(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022076963
(43)【公開日】2022-05-20
(54)【発明の名称】ソケットアダプタ
(51)【国際特許分類】
B25B 21/00 20060101AFI20220513BHJP
B25B 13/58 20060101ALI20220513BHJP
【FI】
B25B21/00 Q
B25B13/58
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020187636
(22)【出願日】2020-11-10
(71)【出願人】
【識別番号】591055975
【氏名又は名称】水戸工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100169960
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 貴光
(72)【発明者】
【氏名】倉品 孝
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 文登
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ドライバービットに加えて、サイズの異なるボルトやナット等の締め付けや取外しにも使用可能な、ドライバービットスルーのソケットアダプタを提供する。
【解決手段】ドライバービット200を装着した電動ドライバー100等に連結可能なソケットアダプタであって、ドライバービットが嵌合挿通される断面多角形の貫通孔21を有しているとともに、貫通孔の一端からドライバービットの穂先201が突き出る後退位置と貫通孔の一端からドライバービットの穂先が隠れる前進位置との間を移動させてセット可能で、かつ、ドライバービットと一体に回転可能な筒状のアダプタ本体部23と、アダプタ本体部の一端側周部に設けられ、第1の工具を取り付け可能な断面多角形状の工具取付部20aと、アダプタ本体部の他端側外周部に設けられ、第2の工具のソケット部に連結取り付け可能な断面多角形をした工具連結部20bと、を有する。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドライバービットと連結可能なソケットアダプタであって、
前記ドライバービットが嵌合挿通される断面多角形の貫通孔を有し、前記貫通孔の一端から前記ドライバービットの穂先が突き出る後退位置と前記貫通孔の一端から前記ドライバービットの前記穂先が隠れる前進位置との間を移動可能で、かつ、前記ドライバービットと一体に回転可能な筒状のアダプタ本体部と、
前記アダプタ本体部の一端側外周部に設けられ、第1の工具を取り付け可能な断面多角形状の工具取付部と、
前記アダプタ本体部の他端側外周部に設けられ、第2の工具のソケット部に連結取り付け可能な断面多角形状の工具連結部と、
を有することを特徴とするソケットアダプタ。
【請求項2】
前記アダプタ本体部は、前記ドライバービットの外周に設けられた抜け止め用溝内に嵌合係止可能なボールと、前記ボールを前記ドライバービットの軸中心方向に押し付けて、前記アダプタ本体部が前記ドライバービットの軸中心に沿う方向への移動を拘束する力を解除可能に生成するスライドカバーと、を有する抜け止め保持手段を備える、
ことを特徴とする請求項1に記載のソケットアダプタ。
【請求項3】
前記スライドカバーは、前記アダプタ本体部の外周に沿って軸方向に移動可能であるとともに、前記ボールと対向可能な内周面に、前記スライドカバーの移動方向に並べて形成されたロック用突起部とアンロック用凹部とを有し、
前記スライドカバーは、前記ロック用突起部が前記ボールと対向するロック位置に移動されると、前記ボールを前記抜け止め用溝内に嵌合係止させて前記アダプタ本体部の前記移動をロックし、前記アンロック用凹部が前記ボールと対向するアンロック位置に移動されると、前記ボールが前記抜け止め用溝内に嵌合係止されている力を解いて前記アダプタ本体部の前記移動を許容する、ことを特徴とする請求項2に記載のソケットアダプタ。
【請求項4】
前記抜け止め保持手段は、前記スライドカバーを、常に前記ロック位置に移動するバネ手段を有する、ことを特徴とする請求項3に記載のソケットアダプタ。
【請求項5】
前記アダプタ本体部は、前記ドライバービットの外周に設けられた抜け止め用溝内に嵌合係止可能なボールと、前記ボールを前記ドライバービットの軸中心方向に押し付ける力を、常に前記ボールに付与する断面C字の板バネ部と、を有する抜け止め保持手段を備える、ことを特徴とする請求項1から4までのいずれか1項に記載のソケットアダプタ。
【請求項6】
前記工具連結部は、ラチェットレンチに交換可能に取り付けられる、ことを特徴とする請求項1から5までのいずれか1項に記載のソケットアダプタ。
【請求項7】
前記貫通孔には、前記貫通孔の一端側をソケット口として第3の工具の支軸部が交換可能に取り付けられる、ことを特徴とする請求項6に記載のソケットアダプタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はソケットアダプタに関するものであり、特に、電動式のドライバーや手動式等のドライバー、及び手動ラチェットレンチ等に、各種のドライバービット等を差し替え可能に取り付けるのに適したソケットアダプタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、一般に使用されるドライバーには、ハンドル(握り部)にドライバービットを一体的に取り付けた固定式ドライバー、あるいは共通のハンドルに数種類のドライバービットを着脱式に取り付けるようにした差し替えドライバー等がある。しかしながら、いずれのドライバーにあっても、ネジ回し以外には使用できないという不都合があった。
【0003】
そこで、ドライバーに取り付けることにより、各種のボルト・ナットの組み付けに使用できるようにしたドライバー用ソケット、又は、取り外しに用いるソケットレンチとして使用できるようにしたドライバー用ソケットも提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば、特許文献1には、主軸11に対して、前進した前進位置と後退した後退位置とに位置設定できるように構成されている、ソケット12が開示されている。なお、符号は特許文献1における符号である。そして、主軸(第1工具軸)11の先端部には、十字穴付きのビス13を締め付けるための、ドライバーの穂先であるビット(第2工具端)14が形成されており、該ビット14は、ソケット12を後退位置にセットしたときに使用できるように構成されている。また、ソケット12の先端には、所定サイズのボルト15やナットに対応した六角形のソケット口(第1工具端)16が形成されており、該ソケット口16は、ソケット12を前進位置にセットしたときに使用できるように構成されている。
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載のソケット12では、取り付けたソケットのソケット口16の形状に合った工具の使用に限られてしまうという問題点があった。
【0007】
そこで、本発明は、ビス等の締め付けに用いるプラスやマイナスのドライバービットに加えて、サイズの異なるボルトやナット等の締め付けや取外しに対応したソケットアダプタとして使用できるようにした、ドライバービットスルーのソケットアダプタを提供するために解決すべき技術的課題が生じてくるのであり、本発明はこの課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は上記目的を達成するために提案されたものであり、請求項1に記載の発明は、ドライバービットと連結可能なソケットアダプタであって、前記ドライバービットが嵌合挿通される断面多角形の貫通孔を有し、前記貫通孔の一端から前記ドライバービットの穂先が突き出る後退位置と前記貫通孔の一端から前記ドライバービットの前記穂先が隠れる前進位置との間を移動可能で、かつ、前記ドライバービットと一体に回転可能な筒状のアダプタ本体部と、前記アダプタ本体部の一端側外周部に設けられ、第1の工具を取り付け可能な断面多角形状の工具取付部と、前記アダプタ本体部の他端側外周部に設けられ、第2の工具のソケット部に連結取り付け可能な断面多角形状の工具連結部と、を有するソケットアダプタを提供する。
【0009】
この構成によれば、ドライバービットの外周に取り付けたままの状態で、アダプタ本体部をドライバービット上の後退位置に移動させると、ドライバービットの先端部に形成されているプラス又はマイナスの穂先が、アダプタ本体部の一端から突き出す。そして、ドライバービットのプラス又はマイナスの穂先を使用しての、ボルト締め等の作業を可能にする。
また、同じくドライバービットの外周に取り付けたままの状態で、アダプタ本体部をドライバービットの軸線に沿って前進位置に移動させると、アダプタ本体部の一端側がドライバービットの先端部から突き出して穂先を隠す。そして、アダプタ本体部の一端外周部に、サイズの異なるボルト・ナット等の締め付けや取り外しに対応した、各種のソケット等の第1の工具を交換可能に取り付けることができる。又は、アダプタ本体部の一端側に表出している多角形の貫通孔に、サイズの異なるボルト・ナット等の締め付けや取り外しに対応したソケットや6.3軸先端パーツ等の第3の工具の支持部を交換可能に取り付け、ドライバー等と共に手動又は電動でボルト・ナットの締め付け・取り外しの操作を行うことができる。
さらに、アダプタ本体部を前進位置側へ更に移動させると、ドライバービットからソケットアダプタを取り外すことができる。
また、ドライバービットの外周からソケットアダプタを取り外し、例えば手動で操作を行うラチェットレンチ等の第2の工具のソケット部に、工具連結部を連結させて取り付けすると、ソケットアダプタをラチェットレンチと一体化することがでる。そして、アダプタ本体部の一端側に各種のソケット等の第1の工具、あるいはアダプタ本体部の多角形の貫通孔に第3の工具の支軸部を交換可能に取り付けると、ラチェットレンチ等と共に手動でボルト・ナットの締め付け・取り外しの操作を行うことができる。
また、ドライバービットが折損したときには、ソケットアダプタはそのままで、ドライバービットだけを交換すれば済む。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の構成において、前記アダプタ本体部は、前記ドライバービットの外周に設けられた抜け止め用溝内に嵌合係止可能なボールと、前記ボールを前記ドライバービットの軸中心方向に押し付けて、前記アダプタ本体部が前記ドライバービットの軸中心に沿う方向への移動を拘束する力を解除可能に生成するスライドカバーと、を有する抜け止め保持手段を備える、ソケットアダプタを提供する。
【0011】
この構成によれば、抜け止め保持手段による保持により、ホールと抜け止め用溝とが嵌合係止されたドライバービット上の所定位置で、ボールをドライバービットの軸中心方向に押し付け、ソケットアダプタを、ドライバービットに対して確実に拘束した状態で使用することができる。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の構成において、前記スライドカバーは、前記アダプタ本体部の外周に沿って軸方向に移動可能であるとともに、前記ボールと対向可能な内周面に、前記スライドカバーの移動方向に並べて形成されたロック用突起部とアンロック用凹部とを有し、前記スライドカバーは、前記ロック用突起部が前記ボールと対向するロック位置に移動されると、前記ボールを前記抜け止め用溝内に嵌合係止させて前記アダプタ本体部の前記移動をロックし、前記アンロック用凹部が前記ボールと対向するアンロック位置に移動されると、前記ボールが前記抜け止め用溝内に嵌合係止されている力を解いて前記アダプタ本体部の前記移動を許容する、ソケットアダプタを提供する。
【0013】
この構成によれば、スライドカバーを軸方向に移動させると、ボールとドライバービットの抜け止め用溝とが嵌合係止されたドライバービット上の所定位置で、ソケットアダプタを確実に拘束して使用することができる。また、アダプタ本体部をドライバービットの軸中心に沿う方向に移動させるときには、アダプタ本体部を軸中心に沿う方向に押すと、ボールがアンロック用凹部内に逃げて拘束を解き、アダプタ本体部をドライバービットに対して移動させることができる。
【0014】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の構成において、前記抜け止め保持手段は、前記スライドカバーを、常に前記ロック位置に移動するバネ手段を有する、ソケットアダプタを提供する。
【0015】
この構成によれば、スライドカバーを移動操作していないとき、スライドカバーは、バネ手段の移動付勢力により、ロック用突起部がボールと対向されるロック位置に自動復帰される。これにより、スリーブ部を移動操作していないときには、抜け止め保持手段により自動的にロックされるので、ロックを一度解除した後に再ロックするのを忘れることがなくなる。
【0016】
請求項5に記載の発明は、請求項1から4までのいずれか1項に記載の構成において、前記アダプタ本体部は、前記ドライバービットの外周に設けられた抜け止め用溝内に嵌合係止可能なボールと、前記ボールを前記ドライバービットの軸中心方向に押し付ける力を、常に前記ボールに付与する断面C字の板バネ部と、を有する抜け止め保持手段を備える、ソケットアダプタを提供する。
【0017】
この構成によれば、アダプタ本体部の前記移動を操作すると、ボールが抜け止め用溝内から逃げ出ようとするとき、断面C字状の板バネ部が弾性変形されて、外側に広がりながら、抜け止め用溝と離れる方向に逃げる。これにより、ボールが抜け止め用溝内からスムーズに逃が出すことができる。また、ボールが抜け止め用溝と対応する位置に到達すると、断面C字状の板バネ部が弾性復帰して狭まり、ボールを抜け止め用溝内に板バネ部の弾性力で保持しておくことができる。
【0018】
請求項6に記載の発明は、請求項1から5までのいずれか1に記載の構成において、前記工具連結部は、ラチェットレンチに交換可能に取り付けられる、ソケットアダプタを提供する。
【0019】
この構成によれば、アダプタ本体部の工具連結部をラチェットレンチに連結させて取り付けるとともに、アダプタ本体部の工具取付部に各種のソケット等の第1工具を交換可能に取り付ける、あるいはアダプタ本体部の一端側に表出している多角形の貫通孔に各種のソケット等の第3の工具の支持部を交換可能に取り付けると、第1の工具又は第2の工具を使用して、ラチェットレンチ等と共に手動でボルト・ナットの締め付け・取り外しの操作を行うことができる。
【0020】
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載の構成において、前記貫通孔には、前記貫通孔の一端側をソケット口として第3の工具の支軸部が交換可能に取り付けられる、ソケットアダプタを提供する。
【0021】
この構成によれば、ソケットアダプタをドライバービットの外周の前進位置に取り付けたままの状態、あるいは、ソケットアダプタをドライバービットの外周から取り外し、工具連結部を、例えば手動で操作を行うラチェットレンチ等の第2の工具のソケット部に連結して取り付けた状態で、アダプタ本体部の一端側に表出している多角形の貫通孔に、例えば6.35軸先端パーツ等の第3の工具の支軸部を交換可能に取り付けると、ラチェットレンチ等と共に手動でボルト・ナットの締め付け・取り外しの操作を行うことができる。
【発明の効果】
【0022】
発明によれば、ビス等の締め付けに用いるプラスやマイナスのドライバービットに加えて、サイズの異なるボルトやナット等の締め付けや取外しに対応したソケットレンチ等として、多用途に使用できる。
また、ドライバービットが例え破損しても、ドライバービットを交換すると、ソケットアダプタは交換したドライバービットに付け替えて、そのまま使用できるので、経済的な負担を軽減できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の実施の形態に係る第1実施例として示すソケットアダプタの正面図である。
【
図6】従来のドライバービットの所定位置に同上ソケットアダプタを装着した使用状態を示す斜視図である。
【
図7】
図6に示す使用状態において、同上ソケットアダプタのみを断面して示す側面図である。
【
図8】従来のドライバービットに同上ソケットアダプタを取り付けた使用状態を示す電動ドライバーの外観斜視図である。
【
図9】
図8の使用状態において、同上ソケットアダプタを断面して示す同上電動ドライバーの側面図である。
【
図10】同上ソケットアダプタの工具取付部に、第1の工具としてのソケットを取り付け、かつ、同上ソケットアダプタをドライバービット上の後退位置に配置した使用状態を示す電動ドライバーの斜視図である。
【
図11】
図10の使用状態において、同上ソケットアダプタと同上ソケットを断面して示す同上電動ドライバーの側面図である。
【
図12】同上ソケットアダプタの工具取付部に、第1の工具としてのソケットを取り付け、同上ソケットアダプタをドライバービット上の前進位置に配置した状態を示す電動ドライバーの斜視図である。
【
図13】
図12の使用状態において、同上ソケットアダプタと同上ソケットを断面して示す同上電動ドライバーの側面図である。
【
図14】従来のドライバービット上の後退位置に配置し、かつ、従来のラチェットレンチのソケット部に工具連結部を連結して同上ソケットアダプタを取り付けた使用状態を示す同上ラチェットレンチの斜視図である。
【
図15】
図14の使用状態において、同上ソケットアダプタを断面して示す同上ラチェットレンチの側面図である。
【
図16】従来のラチェットレンチのソケット部に工具連結部を連結して同上ソケットアダプタを取り付けた使用状態を示す同上ラチェットレンチの斜視図である。
【
図17】
図16の使用状態において、同上ソケットアダプタを断面して示す同上ラチェットレンチの側面図である。
【
図18】本発明の実施の形態に係る一変形例として示すソケットアダプタの正面図である。
【
図19】同上一変形例として示す、ソケットアダプタの側面図である。
【
図21】同上一変形例として示す、ソケットアダプタの外観斜視図である。
【
図22】同上一変形例として示す、ソケットの分解斜視図である。
【
図23】従来のドライバービットの所定位置に、同上一変形例として示すソケットアダプタを装着した状態を示す正面図である。
【
図24】従来のドライバービットの所定位置に、同上一変形例として示すソケットアダプタを装着した状態を示す側面図である。
【
図25】
図24に示す使用状態において、同上ソケットアダプタのみを断面して示す、
図23のC-C線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明は、ビス等の締め付けに用いるプラスやマイナスのドライバービットに加えて、サイズの異なるボルトやナット等の締め付けや取外しに対応したソケットアダプタとして使用できる、ドライバービットスルーのソケットアダプタを提供するという目的を達成するために、ドライバービットと連結可能なソケットアダプタであって、前記ドライバービットが嵌合挿通される断面多角形の貫通孔を有し、前記貫通孔の一端から前記ドライバービットの穂先が突き出る後退位置と前記貫通孔の一端から前記ドライバービットの前記穂先が隠れる前進位置との間を移動可能で、かつ、前記ドライバービットと一体に回転可能な筒状のアダプタ本体部と、前記アダプタ本体部の一端側外周部に設けられ、第1の工具を取り付け可能な断面多角形状の工具取付部と、前記アダプタ本体部の他端側外周部に設けられ、第2の工具のソケット部に連結取り付け可能な断面多角形状の工具連結部と、を有する構成としたことにより実現した。
【実施例0025】
以下、本発明の実施形態に係る一実施例を添付図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施例において、構成要素の数、数値、量、範囲等に言及する場合、特に明示した場合及び原理的に明らかに特定の数に限定される場合を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でも構わない。
【0026】
また、構成要素等の形状、位置関係に言及するときは、特に明示した場合及び原理的に明らかにそうでないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似又は類似するもの等を含む。
【0027】
また、図面は、特徴を分かり易くするために特徴的な部分を拡大する等して誇張する場合があり、構成要素の寸法比率等が実際と同じであるとは限らない。また、断面図では、構成要素の断面構造を分かり易くするために、一部の構成要素のハッチングを省略することがある。
【0028】
また、以下の説明において、上下や左右等の方向を示す表現は、絶対的なものではなく、本発明のソケットアダプタの各部が描かれている姿勢である場合に適切であるが、その姿勢が変化した場合には姿勢の変化に応じて変更して解釈されるべきものである。また、実施例の説明の全体を通じて同じ要素には同じ符号を付している。
【0029】
図1乃至
図5は、本発明の実施の形態に係るソケットアダプタ20の一実施例を示すものである。
図1乃至
図5に示す本発明のソケットアダプタ20は、多岐用途に亘っての使用を可能にするものである。その使用可能な代表例を先に述べると、例えば
図6乃至
図13に示すように、ドライバービット200に装着して差し替え式の電動ドライバー100、あるいは、手動ドライバーと共に使用する。又は、
図14乃至
図17に示すように、ソケットアダプタ20の工具連結部20bを、手動式のラチェットレンチ400のソケット部401に取り付けて、ラチェットレンチ400と共に使用する、等が可能である。
【0030】
すなわち、
図6及び
図7は、従来から使用されている差し替え式のドライバービット200の一端に本発明のソケットアダプタ20を取り付け、このドライバービット200を
図8乃至
図13に示す電動ドライバー100、あるいは、図示しない手動ドライバーに装着して使用する、又は
図14及び
図15に示すラチェットレンチ400に装着して使用を可能にする形態を示している。
【0031】
図6乃至
図15に示すドライバービット200は、汎用の例えば6.35ミリ六角軸(通称「6.35軸」という)である。ドライバービット200は、六角断面状のビット本体部202の両端部にそれぞれ穂先201(穂先201a、穂先201b)を有し、また穂先201の後部には抜け止め周溝203(抜け止め周溝203a、抜け止め周溝203b)が形成されている。穂先201aは、十(プラス)字穴付き用で、穂先201bは一(マイナス)字穴付き用であったり、あるいは、穂先201aは、大ネジ用のプラスで、穂先201bは小ネジ用のプラスであったりする場合もある。本実施例では、穂先201aは大ネジ用のもので、例えば十(プラス)字穴付き大ネジの頭部に押し当てて使用し、穂先201bは、十字穴付き小ネジの頭部に押し当てて使用するものである。そして、穂先201の向きを変えて電動ドライバー100、又は、ラチェットレンチ400に取り付けることにより、大小異なる十字穴付きネジの取り付け・取り外し作業、あるいは、十(プラス)字穴付きネジと一(マイナス)字穴付きネジの、取り付け・取り外し作業を可能にする。
【0032】
なお、ソケットアダプタ20の細部構造は後述するが、ソケットアダプタ20は、ドライバービット200のビット本体部202の外周上を、ドライバービット200の軸中心に沿って摺動して、ボール22がドライバービット200の抜け止め周溝203a内に嵌合係止された前進位置(
図7に示す状態)と、抜け止め周溝203b内に嵌合係止された後退位置の、何れか一方に択一的に移動させることができる。そして、移動された前進位置又は後退位置では、ドライバービット200と一体に回転できるように解除可能に保持される。
【0033】
図8は、ドライバービット200に本発明のソケットアダプタ20を取り付けた使用状態を示す電動ドライバー100の外観斜視図であり、
図9は、
図8の使用状態においてソケットアダプタ20のみを断面して示す電動ドライバー100の側面図である。
【0034】
図8及び
図9に示す電動ドライバー100は、回転主軸101の先端に設けたソケット部としてのビットチャック穴(図示せず)に、先端に穂先201を有するドライバービット200の支持部(他端側)を差し込み、かつ、ビットチャック穴内でドライバービット200の支持部(基部)をチャック固定連結させて、ドライバービット200を回転主軸101と一体に回転させる電動工具ユニットである。また、
図8及び
図9では、ソケットアダプタ20は、ソケットアダプタ20の軸中心に沿って、ソケットアダプタ20の前後両端に亘って貫通して設けられている断面多角形(本実施例では六角形)の貫通孔21に、ドライバービット200を嵌合挿通させて、ドライバービット200の外周上を、軸方向に沿って移動可能で、かつ、ドライバービット200と一体回転可能に取り付けられている。そして、
図8及び
図9においては、ソケットアダプタ20は、ドライバービット200の外周上で、電動ドライバー100の回転主軸101に近いドライバービット200の他端側の所定の位置(後退位置)に保持されている。後述するが、このときのソケットアダプタ20は、スライドカバー26によるボール22の、ドライバービット200の外周面への押し当てにより、ドライバービット200の所定の位置に拘束されて保持されている。
【0035】
図10及び
図11に示す電動ドライバー100は、
図8及び
図9に示す電動ドライバー100の回転主軸101にチャック固定連結させたドライバービット200に取り付けられている、ソケットアダプタ20の工具取付部20aに、更に第1の工具としてのソケット300を装着させた電動工具ユニットである。また、
図10及び
図11では、ソケットアダプタ20は、ドライバービット200の外周上において、電動ドライバー100の回転主軸101に近いドライバービット200の後退位置側に配置された状態で保持されている。そして、ドライバービット200の穂先201は、ソケット300の一端側から突き出されており、その穂先201を十字穴付きネジの頭部に押し当てて、十字穴付きネジの取り付け・取り外しが可能になっている。
【0036】
図12及び
図13に示す電動ドライバー100は、
図10及び
図11に示す電動ドライバー100において、第1の工具としてのソケット300を取り付けたソケットアダプタ20を、ドライバービット200の外周上において、ドライバービット200の前端位置側に配置させ、ボール22をビット本体部202の抜け止め周溝203a内に嵌合係止させて抜け止め保持されている。そして、
図12及び
図13に示す電動ドライバー100では、ソケット300のソケット口300aが、ドライバービット200の穂先201よりも前側に突き出した位置に配置されている。このソケット300の配置態様では、ソケット口300aに、例えば各種大きさの角型ボルト・ナットに対応する各種サイズのソケットを交換可能に装着して、角型ボルト・ナットの取り付け・取り外しを可能する。なお、ソケット300としては、大きさの異なる各種の角型ボルト・ナット用のものが用意され、必要な大きさのソケット300と交換されて使用するのを可能にする。
【0037】
図14及び
図15に示す第2の工具としての手動のラチェットレンチ400は、ラチェットレンチ400の両端部の前後、すなわち、上端部前側にソケット部401及びソケット口401a、上端部後側にソケット部402及びソケット口402a、下端部前側にソケット部403及びソケット口403a、下端部後側にソケット部404及び404aが、それぞれ設けられている。本実施例では、ソケット部401のソケット口401aのサイズは、ソケットアダプタ20の工具連結部20bのサイズに対応している。したがって、
図14及び
図15に示すように、ソケットアダプタ20は、工具連結部20bをソケット口401aからソケット部401内に嵌合係止することにより、ラチェットレンチ400のソケット部401に取り付けられる。そして、ラチェットレンチ400で、ソケット部401に取り付けられているソケットアダプタ20を回転させると、ソケットアダプタ20に取り付けられているドライバービット200を、ソケットアダプタ20と一体に回転させることができる。したがって、ドライバービット200の穂先201a(201)を十字穴付きネジの頭部に押し当てて回転させると、十字穴付きネジの取り付け・取り外しが可能になる。
【0038】
図16及び
図17に示す第2の工具としての手動のラチェットレンチ400は、
図14及び
図15に示すラチェットレンチ400において、ドライバービット200に変えて、第1の工具としてのソケット300を、ソケットアダプタ20の工具取付部20aに一体回転可能に取り付け、更にソケット300を取り付けたソケットアダプタ20の工具連結部20bを、ソケット部401のソケット口401aに嵌合挿入して取り付けた手動工具ユニットである。そして、
図16及び
図17に示す手動のラチェットレンチ400では、ソケット300のソケット口300aがソケットアダプタ20の前端(工具取付部20a)よりも前側に突き出した位置に配置されている。このソケット300の配置態様では、ソケット口300aに、例えば各種大きさの角型ボルト・ナットに対応する各種サイズのソケットを交換可能に装着することができる。したがって、各種大きさの角型ボルト・ナットに対応する各種サイズのソケット300をソケットアダプタ20の工具取付部20aに装着するとともに、このソケット300に対応する角型ボルト・ナットをソケット口300aに嵌合挿入させて、ラチェットレンチ400を回転させると、角型ボルト・ナットの取り付け・取り外しが可能になる。
【0039】
以上説明したように、本発明に係るソケットアダプタ20は、
図6乃至
図17に示したように、多岐用途に亘っての使用を可能にするものである。次に、そのソケットアダプタ20の細部構造を
図1乃至
図5を用いて説明する。
【0040】
図1乃至
図5において、
図1はソケットアダプタ20の正面図、
図2はソケットアダプタ20の側面図、
図3は
図1のA-A線断面図、
図4はソケットアダプタ20の外観斜視図、
図5はソケットアダプタ20の分解斜視図である。以下の説明において、
図2及び
図3の左右方向左側をソケットアダプタ20の一端側、右側を他端側として説明する。
【0041】
ソケットアダプタ20は、アダプタ本体部23と、抜け止め保持手段24等を有している。
【0042】
アダプタ本体部23は、金属で大略筒状に作られた部材であり、中心には一端側から他端側まで貫通して、断面六角形状をした貫通孔21が形成されている。貫通孔21の断面六角形状は、6.35軸のドライバー、すなわちドライバービット200の断面六角形状と対応しており、貫通孔21にはドライバービット200が嵌合挿入可能になっている。そして、アダプタ本体部23は、ドライバービット200の外周上にドライバービット200の一端側から他端側に亘って移動可能に装着され、またドライバービット200と一体に回転できるようになっている。
【0043】
アダプタ本体部23の前後方向略中央に位置する外周部分には、ロック用筒状部23aが設けられている。また、ロック用筒状部23aを挟んで一端側には、工具取付部20aが設けられ、他端側には、工具連結部20bが設けられている。
【0044】
ロック用筒状部23aは、大径部23aaと、大径部23aaの外径よりも小さい外径をした小径部23abが形成されている。そして、大径部23aaと小径部23abには、大径部23aaと小径部23abに跨がるようにして筒状のスライドカバー26が装着され、小径部23abには復帰用スプリング27とボール22とCリング状のスライドカバー止め輪28が装着される。また、小径部23abにはボール受け穴23cが、小径部23abの外周面から貫通孔21内まで貫通して、ロック用筒状部23aの軸中心に対して略直角に形成されている。
【0045】
ボール受け穴23cには、ボール22が、ボール受け穴23cの軸中心に沿って上下方向移動可能に配設されている。なお、
図3に示すように、ボール受け穴23cの貫通孔21との境界部分25の内径の大きさは、ボール22の外径の大きさよりも小さく形成されており、ボール受け穴23c内に収容されたボール22の全体が、貫通孔21内に抜け落ちないように設定されている。すなわち、ボール受け穴23cは、ボール受け穴23c内に収容されたボール22の一部が貫通孔21内に突き出すことは許容するが、ボール22の全体が貫通孔21内に抜け落ちることはないようにして、ボール22を常にボール受け穴23c内に保持できるようにして形成されている。
【0046】
また、ロック用筒状部23aにおける小径部23abの外周面には、周回溝29が形成されており、周回溝29にCリング状のスライドカバー止め輪28が装着されている。スライドカバー止め輪28は、周回溝29に装着された際、小径部23abの外周よりも外側に突出した状態で取り付けられており、スライドカバー26が他端側(ロック位置L側)に移動される量を規制するストッパーとして機能する。
【0047】
スライドカバー26は、一端側の内周部に、内径の大きさがロック用筒状部23aにおける大径部23aaの外径の大きさと略等しく、また小径部23abとの間に、小径部23abに装着されたコイルスプリングでなる復帰用スプリング27を受け入れ可能な隙間を形成してなる環状の復帰用スプリング収納部26aと、復帰用スプリング収納部26aの内径の大きさよりも小さな内径の大きさで、ボール押さえ環状凸部として形成されたロック部26bと、復帰用スプリング収納部26aの内径の大きさと略等しい内径の大きさで、ボール22を一時的に外周側に逃がすのを可能にする、ボール逃がし環状凹部として形成されたアンロック部26cと、小径部23abの外径の大きさと略同じ内径の大きさで形成された摺動面部26dと、を有している。
【0048】
そして、ロック用筒状部23aにスライドカバー26を装着する場合は、スライドカバー26の装着に先立ち、小径部23abのボール受け穴23c内にボール22を収納するとともに、小径部23abの外周に復帰用スプリング27を装着する。その後、アダプタ本体部23の他端側から復帰用スプリング収納部26aを前側にして、かつ、アダプタ本体部23の外周面の略全体を覆うようにして、スライドカバー26をアダプタ本体部23の一端側に向かってスライド装着する。装着の途中、復帰用スプリング27がロック部26bの側面と当接して圧縮される。また、スライドカバー26の他端(後端)部分が小径部23abの周回溝29を越える前に、スライドカバー26の復帰用スプリング収納部26aの一端(前端)部分が大径部23aaの後端側外周面に被さる。
【0049】
スライドカバー26の他端(後端)部分が小径部23abの周回溝29を越えたら、周回溝29内にスライドカバー止め輪28を嵌合装着する。スライドカバー止め輪28の装着により、スライドカバー26が周回溝29を越えて後端側に移動しようとするとき、スライドカバー26の後端がスライドカバー止め輪28に突き当たり、スライドカバー26がそれ以上移動しないように抜け止め規制される。
【0050】
そして、復帰用スプリング収納部26a内には、復帰用スプリング27が圧縮されて、収納保持される。そのため、スライドカバー26がフリーの状態では、復帰用スプリング27の付勢力により、
図3に実線で示すように、スライドカバー26の後端がスライドカバー止め輪28と突き当たった状態、すなわちロック位置Lで保持される。このロック位置Lでは、ロック部26bがボール受け穴23c内のボール22と対応する位置に配置されており、ボール22を貫通孔21側に押さえ付けて、ボール22がボール受け穴23c内で外周方向に移動して逃げるのを押さえる。
【0051】
また、復帰用スプリング27の付勢力に抗して、スライドカバー26を、
図3に1点鎖線で示すアンロック位置Uにスライド移動させると、アンロック位置Uでは、アンロック部26cがボール受け穴23c内のボール22と対応する位置に配置される。このアンロック位置Uでは、ボール22の押さえ付が解かれて、ボール22がボール受け穴23c内で外周方向(外側方向)に移動して逃げるのを許す。したがって、ソケットアダプタ20がドライバービット200上に配置されている状態では、ドライバービット200上でソケットアダプタ20がドライバービット200の軸中心に沿って移動するのを許容する。また、スライドカバー26を操作している力を解くと、スライドカバー26は、復帰用スプリング27の付勢力でロック位置Lに自動復帰する。これにより、ボール22は、ロック部26bにより貫通孔21側に押さえ付けられ、ソケットアダプタ20がドライバービット200上に配置されている状態では、ボール22とドライバービット200の外周面との間に摩擦力が発生して、ドライバービット200上でのソケットアダプタ20の移動が抑えられる。
【0052】
すなわち、このスライドカバー26の動作によるボール22の押さえ付け、及び、押さえ付けの解除は、抜け止め保持手段24を形成しているものである。
【0053】
アダプタ本体部23の工具取付部20aは、ロック用筒状部23aにおける大径部23aaの最大外径範囲内に形成されており、ロック用筒状部23a側から順に、断面四角形状をした取付部分20aaと、取付部分20aaの前端から更に前側に向かって円柱状に突き出されている嵌合抜け止め部分20abを、一体に有している。
【0054】
嵌合抜け止め部分20abの外周面には、周回溝30が形成されている。周回溝30には、ソケット固定リング31が装着される。ソケット固定リング31は、例えばOリングであり、ソケット固定リング31は、周回溝30に装着された際、嵌合抜け止め部分20abの最大外周よりも外側に僅かに突出した状態で取り付けられる。なお、本実施例では、ソケット固定リング31として2個のOリングを装着しているが、個数は1個以上であればよい。ソケット固定リング31は、例えば第1の工具であるソケット300が工具取付部20aに取り付けられた際、ソケット300の内面に嵌合圧着されて、その嵌合圧着による摩擦力で、ソケット300が工具取付部20aから抜け出るのを押さえるストッパーとして機能する。
【0055】
アダプタ本体部23の工具連結部20bは、ロック用筒状部23aにおける小径部23abの最大外径範囲内に形成されており、ロック用筒状部23a側から順に、断面六角形状をした連結部分20baと、連結部分20baの後端から更に後側に向かって円柱状に突き出されている嵌合抜け止め部分20bbを、一体に有している。
【0056】
嵌合抜け止め部分20bbの外周面には、周回溝32が形成されている。周回溝32には、ソケット固定リング33が装着される。ソケット固定リング33は、例えばCリングであり、周回溝32に装着された際、嵌合抜け止め部分20bbの最大外周よりも外側に僅かに突出した状態で取り付けられる。なお、本実施例ではソケット固定リング33として1個のCリングを装着しているが、個数は1個以上であればよい。ソケット固定リング33は、例えば第2の工具であるラチェットレンチ400のソケット口401aに、ソケット固定リング33が差し込まれて、ソケットアダプタ20がラチェットレンチ400に取り付けられた際、ソケット口401aの内面に嵌合圧着されて、その嵌合圧着による摩擦力で、ソケットアダプタ20がラチェットレンチ400のソケット口401aから抜け出るのを押さえるストッパーとして機能する。
【0057】
したがって、このように構成されているソケットアダプタ20では、
図6及び
図7に示すように、アダプタ本体部23の貫通孔21にドライバービット200を挿入すると、ドライバービット200上にソケットアダプタ20を装着することができる。ソケットアダプタ20をドライバービット200上に装着した状態で、またスライドカバー26がロック位置Lに配置されているときは、抜け止め保持手段24におけるスライドカバー26のロック部26bからボール22に押し付け力が付与され、ボール22がドライバービット200の外周面に押し付けられる。そして、ボール22とドライバービット200の外周面との間に発生する摩擦力で、ソケットアダプタ20がドライバービット200上で軸方向に移動するのを規制する。
【0058】
また、スライドカバー26をロック位置Lからアンロック位置Uに配置させると、スライドカバー26のアンロック部26cがボール22と対応し、ボール22がスライドカバー26の外周部側(外側)に逃げる。そして、ボール22とドライバービット200の外周面との間の摩擦力が弱められて、ソケットアダプタ20がドライバービット200上で軸方向に移動するのを許容する。又は、ソケットアダプタ20をドライバービット200上から完全に取り外すのを許容する。
【0059】
また、スライドカバー26をアンロック位置Uに配置した状態で、ソケットアダプタ20をドライバービット200上で軸方向に移動させて、途中でボール22がドライバービット200の抜け止め周溝203と対応すると、ボール22が抜け止め周溝203内に落ち込む。また、この状態で、スライドカバー26をロック位置Lに移動復帰させると、ボール22と抜け止め周溝203との嵌合係止を伴って、ソケットアダプタ20をその位置で拘束保持することができる。また、その嵌合係止位置での拘束を解く場合には、スライドカバー26をロック位置Lからアンロック位置Uに移動させると、ボール22とアンロック部26cとが対応し、ボール22に対する押し付け力が解かれる。そして、ボール22を抜け止め周溝203内から逃がして、ソケットアダプタ20をドライバービット200上で軸方向に再び移動させることができる。したがって、ソケットアダプタ20を
図6及び
図7に示した状態の位置、
図8及び
図9に示した状態の位置、
図10及び
図11に示した状態の位置、
図12及び
図13に示した状態の位置、
図14及び
図15に示した状態の位置等に、それぞれ移動させることができる。
【0060】
そして、
図8及び
図9に示すように、ソケットアダプタ20をドライバービット200の外周に取り付けたままの状態、又は、
図10及び
図11に示すように、ソケット300と共にソケットアダプタ20をドライバービット200の外周に取り付けたままの状態で、アダプタ本体部23をドライバービット200上の後退位置(他端側)に移動させると、ドライバービット200の先端部に形成されているプラス又はマイナスの穂先201がアダプタ本体部23の一端側から突き出すので、ドライバービット200のプラス又はマイナスの穂先201を使用してのボルト締め等の作業を可能にする。すなわち、ソケットアダプタ20を取り付けたままの状態で、従来のドライバービット200を使用したネジの取り付け・取り外しを行う作業が可能になる。
【0061】
また、ソケットアダプタ20をドライバービット200の外周に取り付けたままの状態で、アダプタ本体部23をドライバービット200の外周に沿ってドライバービット200上の前進位置(一端側)に移動させると、
図12及び
図13に示すように、アダプタ本体部23の一端側がドライバービット200の先端部から突き出して穂先201を隠す。そして、アダプタ本体部23の一端外周部(工具取付部20a)に、サイズの異なるボルト・ナット等の締め付けや取り外しに対応した第1の工具としてのソケット300を取り付けることができる。また、断面多角形(本実施例では断面六角形)の貫通孔21に、サイズの異なるボルト・ナット等の締め付けや取り外しに対応した、ソケット等の図示しない第3の工具の支軸部を交換可能に取り付けると、電動ドライバー100等共に手動又は電動でボルト・ナットの締め付け・取り外し操作を行うことができる。
【0062】
さらに、ソケットアダプタ20をドライバービット200の前進位置側へ更に移動させると、ソケットアダプタ20をドライバービット200から抜き出して取り外すことができる。したがって、ドライバービット200が破損したような場合は、ドライバービット200だけを交換して、ソケットアダプタ20はそのまま使用し続けることができる。また、穂先201がプラスになっているドライバービット200から穂先201がマイナスになっているドライバービット200と交換するような場合も、必要とする種類のドライバービット200に付け替えるだけで使用を継続することができる。
【0063】
また、
図14及び
図15に示すように、ドライバービット200の前進位置に装着された、ソケットアダプタ20におけるアダプタ本体部23の工具連結部20bを、ラチェットレンチ400におけるソケット部401のソケット口401aに差し込むと、ラチェットレンチ400のソケット部401に、ドライバービット200とソケットアダプタ20を取り付けることができる。そして、ラチェットレンチ400を用いて、ドライバービット200及びソケットアダプタ20を回転させて使用することができる。
【0064】
また、
図15及び
図16に示すように、工具取付部20aにソケット300を取り付けた状態で、アダプタ本体部23の工具連結部20bを、ラチェットレンチ400におけるソケット部401のソケット口401aに差し込むと、ラチェットレンチ400のソケット部401に、ソケットアダプタ20とソケット300を取り付けることができる。そして、ラチェットレンチ400を用いてソケットアダプタ20とソケット300を回転させて使用することができる。
【0065】
したがって、本実施例のソケットアダプタ20では、ビス等の締め付けに用いるプラスやマイナスのドライバービットに加えて、又は、サイズの異なるボルトやナット等の締め付けや取外しに対応したソケットレンチに加えて、多用途に使用できる。
【0066】
なお、上記実施例では、抜け止め保持手段24におけるボール22の押さえ付け、及び、押さえ付けの解除は、スライドカバー26のスライド移動で行う構成の構造を開示した。しかし、この構造に限らず、抜け止め保持手段24は、例えば
図18乃至
図22に示すように、板バネ40とボール22で構成する構造にしてもよい。
【0067】
図18乃至
図22に示すソケットアダプタ20の構造を説明すると、
図18乃至
図22に示すソケットアダプタ20は、スライドカバー26と復帰用スプリング27及びスライドカバー止め輪38に変えて、板バネ40等を設けたものである。
図18乃至
図22において、
図1乃至
図5と同一、または相当部分には、
図1乃至
図5と同一符号を付してその説明を省略し、主として相違点について述べる。
【0068】
アダプタ本体部23の、前後方向略中央に位置するロック用筒状部23aには、外周部分に、小径部23dと、小径部23dを挟んで前後の箇所に大径部23eが各々形成されている。また、小径部23dには、ボール受け穴23cが、小径部23dの外周面から貫通孔21内まで貫通して、ロック用筒状部23aの軸中心に対して略直角に形成されている。ボール受け穴23cには、ボール22が、ボール受け穴23cの軸中心に沿って上下方向に移動可能に配設されている。
【0069】
ここでのボール受け穴23cも、
図20に示すように、ボール受け穴23cの貫通孔21との境界部分25の内径の大きさが、ボール22の外径の大きさよりも小さく形成されており、ボール受け穴23c内に収容されたボール22の全体が、貫通孔21内に抜け落ちないように設定されている。すなわち、ボール受け穴23cは、ボール受け穴23c内に収容されたボール22の一部が貫通孔21内に突き出すことは許容するが、ボール22の全体が貫通孔21内に抜け落ちることはないようにして、ボール22を保持できるようにして形成されている。そして、
図20に示すように、ボール受け穴23cに収容されたボール22は、その一部の球面が貫通孔21内に突き出し、それと反対側の球面が小径部23dの外周面と同じ位置に配置されるように設定されている。
【0070】
また、ボール受け穴23c内にボール22が収容された後からは、小径部23dの外周を覆うようにして板バネ40が装着されて、ボール22がボール受け穴23c内から抜け出るのを抑える。板バネ40は軸線に沿う方向の幅が、小径部23dの軸線に沿う方向の幅と略等しく形成されており、また軸線に沿う方向には一端側から他端側まで連続するスリット41が形成されていて、軸線に垂直な断面は略C字状に形成されている。そして、板バネ40は、自身が有する弾性力の変形を利用して拡開させて、小径部23dの外周面上に配置され、配置後は、自信の弾性復帰力で小径部23dの外周面上に密着させて装着される。また、この密着した装着により、ボール受け穴23c内からボール22が抜け出すのを抑える。
【0071】
したがって、
図18乃至
図22に示すソケットアダプタ20では、
図23及び
図25に示すように、アダプタ本体部23の貫通孔21にドライバービット200を挿入すると、ドライバービット200上にソケットアダプタ20を装着することができる。ソケットアダプタ20をドライバービット200上に装着した状態では、抜け止め保持手段24における板バネ40からボール22に付与される押し付け力により、ボール22がドライバービット200の外周面に押し付けられ、ボール22とドライバービット200の外周面との間に発生する摩擦力で、ソケットアダプタ20がドライバービット200上で軸方向に移動するのを押さえる。
【0072】
また、ボール22とドライバービット200の外周面との間に発生する摩擦力に抗して、ソケットアダプタ20をドライバービット200の軸線に沿う方向に力を付与すると、ソケットアダプタ20をドライバービット200の軸線に沿って移動させることができる。そして、移動途中で、ボール22がドライバービット200の抜け止め周溝203a(又は抜け止め周溝203b)に対応すると、ボール22が抜け止め周溝203a(又は抜け止め周溝203b)内に落ち込む。この状態では、ボール22と抜け止め周溝203との嵌合係止を伴って、ソケットアダプタ20をその位置で拘束保持できる。また、その位置での保持を解く場合には、ボール22と抜け止め周溝203との間の嵌合係止に抗して、ソケットアダプタ20をドライバービット200の軸線に沿う方向に力を付与すると、ボール22が、板バネ40の押し付け力に抗して抜け止め周溝203から抜け出て、ボール22と抜け止め周溝203との係合を解いて、ドライバービット200上を再び移動させることができる。したがって、ソケットアダプタ20を
図6及び
図7に示した状態の位置、
図8及び
図9に示した状態の位置、
図10及び
図11に示した状態の位置、
図12及び
図13に示した状態の位置、
図14及び
図15に示した状態の位置に、それぞれ移動させることができる。
【0073】
したがって、この変形例のように構成したソケットアダプタ20でも、
図8及び
図9に示すように、ソケットアダプタ20をドライバービット200の外周に取り付けたままの状態、又は、
図10及び
図11に示すように、ソケット300と共にソケットアダプタ20をドライバービット200の外周に取り付けたままの状態で、アダプタ本体部23をドライバービット200上の後退位置(他端側)に移動させると、ドライバービット200の先端部に形成されているプラス又はマイナスの穂先201がアダプタ本体部23の一端側から突き出すので、ドライバービット200のプラス又はマイナスの穂先201を使用しての、ボルト締め等の作業を可能にする。したがって、ソケットアダプタ20を取り付けたままの状態で、従来のドライバービット200を使用したネジの取り付け・取り外しを行う作業が可能になる。
【0074】
また、ソケットアダプタ20をドライバービット200の外周に取り付けたままの状態で、アダプタ本体部23をドライバービット200の外周に沿ってドライバービット200上の前進位置(一端側)に移動させると、
図12及び
図13に示すように、アダプタ本体部23の一端側がドライバービット200の先端部から突き出して穂先201を隠す。そして、アダプタ本体部23の一端外周部(工具取付部20a)に、サイズの異なるボルト・ナット等の締め付けや取り外しに対応した図示しない第1の工具としてのソケット300を取り付けることができる。また、一端側において断面多角形(本実施例では断面六角形)の貫通孔21に、サイズの異なるボルト・ナット等の締め付けや取り外しに対応した、ソケット等の図示しない6.3軸先端パーツ等の第3の工具の支軸部を交換可能に取り付けると、電動ドライバー100等共に手動又は電動でボルト・ナットの締め付け・取り外し操作を行うことができる。
【0075】
さらに、ソケットアダプタ20をドライバービット200の前進位置側へ更に移動させると、ドライバービット200をソケットアダプタ20から抜き出して、ソケットアダプタ20をドライバービット200から取り外すことができる。したがって、ドライバービット200が破損したような場合は、ドライバービット200だけを交換して、ソケットアダプタ20はそのまま使用し続けることができる。また、穂先201がプラスになっているドライバービット200から穂先201がマイナスになっているドライバービット200と交換するような場合も、必要とする種類のドライバービット200に付け替えるだけで使用を継続することができる。
【0076】
また、
図14及び
図15に示すように、ドライバービット200の前進位置に装着された、ソケットアダプタ20におけるアダプタ本体部23の工具連結部20bを、ラチェットレンチ400のソケット部401のソケット口401aに差し込むと、ラチェットレンチ400におけるソケット部401に、ドライバービット200とソケットアダプタ20を取り付けることができる。そして、ラチェットレンチ400を用いて、ドライバービット200及びソケットアダプタ20を回転させて使用することができる。
【0077】
また、
図15及び
図16に示すように、工具取付部20aにソケット300を取り付けた状態で、アダプタ本体部23の工具連結部20bを、ラチェットレンチ400のソケット部401のソケット口401aに差し込むと、ラチェットレンチ400のソケット部401に、ソケットアダプタ20とソケット300を取り付けることができる。そして、ラチェットレンチ400を用いてソケットアダプタ20とソケット300を回転させて使用することができる。
【0078】
なお、本発明は、本発明の精神を逸脱しない限り種々の改変を成すことができ、そして、本発明が該改変されたものに及ぶことは当然である。