、安全回路がハードウェアによって構成されている。このため、プログラムの不具合によりドアロック状態が解除されるのを防止できる。
【0028】
本発明の洗濯機では、安全回路が制御部とは別異の回路基板によって構成されている。このため、物理的に別基板とすることで、回路設計や安全性適否の認定の便が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明の実施形態に係る洗濯機100の模式的な断面図である。
図2図1の洗濯機100の制御ブロック図である。
図3図1の洗濯機100の回路図である。
図4図1の洗濯機100の動作説明図である。
図5】従来の洗濯機の回路図である。
図6】本発明の図3の回路図と対比される比較例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。図1は、本発明の実施形態に係る洗濯機100の模式的な断面図である。
【0031】
図1に示すように、洗濯機100では、箱形状の筐体1の内部に、略円筒形状の外槽2が配置され、外槽2の内部に、洗濯物を収容するための略円筒形状のドラム4が前後方向に延伸する主軸5により軸支されている。外槽2の前面に形成された衣類投入口2aは、ドア6により開閉され、ドア6が開放された状態でドラム4内に洗濯物の出し入れが可能となっている。
【0032】
ドラム4は、水平方向に沿った回転軸の周りを回転可能である。ドラム4の周面には、多数の通液孔4aが穿設されており、洗浄やすすぎ時に外槽2内に供給された溶剤は、通液孔4aを通してドラム4内へ流入し、遠心脱液時にドラム4内で洗濯物から吐き出された溶剤は、通液孔4aを通して外槽2側へと飛散する。
【0033】
主軸5は、外槽2の背面壁に装着された軸受5aによって回転自在に支承され、さらに後方に突出した主軸5の先端には、主プーリ8が取り付けられている。筐体1の底部には、モータ9が設置され、モータ9の回転軸に、モータプーリ10が取り付けられている。モータプーリ10の回転動力は、タイミングベルト11を介して主プーリ8に伝達される。これにより、モータ9が駆動されると、モータ9の回転速度が所定の減速比で減速された回転速度で、ドラム4が主軸5を中心に回転する。
【0034】
外槽2の背面壁の上部には、給液バルブ12aが設けられた給液管12が接続されており、給液バルブ12aが開放されると、溶剤が給液管12を介して外槽2へと供給される。外槽2の底部に設けられた排液口には、排液バルブ16aが設けられた排液管16が接続されており、排液バルブ16aが開放されると、外槽2内の溶剤が排液管16を通して機外へと排出される。
【0035】
筐体1の前面には、ドア6の開放を阻止するためのドアロック装置6Aが設置されている。ドアロック装置6Aは、ドラム4の回転数が予め定めた所定閾値を下回る場合に、ドア6の開放が可能であるロック解除状態となるように制御され、ドラム4の回転数が所定回転数を上回る場合に、ドア6の開放が不可能であるドアロック状態となるように制御される。
【0036】
図2は、本実施形態の洗濯機100の制御ブロック図である。洗濯機100の制御部20は、例えば、マイクロコンピュータなどで構成されており、CPUと、洗濯機100の動作を制御するプログラムが格納されたROMと、上記プログラムを実行する際に用いられるデータ等が一時的に記憶されるRAMとを備えている。洗濯機100の運転動作は、制御部20によって制御される。
【0037】
ドアロック装置6Aは、係止部18を有しており、係止部18は、ドアロック状態においてドア6の開放を阻止するためにドア6を係止する係止位置に配置されると共に、ロック解除状態においてドア6の開放を可能とするためにドア6を係止しない解除位置に配置される。
【0038】
ドアロック装置6Aは、係止部18の位置を係止位置及び解除位置のいずれかに切り替えるために、駆動装置としてのソレノイド18aを含んでいる。
【0039】
ドアロック装置6Aは、洗濯機100の制御部20から供給される操作信号(ソレノイド電源、及び、ドアロック信号またはロック解除信号)により制御される。
【0040】
具体的には、ドアロック装置6Aは、制御部20からソレノイド電源PS及びドアロック信号が供給された場合に、ソレノイド18aにより係止部18を係止位置に移動させてドアロック状態に切り替える。ドアロック装置6Aは、制御部20からソレノイド電源及びロック解除信号が供給された場合に、ソレノイド18aにより係止部18を解除位置に移動させてロック解除状態に切り替える。
【0041】
洗濯機100は、安全基板30と、ドアロック装置6Aを制御する駆動回路31とを有している。駆動回路31は、ソレノイド18aを駆動するための回路であり、制御部20からの操作信号に基づいて動作する。
【0042】
安全基板30は、図3に示す2つの安全回路50,50aと、制御部20からの操作信号を受け付ける操作受付部51とを有している。安全基板30は、洗濯機電源及びソレノイド電源PSに接続される。
【0043】
2つの安全回路50,50aは、それぞれ、ドアロックが解除されるべきでない状態でドアロック装置6Aによりドアロックが解除されるのを防止するための回路である。
【0044】
具体的には、2つの安全回路50,50aは、それぞれ、ドラム4の回転数が予め定めた所定回転数を下回る場合に、制御部20からの操作信号に基づいた駆動回路31の動作を許可し、ドラム4の回転数が予め定めた所定回転数を上回る場合に、制御部20からの操作信号に基づいた駆動回路31の動作を禁止する。
【0045】
本実施形態では、安全基板30において、ソレノイド電源PSと操作受付部51との間に2つの安全回路50,50aが直列に配置されており、操作受付部51は、2つの安全回路50,50aを介してソレノイド電源PSに接続される。制御部20は、ソレノイド18aを制御するときに、操作信号であるソレノイド電源PSを操作受付部51に供給するが、2つの安全回路50,50aの両方が、制御部20からの操作信号に基づいた駆動回路31の動作を許可した場合に限り、ソレノイド電源PSは、駆動回路31に供給される。
【0046】
ソレノイド電源PSが駆動回路31に供給される状態において、操作受付部51が制御部20からのドアロック信号またはロック解除信号の操作信号を受け付けた場合、その操作信号が駆動回路31に供給されて、その操作信号に基づいた駆動回路31の動作(ドアロックまたはロック解除)が実施される。
【0047】
これに対して、ソレノイド電源PSが駆動回路31に供給されない状態において、操作受付部51が制御部20からのドアロック信号またはロック解除信号の操作信号を受け付けたとしても、その操作信号は駆動回路31に供給されず、その操作信号に基づいた駆動回路31の動作(ドアロックまたはロック解除)は実施されない。
【0048】
安全回路50は、パルス検出部53と、回転数判定部54と、駆動電源遮断部55とを有している。
【0049】
パルス検出部53は、回転センサ53aからの検出信号に基づいて、ドラム4の回転数に応じた回転パルスを出力する。この回転パルスの間隔、パルス幅は、ドラム4の回転数が高くなると短くなり、ドラム4の回転数が低くなると長くなる。そのため、パルス検出部53から出力される回転パルス信号の間隔やパルス幅の変化に基づいて、ドラム4の回転数の変化を検知することができる。
【0050】
この実施形態のパルス検出部53は、微分回路53bと、微分ヒステリシス要素53cを含んで構成されている。
【0051】
微分回路53bは、RC回路によって構成され、入力される回転パルスを微分することで回転パルスの立ち上がりエッジおよび立下りエッジを捉え、微分値として出力する(図4<a1>参照)。
【0052】
微分ヒステリシス要素53cは、例えばシュミットトリガ回路によって構成され、微分回路53bの出力が所定の第1微分閾値α1を上回ったときにHigh、この第1微分閾値α1より小さい所定の第2微分閾値α2を下回ったときにLowを出力する(図4<a2>参照)。
【0053】
一方、この実施形態の回転数判定部54は、積分回路54aと、積分ヒステリシス要素54bを含んで構成されている。
【0054】
積分回路54aは、RC回路によって構成され、微分ヒステリシス要素53cの出力がHighになった時間を積分によって加算し、微分ヒステリシス要素53cの出力がLowになった時間を積分によって減算する(図4<a3>参照)。すなわち、積分回路54aでは微分シュミットトリガ回路53cがHighの間プラスの時間積分が進み、微分シュミットトリガ回路53cがLowの間マイナスの時間積分が進む。
【0055】
積分ヒステリシス要素54bは、例えばシュミットトリガ回路によって構成され、積分回路54aの出力が所定の第1積分閾値β1を上回ったときにHigh、この第1積分閾値β1より小さい所定の第2積分閾値β2を下回ったときにLowを出力する(図4<a4>参照)。
【0056】
図4(b)の波形図<b1>~<b4>は、ドラム4の回転数が高くなったとき、すなわちパルス間隔やパルス幅が狭くなったときの図4(a)の波形図<a1>~<a4>にそれぞれ対応している。
【0057】
駆動電源遮断部55は、断接用トランジスタTr1によって構成される。断接用トランジスタTr1は、ベースを積分ヒステリシス要素54bに接続され、コレクタをソレノイド電源PSに接続され、エミッタを第2段の安全回路50aの断接用トランジスタTr1のコレクタに接続されている。
【0058】
断接用トランジスタTr1は、積分ヒステリシス要素54bがHighになるとターンオンし、積分ヒステリシス要素54bがLowになるとターンオフする。
【0059】
一方、安全回路50に直列に接続された安全回路50aは、安全回路50と同様に、パルス検出部53と、回転数判定部54と、駆動電源遮断部55とを有している。安全回路50aのパルス検出部53、回転数判定部54、駆動電源遮断部55の構成および動作は基本的に安全回路50と同様であり、同一の部分については詳細な説明を省略する。
【0060】
安全回路50と安全回路50aとで異なる点について説明すると、安全回路50の断接用トランジスタTr1のコレクタは、ソレノイド電源PSに接続され、エミッタは、安全回路50aの断接用トランジスタTr1のコレクタに接続される。安全回路50aの断接用トランジスタTr1のエミッタは、操作受付部51に接続される。
【0061】
洗濯機100のドアロック動作について、図3及び図4に基づいて説明する。
【0062】
洗濯機100においてドラム4が回転駆動されると、回転センサ53aから安全回路50と安全回路50aに、それぞれ回転数に応じた回転パルス信号が入力される。
【0063】
まず、安全回路50について説明すると、回転センサ53aからの回転パルス信号は交番波形として微分回路53bに入力される。微分回路53bからは、図4<a1>に示すように、回転パルスの立ち上がり時にプラス方向に振れ、立ち下がり時にマイナス方向に振れる概略インパルス状の波形の信号が出力される。
【0064】
この信号は、微分ヒステリシス要素53cに入力される。微分ヒステリシス要素53cは、図4<a2>に示すように、微分回路53bの出力が微分第1閾値α1を上回るとHighになり、次に微分第2閾値α2を下回るまでHighを維持する。また、微分ヒステリシス要素53cは、微分回路53bの出力が微分第2閾値α2を下回るとLowになり、次に微分第1閾値α1を上回るまでLowを維持する。微分ヒステリシス要素53cの出力信号は方形波となる。
【0065】
図4<a1>に示す微分回路53bの出力にノイズが乗った場合、閾値付近で波形がふらつくが、微分ヒステリシス要素53cに図4<a2>のようなヒステリシスがあるため、一旦HighまたはLowになった以後は次に微分回路53bからの回転パルスの立下りまたは立ち上がりを検知するまでHighまたはLowの状態が維持される。
【0066】
微分ヒステリシス要素53cの出力信号は、積分回路54aに入力される。積分回路54aは、図4<a3>に示すように、微分ヒステリシス要素53cの出力がHighになるとプラスの時間積分を開始し、微分ヒステリシス要素53cの出力がLowになるとマイナスの時間積分を開始する。積分回路54aの出力信号は概略鋸波状の波形となる。
【0067】
この積分回路54aの出力信号は、積分ヒステリシス要素54bに入力される。積分ヒステリシス要素54bは、図4<a4>に示すように、積分回路54aの出力が積分第1閾値β1を上回るとHighになり、次に積分第2閾値β2を下回わるまでHighを維持する。また、積分ヒステリシス要素54bは、積分回路54aの出力が積分第2閾値β2を下回るとLowになり、次に積分第1閾値β1を上回るまでLowを維持する。積分ヒステリシス要素54bの出力信号は方形波となる。
【0068】
ドラム4の回転数が低く、パルス幅、パルス間隔が長いときは、図4<a2>に示すように微分ヒステリシス要素53cの出力がHighになっている時間taが長く、その間に図4<a3>に示すように積分回路54aの積分が進むので、ドラム4の回転数が予め定めた回転数を上回ったときに積分値が積分ヒステリシス要素54bの積分第1閾値β1を上回り、<a4>に示すように積分ヒステリシス要素はHighになる。
【0069】
積分回路54aでマイナスの積分が進み、積分ヒステリシス要素54bがLowに反転するまでの間、断接トランジスタTrはターンオンする。安全回路50aについてもドラム4の回転数が低いことを検知すればほぼ同じ動作を通じて断接用トランジスタTr1がターンオンする。その結果、ソレノイド電源PSが断接用トランジスタTr1を介して操作受付部51に導通される。このため、操作受付部51がロック解除操作を受け付けるとドラム4のロック解除が実施される。
【0070】
その後、微分回路53bが回転パルスの立下りを検知し、微分ヒステリシス要素53cがLowに反転すると、積分回路54aはマイナスの積分を始める。そして、ドラム4の回転数が予め定めた回転数を上回ったときに積分値が積分第2閾値β2を下回り、図4<a4>に示すように積分ヒステリシス要素54bはLowになる。
【0071】
一方、ドラム4の回転数が上がって回転パルスのパルス幅、パルス間隔が短くなると、図4<b2>に示すように微分ヒステリシス要素53cの出力がHighになっている時間tbが短くなり、図4<b3>に示すように積分回路54aの積分が十分進む前に微分ヒステリシス要素53cの出力がLowに反転する。このため、積分値は積分ヒステリシス要素54bの積分第1閾値β1を上回ることができず、積分ヒステリシス要素54bは図4<b4>に示すようにHighにならずLowのままとなる。したがって、断接用トランジスタTr1はターンオンせず、ソレノイド電源PSが断接用トランジスタTr1を通じて導通されることはない。
【0072】
安全回路50bにおいてもほぼ同様にドラム4の回転数上昇を検知すれば断接用トランジスタTr1を導通しないので、結果的にソレノイド電源PSは操作受付部51に導通することはない。このため、操作受付部51がロック解除操作を受け付けてもドラム4のロック解除が実施されることはない。
【0073】
図4<a3>に示す積分回路54aの出力にノイズが乗った場合、閾値付近で波形がふらつくが、積分ヒステリシス要素54bに図4<a4>のようなヒステリシスがあるため、一旦HighまたはLowになった以後は次に積分回路54aが他の閾値を検知するまでHighまたはLowが維持される。
【0074】
本実施形態の洗濯機100は、筐体1内に配置されたドラム4と、筐体1に開閉可能に設けられたドア6をドアロック状態またはロック解除状態に切り替えるドアロック装置6Aと、ドアロック装置6Aを制御する駆動回路31に対して供給される操作信号を出力する制御部20と、ドラム4の回転数が予め定めた回転数を下回ると判定される場合に制御部20からの操作信号に基づいた駆動回路31の動作を許可し、且つ、ドラム4の回転数が予め定めた回転数を上回ると判定される場合に制御部20からの操作信号に基づいた駆動回路31の動作を禁止する安全回路50,50aとを備える洗濯機である。
【0075】
そして、安全回路50,50aは、ドラム4に設けた回転センサ53aからの回転パルスのエッジを検出するパルス検出部53と、パルス検出部53によって検出される回転パルスに基づきドラム4の回転数の判定を行う回転数判定部54とを含み、回転数判定部54を、回転パルスのON,OFF時間を積分する積分回路54aと、積分回路54aの出力が所定の第1積分閾値β1を上回ったときにHighを出力し、この第1積分閾値β1より小さい所定の第2積分閾値β2を下回ったときにLowを出力する積分ヒステリシス要素54bとを用いて構成している。
【0076】
これにより、ドラム4の回転数が予め定めた回転数を上回る場合、安全回路50,50aが制御部20からの操作信号に基づいた駆動回路31の動作を禁止するため、プログラムや制御部の不具合・誤動作により、制御部20から操作信号が駆動回路31に供給されて、その操作信号によりドアロック状態が解除されるのを防止することができる。
【0077】
しかも、回転数判定に回転センサ53aからの回転パルス信号を積分する積分回路54aを採用し、積分値に対して所定回転数に対応する2つの積分閾値β1,β2を設けるとともに、これらの積分閾値β1,β2で反転する積分ヒステリシス要素54bを用いている。これにより、外乱が入っても積分ヒステリシス要素54bが直ぐに反応して出力を反転させることがなく、外乱ノイズによる破壊、故障、誤出力の発生を有効に低減することができる。
【0078】
本実施形態の洗濯機100において、パルス検出部53を、回転パルスを微分する微分回路53bと、この微分回路53bの出力が所定の第1微分閾値α1を上回ったときにHighを出力し、この第1微分閾値α1より小さい所定の第2微分閾値α2を下回ったときにLowを出力する微分ヒステリシス要素53cとを用いて構成している。
【0079】
これにより、外乱が入っても微分ヒステリシス要素53cが直ぐに反応して出力を反転させることがなく、外乱ノイズによる破壊、故障、誤出力の不具合を有効に低減することができる。
【0080】
本実施形態の洗濯機100において、ヒステリシス要素53c,54bは、シュミットトリガ回路を用いて構成されて用いており、シュミットトリガ回路はコンパレータ1つと抵抗部品で実現することができる。図6に示した比較例では、Dフリップフロップが内部にNANDゲートを4つ有するため、安全回路1つにつきデジタル部品が4つ必要であった。これに対して、本実施形態では、シュミットトリガ回路を2つのデジタル部品で構成することができる。
【0081】
本実施形態の洗濯機100において、複数の安全回路50,50aを複数備え、複数の安全回路50,50aは直列に接続されており、各安全回路50,50aは、駆動回路31への給電ラインを共通にし、この給電ラインの断接状態を切り替える駆動電源遮断部55を備え、複数の安全回路50,50aの全てが許可した場合に給電ラインが導通して、制御部20からの操作信号に基づいた駆動回路31の動作を許可する。
【0082】
このため、安全回路50,50aの安全性監視を二重化し、ドアロック状態が解除されるのを給電停止によって確実に防止できる。
【0083】
本実施形態の洗濯機100において、安全回路50,50aが、ハードウェアによって構成されている。
【0084】
このため、プログラムの不具合によりドアロック状態が解除されるのを防止できる。
【0085】
本実施形態の洗濯機100において、安全回路50,50aが、制御部20とは別異の回路基板30によって構成されている。
【0086】
このため、物理的に別基板とすることで、回路設計や安全性適否の認定の便が向上する。
【0087】
以上、本発明の実施形態について説明したが、各部の具体的な構成は上述した実施形態のみに限定されるものではない。
【0088】
例えば、上記実施形態では、水平方向に沿った回転軸の周りを回転可能なドラム4を有する洗濯機100について説明したが、本発明は、水平方向に対して傾斜する回転軸の周りを回転可能なドラム4を有する洗濯機に適用可能である。また、本発明は、鉛直方向に沿った回転軸の周りを回転可能な洗濯槽(ドラム)を有する縦型洗濯機に適用可能である。
【0089】
上記実施形態では、2つの安全回路50,50aを有する場合を説明したが、安全回路の数は、任意である。本発明の洗濯機は、1つまたは3つ以上の安全回路を有してよい。
【0090】
上記実施形態において、ドアロック装置6Aは、係止部18を駆動する駆動装置としてソレノイド18aを有しているが、駆動装置は、それに限られない。ドアロック装置6Aにおいて、例えば駆動装置としてのモータにより係止部18を駆動してよい。
【0091】
その他の構成も、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【符号の説明】
【0092】
1 筐体
4 ドラム
6 ドア
6A ドアロック装置
20 制御部
30 安全基板
31 駆動回路
50,50a 安全回路
51 操作受付部
53 パルス検出部
53b 微分回路
53c 微分ヒステリシス要素
54 回転数判定部
54a 積分回路
54b 積分ヒステリシス要素
55 駆動電源遮断部
100 洗濯機
図1
図2
図3
図4
図5
図6