(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022076946
(43)【公開日】2022-05-20
(54)【発明の名称】樹脂成形体及びその製造方法並びに飲食料品
(51)【国際特許分類】
B65D 65/46 20060101AFI20220513BHJP
B29C 45/00 20060101ALI20220513BHJP
【FI】
B65D65/46
B29C45/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020187616
(22)【出願日】2020-11-10
(71)【出願人】
【識別番号】591014972
【氏名又は名称】株式会社 伊藤園
(71)【出願人】
【識別番号】519135378
【氏名又は名称】ピーライフ・ジャパン・インク株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】508115897
【氏名又は名称】株式会社湘南貿易
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100080953
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 克郎
(74)【代理人】
【識別番号】230103089
【弁護士】
【氏名又は名称】遠山 友寛
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】安倍 義人
(72)【発明者】
【氏名】冨山 績
(72)【発明者】
【氏名】橋本 則夫
【テーマコード(参考)】
3E086
4F206
【Fターム(参考)】
3E086AA23
3E086AB01
3E086AD01
3E086AD23
3E086BA15
3E086BA35
3E086BB71
3E086CA01
3E086DA08
4F206AA11
4F206AB19
4F206JA07
4F206JL02
(57)【要約】 (修正有)
【課題】分解性に優れた樹脂成形体等を提供する。
【解決手段】複数の脂肪酸金属塩を含む分解剤と、ポリプロピレンを含む樹脂と、を含み、複数の脂肪酸金属塩に含まれる複数の金属元素が、互いに異なる酸化数をとることができる金属元素であり、分解剤が、樹脂成形体に均一に分布し、樹脂成形体に含まれる分解剤の50質量%以上が、樹脂と混合された状態にあり、樹脂成形体に含まれる分解剤の全てが、樹脂と混合された状態にある、樹脂成形体であり、複数の金属元素が、遷移金属元素と希土類元素との組み合わせである。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の脂肪酸金属塩を含む分解剤と、
ポリプロピレンを含む樹脂と、
を含み、
前記複数の脂肪酸金属塩に含まれる複数の金属元素が、互いに異なる酸化数をとることができる金属元素である、
樹脂成形体。
【請求項2】
前記分解剤が、前記樹脂成形体に均一に分布している、請求項1に記載の樹脂成形体。
【請求項3】
前記樹脂成形体に含まれる前記分解剤の50質量%以上が、前記樹脂と混合された状態にある、請求項1に記載の樹脂成形体。
【請求項4】
前記樹脂成形体に含まれる前記分解剤の全てが、前記樹脂と混合された状態にある、請求項1~3のいずれか一項に記載の樹脂成形体。
【請求項5】
前記複数の金属元素が、遷移金属元素と希土類元素との組み合わせである、請求項1~4のいずれか一項に記載の樹脂成形体。
【請求項6】
前記遷移金属元素がマンガンであり、前記希土類元素がセリウムである、請求項5に記載の樹脂成形体。
【請求項7】
前記脂肪酸金属塩を形成する脂肪酸が、炭素数12~24の脂肪酸である、請求項1~6のいずれか一項に記載の樹脂成形体。
【請求項8】
前記炭素数12~24の脂肪酸が、ステアリン酸である、請求項7に記載の樹脂成形体。
【請求項9】
前記樹脂成形体が、飲食料品を形成する樹脂成形体である、請求項1~8のいずれか一項に記載の樹脂成形体。
【請求項10】
前記飲食料品を形成する樹脂成形体が、ストロー、ラベル、キャップ、容器又は包装である、請求項9に記載の樹脂成形体。
【請求項11】
請求項10に記載のストローと、
前記ストローを封入している袋と、
を備える、
飲料品。
【請求項12】
複数の脂肪酸金属塩を含む分解剤と、ポリプロピレンを含む樹脂と、を混合して、混合物を得る工程と、
前記混合物を樹脂成形体に成形する工程と、
を含み、
前記複数の脂肪酸金属塩に含まれる複数の金属元素が、互いに異なる酸化数をとることができる金属元素である、
樹脂成形体の製造方法。
【請求項13】
前記樹脂成形体に含まれる前記分解剤の50質量%以上を、前記樹脂と混合する、請求項12に記載の製造方法。
【請求項14】
前記樹脂成形体に含まれる前記分解剤の全てを、前記樹脂と混合する、請求項12又は13に記載の製造方法。
【請求項15】
前記複数の金属元素が、遷移金属元素と希土類元素との組み合わせである、請求項12~14のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項16】
前記遷移金属元素がマンガンであり、前記希土類元素がセリウムである、請求項15に記載の製造方法。
【請求項17】
前記脂肪酸金属塩を形成する脂肪酸が、炭素数12~24の脂肪酸である、請求項12~16のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項18】
前記炭素数12~24の脂肪酸が、ステアリン酸である、請求項17に記載の製造方法。
【請求項19】
前記樹脂成形体が、飲食料品を形成する樹脂成形体である、請求項12~18のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項20】
前記飲食料品を形成する樹脂成形体が、ストロー、ラベル、キャップ、容器又は包装である、請求項19に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂成形体及びその製造方法並びに飲食料品に関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチックは、生活の中で欠かすことのできない素材として大量に使用されているが、リサイクルされている割合は低く、大部分は自然界に投棄されている。プラスチックは、その優れた耐久性のために分解されにくく、環境汚染が問題となっている。
【0003】
この問題に対して、生分解性プラスチックの利用が注目されており、ポリ乳酸(PLA)やポリビニルアルコール(PVA)等の生分解性プラスチックが使用されている。また、プラスチックの分解を促進する技術も報告されている。このような技術として、例えば特許文献1は、「酸化数が異なる複数の脂肪酸金属塩を含む分解処理液を塗布、散布、噴霧、又は浸漬の何れの手法により付着させることで樹脂成型体を分解処理することを特徴とする樹脂成型体の分解処理方法」を開示しており、具体的には、ポリエチレン製フィルムの表面に分解処理液を塗布することによって前記フィルムの分解を促進させることを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、分解性に優れた樹脂成形体及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等が鋭意検討した結果、所定の分解剤とポリプロピレン(PP)を含む樹脂とを含む樹脂成形体が優れた分解性を有することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
本発明は以下の実施形態を含む。
[1]
複数の脂肪酸金属塩を含む分解剤と、
ポリプロピレンを含む樹脂と、
を含み、
前記複数の脂肪酸金属塩に含まれる複数の金属元素が、互いに異なる酸化数をとることができる金属元素である、
樹脂成形体。
[2]
前記分解剤が、前記樹脂成形体に均一に分布している、[1]に記載の樹脂成形体。
[3]
前記樹脂成形体に含まれる前記分解剤の50質量%以上が、前記樹脂と混合された状態にある、[1]に記載の樹脂成形体。
[4]
前記樹脂成形体に含まれる前記分解剤の全てが、前記樹脂と混合された状態にある、[1]~[3]のいずれかに記載の樹脂成形体。
[5]
前記複数の金属元素が、遷移金属元素と希土類元素との組み合わせである、[1]~[4]のいずれかに記載の樹脂成形体。
[6]
前記遷移金属元素がマンガンであり、前記希土類元素がセリウムである、[5]に記載の樹脂成形体。
[7]
前記脂肪酸金属塩を形成する脂肪酸が、炭素数12~24の脂肪酸である、[1]~[6]のいずれかに記載の樹脂成形体。
[8]
前記炭素数12~24の脂肪酸が、ステアリン酸である、[7]に記載の樹脂成形体。
[9]
前記樹脂成形体が、飲食料品を形成する樹脂成形体である、[1]~[8]のいずれかに記載の樹脂成形体。
[10]
前記飲食料品を形成する樹脂成形体が、ストロー、ラベル、キャップ、容器又は包装である、[9]に記載の樹脂成形体。
[11]
[10]に記載のストローと、
前記ストローを封入している袋と、
を備える、
飲料品。
[12]
複数の脂肪酸金属塩を含む分解剤と、ポリプロピレンを含む樹脂と、を混合して、混合物を得る工程と、
前記混合物を樹脂成形体に成形する工程と、
を含み、
前記複数の脂肪酸金属塩に含まれる複数の金属元素が、互いに異なる酸化数をとることができる金属元素である、
樹脂成形体の製造方法。
[13]
前記樹脂成形体に含まれる前記分解剤の50質量%以上を、前記樹脂と混合する、[12]に記載の製造方法。
[14]
前記樹脂成形体に含まれる前記分解剤の全てを、前記樹脂と混合する、[12]又は[13]に記載の製造方法。
[15]
前記複数の金属元素が、遷移金属元素と希土類元素との組み合わせである、[12]~[14]のいずれかに記載の製造方法。
[16]
前記遷移金属元素がマンガンであり、前記希土類元素がセリウムである、[15]に記載の製造方法。
[17]
前記脂肪酸金属塩を形成する脂肪酸が、炭素数12~24の脂肪酸である、[12]~[16]のいずれかに記載の製造方法。
[18]
前記炭素数12~24の脂肪酸が、ステアリン酸である、[17]に記載の製造方法。
[19]
前記樹脂成形体が、飲食料品を形成する樹脂成形体である、[12]~[18]のいずれかに記載の製造方法。
[20]
前記飲食料品を形成する樹脂成形体が、ストロー、ラベル、キャップ、容器又は包装である、[19]に記載の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、分解性に優れた樹脂成形体及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、酸化分解試験を経た二重ストロー(分解剤:1.0質量%)について、360日間の生分解試験を行った結果を示す。セルロースは比較対照である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
【0011】
<樹脂成形体>
本発明の一実施形態は、複数の脂肪酸金属塩を含む分解剤と、ポリプロピレンを含む樹脂と、を含み、前記複数の脂肪酸金属塩に含まれる複数の金属元素が、互いに異なる酸化数をとることができる金属元素である、樹脂成形体に関する。
【0012】
本実施形態に係る樹脂成形体は分解性に優れるため、自然界に投棄されたとしても、従来のプラスチック製品と比較して環境汚染を引き起こしにくいという利点を有する。具体的には、樹脂成形体の分解は、下記の酸化分解と、これに続く生分解(微生物分解)の2ステップで進行するものと考えられている。
【0013】
ステップ1(酸化分解):太陽光(紫外線)、熱、酸素、水等をエネルギー源として、分解剤に含まれる金属元素が、その触媒効果によって脂肪酸のラジカル成分を生成させ、これが樹脂成型体を構成する樹脂の炭素-炭素結合を酸化分解する。これにより、樹脂成型体の物性(強度、伸び)及び分子量が低下する。
【0014】
ステップ2(生分解):ステップ1において形成された酸化低分子化物(例えば、カルボン酸アルコール類)が、土中やコンポスト環境中の微生物により消化吸収される。最終的には、バイオマスとして微生物の体内に蓄えられると共に、呼吸等の代謝活動により二酸化炭素や水に変化する。
【0015】
(分解剤)
本実施形態で使用される分解剤は、複数の脂肪酸金属塩を含み、前記複数の脂肪酸金属塩に含まれる複数の金属元素は、互いに異なる酸化数をとることができる金属元素である。脂肪酸金属塩は2種類以上であれば特に限定されないが、例えば、2~4種類、2又は3種類、2種類等としてもよい。
【0016】
分解剤による樹脂の分解メカニズムとしては以下のものが想定されるが、本発明はこのメカニズムによって何ら限定されるものではない。
光や熱等の影響によって樹脂(RH)内でアルキルラジカル(R・)が生成し(式1)、これが酸素と反応してペルオキシラジカル(ROO・)が生成する(式2)。ペルオキシラジカル(ROO・)が樹脂(RH)と反応して樹脂の分解を進めるが、この際にペルオキシラジカル(ROO・)はヒドロペルオキシド(ROOH)となり安定化してしまう(式3)。ここで、分解剤に含まれる複数の脂肪酸金属塩が、ヒドロペルオキシド(ROOH)を開裂して新たなラジカル(RO・及びROO・)を発生させる(式4及び式5)。これらのラジカルが樹脂(RH)を更に分解する(式6及び式7)。
式1:RH→R・+H・
式2:R・+O2→ROO・
式3:ROO・+RH→ROOH+R・
式4:M1(n)++ROOH→M1(n+1)++RO・+HO-
式5:M2(n+1)++ROOH→M2(n)++ROO・+H+
式6:RO・+RH→ROH+R・
式7:ROO・+RH→ROOH+R・
(式中、M1
+及びM2
+はそれぞれ金属陽イオンであり、n及びn+1はそれぞれ酸化数である。)
【0017】
脂肪酸金属塩を形成する金属元素は2種類以上であれば特に限定されないが、例えば、2~4種類、2又は3種類、2種類等としてもよい。金属元素としては、例えば、遷移金属元素及び希土類元素を挙げることができる。
遷移金属元素としては、例えば、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ジルコニウム、ニオブ、モリブテン、テクネチウム、ルテニウム、パラジウム、銀及びカドミウムを挙げることができる。
希土類元素としては、例えば、スカンジウム、イットリウム、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、プロメチウム、サマリウム、ユウロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム及びルテチウムを挙げることができる。
【0018】
脂肪酸金属塩を形成する金属元素は、互いに異なる酸化数をとることができるように選択される。特に限定するものではないが、遷移金属元素と希土類元素との組み合わせであることが好ましく、マンガン(酸化数:2価、3価)とセリウム(酸化数:3価、4価)との組み合わせであることがより好ましい。
【0019】
脂肪酸金属塩を形成する脂肪酸は、1種類であってもよいし、2種類以上の組み合わせであってもよい。脂肪酸としては、例えば、炭素数12以上の飽和脂肪酸又は不飽和脂肪酸を挙げることができる。例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、ペンタデジル酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ヘンイコシル酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、モンタン酸、メリシン酸、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、サピエン酸、オレイン酸、エライジン酸、バクセン酸、ガドレイン酸、エイコセン酸、エルカ酸及びネルボン酸を例示することができる。
【0020】
脂肪酸金属塩を形成する脂肪酸は、炭素数12~24の脂肪酸であることが好ましく、炭素数16~20の脂肪酸であることがより好ましく、ステアリン酸又はオレイン酸であることが更に好ましい。
【0021】
分解剤の量は、所望の期間で樹脂成形体が分解するように適宜選択すればよい。特に限定するものではないが、分解剤の量を、樹脂成形体の質量を基準として、0.02~6.0質量%、0.1~4.0質量%、0.2~3.0質量%、0.3~2.0質量%、0.4~1.4質量%等としてもよい。
【0022】
(樹脂)
本実施形態で使用される樹脂は、ポリプロピレンを含む。ポリプロピレンとしては、例えば、プロピレンホモポリマー、プロピレンランダムポリマー及びプロピレンブロックポリマーを挙げることができる。
【0023】
樹脂は、ポリプロピレンのみを含んでいてもよいし、目的とする樹脂成形体に応じて、その他の樹脂を含んでいてもよい。その他の樹脂としては、ポリプロピレン以外の熱可塑性樹脂等を挙げることができ、例えば、ポリエチレン、ポリブタジエン、ポリアセタール、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリフェニレンサルファイド、ポリブチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニル、ABS樹脂及びAS樹脂を例示することができる。
【0024】
樹脂に含まれるポリプロピレンの量は特に限定されないが、例えば、樹脂の質量を基準として、10~100質量%、20~100質量%、30~100質量%、40~100質量%、50~100質量%、60~100質量%、70~100質量%、80~100質量%又は90~100質量%としてもよい。
【0025】
(任意成分)
本実施形態に係る樹脂成形体は、上述の分解剤及び樹脂に加えて、任意成分を含んでいてもよい。任意成分としては、例えば着色料を挙げることができ、着色料の具体例としては、食用赤色、食用黄色、酸化チタン等の食品衛生法に記載されてい着色料を挙げることができる。
【0026】
(樹脂成形体)
本実施形態に係る樹脂成形体は、分解剤及び樹脂を含む。分解剤は、樹脂成形体に均一に分布していてもよい。本明細書において「均一に分布」とは、樹脂成形体の表面部に存在している分解剤の濃度と、樹脂成形体の内部に存在している分解剤の濃度と、が実質的に同一であることを意味する。なお、樹脂成形体の形成後に、その表面を分解剤で処理した場合、分解剤の濃度が表面部で高く、内部で低くなるため、分解剤は均一に分布していない。
【0027】
樹脂成形体に含まれる分解剤の50質量%以上は、樹脂と混合された状態にあってもよい。樹脂と混合された状態の分解剤の割合は、50~100質量%、60~100質量%、70~100質量%、80~100質量%、90~100質量%又は100質量%としてもよい。樹脂と混合された状態にない分解剤は、例えば、樹脂成形体の表面部に付着した状態として存在させることができる。
【0028】
樹脂成形体の分解性として、下記実施例に記載の分解試験において、所定の期間の生分解度が60%以上であることが好ましく、70%以上であることがより好ましく、80%以上であることが更に好ましく、90%以上であることが特に好ましい。分解の進行速度は、分解剤の量を変化させることで適宜調節することができる。
【0029】
樹脂成形体は、特に限定するものではないが、飲食料品を形成する樹脂成形体であることが好ましい。本明細書における「飲食料品」は、体内に摂取する物に加えて、その容器等の付属物も包含する。そのため、飲食料品を形成する樹脂成形体とは、飲食料品の付属物に相当する。飲食料品を形成する樹脂成形体としては、例えば、ストロー、ストローの袋、ラベル、キャップ、容器及び包装を挙げることができる。
【0030】
飲食料品を形成する樹脂成形体は、特に限定するものではないが、ヒトの口に接触するものであることが好ましく、ストローであることがより好ましい。樹脂成形体がヒトの口に接触するものである場合、分解剤が樹脂成形体の表面部に偏在している状況を避けため、分解剤は樹脂と混合された状態にあることが好ましい。
【0031】
飲食料品の具体例としては、ストローと、前記ストローを封入している袋と、を備える飲料品を例示することができる。所定の性質を有する袋にストローを封入することによって、使用前にストローの分解が開始することを抑制してもよい。
【0032】
<樹脂成形体の製造方法>
本発明の一実施形態は、前記分解剤と前記樹脂とを混合して、混合物を得る工程(混合工程)と、前記混合物を樹脂成形体に成形する工程(成形工程)と、を含む、樹脂成形体の製造方法に関する。
【0033】
(混合工程)
混合工程では、分解剤と樹脂とを混合して混合物を得る。分解剤及び樹脂の詳細は、前記<樹脂成形体>欄において記載したとおりである。混合工程では、樹脂成形体に含まれる分解剤の50質量%以上を樹脂と混合してもよい。樹脂と混合する分解剤の量は、使用する分解剤の合計質量を基準として、50~100質量%、60~100質量%、70~100質量%、80~100質量%、90~100質量%又は100質量%としてもよい。
【0034】
混合工程では、一部の樹脂を分解剤と予め混合したペレットを形成し、これを残りの樹脂と混合してもよい。このような方式で混合することによって、分解剤を樹脂中に均一に混合しやすくなる。
【0035】
樹脂成形体が、ヒトの口に接触するものである場合には、分解剤の全てを樹脂と混合することが好ましい。分解剤の全てを樹脂と十分に混合した場合には、分解剤が樹脂成形体に均一に分布することになる。一方、樹脂と混合しない分解剤がある場合には、その分解剤は、例えば、樹脂成形体の表面部に付着させてもよい。この場合には、成形工程に続いて、樹脂形成体の表面部に分解剤を付着させる工程(付着工程)を追加してもよい。
【0036】
(成形工程)
成形工程では、混合工程で得た混合物を樹脂成形体に成形する。成形方法は特に限定されず、目的の樹脂成形体の形状に応じて、公知の方法(例えば、押出成形、射出成形、圧縮成形又は真空成型)を使用すればよい。樹脂成形体の詳細は、前記<樹脂成形体>欄において記載したとおりである。
【0037】
(付着工程)
樹脂と混合しない分解剤は、樹脂成形体の表面部に付着させてもよい。付着する方法としては、例えば、樹脂成形体の表面部に分解剤の溶液又は分散液を塗布、散布若しくは噴霧する方法、又は樹脂成形体を分解剤の溶液又は分散液に浸漬する方法を挙げることができる。
【実施例0038】
以下、実施例を用いて本発明をより詳細に説明するが、本発明の技術的範囲はこれに限定されるものではない。
【0039】
<分解性ストローの製造>
ポリプロピレン樹脂、低密度ポリエチレン樹脂、及び分解剤(ステアリン酸マンガン及びステアリン酸セリウム)を、ブレンダーで混合し、200~240℃で溶融させ、押出成形して、外ストロー(分解剤:03質量%)を作成した。同様の方法で内ストロー(分解剤:0.3質量%)も作成した。外ストローに内ストローを差し込み、二重ストロー(分解剤:0.3質量%)を作成した。
【0040】
分解剤の量を変更した以外は同様の方法により、分解剤が0.6質量%及び1.0質量%の二重ストローをそれぞれ作成した。
【0041】
<分解試験>
(酸化分解工程)
作成した二重ストロー(分解剤:1.0質量%)について、下記の装置及び条件にて、酸化分解を15日間行った。
装置:ギヤーオーブン(エスペック株式会社製;型式GPH-102)
機内テスト温度:80℃
機内設定風速レベル:レベル2(微風)
【0042】
(生分解工程)
上記酸化分解工程を経た二重ストローについて、日本工業規格(JIS)K6955:2017にしたがって、生分解工程を実施した。また、比較対照として、微結晶セルロースを使用した。
【0043】
生分解工程の詳細は下記のとおりである。
1.試料調製
酸化分解工程を経た試料を冷凍粉砕し、目開き250μm及び125μmのふるいに通し125~250μmの粒径に分級した。
【0044】
2.全有機炭素量及び理論的二酸化炭素発生量の総量
CHN分析計(ジェイ・サイエンス・ラボ製マイクロコーダーJM10型)を使用して、試料の全有機炭素量(TOC)を測定し、TOCから理論的二酸化炭素発生量の総量(ThCO2)を算出した。
【0045】
3.土壌
2019年7月に茨城県常陸大宮市の畑地の表層から採取した土壌を使用した。土壌5gに精製水25mLを加えて振とう混合して測定したpHは6.3であった。
【0046】
4.試験条件
測定方法:二酸化炭素発生量測定(電位差滴定法)
電位差滴定条件
測定装置:電位差自動滴定装置(京都電子工業製AT-610、MCU-610、EBU-610-20B、CHA-600-12)
電極:複合ガラス電極(京都電子工業製C-171)
測定試薬:0.5mol/L HCl溶液
二酸化炭素吸収液:0.5mol/L KOH溶液(90mL 2連)
試験容器の容積:500mL
試料の量:1g
土壌の量:400g
培養温度:25±2℃
測定回数:29回
【0047】
5.結果
二酸化炭素発生量とThCO
2から算出した生分解度を表1及び
図1に示す。この結果は、生分解しにくいポリプロピレン樹脂であっても、分解剤を使用することによって、生分解を促進できることを示している。
【表1】