(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022076891
(43)【公開日】2022-05-20
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
B60C 19/12 20060101AFI20220513BHJP
B29C 73/20 20060101ALI20220513BHJP
【FI】
B60C19/12 A
B29C73/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020187541
(22)【出願日】2020-11-10
(71)【出願人】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076314
【弁理士】
【氏名又は名称】蔦田 正人
(74)【代理人】
【識別番号】100112612
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 哲士
(74)【代理人】
【識別番号】100112623
【弁理士】
【氏名又は名称】富田 克幸
(74)【代理人】
【識別番号】100163393
【弁理士】
【氏名又は名称】有近 康臣
(74)【代理人】
【識別番号】100189393
【弁理士】
【氏名又は名称】前澤 龍
(74)【代理人】
【識別番号】100203091
【弁理士】
【氏名又は名称】水鳥 正裕
(72)【発明者】
【氏名】芝野 寿治
【テーマコード(参考)】
3D131
4F213
【Fターム(参考)】
3D131BC24
3D131BC49
3D131LA13
4F213AH20
4F213AR07
4F213WA95
4F213WB01
4F213WM05
4F213WM37
(57)【要約】
【課題】供タイヤ内面に密封層が設けられた空気入りタイヤにおいて、タイヤ周方向における重量バランスの均一性を向上する
【解決手段】本発明は、タイヤ内面に密封層5が設けられた空気入りタイヤTにおいて、密封層5は、タイヤ周方向Xに1周又は複数周巻き付けられた帯状密封体6を複数備え、複数の帯状密封体6は、タイヤ幅方向Yの一部が重なるようにタイヤ幅方向Yにずらして配置され、かつ、巻き付け始端部6aがタイヤ周方向Xにずらして配置されているものである。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤ内面に密封層が設けられた空気入りタイヤにおいて、
前記密封層は、タイヤ周方向に1周又は複数周巻き付けられた帯状密封体を複数備え、
複数の前記帯状密封体は、タイヤ幅方向の一部が重なるようにタイヤ幅方向にずらして配置され、かつ、巻き付け始端部がタイヤ周方向にずらして配置されている空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記帯状密封体は、タイヤ周方向に1周巻き付けられている請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
複数の前記帯状密封体の巻き付け始端部が、タイヤ周方向に等間隔に配置されている請求項1又は2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
前記密封層に設けられた前記帯状密封体の数をNとすると、タイヤ幅方向に隣り合う前記帯状密封体の巻き付け始端部が、タイヤ周方向一方側へ360/N度ずつずらして配置されている請求項3に記載の空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、タイヤ内面にシーラント剤と呼ばれるパンク防止用の密封剤を塗布した空気入りタイヤ知られている(例えば、下記特許文献1参照)。
【0003】
下記特許文献1に記載された空気入りタイヤでは、密封剤を帯状に形成した密封体をタイヤ幅方向の一方側から他方側へ隙間無く螺旋状にタイヤ内面へ巻き付けて密封層が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、帯状の密封体をタイヤ幅方向の一方側から他方側へ螺旋状に巻き付けて密封層を形成すると、密封剤の塗布開始位置と塗布終了位置において密封剤の重なり量が他の部分より大きくなり、タイヤ周方向において重量バランスが悪化する問題がある。
【0006】
本発明はこのような実情に鑑みてなされたものであり、タイヤ内面に密封層が設けられた空気入りタイヤにおいて、タイヤ周方向における重量バランスの均一性を向上することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の実施形態に係る空気入りタイヤは、タイヤ内面に密封層が設けられた空気入りタイヤにおいて、前記密封層は、タイヤ周方向に1周又は複数周巻き付けられた帯状密封体を複数備え、複数の前記帯状密封体は、タイヤ幅方向の一部が重なるようにタイヤ幅方向にずらして配置され、かつ、巻き付け始端部がタイヤ周方向にずらして配置されているものである。
【発明の効果】
【0008】
上記空気入りタイヤでは、タイヤ内面に密封層が設けられたタイヤの周方向における重量バランスの均一性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施形態の空気入りタイヤの断面図
【
図2】
図1の空気入りタイヤの密封層を平面上に展開した図
【
図4】本発明の変更例の空気入りタイヤの密封層を平面上に展開した図
【
図5】本発明の変更例のタイヤ製造装置を概略で示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0010】
本実施形態の空気入りタイヤ(以下、タイヤということもある)Tは、
図1に示すように、接地面をなすトレッド1と、トレッド1の幅方向両端からタイヤ径方向内側に延びる一対のショルダ2、2、サイドウォール3,3及びビード4,4と、タイヤ内面のうちトレッド1及び一対のショルダ2、2の内側に位置する部分に設けられた密封層5とを備える。タイヤ内面に設けられた密封層5を除いて一般的な各種タイヤ構造を採用することができる。なお、本明細書では、密封層5が設けられていない加硫済みのタイヤについてもタイヤTと表すことがある。
【0011】
密封層5は、高い粘着性を有する密封剤を細長い帯状に形成した複数の帯状密封体6から構成されており、釘踏み等によりタイヤTのトレッド1を貫通する孔ができると、この孔を自動的に封止して空気の漏れ出しを防ぎ、タイヤTのパンクを抑制する。つまり、タイヤTはセルフシールタイプの空気入りタイヤとなっている。
【0012】
図2に示すように、密封層5を構成する複数の帯状密封体6は、タイヤ周方向Xに延びる細長い帯状をなしている。帯状密封体6は、タイヤ周方向Xに沿ってタイヤ内面に巻き付けられた密封部7と、帯状密封体6の巻き付け始端部6a及び巻き付け終端部6bにおいて帯状密封体6が重なり合う周方向積層部8とを備える。
【0013】
このような複数の帯状密封体6は、タイヤ幅方向Yの一部が重なるようにタイヤ幅方向Yに巻き付け位置をずらして設けられている。つまり、1の帯状密封体6のタイヤ幅方向端部が、タイヤ幅方向Yに隣接する他の帯状密封体6と周方向全体にわたって重なるように、複数の帯状密封体6がその幅寸法より小さい所定ピッチPずつタイヤ幅方向Yにずらしてタイヤ内面に設けられている。また、複数の帯状密封体6は、巻き付け始端部6aがタイヤ周方向Xにずらして配置されている。
【0014】
本実施形態では、密封層5が、複数N個(Nは整数、例えば、45個)の帯状密封体6から構成されている。帯状密封体6のそれぞれは、タイヤ内面に対してタイヤ周方向Xに平行に1周巻き付けられた密封部7と、巻き付け始端部6aの上に巻き付け終端部6bが重ねられた周方向積層部8とを備える。
【0015】
また、1の帯状密封体6の巻き付け始端部6aが、タイヤ幅方向一方側に隣接する他の帯状密封体6の巻き付け始端部6aよりタイヤ周方向一方側へ360/N度ずれた位置に配置されている。
【0016】
つまり、密封層5は、複数の帯状密封体6がタイヤ幅方向Yに所定ピッチPずつずらして配置され、タイヤ幅方向一方側にずれた位置にある帯状密封体6ほど巻き付け始端部6aがタイヤ周方向一方側にずれるように、複数の巻き付け始端部6aがタイヤ周方向Xに等間隔に配置されている。
【0017】
帯状密封体6を構成する密封剤は、例えば、未加硫または半加硫状態のブチルゴムに、ポリイソブチレン、ポリブテン等の可塑剤と、熱可塑性オレフィン/ジオレフィン共重合体等の粘着性付与剤と、カーボンブラックやシリカ等の充填材を配合したものを使用することができる。なお、密封剤は、これに制限されることなく、従来から使用されている他の公知の密封剤を用いることもできる。
【0018】
次に、タイヤTの内面に密封層5を形成するタイヤ製造装置10について、
図3を参照して説明する。
【0019】
タイヤ製造装置10は、加硫成型されたタイヤTをタイヤ回転軸Lの周りに回転可能に保持する保持装置20と、保持装置20に保持されたタイヤTの内面に帯状密封体6を巻き付けて密封層5を形成する塗布装置50とを備える。
【0020】
保持装置20は、タイヤTを径方向外側から挟持する挟持部21と、挟持部21を支持する回転プレート22と、挟持部21を移動させるとともに回転プレート22を回転させる駆動部23と、回転プレート22及び駆動部23を移動させる移動機構24とを備える。
【0021】
保持装置20は、挟持部21によって回転プレート22上に保持されたタイヤTを駆動部23が回転プレート22とともにタイヤの回転軸周りに回転させ、移動機構24が回転プレート22及び駆動部23とともにタイヤTの位置及び角度を変更する。
【0022】
塗布装置50は、密封剤を圧送する供給部51と、供給部51から圧送された密封剤が供給されるノズル52とを備える。供給部51は、ギアポンプを備え、ギアポンプの動作中は一定量の密封剤をノズル52へ圧送し、ギアポンプの停止中はノズル52へ密封剤の供給を遮断する。
【0023】
ノズル52の先端に設けられた吐出口52aは、タイヤTの内面と対向するように配置され、供給部51から供給された密封剤をタイヤTの内面へ吐出する。吐出口52aは、幅方向(タイヤ幅方向に平行な方向)の寸法が2~20mm程度で、厚み方向の寸法が2~10mm程度の略矩形状の開口形状をなしており、タイヤTの幅寸法に比べて細幅の帯状に帯状密封体6を成型しながら吐出する。なお、吐出口52aの開口形状は、上記のような矩形状以外にも、丸形状や扁平な三角形状など任意の形状に設定することができる。
【0024】
上記した保持装置20及び塗布装置50は、それぞれ不図示の制御装置に接続され、その作動が制御装置により制御されるようになっている。
【0025】
次に、上記タイヤ製造装置10を用いて上記した空気入りタイヤTの製造方法を説明する。
【0026】
まず、加硫成型されたタイヤTを保持装置20の回転プレート22にセットし、挟持部21によってタイヤTを回転プレート22上に固定する。
【0027】
そして、移動機構24が回転プレート22及び駆動部23とともにタイヤTを移動させて、タイヤTのビード4の内側からタイヤ内側へノズル52を挿入し、ノズル52の吐出口52aを一方のショルダ2の内側の所定位置と対向させる。
【0028】
その後、駆動部23が、回転プレート22を回転させてタイヤTをタイヤ回転軸Lの周りに回転させるとともに、塗布装置50に設けられたギアポンプを駆動して一定量の密封剤をノズル52へ圧送する。これにより、吐出口52aの開口形状に対応した断面形状を有する帯状密封体6が吐出口52aからタイヤ内面へ向けて吐出され、タイヤ内面への帯状密封体6の貼り付けを開始する。
【0029】
そして、帯状密封体6の貼り付けを開始してからタイヤTが1回転した後、更に所定長さだけタイヤ周方向Xに回転して周方向積層部8を形成すると、ギアポンプを停止してノズル52へ密封剤の供給を遮断して帯状密封体6の貼り付けを停止する。合わせて駆動部23はタイヤTの回転を停止する。これにより、密封部7と周方向積層部8とを有する1個目の帯状密封体6がタイヤ内面に巻き付けられる。
【0030】
1個目の帯状密封体6の巻き付けが完了すると、吐出口52aが2個目の帯状密封体6の巻き付け開始位置と対向するようにタイヤTを移動させる。つまり、移動機構24は、帯状密封体6の幅寸法より若干小さい寸法に設定された所定ピッチPだけタイヤTをタイヤ幅方向一方側へ移動させる。これに加えて、移動機構24は、吐出口52aから帯状密封体6を吐出する方向が、帯状密封体6を貼り付ける位置におけるタイヤ内面の法線方向と一致するように、タイヤTの回転軸方向を調整する。また、駆動部23は、360/N度だけタイヤ周方向一方側へタイヤTを回動する。
【0031】
吐出口52aが2個目の帯状密封体6の巻き付け開始位置へ移動すると、2個目の帯状密封体6をタイヤ内面に巻き付ける。つまり、駆動部23がタイヤTをタイヤ回転軸Lの周りに回転させるとともに、塗布装置50に設けられたギアポンプが駆動して吐出口52aから帯状密封体6をタイヤ内面へ向けて吐出して、2個目の帯状密封体6の貼り付けを開始する。そして、1個目の帯状密封体6と同様、2個目の帯状密封体6の貼り付けを開始してからタイヤTが1回転した後、更に所定長さだけタイヤ周方向Xに回転して周方向積層部8を形成すると、ギアポンプを停止するとともにタイヤTの回転を停止する。
【0032】
これにより、1個目の帯状密封体6のタイヤ幅方向一方側部と重なるようにタイヤ幅方向一方側にずらして配置され、かつ、1個目の帯状密封体6の巻き付け始端部6aからタイヤ周方向一方側にずれた位置に巻き付け始端部6aが配置された2個目の帯状密封体6がタイヤ内面に巻き付けられる。
【0033】
以後、上記のような次の帯状密封体6の巻き付け開始位置への吐出口52aの移動と、タイヤ内面への帯状密封体6の巻き付けとを繰り返すことで、複数の帯状密封体6がタイヤ幅方向Yにずらして配置され、かつ、複数の巻き付け始端部6aがタイヤ周方向Xに等間隔にずらして配置された
図2に示すような密封層5がタイヤ内面に形成される。
【0034】
本実施形態の空気入りタイヤTでは、密封層5を複数の帯状密封体6で構成し、複数の帯状密封体6の巻き付け始端部をタイヤ周方向Xにずらして配置しているため、帯状密封体6が重なる位置をタイヤ周方向Xに分散することができ、タイヤ周方向Xにおける重量バランスの均一性を向上することができる。
【0035】
本実施形態では、密封層5が、タイヤ周方向Xに平行に1周巻き付けられた複数の帯状密封体6から構成されているため、帯状密封体6の厚みを均一に巻き付けることができ、より一層、タイヤ周方向Xにおける重量バランスの均一性を向上することができる。
【0036】
(変更例)
上記の実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。
【0037】
例えば、上記した実施形態では、タイヤ周方向Xに平行に1周巻き付けられた複数の帯状密封体6を、所定ピッチPだけタイヤ幅方向Yにずらして配置することで密封層5を構成する場合について説明したが、タイヤ周方向Xに複数周巻き付けられた複数の帯状密封体106で密封層5を構成してもよい。
【0038】
例えば、
図4に示すように、密封層5を構成する帯状密封体106は、タイヤ周方向Xに平行に1周(つまり、360度)巻き付ける毎に、タイヤ幅方向Yの一部が重なるように所定ピッチPだけタイヤ幅方向一方側へ巻き付け位置を移動させて巻き付けられ、このようなタイヤ周方向Xへの巻き付けと巻き付け位置の移動を複数周(
図4の場合では3周)繰り返してタイヤ内面に巻き付けられている。
【0039】
このようなタイヤ周方向Xに3周巻き付けられた帯状密封体106は、巻き付け始端部106aが、上記所定ピッチPの3倍の長さだけタイヤ幅方向Yにずらして配置されるとともに、タイヤ周方向Xに等間隔に配置されるようにタイヤ周方向Xに位置をずらして複数配置されることで密封層5を構成している。
【0040】
このような場合であっても、上記の実施形態と同様の作用効果が奏される。
【0041】
また、上記した実施形態では、密封層5を構成する複数の帯状密封体6の巻き付け始端部6aが、全てタイヤ周方向Xの異なる位置に配置されている場合について説明したが、一部の帯状密封体6においてタイヤ周方向Xの同じ位置に巻き付け始端部が配置されていてもよい。
【0042】
また、上記した実施形態では、3軸の自由度を持つ産業用ロボットのアーム24aの先端部に回転プレート22及び駆動部23を取り付け、帯状密封体6の貼り付け中にタイヤTを水平方向及び上下方向へ移動させつつタイヤTのタイヤ回転軸方向を変更したが、ノズル52の吐出口52aを移動させてタイヤ内面に帯状密封体6を貼り付けてもよい。
【0043】
具体的には、
図5に示すように、回転プレート22及び駆動部23を接地面に固定するとともに、3軸の自由度を持つ産業用ロボット60のアーム60aの先端にノズル52の吐出口52aを設け、吐出口52aを水平方向及び上下方向へ移動させつつ、吐出口52aが密封剤を吐出する方向を変更することで、タイヤ内面に帯状密封体6を貼り付けてもよい。このような場合であっても、タイヤTの回転中にタイヤTがタイヤ回転軸方向にずれることがなく、上記の実施形態と同様の作用効果が奏される。
【符号の説明】
【0044】
1…トレッド、2…ショルダ、3…サイドウォール、4…ビード、5…密封層、6…帯状密封体、6a…巻き付け始端部、6b…巻き付け終端部、7…密封部、8…周方向積層部、10…タイヤ製造装置、20…保持装置、21…挟持部、22…回転プレート、23…駆動部、24…移動機構、50…塗布装置、51…供給部、52…ノズル、52a…吐出口