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特開2022-76810コンクリート床面仕上げ装置及びコンクリート床面仕上げ方法
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  • 特開-コンクリート床面仕上げ装置及びコンクリート床面仕上げ方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022076810
(43)【公開日】2022-05-20
(54)【発明の名称】コンクリート床面仕上げ装置及びコンクリート床面仕上げ方法
(51)【国際特許分類】
   E04F 21/24 20060101AFI20220513BHJP
   E04G 21/10 20060101ALI20220513BHJP
【FI】
E04F21/24 D
E04G21/10 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020187402
(22)【出願日】2020-11-10
(71)【出願人】
【識別番号】591205536
【氏名又は名称】JFEシビル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001461
【氏名又は名称】特許業務法人きさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】入稲福 力
(72)【発明者】
【氏名】安田 博和
(72)【発明者】
【氏名】中村 信行
(72)【発明者】
【氏名】山岡 賢史
【テーマコード(参考)】
2E172
【Fターム(参考)】
2E172AA05
2E172GB01
(57)【要約】
【課題】コンクリート床面の水分が蒸発し易い環境下においてもコンクリート床面の仕上げ作業を実施できるコンクリート床面仕上げ装置及びコンクリート床面仕上げ方法を提供する。
【解決手段】本発明のコンクリート床面仕上げ装置は、コンクリート床面に当接され回転軸を中心に回転する回転鏝と、回転鏝を回転駆動させる駆動装置と、液体を貯留するタンクと、タンクに貯留された液体が吐出される噴霧ノズルをコンクリート床面に向けて形成された噴霧装置と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート床面に当接され回転軸を中心に回転する回転鏝と、
前記回転鏝を回転駆動させる駆動装置と、
液体を貯留するタンクと、
前記タンクに貯留された液体が吐出される噴霧ノズルを前記コンクリート床面に向けて形成された噴霧装置と、を備える、コンクリート床面仕上げ装置。
【請求項2】
前記回転鏝は、
複数の板状の鏝部材を備える、請求項1に記載のコンクリート床面仕上げ装置。
【請求項3】
前記回転鏝は、
前記コンクリート床面に当接される円盤状の当接部を備える、請求項1に記載のコンクリート床面仕上げ装置。
【請求項4】
前記回転鏝は、
前記当接部の周縁が上方に折り曲げられ有底筒形状に形成されている、請求項3に記載のコンクリート床面仕上げ装置。
【請求項5】
前記タンク及び前記駆動装置が載置されるフレームと、
前記フレームから斜め上方に延びるハンドルと、を備え、
前記噴霧装置は、
上面視において、前記ハンドルが延びる方向に対し側方に向かって延びる、請求項1~4の何れか1項に記載のコンクリート床面仕上げ装置。
【請求項6】
前記ハンドルは、
作業者が把持する把持部と、
前記噴霧装置からの液体吐出量を調整する調整機構と、を備える、請求項5に記載のコンクリート床面仕上げ装置。
【請求項7】
前記噴霧装置は、
前記タンクに貯留された液体の吐出方向が前記回転鏝の回転半径よりも外側に向けられている、請求項1~6の何れか1項に記載のコンクリート床面仕上げ装置。
【請求項8】
前記噴霧装置は、
液体が吐出される噴霧ノズルを複数備える、請求項1~7の何れか1項に記載のコンクリート床面仕上げ装置。
【請求項9】
コンクリート床面に当接され回転軸を中心に回転する回転鏝と、
前記回転鏝を回転駆動させる駆動装置と、
液体を貯留するタンクと、
前記タンクに貯留された液体を前記コンクリート床面に噴霧する噴霧装置と、を備えるコンクリート床面仕上げ装置を用いて行われるコンクリート床面仕上げ方法であって、
前記コンクリート床面仕上げ装置は、回転する前記回転鏝を前記コンクリート床面に当接させながら前記コンクリート床面上を移動し、前記タンク内の液体を前記噴霧装置から前記コンクリート床面に向けて噴霧する、コンクリート床面仕上げ方法。
【請求項10】
前記コンクリート床面の状態に応じて前記噴霧装置からの液体吐出量を調整する、請求項9に記載のコンクリート床面仕上げ方法。
【請求項11】
前記回転鏝として前記コンクリート床面に当接される円盤状の当接部を備える第1回転鏝を用いて前記コンクリート床面の仕上げ作業を行った後に、前記回転鏝として複数の板状の鏝部材を備える第2回転鏝を用いて前記コンクリート床面の仕上げ作業を行う、請求項9又は10に記載のコンクリート床面仕上げ方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、打設されたコンクリート床面を仕上げ作業に用いるコンクリート床面仕上げ装置及びコンクリート床面仕上げ方法に関する。
【背景技術】
【0002】
建築物の床スラブ及び道路橋の床版等を設置する際にコンクリートが打設される。打設されたコンクリート床面の仕上げ作業は、鏝を用いて作業員が手作業で行うか、トロウェルと呼ばれるコンクリート床面仕上げ装置を用いて行われる(例えば、特許文献1を参照)。トロウェルは、回転駆動される回転鏝をコンクリート床面に接触させた状態で、コンクリート床面上を移動され、コンクリート床面の凹凸を均す。このコンクリート床面の凹凸を均すことを仕上げ作業、又は不陸調整作業と呼ぶ。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-087446号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
通常、床スラブ等の設置工程は、コンクリートを流し込み打設し、棒状バイブレータ等により振動を加えられ締固めが行われ、トンボ等で表面が均された後、締固めタンパを用いて締固められ、その後にトロウェル等を用いて仕上げ作業が行われる。この仕上げ作業は、打設されたコンクリートに加水せずに行われる。しかし、暑中の直射日光下においては、コンクリート表面から急速に水分が蒸発し、急激に固まり仕上げ作業ができなくなるという課題があった。
【0005】
本発明は上記課題を解決するものであって、コンクリート床面の水分が蒸発し易い環境下においても仕上げ作業を実施できるコンクリート床面仕上げ装置及びコンクリート床面仕上げ方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るコンクリート床面仕上げ装置は、コンクリート床面に当接され回転軸を中心に回転する回転鏝と、前記回転鏝を回転駆動させる駆動装置と、液体を貯留するタンクと、前記タンクに貯留された液体が吐出される噴霧ノズルを前記コンクリート床面に向けて形成された噴霧装置と、を備える。
【0007】
本発明に係るコンクリート床面仕上げ方法は、コンクリート床面に当接され回転軸を中心に回転する回転鏝と、前記回転鏝を回転駆動させる駆動装置と、液体を貯留するタンクと、前記タンクに貯留された液体を前記コンクリート床面に噴霧する噴霧装置と、を備えるコンクリート床面仕上げ装置を用いて行われるコンクリート床面仕上げ方法であって、前記コンクリート床面仕上げ装置は、回転する前記回転鏝を前記コンクリート床面に当接させながら前記コンクリート床面上を移動し、前記タンク内の液体を前記噴霧装置から前記コンクリート床面に向けて噴霧する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、コンクリート床面の仕上げ作業を行いながら、搭載されたタンク内の液体を床面に噴霧することができる。そのため、暑中の直射日光下などの水分が蒸発し易い環境下においても、適度な水分をコンクリート床面に供給し、回転鏝とコンクリート床面との間の摩擦力を抑えつつ、その水分が蒸発しコンクリート床面が固化する前に仕上げ作業を実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施の形態1に係るコンクリート床面仕上げ装置100の斜視図である。
図2】実施の形態1に係るコンクリート床面仕上げ装置100の側面図である。
図3】実施の形態1に係るコンクリート床面仕上げ装置100の上面図である。
図4】実施の形態1に係るコンクリート床面仕上げ装置100の回転鏝12の変形例である回転鏝13の上面図及び断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。なお、以下に説明する実施の形態によって本発明が限定されるものではない。各図は模式的に示すものであって、各部材の相対的な大きさや板厚等は図示する寸法に限定されるものではない。また、以下の図面では各構成部材の大きさの関係が実際のものとは異なる場合がある。
【0011】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係るコンクリート床面仕上げ装置100の斜視図である。図2は、実施の形態1に係るコンクリート床面仕上げ装置100の側面図である。図3は、実施の形態1に係るコンクリート床面仕上げ装置100の上面図である。図1図3に示されているコンクリート床面仕上げ装置100は、パワートロウェルとも呼ばれ、打設されているコンクリート床面90の表面の凹凸を回転鏝12により均すものである。
【0012】
作業者は、コンクリート床面仕上げ装置100のハンドル22の把持部23を把持してコンクリート床面90上を移動し、コンクリート床面90上の仕上げ作業を行う。コンクリート床面仕上げ装置100は、作業者によりx軸に沿った方向に揺動されつつ、y方向又はy方向逆向きに進みながら凹凸を均す。このコンクリート床面の凹凸を均す作業を仕上げ作業又は不陸調整作業と呼ぶ。実施の形態1に係るコンクリート床面仕上げ装置100は、コンクリート床面90の表面に水分を供給しながら仕上げ作業をすることにより、コンクリート床面90の表面の固化及び乾燥によって仕上げ作業が実施できなくなるのを抑制するものである。なお、以下において、コンクリート床面仕上げ装置100を単に仕上げ装置100と称する場合がある。また、図1図3に示されている、x方向はハンドル22の把持部23を持った作業者から見て側方であり、y方向は作業者から見て前方向、z方向は作業者から見て上方向である。
【0013】
(全体構成)
コンクリート床面仕上げ装置100は、フレーム20の上に駆動装置30が搭載され、フレーム20の下部には回転鏝12が回転自在に設置されている。駆動装置30と回転鏝12とは、動力伝達部33により接続されている。駆動装置30は、例えば燃料で駆動するエンジンである。動力伝達部33は、例えば、エンジンの回転を動力伝達部33の内部に設置されたプーリー(図示せず)及びベルトを介して回転軸11に伝達するものである。動力伝達部33は、その他にスプロケット、チェーン、歯車等を用いて動力を伝達するものであってもよい。
【0014】
回転鏝12は、回転軸11を中心として図のxy平面に沿って四方に延びるように設けられている。回転鏝12は、表面が滑らかに形成された板状の部材であり、例えば薄い金属板により構成される。回転鏝12は、それぞれ回転軸11に固定部材14により接続され、回転軸11を中心にxy平面に沿って回転する。実施の形態1においては、回転鏝12の回転半径は約0.5m程度に構成されている。実施の形態1に係る回転鏝12は、4枚の鏝部材12aで構成されているが、この形態に限定されるものではなく、鏝部材12aの設置数及び形状は、仕上げ工程の段階に応じて適宜変更しても良い。
【0015】
コンクリート床面仕上げ装置100は、フレーム20からy方向逆向きに斜め上方に延びるハンドル22を備える。ハンドル22の先端部は、把持部23が形成されて作業者が把持できるように構成されている。
【0016】
フレーム20は、駆動装置30のほかにタンク31が搭載されている。タンク31は、内部に液体を貯留できるように構成されている。タンク31には、噴霧装置50が接続されている。噴霧装置50は、タンク31内の液体が噴霧装置の先端にある噴霧ノズル51からコンクリート床面90に向かって吐出するように構成されている。
【0017】
噴霧装置50は、ハンドル22から駆動装置30の方向、即ち図1~3のy方向の視点において、右の側方に突出して設置されている。噴霧装置50の吐出管52は、タンク31に接続されており、噴霧用動力34によりタンク31内から液体が送り込まれる。なお、実施の形態1においては、駆動装置30の動力と噴霧用動力34とは、別個の動力として記載しているが、噴霧用動力34は、駆動装置30が備える動力を利用することもできる。吐出管52を経た液体は、噴霧ノズル51において霧状にされ、コンクリート床面90に向かって吐出される。噴霧装置50がハンドル22側から見て駆動装置30の側方に配置されているため、作業者は、噴霧ノズル51からの液体の吐出の様子や、液体によって湿らされたコンクリート床面90の状態を確認し易い。
【0018】
ハンドル22の把持部23には、噴霧装置50の液体吐出量を調整する調整機構24が設けられている。調整機構24と噴霧用動力34とは、配線32により接続されている。作業者は、調整機構24を操作することにより噴霧用動力34の出力を操作できるため、噴霧装置50から吐出される液体の吐出量を把持部23を持ちながら操作できる。なお、調整機構24は、単純に噴霧用動力34の運転を開始及び停止するだけのスイッチであっても良い。
【0019】
(回転鏝13)
図4は、実施の形態1に係るコンクリート床面仕上げ装置100の回転鏝12の変形例である回転鏝13の上面図及び断面図である。図4(a)は上面図、図4(b)は回転鏝13の中心を含む断面図である。回転鏝12及び13は、コンクリート床面90の仕上げ工程において、仕上げ段階に応じて使い分けられる。回転鏝13は、仕上げ工程の初期の段階で用いられるものである。
【0020】
回転鏝13は、円盤状の当接部13aがコンクリート床面90に当接するようにして回転駆動される。これにより、コンクリート床面仕上げ装置100は、コンクリート床面90に生じている比較的大きな凹凸を抑え、除去することができる。なお、仕上げ工程の初期の段階で用いられる回転鏝13を第1回転鏝と称する。
【0021】
回転鏝13は、円盤状の当接部13aの周縁部13bが上方に立ち上げられ、有底筒形状に形成されている。当接部13aと周縁部13bとは、曲面部13cにより接続されている。曲面部13cは、なめらかに形成されており、回転鏝13がコンクリート床面90上を移動した際に、コンクリート床面90の表面を大きく削りとって傷つけることがない。
【0022】
また、実施の形態1において、回転鏝13は、上記で説明した4枚の回転鏝12に重ねるようにして取り付けることができる。このように構成されることにより、コンクリート床面仕上げ装置100は、一台で仕上げ工程のうち複数の工程に用いることができる。なお、回転鏝13は、回転軸11に直接取り付けられていても良い。
【0023】
実施の形態1において、床面仕上げ装置100は、回転鏝13で仕上げ作業を行った後に、回転鏝13が取り外される。次に、4枚の板状の鏝部材12aで構成された回転鏝12をコンクリート床面90に当接させるようにして、仕上げ作業が行われる。仕上げ工程の最終段階で用いる4枚の板状の鏝部材12aで構成された回転鏝12を第2回転鏝と称する。
【0024】
(コンクリート床面仕上げ装置100の作用)
コンクリート床面仕上げ装置100の作用を説明するにあたり、まず、コンクリートを打設してコンクリート床面が完成するまでの工程の一例を説明する。
【0025】
床面を形成するにあたり、型枠により区画された領域にコンクリートが流し込まれる。コンクリートを流し込む作業と並行して、締固め工程が行われる。締固め工程は、例えばコンクリート内部に振動機を挿入してコンクリートを内部から振動して行われる。
【0026】
締固め工程の後、コンクリートの表面が均される。この作業はトンボ等の道具を用いて行われる。
【0027】
トンボにより表面が均された後、締固めタンパなどの道具を用いて、コンクリートの表面から振動を加えて、更に締固め工程が行われる。締固めタンパは、例えば板状の締固めボードをコンクリート床面90に押し当てて、エンジン又はモーターなどの動力により振動を加えるものである。この工程により、コンクリートは、型枠内の隅々まで隙間なく行き渡る。
【0028】
2回目の締固め工程が完了し、コンクリート床面90の表面に染み出た水が無くなったら、コンクリート床面90の凝結、硬化度合いを見てコンクリート表面の仕上げ工程が行われる。コンクリート床面90の仕上げ工程は、金鏝又は実施の形態1に係るコンクリート床面仕上げ装置100を用いて、ムラや不陸が除かれる。
【0029】
(コンクリート床面仕上げ工程)
コンクリート床面90の仕上げ工程は、まず回転鏝13を取り付けたコンクリート床面仕上げ装置100により行われる。回転鏝13は、円盤状の当接部13aの表面によりコンクリート床面90を抑えることにより、大きな凹凸を抑える。回転鏝13は、一体の円盤状の当接部13aを有することにより、コンクリート床面90を大きく削り取ったりすることがないため、仕上げ工程の初期に都合が良い。
【0030】
コンクリート床面仕上げ装置100は、把持部23を握った作業者から見て、左右方向に揺動されながら徐々にy方向に進むことによりコンクリート床面90を均す。作業者は、回転鏝13の周囲のコンクリート床面90の状態を確認しながらコンクリート床面仕上げ装置100を移動させていく。
【0031】
回転鏝13により、コンクリート床面90から大きな凹凸やムラが除去されたら、今度は4枚の回転鏝12によりコンクリート床面90が仕上げられる。回転鏝12の場合も回転鏝13の場合と同様に、作業者は、コンクリート床面仕上げ装置100を左右に揺動させながら、回転軸11を中心に回転する回転鏝12によりコンクリート床面90を均していく。
【0032】
コンクリート床面仕上げ装置100によりコンクリート床面90から不陸が除去されたら、適宜手作業によりコンクリート床面仕上げ装置100が適用できない部分の不陸調整を行い、コンクリート床面仕上げ工程が完了する。なお、コンクリート床面仕上げ工程は、コンクリート床面仕上げ装置100が備える噴霧装置50によりコンクリート床面90に水分を供給しつつ行われる。
【0033】
(噴霧装置50の作用)
一般的にコンクリート床面90の仕上げ工程は、コンクリートに水分を追加供給することなく行われる。コンクリートに水分を追加すると、コンクリート床面90の表面近くの水分量が多くなり、内部と表面近くとの強度に差が出る場合がある。従って、仕上げ工程においては、基本的にコンクリートに水分を供給しない。
【0034】
しかし、例えば暑中の直射日光下などのコンクリート床面90が高温環境にさらされる場合、コンクリートの表面の水分が急激に蒸発し、コンクリートが凝固、硬化し、コンクリート床面90の仕上げ工程が実施できなくなる場合がある。水分が急激に蒸発し、凝固、硬化した状態で仕上げ作業を実施すると、回転鏝12又は13によりコンクリートが引きずられ、コンクリート床面90にひび割れが生じてしまう。
【0035】
近年、コンクリートから水分が蒸発しやすい環境においては、コンクリート床面90のひび割れなどの不具合を抑制するために、コンクリート床面90の表面に少量の水分を補ってよい、とされている《暑中コンクリートの施工指針・同解説(日本建築学会、2018年)参照》。実施の形態1に係るコンクリート床面仕上げ装置100は、噴霧装置50を備えており、少量の水分をコンクリート床面90に供給しながら仕上げ工程を行うことが可能になっている。噴霧装置50を備えるコンクリート床面仕上げ装置100によるコンクリート床面90の仕上げ工程は、例えば以下のように行われる。
【0036】
コンクリート床面仕上げ装置100は、一例として、噴霧装置50から6ml/秒の水が吐出されるように設定される。また、水の吐出量は、コンクリートが打設されている1mあたり40~70mlが散布されるように設定される。タンク31の容量は10Lであり、1日に打設されたコンクリート床面の面積が400m(1グリッドあたり100m)である場合、タンク31に水を1~2回追加すれば、1日に打設されたコンクリート床面90全体を噴霧しながら仕上げ工程を行うことができる。タンク31は、容量が10L以下に設定されていることにより、仕上げ工程が行われるコンクリート床面90に大きな荷重を掛けることがないため、適切な仕上げ工程を実施することができる。ただし、水の吐出量は、コンクリート床面90からの水分の蒸発量に応じて適宜調整されるものであり、コンクリートが打設された周囲の環境に応じて適宜設定することができる。
【0037】
噴霧装置50は、把持部23の近傍に設けられている調整機構24により、液体の噴霧の開始及び停止が操作される。作業者は、調整機構24を適宜調整し、噴霧を開始したり停止したりすると良い。また、噴霧装置50は、吐出量を適宜調整できるように構成されていても良い。この場合、作業者は、噴霧装置50からの吐出量を微調整しながら仕上げ工程を行うことができ、コンクリートに過剰な水分を供給することなく仕上げ工程を行うことができる。
【0038】
噴霧装置50の先端にある噴霧ノズル51は、コンクリート床面90に向けられている。噴霧ノズル51は、ある程度の範囲に霧状の液体が拡散するように構成されている。噴霧ノズル51は、噴霧範囲の中央が少なくとも回転鏝12及び13の外周の外側に位置するように設定されると良い。つまり、噴霧ノズル51は、上面視において駆動装置30の側方であり、かつフレーム20の上方に位置しており、吐出方向がフレーム20の外周21よりもやや外側に向けられている。換言すると、噴霧ノズル51は、回転鏝12又は13の外周よりも外側に向かって吐出するように構成されている。
【0039】
作業者は、ハンドル22の把持部23を持ち、左右にコンクリート床面仕上げ装置100を揺動させながら仕上げ作業をする。従って、噴霧装置50が上記のように設置されていることにより、仕上げ装置100が移動する方向のコンクリート床面90に水分を供給することができ、水分供給をした直後のコンクリート床面90に回転鏝12又は13を適用することができる。これにより、コンクリート床面90に過剰な水分を供給することを防ぐことが可能となる。
【0040】
また、噴霧ノズル51は、図2に示す上面視においてフレーム20の外周21よりも内側に位置しているため、周囲の障害物などに衝突して破損することがない。
【0041】
上記のように、噴霧装置50によりコンクリート床面90に少量の水分を供給しながらコンクリート仕上げ工程を行うことにより、コンクリート床面仕上げ装置100は、回転鏝12又は13とコンクリート床面90との摩擦力を増加させることなく、コンクリート床面90を仕上げることができる。特に、暑中の直射日光下などの水分が蒸発しやすく、コンクリートの凝固、硬化しやすい環境においては、コンクリート床面90の仕上げ作業を迅速に実施する必要があり、実施の形態1に係るコンクリート床面仕上げ装置100のような、エンジンなどの駆動装置30を利用した仕上げ装置100が必須である。駆動装置30を利用した仕上げ装置100は、装置自体の重量もあり、コンクリート床面90に与える負荷も大きい。しかし、仕上げ装置100によれば、噴霧装置50を備えることにより、回転鏝12又は13とコンクリート床面90との摩擦力を抑制でき、コンクリート床面90をひび割れなどの不具合なく仕上げることが可能となる。
【0042】
(変形例)
実施の形態1に係るコンクリート床面仕上げ装置100は、上記に説明した構成だけに限定されるものではない。例えば、噴霧装置50は、噴霧ノズル51の方向を変更自在に構成することができる。これにより、作業者は、仕上げ工程において、作業しやすい方向に水を吐出させることができ、作業効率を向上させることができる。
【0043】
また、噴霧装置50をコンクリート床面仕上げ装置100の側方に複数設置することができる。例えば、ハンドル22側から見てコンクリート床面仕上げ装置100の左右の2か所に噴霧ノズル51を設け、コンクリート床面仕上げ装置100の側方の両側のコンクリート床面90に水分を供給する構成にしてもよい。これにより、コンクリート床面仕上げ装置100が移動する方向の床面90に確実に水分を供給することができ、仕上げ装置100の移動方向の自由度が向上し、作業の効率化が図れる。また、複数の噴霧ノズル51を備える場合は、液体を吐出する噴霧ノズル51を切り替えられるように構成しても良い。
【0044】
なお、本発明は上述した実施の形態の構成のみに限定されるものではない。また、コンクリート床面仕上げ装置100は、変形例を適宜組み合わせて採用することもできる。要するに、いわゆる当業者が必要に応じてなす種々なる変更、応用、利用の範囲をも本発明の要旨(技術的範囲)に含むことを念のため申し添える。
【符号の説明】
【0045】
11 回転軸、12 回転鏝、13 回転鏝、13a 当接部、13b 周縁部、13c 曲面部、14 固定部材、20 フレーム、22 ハンドル、23 把持部、24 調整機構、30 駆動装置、31 タンク、32 配線、33 動力伝達部、34 噴霧用動力、50 噴霧装置、51 噴霧ノズル、52 吐出管、90 (コンクリート)床面、100 コンクリート床面仕上げ装置。
図1
図2
図3
図4