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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022076813
(43)【公開日】2022-05-20
(54)【発明の名称】口腔用組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/42 20060101AFI20220513BHJP
   A61Q 11/00 20060101ALI20220513BHJP
   A61K 8/49 20060101ALI20220513BHJP
   A61K 8/37 20060101ALI20220513BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20220513BHJP
   A61K 8/25 20060101ALI20220513BHJP
【FI】
A61K8/42
A61Q11/00
A61K8/49
A61K8/37
A61K8/34
A61K8/25
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020187405
(22)【出願日】2020-11-10
(71)【出願人】
【識別番号】000006769
【氏名又は名称】ライオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】工藤 弘子
(72)【発明者】
【氏名】小幡 麻衣
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AB172
4C083AB472
4C083AC111
4C083AC122
4C083AC432
4C083AC641
4C083AC851
4C083AC862
4C083AD042
4C083AD272
4C083AD531
4C083AD532
4C083BB23
4C083BB55
4C083CC41
4C083EE01
4C083EE06
4C083EE07
(57)【要約】
【課題】良好な保湿実感を得ることができ、粉きしみ感が抑制され、さらには保形性、曳糸性等の特性が良好である非水系の口腔用組成物を提供する。
【解決手段】(A)無機粉体、及び(B)冷感剤を含み、界面活性剤の含有量が0.5質量%以下であり、水分量が2質量%以下である、口腔用組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)無機粉体、及び
(B)冷感剤
を含み、
界面活性剤の含有量が0.5質量%以下であり、
水分量が2質量%以下である、口腔用組成物。
【請求項2】
(B)冷感剤が、N-エチル-p-メンタン-3-カルボキサミド、メンチルラクテート、メンチルモノサクシネート、イソプレゴール、メントングリセロールケタール、N-(4-シアノメチルフェニル)-p-メンタンカルボキサミド、3-l-メントキシプロパン-1,2-ジオール、5-メチル-2-プロパン-2-イル-N-(2-ピリジン-2-イルエチル)シクロヘキサン-1-カルボキサミド、3-(p-メンタン-3カルボキサミド)酢酸エチル、2-イソプロピル-N、2,3-トリメチルブチルアミドからなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1に記載の口腔用組成物。
【請求項3】
(A)無機粉体の含有量が2~50質量%である、請求項1又は2に記載の口腔用組成物。
【請求項4】
(B)冷感剤の含有量が0.0001~0.3質量%である、請求項1~3のいずれか1項に記載の口腔用組成物。
【請求項5】
(C)グリチルレチン酸、並びにグリチルリチン酸及びその塩からなる群から選ばれる1種以上をさらに含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の口腔用組成物。
【請求項6】
(D)溶媒をさらに含み、(D)溶媒が、融点が25℃以下の多価アルコールである、請求項1~5のいずれか1項に記載の口腔用組成物。
【請求項7】
歯磨剤又は塗布剤である、請求項1~6のいずれか1項に記載の口腔用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、口腔用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
実質的に水分を含まない非水系の口腔用組成物は、水系では不安定である有効成分の安定性を確保できる点で有利である。例えば、歯磨剤、又は口腔用保湿ジェル、口腔用クリーム等の口腔用塗布剤に用いられる口腔用組成物であって、水を実質的に含まない非水系口腔用組成物は、特に水に対して不安定である成分の安定性を確保しつつ効果的に配合できる点で有利である。
【0003】
例えば、特許文献1には、歯牙美白用として用いられる組成物であって、貼付時の歯面への組成物の密着性と適用用具除去後の歯面への残存性、貼付時の口腔全体への組成物の漏出抑制とブラッシング時の分散性を両立させることを目的として、(A)歯牙白色化成分としてグリセリン及び1,3-ブチレングリコール、(B)所定構造のゼオライト、(C)キサンタンガム、カルボキメチルセルロース及びその塩、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシビニルポリマー、カラギーナン、架橋剤により架橋されたメチルビニルエーテル/無水マレイン酸共重体の中から選ばれる少なくとも1種のゲル化剤、(D)アルキル硫酸塩を含有する非水系組成物が開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、保型性に優れ成分の分離などが起こらない経時的に安定な、水を含まないか又は水を殆ど含まない非水系の口腔用組成物を提供することを目的として、ポリエチレン末及びポリエチレンワックスからなる群から選ばれる少なくとも1種、並びに流動パラフィン、スクワラン及びスクワレンからなる群から選ばれる少なくとも1種を配合したことを特徴とする口腔用組成物用基剤が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4462428号公報
【特許文献2】特許第4723068号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献が開示している非水系の口腔用組成物によれば、使用後の口腔内の保湿実感を得ることが難しい場合があり、特に界面活性剤、とりわけアニオン界面活性剤が用いられている場合には、使用後に脱脂感が強く発現し、口腔内の保湿実感が顕著に低下する結果として、乾燥感を感じてしまう場合がある。
【0007】
また、上記特許文献にかかる口腔用組成物も含め、非水系の口腔用組成物には、多くの場合、研磨能、粘結能の付与、さらには曳糸性の抑制等を目的として無機粉体が配合されている。
【0008】
しかしながら、無機粉体が配合された非水系の口腔用組成物においては、保湿実感を高めるために上記界面活性剤の配合量を低減すると、特に使用の初期において、無機粉体に起因して粉きしみ感を強く感じてしまう場合がある。
【0009】
よって、本発明の目的は、良好な保湿実感を得ることができ、粉きしみ感が抑制され、さらには保形性、曳糸性等の特性が良好である非水系の口腔用組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
すなわち、本発明は、以下の[1]~[7]を提供する。
[1] (A)無機粉体、及び
(B)冷感剤
を含み、
界面活性剤の含有量が0.5質量%以下であり、
水分量が2質量%以下である、口腔用組成物。
[2] (B)冷感剤が、N-エチル-p-メンタン-3-カルボキサミド、メンチルラクテート、メンチルモノサクシネート、イソプレゴール、メントングリセロールケタール、N-(4-シアノメチルフェニル)-p-メンタンカルボキサミド、3-l-メントキシプロパン-1,2-ジオール、5-メチル-2-プロパン-2-イル-N-(2-ピリジン-2-イルエチル)シクロヘキサン-1-カルボキサミド、3-(p-メンタン-3カルボキサミド)酢酸エチル、2-イソプロピル-N、2,3-トリメチルブチルアミドからなる群から選ばれる少なくとも1種である、[1]に記載の口腔用組成物。
[3] (A)無機粉体の含有量が2~50質量%である、[1]又は[2]に記載の口腔用組成物。
[4] (B)冷感剤の含有量が0.0001~0.3質量%である、[1]~[3]のいずれか1つに記載の口腔用組成物。
[5] (C)グリチルレチン酸、並びにグリチルリチン酸及びその塩からなる群から選ばれる1種以上をさらに含む、[1]~[4]のいずれか1つに記載の口腔用組成物。
[6] (D)溶媒をさらに含み、(D)溶媒が、融点が25℃以下の多価アルコールである、[1]~[5]のいずれか1つに記載の口腔用組成物。
[7] 歯磨剤又は塗布剤である、[1]~[6]のいずれか1つに記載の口腔用組成物。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、良好な保湿実感を得ることができ、粉きしみ感が抑制され、さらには保形性、曳糸性等の特性が良好である非水系の口腔用組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の口腔用組成物は、(A)無機粉体、及び(B)冷感剤を含み、界面活性剤の含有量が0.5質量%以下であり、水分量が2質量%以下である口腔用組成物であって、(C)グリチルレチン酸、並びにグリチルリチン酸及びその塩からなる群から選択される1種以上及び/又は(D)溶媒をさらに含み得る口腔用組成物である。
【0013】
ここで、本明細書において、「保湿実感」とは、試験者が使用時において舌や口腔粘膜が潤うと感じる感覚をいう。
また、本明細書において、「粉きしみ感」とは、無機粉体が局所的に存在することにより、使用初期(磨き始め)において、特に上下歯が接触した際などに感じる不快感、異物感をいう。
さらに、本明細書において、「曳糸性」とは、ラミネートチューブ等の容器から取り出した際に、口腔用組成物が糸を引くように伸びる性状をいう。
【0014】
以下、口腔用組成物に含まれ得る(A)成分~(D)成分について説明する。
【0015】
[(A)無機粉体]
本発明の実施形態にかかる「(A)成分」は、無機粉体である。(A)成分は、口腔用組成物において、一般に、研磨剤、無機増粘剤、無機顔料等として使用されている成分である。
【0016】
無機粉体としては、例えば、無水ケイ酸、沈降性シリカ、チタン結合性シリカ、シリカゲル、アルミノシリケート、ジルコノシリケート等のシリカ化合物;炭酸カルシウム(軽質、重質)、リン酸カルシウム、リン酸水素カルシウム、ピロリン酸カルシウム、メタリン酸カルシウム、水酸化カルシウム、硫酸カルシウム等のカルシウム塩;酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、アルミナ等のアルミニウム塩;炭酸マグネシウム、第3リン酸マグネシウム等のマグネシウム塩;ハイドロキシアパタイト、フルオロアパタイト、カルシウム欠損アパタイト等のアパタイト;カオリナイト、ベントナイト等の粘土;二酸化チタン、雲母チタン、酸化チタン等のチタン化合物;等の無機物の粉体が挙げられる。これらのうち、無水ケイ酸、炭酸カルシウム、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、及びゼオライトがより好ましい。
【0017】
無機粉体の平均粒子径(体積基準D50)は、通常、1~30μmの範囲であり、好ましくは5~25μmの範囲である。
【0018】
本明細書において、「平均粒子径」とは、上記のとおり、レーザー回折・散乱法による測定値である平均粒子径(体積基準D50)をいう。
【0019】
平均粒子径は、例えば、従来公知の任意好適な粒度分布測定装置(例えば、マイクロトラック粒度分布測定装置(日機装社製、Mode117995-10,Type SRA))を用い、検体の濁度(dV値)を0.5に調整して測定することができる。なお、後述する実施例においても同様に測定した。
【0020】
(A)成分は、上記例示の無機粉体から選ばれる1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。2種以上の組み合わせとしては、例えば、研磨剤用途で用いられ得る(例えば、RDA50~120、好ましくは70~150、より好ましくは90~120)無機粉体と、無機増粘剤用途で用いられ得る無機粉体(例えば、吸液量2~5mL/g、好ましくは2.5~5mL/g)との組み合わせ等が挙げられる。前記吸液量は、増粘性シリカ1g当たりの吸液量(mL)として、例えば下記の測定法により算出することができる。
【0021】
試料1.0gを清浄なガラス板上に量りとり、ミクロビュレットを用いて、42.5%グリセリンを少量ずつ滴下しながらステンレス製のへらで均一になるように試料を混合する。試料が一つの塊となり、へらでガラス板よりきれいに剥がれるようになるまでに要した液量(mL)を吸液量とする。
【0022】
-(A)成分の含有量-
(A)成分の含有量は、口腔用組成物の全量に対し、通常、2質量%以上、好ましくは5質量%以上、より好ましくは8質量%以上である。これにより、適度な粘度が付与でき、良好な保形性を確保することができ、良好な使用実感を実現することができる。上限は、通常、50質量%以下、好ましくは40質量%以下、より好ましくは30質量%以下、更に好ましくは20質量%以下である。これにより、口腔用組成物の粘度の過度な上昇を抑制でき、良好な保形性を維持することができ、良好な使用実感(清掃実感)を実現することができる。従って、(A)成分の含有量は、通常、2~50質量%、好ましくは5~50質量%、より好ましくは8~40質量%である。
【0023】
本実施形態の口腔用組成物の粘度は、25℃で20~100Pa・s程度であることが好ましい。口腔用組成物の粘度は、例えば、東機産業(株)(形式:VISCOMETER TVB-10)、ローターNo.6または7を使用して、回転数を20rpmとし、測定時間を3分間として25℃の条件で測定することができる。
【0024】
なお、本明細書において、各成分の含有量は、口腔用組成物を製造する際の各成分の仕込み量を基準としている。
【0025】
[(B)冷感剤]
本発明の実施形態にかかる(B)成分は、冷感剤である。本発明の口腔用組成物は、(B)成分を含有することにより、(A)成分に起因する使用初期(磨き始め)の粉きしみ感を改善し、良好な使用実感を実現することができる。
【0026】
(B)成分である冷感剤は、例えば、N-エチル-p-メンタン-3-カルボキサミド、メンチルラクテート、メンチルモノサクシネート、イソプレゴール、メントングリセロールケタール、N-(4-シアノメチルフェニル)-p-メンタンカルボキサミド、3-l-メントキシプロパン-1,2-ジオール、5-メチル-2-プロパン-2-イル-N-(2-ピリジン-2-イルエチル)シクロヘキサン-1-カルボキサミド、3-(p-メンタン-3カルボキサミド)酢酸エチル、2-イソプロピル-N、2,3-トリメチルブチルアミドからなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。これらのうち、N-エチル-p-メンタン-3-カルボキサミド、N-(4-シアノメチルフェニル)-p-メンタンカルボキサミド、3-l-メントキシプロパン-1,2-ジオール、5-メチル-2-プロパン-2-イル-N-(2-ピリジン-2-イルエチル)シクロヘキサン-1-カルボキサミド、及び3-(p-メンタン-3カルボキサミド)酢酸エチルがより好ましい。
【0027】
-(B)成分の含有量-
(B)成分の含有量は、口腔用組成物の全量に対し、粉きしみ感を改善する観点から、好ましくは0.0001質量%以上、より好ましくは0.001質量%以上、さらに好ましくは0.01質量%以上である。これにより、口腔用組成物の使用初期の粉きしみ感を改善し、良好な使用実感を実現することができる。(B)成分の含有量の上限は、口腔用組成物の粘度を最適に調整する観点から、好ましくは0.3質量%以下、より好ましくは0.2質量%以下、さらに好ましくは0.1質量%以下である。これにより、口腔用組成物の使用初期の粉きしみ感を改善し、良好な使用実感を実現することができる。従って、(B)成分の含有量は、好ましくは0.0001~0.3質量%であり、より好ましくは0.001~0.2質量%であり、さらに好ましくは0.01~0.1質量%である。
【0028】
[(C)グリチルレチン酸、並びにグリチルリチン酸及びその塩]
(C)成分は、グリチルレチン酸、グリチルリチン酸及びこれらの塩からなる群から選ばれる1種以上である。(C)成分をさらに含有することにより、特に使用初期の粉きしみ感をより低減して、良好な使用実感を実現することができる。
【0029】
グリチルレチン酸は、その誘導体であってもよく、例えば、β-グリチルレチン酸、グリチルレチン酸ステアリルなどを用いることができる。
【0030】
グリチルリチン酸塩としては、例えば、グリチルリチン酸ジカリウム、グリチルリチン酸二ナトリウム、グリチルリチン酸三ナトリウム、グリチルリチン酸モノアンモニウムなどを用いることができる。中でも、使用初期の粉きしみ感を低減する観点から、グリチルリチン酸ジカリウム及び/又はβ-グリチルレチン酸を用いることが好ましい。
【0031】
-(C)成分の含有量-
(C)成分の含有量は、口腔用組成物の全量に対し、通常、0.01質量%以上、好ましくは0.03質量%以上である。これにより、口腔用組成物の使用初期の粉きしみ感を改善し、良好な使用実感を実現することができる。上限は、通常、0.1質量%以下、好ましくは0.05質量%以下である。これにより、口腔用組成物の使用初期の粉きしみ感を改善し、良好な使用実感を実現することができる。従って、(C)成分の含有量は、通常、0.01~0.1質量%、好ましくは0.03~0.05質量%である。
【0032】
[(D)溶媒]
(D)成分は、溶媒である。溶媒である(D)成分としては、多価アルコールを使用することができる。多価アルコールとしては、融点が25℃以下の多価アルコールを用いることが好ましい。
【0033】
多価アルコールとしては、具体的には、グリセリン(融点:17.8℃)、平均分子量190~630(医薬部外品原料規格2006記載の平均分子量、以下同様である。)のポリエチレングリコール(PEG200(融点:-35℃)、300(融点:-10℃)、400(融点:6℃)、600(融点:20℃))、プロピレングリコール(融点:-20℃)、ジプロピレングリコール(融点:-20℃)、ブチレングリコール(融点:-54℃)、エチレングリコール(融点:-13℃)ポリプロピレングリコール(融点:-31℃)等が挙げられる。これらの中でも、口腔内の保湿実感を良好にする観点から、グリセリン、平均分子量190~630のポリエチレングリコール、ブチレングリコールが好ましい。これらは1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0034】
なお、ポリエチレングリコールの平均分子量は、通常650以下、好ましくは630以下、より好ましくは600以下である。下限は、通常150以上、好ましくは250以上である。従って、通常150~650、好ましくは150~630、より好ましくは250~600である。ポリエチレングリコールとしては、例えばポリエチレングリコール200(平均分子量190~210)、ポリエチレングリコール400(平均分子量380~420)、ポリエチレングリコール600(平均分子量570~630)を使用することができる。本明細書において、ポリエチレングリコールの平均分子量は、医薬部外品原料規格2006に記載の平均分子量である。
【0035】
多価アルコールは、それ自体の苦味があるが、中でもグリセリンは苦味が比較的少ない多価アルコールである。そのため、溶媒由来の苦味を低減する点から、溶媒は、少なくともグリセリンを含み、グリセリンの含有量が多価アルコール全体の20~100質量%、特に50~85質量%、さらには50~80質量%であることがより好ましい。また、多価アルコールの中でも、上記平均分子量のポリエチレングリコールは、良好な温感実感が得られることから、好ましい溶媒である。温感実感を良好にする観点から、(D)成分は、少なくともポリエチレングリコールを含むことが好ましく、ポリエチレングリコールの含有量が口腔用組成物全体の10質量%以上、特に15~30質量%であることがより好ましい。ポリエチレングリコールの含有量が30質量%を超えると、ポリエチレングリコール由来の苦味が使用感に影響するおそれがあるが、30質量%以下とすれば、味のよい使用感を維持できる。
【0036】
口腔用組成物に温感を付与する観点では、多価アルコールが、グリセリンと平均分子量190~630のポリエチレングリコール及び/又はブチレングリコールとの併用系、特にグリセリンと平均分子量190~630のポリエチレングリコールとの併用系であることが好ましく、グリセリンの含有量が多価アルコール全体の50質量%以上、特に50~85質量%であることがより好ましい。すなわち、グリセリン/(平均分子量190~630のポリエチレングリコール及び/又はブチレングリコール)の質量比が50/50~85/15であることが特に好ましい。
【0037】
[含有比率]
-(A)/(B)-
(A)成分の含有量の(B)成分の含有量に対する比である含有比率((A)/(B))は、好ましくは67以上、より好ましくは100以上である。(A)/(B)は、好ましくは200000以下、より好ましくは2000以下である。このようにすることにより、口腔用組成物の粘度、保形性を良好にすることができ、さらには使用初期の粉きしみ感を低減することができる。従って、(A)/(B)は、好ましくは67~200000であり、より好ましくは100~2000である。
【0038】
[水分量]
本実施形態の口腔用組成物は、実質的に水分を含まない非水系の口腔用組成物である。
ここで、「実質的に水分を含まない」とは、口腔用組成物の製造工程において、水が意図的に加えられていないことを意味している。
【0039】
また、「非水系」とは、いかなる場合にも、結果として口腔用組成物中に水が全く存在しないということに限定されない。
【0040】
本実施形態の口腔用組成物は、例えば、原料中に不可避的に混在し得る水などに起因して、2質量%以下の量で水を含有し得る。例えば、水の含有量が少ないとされる(B)成分である濃グリセリンであっても0.5質量%程度の水を不可避的に含み得る。
【0041】
本実施形態の口腔用組成物の水分量は、通常、2質量%以下、好ましくは1質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下である。
【0042】
口腔用組成物の水分量は、配合前の原料に含まれる水分量の合計の全原料に対する割合(質量%)として、または、口腔用組成物の乾燥後重量と乾燥前重量との差分の乾燥前重量に対する割合(質量%)として、算出できる。
【0043】
[任意成分]
本実施形態の口腔用組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、既に説明した(A)成分~(D)成分以外の任意成分を含有していてもよい。任意成分としては、例えば、界面活性剤、甘味剤、香料、薬効成分、油性成分、研磨剤(有機研磨剤)、防腐剤、湿潤剤、粘結剤、pH調整剤、着色剤(色素)等の成分が挙げられるが、これらに限定されない。
【0044】
-界面活性剤-
本実施形態の口腔用組成物は、界面活性剤の含有量が0.5質量%以下とされる。すなわち、本実施形態の口腔用組成物においては、使用時の脱脂感を抑制し、保湿実感を実現する観点から、界面活性剤の含有量が0.5質量%以下に低減されているか、又は界面活性剤が不含とされることが好ましい。
【0045】
口腔用組成物に用いられ得る界面活性剤としては、例えば、アニオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤、両性界面活性剤が挙げられる。
【0046】
アニオン界面活性剤としては、例えば、アルキル硫酸塩、アシルアミノ酸塩、アシルタウリン塩、α-オレフィンスルホン酸塩、水素添加ココナッツ脂肪酸モノグリセリドモノ硫酸塩、ラウリルスルホ酢酸塩が挙げられる。アルキル基、アシル基は直鎖及び分岐鎖のいずれでもよく、飽和及び不飽和のいずれでもよく、その炭素原子数は通常10~20であり、好ましくは12~18であり、より好ましくは12~14である。塩は、薬理学的に許容される塩から選択され得る。薬理学的に許容される塩としては、例えば、塩基付加塩及びアミノ酸塩が挙げられる。その具体例としては、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、アンモニウム塩等の無機塩基塩;トリエチルアンモニウム塩、トリエタノールアンモニウム塩、ピリジニウム塩、ジイソプロピルアンモニウム塩等の有機塩基塩;アルギニン塩等の塩基性アミノ酸塩が挙げられる。中でも、無機塩基塩が好ましく、アルカリ金属塩(例えば、ナトリウム塩、カリウム塩)又はアンモニウム塩がより好ましく、ナトリウム塩が更に好ましい。
【0047】
アルキル硫酸塩としては、例えば、ラウリル硫酸塩、ミリストイル硫酸塩が挙げられる。アシルアミノ酸塩としては、例えば、ラウロイルサルコシン塩、ミリストイルサルコシン塩等のアシルサルコシン塩;ラウロイルグルタミン酸塩、ミリストイルグルタミン酸塩、パルミトイルグルタミン酸塩等のアシルグルタミン酸塩;N-ラウロイル-N-メチルグリシン塩、ココイルグリシン塩等のアシルグリシン塩;N-ラウロイル-β-アラニン塩、N-ミリスチル-β-アラニン塩、N-ココイル-β-アラニン塩、N-ラウロイル-N-メチル-β-アラニン塩、N-ミリストイル-N-メチル-β-アラニン塩、N-メチル-N-アシルアラニン塩等のアシルアラニン塩;ラウロイルアスパラギン酸塩等のアシルアスパラギン酸塩が挙げられる。アシルタウリン塩としては、例えば、ラウロイルメチルタウリン塩、N-メチル-N-アシルタウリン塩、N-ココイルメチルタウリン塩が挙げられる。α-オレフィンスルホン酸塩としては、テトラデセンスルホン酸塩等の炭素原子数12~18のα-オレフィンスルホン酸塩が挙げられる。アニオン界面活性剤の他の例としては、水素添加ココナッツ脂肪酸モノグリセリドモノ硫酸ナトリウム、ラウリルスルホ酢酸ナトリウムが挙げられる。
【0048】
アニオン界面活性剤は、泡立ち、泡質の良さの点で、スルホン酸基を含有することが好ましく、アルキル硫酸塩、α-オレフィンスルホン酸塩がより好ましい。アニオン界面活性剤の含有量は、好ましくは組成物全体の0.1~2.5質量%、より好ましくは0.6~2.5質量%、更に好ましくは1~2.5質量%である。
【0049】
ノニオン界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(例、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート)、アルキロールアミド、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルケニルエーテル、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル(例、マルトース脂肪酸エステル)、糖アルコール脂肪酸エステル(例、マルチトール脂肪酸エステル、ラクチトール脂肪酸エステル)、脂肪酸ジエタノールアミド(例、ラウリル酸モノ又はジエタノールアミド)、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン共重合体、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン脂肪酸エステルが挙げられる。ポリオキシエチレンアルキルエーテルのアルキル鎖の炭素原子数は、通常、14~18であり、エチレンオキサイド平均付加モル数は、通常、15~30モルである。ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油のエチレンオキサイド平均付加モル数は、通常20~100モル、好ましくは20~60モルである。ソルビタン脂肪酸エステルの脂肪酸の炭素原子数は、通常12~18である。ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルの脂肪酸の炭素原子数は、通常16~18であり、エチレンオキサイド平均付加モル数は、通常10~40モルである。アルキロールアミドのアルキル鎖の炭素原子数は、通常12~14である。ノニオン界面活性剤としては、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテルが好ましい。
【0050】
両性界面活性剤としては、例えば、アルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン(例えば、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン)、脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン(例えば、コカミドプロピルベタイン)等のベタイン型両性界面活性剤;N-脂肪酸アシル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルエチレンジアミン塩(例えば、N-ヤシ油脂肪酸アシル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン)、ヤシ油脂肪酸イミダゾリニウムベタイン、2-アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン等のイミダゾリン型両性界面活性剤;ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン等のアルキルベタインが挙げられる。カチオン界面活性剤としては、例えば、アルキルアンモニウム塩、アルキルベンジルアンモニウム塩が挙げられる。
【0051】
口腔用組成物が、アニオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤、両性界面活性剤それぞれ、又はこれらの2種以上の組合せとして含む場合、含有量は、組成物全体の0.5質量%以下であり、好ましくは0.2質量%以下であり、より好ましくは0.1%質量以下であり、特に好ましくは0.05質量%以下である。中でも、アニオン界面活性剤が用いられる場合には、使用時の脱脂感を低減し、保湿実感を高める観点から、含有量を0.1質量%以下とすることが好ましく、0.05質量%以下とすることがより好ましく、不含(0質量%)とすることが更に好ましい。
【0052】
-甘味剤-
本実施形態の口腔用組成物は、従来公知の任意好適な甘味剤を任意好適な含有量として含有していてもよい。口腔用組成物が甘味剤を含むことにより、使用感をより向上させることができる。
【0053】
甘味剤としては、例えば、キシリトール、エリスリトール、マルチトール、サッカリン、サッカリンナトリウム、アスパルテーム、ステビオサイド、ステビアエキス、パラメトキシシンナミックアルデヒド、ネオヘスペリジンジヒドロカルコン、ペリラルチン、ソーマチン、アスパラチルフェニルアラニンメチルエステル等が挙げられる。甘味剤としては、上記例示の甘味剤を1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0054】
-香料-
本実施形態の口腔用組成物は、従来公知の任意好適な香料を任意好適な含有量として含有していてもよい。口腔用組成物が香料を含むことにより、使用感をより向上させることができる。
【0055】
香料としては、例えば、ペパーミント油、スペアミント油、ユーカリ油、ウィンターグリーン油、クローブ油、タイム油、セージ油、カルダモン油、ローズマリー油、マジョラム油、レモン油、オレンジ油、ナツメグ油、ラベンダー油、パラクレス油、桂皮油、ピメント油、桂葉油、シソ油、冬緑油等の天然精油;メントール、カルボン、シンナミックアルデヒド、アネトール、1,8-シネオール、メチルサリシレート、オイゲノール、チモール、リナロール、リモネン、メントン、メンチルアセテート、シトラール、カンファー、ボルネオール、ピネン、スピラントール、n-デシルアルコール、シトロネロール、α-テルピネオール、シトロネリルアセテート、シネオール、エチルリナロール、ワニリン等の上記天然精油中に含まれる香料成分;エチルアセテート、エチルブチレート、イソアミルアセテート、ヘキサナール、ヘキセナール、メチルアンスラニレート、エチルメチルフェニルグリシデート、ベンズアルデヒド、バニリン、エチルバニリン、フラネオール、N-エチル-p-メンタン-3-カルボキサミド、メンチルラクテート、エチレングリコール-l-メンチルカーボネート等の香料成分;及びいくつかの香料成分や天然精油を組み合わせてなるミント系、フルーツ系、ハーブ系等の各種調合フレーバーが挙げられる。香料としては、上記例示の香料を1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0056】
-薬用成分-
薬用成分としては、例えば、塩化セチルピリジニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、イソプロピルメチルフェノール、グルコン酸亜鉛、クエン酸亜鉛、トリクロサン、チモール、ヒノキチオール、塩化リゾチーム等の殺菌又は抗菌剤;デキストラナーゼ、ムタナーゼ、アミラーゼ、プロテアーゼ、リテックエンザイム等の酵素;フッ化ナトリウム、モノフルオロリン酸ナトリウム、フッ化スズ等のフッ化物;ε-アミノカプロン酸、アラントイン、トラネキサム酸、アラントインクロルヒドロキシアルミニウム、アズレン、ジヒドロコレステロール等の抗炎症剤;亜鉛、銅塩、スズ塩等の金属塩;縮合リン酸塩、エタンヒドロキシジホスフォネート等の歯石予防剤;ビタミンE(例えば、酢酸トコフェロール)等の血流促進剤;硝酸カリウム、乳酸アルミニウム、塩化ストロンチウム等の知覚過敏抑制剤;ヒドロキシエチルセルロースジメチルジアリルアンモニウムクロリド等のコーティング剤;ビタミンC(例えば、アスコルビン酸またはその塩)、塩化リゾチーム、塩化ナトリウム等の収斂剤;銅クロロフィル、グルコン酸銅等の水溶性銅化合物;歯石予防剤、アラニン、グリシン、プロリン等のアミノ酸類、タイム、オウゴン、チョウジ、ハマメリス等の植物エキス;カロペプタイド、ポリビニルピロリドンを挙げることができる。薬用成分は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。上記薬用成分の含有量は、常法に従って有効量を適宜設定できる。
【0057】
-油性成分-
油性成分としては、例えば、スクワラン、流動パラフィン、ワセリン、マイクロクリスタリンワックス、カルナバワックス、ライスワックス、ロジン等の炭化水素類;高級アルコール(例えば、ラウリルアルコール、セチルアルコール、セトステアリルアルコール、オレイルアルコール、イソステアリルアルコール等の炭素原子数8~22のアルコール);高級脂肪酸(例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、オレイン酸、イソステアリン酸等の炭素原子数8~22の脂肪酸)、オリーブ油、ひまし油、やし油等の植物油;ミリスチン酸イソプロピル等の脂肪酸エステルが挙げられる。
【0058】
-研磨剤-
本実施形態の口腔用組成物は、従来公知の任意好適な研磨剤(既に説明した(A)成分として用いられる原料を除く。)を任意好適な含有量として含有していてもよい。
【0059】
口腔用組成物が含み得る任意の研磨剤としては、例えば、ポリメチルメタアクリレート、合成樹脂系研磨剤等の有機研磨剤が挙げられる。有機研磨剤の含有量は、10質量%以下(0~10質量%)であることが好ましい。また、有機研磨剤と(A)成分との合計量は、組成物全体の50質量%以下とすることが好ましく、8~50質量%とすることがより好ましい。
【0060】
-防腐剤-
本実施形態の口腔用組成物は、従来公知の任意好適な防腐剤を任意好適な含有量として含有していてもよい。口腔用組成物が防腐剤を含むことにより、口腔用組成物の防腐力を確保できる。
【0061】
口腔用組成物が含み得る防腐剤としては、例えば、パラオキシ安息香酸エステル(例えば、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸ブチル)、安息香酸ナトリウム等が挙げられる。防腐剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0062】
-湿潤剤-
本実施形態の口腔用組成物は、従来公知の任意好適な湿潤剤(既に説明した(D)成分として用いられるものを除く。)を任意好適な含有量として含有していてもよい。口腔用組成物が任意の湿潤剤を含むことにより、使用感をより向上させることができる。
【0063】
湿潤剤としては、(D)成分として例示された多価アルコール以外の多価アルコールが好ましく、例えば、ソルビトール、エリスリトール、マルチトール、ラクチトール、キシリトール等の糖アルコール;還元でんぷん糖化物が挙げられる。湿潤剤の含有量は、通常、0~20質量%であり、好ましくは1~10質量%である。
【0064】
-粘結剤-
本実施形態の口腔用組成物は、従来公知の任意好適な粘結剤を任意好適な含有量として含有していてもよい。口腔用組成物が任意の粘結剤を含むことにより、粘度を最適化することができ、保形性、使用感をより向上させることができる。
【0065】
口腔用組成物が含み得る任意の粘結剤としては、従来公知の任意好適な有機粘結剤、例えば、多糖類、セルロース系粘結剤(例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、カチオン化セルロース等)、その他の多糖系増粘剤(例、キサンタンガム、グアガム、ジェランガム、トラガントガム、カラヤガム、アラビヤガム、ローカストビーンガム、カラギーナン、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコール)、合成水溶性高分子(例、ポリアクリル酸ナトリウム、カルボキシビニルポリマー、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール)が挙げられる。任意の粘結剤の含有量は、0~1質量%であることが好ましく、0.1~0.8質量%であることがより好ましい。
【0066】
-pH調整剤-
本実施形態の口腔用組成物は、従来公知の任意好適なpH調整剤を任意好適な含有量として含有していてもよい。口腔用組成物がpH調整剤を含むことにより、口腔用組成物のpH安定性を確保することができる。
【0067】
pH調整剤としては、例えば、フタル酸、クエン酸、コハク酸、酢酸、フマル酸、リンゴ酸、及び乳酸等の有機酸又はそれらの塩、リン酸(オルトリン酸)等の無機酸又はそれらの塩(例えば、カリウム塩、ナトリウム塩及びアンモニウム塩)、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の水酸化物が挙げられる。無機酸塩としては、例えば、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウムが挙げられる。
【0068】
pH調整剤の含有量は、通常、添加後の口腔用組成物のpHが5~9、好ましくは6~8.5となる量とすることができる。
【0069】
本明細書において、pH値は、通常、25℃、測定開始から3分後の値をいう。pH値は、例えば、東亜電波工業社製のpHメーター(型番Hm-30S)を用いて測定することができる。
【0070】
-着色剤-
本実施形態の口腔用組成物は、従来公知の任意好適な着色剤を任意好適な含有量として含有していてもよい。
【0071】
口腔用組成物が含み得る着色剤としては例えば、ベニバナ赤色素、クチナシ黄色素、クチナシ青色素、シソ色素、紅麹色素、赤キャベツ色素、ニンジン色素、ハイビスカス色素、カカオ色素、スピルリナ青色素、タマリンド色素等の天然色素や、赤色2号、赤色3号、赤色104号、赤色105号、赤色106号、赤色227号、黄色4号、黄色5号、緑色3号、青色1号等の法定色素、リボフラビン、銅クロロフィンナトリウム、二酸化チタン等が挙げられる。口腔用組成物が着色剤を含む場合、その含有量は、口腔用組成物の全体に対し0.00001~3質量%とすることが好ましい。
【0072】
-他の任意成分-
本実施形態の口腔用組成物は、上記以外の他の任意成分を任意好適な含有量として含有していてもよい。
【0073】
[口腔用組成物の剤形及び用途]
本発明の口腔用組成物は、常法に従う任意好適な方法により、任意好適な剤形とすることができる。剤形としては、例えば、液体(溶液、乳液、懸濁液、シロップ等)、半固体(ジェル、クリーム、ペースト等)、固体(錠剤、粒子状剤、カプセル剤、フィルム剤、混練物、溶融固体、ロウ状固体、弾性固体、ソフトカプセル剤等)が挙げられる。口腔用組成物の剤形は、好ましくは、液体、半固体である。
【0074】
本発明の口腔用組成物は、口腔用途において広く利用することができる。固体である剤形での用途としては、例えば、トローチ、グミ、ガム、粉状又は錠剤の歯磨剤が挙げられる。半固体である剤形での用途としては、例えば、練歯磨剤、ジェル状歯磨剤が挙げられる。液体である剤形での用途としては、例えば、洗口剤、液体歯磨剤、口中清涼剤(スプレー等)が挙げられる。本発明の口腔用組成物は、良好な保湿実感を実現し、粉きしみ感が抑制され、さらには保形性、曳糸性等の物性を良好にできるので、歯磨剤(練歯磨剤、ジェル状歯磨剤)又は塗布剤(口腔用保湿ジェル、口腔用保湿クレーム)とすることが好ましい。
【0075】
[口腔用組成物の製造方法]
本発明の口腔用組成物の製造方法は特に限定されない。口腔用組成物は、選択された剤形に応じて、それぞれの通常の方法で製造され得る。例えば、口腔用組成物を練歯磨剤とする場合には、まず溶媒に溶解する成分を調製した後、それ以外の不溶性成分を混合し、必要に応じて、例えば減圧等することにより、さらに脱泡を行う製造方法が挙げられる。このようにして得られた練歯磨剤を、ラミネートチューブといったチューブ容器やポンプ型容器に収容することによって製品とすることができる。
【0076】
本発明の口腔用組成物が収容され得る容器の形状、材質は特に制限されない。口腔用組成物に使用される任意好適な従来公知の容器を使用することができる。容器としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ナイロンなどのプラスチック素材の容器等が挙げられる。
【実施例0077】
以下、実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明する。本発明は下記実施例に制限されない。なお、表中の数値は特に断らない限り、各成分の純分量(AI量)、質量%を示す。
【0078】
[実施例及び比較例に使用された成分]
まず、実施例及び比較例において用いた成分について説明する。
(A)無機ケイ酸(シリカ):Solvay社製、Tixosil(登録商標)73(平均粒子径(体積基準D50):9μm)
(B)N-エチル-p-メンタン-3-カルボキサミド:シムライズ社製
N-(4-シアノメチルフェニル)-p-メンタンカルボキサミド:ジボダン社製
3-l-メントキシプロパン-1,2-ジオール:高砂香料工業株式会社製
(C)グリチルリチン酸ジカリウム::丸善製薬社製
(D)濃グリセリン(99.5%):阪本薬品工業社製、化粧品用濃グリセリン
ポリエチレングリコール:三洋化成工業(株)製、ポリエチレングリコール400
((A)成分~(D)成分以外の成分)
カルボキシメチルセルロース(CMC):ダイセルファインケム(株)製、CMC1260
モノフルオロリン酸ナトリウム
サッカリンナトリウム
ポリオキシエチレン(20)硬化ヒマシ油
香料
上記成分については医薬部外品原料規格2006に適合した原料を用いた。
【0079】
実施例1~16及び比較例1~6(試験口腔用組成物)
上述の成分を用いて、下記の調製方法に従って、下記表1~3に示す配合組成を有する試験口腔用組成物を調製した。
【0080】
得られた試験口腔用組成物の粘度は、いずれも25℃で20~100Pa・sの範囲であった。
また、試験口腔用組成物の水分量は、配合前の原料に含まれる水分量の合計の全原料に対する割合(質量%)として算出し、下記表1~3に示した。
【0081】
[試験口腔用組成物の調製方法]
表1~3に示す原料を常法により配合し、1.5Lニーダー(石山工作所社製)を用い常温で混合し、減圧(圧力4kPa)による脱泡を行い、歯磨剤(練歯磨剤)である試験口腔用組成物を得た。
【0082】
得られた試験口腔用組成物を下記の手順で評価した。評価結果を下記表1~3に示した。
【0083】
[評価方法]
-使用後の口腔内の保湿実感の評価-
試験口腔用組成物1gを歯ブラシ(クリニカアドバンテージ歯ブラシ、4列コンパクトふつう、ライオン社製:以下の評価方法において用いた歯ブラシも同様である。)のブラシ上に載せ、通常の方法でブラッシングしてすすいだ後(使用後)の、口腔内の保湿実感を、5段階で評価した。具体的には、下記の評点基準に従って採点した試験者10名の平均点を算出し、これに基づいて秀(☆)、優(◎)、良(○)、可(△)、不可(×)と評価した。結果を下記表1~3に示した。
【0084】
(評点基準)
5点:口腔内の保湿実感を高く感じる
4点:口腔内の保湿実感を感じる
3点:口腔内の保湿実感をやや感じる
2点:口腔内の保湿実感をほとんど感じない
1点:口腔内の保湿実感を全く感じない
(評価基準)
☆:平均4.5点以上5.0点以下
◎:平均4.0点以上4.5点未満
○:平均3.0点以上4.0点未満
△:平均2.0点以上3.0点未満
×:平均1.0点以上2.0点未満
【0085】
-磨き始めの粉きしみ感の評価-
試験口腔用組成物1gを歯ブラシのブラシ上に載せ、通常の方法でブラッシングを開始した時の、口腔内の粉きしみ感のなさを、下記に示す評点基準によって、5段階で評価した。試験者10名の平均点を算出し、下記の評価基準に従って、優(◎)、良(○)、可(△)、不可(×)と評価した。結果を下記表1~3に示した。
【0086】
(評点基準)
5点:磨き始めの粉きしみ感を全く感じない
4点:磨き始めの粉きしみ感をほとんど感じない
3点:磨き始めの粉きしみ感をわずかに感じるが許容範囲
2点:磨き始めの粉きしみ感を感じる
1点:磨き始めの粉きしみ感を強く感じる
(評価基準)
◎:平均4.0点以上5.0点以下
○:平均3.0点以上4.0点未満
△:平均2.5点以上3.0点未満
×:平均1.0点以上2.5点未満
【0087】
-曳糸性の評価-
まず、試験口腔用組成物を口内径8mmのラミネートチューブに充填し、次いで、試験口腔用組成物をラミネートチューブより歯ブラシのブラシ上に押し出して、約1g載せた後、上方向にラミネートチューブと歯ブラシを引き離した際の試験口腔用組成物剤の切れ(曳糸性)を試験した。
【0088】
曳糸性は、試験口腔用組成物が曳いた糸状部分の長さを測定することで評価することができる、下記の評価基準に従って、優(◎)、良(○)、可(△)、不可(×)として評価した。結果を下記表2に示した。
【0089】
(評価基準)
◎:曳糸性が0.5cm未満であり、切れが良い(使用性は良好)
○:0.5cm以上、0.7cm未満の曳糸性が認められる(使用性に問題なし)
△:0.7cm以上、1cm未満の曳糸性が認められる(使用性にやや問題はあるが許容できる)
×:1cm以上の曳糸性が認められる(使用性に問題あり)
【0090】
-ラミネートチューブからの押し出し時における保形性の評価-
試験口腔用組成物を口内径8mmのラミネートチューブに充填し、ラミネートチューブより歯ブラシのブラシ上に試験口腔用組成物を押し出して、約1.0gのせた直後の状態(保形性)を下記の評価基準に従って、評価A、評価BH、評価BS、評価CH、評価CSとして評価した。結果を下記表1~3に示した。
(評価基準)
A :押し出された試験口腔用組成物は形状が保たれており、歯ブラシからたれ落ちることもない(使用性は良好)
BH:押し出された試験口腔用組成物は固いペースト状であるが、歯ブラシから転がり落ちない(使用性に問題なし)
BS:押し出された試験口腔用組成物は形状がやや崩れるが、歯ブラシからはたれ落ちない(使用性に問題なし)
CH:押し出された試験口腔用組成物は固いペースト状であり、歯ブラシから転がり落ちる(使用性に問題あり)
CS:押し出された試験口腔用組成物は形状が崩れ、歯ブラシからたれ落ちる(使用性に問題あり)
【0091】
【表1】
【0092】
【表2】
【0093】
【表3】
【0094】
本発明の上記要件を満たしていない比較例1~6では、口腔内の保湿実感、特に使用初期(磨き始め)の粉きしみ感、曳糸性、保形性のいずれかの評価が低かったのに対し、本発明の上記要件を満たす実施例1~16においては、口腔内の保湿実感、使用初期の粉きしみ感、曳糸性、保形性の評価がいずれも良好であった。
また、グリセリンとポリエチレングリコールとを併用した実施例1~15及び比較例1~6にかかる口腔用組成物と歯ブラシとを用いて歯磨きを行った場合には、試験者は、ブラッシング中、刺激がない良好な温感を感じることができた。