(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022076899
(43)【公開日】2022-05-20
(54)【発明の名称】ロックアップクラッチおよびトルクコンバータ
(51)【国際特許分類】
F16H 45/02 20060101AFI20220513BHJP
F16D 13/72 20060101ALI20220513BHJP
F16D 13/74 20060101ALI20220513BHJP
F16D 25/12 20060101ALI20220513BHJP
【FI】
F16H45/02 X
F16D13/72 B
F16D13/74 A
F16D25/12 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020187550
(22)【出願日】2020-11-10
(71)【出願人】
【識別番号】000231350
【氏名又は名称】ジヤトコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100148301
【弁理士】
【氏名又は名称】竹原 尚彦
(74)【代理人】
【識別番号】100176991
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 由布子
(74)【代理人】
【識別番号】100217696
【弁理士】
【氏名又は名称】川口 英行
(72)【発明者】
【氏名】松尾 道憲
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 雅亜
【テーマコード(参考)】
3J056
3J057
【Fターム(参考)】
3J056AA57
3J056BA02
3J056BE13
3J056BE23
3J056CA05
3J056GA08
3J057BB03
3J057CA05
3J057EE05
3J057JJ06
(57)【要約】
【課題】摩擦材の摩耗を低減しつつ、発熱を抑制する。
【解決手段】ロックアップクラッチは、タービンランナに連結され、油圧によって軸線方向に駆動されることで、フロントカバーに対して接触および離間するピストンと、フロントカバーとピストンの互いに対向する面のうち、いずれか一方を第1の面とし、他方を第2の面としたとき、第1の面に設けられた環状の摩擦材と、第2の面に設けられ、環状の摩擦材に対向する環状領域と、を備える。環状領域には、複数の連続する溝から構成される網目状の油溝が設けられている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線を中心に回転するトルクコンバータのフロントカバーと、前記軸線上に設けられたタービンランナとの締結および締結の解除を切り替えるロックアップクラッチであって、
前記タービンランナに連結され、油圧によって前記軸線方向に駆動されることで、前記フロントカバーに対して接触および離間するピストンと、
前記フロントカバーと前記ピストンの互いに対向する面のうち、いずれか一方を第1の面とし、他方を第2の面としたとき、前記第1の面に設けられた環状の摩擦材と、
前記第2の面に設けられ、前記環状の摩擦材に対向する環状領域と、を備え、
前記環状領域には、複数の連続する溝から構成される網目状の油溝が設けられている、ロックアップクラッチ。
【請求項2】
前記ピストンと前記フロントカバーの間に、オイルが流通する油路を有し、
前記ピストンは、前記軸線方向の内径側において前記タービンランナと連結し、前記軸線方向の外径側において前記油圧により駆動されて前記フロントカバーに接触および離間し、
前記環状領域は、前記ピストンがスリップしながら前記フロントカバーに接触するスリップ状態において、前記摩擦材と接触する外径側環状領域と、前記摩擦材と離間する内径側環状領域と、を有し、
前記網目状の油溝は、前記外径側環状領域に設けられ、前記内径側環状領域には設けられていない、請求項1記載のロックアップクラッチ。
【請求項3】
前記網目状の油溝は、連続する多角形の溝から構成される、請求項1または2に記載のロックアップクラッチ。
【請求項4】
前記多角形は六角形である、請求項3記載のロックアップクラッチ。
【請求項5】
前記網目状の油溝は、連続する円形の溝から構成される、請求項1または2に記載のロックアップクラッチ。
【請求項6】
軸線を中心に回転するフロントカバーと、
前記フロントカバーと一体に回転するポンプインペラと、
前記軸線上に設けられ、前記ポンプインペラに対向配置されたタービンランナと、
前記フロントカバーと前記タービンランナとの締結および締結の解除を切り替えるロックアップクラッチと、を備えるトルクコンバータであって、
前記ロックアップクラッチは、
前記タービンランナに連結され、油圧によって前記軸線方向に駆動されることで、前記フロントカバーに対して接触および離間するピストンと、
前記フロントカバーと前記ピストンの互いに対向する面のうち、いずれか一方を第1の面とし、他方を第2の面としたとき、前記第1の面に設けられた環状の摩擦材と、
前記第2の面に設けられ、前記環状の摩擦材に対向する環状領域と、を備え、
前記環状領域には、複数の連続する溝から構成される網目状の油溝が設けられている、トルクコンバータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロックアップクラッチおよびトルクコンバータに関する。
【背景技術】
【0002】
ロックアップクラッチは、トルクコンバータのハウジング内に配置されたピストンを、油圧により駆動して、トルクコンバータのフロントカバーに締結させる機構である。ピストンはトルクコンバータのタービンランナに連結され、フロントカバーはエンジンの回転駆動力が入力されるクランクシャフト(不図示)に連結されている。ピストンをフロントカバーに締結させることで、クランクシャフトとタービンランナが直結する。
【0003】
ピストンの、フロントカバーと対向する面には、環状の摩擦材であるフェーシング材が設けられている。ピストンがフロントカバーに締結する際には、このフェーシング材がフロントカバーに接触する。
【0004】
ロックアップクラッチは、ピストンとフロントカバーが完全に締結させる前に、フェーシング材がフロントカバーにスリップしながら接触するスリップ状態となる。フェーシング材がスリップすることで摩擦熱が生じる。摩擦熱によってハウジング内のオイルの温度が上昇すると、オイルの耐久性に影響を与える可能性がある。特許文献1は、フェーシング材に溝を設け、スリップ状態においてこの溝にオイルを流通させてオイルを循環させることで油温の上昇を抑制することを提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、フェーシング材に溝を設けると、フェーシング材がフロントカバーに接触した際に、溝の角部が剥離する可能性がある。また、溝を設けた分だけフェーシング材とフロントカバーの接触面積が減少する。接触面積の減少によって、フェーシング材におけるフロントカバーに接触した部分に作用する面圧が上がってフェーシング材が摩耗しやすくなる可能性がある。また、フェーシング材の溝が形成されていない部分はオイルが流通しないため、フェーシング材全体の平均温度は低下させることはできるが、局所的な発熱は抑制しにくい。
【0007】
ロックアップクラッチと、ロックアップクラッチを備えるトルクコンバータにおいて、フェーシング材の摩耗を低減しつつ、発熱を抑制することが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のある態様によれば、ロックアップクラッチは、
軸線を中心に回転するトルクコンバータのフロントカバーと、前記軸線上に設けられたタービンランナとの締結および締結の解除を切り替えるものであって、
前記タービンランナに連結され、油圧によって前記軸線方向に駆動されることで、前記フロントカバーに対して接触および離間するピストンと、
前記フロントカバーと前記ピストンの互いに対向する面のうち、いずれか一方を第1の面とし、他方を第2の面としたとき、前記第1の面に設けられた環状の摩擦材と、
前記第2の面に設けられ、前記環状の摩擦材に対向する環状領域と、を備え、
前記環状領域には、複数の連続する溝から構成される網目状の油溝が設けられている。
【0009】
本発明のある態様によれば、トルクコンバータは、
軸線を中心に回転するフロントカバーと、
前記フロントカバーと一体に回転するポンプインペラと、
前記軸線上に設けられ、前記ポンプインペラに対向配置されたタービンランナと、
前記フロントカバーと前記タービンランナとの締結および締結の解除を切り替えるロックアップクラッチと、を備えるものであって、
前記ロックアップクラッチは、
前記タービンランナに連結され、油圧によって前記軸線方向に駆動されることで、前記フロントカバーに対して接触および離間するピストンと、
前記フロントカバーと前記ピストンの互いに対向する面のうち、いずれか一方を第1の面とし、他方を第2の面としたとき、前記第1の面に設けられた環状の摩擦材と、
前記第2の面に設けられ、前記環状の摩擦材に対向する環状領域と、を備え、
前記環状領域には、複数の連続する溝から構成される網目状の油溝が設けられている。
【発明の効果】
【0010】
本発明のある態様によれば、摩擦材であるフェーシング材の摩耗を低減しつつ、発熱を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施の形態に係るロックアップクラッチを備えたトルクコンバータを示す図である。
【
図3】回転軸方向から見たフロントカバーの環状領域の一部を示す図である。
【
図4】
図3とは異なる六角形溝の態様を示す図である。
【
図7】ロックアップクラッチのスリップ状態を示す図である。
【
図8】ロックアップクラッチのロックアップ状態を示す図である。
【
図9】比較例1として、フェーシング材に溝を形成した場合を示す図である。
【
図10】比較例2として、環状領域全体に油溝を形成した場合を示す図である。
【
図11】変形例1に係る油溝の構成を示す図である。
【
図12】変形例2に係る油溝の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態に係るロックアップクラッチを、図面を参照しながら説明する。実施の形態では、トルクコンバータに設けられたロックアップクラッチの例を説明する。
【0013】
トルクコンバータは、駆動源を備えた車両に搭載される流体伝動装置である。実施の形態は、駆動源をエンジンとする例を説明する。トルクコンバータは、エンジンの回転駆動力を変速機に伝達するものである。
【0014】
図1は、実施の形態に係るロックアップクラッチを備えたトルクコンバータを示す図である。
図2は、
図1の領域Aの拡大図である。
図1に示すように、トルクコンバータ1は、コンバータハウジング2内に配置されたポンプインペラ3と、タービンランナ5と、ステータ6とを備える。コンバータハウジング2は、ポンプインペラ3のポンプシェル30と、フロントカバー4とから構成される。コンバータハウジング2内には、作動流体であるオイルが供給される油室ORが形成される。
【0015】
ポンプインペラ3とタービンランナ5は、共通の軸線である回転軸X上で相対回転可能に設けられている。ポンプインペラ3とタービンランナ5の互いの対向面には、それぞれ複数のブレード31、51が固定されている。複数のブレード31、51は、それぞれ、回転軸Xの軸線方向から見て、放射状に配置されている。
【0016】
以降の説明において、「回転軸Xの軸線方向」は、単に「回転軸X方向」という。また以降の説明において、「回転軸Xの径方向における内径側」および「回転軸Xの径方向における外径側」を、単に「内径側」および「外径側」ともいう。
【0017】
ステータ6は、ポンプインペラ3とタービンランナ5の間に位置している。
ステータ6は、ワンウェイクラッチOWCを介してステータシャフト61に支持されている。ステータ6は、回転軸X回りの周方向における一方向にのみ回転できるようになっている。ステータシャフト61は、不図示の変速機ケースに固定されている。
【0018】
フロントカバー4は、不図示のエンジンのクランクシャフトに連結されている。タービンランナ5は、内径側に位置するタービンハブ7に固定されている。
タービンハブ7は、フランジ状の連結部72と、円筒状の基部71を有する。タービンランナ5は、連結部72にリベットRで固定されている。基部71は、入力軸ISの外周にスプライン嵌合して取り付けられている。
【0019】
エンジンの回転駆動力は、不図示のクランクシャフトからフロントカバー4に入力される。フロントカバー4にはポンプインペラ3のポンプシェル30が固定されている。そのため、フロントカバー4に入力された回転駆動力はポンプインペラ3に入力される。ポンプインペラ3に入力された回転駆動力は、コンバータハウジング2内のオイルを介して、タービンランナ5に伝達される。タービンランナ5に伝達されたエンジンの回転駆動力は、タービンハブ7および入力軸ISを介して変速機に伝達される。
【0020】
トルクコンバータ1は、フロントカバー4とタービンランナ5とを相対回転不能に連結するロックアップクラッチ8を有している。フロントカバー4とタービンランナ5とが相対回転不能に連結されると、エンジンの回転駆動力が、フロントカバー4からタービンランナ5に直接入力される。
【0021】
ロックアップクラッチ8は、コンバータハウジング2内の、タービンランナ5とフロントカバー4の間に配置される。ロックアップクラッチ8は、フロントカバー4に締結するピストン80と、トーションダンパ90とを備える。トーションダンパ90は、ピストン80がフロントカバー4に締結した際に、入力されるエンジンの回転駆動力による振動を吸収するものである。
【0022】
ピストン80は、回転軸X上に配置された円盤状の部材である。ピストン80は、回転軸X方向の内径側に位置する筒部81と、外径側に位置するディスク部83およびフランジ部89を有する。
【0023】
ピストン80の筒部81は、タービンハブ7の基部71に外挿される。筒部81の一端81aは、タービンハブ7の連結部72に当接している。筒部81の他端81bにはディスク部83が接続している。
【0024】
ディスク部83およびフランジ部89は、フロントカバー4に対応した形状を有している。
フロントカバー4は、回転軸Xの径方向に延びるディスク状の側壁部41と、側壁部41の外縁において回転軸X方向に屈曲し、ポンプシェル30に接合する周壁部49を備えている。
【0025】
ディスク部83は、筒部81の他端81bから、フロントカバー4の側壁部41に沿って回転軸Xの径方向に延びる。フランジ部89は、ディスク部83の外縁から回転軸X方向に屈曲し、フロントカバー4の周壁部49に沿って延びる。
【0026】
ディスク部83およびフランジ部89は、それぞれ側壁部41および周壁部49と隙間を空けて配置されている。この隙間が、ピストン80とフロントカバー4の間にオイルを流通させる油路OP3を形成している。
【0027】
油路OP3は、コンバータハウジング2内に形成される油室ORと連通している。油路OP3は、また、入力軸ISに設けられた油路OP1と連通している。油室ORは、ポンプインペラ3から延びるコンバータスリーブ32の内壁とステータシャフト61の外壁との間に形成された油路OP2と連通している。
【0028】
油路OP1および油路OP2は、油圧制御装置100に接続されている。油圧制御装置100によって、油路OP3と油室ORに供給される油圧が制御される。油路OP3と油室ORに供給される油圧差によって、ピストン80は回転軸X方向に駆動されるが、その詳細については後述する。
【0029】
ディスク部83のタービンランナ5側の面84には、リベットRを介してトーションダンパ90の一端が固定されている。トーションダンパ90の他端は、リベットRを介してタービンハブ7の連結部72に固定されている。
【0030】
ディスク部83のフロントカバー4側の面85(第1の面)には、フェーシング材86が固定されている。フェーシング材86は環状であり、ディスク部83の外縁近傍の位置に回転軸Xの周方向に沿って配置される。フェーシング材86は、例えば、合成樹脂等を含浸させた繊維等から構成される摩擦材である。
【0031】
図2に示すように、フェーシング材86は、ディスク部83の面85からフロントカバー4の側壁部41側に突出している。フェーシング材86は、面85とフロントカバー4の側壁部41の面42(第2の面)との間に形成される油路OP3内に位置している。
【0032】
フロントカバー4は、面42において、フェーシング材86と回転軸X方向において対向する環状領域43を有する。
【0033】
図3は、回転軸X方向から見たフロントカバー4の環状領域43の一部を示す図である。
図3に示すように、環状領域43は、回転軸Xを中心として、径方向内側の領域44(内径側環状領域)と、径方向外側の領域45(外径側環状領域)の2つの環状領域43に区画される。
図2に示すように、領域44は、フェーシング材86の内径側の領域87に対向し、領域45は、フェーシング材86の外径側の領域88に対向する。
【0034】
領域45は、後記するロックアップクラッチ8のスリップ状態において、フェーシング材86の領域88(
図2参照)と接触する部分である。領域44は、後記するロックアップクラッチ8のスリップ状態では領域87と離間し、ロックアップ状態では領域87と接触する部分である。
図面では、便宜的に領域44と領域45の径方向長さを同じとしているが、これに限定されない。領域44および領域45の径方向長さは、スリップ状態およびロックアップ状態の、フェーシング材86と環状領域43の接触状態に応じて適宜設定することができる。
【0035】
図3に示すように、領域44は平坦面であるが、領域45には網目状の油溝46が形成されている。
図3では油溝46を模式的にハッチングで示し、丸囲みした部分を拡大して示している。
【0036】
油溝46は、連続する微細な六角形溝460から構成される。六角形溝460は領域45の全体に隙間なく張り巡らされている。
【0037】
六角形溝460は、公知の方法によって形成することができる。例えば、レーザ加工によって六角形溝460を形成する場合は、環状の領域45に隙間なく張り巡らすため、回転軸Xの内径側から外径側に向かうにつれて、六角形溝460の溝幅GWが徐々に広がっていくように設定しても良い。
【0038】
図4は、
図3とは異なる六角形溝460の態様を示す図である。
図4は、プレス加工に好適な六角形溝460の態様の一例を示している。
図4では、六角形溝460の溝幅は一定とする代わりに、六角形のサイズを調整している。六角形のサイズとは、六角形溝460に囲まれた平面部分の面積を意味する。具体的には、六角形のサイズを、回転軸Xの内径側から外径側に向かうにつれて大きくするように調整することができる。その際、六角形の径方向幅RWは一定とし、平面部の周方向幅CWを、内径側から外径側に向かうにつれて大きくすることで、六角形のサイズを大きくするようにしても良い。
【0039】
図5は六角形溝460の詳細を示す図である。
図5では、模式的に連続する六角形溝460を同じサイズとしている。ここでは、
図6の中心に太線で図示する六角形溝460Aを例に取って、その構造を説明する。六角形溝460Aは、6本の溝461a~461cと6つの角部462を有する。
【0040】
6本の溝461a~461cはそれぞれ異なる方向に延び、角部462において隣接する溝に接続している。6本の溝461a~461cは同じ長さを有し、六角形溝460Aの中心Oから6つの角部462までの距離は等距離である。なお、中心Oは、各角部462を接続する対角線の交点であり、フロントカバー4の面上に位置する。
【0041】
図5では、六角形溝460Aを正六角形として図示しているが、厳密に正六角形である必要はなく、寸法の誤差は許容される。また、
図3および
図4のように、内径側から外径側に向かってサイズを調整した場合は、六角形溝460は、正六角形であるものと正六角形でないものがあっても良い。
【0042】
六角形溝460Aは、回転軸Xの周方向に沿って延び、回転軸Xの径方向において隣り合う一対の周方向溝461a、461aを備える。一対の周方向溝461a、461aの一方側(図中左側)の端部と、他方側(図中右側)の端部は、それぞれ、径方向に平行な線分に対してジグザグに延びる径方向溝461b、461cによって接続されている。
【0043】
このように、六角形溝460Aは、周方向溝461a、461aと径方向溝461b、461cの端部同士が接続することによって、異なる方向に延びる溝が連通した一つの溝を形成している。
【0044】
六角形溝460Aは、径方向および周方向において6つの他の六角形溝460と隣接している。六角形溝460Aは、径方向において隣接する六角形溝460とは、周方向溝461aを共有する。六角形溝460Aは、周方向に隣接する六角形溝460とは、径方向溝461b、461cのいずれかを共有している。
【0045】
また六角形溝460Aは、径方向または周方向に隣接する2つの六角形溝460と角部462を共有している。これによって、六角形溝460を構成する全ての溝が、角部462において他の溝に分岐して連通するようになっている。
【0046】
例えば、周方向溝461aは角部462において径方向溝461b、461cに分岐する。径方向溝461bは角部462に到達すると径方向溝461cおよび周方向溝461aに分岐する。図示は省略するが、径方向溝461cは角部462に到達すると径方向溝461bおよび周方向溝461aに分岐する。
【0047】
各六角形溝460の寸法は限定されるものでは無いが、例えば、周方向溝461aおよび径方向溝461b、461cの長さをそれぞれ120μmとし、溝深さを20μm、溝幅を50μmとすることができる。
【0048】
領域45は、微細な六角形溝460が連続して形成されることによって、網目状の油溝46が満遍なく張り巡らされた状態となっている。
【0049】
次に、ロックアップクラッチ8の動作について説明する。
図6は、ピストン80の駆動を示す図である。
図7は、ロックアップクラッチ8のスリップ状態を示す図である。
図8は、ロックアップクラッチ8のロックアップ状態を示す図である。
図9は、比較例1として、フェーシング材86に溝860を形成した場合を示す図である。
図10は、比較例2として、環状領域43全体に油溝490を形成した場合を示す図である。
前記したように、実施の形態の油溝46は微細な六角形溝460(
図3参照)から構成されたものであるが、
図7および
図8では、油溝46の作用をわかりやすくするために、油溝46を誇張して大きく図示している。
【0050】
前記したように、ロックアップクラッチ8のピストン80は、油路OP3と油室ORに供給される油圧を制御することで、回転軸X方向に駆動される。ロックアップクラッチ8は、ピストン80の駆動によって、ロックアップ状態とリリース状態が切り替えられる。ロックアップ状態は、ピストン80がフロントカバー4に完全に締結した状態(
図8参照)を意味し、リリース状態は、ピストン80がフロントカバー4から離間して締結が解除された状態(
図2参照)を意味する。
【0051】
油路OP3と油室ORの油圧を同圧とすると、
図2に示すように、ピストン80は、フロントカバー4から離間し、ロックアップクラッチ8はリリース状態となる。このとき、フロントカバー4に入力されるエンジンの回転駆動力は、ポンプインペラ3からコンバータハウジング2内のオイルを介してタービンランナ5に伝達される。
【0052】
油室ORの油圧を増大させると共に、油路OP3の油圧を低下させると、油室ORと油路OP3で差圧が発生する。この差圧によって、
図6の白抜き矢印で示すように、ピストン80には、回転軸X方向のフロントカバー4側に押し込む力が作用する。
ここで、ピストン80は、内径側においてタービンハブ7に固定されているが(
図1参照)、外径側はフリーの状態である。そのため、
図6に示すように、ピストン80のディスク部83は、内径側に対して外径側がフロントカバー4側に傾いた状態で変位する。
【0053】
図7に示すように、ピストン80の変位が進むと、面85からフロントカバー4側に突出するフェーシング材86が、対向するフロントカバー4の環状領域43に接触する。前記したようにピストン80は、外径側がフロントカバー4側に傾いている。そのため、フェーシング材86は、外径側の領域88が、内径側の領域87よりも先に、フロントカバー4の面42に接触する。すなわち、外径側の領域88のみが、フロントカバー4の外径側の領域45に接触し、フェーシング材86の内径側の領域87は、フロントカバー4の内径側の領域44とは離間した状態となる。
【0054】
フェーシング材86が環状領域43に全面的に接触していない状態では、フェーシング材86は環状領域43に圧接せず、スリップしながら接触する状態になる。ピストン80はフロントカバー4に対して相対回転しているため、完全に締結した状態ではない。この状態をスリップ状態という。
【0055】
油室ORと油路OP3で差圧をさらに大きくすると、ピストン80をフロントカバー4側に押圧する力がさらに強まる。力が強まることによって、
図8に示すように、フェーシング材86は全面的に環状領域43に押し付けられて圧接される。これによって、フェーシング材86のスリップは停止し、ピストン80がフロントカバー4に完全に締結したロックアップ状態となる。
【0056】
ロックアップ状態では、ピストン80は、エンジンの回転駆動力で回転しているフロントカバー4と一体に回転する。
図1に示すように、ピストン80はタービンハブ7を介して、入力軸ISに連結されている。
この状態では、フロントカバー4に入力されたエンジンの回転駆動力は、トルクコンバータ1内のオイルを介することなく、入力軸ISに直接出力される。
【0057】
ロックアップを解除する場合は、油室ORの油圧を下げ、油路OP3の油圧を上げる。差圧が小さくなることによって、ピストン80はフロントカバー4から離間する方向に変位し、
図2に示すリリース状態になる。
【0058】
図7に示すスリップ状態では、フェーシング材86とフロントカバー4の環状領域43との間で、摩擦熱が生じる。この摩擦熱によって油路OP3のオイルOLの油温が上昇すると、オイルOLの耐久性に影響を与える可能性がある。
【0059】
さらに、オイルOLの温度上昇は、フェーシング材86とフロントカバー4のμV特性に影響を与え、ロックアップクラッチ8の経時劣化を促進させる可能性がある。なお、μV特性とは、スリップ状態におけるフェーシング材86とフロントカバー4の間の相対速度(V)に応じた、フェーシング材86とフロントカバー4の摩擦係数(μ)を示すものである。
【0060】
油路OP3のオイルOLの温度上昇を抑制するには、オイルOLを油路OP3と油室ORの間で循環させることが望ましい。しかしながら、フェーシング材86と環状領域43が接触して油路OP3が閉止されると、オイルOLの循環が妨げられる。
【0061】
ここで、前記したように、スリップ状態ではフェーシング材86の外径側の領域88のみが、フロントカバー4の外径側の領域45に接触している。そして、フロントカバー4の外径側の領域45には、網目状の油溝46が形成されている。
【0062】
油路OP3に供給されたオイルOLは、フェーシング材86の領域88と環状領域43の領域45とが接触した箇所においては、油溝46を流通可能である。さらにフェーシング材86の領域87と環状領域43の領域44とは離間しているため、この箇所もオイルOLは流通可能である。このように、油路OP3が領域45に形成した油溝46を介して連通するため、スリップ状態においてもオイルOLが循環可能となる。これによって、摩擦熱による油温の上昇が低減され、オイルOLの耐久性を向上させることができる。
【0063】
また、網目状の油溝46は、領域45に隙間なく形成され、張り巡らされている。そのため、領域45全体にオイルOLが行き渡る。領域45に行き渡ったオイルOLとの熱交換によって、フェーシング材86とフロントカバー4を冷却することができる。
【0064】
さらに、
図5に示すように、領域45に形成した油溝46は、連続する微細な六角形溝460から構成されている。各六角形溝460は、他の六角形溝460と周方向溝461aおよび径方向溝461b、461cのいずれかを共有することで、互いに連通している。これによって、油溝46に入り込んだオイルOLの流動性が高められる。
【0065】
例えば、周方向溝461aおよび径方向溝461bを流れるオイルOLは、角部462に到達すると、外径側の径方向溝461cに流れる。径方向溝461bを流れるオイルOLは、角部462に到達すると、角部462に掻き分けられる形で周方向溝461aと径方向溝461cに流れる。このように、各溝を流れるオイルOLが角部462において合流したり、角部462に掻き分けられて分岐したりすることで、オイルOLの流動性が高くなる。
【0066】
油溝46に入り込んだオイルOLの流動性が高められることで、油溝46の外に排出されやすくなり、オイルOLの循環性能も高められる。また、油溝46にオイルOLが入り込むため、フェーシング材86とフロントカバー4の間に余分なオイルOLが残存しにくく、μV特性も向上させることができる。
【0067】
ここで、
図9の比較例1に示すように、フェーシング材86側に油溝を形成することも考えられる。金属部材であるフロントカバー4と異なり、不織布で構成されるフェーシング材86に、実施の形態のような微細な六角形溝460を形成することは難しい。そのため、フェーシング材86に油溝を形成する場合は、例えば径方向に延びる複数の溝860を、放射状に形成することが考えられる。
【0068】
しかしながら、比較例1の場合、油路OP3のオイルOLを循環させることにより油温の上昇は抑制できるが、フェーシング材86の溝860を形成していない部分はオイルOLによって冷却されないため、局所的な発熱を抑制しにくい。
【0069】
また、フェーシング材86に形成した溝860の角がフロントカバー4に当たって剥離する可能性がある。
【0070】
さらに比較例1の溝860は、実施の形態の微細な油溝46と比べて面積が大きくなるため、フェーシング材86とフロントカバー4の接触面積が減少する。接触面積が減少した状態で摩擦係数(μ)を維持するためには、油室ORと油路OP3の差圧を大きくして、フェーシング材86にかかる面圧を上げる必要がある。フェーシング材86にかかる面圧が上がることで、フェーシング材86が摩耗しやすくなる可能性がある。
【0071】
フェーシング材86に形成した溝860は比較的大きいため、フェーシング材86とフロントカバー4のロックアップ直前に、溝860内を流れるオイルOLに渦が発生し、油室ORと油路OP3の油圧差の制御に影響を与える可能性がある。
【0072】
また、溝860の形成によってフェーシング材86の剛性が低下して、フェーシング材86とフロントカバー4の初期のμV特性に影響を与える可能性がある。
【0073】
一方、実施の形態では、
図4に示すように、フロントカバー4側に油溝46を設けた。
フロントカバー4は剛性の高い金属部材であるため、網目状の油溝46を、領域45の全体に隙間なく形成することができる。
これによって、前記したように、領域45全体に形成された油溝46にオイルOLが行き渡るため、局所的な発熱を抑制することができる。
【0074】
また、フェーシング材86には、比較例1のような溝の角部が形成されないことから、フロントカバー4に当たって角部が剥離することを防止することができる。
【0075】
フロントカバー4に形成される油溝46は、微細な六角形溝460から構成されるため、フェーシング材86とフロントカバー4の接触面積の減少を抑制することができる。これによってフェーシング材86とフロントカバー4の摩擦係数(μ)を維持するためにフェーシング材86にかかる面圧を上げる必要がなく、フェーシング材86の摩耗を抑制することができる。
【0076】
実施の形態の油溝46は、微細な六角形溝460から構成される。そのため、比較例1のように、フェーシング材86とフロントカバー4のロックアップ直前に、溝860内に渦が発生する可能性を低減することができる。これによって、油室ORと油路OP3の差圧の制御への影響を低減することができる。
【0077】
また、比較例1のように、フェーシング材86に溝860を設けないことで、フェーシング材86の剛性の低下を防止できる。そのため、フェーシング材86とフロントカバー4の初期のμV特性への影響を低減することができる。
また、ロックアップクラッチ8のスリップ状態のとき、フェーシング材86とフロントカバー4の間にオイルOLが過多に存在すると、フェーシング材86とフロントカバー4の初期のμ-V特性に影響を与える可能性がある。実施の形態では、フロントカバー4の油溝46に余分なオイルOLが入り込むため、初期のμ-V特性を向上させることができる。
【0078】
また、フェーシング材86とフロントカバー4のμ-V特性は、主にフェーシング材86の気孔率の影響を受けるが、実施の形態ではフロントカバー4に形成された油溝46もμ-V特性に寄与している。これによって、ロックアップクラッチ8の耐久性を向上することができる。
【0079】
図8に示すロックアップ状態では、フェーシング材86全体が環状領域43に圧接してスリップは停止する。フェーシング材86のスリップによる発熱の問題は生じないため、油路OP3にオイルOLを循環させる必要はない。
【0080】
しかしながら、
図10に示す比較例2のように、内径側の領域44を含む環状領域43全体に油溝490を形成していた場合、ロックアップ状態においても油路OP3が閉じられず、オイルOLがフェーシング材86と環状領域43の間を流通する。フェーシング材86と環状領域43の間を流通するオイルOLによって、ピストン80をフロントカバー4から離間させる方向に油圧がかかり、フェーシング材86とフロントカバー4の締結に影響を与える可能性がある。
【0081】
実施の形態では、
図8に示すように、領域44には油溝46は形成されず、平坦面となっている。そのため、フェーシング材86全体が環状領域43に圧接した際には、領域44はフェーシング材86に密着するため、油路OP3が閉じられ、フェーシング材86と環状領域43の間を通過するオイルOLの量が低減される。これによって、フェーシング材86とフロントカバー4の締結に影響を与えることを抑制することができる。
【0082】
以上述べたように、実施の形態のトルクコンバータ1およびロックアップクラッチ8は、以下の構成を備える。
(1)トルクコンバータ1は、回転軸X(軸線)を中心に回転するフロントカバー4と、
フロントカバー4と一体に回転するポンプインペラ3と、
回転軸X上に設けられ、ポンプインペラ3に対向配置されたタービンランナ5と、
フロントカバー4とタービンランナ5との締結および締結の解除を切り替えるロックアップクラッチ8と、を備える。
ロックアップクラッチ8は、
タービンランナ5に連結され、油圧によって回転軸X方向に駆動されることで、フロントカバー4に対して接触および離間するピストン80と、
フロントカバー4とピストン80の互いに対向する面42、85のうち、いずれか一方を第1の面とし、他方を第2の面としたとき、第1の面に設けられた環状のフェーシング材86(摩擦材)と、
第2の面に設けられ、環状のフェーシング材86に対向する環状領域43と、を備える。
環状領域43には、複数の連続する溝から構成される網目状の油溝46が設けられている。
なお、実施の形態では、ピストン80の面85を「第1の面」とし、フロントカバー4の面42を「第2の面」としている。
【0083】
ロックアップクラッチ8のスリップ状態においては、フェーシング材86がスリップしながらフロントカバー4の環状領域43と接触するため、摩擦熱が発生することがある。
実施の形態では、フロントカバー4の環状領域43に油溝46を設けた。油溝46をオイルOLが通過することによって、フェーシング材86とフロントカバー4が冷却されるため、発熱を抑制することができる。
【0084】
ここで、比較例1のように、フェーシング材86に溝860を設けると、フェーシング材86の剥離および摩耗に繋がる可能性がある。実施の形態では、剛性の高い金属部材であるフロントカバー4に油溝46を設けているため、フェーシング材86の剥離および摩耗を低減することができる。さらに、金属部材であるフロントカバー4には、油溝46を網目状に張り巡らすことができるため、フェーシング材86とフロントカバー4が接触する箇所に満遍なくオイルOLを行き渡らせることができ、発熱を効果的に抑制することができる。
【0085】
(2)ロックアップクラッチ8は、ピストン80とフロントカバー4の間に、オイルOLが流通する油路OP3を有する。
ピストン80は、筒部81(回転軸X(軸線)方向の内径側)においてタービンランナ5と連結し、ディスク部83(回転軸X方向の外径側)において油圧により駆動されてフロントカバー4に接触および離間する。
環状領域43は、ピストン80がスリップしながらフロントカバー4に接触するスリップ状態において、フェーシング材86(摩擦材)と接触する領域45(外径側環状領域)と、フェーシング材86と離間する領域44(内径側環状領域)と、を有する。
網目状の油溝46は、領域45に設けられ、領域44には設けられていない。
【0086】
このような構成により、スリップ状態では、フロントカバー4とフェーシング材86の間をオイルOLが通過するため、油路OP3にオイルOLを循環させることができるため、油温の上昇を抑制することができる。
【0087】
一方、ロックアップ状態においてフロントカバー4とフェーシング材86の間をオイルOLが通過すると、フロントカバー4とピストン80を離間させる方向に油圧がかかり、締結に影響を与える可能性がある。
実施の形態の構成によれば、ロックアップ状態では、油溝46が形成されていない領域44が領域87と密着して、油路OP3が閉じられる。これによって、フロントカバー4とフェーシング材86の間をオイルOLが通過して、フロントカバー4とフェーシング材86の締結に影響を与えることを抑制することができる。
【0088】
(3)網目状の油溝46は、連続する多角形の溝から構成される。
油溝46を多角形の溝から構成することで、異なる方向に延びる溝が領域45全体に張り巡らされるため、領域45全体にオイルOLが行き渡りやすく、冷却効率を高めることができる。実施の形態では、多角形の溝として六角形溝460を例に挙げたが、これに限定されない。三角形や四角形等、他の多角形としても良い。
【0089】
(4)多角形は六角形である。
油溝46を六角形溝460とすることで、領域45に隙間なく油溝46を配置することができる。
【0090】
<変形例1>
図11は、変形例1に係る油溝46Bの構成を説明する図である。
実施の形態で説明した六角形溝460は、周方向に沿った周方向溝461a(
図6参照)を有するものを説明したが、これに限定されない。
図11に示すように、変形例1の六角形溝460Bは、実施の形態の六角形溝460の向きを変えて配置したものである。
六角形溝460Bは、回転軸Xの径方向に沿って延び、回転軸Xの径方向において隣り合う一対の径方向溝471a、471aを備える。一対の径方向溝471a、471aは、周方向に平行な線分に対してジグザグに延びる周方向溝471b、471cによって接続されている。
【0091】
実施の形態と同様に、変形例1にかかる六角形溝460Bも、異なる方向に延びる溝(径方向溝471a、471aおよび周方向溝471b、471c)が領域45全体に張り巡らされる。これによって、領域45全体にオイルOLが行き渡りやすく、オイルOLによる冷却効率を高めることができる。また、油溝46Bを六角形溝460Bから構成することで、領域45に隙間なく油溝46を配置することができる。
【0092】
<変形例2>
図12は、変形例2に係る油溝46Cの構成を説明する図である。
図12に示すように、油溝46Cは、連続する円形溝460Cで構成しても良い。円形溝460Cは、回転軸X(
図2参照)方向から見て円形の溝であり、六角形溝460と同様に、フロントカバー4の領域45に連続して形成される。
図12に示すように、円形溝460Cは、回転軸X(
図2参照)の径方向に沿った部分と周方向に沿った部分を有し、径方向および周方向において隣接する他の円形溝460Cと、溝の一部を共有している。
【0093】
円形溝460Cが、径方向および周方向に沿った部分を有することで、油溝46Cに入り込んだオイルOLが、領域45全体に行き渡りやすい。また、円形溝460Cは中心Oから等距離に形成されるので、オイルOLが均等に円形溝460Cに入り込みやすい。
【0094】
以上のように、変形例2は、以下の構成を有する。
(5)網目状の油溝46Cは、連続する円形溝460C(円形の溝)から構成される。
変形例2では、径方向および周方向に沿った部分を有する円形溝460Cが、領域45全体に張り巡らされる。これによって、領域45全体にオイルOLが行き渡りやすく、オイルOLによる冷却効率を高めることができる。
【0095】
<変形例3>
実施の形態では、
図1に示すように、ピストン80の面を、フェーシング材86が設けられた第1の面とし、フロントカバー4の面42を、環状領域43が設けられた第2の面としたが、これに限られない。フロントカバー4の面42を、フェーシング材が設けられた第1の面とし、ピストン80の面85を、環状領域が設けられた第2の面としても良い。変形例3は、実施の形態だけでなく、変形例1、変形例2にも適用可能である。
【0096】
本発明は、前記した実施の形態および変形例に示した態様のみに限定されるものではなく、発明の技術的な思想の範囲内で、適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0097】
1 トルクコンバータ
2 コンバータハウジング
3 ポンプインペラ
4 フロントカバー
5 タービンランナ
6 ステータ
8 ロックアップクラッチ
42 面(第2の面)
43 環状領域
44 領域(内径側環状領域)
45 領域(外径側環状領域)
46 油溝
460 六角形溝
80 ピストン
85 面(第1の面)
86 フェーシング材(摩擦材)
87 領域
88 領域
OP3 油路
X 回転軸(軸線)