IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三井化学株式会社の特許一覧 ▶ 全国農業協同組合連合会の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022076883
(43)【公開日】2022-05-20
(54)【発明の名称】ブドウの保管方法及び包装体
(51)【国際特許分類】
   B65D 65/40 20060101AFI20220513BHJP
   B65D 85/50 20060101ALI20220513BHJP
   A23B 7/00 20060101ALI20220513BHJP
   A23B 7/148 20060101ALI20220513BHJP
【FI】
B65D65/40 D
B65D85/50 120
A23B7/00 101
A23B7/148
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020187524
(22)【出願日】2020-11-10
(71)【出願人】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000201641
【氏名又は名称】全国農業協同組合連合会
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中山 徳夫
(72)【発明者】
【氏名】中田 有祉
(72)【発明者】
【氏名】穂苅 健吾
(72)【発明者】
【氏名】荒瀧 三千丈
(72)【発明者】
【氏名】菅原 亮子
(72)【発明者】
【氏名】松本 守弘
【テーマコード(参考)】
3E035
3E086
4B169
【Fターム(参考)】
3E035AA11
3E035AB01
3E035BA01
3E035BA02
3E035BC02
3E035BD02
3E035DA02
3E086AA01
3E086AB01
3E086AD02
3E086AD24
3E086BA15
3E086BB03
3E086BB05
3E086CA18
4B169AA04
4B169AB03
4B169HA11
4B169KD07
(57)【要約】
【課題】ブドウにおけるカビの増殖を抑制し、かつ、ブドウの熟成及び穂軸の褐変を抑制することができるブドウの保管方法を提供する。
【解決手段】ブドウを、少なくとも包装部材によって封止して包装体を作製する工程であって、包装部材は、二酸化炭素透過度が7,000cm/m・day・atm~60,000cm/m・day・atmの範囲内であり、酸素透過度が2,000cm/m・day・atm~20,000cm/m・day・atmの範囲内である第一の工程と、包装体内に二酸化炭素を導入して包装体内の二酸化炭素濃度を10.0%~40.0%に調整する第二の工程と、包装体を保管する第三の工程と、をこの順で含むブドウの保管方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブドウを、少なくとも包装部材によって封止して包装体を作製する工程であって、前記包装部材は、二酸化炭素透過度が7,000cm/m・day・atm~60,000cm/m・day・atmの範囲内であり、酸素透過度が2,000cm/m・day・atm~20,000cm/m・day・atmの範囲内である第一の工程と、
前記包装体内に二酸化炭素を導入して前記包装体内の二酸化炭素濃度を10.0%~40.0%に調整する第二の工程と、
前記包装体を保管する第三の工程と、
をこの順で含むブドウの保管方法。
【請求項2】
前記第三の工程において、前記第二の工程の完了後5日経過時点での前記包装体内の二酸化炭素濃度が1.0%~20.0%となり、かつ、前記第二の工程の完了後5日経過時点より後であって、前記包装体内の環境が安定した状態における前記包装体内の二酸化炭素濃度が1.0%~15.0%となるように前記包装体を保管する請求項1に記載のブドウの保管方法。
【請求項3】
前記第三の工程において、包装体外の環境条件を1℃~5℃かつ湿度70%RH~90%RHとする請求項1又は請求項2に記載のブドウの保管方法。
【請求項4】
前記第三の工程において、包装体内の環境が安定した状態となるまでの間、包装体内の二酸化炭素濃度が経時により減少するように前記包装体を保管する請求項1~請求項3のいずれか1項に記載のブドウの保管方法。
【請求項5】
前記包装体の容積が、1.0×10cm~3.0×10cmである請求項1~請求項4のいずれか1項に記載のブドウの保管方法。
【請求項6】
前記包装体の容積と包装体内のブドウの全体積との比が100:5~100:30である請求項1~請求項5のいずれか1項に記載のブドウの保管方法。
【請求項7】
前記包装部材が、4-メチル-1-ペンテン及び1-ブテンからなる群より選ばれる少なくとも1種から導かれる構成単位を有する重合体を含む請求項1~請求項6のいずれか1項に記載のブドウの保管方法。
【請求項8】
前記包装体が、
パレットと、前記パレット上に配置され、かつ、ブドウが収容された複数の青果物収容器と、前記包装部材と、部材Aと、を備え、
前記部材Aが包装体の上部を形成し、前記包装部材が包装体の側部を形成し、
前記部材Aと前記包装部材とが接合され、かつ、前記包装部材の一部が前記包装部材の他の一部と接合されることによって、前記複数の青果物収容器が封止されている請求項1~請求項7のいずれか1項に記載のブドウの保管方法。
【請求項9】
前記包装体の側部において、前記包装部材が重なり合う部分の面積が3000cm以下である請求項8に記載のブドウの保管方法。
【請求項10】
ブドウと包装部材とを備える包装体であって、
前記包装部材は、二酸化炭素透過度が7,000cm/m・day・atm~60,000cm/m・day・atmの範囲内であり、酸素透過度が2,000cm/m・day・atm~20,000cm/m・day・atmの範囲内であり、
前記包装体内の二酸化炭素濃度は10.0%~40.0%である包装体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブドウの保管方法及び包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
ブドウは、個々の生理活性の違いはあるものの、収穫後もその生理活性を維持している。しかし、収穫後のブドウは、長期間の流通過程を経て、その生理活性が変化して品質が低下していく。ブドウの品質の低下としては、例えば、ブドウにおけるカビの増殖(例えばカビの発生)、ブドウの外観劣化、ブドウの枯れ、味の劣化等が挙げられる。ブドウの流通過程における品質低下には、温度、湿度、ガス条件等の様々な要因が関わっている。
品質の低下を伴わない状態を維持しながらブドウを保存すること等を目的として、様々な試みが行われている。
【0003】
例えば、特許文献1には、合成樹脂フィルムから構成された果実袋であって、23℃、60%RHにおける透湿度(g/m・day・atm)が、1.3以上、26以下である、果実袋が記載されている。
【0004】
特許文献2には、2層以上の多層構造を有するガス透過フィルムであって、透湿度(JIS Z0208に準拠、試験温度40℃、試験湿度90%)が10g/m・24h~80g/m・24hの範囲にあり、ヒートシール温度140℃におけるヒートシール強度が6N/15mm~50N/15mmの範囲にあり、全ヘイズが0.1%~10.0%の範囲にあり、最大径50μm以上の孔が1mあたり1個以下であり、前記多層構造の少なくとも1層が、4-メチル-1-ペンテンから導かれる構成単位を有する重合体を含有する、ガス透過フィルムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2018-166450号公報
【特許文献2】特開2017-186080号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述の品質低下に関わる要因の中でも、ブドウにおけるカビの増殖(例えばカビの発生)は、ブドウの商品価値を喪失させる主な要因であり、改善が強く求められている。
【0007】
ブドウにおけるカビの増殖(例えばカビの発生)の原因となるカビは、二酸化炭素濃度が高い環境下において増殖しにくいと考えられる。しかし、ブドウの外観劣化(例えばブドウの熟成及び穂軸の褐変)については、二酸化炭素濃度が高い環境下で発生する傾向にある。
即ち、カビの増殖を抑制するために二酸化炭素濃度を高めた場合、ブドウの熟成及び穂軸の褐変が進行しやすくなり、ブドウの熟成及び穂軸の褐変を抑制するために二酸化炭素濃度を低くした場合、カビの増殖を抑制し難くなる。
以上より、従来から、ブドウにおけるカビの増殖抑制と、ブドウの熟成及び穂軸の褐変の抑制とを両立することは困難であった。
【0008】
特許文献1及び特許文献2に記載の発明は、ブドウにおけるカビの増殖抑制と、ブドウの熟成及び穂軸の褐変の抑制とを両立することについては考慮されていない。
【0009】
本開示の一実施形態が解決しようとする課題は、ブドウにおけるカビの増殖を抑制し、かつ、ブドウの熟成及び穂軸の褐変を抑制することができるブドウの保管方法及び包装体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するための具体的な手段は、以下の通りである。
<1> ブドウを、少なくとも包装部材によって封止して包装体を作製する工程であって、前記包装部材は、二酸化炭素透過度が7,000cm/m・day・atm~60,000cm/m・day・atmの範囲内であり、酸素透過度が2,000cm/m・day・atm~20,000cm/m・day・atmの範囲内である第一の工程と、前記包装体内に二酸化炭素を導入して前記包装体内の二酸化炭素濃度を10.0%~40.0%に調整する第二の工程と、前記包装体を保管する第三の工程と、をこの順で含むブドウの保管方法。
<2> 前記第三の工程において、前記第二の工程の完了後5日経過時点での前記包装体内の二酸化炭素濃度が1.0%~20.0%となり、かつ、前記第二の工程の完了後5日経過時点より後であって、前記包装体内の環境が安定した状態における前記包装体内の二酸化炭素濃度が1.0%~15.0%となるように前記包装体を保管する<1>に記載のブドウの保管方法。
<3> 前記第三の工程において、包装体外の環境条件を1℃~5℃かつ湿度70%RH~90%RHとする<1>又は<2>に記載のブドウの保管方法。
<4> 前記第三の工程において、包装体内の環境が安定した状態となるまでの間、包装体内の二酸化炭素濃度が経時により減少するように前記包装体を保管する<1>~<3>のいずれか1つに記載のブドウの保管方法。
<5> 前記包装体の容積が、1.0×10cm~3.0×10cmである<1>~<4>のいずれか1つに記載のブドウの保管方法。
<6> 前記包装体の容積と包装体内のブドウの全体積との比が100:5~100:30である<1>~<5>のいずれか1つに記載のブドウの保管方法。
<7> 前記包装部材が、4-メチル-1-ペンテン及び1-ブテンからなる群より選ばれる少なくとも1種から導かれる構成単位を有する重合体を含む<1>~<6>のいずれか1つに記載のブドウの保管方法。
<8> 前記包装体が、パレットと、前記パレット上に配置され、かつ、ブドウが収容された複数の青果物収容器と、前記包装部材と、部材Aと、を備え、前記部材Aが包装体の上部を形成し、前記包装部材が包装体の側部を形成し、前記部材Aと前記包装部材とが接合され、かつ、前記包装部材の一部が前記包装部材の他の一部と接合されることによって、前記複数の青果物収容器が封止されている<1>~<7>のいずれか1つに記載のブドウの保管方法。
<9> 前記包装体の側部において、前記包装部材が重なり合う部分の面積が3000cm以下である<8>に記載のブドウの保管方法。
<10> ブドウと包装部材とを備える包装体であって、前記包装部材は、二酸化炭素透過度が7,000cm/m・day・atm~60,000cm/m・day・atmの範囲内であり、酸素透過度が2,000cm/m・day・atm~20,000cm/m・day・atmの範囲内であり、前記包装体内の二酸化炭素濃度は10.0%~40.0%である包装体。
【発明の効果】
【0011】
本開示の一実施形態によれば、ブドウにおけるカビの増殖を抑制し、かつ、ブドウの熟成及び穂軸の褐変を抑制することができるブドウの保管方法及び包装体を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示のブドウの保管方法について、詳細に説明するが、本開示は、以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本開示の目的の範囲内において、適宜変更を加えて実施することができる。
【0013】
本明細書において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。本明細書に段階的に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本開示に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本明細書において、組成物中の各成分の量について言及する場合、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合には、特に断らない限り、組成物中に存在する複数の物質の合計量を意味する。
【0014】
≪ブドウの保管方法≫
本開示のブドウの保管方法は、ブドウを、少なくとも包装部材によって封止して包装体を作製する工程であって、包装部材は、二酸化炭素透過度が7,000cm/m・day・atm~60,000cm/m・day・atmの範囲内であり、酸素透過度が2,000cm/m・day・atm~20,000cm/m・day・atmの範囲内である第一の工程と、包装体内に二酸化炭素を導入して包装体内の二酸化炭素濃度を10.0%~40.0%に調整する第二の工程と、包装体を保管する第三の工程と、をこの順で含む。
なお、本開示において、二酸化炭素濃度及び酸素濃度における単位「%」は、体積%を表す。
【0015】
ブドウは収穫後においても、呼吸を継続すると考えられる。
例えば、包装部材を用いて、収穫後のブドウを包装体内に密封して保存する際、ブドウ自身の呼吸によって包装体内の二酸化炭素濃度は上昇し、酸素濃度は低下すると考えられる。その結果、ブドウの穂軸の褐変が進行しやすくなると考えられる。
一方、例えば二酸化炭素の透過性が高い包装部材を用いて、収穫後のブドウを包装体内に密封して保存する場合、二酸化炭素濃度は低下し、酸素濃度は上昇するためカビが発生しやすくなると考えられる。
【0016】
本開示のブドウの保管方法は、第一の工程と第二の工程とをこの順で含むことによって、ブドウの保存期間における、包装体内の二酸化炭素濃度、酸素濃度及びブドウの呼吸状態を調節することができる。その結果、ブドウにおけるカビの増殖を抑制し、かつ、ブドウの熟成及び穂軸の褐変を抑制することができると考えられる。
【0017】
<第一の工程>
本開示における第一の工程は、ブドウを、少なくとも包装部材によって封止して包装体を作製する工程であって、包装部材は、二酸化炭素透過度が7,000cm/m・day・atm~60,000cm/m・day・atmの範囲内であり、酸素透過度が2,000cm/m・day・atm~20,000cm/m・day・atmの範囲内である。
【0018】
≪包装体≫
本開示における包装体は、ブドウを、少なくとも包装部材によって封止して作製する。
また、包装部材は、二酸化炭素透過度が7,000cm/m・day・atm~60,000cm/m・day・atmの範囲内であり、酸素透過度が2,000cm/m・day・atm~20,000cm/m・day・atmの範囲内である。
本開示における包装体は、ブドウと包装部材とを備える包装体であって、前記包装部材は、二酸化炭素透過度が7,000cm/m・day・atm~60,000cm/m・day・atmの範囲内であり、酸素透過度が2,000cm/m・day・atm~20,000cm/m・day・atmの範囲内であり、前記包装体内の二酸化炭素濃度は10.0%~40.0%であってもよい。
【0019】
(包装体の容積)
包装体の容積としては、1.0×10cm~3.0×10cmであることが好ましい。
包装体の容積が1.0×10cm~3.0×10cmであることで、1つの包装体にてより大量のブドウを保管することができる。また、より大量のブドウを1つの包装体で保管する場合においても、本開示のブドウの保管方法によれば、包装体内の環境条件を調整することが可能であり、ブドウにおけるカビの増殖を抑制し、かつ、ブドウの熟成及び穂軸の褐変を抑制することができる。
【0020】
包装体の容積と包装体内のブドウの全体積との比(包装体の容積:ブドウの全体積)が100:5~100:30であることが好ましい。
これによって、ブドウにおけるカビの増殖を抑制し、ブドウの熟成及び穂軸の褐変をより良好に抑制できる。
上記の観点から、包装体の容積:ブドウの全体積は、100:5~100:15であることがより好ましい。
【0021】
(包装部材)
本開示における包装部材は、二酸化炭素透過度が7,000cm/m・day・atm~60,000cm/m・day・atmの範囲内であり、酸素透過度が2,000cm/m・day・atm~20,000cm/m・day・atmの範囲内である。
これによって、包装体内のブドウの呼吸状態と包装部材の二酸化炭素透過度及び酸素透過度とのバランスを調整して、包装体内における酸素濃度及び二酸化炭素濃度を調節することができる。
【0022】
(二酸化炭素透過度)
包装部材の二酸化炭素透過度は、7,000cm/m・day・atm~60,000cm/m・day・atmの範囲内である。
これによって、包装体内のブドウの呼吸状態と包装部材の二酸化炭素透過度とのバランスを調整して、二酸化炭素濃度を良好に調節することができるため、ブドウにおけるカビの増殖を抑制し、ブドウの熟成及び穂軸の褐変を抑制できる。
上記同様の観点から、包装部材の二酸化炭素透過度は、10,000cm/m・day・atm~55,000cm/m・day・atmの範囲内であることが好ましく、15,000cm/m・day・atm~50,000cm/m・day・atmの範囲内であることがより好ましい。
二酸化炭素透過度の測定方法については後述する。
【0023】
(酸素透過度)
包装部材の酸素透過度は、2,000cm/m・day・atm~20,000cm/m・day・atmの範囲内である。
これによって、包装体内のブドウの呼吸状態と包装部材の酸素透過度とのバランスを調整して、酸素濃度を良好に調節することができるため、ブドウが嫌気呼吸状態になることを抑制することができる。その結果、ブドウにおけるカビの増殖を抑制し、ブドウの熟成及び穂軸の褐変を抑制できる。
上記同様の観点から、包装部材の酸素透過度は、4,000cm/m・day・atm~16,000cm/m・day・atmの範囲内であることが好ましく、6,000cm/m・day・atm~14,500cm/m・day・atmの範囲内であることがより好ましい。
【0024】
上記二酸化炭素透過度は、差圧法ガス透過率測定装置(例えばGTR-30XA、GTRテック(株))を使用して、23℃、0%RHの環境下、試験ガス(CO)100%、試験面積15.2cmとして測定される値である。
上記酸素透過度は、差圧法ガス透過率測定装置(例えばGTR-30XA、GTRテック(株))を使用して、23℃、0%RHの環境下、試験ガス(O)100%、試験面積15.2cmとして測定される値である。
【0025】
(透湿度)
本開示における包装部材は、温度40℃、湿度90%RHの条件下における透湿度が5g/m・day~120g/m・dayであることが好ましい。
透湿度は、水蒸気が包装部材を通過する程度を表す指標である。通常、包装部材の内部の湿度が包装部材の外部の湿度よりも高い場合には、包装部材の透湿度が高い程、包装部材の内部の水蒸気が包装部材の外部に向けて透過しやすい。
上記透湿度が5g/m・day以上であることで、カビの増殖を抑制することができる。
上記透湿度が120g/m・day以下であることで、ブドウの枯れを抑制することができる。また、保管時間が経過するにしたがって、ブドウが有する成分(主に水分)を喪失することによるブドウの質量の減少を良好に抑制することができる。
上記の点から、上記透湿度が7g/m・day~60g/m・dayであることが好ましく、9g/m・day~35g/m・dayであることがより好ましい。
【0026】
上記透湿度は、差圧法ガス透過率測定装置(GTR-30XA、GTRテック(株)を使用して、40℃、90%RHの環境下、試験ガス(O)100%、試験面積15.2cmとして測定される値である。
【0027】
上記の透湿度、二酸化炭素透過度及び酸素透過度は、いずれの態様で調節されてもよく、例えば以下の態様が挙げられる。
(1)上述の透湿度、二酸化炭素透過度及び酸素透過度が得られるフィルムを用いてブドウを包装する態様。
(2)上述の透湿度、二酸化炭素透過度及び酸素透過度が得られるガス透過箱を用いてブドウを収納する態様。
上記の中でも、(1)の態様がより好ましい。
【0028】
本開示の包装部材の材料は、上述した範囲に二酸化炭素透過度及び酸素透過度を有するものであれば特に制限されない。
ある実施態様では、包装部材はポリエチレン層とポリエチレンを含む不織布層の積層体を含む。
また、ある実施態様では、包装部材は4-メチル-1-ペンテンに由来する構成単位を有する重合体(以下、4-メチル-1-ペンテン系重合体ともいう)を含む。4-メチル-1-ペンテン系重合体は、ポリエチレン、ポリプロピレン等の他のポリオレフィンに比べてかさ高い分子構造を有するため密度が低く、高いガス透過性を示す。このため、包装部材の材料として好適に使用できる。
【0029】
4-メチル-1-ペンテン系重合体は、4-メチル-1-ペンテンに由来する構成単位のみからなる単独重合体であっても、4-メチル-1-ペンテンに由来する構成単位と、4-メチル-1-ペンテン以外の成分に由来する構成単位とを含む共重合体であってもよい。
4-メチル-1-ペンテンに由来する構成単位と4-メチル-1-ペンテン以外の成分に由来する構成単位の比率を変更することで、包装部材の二酸化炭素透過度及び酸素透過度を所望の範囲に調節することができる。
【0030】
4-メチル-1-ペンテン系重合体が4-メチル-1-ペンテン以外の成分に由来する構成単位を含む共重合体である場合、4-メチル-1-ペンテン以外の成分としては、エチレン又は炭素原子数が3~20のα-オレフィン(ただし、4-メチル-1-ペンテンを除く)が好ましく挙げられる。
【0031】
炭素原子数が3~20のα-オレフィンとして具体的には、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、3-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ペンテン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-ヘプタデセン、1-オクタデセン、1-エイコセン等が挙げられる。
これらの中でも、入手性の観点からはプロピレンが好ましく、包装部材に低温でのヒートシール性を付与する観点からは1-ブテンが好ましい。
【0032】
4-メチル-1-ペンテン系重合体を合成する方法は特に制限されず、公知の方法を採用できる。4-メチル-1-ペンテン系重合体を合成する際に4-メチル-1-ペンテン以外の成分を用いる場合、4-メチル-1-ペンテン以外の成分として1種のみを用いても2種以上を用いてもよい。
【0033】
包装部材は、4-メチル-1-ペンテン系重合体と、4-メチル-1-ペンテン系重合体以外の重合体とを含むものであってもよい。
包装部材に含まれる4-メチル-1-ペンテン系重合体と、4-メチル-1-ペンテン系重合体以外の重合体との混合比を変更することで、包装部材の二酸化炭素透過度及び酸素透過度を所望の範囲に調節することができる。
【0034】
包装部材が4-メチル-1-ペンテン系重合体と、4-メチル-1-ペンテン系重合体以外の重合体とを含む場合、4-メチル-1-ペンテン系重合体以外の重合体としては、ポリオレフィンが好ましく、エチレン又は炭素原子数が3~20のα-オレフィン(ただし、4-メチル-1-ペンテンを除く)の単独重合体又は共重合体が好ましく挙げられる。
【0035】
炭素原子数が3~20のα-オレフィンの単独重合体又は共重合体として具体的には、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、3-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ペンテン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-ヘプタデセン、1-オクタデセン、1-エイコセン等の単独重合体又は共重合体が挙げられる。
これらの中でも、入手性の観点からはプロピレンの単独重合体又は共重合体(プロピレン系重合体)が好ましく、包装部材に低温でのヒートシール性を付与する観点からは1-ブテンの単独重合体又は共重合体(1-ブテン系重合体)が好ましい。
【0036】
包装部材が4-メチル-1-ペンテン系重合体と、4-メチル-1-ペンテン系重合体以外の重合体とを含む場合、これらの重合体を混合する方法は特に制限されず、公知の方法を採用できる。包装部材が4-メチル-1-ペンテン系重合体と、4-メチル-1-ペンテン系重合体以外の重合体とを含む場合、4-メチル-1-ペンテン系重合体以外の重合体として1種のみを用いても2種以上を用いてもよい。
【0037】
本開示における包装部材は、4-メチル-1-ペンテン及び1-ブテンからなる群より選ばれる少なくとも1種から導かれる構成単位を有する重合体を含むことが好ましい。これによって、上述の範囲に二酸化炭素透過度及び酸素透過度を有する包装部材を、より容易に得ることができる。
【0038】
包装部材は、単層構造でも、多層構造であってもよい。例えば、4-メチル-1-ペンテン系重合体はガス透過性に優れる一方で融点が高く低温でのヒートシール性が充分でない傾向にある。このため、4-メチル-1-ペンテン系重合体を含む層に加え、低温でのヒートシール性に優れる層を備える積層体であってもよい。
【0039】
包装部材の厚みは、特に制限されない。強度及び取り扱い性の観点からは、10μm~100μmの範囲から選択してもよい。
【0040】
<第二の工程>
本開示における第二の工程は、包装体内に二酸化炭素を導入して包装体内の二酸化炭素濃度を10.0%~40.0%に調整する工程である。
上述の通り、ブドウは収穫後においても、呼吸を継続すると考えられる。そのため、包装部材の内部にブドウを密封して保存する場合、保存時間が経過すれば、ブドウ自身の呼吸によって包装体内の二酸化炭素濃度は適切な範囲に近づくと推測される。しかし、適切な二酸化炭素濃度を得るまでの間に、カビの増殖が進行することが推測される。
本開示のブドウの保管方法は、上記第二の工程を含むことによって、保存の初期段階において、包装体内の二酸化炭素濃度を特定の範囲内に調整することができる。
これによって、より早い段階においてカビの増殖を抑制できる二酸化炭素濃度を得ることができる。
また、包装体内の二酸化炭素濃度を10.0%~40.0%という比較的高い二酸化炭素濃度に調整したとしても、二酸化炭素透過度及び酸素透過度が上述の値の範囲内である本開示の包装部材を用いることによって、包装体内の二酸化炭素濃度を経時的に適切な範囲に近づけることができ、ブドウの熟成及び穂軸の褐変を抑制することができる。
【0041】
包装体内に二酸化炭素を導入する方法としては、特に制限はない。
例えば、包装体の一部に、二酸化炭素を導入するための開閉可能な蓋を設けて、包装体を作製した後に、上記蓋を開けて包装体内に二酸化炭素を導入し、導入が完了した際に上記蓋を閉める方法であってもよい。
【0042】
(包装体内の二酸化炭素濃度)
第二の工程において、包装体内に二酸化炭素を導入して包装体内の二酸化炭素濃度を10.0%~40.0%に調整する。
第二の工程における二酸化炭素濃度は、包装体内に二酸化炭素を導入した直後の二酸化炭素濃度を指す。また、「包装体内に二酸化炭素を導入した直後(以下、CO導入直後ともいう)」とは、包装体内への二酸化炭素の導入が完了した後30分以内を指す。
【0043】
CO導入直後の二酸化炭素濃度が10.0%以上であることで、適切な二酸化炭素濃度を得るまでの間に、カビが増殖することを抑制することができる。
上記同様の観点から、二酸化炭素導入直後の二酸化炭素濃度が、15.0%以上であることが好ましく、18.0%以上であることがより好ましい。
【0044】
また、上記二酸化炭素濃度が40.0%以下であることで、適切な二酸化炭素濃度を得るまでの間に、ブドウの穂軸の褐変が進行することを抑制することができる。
上記同様の観点から、上記二酸化炭素濃度が、30.0%以下であることが好ましく、27.0%以下であることがより好ましい。
なお、包装体内の二酸化炭素濃度は、CheckPoint3(MOCONEurope社製)を用いて測定できる。
【0045】
(包装体内の酸素濃度)
CO導入直後における包装体内の酸素濃度は、7.0%~20.0%であることが好ましい。
上記酸素濃度が7.0%以上であることで、ブドウの呼吸に必要な酸素を確保できるため、嫌気呼吸状態による品質低下を防止することができる。
酸素濃度が20.0%以下であることで、ブドウの呼吸活動を抑え休眠状態にすることにより、有用成分の分解が抑制され、品質低下を抑制することができる。
上記と同様の観点から、上記酸素濃度は、11.0%~19.0%であることがより好ましく、13.0%~17.0%であることがさらに好ましい。
なお、包装体内の酸素濃度は、CheckPoint3(MOCON Europe社製)を用いて測定できる。
【0046】
<第三の工程>
本開示における第三の工程は、包装体を保管する工程である。
第二の工程の完了後、ブドウが包装された包装体を保管することで、経時的に包装体内の二酸化炭素濃度が適切な範囲に近づき、包装体内の環境条件が安定する。
本開示において、「包装体内の環境が安定した状態(本開示において、単に安定状態ともいう)」とは、包装体内における二酸化炭素濃度の変動が、30時間前の包装体内の二酸化炭素濃度を基準として-3.0%~+3.0%である状態を意味する。
【0047】
第三の工程において、ブドウにおけるカビの増殖を抑制し、かつ、ブドウの熟成及び穂軸の褐変を抑制する観点から、包装体内の二酸化炭素濃度を適切な範囲に近づけるように調整してもよい。
例えば、包装部材の二酸化炭素透過度及び酸素透過度、二酸化炭素導入直後の包装体内の二酸化炭素濃度、第三の工程における包装体外の温度及び湿度等を適宜調節することで、包装体内の二酸化炭素濃度を適切な範囲に近づけるように調整してもよい。
【0048】
第三の工程において、第二の工程の完了後5日経過時点での前記包装体内の二酸化炭素濃度が1.0%~20.0%となり、かつ、第二の工程の完了後5日経過時点より後であって、包装体内の環境が安定した状態における包装体内の二酸化炭素濃度が1.0%~15.0%となるように包装体を保管することが好ましい。
これによって、ブドウにおけるカビの増殖をより良好に抑制し、かつ、ブドウの熟成及び穂軸の褐変をより良好に抑制することができる。
【0049】
「第二の工程の完了後5日経過時点」とは、第二の工程において、包装体内への二酸化炭素の導入が完了した時点から、5.0日以上5.5日未満を意味する。
本開示において、「第二の工程の完了後5日経過時点」は、「CO導入完了後5日経過時点」とも称する。
【0050】
第三の工程において、包装体内の環境が安定した状態となるまでの間、包装体内の二酸化炭素濃度が経時により減少するように包装体を保管することが好ましい。
安定状態に移行した後は、包装体内の環境条件が安定しているため、包装体内の二酸化炭素濃度は、ブドウにおけるカビの増殖を抑制し、かつ、ブドウの熟成及び穂軸の褐変を抑制する観点から適切な範囲に維持することができる。
【0051】
(包装体内の二酸化炭素濃度)
~第二の工程の完了後5日経過時点~
第二の工程の完了後5日経過時点での包装体内の二酸化炭素濃度は、1.0%~20.0%となることが好ましい。
上記二酸化炭素濃度が1.0%以上であることで、カビの増殖を良好に抑制することができる。また、上記二酸化炭素濃度が1.0%以上であることで、ブドウの呼吸活動を抑え休眠状態にすることにより、有用成分の分解が抑制され、品質低下を抑制することができる。
上記と同様の観点から、上記二酸化炭素濃度は、3.0%以上であることがより好ましい。
【0052】
上記二酸化炭素濃度が20.0%以下であることで、ブドウの熟成及び穂軸の褐変を良好に抑制することができる。
上記同様の観点から、上記二酸化炭素濃度は、18.0%以下であることがより好ましく、16.0%以下であることがさらに好ましい。
【0053】
~第二の工程の完了後5日経過時点より後~
第二の工程の完了後5日経過時点より後であって、安定状態における包装体内の二酸化炭素濃度は、1.0%~15.0%となることが好ましい。
上記二酸化炭素濃度が1.0%以上であることで、カビの増殖を良好に抑制することができる。また、上記二酸化炭素濃度が1.0%以上であることで、ブドウの呼吸活動を抑え休眠状態にすることにより、有用成分の分解が抑制され、品質低下を抑制することができる。
上記と同様の観点から、上記二酸化炭素濃度は、2.4%以上であることがより好ましい。
【0054】
上記二酸化炭素濃度が15.0%以下であることで、ブドウの熟成及び穂軸の褐変を良好に抑制することができる。
上記同様の観点から、上記二酸化炭素濃度は、10.0%以下であることがより好ましく、6.0%以下であることがさらに好ましい。
なお、包装体内の二酸化炭素濃度は、CheckPoint3(MOCONEurope社製)を用いて測定できる。
【0055】
(包装体内の酸素濃度)
~第二の工程の完了後5日経過時点~
第二の工程の完了後5日経過時点での包装体内の酸素濃度は、10.0%~30.0%となることが好ましい。
上記酸素濃度が10.0%以上であることで、ブドウの呼吸に必要な酸素を確保できるため、嫌気呼吸状態による品質低下を防止することができる。
上記と同様の観点から、上記酸素濃度は、15.0%以上であることがより好ましい。
【0056】
上記酸素濃度が30.0%以下であることで、ブドウの呼吸活動を抑え休眠状態にすることにより、有用成分の分解が抑制され、品質低下を抑制することができる。
上記同様の観点から、上記酸素濃度は、25.0%以下であることがより好ましく、21.0%以下であることがさらに好ましい。
【0057】
~第二の工程の完了後5日経過時点より後~
第二の工程の完了後5日経過時点より後であって、安定状態における包装体内の酸素濃度は、10.0%~25.0%であることが好ましい。
上記酸素濃度が10.0%以上であることで、ブドウの呼吸に必要な酸素を確保できるため、嫌気呼吸状態による品質低下を防止することができる。
酸素濃度が25.0%以下であることで、ブドウの呼吸活動を抑え休眠状態にすることにより、有用成分の分解が抑制され、品質低下を抑制することができる。
上記同様の観点から、安定状態における包装体内の酸素濃度は、13.0%~20.0%であることがより好ましい。
【0058】
(包装体内の湿度)
包装体内の湿度としては、特に制限はないが、60%RH~95%RHであることが好ましい。
上記湿度が60%RH以上であることで、ブドウの枯れを良好に抑制することができる。また、保存時間が経過するに従って、ブドウが有する成分(主に水分)を喪失することによるブドウの質量の減少を良好に抑制することができる。
上記湿度が95%RH以下であることで、カビの増殖を抑制することができる。
上記と同様の観点から、包装体内の湿度は70%RH~88%RHがより好ましい。
【0059】
第三の工程において、包装体内の環境が安定した状態となるまでの間、包装体内の湿度が経時により上昇するように包装体を保管することが好ましい。
包装体内の湿度が経時により上昇するように包装体を保管する方法としては、特に制限はない。例えば、包装部材の透湿度を上述の範囲に調整することで、包装体内の湿度を経時により上昇させることができる。
【0060】
本開示における湿度は、相対湿度を指し、ハイグログロン(温湿度ロガー、KNラボラトリーズ製)を包装体の内部に設置して測定される値である。
【0061】
(包装体外の環境条件)
包装体を用いてブドウを保管する際の、包装体外の環境条件について説明する。
【0062】
~温度~
本開示のブドウの保管方法において、包装体を用いてブドウを保管する際の、包装体外の温度としては、-1℃~30℃であることが好ましい。温度が-1℃以上であることで、低温障害を防ぐことができる。温度が30℃以下であることで、カビの増殖速度を遅くすることができる。
温度は、より好ましくは0℃~15℃であり、0℃~5℃がさらに好ましい。
【0063】
~湿度~
本開示のブドウの保管方法において、包装体を用いてブドウを保管する際の、包装体外の湿度としては、60%RH~95%RHであることが好ましい。
上記湿度が60%RH以上であることで、ブドウの枯れを良好に抑制することができる。また、保存時間が経過するに従って、ブドウが有する成分(主に水分)を喪失することによるブドウの質量の減少を良好に抑制することができる。
上記湿度が95%RH以下であることで、カビの増殖を抑制することができる。
上記と同様の観点から、包装体内の湿度は70%RH~90%RHが好ましい。
【0064】
本開示のブドウの保管方法において、第二の工程の後に、包装体外の環境条件を調整することが好ましい。例えば、本開示のブドウの保管方法は、第二の工程の後に、以下の第三の工程を含むことが好ましい。
【0065】
本開示のブドウの保管方法は、第三の工程において、包装体外の環境条件を1℃~5℃かつ湿度70%RH~90%RHとすることが好ましい。
【0066】
本開示のブドウの保管方法は、第三の工程において包装体外の環境条件を調整することによって、ブドウの保管を開始した後、包装体内の環境が安定した状態となるまでの間、包装体内の二酸化炭素濃度を経時により減少させることが容易となる。
これによって、包装体内の二酸化炭素濃度を、ブドウにおけるカビの増殖を抑制し、かつ、ブドウの外観の劣化を抑制できる濃度へと導くことができる。
即ち、安定状態における包装体内の二酸化炭素濃度を、ブドウにおけるカビの増殖を抑制し、かつ、ブドウの外観の劣化を抑制できる濃度へと導くことができる。
【0067】
<包装体の態様>
本開示における包装体の一実施態様としては、以下の態様が挙げられる。
本開示における包装体は、パレットと、パレット上に配置され、かつ、ブドウが収容された複数の青果物収容器と、包装部材と、部材Aと、を備え、部材Aが包装体の上部を形成し、包装部材が包装体の側部を形成し、部材Aと包装部材とが接合され、かつ、包装部材の一部が包装部材の他の一部と接合されることによって、複数の青果物収容器が封止されている包装体であってもよい。
【0068】
上記態様において、パレット上に配置した複数の青果物収容器の上に部材Aを配置し、包装部材を用いて包装体の側部を形成することで、包装体内部の青果物収容器の配置される位置を保持することができる。上記態様の包装体であれば、例えば、輸送の際に発生する小さな衝撃によって荷崩れを起こし、ブドウが青果物収容器からこぼれ落ちることを防ぐことができる。
【0069】
また、例えば包装部材の透湿度を調節することで包装体内の湿度を調整することが好ましい。これによって、高湿度条件下にて部材Aが水分を吸収することに起因する荷崩れを回避することができる。
【0070】
上記態様における包装体は、包装体の側部において、包装部材が重なり合う部分の面積が3000cm以下であることが好ましい。
包装部材が重なり合う部分の面積が3000cm以下であることで、より良好に包装体内の環境条件を調節しやすくなり、ブドウにおけるカビの増殖をより良好に抑制し、かつ、ブドウの外観の劣化をより良好に抑制できる。
【0071】
上記態様における包装部材としては、上述の二酸化炭素透過度及び酸素透過度を有する包装部材を用いることが好ましい。
また、上記態様における包装部材として上述の二酸化炭素透過度及び酸素透過度を有する包装部材を用いる場合、二酸化炭素透過度、酸素透過度等の好ましい範囲は上述と同様であり、包装部材の材質等の好ましい態様も同様である。
【0072】
上記態様における包装部材としては、4-メチル-1-ペンテン及び1-ブテンからなる群より選ばれる少なくとも1種から導かれる構成単位を有する重合体を含むことが好ましい。
【0073】
部材Aとしては、包装体の上部を形成することができるものであれば、特に制限はない。例えば、木製の板、ダンボールの板等が挙げられる。
【0074】
本開示のブドウの保管方法に用いられるパレットとしては、特に制限はない。例えば、木製パレット、合成樹脂製パレット、金属製パレット、紙製パレット等が挙げられる。
なお、本開示においてパレットとは、平板形状の部材の平面の少なくとも一部と、他の平板形状の部材の平面の少なくとも一部とが、脚部を介して連結されている部材を意味する。
パレットの上にブドウを配置することによって、例えば、平板形状の部材の面上にブドウを収容した青果物収容器を載せ、パレットの脚部と脚部との間にフォークリフト、ハンドリフト等の爪を差し込んで持ち上げることができ、運搬の際に利便性が向上する。
【0075】
本開示のブドウの保管方法に用いられるブドウとしては、特に制限はない。例えば、デラウェア、巨峰、シャインマスカット、ピオーネ等を用いることができる。
【実施例0076】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその主旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
本実施例において、二酸化炭素透過度、酸素透過度及び透湿度は、上述の測定方法と同様の方法により測定した。
本実施例において、二酸化炭素濃度、酸素濃度及び湿度は、上述の測定方法と同様の方法により測定した。
【0077】
(包装部材の準備)
本実施例に用いる包装部材として、表1に記載の厚さ、二酸化炭素透過度、酸素透過度及び透湿度を有する各種包装部材を準備した。
【0078】
【表1】

【0079】
表1中の記載の詳細は以下の通りである。
なお、以下において、共重合体A-1及び共重合体B-1は、特願2018-075822に記載の共重合体A-1(4-メチル-1-ペンテン系重合体)及び共重合体B-1(1-ブテン系重合体)と同様である。
【0080】
(1-50)
プライムポリプロF107BV(プロピレン系重合体、株式会社プライムポリマー製)の90質量部及び共重合体B-1の10質量部を含む表層(袋外側)と、
共重合体A-1の20質量部、プライムポリプロF227(プロピレン系重合体、株式会社プライムポリマー製)の56質量部及び共重合体B-1の24質量部を含む中間層と、
プライムポリプロF227の90質量部及び共重合体B-1の10質量部を含む表層(袋内側)と、をこの順に備え、表層(袋外側)、中間層、表層(袋内側)の厚みの比率が10/30/10であり、全体の厚みが50μmであるフィルム。
【0081】
(1-40)
全体の厚みが40μmである以外は、1-50と同様の積層体。
【0082】
(2-50)
プライムポリプロF107BVの90質量部及び共重合体B-1の10質量部を含む表層(袋外側)と、
共重合体A-1の90質量部、プライムポリプロF227の7質量部及び共重合体B-1の3質量部を含む中間層と、
プライムポリプロF227の90質量部及び共重合体B-1の10質量部を含む表層(袋内側)と、をこの順に備え、表層(袋外側)、中間層、表層(袋内側)の厚みの比率が10/30/10であり、全体の厚みが50μmであるフィルム。
【0083】
(2-40)
全体の厚みが40μmである以外は、2-50と同様の積層体。
【0084】
(2-30)
全体の厚みが30μmである以外は、2-50と同様の積層体。
【0085】
(3-50)
共重合体A-1の69質量部、タフマーBL2491M(1-ブテン系重合体、三井化学株式会社製)の21質量部及びTPX MX004(4-メチル-1-ペンテン系重合体、三井化学株式会社製)の10質量部を含む表層(袋外側)と、
TPX MX004の90質量部及びタフマーBL2491Mの21質量部を含む中間層と、
共重合体A-1の70質量部及びタフマーBL2491Mの30質量部を含む表層(袋内側)と、をこの順に備え、表層(袋外側)、中間層、表層(袋内側)の厚みの比率が15/20/15であり、全体の厚みが50μmであるフィルム。
【0086】
<実施例1>
(包装体の作製)
まず、表2に示す種類のブドウを収容した青果物収容器を複数用意して、複数の青果物収容器をパレットの上に配置した。そして、複数の青果物収容器の全てを覆うように、表2に記載の包装部材を覆い被せた。なお、包装部材には、開閉可能な二酸化炭素交換口を取り付けた。
次に、パレットと包装部材とを接合することで、上記複数の青果物収容器を包装部材の内部に封止した。即ち、上記複数の青果物収容器に収容されるブドウを包装部材の内部に封止して包装体を作製した。
なお、包装体の容積、青果物収容器に収容したブドウの全体積及び全質量は、表2に示す。
【0087】
(二酸化炭素の導入)
上記封止を行った後の包装部材に対して、二酸化炭素交換口から二酸化炭素を包装体内へ導入して、二酸化炭素交換口を閉めた。なお、導入する二酸化炭素の量は、二酸化炭素導入直後における包装体内の二酸化炭素濃度が表2に記載の通りとなるように調整した。
【0088】
(ブドウの保存)
上記二酸化炭素の導入後、内部にブドウ及び青果物収容器を封止した包装体を、温度1℃及び72%RH条件下に保持された部屋に保存した。
保存に際しては、包装体の上に物が載ったり、包装体にファンの風が直撃したりしないように、包装体を静置した。
【0089】
<実施例2~実施例8、比較例10及び比較例11>
包装部材の種類、CO導入直後の二酸化炭素濃度、包装体の容積、並びに、ブドウの種類、体積及び質量を、表2~表5に記載の通りに変更した以外は、実施例1と同様の方法によりブドウを保管した。
【0090】
<比較例1~比較例9>
二酸化炭素の導入を行わず、
包装部材の種類、CO導入直後の二酸化炭素濃度、包装体の容積、並びに、ブドウの種類、体積及び質量を、表3~表5に記載の通りに変更した以外は、実施例1と同様の方法によりブドウを保管した。
なお、表3~表5の包装部材の種類の欄における「無包装」との記載は、包装部材を用いてブドウを包装しなかったことを意味する。
【0091】
<評価>
〔二酸化炭素濃度、酸素濃度及び湿度の測定〕
CO導入直後、CO導入完了後5日経過時点、及びCO導入完了後5日経過時点より後の安定状態のそれぞれについて、包装体内における二酸化炭素濃度、酸素濃度及び湿度を測定した。
【0092】
〔カビの発生〕
ブドウの保管開始初期(即ち、保管開始後1日経過時点)、及び保管開始後14日経過時点において、カビの発生率を測定した。
また、保管開始後14日経過時点において包装体を開封し、ブドウを10℃の環境下で静置した。静置を開始してから5日が経過した時点、及び7日が経過した時点において、カビの発生率を測定した。
カビの発生率は以下の方法により測定した。
目視にてカビが発生している部分の表面積を測定し、カビが発生している部分の表面積をブドウの全表面積で除した値に、100を積算してカビの発生率(%)とした。
そして、上記カビの発生率について下記評価基準に従って評価することで、ブドウにおけるカビの増殖の指標とした。
-評価基準-
A:目視にてカビの発生が確認できなかった。
B:カビの発生率が5%未満であった。
C:カビの発生率が5%以上であった。
【0093】
〔褐変〕
ブドウの保管開始初期、及び保管開始後14日経過時点において、穂軸の褐変の発生率を測定した。
目視にて褐変している部分の表面積を測定し、褐変している部分の表面積をブドウの全表面積で除した値に、100を積算して褐変の発生率(%)とした。
そして、上記褐変の発生率について下記評価基準に従って評価した。
-評価基準-
A:目視にて褐変の発生が確認できなかった。
B:褐変の発生率が10%未満であった。
C:褐変の発生率が10%以上50%未満であった。
D:褐変の発生率が50%以上であった。
【0094】
〔脱粒〕
ブドウの保管開始初期、及び保管開始後14日経過時点において、脱粒の発生率を測定した。
保管後に脱粒した果実の数を、保管前に脱粒していなかった果実の数で除した値に、100を積算して脱粒の発生率(%)とした。
そして、上記脱粒の発生率について下記評価基準に従って評価した。
-評価基準-
A:脱粒の発生率が0%であった。
B:脱粒の発生率が0%超1%未満であった。
C:脱粒の発生率が1%以上5%未満であった。
D:脱粒の発生率が5%以上であった。
【0095】
〔果実の萎み〕
ブドウの保管開始初期、及び保管開始後14日経過時点において、果実の萎みを測定した。
保管前の果実の全体積から保管後の果実の全体積差し引いた値を、保管前に果実の全体積で除した値に、100を積算して果実の萎み率(%)とした。
そして、上記果実の萎み率について下記評価基準に従って評価した。
-評価基準-
A:果実の萎み率が2%未満であった。
B:果実の萎み率が2%以上5%未満であった。
C:果実の萎み率が5%以上10%未満であった。
D:果実の萎み率が10%以上であった。
【0096】
〔異臭〕
ブドウの保管開始初期、及び保管開始後14日経過時点において、エタノール量を測定し、下記の評価基準にしたがってブドウの熟成具合を評価した。
エタノール量が多い場合には、ブドウが発酵し異臭が発生する。
また、エタノール量が多いほど、熟成が進行していることを表す。
エタノール量の測定は、果実を蒸留水に入れ、摩砕した後、遠心分離を行い、上澄みを回収する。回収した上澄みを密閉容器内に移し、65℃で1時間以上加温し、ヘッドスペース中のエタノール含量をガスクロマトグラフィー(商品名:GC-2014、島津製作所株式会社製)を用いて測定した。
-評価基準-
A:エタノール濃度が1μg/g未満であった。
B:エタノール濃度が1μg/g以上3μg/g未満であった。
C:エタノール濃度が3μg/g以上5μg/g未満であった。
D:エタノール濃度が5μg/g以上であった。
【0097】
【表2】

【0098】
【表3】

【0099】
【表4】

【0100】
【表5】

【0101】
表2~表5に示す通り、ブドウを、少なくとも包装部材によって封止して包装体を作製する工程であって、包装部材は、二酸化炭素透過度が7,000cm/m・day・atm~60,000cm/m・day・atmの範囲内であり、酸素透過度が2,000cm/m・day・atm~20,000cm/m・day・atmの範囲内である第一の工程と、包装体内に二酸化炭素を導入して包装体内の二酸化炭素濃度を10.0%~40.0%に調整する第二の工程と、包装体を保管する第三の工程と、をこの順で含む方法により、ブドウを保管した実施例は、カビの発生、褐変及び熟成の評価に優れており、ブドウにおけるカビの増殖を抑制し、かつ、ブドウの熟成及び穂軸の褐変を抑制することができていた。
また、脱粒及び果実の萎みにも優れていた。
一方、包装体への二酸化炭素の導入を行わなかった比較例1~比較例9は、ブドウにおけるカビの増殖を抑制し、かつ、ブドウの熟成及び穂軸の褐変を抑制することができていなかった。
包装体内に二酸化炭素を導入した直後における包装体内の二酸化炭素濃度が40.0%超である比較例10、及び、包装体内に二酸化炭素を導入した直後における包装体内の二酸化炭素濃度が10.0%未満である比較例11についても、ブドウにおけるカビの増殖を抑制し、かつ、ブドウの熟成及び穂軸の褐変を抑制することができていなかった。