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  • 特開-樹状細胞ワクチンの製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022076808
(43)【公開日】2022-05-20
(54)【発明の名称】樹状細胞ワクチンの製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 35/15 20150101AFI20220513BHJP
   C12N 5/0784 20100101ALI20220513BHJP
   C07K 14/46 20060101ALI20220513BHJP
   C07K 7/06 20060101ALI20220513BHJP
   C07K 7/08 20060101ALI20220513BHJP
   A61K 39/00 20060101ALI20220513BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220513BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20220513BHJP
   A61K 47/30 20060101ALI20220513BHJP
   A61K 47/42 20170101ALI20220513BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20220513BHJP
【FI】
A61K35/15 Z
C12N5/0784 ZNA
C07K14/46
C07K7/06
C07K7/08
A61K39/00 H
A61P35/00
A61K9/08
A61K47/30
A61K47/42
A61K47/32
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020187400
(22)【出願日】2020-11-10
(71)【出願人】
【識別番号】504150450
【氏名又は名称】国立大学法人神戸大学
(71)【出願人】
【識別番号】503420833
【氏名又は名称】学校法人常翔学園
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】白川 利朗
(72)【発明者】
【氏名】北川 孝一
(72)【発明者】
【氏名】駒井 翔太
(72)【発明者】
【氏名】佐久間 信至
【テーマコード(参考)】
4B065
4C076
4C085
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA92X
4B065AC12
4B065AC20
4B065BB19
4B065CA45
4C076AA11
4C076BB11
4C076BB16
4C076CC06
4C076CC27
4C076EE01N
4C076EE02N
4C076EE09
4C076EE13
4C076EE41N
4C076FF34
4C085AA03
4C085BA01
4C085BB01
4C085CC05
4C085EE01
4C085EE05
4C085GG01
4C085GG04
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB63
4C087CA04
4C087MA17
4C087MA66
4C087NA05
4C087NA11
4C087NA14
4C087ZB26
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA14
4H045BA15
4H045BA16
4H045BA17
4H045BA18
4H045CA41
4H045DA86
4H045EA22
4H045EA28
4H045EA31
4H045FA33
4H045FA72
(57)【要約】
【課題】抗原の樹状細胞への取り込みが向上する樹状細胞ワクチンの製造方法の提供。
【解決手段】樹状細胞、下記一般式(1)で表される基を側鎖に有する高分子化合物、及び抗原を混合することを含む、樹状細胞ワクチンの製造方法。
(式中、Xは、膜透過性ペプチドから末端アミノ基および末端カルボキシル基を除いた残基を示し、Xは、水酸基、アミノ基、炭素数1~4のアルコキシル基又はベンジルオキシ基を示す。)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹状細胞、下記一般式(1)で表される基を側鎖に有する高分子化合物、及び抗原を混合することを含む、樹状細胞ワクチンの製造方法。
【化1】
(式中、Xは、膜透過性ペプチドから末端アミノ基および末端カルボキシル基を除いた残基を示し、Xは、水酸基、アミノ基、炭素数1~4のアルコキシル基又はベンジルオキシ基を示す。)
【請求項2】
前記膜透過性ペプチドが、7~30個のアルギニンがペプチド結合したアルギニンオリゴマーを有するペプチド、GRKKRRQRRRPPQなるアミノ酸配列を有するペプチド、TRQARRNRRRRWRERQRなるアミノ酸配列を有するペプチド、RRRRNRTRRNRRRVRなるアミノ酸配列を有するペプチド、TRRQRTRRARRNRなるアミノ酸配列を有するペプチド、KLTRAQRRAAARKNKRNTRなるアミノ酸配列を有するペプチド、RQIKIWFQNRRMKWKKなるアミノ酸配列を有するペプチド、KMTRAQRRAAARRNRWTARなるアミノ酸配列を有するペプチド、RQIKIWFQNRRMKWKKなるアミノ酸配列を有するペプチド、NAKTRRHERRRKLAIERなるアミノ酸配列を有するペプチド、DAATATRGRSAASRPTERPRAPARSASRPDDPVDなるアミノ酸配列を有するペプチド、GWTLNSAGYLLGKINLKALAALAKKILなるアミノ酸配列を有するペプチド、及びAGYLLGKINLKALAALAKKILなるアミノ酸配列を有するペプチドからなる群より選択される少なくとも1種の膜透過性ペプチドである、請求項1に記載の樹状細胞ワクチンの製造方法。
【請求項3】
前記一般式(1)で表される基を側鎖に有する高分子化合物の幹高分子が、ビニル系親水性高分子である、請求項1又は2に記載の樹状細胞ワクチンの製造方法。
【請求項4】
前記抗原が、がん抗原であり、前記樹状細胞ワクチンが、がんワクチンである、請求項1~3のいずれかに記載の樹状細胞ワクチンの製造方法。
【請求項5】
樹状細胞、下記一般式(1)で表される基を側鎖に有する高分子化合物、及び抗原を含む、樹状細胞ワクチン。
【化2】
(式中、Xは、膜透過性ペプチドから末端アミノ基および末端カルボキシル基を除いた残基を示し、Xは、水酸基、アミノ基、炭素数1~4のアルコキシル基又はベンジルオキシ基を示す。)
【請求項6】
下記一般式(1)で表される基を側鎖に有する高分子化合物を含有する、樹状細胞ワクチン製造補助剤。
【化3】
(式中、Xは、膜透過性ペプチドから末端アミノ基および末端カルボキシル基を除いた残基を示し、Xは、水酸基、アミノ基、炭素数1~4のアルコキシル基又はベンジルオキシ基を示す。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、樹状細胞ワクチンの製造方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
がんの治療方法としては、手術療法、放射線療法、薬物療法が三大療法とされており、薬物療法には、抗がん剤などを用いる化学療法、ホルモン剤などを用いるホルモン療法(内分泌療法)、分子標的薬などを用いる分子標的療法などの種類がある。
【0003】
近年、新たながんの治療方法として免疫療法が注目されている(特許文献1)。免疫療法の中でも、がん細胞を特異的に認識する樹状細胞を用いる樹状細胞ワクチン療法は、副作用が少ないことから、第4のがん治療方法として期待されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-083849号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
がん細胞を特異的に認識する樹状細胞(樹状細胞ワクチン)を作製する際には、がん抗原を樹状細胞に取り込ませる必要があるところ、当該がん抗原の樹状細胞への透過性(取り込み)が低い点が、樹状細胞ワクチン療法の課題の1つとされている。本開示は、樹状細胞ワクチンの製造において、抗原の樹状細胞への取り込みを向上させることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、膜透過性ペプチドを側鎖に有する高分子化合物を用いることによって、樹状細胞への抗原の取り込みが向上することを見出し、さらに改良を重ねた。
【0007】
本開示は、例えば以下の項に記載の主題を包含する。
項1.
樹状細胞、下記一般式(1)で表される基を側鎖に有する高分子化合物、及び抗原を混合することを含む、樹状細胞ワクチンの製造方法。
【化1】
(式中、Xは、膜透過性ペプチドから末端アミノ基および末端カルボキシル基を除いた残基を示し、Xは、水酸基、アミノ基、炭素数1~4のアルコキシル基又はベンジルオキシ基を示す。)
項2.
前記膜透過性ペプチドが、7~30個のアルギニンがペプチド結合したアルギニンオリゴマーを有するペプチド、GRKKRRQRRRPPQなるアミノ酸配列を有するペプチド、TRQARRNRRRRWRERQRなるアミノ酸配列を有するペプチド、RRRRNRTRRNRRRVRなるアミノ酸配列を有するペプチド、TRRQRTRRARRNRなるアミノ酸配列を有するペプチド、KLTRAQRRAAARKNKRNTRなるアミノ酸配列を有するペプチド、RQIKIWFQNRRMKWKKなるアミノ酸配列を有するペプチド、KMTRAQRRAAARRNRWTARなるアミノ酸配列を有するペプチド、RQIKIWFQNRRMKWKKなるアミノ酸配列を有するペプチド、NAKTRRHERRRKLAIERなるアミノ酸配列を有するペプチド、DAATATRGRSAASRPTERPRAPARSASRPDDPVDなるアミノ酸配列を有するペプチド、GWTLNSAGYLLGKINLKALAALAKKILなるアミノ酸配列を有するペプチド、及びAGYLLGKINLKALAALAKKILなるアミノ酸配列を有するペプチドからなる群より選択される少なくとも1種の膜透過性ペプチドである、項1に記載の樹状細胞ワクチンの製造方法。
項3.
前記一般式(1)で表される基を側鎖に有する高分子化合物の幹高分子が、ビニル系親水性高分子である、項1又は2に記載の樹状細胞ワクチンの製造方法。
項4.
前記抗原が、がん抗原であり、前記樹状細胞ワクチンが、がんワクチンである、項1~3のいずれかに記載の樹状細胞ワクチンの製造方法。
項5.
樹状細胞、下記一般式(1)で表される基を側鎖に有する高分子化合物、及び抗原を含む、樹状細胞ワクチン。
【化2】
(式中、Xは、膜透過性ペプチドから末端アミノ基および末端カルボキシル基を除いた残基を示し、Xは、水酸基、アミノ基、炭素数1~4のアルコキシル基又はベンジルオキシ基を示す。)
項6.
下記一般式(1)で表される基を側鎖に有する高分子化合物を含有する、樹状細胞ワクチン製造補助剤。
【化3】
(式中、Xは、膜透過性ペプチドから末端アミノ基および末端カルボキシル基を除いた残基を示し、Xは、水酸基、アミノ基、炭素数1~4のアルコキシル基又はベンジルオキシ基を示す。)
【発明の効果】
【0008】
抗原の樹状細胞への取り込みが向上する樹状細胞ワクチンの製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】樹状細胞による抗原取り込み試験の結果を示す。
図2】樹状細胞ワクチンの投与による腫瘍体積への影響を比較した結果を示す。
図3】樹状細胞ワクチンの投与によるIFN-γ陽性細胞数への影響を比較した結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示に包含される各実施形態について、さらに詳細に説明する。
本開示は、樹状細胞、後述する一般式(1)で表される基を側鎖に有する高分子化合物、及び抗原を混合することを含む、樹状細胞ワクチンの製造方法を包含する。本明細書において、当該樹状細胞ワクチンの製造方法を、「本開示の樹状細胞ワクチンの製造方法」と表記することがある。また、本明細書において、当該樹状細胞ワクチンの製造方法により製造される樹状細胞ワクチンを、「本開示の樹状細胞ワクチン」と表記することがある。
【0011】
本開示に用いられる樹状細胞は、特に限定されず、投与対象等に応じて適宜選択することができる。例えば、本開示に用いられる樹状細胞としては、哺乳動物由来の樹状細胞であることが好ましい。哺乳動物としては、ヒト;ラット、マウス、ウサギ、ウシ、ブタ、イヌ、ネコ、ヒツジ、サル等の非ヒト哺乳動物などが例示される。また、本開示に用いられる樹状細胞は、例えば、本開示の樹状細胞ワクチンを投与される対象から得た単球由来の樹状細胞であってもよく、商業的に入手可能なものであってもよい。
【0012】
本開示に用いられる高分子化合物は、下記一般式(1)で表される基を側鎖に有する。
【0013】
【化4】
【0014】
一般式(1)中、Xは、膜透過性ペプチドから末端アミノ基および末端カルボキシル基を除いた残基を示す。
【0015】
膜透過性ペプチド残基を構成するアミノ酸の少なくとも1つは塩基性アミノ酸であることが好ましい。また、塩基性アミノ酸は、L体又はD体のいずれであってもよい。
【0016】
塩基性アミノ酸としては、例えば、アルギニン、オルニチン、リジン、ヒドロキシリジン、ヒスチジン等が挙げられ、中でも、グアニジノ基含有アミノ酸が好ましく、アルギニンが更に好ましい。膜透過性ペプチド残基を構成する全アミノ酸に対する塩基性アミノ酸の割合は、モル基準で、50%以上であることが好ましく、70%以上であることが更に好ましい。膜透過性ペプチド残基を構成するアミノ酸のうち、塩基性アミノ酸以外のアミノ酸は、中性アミノ酸であることが好ましい。なお、本明細書中、アミノ酸と記載する場合、特に断らない限り、α-アミノ酸を意味する。
【0017】
膜透過性ペプチド残基を構成するアミノ酸の数は、例えば、5~40個程度とすることができる。当該範囲の上限若しくは下限は、例えば6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、又は39個であってもよい。より具体的には、例えば、6~39個であってもよい。
【0018】
膜透過性ペプチドとしては、例えば、7~30個のアルギニンがペプチド結合したアルギニンオリゴマーを有するペプチド、GRKKRRQRRRPPQなるアミノ酸配列を有するペプチド(例えば、HIV-1 Tat:配列番号1)、TRQARRNRRRRWRERQRなるアミノ酸配列を有するペプチド(例えば、HIV-1 Rev:配列番号2)、RRRRNRTRRNRRRVRなるアミノ酸配列を有するペプチド(例えば、FHV Coat:配列番号3)、TRRQRTRRARRNRなるアミノ酸配列を有するペプチド(例えば、HTLV-II Rex:配列番号4)、KLTRAQRRAAARKNKRNTRなるアミノ酸配列を有するペプチド(例えば、CCMV Gag:配列番号5)等の親水性の塩基性ペプチド;RQIKIWFQNRRMKWKKなるアミノ酸配列を有するペプチド(例えば、アンテナペディア:配列番号6)、KMTRAQRRAAARRNRWTARなるアミノ酸配列を有するペプチド(例えば、BMW Gag:配列番号7)、RQIKIWFQNRRMKWKKなるアミノ酸配列を有するペプチド(例えば、ペネトラチン:配列番号8)、NAKTRRHERRRKLAIERなるアミノ酸配列を有するペプチド(例えば、P22N:配列番号9)、DAATATRGRSAASRPTERPRAPARSASRPDDPVDなるアミノ酸配列を有するペプチド(例えば、VP22:配列番号10)等の両親媒性の塩基性ペプチド;GWTLNSAGYLLGKINLKALAALAKKILなるアミノ酸配列を有するペプチド(例えば、トランスポータン:配列番号11)、AGYLLGKINLKALAALAKKILなるアミノ酸配列を有するペプチド(例えば、TP-10:配列番号12)等の疎水性の塩基性ペプチド等が挙げられる。膜透過性ペプチドは、上述したアルギニンオリゴマー又は配列番号1~12に示すアミノ酸配列からなるペプチドであってもよい。
中でも、膜透過性ペプチドとしては、親水性の塩基性ペプチドが好ましく、アルギニンオリゴマーを有するペプチドがより好ましく、アルギニンオリゴマーからなるペプチドがさらにより好ましい。アルギニンオリゴマーにおけるアルギニンの繰り返し数は、7~20が好ましく、7~15がより好ましく、7~10がさらに好ましい。
【0019】
一般式(1)中、Xは、水酸基、アミノ基、炭素数1~4のアルコキシル基又はベンジルオキシ基を示す。
炭素数1~4のアルコキシル基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、1-メチルプロポキシ基、t-ブトキシ基等が挙げられる。Xとしては、水酸基、アミノ基、t-ブトキシ基、ベンジルオキシ基が好ましく、水酸基、アミノ基が更に好ましく、アミノ基が最も好ましい。
一般式(1)で表される基を側鎖に有する高分子化合物中、一般式(1)で表される基が複数存在する場合、それぞれの一般式(1)で表される基の、X及びXは同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0020】
本明細書において、一般式(1)で表される基を側鎖に有する高分子化合物の主鎖部分を幹高分子という。
【0021】
幹高分子は、特に限定されないが、親水性高分子であることが好ましい。ここで、親水性高分子とは、水溶性高分子、または水中で膨潤する高分子を意味する。本明細書において、水溶性高分子とは、常圧下で25℃の水に0.1質量%以上の量で均一に溶解する高分子をいう。
【0022】
親水性高分子としては、例えば、グアーガム、アガロース、マンナン、グルコマンナン、ポリデキストロース、リグニン、キチン、キトサン、カラギーナン、プルラン、コンドロイチン硫酸、セルロース、ヘミセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、デンプン、カチオンデンプン、デキストリンの多糖類又は多糖類の変性物;アルブミン、カゼイン、ゼラチン、ポリグルタミン酸、ポリリジン等の水溶性タンパク質又は水溶性ポリペプチド;ポリ(メタ)アクリル酸、ポリ(アクリル酸ヒドロキシエチル)、ポリ(メタ)アクリルアミド、ポリN-ビニルアセトアミド、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリ(2-アミノエチル(メタ)アクリレート)、(メタ)アクリル酸/アクリルアミド共重合物、(メタ)アクリル酸/N-イソプロピルアクリルアミド共重合物、(メタ)アクリル酸/N-ビニルアセトアミド共重合物、(メタ)アクリル酸/マレイン酸共重合物、(メタ)アクリル酸/フマル酸共重合物、エチレン/マレイン酸共重合物、イソブチレン/マレイン酸共重合物、スチレン/マレイン酸共重合物、アルキルビニルエーテル/マレイン酸共重合物、アルキルビニルエーテル/フマル酸共重合物等のビニル系親水性高分子;水溶性ポリウレタン等が挙げられる。なお、本明細書において(メタ)アクリル酸とはアクリル酸および/またはメタクリル酸を意味する。
【0023】
幹高分子への膜透過性ペプチド基のグラフト化が容易になることから、幹高分子としては、カルボキシル基を有する高分子が好ましく、カルボキシル基を有する親水性高分子がより好ましく、カルボキシル基を有するモノマーとカルボキシル基を有しないモノマーとの共重合物が更に好ましく、(メタ)アクリル酸/N-ビニルアセトアミド共重合物が最も好ましい。
【0024】
幹高分子を構成するモノマー単位の数に対するカルボキシル基を有するモノマー単位の数の割合は、例えば、5~80%程度が好ましく、10~60%程度がより好ましい。例えば、20~40%程度であってもよい。
【0025】
一般式(1)で表される基を側鎖に有する高分子化合物における膜透過性ペプチド残基の数は、幹高分子を構成するモノマー単位(多糖類又は多糖類の変性物の場合は単糖単位、水溶性タンパク質又は水溶性ポリペプチドの場合はアミノ酸単位)の数に対して、0.001~0.9程度であることが好ましく、0.005~0.8程度であることが更に好ましく、0.01~0.7程度であることが最も好ましい。例えば、0.05~0.5程度であってもよい。
【0026】
幹高分子の重量平均分子量は、例えば、10kDa~10000kDaが好ましく、30kDa~5000kDaが更に好ましく、100kDa~3000kDaが最も好ましい。なお、本明細書において重量平均分子量とは、水系溶媒を用いてGPC分析を行った場合の重量平均分子量であって、幹高分子が多糖類若しくは多糖類の変性物、又は水溶性タンパク質の場合には、プルラン換算の重量平均分子量、幹高分子がビニル系親水性高分子の場合には、ポリエチレングリコール(PEG)若しくはポリエチレンオキシド(PEO)換算の重量平均分子量をいう。
【0027】
一般式(1)で表される基を側鎖に有する高分子化合物の製造方法は特に限定されず、当業者に広く知られている各種の方法を適用できる。例えば、一般式(1)で表される基を有する重合性モノマーを重合して製造してもよく、幹高分子に一般式(1)で表される基を導入して製造してもよい。例えば、幹高分子のカルボキシル基に、膜透過性ペプチドのアミノ基をペプチド反応させることにより得ることができる。カルボキシル基とアミノ基との反応は、公知の方法を用いればよく、例えば、カルボキル基をN-ヒドロキシコハク酸イミドによりスクシイミドエステル化した後、アミノ基を反応させる方法等が挙げられる。
【0028】
本開示に用いられる抗原は、例えば、がん抗原であることが好ましい。がん抗原としては、がん細胞特異的である限り特に限定されず、例えば、タンパク質、ペプチド、DNA、RNA等が挙げられる。また、本開示に用いられる抗原としては、例えば、がん細胞又は組織の溶解液等を用いることもできる。これらは、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
がん抗原は、例えば、本開示の樹状細胞ワクチンを投与される対象由来であってもよく、人工的に合成されたものであってもよい。
【0029】
樹状細胞、一般式(1)で表される基を側鎖に有する高分子化合物、及び抗原を混合する方法は、樹状細胞に抗原が取り込まれる限り特に限定されず、例えば、水性媒体中で、樹状細胞、一般式(1)で表される基を側鎖に有する高分子化合物、及び抗原を混合する方法などが挙げられる。
【0030】
水性媒体としては、例えば、細胞培養に一般的に用いられる培地;樹状細胞培養液;蒸留水;生理食塩水、ブドウ糖水溶液等の等張液等が挙げられる。
【0031】
樹状細胞、一般式(1)で表される基を側鎖に有する高分子化合物、及び抗原を混合する工程において、混合液における樹状細胞の濃度は、特に限定されず、適宜設定することができる。例えば、1.0×10~2.0×10cells/ml程度とすることができる。1.0×10~5×10cells/ml程度であってもよい。
【0032】
樹状細胞、一般式(1)で表される基を側鎖に有する高分子化合物、及び抗原を混合する工程において、混合液における一般式(1)で表される基を側鎖に有する高分子化合物の濃度は、例えば、0.1μg/ml~1mg/ml程度とすることができる。5μg/m1~75μg/ml程度であってもよい。
【0033】
樹状細胞、一般式(1)で表される基を側鎖に有する高分子化合物、及び抗原を混合する工程において、混合液における抗原の濃度は、抗原の種類に応じて適宜設定することができる。例えば、0.5μg/ml~10mg/ml程度とすることができる。5μg/m~100μg/ml程度であってもよい。
例えば、細胞の溶解液を抗原として用いる場合には、樹状細胞と細胞溶解液の調製に用いる細胞との細胞数の比率は、例えば、1:0.5~1:5程度とすることができる。
【0034】
樹状細胞、一般式(1)で表される基を側鎖に有する高分子化合物、及び抗原を混合する温度は、樹状細胞が生存し得る限り、特に限定されず、例えば、30~40℃程度とすることができる。例えば、34~38℃程度であってもよい。
【0035】
樹状細胞、一般式(1)で表される基を側鎖に有する高分子化合物、及び抗原を混合する時間は、樹状細胞に抗原が取り込まれる限り特に限定されず、例えば、15分~24時間程度とすることができる。例えば、30分~3時間程度であってもよい。
【0036】
樹状細胞、一般式(1)で表される基を側鎖に有する高分子化合物、及び抗原を混合する工程は、例えば、振盪、攪拌等を行ってもよい。振盪、攪拌方法は、当該技術分野において公知の方法を用いることができ、任意の条件を採用することができる。
【0037】
本開示の樹状細胞ワクチンの製造方法は、さらに樹状細胞を洗浄する工程を含んでいてもよい。洗浄方法は、当該技術分野において公知の方法を用いることができ、任意の条件を採用することができる。
【0038】
本開示の樹状細胞ワクチンの製造方法は、さらに樹状細胞を濃縮する工程を含んでいてもよい。濃縮方法は、当該技術分野において公知の方法を用いることができ、任意の条件を採用することができる。
【0039】
本開示の樹状細胞ワクチンは、がんワクチンとして好適に用いることができる。このため、本開示の樹状細胞ワクチンは、がんの治療に好適に用いることができる。
【0040】
本開示の樹状細胞ワクチンにおける樹状細胞の含有量は、特に限定されず、適宜設定することができる。
【0041】
本開示の樹状細胞ワクチンにおいて、一般式(1)で表される基を側鎖に有する高分子化合物は、含まれていてもよく、含まれていなくてもよい。
【0042】
本開示の樹状細胞ワクチンにおいて、抗原は、樹状細胞に取り込まれていることが好ましい。なお本開示の樹状細胞ワクチンにおいて、抗原は、樹状細胞外に存在していてもよい。
【0043】
本開示の樹状細胞ワクチンは、さらに他の成分を含むことができる。当該他の成分としては、薬学的に許容される各種担体(例えば、溶剤、分散剤、等張化剤、キレート剤、安定化剤、pH調節剤、防腐剤、保存剤、抗酸化剤、溶解補助剤、粘稠化剤等)等が例示される。また、本開示の樹状細胞ワクチンは、アジュバントを含んでいてもよい。これらは、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0044】
本開示の樹状細胞ワクチンの製剤形態は、特に限定されず、例えば、錠剤、丸剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤、液剤、シロップ剤、ゼリー剤等の経口投与剤;注射剤、点滴剤、軟膏剤、パップ剤、貼付剤、点鼻剤、吸入剤、坐剤等の非経口投与剤等を挙げられる。中でも、注射剤が好ましい。
【0045】
本開示の樹状細胞ワクチンの投与方法としては、例えば、経口投与、及び非経口(例えば静脈、動脈、筋肉、皮下、腹腔、直腸、経皮、局所など)投与により、投与することができる。中でも、皮下投与が好ましい。
【0046】
本開示の樹状細胞ワクチンの投与対象としては、例えば、哺乳動物が挙げられる。哺乳動物としては、ヒト;ラット、マウス、ウサギ、ウシ、ブタ、イヌ、ネコ、ヒツジ、サル等の非ヒト哺乳動物などが例示される。
【0047】
本開示の樹状細胞ワクチンの投与(摂取)量は、特に限定されず、投与する対象の年齢、性別、症状の程度、投与方法等により決定される。
【0048】
本開示は、下記一般式(1)で表される基を側鎖に有する高分子化合物を含有する、樹状細胞ワクチン製造補助剤をも包含する。本明細書において、当該樹状細胞ワクチン製造補助剤を、「本開示の樹状細胞ワクチン製造補助剤」と表記することがある。
【化5】
【0049】
一般式(1)で表される基を側鎖に有する高分子化合物については、上記記載を援用することができる。
【0050】
本開示の樹状細胞ワクチン製造補助剤における、一般式(1)で表される基を側鎖に有する高分子化合物の含有量は、特に限定されず、適宜設定することができる。
【0051】
本開示の樹状細胞ワクチン製造補助剤は、一般式(1)で表される基を側鎖に有する高分子化合物に加えて、さらに他の成分を含むことができる。当該他の成分としては、薬学的に許容される各種担体(例えば、溶剤、分散剤、等張化剤、キレート剤、安定化剤、pH調節剤、防腐剤、保存剤、抗酸化剤、溶解補助剤、粘稠化剤等)等が例示される。これらは、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0052】
本開示の樹状細胞ワクチン製造補助剤の形態は、特に限定されず、例えば、液体状(例えば、溶液状、懸濁液状等)、ペースト状、又は固体状(例えば、粉末状、等)等であってもよい。
【0053】
本開示の樹状細胞ワクチン製造補助剤によれば、樹状細胞による抗原の取り込みを促進することができる。
【0054】
なお、本明細書において「含む」とは、「本質的にからなる」と、「からなる」をも包含する(The term "comprising" includes "consisting essentially of ” and "consisting of.")。また、本開示は、本明細書に説明した構成要件を任意の組み合わせを全て包含する。
【0055】
また、上述した本開示の各実施形態について説明した各種特性(性質、構造、機能等)は、本開示に包含される主題を特定するにあたり、どのように組み合わせられてもよい。すなわち、本開示には、本明細書に記載される組み合わせ可能な各特性のあらゆる組み合わせからなる主題が全て包含される。
【実施例0056】
本開示の内容を以下の実験例等を用いて具体的に説明する。しかし、本開示はこれらに何ら限定されるものではない。下記において、特に言及する場合を除いて、実験は大気圧及び常温条件下で行っている。また特に言及する場合を除いて、「%」は「質量%」を意味する。
【0057】
実験例1:DC2.4による抗原取り込み試験
細胞株と用いた培地
C57BL/6マウス由来樹状細胞株Dendritic Cell 2.4(DC2.4)はUniversity of Assachusetts Medical schoolのKenneth l.Rockより提供された。DC2.4はFetal Bovine Serum (FBS)(SIGMA Life Science)10%、Non-Essential Amino Asids solution(ナカライテスク)1%、Sodium Pyruvate Solution(ナカライテスク)1%、Penicilin Streptomycin(ナカライテスク)1%、2-MercaptoEthanol(FUJIFILM)0.004%を含むRoswell Park Memorial Institute(RPMI)培地で培養した。ただし、DC2.4への抗原導入時にはFBSのみ含まず他の試薬を加えたRPMI培地を使用した(これをFBS(-)RPMI培地とする)。
【0058】
実験手順
1.0×105 cellのDC2.4を24ウェルプレートに播種し、RPMI培地で1日培養した。培養液の上清を除去し、FBS(-)RPMI培地を加えた。抗原としてOvalbumin-Fluorescein conjugate(OVA)(Merck)を用いた。OVA 10μg/ml(図1中、OVAと示す。)、OVA 10μg/mlとKeyhole Limpet Hemocyanin(KLH)(Wako) 50μg/mlの混合物(図1中、OVA+KLHと示す。)、OVA 10μg/mlと膜透過ペプチド固定化高分子HA-G4R8 50μg/mlの混合物(図1中、OVA+HAと示す。)、OVA 10μg/mlと膜透過ペプチド固定化高分子VP-R8 50μg/mlの混合物(図1中、OVA+VPと示す。)を、DC2.4を培養しているウェルプレートにtriplicate(各群n=3)で添加した。なお、HA-G4R8とVP-R8は摂南大学の佐久間信至先生より提供された。構造式をそれぞれ以下に示す。なお、膜透過ペプチド固定化高分子HA-G4R8の主鎖のヒアルロン酸の重量平均分子量は27 kDaであり、膜透過ペプチド部分の分子量とその固定化率から算出した、膜透過ペプチド固定化高分子HA-G4R8の重量平均分子量は114 kDaであった。また、膜透過ペプチド固定化高分子VP-R8の幹高分子(PNVA-co-AA:アクリル酸/N-ビニルアセトアミド共重合体)の重量平均分子量は、350 kDaであり、膜透過ペプチドとして用いたD-オクタアルギニンの分子量とその固定化率から算出した、膜透過ペプチド固定化高分子VP-R8の重量平均分子量は1100 kDa(計算値)であった。
【0059】
【化6】
【0060】
【化7】
【0061】
ウェルプレートを37℃、1時間インキュベートした。上清を除去し、Dulbecco’s Phosphate Buffered Saline(D-PBS)で2回洗浄した。Accutase(商標)(ナカライテスク)を添加し、37℃、5分間インキュベートした。ピペッティングし細胞塊をほぐして単一にし、15 mlチューブにうつして、4℃、2000 rpm、5分で遠心した。D-PBSで2回洗浄した後300μlのD-PBSに懸濁し、Guava(登録商標)easyCyte(商標)Flow Cytometers(Luminex Corporation)によりMean Fluorescence Intensity(MFI)を測定した。結果を図1に示す。
【0062】
図1に示すとおり、OVAと膜輸送性高分子ポリマーVP-R8の混合物を添加した場合に、DC2.4による抗原(OVA)取り込みが有意に増加していることが確認された。
【0063】
実験例2:DC2.4ワクチンin vivo実験
用いた動物と細胞株
実験に用いたメスのC57BL/6マウスはチャールズリバーより購入した。また、DC2.4は実験例1と同様の方法により培養を行った。
C57BL/6Nマウス由来の悪性リンパ腫細胞株であるEL4細胞を使用し、FBS 10%を含むRPMI培地を用いて培養した。
【0064】
腫瘍細胞溶解液(ライセ―ト)の準備
シャーレに培養したEL4細胞をDulbecco’s Phosphate Buffered Saline(D-PBS)で2回洗浄した。0.25w/v%トリプシン-1mmol/l EDTA・4Na溶液(Wako)を添加し、37℃、5分インキュベートした。シャーレからはがした細胞をD-PBSで2回洗浄後、2×107 cells/mLでD-PBSに懸濁した。液体窒素に細胞液を3分間浸したのちに42℃で解凍した。これを5回繰り返した。4℃、10000 rpm、10分遠心した後、上清を回収した。回収した上清を0.22μmのMillex-GV Filter Unit(Merck)で濾過し、その液をライセ―トとして回収した。
【0065】
マウスへの腫瘍投与
培養したEL4細胞の上清を除去し、D-PBSで1回洗浄後、トリプシンを添加後インキュベートした。細胞数をカウントし、細胞液が1.4×105 cells/70μlになるよう調整した。70μlずつ1.5 mlチューブに分注し、同量のCorning(登録商標)Matrigel(登録商標)(Corning)を加えた。マウスにセボフルラン(Wako)を用いて麻酔をかけ、細胞液をピペットでやさしく十分に混和した後、右側背中部に1.4×105 cells/100μlで皮下投与した。
【0066】
DC2.4ワクチンの調製と投与
培養したDC2.4細胞の上清を除去し、FBS(-)RPMI培地を3 ml加えた。DC2.4細胞にライセ-ト(図2中、DC2.4+EL4Lysateと示す。)、ライセ―トとKeyhole Limpet Hemocyanin(KLH)(Wako)50μg/mlの混合物(図2中、DC2.4+EL4Lysate+KLHと示す。)、ライセ-トとVP-R8 12.5μg/mlの混合物(図2中、DC2.4+EL4Lysate+VPと示す。)を添加した。ライセ-トはDC2.4(1.0×106 cells/mouse)の3倍の細胞数から抽出した。添加後、振盪させながら1h、37℃インキュベートした。上清を除去し、Dulbecco’s Phosphate Buffered Saline(D-PBS)で2回洗浄した。Accutase(商標)(ナカライテスク)を添加し、37℃、5分間インキュベートした。ピペッティングし細胞塊をほぐして単一にし、15 mlチューブにうつして、4℃、2000 rpm、5分で遠心し、D-PBSで2回洗浄した。マウス1匹あたり1.0×106 cells in 100μl D-PBS投与できるようD-PBSに懸濁しDC2.4ワクチンを調製した。
【0067】
腫瘍を投与した日をday0として、day7、10、13に、マウスの鼠径リンパ節周辺に調製した各DC2.4ワクチンの皮下投与を行った。なお、DC2.4+EL4Lysate、DC2.4+EL4Lysate+VP、DC2.4+EL4Lysate+KLHに加えて、PBSのみ(図2中、PBSと示す。)、およびライセート、KLHまたはVPのいずれも添加せずに培養調整したDC2.4細胞(図2中、DC2.4と示す。)についても同様にマウスの鼠径リンパ節周辺に皮下投与を行った。
【0068】
腫瘍径測定を行い、平均腫瘍体積の算定を行った。腫瘍の体積は(腫瘍体積)=(腫瘍の長径)×(腫瘍の短径)2/2で算定を行った。結果を図2に示す。
【0069】
図2に示す通り、DC2.4細胞にライセ―トとVP-R8の混合物を添加して調製した懸濁液(DC2.4ワクチン)をマウスに投与すると、腫瘍体積の増加が抑制することが確認された。
【0070】
実験例3:治療したマウスから摘出した脾臓細胞を用いたICCS実験
用いた動物と細胞株
実験例2と同様の動物、及び細胞株を同様に用いた。
【0071】
腫瘍細胞溶解液(ライセ―ト)の準備
実験例2と同様の方法により、ライセートを調製した。
【0072】
DC2.4ワクチンの調製と投与
実験例2と同様の方法により、D-PBSに懸濁したDC2.4ワクチン(DC2.4+EL4Lysate、DC2.4+EL4Lysate+VP、DC2.4+EL4Lysate+KLH)を調製し、マウスの鼠径リンパ節周辺に計3回皮下投与を行った(最初に投与を行った日をday0とし、day0、3、6に投与を行った)。なお、DC2.4+EL4Lysate、DC2.4+EL4Lysate+VP、DC2.4+EL4Lysate+KLHに加えて、PBSのみ(図3中、PBSと示す。)、およびライセート、KLHまたはVPのいずれも添加せずに培養調整したDC2.4細胞(図3中、DC2.4と示す。)についても同様にマウスの鼠径リンパ節周辺に皮下投与を行った。
【0073】
脾臓回収
最後に投与を行ってから2週間後(day20)にマウスを安楽死させ、脾臓を回収し、セルスクレイパー(日本ジェネティクス)と滅菌ピンセット(アズワン)を使って、脾臓をすりつぶした。セルストレイナー(コーニング)で脾臓細胞を濾過した。4℃、2000 rpm、5分で遠心後、上清を除去した。Red Blood Cell Lysis Buffer (Sigma Aldrich) を1 ml入れて室温で2分インキュベートした。RPMI培地を5 ml加え混和し、4℃、2000 rpm、5分で遠心した。上清を吸い、D-PBSで2回洗浄し、RPMI培地1 mlで懸濁した。96ウェルプレートに細胞液100μlを加え、培養しておいたEL4 2.0×105 cells/サンプルをMitomycin C 50μg/mlで処理したものを100μl添加し、抗原刺激を行った。
【0074】
ICCS実験
抗原刺激を行った脾臓細胞にBD Golgi Stop(商標)(BDs Biosciences)を添加後12時間培養し、ウェルプレートを遠心(4℃、2500 rpm、5 min)し、上清除去した。100μlのstaining buffer(1%FBS、0.09%アジ化ナトリウムin PBS)で1回洗浄(4℃、2500 rpm、5 min)し、上清除去した。1μg CD16/32抗体(Bio Legend)in 100μl staining bufferを添加し氷上で15分間静置した。100μlのstaining bufferで1回洗浄(4℃、2500 rpm、5 min)し、上清除去した。NC(ネガティブコントロール)用の脾臓細胞として抗体反応を行わないサンプルを用意した。FITC-anti-mouse CD4 (BD Biosciences) 抗体、APC-anti-mouse CD8 (BD Biosciences) 抗体、PerCP-anti-mouse CD3 (BD Biosciences) 抗体in Staining Bufferを100μl添加し遮光下、氷上30分静置した。100μlのstaining bufferで1回洗浄(4℃、2500 rpm、5 min)し、上清除去した。細胞を100μl Fixation/Permeabilization solution (BD Biosciences) で遮光下、氷上20分静置した。1×BD Perm/Wash Buffer (BD Biosciences) で2回洗浄した(4℃、3500 rpm、5 min)。細胞をPE-anti mouse IFN-γ抗体(BD Biosciences)[0.5μg in 100μl Perm/Wash Buffer(終濃度5μg/ml)]で遮光下、氷上30分静置した。1×BD Perm/Wash Bufferで2回洗浄(4℃、3500 rpm、5 min)した。細胞を300μl staining bufferに懸濁し、Guava(登録商標)easyCyte(商標)Flow Cytometers(Luminex Corporation)によりMean Fluorescence Intensity(MFI)を測定した。結果を図3に示す。
【0075】
図3に示すとおり、DC2.4細胞にライセ―トとVP-R8の混合物を添加して培養調製したDC2.4ワクチンをマウスに投与すると、抗原タンパク(EL4細胞)の刺激に反応してIFN-γ陽性のCD4およびCD8細胞数が増加する傾向が確認された。これは当該ワクチンが抗原特異的な細胞性免疫を誘導することができることを示唆する。
図1
図2
図3
【配列表】
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