(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022076895
(43)【公開日】2022-05-20
(54)【発明の名称】振動アクチュエータ
(51)【国際特許分類】
B06B 1/04 20060101AFI20220513BHJP
【FI】
B06B1/04 S
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020187546
(22)【出願日】2020-11-10
(71)【出願人】
【識別番号】000112565
【氏名又は名称】フォスター電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081961
【弁理士】
【氏名又は名称】木内 光春
(74)【代理人】
【識別番号】100112564
【弁理士】
【氏名又は名称】大熊 考一
(74)【代理人】
【識別番号】100163500
【弁理士】
【氏名又は名称】片桐 貞典
(74)【代理人】
【識別番号】230115598
【弁護士】
【氏名又は名称】木内 加奈子
(72)【発明者】
【氏名】飛鳥川 孝史
(72)【発明者】
【氏名】千葉 雄介
(72)【発明者】
【氏名】岡崎 義一
(72)【発明者】
【氏名】後藤 元
(72)【発明者】
【氏名】原 晃
(72)【発明者】
【氏名】山上 憲
(72)【発明者】
【氏名】笹沼 起史
【テーマコード(参考)】
5D107
【Fターム(参考)】
5D107AA01
5D107BB08
5D107CC09
5D107DD03
5D107DD12
5D107FF10
(57)【要約】
【課題】板ばねと制振部材との正確な位置合わせが可能となり、優れた振動特性を有する振動アクチュエータを提供する。
【解決手段】
円筒状のケース2と、ケース2に設けられたコイル21と、コイル21によりケース2の振動軸線Oに沿って振動する可動子4と、外周部がケース2に固定され、内周部が可動子4に固定された板ばね5と、板ばね5の振動部分に設けられた制振部材41とから成る。板ばね5の内周部中心に貫通して設けられ、可動子4の中心軸324が嵌合される多角形の軸孔50を有する
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状のケースと、
前記ケースに設けられたコイルと、
前記ケースの振動軸線に沿って振動する可動子と、
外周部が前記ケースに固定され、内周部が前記可動子に固定された板ばねと、
前記板ばねの振動部分に設けられた制振部材と、
を有し、
前記板ばねの内周部中心に貫通して設けられ、前記可動子の中心軸が嵌合される多角形の軸孔を有する
ことを特徴とする振動アクチュエータ。
【請求項2】
前記制振部材の内周部中心に、前記板ばねの前記軸孔より大きい孔が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の振動アクチュエータ。
【請求項3】
前記制振部材は、前記板ばね上に接着された接着剤からなる接着層と、前記接着層に積層された弾性板を有し、
前記弾性板が、着色されていることを特徴とする請求項1又は請求項2のいずれかに記載の振動アクチュエータ。
【請求項4】
前記制振部材は、前記板ばね上に接着された接着剤からなる接着層を有し、
前記接着層が、着色されていることを特徴とする請求項1又は請求項2のいずれかに記載の振動アクチュエータ。
【請求項5】
前記制振部材は、前記板ばね上に接着された接着剤からなる接着層と、前記接着層に積層された透明な弾性板を有し、
前記接着層が、着色されていることを特徴とする請求項1又は請求項2のいずれかに記載の振動アクチュエータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動アクチュエータに関し、特に、携帯電話やスマートフォン等の携帯端末、ゲーム機のコントローラ等に用いられる小型で軽量の振動アクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、携帯電話等の通信機器において、着信やアラームを人に知らせる方法として振動アクチュエータ(又は、振動モータ)を用いた振動による通知方法がある。そして、近年では、映画やゲーム、VR(Virtual Reality:仮想現実)の分野においても、例えば、アクションシーンの演出効果や、プレーヤーに対するフィードバック手段の一つとして振動アクチュエータが用いられており、振動により人の触覚を刺激することによってリアリティを向上させている。
【0003】
振動アクチュエータには、偏心錘をモータによって回転させて慣性力により振動を発生させる方法を用いるものもある。しかし、回転モータを利用した方法は、偏心錘の慣性力により振動を発生させるため、偏心錘が回転を始め振動が触感として得られるまでの反応が鈍く、リアリティが損なわれるという欠点があった。
【0004】
そこで、よりリアルな触感を得るためのアクチュエータとして、例えば、特許文献1に示すように、ボイスコイル型アクチュエータを採用する場合がある。かかる振動アクチュエータでは、筒状のケース内にマグネットを有する可動子を配置すると共に、可動子の周囲にはケースに固定されたコイルを配置し、そのコイルに通電することにより可動子をケース内で往復動させている。その場合、ケースに対して可動子を往復動可能に支持するために、複数の腕部を備えた円盤状の板ばねが用いられている。また、特許文献1の発明は、板ばねにその振動特性を制御する制振部材が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1のように、板ばねに制振部材が設けられる場合、板ばねと制振部分とは、両者間にずれが生じないように重ね合わせて固定される。すなわち、板ばねと制振部材との固定にずれが生じると、板ばねの腕部から振動軸線方向と直行する面に突出してしまった制振部材は、抵抗として働き、可動子の振幅に悪影響を与えてしまう。そのため、板ばねに制振部材を固定する場合には、板ばねと制振部材との正確な位置合わせが必要である。
【0007】
このような板ばねと制振部材とのずれを防止或いは検出するために、画像解析を行う方法がある。画像解析では、検査用カメラを用いて板ばねと制振部材とが正確に位置合わせがされているか確認をする。しかし、画像解析における検査用カメラを用いた場合に、板ばねと制振部材の色の差が検査用カメラの識別能力よりも少ないと、両者の境界部分の形状を把握することができず、制振部材の正確な位置が分からないといった問題がある。
【0008】
また、振動アクチュエータの製造時に、板ばねに制振部材を固定する場合、あらかじめ板ばねを治具上などの特定の位置に固定し、その位置に対して所定の位置と角度で制振部材を重ね合わせせる作業が必要となる。その場合も、画像解析によって板ばねの向き、特に周方向でどのような角度に位置しているかを判定することも要求される。しかし、従来技術に記載の板ばねは、渦巻き状に湾曲した複数の腕部を環状の内周部と外周部の間に設けたものであることから、板ばねの内外の周縁部や、腕部の外形部などが、円形で角がない形状をしている。検査用カメラによって、板ばねの位置決めを行う場合、従来技術のような角のない板ばねであると、画像解析における特徴点を検出することが難しく、板ばねの周方向の向きを容易かつ正確に判定することができない。
【0009】
特に、近年のアクチュエータの小型化の要求から、板ばねと制振部材はいずれも非常に薄く微細な部品であり、前記のように特徴点が存在しない形状であると、検査用カメラを用いても両者違いを認識することは困難である。仮に、解像度が高く、また、多くの曲線の組み合わせパターンを特徴点とすることも考えられるが、そのようなカメラは高額で、また検出用アルゴリズムも複雑で処理時間がかかり、短時間で大量生産を行うには不適である。
【0010】
本発明は、前記のような従来技術の問題点を解決するために提案されたものである。本発明の目的は、板ばねと制振部材との正確な位置合わせが可能となり、優れた振動特性を有する振動アクチュエータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の振動アクチュエータは、次のような構成を有する。
(1)円筒状のケース。
(2)前記ケースに設けられたコイル。
(3)前記ケースの振動軸線に沿って振動する可動子。
(4)外周部が前記ケースに固定され、内周部が前記可動子に固定された板ばね。
(5)前記板ばねの振動部分に設けられた制振部材。
(6)前記板ばねの内周部中心に貫通して設けられ、前記可動子の中心軸が嵌合される多角形の軸孔を有する。
【0012】
本発明において、次のような構成を採用することができる。
(1)前記制振部材の内周部中心に、前記板ばねの前記軸孔より大きい孔が設けられている。
(2)前記制振部材は、前記板ばね上に接着された接着剤からなる接着層と、前記接着層に積層された弾性板を有し、前記弾性板が、着色されている。
(3)前記制振部材は、前記板ばね上に接着された接着剤からなる接着層を有し、
前記接着層が、着色されている。
(4)前記制振部材は、前記板ばね上に接着された接着剤からなる接着層と、前記接着層に積層された透明な弾性板を有し、前記接着層が、着色されている。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、板ばねと制振部材との正確な位置合わせが可能となり、優れた振動特性を有する振動アクチュエータを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】第1実施形態の全体構成を示す分解斜視図である。
【
図2】第1実施形態の全体構成を示す振動軸線方向で切断した断面図である。
【
図3】第1実施形態におけるケース本体、錘、板ばね及び制振部材の分解斜視図である。
【
図4】第1実施形態におけるケース本体、錘、板ばね及び制振部材が組み合わされた状態の斜視図である。
【
図5】第1実施形態において、三角形の軸孔及び中心軸の角と、貫通孔又はリブの位置関係を示す平面図である。
【
図6】板ばねと制振部材の状態を示す(a)第1実施形態における断面図、(b)第2実施形態における断面図、(c)第3実施形態における断面図である。
【
図7】第1実施形態の板ばねと制振部材を検査用カメラで撮影した画像を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[1.第1実施形態]
[1-1.構成]
以下、
図1及び
図2を用いて第1実施形態の振動アクチュエータ1について説明する。本実施形態の振動アクチュエータ1は、その振動軸線O方向1/2の箇所において中心軸と直交する対称面(
図2の符号S)を境界として、同一形状の部材を設けたものである。そこで、各部材の構成については、対称形の一方の構成のみを説明し、他方については特別に必要がない限りは同一の符号を付すことで説明は省略する。
【0016】
振動アクチュエータ1は、主に、外殻をなす円筒状のケース2と、ケース2の内部に設けられたケース側電磁駆動部3と、ケース側電磁駆動部3により振動可能な可動子4と、可動子4をそれぞれケース2に対して弾性支持する板ばね5を備えている。
【0017】
ケース2は、円筒状のケース本体10と、その両端開口を閉じるカバーケース11、及びケース本体10の開口部近傍の内周部分に設けられたインナーガイド12を備えている。本実施形態において、ケース本体10、カバーケース11及びインナーガイド12は、それぞれABS等の樹脂材料からなるが、樹脂材料に限定されるものでない。ケース本体10の外面には、図示しないリード線が接続されるターミナル13が形成されている。
【0018】
電磁駆動部は、ケース側電磁駆動部3と、ケース本体10内に往復動自在に支持された可動子側電磁駆動部とからなる。
【0019】
ケース側電磁駆動部3は、ケースに固定されたヨーク20と、コイル21を備える。すなわち、ケース2には、その内周に沿って配置された円筒状の軟磁性材料でなるヨーク20と、ヨーク20の内周にヨーク20と電気的に絶縁された状態で取り付けられたコイル21が設けられている。
【0020】
コイル21はヨーク20の内周に沿って巻回され、可動子4の外周部に対して所定の間隔を保って配置されている。振動時における可動子4とコイル21との接触を防止するため、コイル21の可動子4側の表面を覆うように、ケース本体10の内周にインナーガイド12が固定され、インナーガイド12の内周面と可動子4の外周面に隙間が設けられている。コイル21はターミナル13からの通電により磁場を発生可能である。コイル21は組み立てに際して、接着剤等によりヨーク20やインナーガイド12に仮止めしてもよい。
【0021】
可動子4は、円筒状のケース2の中心軸方向である振動軸線Oに沿って振動するように、ケース本体10内に配置されている。可動子4は、円板状のマグネット30と、マグネット30の表面に配置された円板状のポールピース31と、ポールピース31の表面に配置される錘32とを有している。これらのうち、マグネット30と、ポールピース31が、可動子側電磁駆動部を構成している。
【0022】
マグネット30は、その着磁方向が振動軸線O方向である。ポールピース31は、軟磁性材料でなり、マグネット30の磁気吸着力及び接着剤等により、マグネット30に取り付けられている。
図2に示すように、ポールピース31には、中央部に振動軸線Oに沿った貫通孔311が形成されており、対応する錘32には中央部に振動軸線Oに沿った中央突起部321が形成されている。中央突起部321が貫通孔311に圧入されることで、ポールピース31と錘32が一体化されている。マグネット30、ポールピース31、及び錘32の一体化は、上述した磁気吸着力や接着剤、圧入による取り付けに限定されるものではなく、ねじ止め等の機械的手段やその他の手段により固定することにより、一体化してもよい。
【0023】
図2に示すように、可動子4において、マグネット30の外形は、ポールピース31、錘32の外形よりも径方向に小さい。つまり、ポールピース31と錘32の外周が可動子4において最も外周側に位置しており、コイル21の内周と最も接近している。
【0024】
図2及び
図3に示すように、錘32は非磁性体からなり、振動軸線O方向に延びる円柱部322と、円柱部322の根元部分(振動軸線O方向中央側)から振動軸線Oの外周方向に広がった円盤状の底部323を備えている。
【0025】
錘32における円柱部322の先端中央部には、振動軸線O方向に突出した多角形の中心軸324が設けられる。例えば、錘32の中心軸324は、120度の間隔で角及び辺がある正三角形であり、角は円弧状に形成される。円盤状の底部323の外周縁には板ばね5側に立ち上がった縁部325が設けられると共に、底部323の表面には、円柱部322の根元部分から縁部325に達する3本のリブ326が120度間隔で放射状に設けられている。
【0026】
このリブの326の位置は、三角形をした中心軸324の角の位置と対応付けられており、錘32と板ばね5との振動特性を考慮して最適の角度に設定されている。すなわち、中心軸324の角の位置によって、錘32と板ばね5との周方向の角度が決定されるが、板ばね5には腕部と切欠部というように錘32を支持する剛性が異なる箇所がある。一方、錘32も3本のリブ326の存在により、周方向の重量配分が均一でないことから、板ばね5の剛性の不均等と錘32の各部の重量バランスを考慮して、振動むらの発生が少ない状態となるように、中心軸324の角の位置とリブ326の位置を設定する。本実施形態においては、
図5(b)に示すように、中心軸324の3つの角と、リブ326の位置との間に、可動子4の中心を基準として60度の角度のずれを有するように、中心軸324とリブ326が配置される。
【0027】
板ばね5は、金属の一枚ないし複数枚の板ばねで構成されており、例えば本実施形態ではステンレスの薄板を加工したものを使用している。板ばね5の材料は、金属に限らず樹脂や繊維を含む複合素材であってもよい。また、板ばね5の材料は、耐久性及び可撓性に優れた材料が望ましい。
【0028】
図4に示すように、板ばね5の内周部中心には、錘32の中心軸324が嵌合される多角形の軸孔50が設けられている。例えば、この軸孔50は、120度の間隔で角又は辺がある正三角形であり、角は円弧状に形成される。この軸孔50を利用して、板ばね5は錘32と連結されている。すなわち、正三角形に形成された軸孔50に、同じく正三角形に形成された錘32の中心軸324を挿通することで、板ばね5に対する錘32の位置合わせがなされる。そして、板ばね5の表面から突出した中心軸324が治具によって加熱・加圧されて押し潰されることで、錘32の表面と板ばね5が重ね合わされた状態で加締められている。板ばね5と錘32との固定手段は加締めに限定されるものではなく、多角形の中心軸324と軸孔50を備えていれば、ねじ止めや接着等の他の方法により固定(連結)することもできる。
【0029】
図4に示すように、板ばね5は、その内周部に設けられた支持部51から外周方向へ渦巻き状に延びる3本の腕部52を有している。各腕部52は振動軸線Oの回りに120度間隔で等間隔に設けられている。各腕部52の外周端は、板ばね5の外周部にケース本体10の内周に沿って設けられた環状の枠部53に連結されている。
【0030】
前記のように本実施形態において、対称面を境界として2つの板ばね5が対称形に設けられている。これら2つの板ばね5の各腕部52の渦巻き方向は互いに逆方向になっている。これにより、アクチュエータの振動時において、可動子4は、2つの板ばね5から各々逆方向のトルクを受けるため、振動軸線O方向に往復動しても、振動軸線O回りに回転しない。
【0031】
図3及び
図4に示すように、円筒状をしたケース本体10の端面には、ケース本体10の径方向内側に突出したフランジ部14が設けられ、このフランジ部14に振動軸線O方向に伸びる3本の突起部15が120度間隔で設けられている。板ばね5の外周の枠部53には、突起部15が挿入される3つの貫通孔54が120度間隔で設けられている。この場合、
図5(a)に示すように、錘32の三角形をした中心軸324の3つの角及び板ばね5に設けられた三角形の軸孔50の3つの角と、板ばね5に設けられた3つの貫通孔54の位置との間に、可動子4の中心を基準として30度の角度のずれを有するように、板ばね5の軸孔50と3つの貫通孔54が配置される。
【0032】
各突起部15が各貫通孔54に挿入された状態で、各突起部15の先端が治具を用いて加熱・加圧し、押し潰すことにより、ケース本体10の端面に板ばね5の枠部53が重ね合わされた状態で加締められている。枠部53板ばね5との固定手段は加締めに限定されるものではなく、ねじ止めや接着等の他の方法により固定することもできる。
【0033】
このように構成された板ばね5は、振動軸線O方向及び振動軸線Oに直交する垂直な径方向Sを含む交差方向において所定の範囲で弾性変形可能である。なお、この所定の範囲は、振動アクチュエータ1として通常に使用した場合の可動子4の振幅範囲に相当する。従って、所定の範囲は、少なくとも板ばね5がケース2に接触しない範囲であり、板ばね5の弾性変形の限界を超えない範囲である。
【0034】
本実施形態において、板ばね5には、その振動特性を制御する制振部材41が設けられている。
図6(a)に示すように、制振部材41は、板ばね5の支持部51から各腕部52の一定の範囲までの形状に沿った外形の板状をなし、板ばね5上の一面に接着されている。制振部材41は、接着剤からなる接着層411と、接着層411に積層された弾性板412を有する。弾性板412には、樹脂板や金属板を使用することができる。弾性板412に樹脂板を使用する場合は、熱可塑性ポリウレタンエラストマー(TPU)が適切であるが、これに限定するものではない。制振部材41と板ばね5との固定手段は、上記の接着によるものに限定されず、樹脂製の制振部材41を板ばね5に熱溶着する等、その他の固定手段を用いてもよい。
【0035】
本実施形態において、板ばね5には、その内周部中心に貫通して設けられ、可動子4の中心軸324が嵌合される多角形の軸孔50を有する。その軸孔50の角が、検査用カメラにおける板ばね5の識別時の際の特徴点となる。すなわち、板ばね5は、円盤状であり、渦巻き状の複数の腕部を有するため、半径Rが複数あり、特徴点となる角を有しない。また、制振部材41も、板ばね5の支持部51から各腕部52の一定の範囲までの形状に沿った外形の板状をしているため、同様に特徴点がない。そのため、画像解析において、板ばね5と制振部材41の位置合わせが正確に行われているか判断することは困難である。しかし、本実施形態では、板ばね5の内周部中心に、正三角形に形成された軸孔50を設けられている。この軸孔50に穴に光が透過するため、検出用カメラは反射光を得ることができず、撮影画像上では、軸孔50は黒い三角形として映り、その頂点部分が板ばね5の識別時における特徴点として機能する。
【0036】
板ばね5と制振部材41は、両者を認識する検査用カメラの識別能力に合わせて、両者の色を異ならせている。板ばね5と制振部材41は、両者の間で、明度、彩度、色相など色のどの属性を異ならせても良いが、検査用カメラが白黒のみを識別する場合には、明度を異ならせるとよい。そして、板ばね5と制振部材41とのエッジが、検査用カメラの光学的な解像度で識別できる閾値の範囲よりも濃淡差があるように色を異ならせる。本実施形態では、
図6(a)に示すように、制振部材41の弾性板412が着色されている。具体的には、弾性板412に着色された樹脂板や金属板を用いて、板ばね5と弾性板412の色を異ならせるとよい。また、検出用カメラにおいて制振部材41が、板ばねの軸孔50と同様に黒く映る色だとより好ましい。つまり、
図7の検査用カメラによる撮影画像に示すように、検出用カメラにおいて、貫通した軸孔50は光が透過してしまい反射光を得ることができず黒く映るのに対して、着色された制振部材41は光を吸収してしまい反射光を得ることができず黒く映る。
【0037】
[1-2.実施形態の作用]
以上のように構成された振動アクチュエータ1は、コイル21に通電していない状態において、
図2に示すように、板ばね5で支持される可動子4が、振動軸線O方向の中央に位置している。
【0038】
可動子4を振動させる際には、ターミナル13を介して、コイル21に、交互に逆極性の磁界を発生する向きに交流を通電させる。すなわち、コイル21の隣り合う部分に同極が発生するようになっている。例えば、
図8に示す極性の場合、可動子4には実線矢印Aで示す振動軸線O方向の他側(
図8における下方)への推力が発生し、コイル21へ流す電流を反転させれば、可動子4には点線矢印Bで示す振動軸線O方向の一側(
図8における上方)への推力が発生する。このように、コイル21に交流を通電させれば、可動子4は板ばね5による付勢力を両側から受けながら、振動軸線Oに沿って振動する。制振部材41は、その弾性変形、具体的には、PE層や接着剤層のずり変形、エラストマ層の曲げ変形により、板ばね5の制振を行う。
【0039】
可動子4に発生する推力は、基本的にはフレミングの左手の法則に基づいて与えられる推力に準じられる。本実施形態では、対称形の配置された2つのコイル21がケース2に固定されているので、マグネット30等が取り付けられた可動子4に2つのコイル21に発生する力の反力としての推力も発生する。
【0040】
そのため、振動軸線O方向に働く推力を受け、錘32には、振動軸線Oを中心として回転する力が加わる。その際、錘32に設けられた正三角形の中心軸324の角が、錘32の回転止めとなり、可動子4は振動軸線Oに沿って振動する。
【0041】
[1-3.実施形態の効果]
(1)本実施形態における振動アクチュエータ1によれば、板ばね5の内周部中心に、正三角形に形成された軸孔50を設けられている。この軸孔50に光が透過するため、画像解析上、軸孔50は黒く映り、三角形の頂点が画像解析時における特徴点として機能する。よって、板ばね5に特徴点となる基準形状が不要となり、板ばね5の周方向の角度を容易に検出することが可能となり、例えば軸上における板ばね5の位置決めが容易となり、結果として、板ばね5と制振部材41の正確な位置合わせが可能となる。
【0042】
(2)本実施形態における振動アクチュエータ1は、検査用カメラの識別能力に合わせて、制振部材41の弾性板412を着色することにより、板ばね5と制振部材41の色を異ならせている。そのため、画像解析が容易になり、板ばね5と制振部材41との正確な位置合わせが可能となる。
【0043】
(3)本実施形態における振動アクチュエータ1は、検出用カメラにおいて、制振部材41と板ばね5の軸孔50とは同様に黒く映る。そのため、検出用のカメラ越しでも、制振部材41と板ばね5の違いが識別可能となり、制振部材41の位置合わせが容易になる。また、黒く映った制振部材41と板ばね5の軸孔50との間の距離を基準とすることにより、検出用のカメラ越しでも板ばね5の位置決めが調整しやすくなる。
【0044】
(4)板ばね5と制振部材41の色を異ならせるために、板ばね5の材料であるステンレスなどの金属に着色することはコストがかかる。本実施形態における振動アクチュエータ1は、制振部材41の弾性板412を着色している。そのため、弾性板412に樹脂板を使用した場合には、樹脂への着色は樹脂材料に顔料等を混入することで容易に実施可能であり、低コスト化を図ることができる。また、弾性板412に樹脂板を使用した場合には、樹脂板の表も裏も同じ色にできるので、片面塗装した制振部材41のように組立時に裏表を問わない。
【0045】
(5)本実施形態における振動アクチュエータ1は、制振部材41の弾性板412を着色している。制振部材41は、板ばね5の振動を部分的に抑制するものであることから、制振部材41を塗装などで着色しても、板ばね5全体を塗装して着色するものに比較すると、板ばね5の振動特性に与える影響は少ない。そのため、板ばね5の振動特性に与える影響を抑制しつつ、板ばね5と制振部材41との正確な位置合わせが可能となる。
【0046】
(6)本実施形態における振動アクチュエータ1は、制振部材41の弾性板412を着色している。そのため、制振部材41の接着層411には、接着剤として着色されていない汎用品を使用することができる。
【0047】
[2.第2実施形態]
第2実施形態は、制振部材41の構成が第1実施形態と異なり、他の構成は第1実施形態と同一の構成である。以下、第1実施形態と同一の構成の説明は省略し、制振部材41について説明する。
【0048】
図6(b)に示すように、第2実施形態は、制振部材41は、板ばね5上に接着された接着剤からなる接着層411を有し、接着層411が、着色されている。接着層411は、接着剤に顔料などを混入することで着色する。この場合、接着層411自体がその粘着性や弾力性により、板ばね5の制振部材41として機能する。
【0049】
本実施形態における振動アクチュエータ1によれば、接着層411が着色されていることにより、画像解析が容易になり、板ばね5と制振部材41の正確な位置合わせが可能となる。特に、接着層411を構成する接着剤に顔料などを混入することで、所望の色を簡単に調整又は作成することができる。また、制振部材41が接着層411のみで構成されていることから、別途弾性板412が不要であり、制振部材41の構成が単純化される利点もある。
【0050】
[3.第3実施形態]
第3実施形態は、制振部材41の構成が第1実施形態と異なり、他の構成は第1実施形態と同一の構成である。以下、第1実施形態と同一の構成の説明は省略し、制振部材41について説明する。
【0051】
図6(c)に示すように、第3実施形態は、制振部材41が、板ばね5上に接着された接着剤からなる接着層411と、接着層411に積層された透明な弾性板412を有し、接着層411が着色されている構成である。ここで「透明」とは、透き通って光がよく通ることを意味するが、例えば、検出用カメラで検出される光が、透過する程度に無色であり、重なって着色された部材が検出用カメラで検出できるようになる程度に透過率が高ければ足りる。
【0052】
このような構成の第3実施形態では、第2実施形態の効果に加えて、接着層411のみでは制振効果が乏しい場合に、接着層411の上に弾性板412を兼ねることで、接着層411と弾性板412が相俟ってより高い制振効果を得ることができる。弾性板412を透明樹脂としたので、着色された接着層411が透視でき、弾性板412が板ばね5と制振部材41との位置検出の妨げにならない。
【0053】
[4.他の実施形態]
以上のように、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、発明の範囲を限定することを意図しておらず、以下に列記するように、発明の要旨を逸脱しない範囲で、そのほかの様々な形態で実施されることが可能であり、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。そして、これら実施形態、それらの組合せ、更にはそれらの変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。以下は、本発明に包含される実施形態の例である。
【0054】
(1)例えば、上記実施形態における軸孔50、錘32の中心軸324は正三角形に形成されているが、これに限られるものではない。三角形の種類を問わないだけでなく、四角形などの他の多角形であってもよい。腕部52は3本、突起部15と貫通孔54の数は3個形成されているが、板ばね5の腕部52の数、中心軸324の角の数、及び貫通孔54の数が等しいものであればよい。また、板ばね5の位置決め時における特徴点が他の箇所、例えば板ばね5の内周部や外周部に設けられたねじ孔や切欠によって得られる場合には、軸孔50は円形でも良い。
【0055】
(2)上記実施形態のケース2は円筒状をなしており、可動子4は略円柱状をなしているが、ケース及び可動子の形状はこれに限られるものではなく、多角形やその他の形状であってもよい。
【0056】
(3)上記実施形態では、可動子4を支持する板ばね5は、渦巻き状の腕部52を有するが、その他の板ばねを用いてもよい。例えば、曲線だけでなく直線を組み合わせた変則的な渦巻き状、十字状や卍状の板ばねを用いてもよい。この場合、インナーガイドも板ばねの形状に沿った形状とすることが望ましい。
【符号の説明】
【0057】
1 振動アクチュエータ
2 ケース
3 ケース側電磁駆動部
4 可動子
5 板ばね
11 カバーケース
12 インナーガイド
13 ターミナル
14 フランジ部
15 突起部
20 ヨーク
21 コイル
30 マグネット
31 ポールピース
32 錘
324 中心軸
41 制振部材
411 接着層
412 弾性板
50 軸孔
51 支持部
52 腕部
53 枠部
54 貫通孔