IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 有限会社ミネルバライトラボの特許一覧 ▶ マックエンジニアリング株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-加熱式連続撹拌槽型反応器 図1
  • 特開-加熱式連続撹拌槽型反応器 図2
  • 特開-加熱式連続撹拌槽型反応器 図3
  • 特開-加熱式連続撹拌槽型反応器 図4
  • 特開-加熱式連続撹拌槽型反応器 図5
  • 特開-加熱式連続撹拌槽型反応器 図6
  • 特開-加熱式連続撹拌槽型反応器 図7
  • 特開-加熱式連続撹拌槽型反応器 図8
  • 特開-加熱式連続撹拌槽型反応器 図9
  • 特開-加熱式連続撹拌槽型反応器 図10
  • 特開-加熱式連続撹拌槽型反応器 図11
  • 特開-加熱式連続撹拌槽型反応器 図12
  • 特開-加熱式連続撹拌槽型反応器 図13
  • 特開-加熱式連続撹拌槽型反応器 図14
  • 特開-加熱式連続撹拌槽型反応器 図15
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022076958
(43)【公開日】2022-05-20
(54)【発明の名称】加熱式連続撹拌槽型反応器
(51)【国際特許分類】
   B01J 19/18 20060101AFI20220513BHJP
   B01J 19/12 20060101ALI20220513BHJP
   H05B 6/64 20060101ALI20220513BHJP
   H05B 6/72 20060101ALI20220513BHJP
【FI】
B01J19/18
B01J19/12 A
H05B6/64 D
H05B6/72 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020187631
(22)【出願日】2020-11-10
(71)【出願人】
【識別番号】304013331
【氏名又は名称】有限会社ミネルバライトラボ
(71)【出願人】
【識別番号】515358023
【氏名又は名称】マックエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003085
【氏名又は名称】特許業務法人森特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松村 竹子
(72)【発明者】
【氏名】小谷 功
【テーマコード(参考)】
3K090
4G075
【Fターム(参考)】
3K090AA03
3K090AA05
3K090AB17
3K090DA14
4G075AA13
4G075AA51
4G075AA61
4G075BA10
4G075BB05
4G075CA02
4G075CA26
4G075DA02
4G075DA12
4G075EA05
4G075EB01
4G075EB31
4G075EC11
4G075ED01
4G075FA01
4G075FB02
4G075FB12
(57)【要約】
【課題】
マイクロ波を利用して迅速に反応槽中の液体を加熱することが可能であり、反応経路の閉塞が生じにくく、連続的に反応を行うことが可能であり、マイクロ波のアンテナを内蔵するチャンバー内に槽型反応器を配置する位置を決めやすい加熱式の連続撹拌槽型反応器を提供する。
【解決手段】
マイクロ波を内部で反射するチャンバーと、チャンバー内に配されるマイクロ波を発射するアンテナと、基材に設けられた複数の有底の穴からなる複数の反応槽とを有する加熱式の連続撹拌槽型反応器であり、複数の反応槽は互いに連通されており、複数の反応槽が設けられた基材には、マイクロ波を発射するアンテナを掛止する貫通孔又は非貫通の穴が設けられており、基材は、マイクロ波を透過する素材で構成された加熱式の連続撹拌槽型反応器である。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロ波を内部で反射するチャンバーと、
チャンバー内に配されるマイクロ波を発射するアンテナと、
基材に設けられた複数の有底の穴からなる複数の反応槽とを有する加熱式の連続撹拌槽型反応器であり、
複数の反応槽は互いに連通されており、
複数の反応槽が設けられた基材には、マイクロ波を発射するアンテナを掛止する貫通孔又は非貫通の穴が設けられており、
基材は、マイクロ波を透過する素材で構成された加熱式の連続撹拌槽型反応器。
【請求項2】
チャンバーは、円筒状であり、円心部分にアンテナが配置された形状である請求項1に記載の加熱式の連続撹拌槽型反応器。
【請求項3】
基材に設けられた複数の反応槽の開口部を塞ぐ蓋体をさらに備える請求項1又は2に記載の加熱式の連続撹拌槽型反応器。
【請求項4】
基材と蓋体との間には、反応槽を液密な状態にするシール材を備える請求項1ないし3のいずれかに記載の加熱式の連続撹拌槽型反応器。
【請求項5】
チャンバーの底部分は、マグネチックスターラーの上にチャンバーを載置することができる平坦部を有する形状とされた請求項1ないし4のいずれかに記載の加熱式の連続撹拌槽型反応器。
【請求項6】
マイクロ波を発射するアンテナと、基材とは、着脱可能に構成されている請求項1ないし5のいずれかに記載の加熱式の連続撹拌槽型反応器。
【請求項7】
アンテナからは、半導体で発生させたマイクロ波が発射される請求項1ないし6のいずれかに記載の加熱式の連続撹拌槽型反応器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱式の連続撹拌槽型反応器に関する。
【背景技術】
【0002】
以下に示す特許文献1又は特許文献2のように、チャンバー内にマイクロ波を照射して、マイクロ波によって、加熱条件下で化学反応を生じさせる装置が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】WO2016/208563号公報
【特許文献2】特開2015-227322号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の装置では、チャンバー内に密閉容器を配置して容器内にマイエナイト型化合物と炭素成分との混合物を入れて、マイクロ波によって容器に入れた混合物を加熱する。これによって、導電性マイエナイト型化合物を製造するとされている。この方法は、バッチ式であるため、効率が悪いという点で問題があった。
【0005】
特許文献2の装置では、チャンバー内にマイクロ波の発生部を配置する。マイクロ波の発生部の周りに螺旋状に配置された反応管の中に反応液を流して、マイクロ波によって反応液を加熱することで、連続的に有機金属錯体を製造する。この方法は、連続式であり、効率がよい。しかしながら、反応管の中で反応を生じさせるため、化学反応の結果、固体が析出する場合には、反応管が閉塞したり、反応管にスケールが付着したりして、効率が低下することがある。
【0006】
本発明は、マイクロ波を利用して迅速に反応槽中の液体を加熱することが可能であり、反応経路の閉塞が生じにくく、連続的に反応を行うことが可能であり、マイクロ波のアンテナを内蔵するチャンバー内に槽型反応器を配置する位置を決めやすい加熱式の連続撹拌槽型反応器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
マイクロ波を内部で反射するチャンバーと、チャンバー内に配されるマイクロ波を発射するアンテナと、基材に設けられた複数の有底の穴からなる複数の反応槽とを有する加熱式の連続撹拌槽型反応器であり、複数の反応槽は互いに連通されており、複数の反応槽が設けられた基材には、マイクロ波の発生部を掛止する貫通孔又は非貫通の穴が設けられており、基材は、マイクロ波を透過する素材で構成された加熱式の連続撹拌槽型反応器により、上記の課題を解決する。当該加熱式の連続撹拌槽型反応器は、複数の反応槽の間で基質や触媒を流通させながら反応を行う。マイクロリアクターのように、微小な流路中で反応を行うものではないので、反応経路の閉塞が生じにくい。当該加熱式の連続撹拌槽型反応器は、マイクロ波を発射するアンテナを、反応槽を設けた基材の貫通孔又は非貫通穴に掛止させる構成を有する。チャンバー内に槽型反応器を配置する位置が一義的に定めることができる。これによって、マイクロ波の密度が高くなる位置に反応槽を簡単に配置することが可能になり、反応槽に貯留された基質、触媒等に、効率的にマイクロ波が照射されやすくなる。これらの構成によって、反応槽中の液体を迅速に加熱することができる。
【0008】
上記の加熱式の連続撹拌槽型反応器において、チャンバーは、円筒状であり、円心部分にアンテナが配置された形状とすることが好ましい。この構成によれば、アンテナから照射されたマイクロ波は、チャンバーの内壁で反射される。その結果、アンテナの周辺で、マイクロ波の密度が高くなる。アンテナの周辺には、複数の反応槽が配置されているため、反応槽中の液体を効率的に加熱することができる。
【0009】
上記の加熱式の連続撹拌槽型反応器は、基材に設けられた複数の反応槽の開口部を塞ぐ蓋体をさらに備えるものとすることが好ましい。蓋体を備える構成とすることにより、反応槽中の液体が蒸発することを防いで、加圧条件下で反応を行うことができる。基材と蓋体との間には、反応槽を液密な状態にするシール材を備えるようにしてもよい。
【0010】
上記の加熱式の連続撹拌槽型反応器においては、マイクロ波を発射するアンテナと、基材とは、着脱可能に構成することが好ましい。アンテナと基材とを着脱可能にすることによって、アンテナを内蔵するチャンバーから基材を取り外して、基材の清掃、点検、部品の交換などを簡単に実施することが可能になる。
【0011】
上記の加熱式の連続撹拌槽型反応器においては、アンテナからは、半導体で発生させたマイクロ波が発射されるようにすることが好ましい。マイクロ波の発生源としてマグネトロンを使用した場合、マイクロ波の波長が、不規則で広範な範囲の波長を含むようになる。一方、マイクロ波の発生源として、半導体を使用した場合は、マイクロ波の波長の範囲が著しく狭くなる。半導体とマグネトロンとで同じ出力のマイクロ波を発生させる場合、半導体の方が印加電圧が少なくて済む。このため、半導体を用いれば、消費電力を低減することができる。また、半導体を用いれば、反応槽の中の液体をより均一に加熱することができる。また、位相合成などの手法を利用して、加熱状態を精密に制御することもできる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、マイクロ波を利用して迅速に反応槽中の液体を加熱することが可能であり、反応経路の閉塞が生じにくく、連続的に反応を行うことが可能であり、マイクアンテナを内蔵するチャンバー内に槽型反応器を配置する位置を決めやすい加熱式の連続撹拌槽型反応器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】加熱式の連続撹拌槽型反応器の一実施形態を示す斜視図である。
図2図1の加熱式の連続撹拌槽型反応器の正面図である。
図3図1の加熱式の連続撹拌槽型反応器の平面図である。
図4図1の加熱式の連続撹拌槽型反応器の底面図である。
図5図3のEE部における断面図である。
図6図1加熱式の連続撹拌槽型反応器から分離した連続撹拌槽型反応器のみを示す斜視図である。
図7図6の連続撹拌槽型反応器の分解斜視図である。
図8図6の連続撹拌槽型反応器から分離した基材のみを示す斜視図である。
図9図8の基材の平面図である。
図10図9の一点鎖線に沿って切断した断面図である。
図11】連続槽型反応器の他の例を示す断面図である。
図12図1の加熱式の連続撹拌槽型反応器のチャンバー内におけるマイクロ波による電界の強さの分布を示す図である。
図13】実施例1における加熱実験で使用した装置の構成を示す図である。
図14】比較例1における加熱実験で使用した装置の構成を示す図である。
図15】実施例における水の加熱実験の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の加熱式の連続撹拌槽型反応器の実施形態について説明する。以下に示す各実施形態は、本発明の加熱式の連続撹拌槽型反応器の限られた例に過ぎず、本発明の技術的範囲は例示した実施形態に限定されるものではない。
【0015】
図1ないし図10に、加熱式の連続撹拌槽型反応器(以下、単に加熱式反応器と称する。)の一実施形態を示す。
【0016】
本実施形態の加熱式反応器1は、図1ないし図5に示したように、マイクロ波を内部で反射するチャンバー11と、チャンバー11内に配されるマイクロ波を発射するアンテナ12と、基材151に設けられた複数の有底の穴からなる複数の反応槽157とを有する。
【0017】
複数の反応槽157が設けられた基材151には、図5に示したように、マイクロ波を発射するアンテナ12を掛止する貫通孔159が設けられている。後述するように、基材151は、アンテナ12から発射されたマイクロ波を透過する素材で構成されている。
【0018】
加熱式反応器1では、チャンバー11は、アルミニウムで構成されており、アンテナ12から発射されたマイクロ波の大部分を反射させる。アルミニウムは、軽量であり、加工性に優れているのでチャンバーを構成する素材として好適に使用することができる。チャンバーは、チャンバーの内壁に照射されたマイクロ波の大部分を反射させる素材で構成すればよい。そのような素材としては、例えば、ステンレス鋼、銅などの金属を使用することができる。
【0019】
チャンバー11は、円筒状の筒状部111と、筒状部の上下の端部に配される鍔部112とを有する。上側の鍔部112には、板状の蓋体13が螺子留めにより固定される。下側の鍔部112にも、同様に板状の蓋体14が螺子留めにより固定される。蓋体13、14は、平面視において円形の板状の部材で構成されている。
【0020】
上側の蓋体13には、導入口として蓋体13に設けられた貫通孔に接続される円筒体169と、排出口として蓋体13に設けられた貫通孔に接続される円筒体170とが設けられる。導入口又は排出口には、例えば、図13に示したように、可撓性の給液管166又は排液管167を挿入して、連続撹拌槽型反応器15の給液用のコネクター164又は排液用のコネクター165に給液管166又は排液管167を接続する。
【0021】
円筒状のチャンバーの円心部分には、図5に示したようにアンテナ12が配置されている。アンテナ12の下端部は、下側の蓋体14に対して、螺子止めにより固定されている。アンテナの上端部は、上側の蓋体13に設けられた貫通孔に固定されたコネクター168に接続されている。コネクター168には、マイクロ波の発生部(図示略)に接続される。
【0022】
マイクロ波の発生部は、マグネトロンをマイクロ波の発生源としてもよいし、半導体をマイクロ波の発生源としてもよい。マイクロ波の発生源としてマグネトロンを使用した場合、マイクロ波の波長が、不規則で広範な範囲の波長を含むようになる。一方、マイクロ波の発生源として、半導体を使用した場合は、マイクロ波の波長の範囲が著しく狭くなる。半導体とマグネトロンで同じ出力のマイクロ波を発生させる場合、半導体の方が印加電圧が少なくて済む。このため、半導体を用いれば、消費電力を低減することができる。また、半導体を用いれば、反応槽の中の液体をより均一に加熱することができる。また、位相合成などの手法を利用して、液体の加熱状態を精密に制御することもできる。このため、マイクロ波の発生源としては、半導体を採用することが好ましい。
【0023】
円筒状のチャンバーの底部分は、図13に示したように、マグネチックスターラー4の上にチャンバー11を載置することができる平坦部を有する形状とすることが好ましい。この構成によれば、連続撹拌槽型反応器15の反応槽に磁気を帯びた回転子を投入しておき、連続撹拌槽型反応器15の下方に配置したマグネチックスターラー4で複数の回転子を回転させることにより、反応槽中の液体を撹拌することができる。
【0024】
チャンバー11内には、図5に示したように、連続撹拌槽型反応器15が配置される。連続撹拌槽型反応器15は、複数の反応槽157が設けられた基材151と、基材151に設けられた複数の反応槽の開口部を塞ぐ蓋体152と、基材151と蓋体152との間に配されるシール材155の保持部材153と、保持部材153に設けられた凹溝に嵌められる内と外とに配される2条のシール材155と、基材151の下方に配置される底部材154とを有する。
【0025】
底部材154、基材151、保持部材153、及び蓋体152には、上下方向に連通する貫通孔159が形成されている。貫通孔159は、底部材154等の中心部に設けられている。貫通孔159には、円筒状のスリーブ156を挿通し、当該スリーブ156内には、アンテナ12を挿通する。円筒状のスリーブ156は、棒状であり、上端部にはスリーブの軸方向に交差する方向に突出する頭部が配されており、下端部には底部材154の貫通孔の内周面に設けられた螺子穴に螺合する螺子溝が切られている。
【0026】
底部材154は、平面視において、基材151と同形の板状の部材である。底部材は、スリーブを固定できるものであればよく、その形状は特に限定されない。蓋体152、及び保持部材153も同様に、平面視において、基材151と同形の部材である。蓋体は、反応槽の開口を塞ぐことができるものであればよく、その形状は特に限定されない。保持部材は、シール材を保持することができるものであればよく、その形状は特に限定されない。
【0027】
チャンバー11に対して、連続撹拌槽型反応器15を固定する際には、例えば、以下のようにする。まず、チャンバー11の上側の蓋体13を取り外した状態で、下側の蓋体14に対してアンテナ12を固定する。次に、アンテナ12を軸として、底部材154、基材151、保持部材153、蓋体152、それぞれの貫通孔を通す。それぞれの貫通孔を貫くように、スリーブ156を通して、スリーブ156の頭部が蓋体152に接するまで、スリーブ156を回転させて、スリーブ156を底部材154に対して螺合する。チャンバー11に対して、上側の蓋体13を取り付けて固定する。円筒体169、170と、コネクター168は、予め蓋体13に取り付けておけば、蓋体13と一緒にチャンバー11の筒状部111に対して固定される。
【0028】
底部材154、基材151、保持部材153、及び蓋体152には、図7に示したように、複数の貫通孔が設けられている。当該貫通孔には、複数の螺子158が挿通される。複数の螺子158は、底部材154の貫通孔の内周面に切られた螺子溝に螺合する。螺子158とスリーブ156の螺子部とが、底部材154に螺合することによって、底部材154、基材151、保持部材153、及び蓋体152は、強固に締結される。保持部材153と、基材151との間には、2条のシール材155が介装された状態で、底部材154等が締結される。外側のシール材は、複数の反応槽157の外側に配置される。内側のシール材は、複数の反応槽157の内側に、スリーブ156に対して接するように配置される。このようにして配置されたシール材155によって、反応槽157は液密な状態にされ、反応槽内部の液体を加熱した際に液体が蒸散することを防ぐことができる。また、シール材155等によって、反応槽内部の液体を加圧状態で加熱することも可能になる。
【0029】
本実施形態の加熱式反応器1では、底部材、基材、保持部材、又は蓋体は、マイクロ波の透過率が高く、耐食性に優れており、かつ強度において優れる素材であるポリエーテルケトン(PEEK)で構成している。上記の部材を構成する素材は、ポリエーテルケトンに限定されず、マイクロ波の透過率が高いものであればよい。そのような素材としては、例えば、アクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリプロピレン、テフロン(登録商標)、セラミクス、又はガラスなどが挙げられる。
【0030】
図8ないし図10に示したように、連続撹拌槽型反応器15は、計4つの反応槽157を備えている。具体的には、始端の反応槽Aと、終端の反応槽Dとを備えており、反応槽Bは、連通孔160によって、反応槽Aと反応槽Cと連通されている。反応槽Cは、連通孔160によって、反応槽Bと反応槽Dと連通されている。連通孔160には、下方から上方に向けて突出する仕切部161が設けられている。反応槽の深さは、上流ほど浅く、下流ほど深く構成されている。各仕切部161の突出高さは、同じである。この構成では、図10において破線で示したように、上流の反応槽157では液面の位置が高くなり、下流の反応槽157では液面の位置が低くなる。これによって、下流の反応液が上流に逆流することが防止される。
【0031】
図8ないし図10に示したように、連通孔160の一部は、基材15の上端部に達して、開口部を形成する形状とされている。この開口部は、メンテナンス用の開口部である。例えば、開口部から、ブラシを挿入して、連通孔の汚れを洗浄することができる。
【0032】
図7に示したように、蓋体152及びシール材155の保持部材153には、給液又は排液用の貫通孔162、163が設けられる。給液用の貫通孔162は、始端の反応槽Aに連通する。排液用の貫通孔163は、終端の反応槽Dに連通する。始端の反応槽Aには、複数の給液用の貫通孔162が連通するようになっており、複数の反応基質等の物質を始端の反応槽Aに供給することができるようになっている。図6に示したように、蓋体152の貫通孔162、163には、図13に示す給液管166又は排液管167を接続するためのコネクター164、165が接続される。コネクター164は、給液用の貫通孔162に連通する。コネクター165は、排液用の貫通孔163に連通する。
【0033】
加熱式反応器の構成は、上記の例に限定されない。例えば、図11に示す連続撹拌槽型反応器を備える加熱式反応器1bとしてもよい。図11に示す連続撹拌槽型反応器15bは、複数の反応槽157bが設けられた基材151bと、基材151bに設けられた複数の反応槽157bの開口部を塞ぐ蓋体152bと、基材151と蓋体152との間に配されるシール材155bとを有する。連続撹拌槽型反応器15bは、上記の例とは異なり、アンテナ12を挿通するスリーブと基材の下方に配される底部材とを備えていない。各反応槽157bは、図10に示した連通孔と仕切部によって、連通される。
【0034】
連続撹拌槽型反応器15bでは、蓋体152b、シール材155b、及び基材151bを連通するように設けられた貫通孔に対して、アンテナが挿通されるようにして、チャンバー11と、連続撹拌槽型反応器15bとが連結されている。アンテナ12と基材151bとは、螺子等によって、固定されていない。このため、連続撹拌槽型反応器15bをより手軽にチャンバーに取り付けたり取り外したりすることができる。基材151bと、シール材155bと、蓋体152bとは、複数の螺子158bによって、締結される。螺子158bに対応する螺子溝は、基材151bに設けられた穴の内周面に設けられている。
【0035】
シール材155bは、シリコーンゴムのシートに耐食性を付与する目的でフッ素樹脂(テフロン(登録商標))のコーティングを施したものである。シール材としては、この例に限定されず、弾性を備えるものであればよい。
【0036】
上記の加熱式反応器を使用する際には、図13に示したように、マグネチックスターラーの上に加熱式反応器1又は1bを載せた状態で使用する。各反応槽157又は157bの中には、予め磁気を帯びた撹拌子を入れておく。始端の反応槽157又は157bに対して、1種以上の物質、触媒のうち1種以上を含む液をマイクロポンプ又はシリンジポンプなどのポンプで供給する。図10に示したように、始端の反応槽Aに給液管166を経て供給された液体の液面が、仕切部161の高さを越えた際に溢れて、反応槽Bへと供給される。以下、同様にして、反応液は、反応槽C、終端の反応槽Dへと供給される。各反応槽では、マグネチックスターラーで駆動された撹拌子により、液が撹拌され、物質又は触媒が混合されて、所望の化学反応が連続的に進行する。終端の反応槽Dの液は、排液管167とポンプにより吸引されて所望の反応物が加熱式反応器1、1bの外に取り出される。
【0037】
上記の加熱式反応器1、1bでは、各反応槽は、マイクロリアクターの微小経路に比して、より体積の大きい連通孔で連結されている。このため、可化学反応の結果生じる析出物又はスケールによって連通孔が閉塞しにくくなっている。
【0038】
上記の加熱式反応器1、1bでは、チャンバー内に連続撹拌槽型反応器を設置する際に、アンテナと基材とを掛止する。この構成では、基材を配置する位置がアンテナによって一義的に定められる。これによって、チャンバー内において、マイクロ波による電界の強さが強くなる位置に、反応槽を配置することが可能になる。基材に対してアンテナが掛止した状態で、アンテナからマイクロ波が発射される。アンテナの周辺においては、図12に示したように、マイクロ波による電界の強さが強くなる。基材に対してアンテナが掛止するように基材を配置することによって、電界の強さが強くなる領域に反応槽を配置して、これによって、反応槽中の液体を効率的に加熱することが可能になる。なお、図12においては、アンテナに隣接する白色に近い領域の電界強度が最も強く、その領域の外側に位置する淡い着色された略円形の領域の電界強度が次に強い。円形の外側の濃色で着色された領域の電界強度は、最も弱くなっている。
【0039】
シール材の構成は、反応槽を液密な状態に保つことができるものであればよい。シール材は、上記の例に限定されず、その形状、素材、配置する位置は、変更することができる。
【0040】
上記の例では、チャンバー11は、鍔部112と、円筒体169、170とを備える。鍔部112又は円筒体169、170は、必須ではなく、省略してもよい。また、上記の例では、基材とアンテナを掛止する部分は、貫通孔とした。当該掛止する部分は、基材を貫通しない凹穴としてもよい。
【0041】
上記の例では、連続撹拌槽型反応器に蓋体、底部材、シール材の保持部材、又はシール材が設けられる。蓋体、底部材、シール材の保持部材、又はシール材は、必須ではなく、省略してもよい。また、上記の例では、始端の反応槽に2つの給液用の貫通孔が連通し、終端の反応槽に1つの排液用の貫通孔が連通する構成とした。注液用又は排液用の貫通孔の数は特に限定されない。注液用の貫通孔は、必ずしも始端の貯留槽に設ける必要はなく、例えば、第2番目以降の貯留槽に連通するように設けてもよい。
【0042】
以下、本発明の実施例を挙げて、具体的に説明する。
【0043】
[実施例1]
図13に示したように、マグネチックスターラー4の上に、図5に示したものと同様の構成を有する加熱式反応器1を載せて、各反応槽の中に磁気を帯びた回転子を投入した。ポンプ171及び給液管166により、フラスコ172に貯留した室温の水を始端の反応槽に流速20ml/分で供給した。GaN半導体をマイクロ波の発生源とするマイクロ波の発生部を用いて、アンテナ12から200Wの出力で、2.5GHzのマイクロ波を発射した。ポンプ171及び排液管167により、終端の反応槽157から液体を流速20ml/分で抜き取った。図13に示したように、終端の反応槽157に、アルコール温度計を挿入して、反応槽における液温を経時的に測定した。温度の測定結果を図15のグラフに示す。
【0044】
[実施例2]
水を供給する際の流速を10ml/分に変更した点以外は、実施例1と同様にして、水を加熱した。反応槽における液温の経時変化を図15に示す。
【0045】
[比較例1]
図14に示したように、図5に示した連続撹拌槽型反応器を構成する基材151を、電熱加熱式のマグネッチクスターラー4の上に載せて、各反応槽の中に磁気を帯びた回転子を投入した。ポンプ171及び給液管166により、フラスコ172に貯留した室温の水を始端の反応槽に流速10ml/分で供給した。マグネチックスターラー4の電熱線により200Wの出力で基材の底部分から加熱した。ポンプ171及び排液管167により、終端の反応槽157から液体を流速10ml/分で抜き取った。図14に示したように、終端の反応槽157に、アルコール温度計6を挿入して、液温を経時的に測定した。温度の測定結果を図15のグラフに示す。
【0046】
[比較例2]
水を供給する際の流速を20ml/分に変更した点以外は、比較例1と同様にして、水を加熱した。液温の経時変化を図15に示す。
【0047】
図15のグラフから明らかなように、実施例1及び実施例2の加熱式反応器では、比較例1又は比較例2の加熱方法に比較して、より短い時間で、反応槽の液温を所定の温度まで加熱することが可能であることがわかった。
【符号の説明】
【0048】
11 チャンバー
12 アンテナ
157 反応槽
159 貫通孔
151 基材
152 蓋体
153 シール材
4 マグネチックスターラー


図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15