(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022076873
(43)【公開日】2022-05-20
(54)【発明の名称】基板収納容器
(51)【国際特許分類】
H01L 21/673 20060101AFI20220513BHJP
B65D 85/30 20060101ALI20220513BHJP
B65D 43/04 20060101ALI20220513BHJP
【FI】
H01L21/68 T
B65D85/30 500
B65D43/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020187505
(22)【出願日】2020-11-10
(71)【出願人】
【識別番号】000190116
【氏名又は名称】信越ポリマー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】特許業務法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 晃裕
(72)【発明者】
【氏名】波賀野 賢
(72)【発明者】
【氏名】田鹿 紗代
【テーマコード(参考)】
3E084
3E096
5F131
【Fターム(参考)】
3E084AA05
3E084AA14
3E084AA24
3E084AB10
3E084BA01
3E084CA03
3E084CC03
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3E096AA06
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3E096CC02
3E096DA17
3E096EA02X
3E096EA02Y
3E096FA02
3E096FA03
3E096GA07
5F131AA02
5F131CA47
5F131CA53
5F131GA14
5F131GA53
5F131GA69
5F131GA73
5F131GA74
5F131GA84
5F131GA85
5F131GA88
5F131GA92
5F131JA04
5F131JA24
5F131JA32
(57)【要約】
【課題】容器本体の開口を蓋体で閉塞する際、ガスケットによるシール不良を抑制可能な基板収納容器を提供する。
【解決手段】基板を収納可能な容器本体10と、容器本体10の矩形状の開口を閉塞する蓋体20と、容器本体10と蓋体20との間に設けられる環状のガスケット30と、を備える基板収納容器1であって、容器本体10は、開口を形成する開口部11にガイドリブ40又はガイドスリット50の少なくとも一方を有し、蓋体20は、容器本体10のガイドリブ40又はガイドスリット50に係合可能なガイドスリット50又はガイドリブ40の少なくとも一方を有し、開口を蓋体20で閉塞する際、ガイドリブ40がガイドスリット50に係合することで、蓋体20が開口を形成する開口面に対してある傾斜角度以上に傾斜することを抑制する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を収納可能な容器本体と、
前記容器本体の矩形状の開口を閉塞する蓋体と、
前記容器本体と前記蓋体との間に設けられる環状のガスケットと、を備える基板収納容器であって、
前記容器本体は、前記開口を形成する開口部にガイドリブ又はガイドスリットの少なくとも一方を有し、
前記蓋体は、前記容器本体の前記ガイドリブ又は前記ガイドスリットに係合可能なガイドスリット又はガイドリブの少なくとも一方を有し、
前記開口を前記蓋体で閉塞する際、前記ガイドリブが前記ガイドスリットに係合することで、前記蓋体が開口を形成する開口面に対してある傾斜角度以上に傾斜することを抑制する、
ことを特徴とする基板収納容器。
【請求項2】
前記開口を前記蓋体で閉塞する際、前記ガイドリブが前記ガイドスリットに係合することで、前記蓋体が開口を形成する開口面に対して20度以上の傾斜角度に傾斜することを抑制する、
ことを特徴とする請求項1に記載の基板収納容器。
【請求項3】
前記開口を前記蓋体で閉塞する際、前記蓋体が前記開口を形成する開口面に対して傾斜した状態であっても、0度以上20度未満のいずれの傾斜角度であれば、前記ガイドリブが前記ガイドスリットに係合し、20度以上の傾斜角度であれば、前記ガイドリブが前記ガイドスリットに係合しない、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の基板収納容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板を収納する基板収納容器に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、基板収納容器は、基板を収納する容器本体と、容器本体の矩形状の開口を閉塞する蓋体と、容器本体と蓋体との間に設けられる環状のガスケットと、を備えるものであり、基板を気密状態で収納している(特許文献1参照)。
【0003】
半導体製造装置は自動化されており、蓋体の開閉動作はロボットにより自動で行われているが、基板収納容器の洗浄や乾燥などの工程は自動化されていないため、作業者が手動で蓋体の閉止作業を行っている。
【0004】
ここで、蓋体の外面は概略上下(天地)対称(又は左右対称)であるため、作業者が手動で蓋体の閉止作業を行う際に、天地を反対にして容器本体に装着しようとすることがある。蓋体の天地が逆であっても、蓋体固定用の施錠機構も正常に作動でき、装着が可能であるが、蓋体の内面に設置されたウエハ押さえ部材(フロントリテーナ)が正規の位置に配置されないため、ウエハ収納の問題が後工程で発生することになる。
【0005】
そのため、例えば、特許文献1に記載の基板収納容器では、容器本体の開口部の上辺側に2つの凹部を、下辺側に1つの凹部を設け、また、蓋体の外周部の上辺側に2つの凸部を、下辺側に1つの凸部を設けて、蓋体の天地方向を逆にした場合には、蓋体の装着が不能になるようにして、蓋体の装着ミスを防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、作業者が手動で蓋体の閉止作業を行う際には、上述した天地方向の装着ミス以外に、容器本体の開口を形成する平面(開口面)の法線方向に沿って装着することなく、容器本体の開口面に対して蓋体が傾いた状態で装着し始めることがある(
図5~
図6F参照)。この場合、蓋体に設けられたガスケットは、開口面と略平行に形成されたシール面に接触せずに、更に奥側の容器本体の内壁面に乗り上げた状態で、容器本体を閉塞することが起こる(
図6E及び
図6F参照)。そのため、ガスケット自体が折損又は破損したり、ガスケットのシール不良により基板収納容器の気密性が損なわれたりすることがあった。
【0008】
そこで、本発明は以上の課題に鑑みてなされたものであり、容器本体の開口を蓋体で閉塞する際、ガスケットによるシール不良を抑制可能な基板収納容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)本発明に係る1つの態様は、基板を収納可能な容器本体と、前記容器本体の矩形状の開口を閉塞する蓋体と、前記容器本体と前記蓋体との間に設けられる環状のガスケットと、を備える基板収納容器であって、前記容器本体は、前記開口を形成する開口部にガイドリブ又はガイドスリットの少なくとも一方を有し、前記蓋体は、前記容器本体の前記ガイドリブ又は前記ガイドスリットに係合可能なガイドスリット又はガイドリブの少なくとも一方を有し、前記開口を前記蓋体で閉塞する際、前記ガイドリブが前記ガイドスリットに係合することで、前記蓋体が開口を形成する開口面に対してある傾斜角度以上に傾斜することを抑制するものである。
(2)上記(1)の態様において、前記開口を前記蓋体で閉塞する際、前記ガイドリブが前記ガイドスリットに係合することで、前記蓋体が開口を形成する開口面に対して20度以上の傾斜角度に傾斜することを抑制してもよい。
(3)上記(1)又は(2)の態様において、前記開口を前記蓋体で閉塞する際、前記蓋体が前記開口を形成する開口面に対して傾斜した状態であっても、0度以上20度未満のいずれの傾斜角度であれば、前記ガイドリブが前記ガイドスリットに係合し、20度以上の傾斜角度であれば、前記ガイドリブが前記ガイドスリットに係合しなくてよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、容器本体の開口を蓋体で閉塞する際、ガスケットによるシール不良を抑制可能な基板収納容器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明に係る実施形態の基板収納容器を示す分解概略斜視図である。
【
図2】本発明に係る実施形態の基板収納容器の容器本体を示す開口側から視た正面図である。
【
図3】本発明に係る実施形態の基板収納容器の蓋体を示す容器本体側から視た背面図である。
【
図4A】正常なシール状態の基板収納容器を示す概略断面図である。
【
図5】蓋体を下辺軸周りに傾けて装着する様子を示す概略斜視図である。
【
図6A】シール不良が発生する過程Aを示す概略断面図である。
【
図6B】シール不良が発生する過程Bを示す概略断面図である。
【
図6C】シール不良が発生する過程Cを示す概略断面図である。
【
図6E】シール不良が発生する過程Dを示す概略断面図である。
【
図7A】蓋体を30度以上に傾けて装着する場合のガイドリブとガイドスリットとの係合状態を示す概略断面図である。
【
図8A】蓋体を20度に傾けて装着する場合のガイドリブとガイドスリットとの係合状態を示す概略断面図である。
【
図9A】蓋体を20度未満で傾けて装着する場合のガイドリブとガイドスリットとの係合状態を示す概略断面図である。
【
図10A】蓋体を傾けずに装着する場合のガイドリブとガイドスリットとの係合状態を示す概略断面図である。
【
図11A】蓋体を上辺軸周りに傾けて装着する様子を示す概略斜視図である。
【
図11B】蓋体を上辺軸周りに傾けて装着する様子を示す概略側面図である。
【
図12A】蓋体を左辺軸周りに傾けて装着する様子を示す概略斜視図である。
【
図12B】蓋体を左辺軸周りに傾けて装着する様子を示す概略底面図である。
【
図13】ガイドリブとガイドスリットとの位置関係を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、本明細書の実施形態においては、全体を通じて、同一の部材には同一の符号を付している。
【0013】
図1は、本発明に係る実施形態の基板収納容器1を示す分解概略斜視図である。
図2は、本発明に係る実施形態の基板収納容器1の容器本体10を示す開口側から視た正面図である。
図3は、本発明に係る実施形態の基板収納容器1の蓋体20を示す容器本体10側から視た背面図である。
【0014】
図1に示すように、基板収納容器1は、基板を収納する容器本体10と、容器本体10の矩形状の開口を閉塞する蓋体20と、容器本体10と蓋体20との間に設けられる環状のガスケット30(
図3参照)と、を備えている。なお、基板収納容器1は、300mm径や450mm径のウエハなどの基板が収納可能な大きさに形成されている。
【0015】
容器本体10は、
図1及び
図2に示すように、左側面101、右側面102、天面103、底面104及び背面105からなる箱状体であり、開口が正面に形成されたフロントオープン型である。開口は、外側に広がるように段差をつけて屈曲(多段)した開口部11に形成され、その段差部の面が、ガスケット30が接触するシール面12として、開口部11の正面側に形成されている。また、シール面12よりも背面105に向かって奥側は、左側面101、右側面102、天面103及び底面104に対応する内壁面となっている。
【0016】
また、容器本体10の左右両側面101,102の内壁面には、支持体(図示なし)が配置されている。支持体は、基板の載置及び位置決めをする機能を有している。この支持体には、複数の溝が高さ方向に形成され、いわゆる溝ティースを構成している。そして、基板は、同じ高さの左右2か所の溝ティースに載置されるようになっている。支持体の材料は、容器本体10と同様のものと同じであってもよいが、洗浄性や摺動性を高めるために、異なる材料が用いられてもよい。
【0017】
さらに、容器本体10の背面105の内壁面には、リアリテーナ(図示なし)が配置されている。リアリテーナは、蓋体20で容器本体10が閉塞された場合に、後述するフロントリテーナと対となって、基板を保持する。ただし、本実施形態のようなリアリテーナを備えることなく、支持体が、溝ティースの奥側に、例えば、「く」字状や直線状をした基板保持部を有することで、フロントリテーナと基板保持部とで基板を保持するようなものであってもよい。これらの支持体やリアリテーナは、容器本体10にインサート成形や嵌合などにより設けられている。
【0018】
基板は、この支持体に支持されて容器本体10の内部空間に収納される。なお、基板の一例としては、シリコンウエハが挙げられるが特に限定されず、例えば、石英ウエハ、ガリウムヒ素ウエハなどであってもよい。
【0019】
容器本体10の左右両側面101,102の外面には、作業者に握持されるマニュアルハンドル(図示なし)がそれぞれ着脱自在に装着されている。
【0020】
また、容器本体10の天面103には、ロボティックフランジ(図示なし)が着脱自在に設けられている。そして、基板収納容器1は、工場内の搬送ロボットで、ロボティックフランジを把持されて、基板を加工する工程ごとの加工装置に搬送される。
【0021】
そして、容器本体10又は蓋体20の少なくとも一方には、気体を濾過するフィルタが着脱可能に取り付けられている。また、容器本体10の底面104には、例えば、チェックバルブ機能を有する給気弁及び排気弁(図示なし)が設けられている。これらは、蓋体20によって閉塞された基板収納容器1の内部に、給気弁から窒素ガスなどの不活性気体やドライエアーを供給し、必要に応じて排気弁から排出することで、基板収納容器1の内部の気体を置換したり、気密状態を維持したりする。なお、給気弁及び排気弁は、基板を底面104へ投影した位置から外れた位置にあるのが好ましいが、給気弁及び排気弁の数量や位置は、特に限定されない。また、給気弁及び排気弁は、気体を濾過するフィルタを有している。
【0022】
一方、蓋体20は、
図1及び
図3に示すように、容器本体10の略矩形状の開口の正面に取り付けられるものであり、略矩形状の外形を有し、正面側のカバーと容器本体10の開口側の蓋本体とで形成されている。蓋体20は、外周面21の上辺213及び下辺214から外部に出没可能な施錠機構(図示なし)を有しており、容器本体10に形成された係止穴(図示なし)に施錠機構の係止爪が嵌入することで施錠されるようになっている。
【0023】
また、蓋体20は、中央部(
図3における実線で矩形に囲まれた部分)に基板の前部周縁を水平に保持する弾性のフロントリテーナ(図示なし)が着脱自在に装着又は一体形成されている。このフロントリテーナは、支持体の溝ティース及び基板保持部などと同様に、ウエハが直接接触する部位であるため、洗浄性や摺動性が良好な材料が用いられている。
【0024】
そして、蓋体20には、ガスケット30を取り付ける取付溝(図示なし)が形成されている。この取付溝は、例えば、蓋体20の外周面21や容器本体10側の面に、断面視で略U字状で環状に形成されている。
【0025】
これらの容器本体10及び蓋体20の材料としては、例えば、ポリカーボネート、シクロオレフィンポリマー、ポリエーテルイミド、ポリエーテルスルフォン、ポリエーテルエーテルケトン、液晶ポリマーなどの熱可塑性樹脂が挙げられる。この熱可塑性樹脂は、導電性カーボン、導電繊維、金属繊維、導電性高分子などからなる導電剤、各種の帯電防止剤、紫外線吸収剤などが適宜添加されてもよい。
【0026】
つぎに、ガスケット30は、容器本体10のシール面12と蓋体20との間に配置され、蓋体20を容器本体10に装着した際に、シール面12に密着して基板収納容器1の気密性を確保し、基板収納容器1への外部からの塵埃、湿気などの侵入を低減させるとともに、内部から外部への気体の漏れを低減させるものである。
【0027】
ガスケット30は、
図3に示すように、蓋体20の正面形状(及び容器本体10の開口部11の形状)に対応した環状のものであり、本実施形態では、矩形枠状のものである。ただし、環状のガスケット30は、蓋体20への取り付け前の状態で、円環(リング)状であってもよい。
【0028】
ガスケット30は、取付溝に嵌められる本体部と、本体部から延出されたシール片32と、で形成されている(
図4B参照)。本体部は、蓋体20の取付溝と同様の環状に形成され、その断面が取付溝の断面形状に対応するよう略矩形とされている。なお、本体部は、平坦な面を有し、ガスケット30を取付溝の底側に押し込むことができるようになっている。
【0029】
一方、シール片32は、本体部からシール面12側に向けて、断面視で略J字状に形成されており、シール面12に接触するようになっている。
【0030】
このガスケット30の材料としては、ポリエステル系のエラストマー、ポリオレフィン系のエラストマー、フッ素系のエラストマー、ウレタン系のエラストマーなどからなる熱可塑性のエラストマー、フッ素ゴム、エチレンプロピレンゴム、シリコーン系のゴムなどの弾性体を用いることができる。これらの材料には、導電性や帯電防止性を付与する観点から、炭素繊維、金属繊維、金属酸化物、各種の帯電防止剤などが適宜添加されてもよく、また、必要に応じて、各種機能を付与する添加剤を添加してもよい。なお、ガスケット30の硬度は、ショアA硬度で40度から90度が好ましく、60度から90度がより好ましい。
【0031】
ここで、従来の基板収納容器1Bにおける容器本体10B及び蓋体20Bによる気密性を確保するシール構造について、説明する。
図4は、正常なシール状態の基板収納容器1Bを示すもので、
図4Aは概略断面図であり、
図4Bは
図4Aの部分拡大断面図である。なお、ガスケット30に関しては、実施形態の基板収納容器1のものと従来の基板収納容器1Bのものとで共通であるため、符号Bを付していない。
【0032】
図4A及び
図4Bに示すように、ロボットにより、蓋体20Bが容器本体10Bに正確かつ正常に装着された場合には、ガスケット30のシール片32は、開口部11Bのシール面12Bに接触した後、閉止方向に1mm程度変形して潰れた状態になっている。このように、ガスケット30と容器本体10Bとが適切接触するシール構造によって、基板収納容器1Bの気密性を確保している。
【0033】
ところで、作業者が蓋体20Bを容器本体10Bに装着する場合は、ロボットと異なり正確な位置及び姿勢(角度)で閉止動作が行われないため、シール不良が発生することがある。そこで、以下、作業者が蓋体20Bを容器本体10Bに装着する閉止動作について、説明する。
【0034】
図5は、蓋体20を下辺114B,214B軸周りに傾けて装着する様子を示す概略斜視図である。
図6は、シール不良が発生する過程を示すもので、
図6Aは過程Aの概略断面図であり、
図6Bは過程Bの概略断面図であり、
図6Cは過程Cの概略断面図であり、
図6Dは
図6Cの部分拡大断面図であり、
図6Eは過程Dの概略断面図であり、
図6Fは
図6Eの部分拡大断面図である。
【0035】
作業者が蓋体20Bを容器本体10Bに装着する場合、まず、蓋体20Bの左右の施錠機構に開錠治具を挿入して蓋体20Bを保持するか、施錠機構周辺に存在する切欠開口や凹部に指を挿入して蓋体20Bを握持して、
図6Aから
図6Bに示すように、蓋体20Bの下辺214Bを開口部11Bの下辺114Bで支えるように置くことになり、
図5に示すような様子になる。
【0036】
その後、蓋体20Bを容器本体10B側に開口面に対する傾斜角度θが小さくなるように傾けていくことになるが、ガスケット30のシール片32の下端(先端)は、
図6Bに示すように、底面104Bよりも上方に位置しているため、
図6C及び
図6Dに示すように、ガスケット30のシール片32が、シール面12Bに接触することなく(
図4B参照)、底面104B(の内壁面)に乗り上げることがある。
【0037】
更にその後、蓋体20Bを容器本体10B側に傾け続けて、蓋体20Bが開口面に対して略平行な状態(閉塞完了状態)になると、底面104Bに乗り上げたガスケット30のシール片32は、
図6E及び
図6Fに示すように、シール面12Bに接触することがないまま、底面104B上で逆向きに反り返るようになる。
【0038】
このように、ガスケット30のシール片32のすべて又は一部のみが、底面104Bに乗り上げたままになるため、シール片32が捩れた状態になる。そのため、
図4A及び4Bのような正常なシール状態とならず、特に、基板収納容器1Bの内部圧力が外部雰囲気(圧力)よりも低くなると、外気が侵入し易くなり、シール不良が発生することになる。
【0039】
そこで、本実施形態の基板収納容器1では、蓋体20(の矩形状の主面)の容器本体10の開口を形成する開口面に対する傾斜角度θが許容範囲を超えている場合には、蓋体20が装着できないように、容器本体10はガイドリブ40を有し、かつ、蓋体20はガイドリブ40に係合可能なガイドスリット50を有するものとした。
【0040】
再び
図1及び
図2に戻って、容器本体10は、開口部11の上下左右の各辺111,112,113,114に、ガイドリブ41a,41b,42a,42b,43a,43b,44a,44b(以降、これらをまとめて「ガイドリブ40」ということがある。)が合計8つ設けられている。
【0041】
ガイドリブ40は、開口部11の開口面の法線方向に沿って、開口部11の開口端よりも若干内部側まで延びるように、所定の幅、高さ及び長さを有する棒状の凸部として形成されている。
【0042】
一方、
図3に示すように、蓋体20は、容器本体10のガイドリブ41a,41b,42a,42b,43a,43b,44a,44b(40)に対応するように、容器本体10の開口部11に隣接する領域付近である、外周面21の上下左右の各辺211,212,213,214に、ガイドスリット51a,51b,52a,52b,53a,53b,54a,54b(以降、これらをまとめて「ガイドスリット50」ということがある。)が合計8つ設けられている。なお、
図3は、蓋体20を容器本体10側から視た背面図であるため、左辺211及び右辺212が紙面上では逆になっている。
【0043】
ガイドスリット50は、ガイドリブ40が受け入れ可能なように、開口部11の開口面の法線方向に沿って、溝状の凹部として形成されている。なお、ガイドスリット50の幅は、ガイドリブ40の幅よりも大きく形成されている。
【0044】
つづいて、ガイドリブ40とガイドスリット50との係合関係を、蓋体20の容器本体10に対する傾斜角度θに関連して説明する。ただし、傾斜角度θは、蓋体20の各辺211,212,213,214が、対向する容器本体10の各辺111,112,113,114に接触している状態における、容器本体10の開口を形成する開口面に対する角度である。また、左側面101及び右側面102を結ぶ方向をX軸、天面103及び底面104を結ぶ方向をZ軸、背面105と開口面を結ぶ方向をY軸とすれば、これらX軸、Y軸及びZ軸に互いに直交し、開口面はZX平面に平行な面となる。
【0045】
図7は、蓋体20を30度以上に傾けて装着する場合のガイドリブ40とガイドスリット50との係合状態を示すもので、
図7Aは概略断面図であり、
図7Bは
図7Aの部分拡大断面図である。
図8は、蓋体20を20度傾けて装着する場合のガイドリブ40とガイドスリット50との係合状態を示すもので、
図8Aは概略断面図であり、
図8Bは
図8Aの部分拡大断面図である。
図9は、蓋体20を20度未満で傾けて装着する場合のガイドリブ40とガイドスリット50との係合状態を示すもので、
図9Aは概略断面図であり、
図9Bは
図9Aの部分拡大断面図である。
図10は、蓋体20を傾けずに装着する場合のガイドリブ40とガイドスリット50との係合状態を示すもので、
図10Aは概略断面図であり、
図10Bは
図10Aの部分拡大断面図である。ただし、
図7から
図10では、左辺111,211について図示しているが、基板収納容器1は左右対称であるから、右辺112,212についても同様の状態である。
【0046】
まず、蓋体20を30度以上に傾けて装着する場合、
図7A及び
図7Bに示すように、容器本体10のガイドリブ41aは、蓋体20の左辺211に当接(干渉)することで、傾斜角度θが30度の状態では、容器本体10の開口を閉塞できないようになっている。なお、傾斜角度θが30度以上の場合も同様である。
【0047】
つぎに、蓋体20を20度に傾けて装着する場合(例えば、30度以上から20度に傾け直す場合と、初めから20度に傾けて装着する場合も含む。)、
図8A及び
図8Bに示すように、容器本体10のガイドリブ41aは、蓋体20の左辺211に当接(干渉)することで、傾斜角度θが20度の状態では、容器本体10の開口を閉塞できないようになっている。
【0048】
一方、蓋体20を20度未満に傾けて装着する場合(例えば、30度以上から20度未満に傾け直す場合と、初めから20度未満に傾けて装着する場合も含む。)については、
図9A及び
図9B(なお、
図9Bは拡大図であるため、傾斜角度θを開口面に平行な面を基準に描画している。)に示すように、容器本体10のガイドリブ41aは、蓋体20の左辺211に当接(干渉)することなく、蓋体20のガイドスリット51aに係合(挿入)可能な状態になる。
【0049】
その後、蓋体20を容器本体10の背面105の方向に押し込むことで、ガイドリブ41aとガイドスリット51aとの係合状態が深くなっていくとともに、傾斜角度θも小さな角度になっていき、蓋体20の主面が傾斜した状態から開口面と略平行になるように案内されるため、蓋体20が開口面と略平行な状態で、容器本体10の開口を閉塞する。このとき、左辺111上方のガイドリブ41bは、蓋体20が開口面と略平行な状態になっていることから、左辺211に干渉することなく、左辺211上方のガイドスリット51bに係合可能である。
【0050】
このように、蓋体20の傾斜角度θが20度未満の状態になると、ガイドリブ41aとガイドスリット51aとが係合することで、蓋体20は容器本体10の開口を正常なシール状態で閉止できるようになっている。
【0051】
なお、ロボットが装着する場合や作業者が蓋体20を略傾けずに装着する場合(すなわち、傾斜角度θが0度の状態で装着する場合。)については、
図10A及び
図10Bに示すように、容器本体10のガイドリブ40(41a,41b,42a,42b,43a,43b,44a,44b)は、蓋体20の上下左右の各辺211,212,213,214のいずれにも当然干渉することなく、蓋体20に形成されたガイドスリット50(51a,51b,52a,52b,53a,53b,54a,54b)に挿入されることになる。
【0052】
このように、ガイドスリット50は、開口を形成する開口面に対する蓋体20の傾斜角度θが0度以上20度未満のすべての角度で閉塞される場合に、ガイドリブ40に係合されるような位置及び形状に設計されている。
【0053】
ところで、上述の蓋体20による容器本体10の開口を閉塞する閉止動作では、開口部11の下辺114(蓋体20の下辺214)軸周りに対する蓋体20の傾斜(回動)について説明したが、
図11に示すように、開口部11の上辺113,213軸周りに対する蓋体20の傾斜(回動)についても同様である。
図11は、蓋体20を上辺113,213軸周りに傾けて装着する様子を示すもので、
図11Aは概略斜視図であり、
図11Bは概略側面図である。
【0054】
この場合、開口部11の左辺111及び右辺112の上方に設けられたガイドリブ41b,42b、及び、蓋体20の左辺211及び右辺212の上方に設けられたガイドスリット51b,52bが(
図2及び
図3も参照)、蓋体20が20度以上傾斜した状態での閉止動作を防止することになる。
【0055】
また、
図12に示すように、開口部11の左辺111,211軸周りに対する蓋体20の傾斜(回動)についても同様である。
図12は、蓋体20を左辺111,211軸周りに傾けて装着する様子を示すもので、
図12Aは概略斜視図であり、
図12Bは概略底面図である。
【0056】
この場合、開口部11の上辺113及び下辺114の左方に設けられたガイドリブ43a,44a、及び、蓋体20の上辺213及び下辺214の左方に設けられたガイドスリット53a,54aが(
図2及び
図3も参照)、蓋体20が20度以上傾斜した状態での閉止動作を防止することになる。
【0057】
なお、図示しないが、開口部11の右辺112,212軸周りに対する蓋体20の傾斜(回動)については、開口部11の上辺113及び下辺114の右方に設けられたガイドリブ43b,44b、及び、蓋体20の上辺213及び下辺214の右方に設けられたガイドスリット53b,54bが、蓋体20が20度以上に傾斜した状態での閉止動作を防止することになる。
【0058】
また、本実施形態では、開口部11の上下左右の各辺111,112,113,114のすべての周りに対応するように、ガイドリブ40及びガイドスリット50を複数箇所に設けたが、作業者が両手で作業する場合は、蓋体20Bの左右の施錠機構に開錠治具を挿入して蓋体20Bを保持するか、施錠機構周辺に存在する切欠開口や凹部に指を挿入して蓋体20Bを握持することが多く、さらに、上方から見下ろすような視線が多く、蓋体20の下辺214を開口部11の下辺114で支え、重量を預けるように置くことが多くなることから、最初に示した開口部11の下辺114周りに傾斜させて装着することが他の各辺周りの装着方法よりも割合が多くなるといえる。
【0059】
そのため、左右の下方に位置するガイドリブ41a,42a及びガイドスリット51a,52aを有すれば、装着ミスを十分減少させることができるといえ、ガイドリブ40及びガイドスリット50の設置箇所を増やす分だけ、その他の装着方向による装着ミスを更に減少させることができる。
【0060】
最後に、本実施形態の基板収納容器1におけるガイドリブ40とガイドスリット50の詳細な位置関係について説明する。
図13はガイドリブ40とガイドスリット50との位置関係を示す模式図である。
【0061】
前提条件として、ガイドリブ40を、開口部11の下辺114から高さHで、開口面からの距離Bの位置に設けたとする。一方、蓋体20を、下辺214の表面側の角部が開口部11の下辺114の開口面端に接触し、ガイドリブ40に干渉した状態を傾斜角度θに傾いた状態とする。なお、下辺114と下辺214との接触は、これ以外の場合もあるが、下辺214の中間付近など角部以外が接触する場合は、傾斜角度θに影響がなく、下辺214の角部が下辺111の中間付近など開口端面以外に接触する場合は、次に説明する距離Bを「0」に近似できるから、この状態が蓋体20を傾けられる最大のものといえる。また、下辺214の両角部の角度は、90度とする。
【0062】
この蓋体20の状態における、ガイドリブ40とガイドスリット50(ただし、蓋体20を傾斜させることなく閉止する場合に係合するときのガイドスリット50の位置)とのオフセット量Xを求めてみる。開口面に平行で距離Bだけ離れた平面と下辺214とが交差する交差点と、ガイドリブ40の開口端との距離は、「H-Btanθ」であるから、「cosθ=(H-X)/(H-Btanθ)」となる。
よって、オフセット量Xは、「X=H(1-cosθ)+Bsinθ」(以下、「式1」という。)となる。
【0063】
例えば、傾斜角度θを20度、高さHを40mm、距離Bを3mmとすると、「式1」から、オフセット量X=3.44mmとなる。ここで、蓋体20の外周面21の各辺211,212,213,214の周長は、容器本体10の開口部11の各辺111,112,113,114の周長よりも現実には若干短いため、ガイドスリット50の幅を下辺214側に3.5mm広げることで、傾斜角度θが20度以下の場合には、ガイドリブ40をガイドスリット50に係合可能にすることができる。
【0064】
以上説明したとおり、本発明に係る実施形態の基板収納容器1は、基板を収納可能な容器本体10と、容器本体10の矩形状の開口を閉塞する蓋体20と、容器本体10と蓋体20との間に設けられる環状のガスケット30と、を備える基板収納容器1であって、容器本体10は、開口を形成する開口部11にガイドリブ40を有し、蓋体20は、ガイドリブ40に係合可能なガイドスリット50を有し、開口を蓋体20で閉塞する際、ガイドリブ40がガイドスリット50に係合することで、蓋体20が開口を形成する開口面に対してある傾斜角度θ以上に傾斜することを抑制するものである。
【0065】
これにより、蓋体20がある傾斜角度θ以上に傾斜することがなく、ガスケット30のシール片32の先端がシール面12よりも内側に位置することがないから、蓋体20が容器本体10を閉塞する途中において、ガスケット30は、開口部11のシール面12に交差する容器本体10の内壁面に接触することなく(乗り上げることなく)、シール面12に密着し、装着ミスによるシール不良を減少させることができる。そして、蓋体20で閉塞した基板収納容器1の気密性を向上させることができる。
【0066】
実施形態の基板収納容器1は、容器本体10の開口を蓋体20で閉塞する際、ガイドリブ40がガイドスリット50に係合することで、蓋体20が開口を形成する開口面に対して20度以上の傾斜角度θに傾斜することを抑制する。これにより、逆に、ガイドリブ40とガイドスリット50とを係合させるように蓋体20を容器本体10に装着すれば、蓋体20の傾斜角度θが20度以上にならないようにすることができる。
【0067】
実施形態の基板収納容器1は、容器本体10の開口を蓋体20で閉塞する際、蓋体20が開口を形成する開口面に対して傾斜した状態であっても、0度以上20度未満のいずれの傾斜角度θであれば、ガイドリブ40がガイドスリット50に係合し、20度以上の傾斜角度θであれば、ガイドリブ40がガイドスリット50に係合しない。これにより、蓋体20が開口面に対して20度未満の傾斜角度θであれば、蓋体20を容器本体10に装着可能にすることができ、一方、蓋体20が開口面に対して20度以上の傾斜角度θであれば、蓋体20を容器本体10に装着不能にすることができる。
【0068】
実施形態の容器本体10は、開口部11の左辺111又は右辺112の少なくとも一方にガイドリブ41a,41b,42a,42bを有している。これにより、蓋体20を上辺113,213軸周り又は下辺114,214軸周りに傾斜させて容器本体10を閉塞する場合のシール不良を抑制することができる。
【0069】
実施形態の容器本体10は、開口部11の上辺113又は下辺114の少なくとも一方にガイドリブ43a,43b,44a,44bを有している。これにより、蓋体20を左辺111,211軸周り又は右辺112,212軸周りに傾斜させて容器本体10を閉塞する場合のシール不良を抑制することができる。
【0070】
以上、本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形、変更が可能である。
【0071】
(変形例)
上記実施形態では、容器本体10がガイドリブ40を有し、蓋体20がガイドスリット50を有するように構成されたが、ガイドリブ40及びガイドスリット50の係合は相補的なものであるから、逆に、容器本体10がガイドスリット50を有し、蓋体20がガイドリブ40を有するように構成してもよい。
【0072】
さらに、例えば、容器本体10の左辺111及び右辺112がガイドリブ40を有し、容器本体10の上辺113及び下辺114がガイドスリット50を有し、蓋体20の左辺211及び右辺212がガイドスリット50を有し、蓋体20の上辺213及び下辺214がガイドリブ40を有するようにして、容器本体10及び蓋体20がガイドリブ40及びガイドスリット50の両方を相補的に有するように構成してもよい。
【0073】
上記実施形態では、開口部11の上辺113軸周りの傾斜及び下辺114軸周りの傾斜に対して、それぞれ異なるガイドリブ41a,42a,41b,42b及びガイドスリット51a,52a,51b,52bを設けたが、ガイドリブ40の閉止方向の長さ(又は距離B)やガイドスリット50のオフセット量Xを、「式1」に従って調節することで、両方に共通のガイドリブ40及びガイドスリット50としてもよい。また、左辺111軸周り及び右辺112軸周りの傾斜についても、同様である。
【0074】
上記実施形態では、ガイドスリット51a,52a,51b,52bは、ガイドリブ40の挿入側(開口側)から蓋体20の表面側まで同一幅で形成されていたが、傾斜角度θの条件が変わらなければ、挿入側から徐々に狭くなるようなテーパ状や段状であってもよい。
【符号の説明】
【0075】
1 基板収納容器
10 容器本体、11 開口部、111 左辺、112 右辺、113 上辺、114 下辺、12 シール面
20 蓋体、21 外周面、211 左辺、212 右辺、213 上辺、214 下辺
30 ガスケット、32 シール片
40(41a~44b) ガイドリブ
50(51a~54b) ガイドスリット