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特開2022-76972層状構造を有し、強誘電類似特性を有する3-5族化合物
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022076972
(43)【公開日】2022-05-20
(54)【発明の名称】層状構造を有し、強誘電類似特性を有する3-5族化合物
(51)【国際特許分類】
   C22C 30/00 20060101AFI20220513BHJP
   C01B 25/08 20060101ALI20220513BHJP
   C01G 15/00 20060101ALI20220513BHJP
   H01L 29/201 20060101ALI20220513BHJP
   C22C 12/00 20060101ALI20220513BHJP
   C22C 28/00 20060101ALI20220513BHJP
【FI】
C22C30/00
C01B25/08 A
C01G15/00 D
H01L29/201
C22C12/00
C22C28/00 B
【審査請求】有
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020201193
(22)【出願日】2020-12-03
(31)【優先権主張番号】10-2020-0149110
(32)【優先日】2020-11-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】506327586
【氏名又は名称】インダストリー-アカデミック コオペレイション ファウンデーション,ヨンセイ ユニバーシティ
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】シム,ウ-ヨン
(72)【発明者】
【氏名】キム,ミン-ジョン
(72)【発明者】
【氏名】キム,テ-ヨン
(72)【発明者】
【氏名】チェ,ホン
(72)【発明者】
【氏名】ウォン,ジョン-ボム
(72)【発明者】
【氏名】ベ,ジ-ホン
(72)【発明者】
【氏名】チェ,サン-ジン
(72)【発明者】
【氏名】キム,ボ-キョン
(57)【要約】
【課題】本発明は、強誘電類似特性を有する層状構造の3-5族化合物とこれを通して作製され得る3-5族化合物ナノシートおよび前記物質を含む電気素子を提供することを目的とする。
【解決手段】前記のような目的を達成するために、本発明では、[化学式1]Mx-m(Mは、1族または2族元素のうち1種以上であり、Aは、3族元素のうち1種以上であり、Bは、5族元素のうち1種以上であり、x、y、zは、正数であって、mが0であるとき、電荷均衡が取れるように化学量論比によって決定され、0<m<xの範囲である)で表され、強誘電類似(ferroelectric-like)特性を有する層状構造化合物を提供することができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記[化学式1]で表され、強誘電類似(ferroelectric-like)特性を有する化合物。
[化学式1]
x-m
(ここで、Mは、1族または2族元素のうち1種以上であり、Aは、3族元素のうち1種以上であり、Bは、5族元素のうち1種以上であり、x、y、zは、正数であって、mが0であるとき、電荷均衡が取れるように化学量論比によって決定され、0<m<xである)
【請求項2】
前記化合物は、層状構造である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
前記mは、0.1x≦m≦0.9xである、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
前記mは、0.25x≦m≦0.75xである、請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
前記化合物は、Hをさらに含む、請求項1に記載の化合物。
【請求項6】
前記化合物は、下記[化学式2]で表される組成を有する、請求項1に記載の化合物。
[化学式2]
x-m
(ここで、Mは、1族または2族元素のうち1種以上であり、Aは、3族元素のうち1種以上であり、Bは、5族元素のうち1種以上であり、x、y、zは、正数であって、mが0であるとき、電荷均衡が取れるように化学量論比によって決定され、0<m<x、0<n≦mである)
【請求項7】
前記化合物は、極性対称構造(polar-symmetry structure)を有する、請求項1から6のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項8】
前記化合物は、抵抗スイッチング特性を示す、請求項1から6のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項9】
下記[化学式1]で表され、強誘電類似(ferroelectric-like)特性を有し、2以上の二次元層を含むナノシート。
[化学式1]
x-m
(ここで、Mは、1族または2族元素のうち1種以上であり、Aは、3族元素のうち1種以上であり、Bは、5族元素のうち1種以上であり、x、y、zは、正数であって、mが0であるとき、電荷均衡が取れるように化学量論比によって決定され、0<m<xである)
【請求項10】
前記mは、0.1x≦m≦0.9xである、請求項9に記載のナノシート。
【請求項11】
前記mは、0.25x≦m≦0.75xである、請求項9に記載のナノシート。
【請求項12】
前記ナノシートは、Hをさらに含む、請求項9に記載のナノシート。
【請求項13】
前記ナノシートは、下記[化学式2]で表される組成を有する、請求項9に記載のナノシート。
[化学式2]
x-m
(ここで、Mは、1族または2族元素のうち1種以上であり、Aは、3族元素のうち1種以上であり、Bは、5族元素のうち1種以上であり、x、y、zは、正数であって、mが0であるとき、電荷均衡が取れるように化学量論比によって決定され、0<m<x、0<n≦mである)
【請求項14】
前記ナノシートは、極性対称構造(polar-symmetry structure)を有する、請求項9から13のいずれか一項に記載のナノシート。
【請求項15】
前記ナノシートは、抵抗スイッチング特性を示す、請求項9から13のいずれか一項に記載のナノシート。
【請求項16】
前記ナノシートの厚さは、500nm以下である、請求項9から13のいずれか一項に記載のナノシート。
【請求項17】
請求項1から6のいずれか一項に記載の化合物を含む、電気素子。
【請求項18】
請求項9から13のいずれか一項に記載のナノシートを含む、電気素子。
【請求項19】
前記電気素子は、メモリスタである、請求項17または18に記載の電気素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、層状構造を有する3-5族化合物に関し、より詳細には、添加元素を含んで強誘電類似特性を有する層状構造の3-5族化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
層間(interlayer)にファンデルワールス結合を通して連結される層状構造化合物は、多様な特性を示すことができ、これを物理的または化学的方法で分離することによって、厚さが数ナノメートルから数百ナノメートル水準の二次元(2D)ナノシートを製造することができて、これに対する研究が活発である。
【0003】
特に、ナノシートのような低次元の素材は、従来のバルク素材が有しない画期的な新機能が期待され、従来素材を代替する次世代未来素材として可能性が非常に大きい。
【0004】
しかしながら、二次元的結晶構造を有する層状構造化合物は、今まで黒鉛や遷移金属カルコゲン化合物等の物質に制限されていて、多様な組成の材料への展開にならない問題があった。
【0005】
一方、3-5族化合物は、3族元素と5族元素の多様な組合せを通してエネルギーバンドギャップを調節することができるので、多様な半導体物質として活用が可能であるが、層状構造を有し、強誘電類似特性を示す3-5族化合物については、詳しく知られていない。
【0006】
層状構造からなる3-5族化合物は、従来の3-5族化合物においてさらに適用を多様化させることができると共に、従来適用されなかった新しい領域への適用も期待することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】韓国特許登録第10-2057700号公報
【特許文献2】韓国特許公開第2019-0058566号公報
【特許文献3】韓国特許公開第2018-0057454号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、強誘電類似特性を有する層状構造の3-5族化合物とこれを通して作製され得る3-5族化合物ナノシートおよび前記物質を含む電気素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記のような目的を達成するための本発明の第1態様は、下記[化学式1]で表され、強誘電類似(ferroelectric-like)特性を有する化合物を提供することである。
[化学式1]
x-m
(Mは、1族または2族元素のうち1種以上であり、Aは、3族元素のうち1種以上であり、Bは、5族元素のうち1種以上であり、x、y、zは、正数であって、mが0であるとき、電荷均衡が合うように化学量論比によって決定され、0<m<xの範囲である)
前記のような目的を達成するための本発明の第2態様は、前記[化学式1]で表され、2以上の化合物層を含み、強誘電類似(ferroelectric-like)特性を有するナノシートを提供することである。
【0010】
前記のような目的を達成するための本発明の第3態様は、前記第1態様の層状構造化合物または第2態様のナノシートを含む電気素子を提供することである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によって提供することができる層状構造化合物とナノシートは、極性対称構造を有しながらも、強誘電類似特性、抵抗スイッチング特性のような多様な電気的特性を有することができて、多様な電気素子への適用が可能になり、このような特性を利用してフラッシュメモリのように情報の保存が可能なメモリスタ(memristor)のようなメモリー素子の開発が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明による層状構造化合物とこれを通して作製されるナノシートを示す概念図である。
図2a】本発明の実施例1によるサンプルの分析結果である。
図2b】本発明の実施例1によるサンプルの分析結果である。
図2c】本発明の実施例1によるサンプルの分析結果である。
図2d】本発明の実施例1によるサンプルの分析結果である。
図3a】本発明の実施例1によるサンプルの電気的特性の分析結果である。
図3b】本発明の実施例1によるサンプルの電気的特性の分析結果である。
図4a】本発明の実施例2によるサンプルの分析結果である。
図4b】本発明の実施例2によるサンプルの分析結果である。
図4c】本発明の実施例2によるサンプルの分析結果である。
図4d】本発明の実施例2によるサンプルの分析結果である。
図5a】本発明の実施例2によるサンプルの電気的特性の分析結果である。
図5b】本発明の実施例2によるサンプルの電気的特性の分析結果である。
図6a】本発明の実施例3によるサンプルの分析結果である。
図6b】本発明の実施例3によるサンプルの分析結果である。
図6c】本発明の実施例3によるサンプルの分析結果である。
図7a】本発明の実施例3によるサンプルの電気的特性の分析結果である。
図7b】本発明の実施例3によるサンプルの電気的特性の分析結果である。
図8a】本発明の実施例4によるサンプルの分析結果である。
図8b】本発明の実施例4によるサンプルの分析結果である。
図8c】本発明の実施例4によるサンプルの分析結果である。
図9a】本発明の実施例4によるサンプルの電気的特性の分析結果である。
図9b】本発明の実施例4によるサンプルの電気的特性の分析結果である。
図10a】本発明の実施例5によるサンプルの分析結果である。
図10b】本発明の実施例5によるサンプルの分析結果である。
図10c】本発明の実施例5によるサンプルの分析結果である。
図11a】本発明の実施例5によるサンプルの電気的特性の分析結果である。
図11b】本発明の実施例5によるサンプルの電気的特性の分析結果である。
図12a】本発明の実施例6によるサンプルの分析結果である。
図12b】本発明の実施例6によるサンプルの分析結果である。
図13】本発明の実施例6によるサンプルのFT-IR(Fourier-transform infrared spectroscopy)分析結果である。
図14】本発明の実施例6によるサンプルの電気的特性の分析結果である。
図15a】本発明の実施例7によるサンプルの分析結果である。
図15b】本発明の実施例7によるサンプルの分析結果である。
図16a】本発明の実施例7によるサンプルの電気的特性の分析結果である。
図16b】本発明の実施例7によるサンプルの電気的特性の分析結果である。
図17a】本発明の実施例8によるサンプルの分析結果である。
図17b】本発明の実施例8によるサンプルの分析結果である。
図18a】本発明の実施例8によるサンプルのFT-IRおよびXPS(X-ray Photoelectron Spectroscopy)分析結果である。
図18b】本発明の実施例8によるサンプルのFT-IRおよびXPS(X-ray Photoelectron Spectroscopy)分析結果である。
図19】本発明の実施例8によるサンプルのSTEM(Scanning Transmission Electron Microscopy)分析結果とEDS(Energy Dispersive X-ray Spectroscopy)分析結果を示すイメージである。
図20】本発明の実施例8によるサンプルのSTEM分析結果とFIB(Focused Ion Beam)分析結果を示すイメージである。
図21】本発明の実施例8によるサンプルのPFM(Piezoelectric Force Microscopy)を通したマッピング結果を示すイメージである。
図22】本発明の実施例8によるサンプルの磁気履歴曲線の測定結果を示すグラフである。
図23】本発明の実施例8によるサンプルの厚さによる磁気履歴曲線および抗電圧の測定結果を示すグラフである。
図24】本発明の実施例8によるサンプルの電圧-電流特性グラフである。
図25】本発明の実施例8によるサンプルおよびMoS2に対するSHG(Second-Harmonic Generation)測定結果である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施例について添付の図面を参考としてその構成および作用を説明することとする。下記で本発明を説明するに際して、関連した公知機能または構成に対する具体的な説明が本発明の要旨を不明にすることができると判断される場合には、その詳細な説明を省略する。また、任意の部分が或る構成要素を「含む」というとき、これは、特に反対になる記載がない限り、他の構成要素を除くものではなく、他の構成要素をさらに含むこができることを意味する。
【0014】
本発明による化合物は、下記[化学式1]で表され、強誘電類似(ferroelectric-like)特性を有することを特徴とする。
[化学式1]
x-m
(ここで、Mは、1族または2族元素のうち1種以上であり、Aは、3族元素のうち1種以上であり、Bは、5族元素のうち1種以上であり、x、y、zは、正数であって、mが0であるとき、電荷均衡が合うように化学量論比によって決定され、0<m<xの範囲である)
また、本発明の化合物は、層状構造を有するが、一般的に、3-5族化合物は、3次元構造であって、層状構造が示されにくい。これを克服するために、発明者らは、3-5族化合物に1族または2族元素(以下「添加元素」という)を添加することによって、3-5族化合物の層間に添加元素を位置させて、結果的に、3-5族化合物層が続く層状構造化合物を製造することができることになった。このような3-5族化合物層の間に位置する添加元素は、3-5族化合物層の間をファンデルワールス力で弱く結合させていて、これら添加元素が位置する面は、この面に沿って容易に割れる劈開面(cleavage plane)を成す。
【0015】
これに伴い、本発明による層状構造化合物は、このような劈開面に沿って容易に3-5族化合物層に物理的または化学的方法のうちいずれか一方または両方により剥離され得るが、このような剥離は、添加元素が除去されるほどさらに容易に行われる。したがって、このような層状構造化合物から容易に3-5族化合物ナノシートを作製することができ、ここで、3-5族化合物ナノシートには、添加元素が一部残留する。
【0016】
添加元素を持続的に除去すると、化合物において3-5族化合物の層間距離が次第に広がって、結局、層間の結合がなくなり、層間にクラック(crack)を示すこともできる。したがって、本発明で説明する層状構造化合物の層状構造は、繰り返される二次元の3-5族化合物層が添加元素によりファンデルワールス結合で層間の結合がなされた場合だけでなく、3-5族化合物層間の結合力が全部または部分的に除去されて層間の距離が広がってクラックを示す場合も含む。
【0017】
また、二次元の3-5族化合物層は、添加元素の除去が行われる前には、二次元結合構造を示すことができるが、添加元素の除去が一定以上行われると、3-5族化合物層内で結合構造の変化が現れることができるが、除去前の二次元結合構造から3次元結合構造、例えばジンクブレンド(Zinc Blende)構造、ウルツァイト(Wurtzite)構造に変わることもできる。しかしながら、この場合にも、化合物層は、二次元形状を維持し、層内での結晶構造が変わるだけであり、層間の結合は、添加元素によりファンデルワールス結合を維持する構造が維持されるので、依然として層状構造を示す。
【0018】
したがって、本発明で層状構造は、3-5族化合物層が二次元結合をし、添加元素によりこれら3-5族化合物層がファンデルワールス結合をする場合だけでなく、添加元素が除去されることによって、層間にクラックが発生する場合を含み、3-5族化合物層は、3次元結合であるが、これら層は、二次元形状を維持し、これら層間の結合は、3-5族化合物間の結合でなく、添加元素によりファンデルワールス結合をしたり、結合力が全部または部分的に除去されてクラックを示す場合を含む。
【0019】
このような層状構造化合物とこれから作製されるナノシートの例に対する概念図は、図1に示した。まず、添加元素を利用して層状構造の3-5族化合物を合成する。ここで、3-5族化合物である層状構造の3-5族化合物は、添加元素11を通して層状構造が維持されるが、3-5族化合物であるA層10の間で1族または2族元素である添加元素11が位置して、ファンデルワールス結合を通して層10間の結合を維持させ、添加元素11が除去されることによって、Mx-mでは、A層10間の結合力が弱くなったり広がってクラックを示し、最終的に、これから剥離されてMx-mナノシート20に作製されることを示す。
【0020】
このような層状構造化合物から剥離して作製されるナノシート20は、2以上の複数のA層が重なって作製されるので、厚さが数百nmであってもよい。一般的に、ナノシートは、横方向の幅に対して厚さが一定水準以下である場合にのみ、二次元的な形状による異方性を示すことができるが、このために、ナノシートの幅Lに対する厚さdの比d/Lは、0.1以下であることが好ましい。本発明によって作製されるナノシートの幅は、5μm以上であることも可能なので、ナノシートの厚さは、500nm以下であることが好ましい。
【0021】
このように本発明によるナノシートは、層状構造化合物から剥離されるシートであって、2以上の二次元の3-5族化合物層を含み、3-5族化合物層の間は、添加元素によりファンデルワールス結合をする場合を意味する。ここで、二次元の3-5族化合物層は、二次元結合構造であってもよく、三次元結合構造になってもよい。
【0022】
剥離方法は、物理的または化学的剥離方法が挙げられるが、一般的に知られたテープを用いた剥離方法が使用され得る。また、剥離を円滑にするために、液状で超音波を照射したり、酸または塩基の溶液で化学的な処理後、テープを用いて剥離することができる。
【0023】
添加元素は、1族元素であるLi、Na、K、Rb、Cs、Frと、2族元素であるBe、Mg、Ca、Sr、Ba、Raであってもよい。特に、1族元素であるNa、Kと、2族元素であるCaは、層状構造化合物を合成するために、添加元素として有利になり得る。
【0024】
層を成す3-5族化合物としては、例えば多様な電気素子に使用され得る窒化物であるGaN、アーセナイド系のGaAs、InAs、アンチモン系のAlSb、GaSb、InSb、リン化物系のInP、GaP等があり、本発明が必ず例示された化合物に制限されるものではない。
【0025】
残留する添加元素は、上述した[化学式1]を基準として、0<m<xの範囲であり、好ましくは、0.1x≦m≦0.9xの範囲であり得、より好ましくは、0.25x≦m≦0.75xの範囲であり得る。層状構造を有する3-5族化合物を製造するに際して、層状構造を作るために添加された元素は、完全に除去されることが好ましい。ところが、本発明による化合物では、前記組成範囲のように層状構造を形成するために添加した元素を完全に除去せず、一定以上の量が残留するように調節することによって、層状構造を有する3-5族化合物において強誘電類似(ferroelectric-like)特性と同じ新しい電気的特性を具現する。
【0026】
前記[化学式1]のMx-mにおいてx、y、zは、M、A、B元素が化学量論比によって電荷均衡が取れる正数を意味する。ここで、mは、0を超過し、xより小さくなるに従って、添加元素であるMのサイトには、空孔が発生する。
【0027】
このような空孔が発生するに従って、A層の間に位置する添加元素であるMは、外部磁界または電界によって層の間で移動することができ、これに伴い、層状構造化合物は、強誘電類似(ferroelectric-like)特性を示すことができる。
【0028】
一般的に、強誘電特性は、ペロブスカイト構造を有するBaTiOのような非対称構造の酸化物に現れる特性である。BaTiOのような非対称構造の酸化物では、中心に位置するBaの位置の変化によって強誘電特性が現れる。
【0029】
これに対し、本発明による層状構造化合物とナノシートは、このような非対称構造でなく、極性対称構造(polar-symmetry structure)を有するにも関わらず、層の間で添加元素の移動によって強誘電類似特性を示す。
【0030】
このように安定したMにおいて添加元素であるMが一部除去されることによって、強誘電類似特性を有するので、mの範囲は、0より大きくなければならず、添加元素のうち少なくとも一部は、残っていなければならないので、xよりは小さくなければならない。
【0031】
一方、mが非常に小さく除去されると、層の間で移動が容易でないことがあるので、mは、0.1x以上であり、非常に多く除去されると、層状構造が崩壊したり、移動に必要な添加元素がなくて、強誘電類似特性を示さないことがあるので、0.9x以下であることが好ましく、さらに好ましくは、mは、0.25x以上且つ0.75x以下である。
【0032】
このように本発明による層状構造化合物またはナノシートは、極性対称構造(polar-symmetry structure)を有しながらも、強誘電特性を示すことができるので、このような結晶構造および特性は、多様な電気素子に適用され得る。
【0033】
また、本発明による層状構造化合物とナノシートは、抵抗スイッチング特性を示すことができる。
【0034】
或る物質が抵抗スイッチング特性を有すると、その物質に印加する電圧によって線形的に電流が増加するのではなく、初期電圧を印加するときは、物質が高抵抗状態を維持して、電流の増加が微小であるが、一定の臨界点に到達すると、低抵抗状態に変わって急激に電流が増加する。
【0035】
このような抵抗スイッチング特性は、一般的に酸化物に現れる特徴であって、最近には、このような特性を用いてフラッシュメモリのように情報の保存が可能なメモリスタ(memristor)のようなメモリー素子の開発が活発である。
【0036】
本発明による3-5族化合物またはこの化合物からなるナノシートを製造するとき、添加元素であるMを添加して、Mの組成を有する層状構造化合物を先に合成した後、強酸を使用して添加元素であるMが一部を除去することによって、Mx-mの組成を有する層状構造化合物を製造することができる。
【0037】
このように強酸を通して添加元素が除去されて、強酸に含まれる水素イオンが添加元素が部分的に除去されたサイトに置換されて、下記[化学式2]のように、水素が含まれる層状構造化合物およびこの化合物からなるナノシートが作製され得る。
[化学式2]
x-m
(ここで、Mは、1族または2族元素のうち1種以上であり、Aは、3族元素のうち1種以上であり、Bは、5族元素のうち1種以上であり、x、y、zは、正数であって、mが0であるとき、電荷均衡が取れるように化学量論比によって決定され、0<m<x、0<n≦mである)
前記mの範囲は、上述したことと同様に、好ましくは0.1x以上且つ0.9x以下であり得、さらに好ましくは、0.25x以上且つ0.75x以下であり得る。
【0038】
このように、水素を含む層状構造化合物とナノシートも、上述したことと同様に、極性対称構造を有するにも関わらず、強誘電類似特性を有することができ、同時に抵抗スイッチング特性を有することができるので、これを通して多様な電気素子に適用され得、特にメモリスタのようなメモリー素子に適用が可能になる。
【0039】
[実施例1]
1)層状構造NaGaAs合成
NaとGa、Asをモル比で7.8:3.4:7.5の割合で称量して混合後、アルミナるつぼに投入した。その後、クォーツチューブに入れ、二重密封して、外部空気を遮断した。この過程は、アルゴン雰囲気のグローブボックスで進めた。その後、ボックス炉で750℃に昇温し、40時間維持し、300時間の間常温まで冷却して、NaGaAsサンプルを得ることができた。
【0040】
2)Naの除去
GaCl飽和溶液で6~24時間反応させて、層状NaGaAsからNaを一部除去した。その結果は、下記の表1に示した。表1で、残留Naは、EDS分析を通して得られた結果を示すものである。
【0041】
【表1】
【0042】
3)ナノシート化工程
前記表1のように製造されたサンプルに対してエタノールで超音波を照射した後、テープを用いて剥離されたナノシートを製造した。
【0043】
[実施例2]
1)層状構造KInAs合成
KとIn、Asを称量して混合後、アルミナるつぼに投入した。その後、クォーツチューブに入れ、二重密封して、外部空気を遮断した。この過程は、アルゴン雰囲気のグローブボックスで進めた。その後、ボックス炉で850℃に昇温し、12時間維持した。その後、再結晶化および結晶成長のために5℃/hの減温速度で500℃まで冷却後、500℃の温度で100時間維持し、常温に冷却して、空間群がP2/cである単斜晶系結晶構造を有するKInAsサンプルを得ることができた。
【0044】
2)Kの除去
エタノールで希釈された0.25MのHCl溶液で時間別に反応させて、層状KInAsからKを除去した。その結果は、下記の表に示した。表2で、残留Kは、EDS分析を通して得られた結果を示す。
【0045】
【表2】
【0046】
3)ナノシート化工程
前記表2のように製造されたサンプルに対してエタノールで超音波を照射した後、テープを用いて剥離されたナノシートを製造した。
【0047】
[実施例3]
1)層状構造NaAlSb合成
NaとAl、Sb金属断片をモル比に合うように称量して混合後、アルミナるつぼに投入し、クォーツチューブに入れ、二重密封して、外部空気を遮断した。この過程は、アルゴン雰囲気のグローブボックスで進めた。その後、ボックス炉で750℃に3時間の間昇温し、40時間維持した。その後、再結晶化および結晶成長のために常温まで200時間の間ゆっくり冷却して、NaAlSbサンプルを得ることができた。
【0048】
2)Naの除去
アセトニトリル(acetonitrile)に0.05Mの濃度になるようにAlClを溶かし、エタノールベースのHCl 2mlをさらに入れて溶液を製造した後、この溶液で時間別に反応させて、層状NaAlSbからNaを除去した。その結果は、下記の表に示した。表3で、残留Naは、EDS分析を通して得られた結果を示す。
【0049】
【表3】
【0050】
3)ナノシート化工程
前記表3のように製造されたサンプルに対してエタノールで超音波を照射した後、テープを用いて剥離されたナノシートを製造した。
【0051】
[実施例4]
1)層状KGaSb合成
KとGa、Sb金属断片をモル比に合うように称量して混合後、アルミナるつぼに投入した。その後、クォーツチューブに入れ、二重密封して、外部空気を遮断した。この過程は、アルゴン雰囲気のグローブボックスで進めた。その後、ボックス炉で750℃に3時間の間昇温し、15時間維持した。その後、再結晶化および結晶成長のために500℃に100時間の間ゆっくり冷却した後、さらに100時間を維持し、常温に冷却して、最終KGaSbサンプルを得ることができた。
【0052】
2)Kの除去
アセトニトリル(acetonitrile)にGaClを溶かし、エタノールベースのHCl 2mlをさらに入れて、溶液を製造した後、この溶液で時間別に反応させて、層状KGaSbからKを除去した。その結果は、下記の表に示した。表4で、残留Kは、EDS分析を通して得られた結果を示す。
【0053】
【表4】
【0054】
3)ナノシート化工程
前記表4のように製造されたサンプルに対してエタノールで超音波を照射した後、テープを用いて剥離されたナノシートを製造した。
【0055】
[実施例5]
1)層状KInSb合成
KとIn、Sb金属断片をモル比に合うように称量して混合後、アルミナるつぼに投入した。その後、クォーツチューブに入れ、二重密封して、外部空気を遮断した。この過程は、アルゴン雰囲気のグローブボックスで進めた。その後、ボックス炉で750℃で3時間の間昇温し、15時間維持した。その後、再結晶化および結晶成長のために5℃/hの減温速度で500℃まで冷却後、500℃の温度で100時間維持し、常温に冷却して、空間群がP2/cである単斜晶系結晶構造を有するKInSbサンプルを得ることができた。
【0056】
2)Kの除去
InClを過量で溶かしたHCl 33%溶媒で時間別に反応させて、層状KInSbからKを除去した。その結果は、下記の表に示した。表5で、残留Kは、EDS分析を通して得られた結果を示す。
【0057】
【表5】
【0058】
3)ナノシート化工程
前記表5のように製造されたサンプルに対してエタノールで超音波を照射した後、テープを用いて剥離されたナノシートを製造した。
【0059】
[実施例6]
1)層状CaGa合成
Ga、Ga、Pをモル比で1:2:2で称量してアルミナるつぼに入れ、これにさらに4倍のガリウムを追加して、総モル比1:10:2に合わせた。その後、これをクォーツチューブに入れて、二重で密封して、外部空気の流入を遮断した。その後、投入された原料が全部液化するように、1000℃まで加熱し、この温度で40時間維持した。維持後、常温まで時間当たり10℃の速度で冷却を進め、回収したサンプルは、塩酸溶液と脱イオン水で洗浄を進めて、残留PとGaを除去して、CaGaを合成した。
【0060】
2)Caの除去
硝酸を通して層状CaGaからCaイオンを除去した。
【0061】
硝酸の濃度と時間を異ならせて、Ca除去量を調節し、その結果は、下記の表6に示した。
【0062】
【表6】
【0063】
3)ナノシート化工程
前記表6のように製造されたサンプルに対してエタノールで超音波を照射した後、テープを用いて剥離されたナノシートを製造した。
【0064】
[実施例7]
1)層状CaIn合成
CaとIn、Pをモル比で1:2:2の割合で称量して混合後、アルミナるつぼに投入した。その後、クォーツチューブに入れ、二重密封して、外部空気を遮断した。この過程は、アルゴン雰囲気のグローブボックスで進めた。その後、ボックス炉でCa、In、Pが全部液体で存在し得る温度に昇温し、20時間維持し、100時間の間500℃まで冷却し、さらに100時間を維持して、CaInサンプルを得ることができた。
【0065】
2)Caの除去
硝酸30%のIPA混合溶液で時間別に反応させて、層状CaInからCaを除去した。Caの除去とともにInの元素比も変わり、その結果は、下記の表に示した。
【0066】
【表7】
【0067】
3)ナノシート化工程
前記表7のように製造されたサンプルに対してエタノールで超音波を照射した後、テープを用いて剥離されたナノシートを製造した。
【0068】
[実施例8]
1)層状CaGaN合成
GaとCaをモル比でGa:Ca=1:4で称量して、タングステンチューブに入れて密封した後、これをクォーツチューブに入れて、0.1333Pa水準で真空の雰囲気を作った。その後、窒素ガスを5L/分の量で注入しつつ、時間当たり50℃ずつ昇温して、900℃まで加熱し、この温度で24時間維持した。
維持後、常温まで0.1℃/時間の速度で冷却を進め、回収したサンプルは、HCl溶液と脱イオン水で洗浄を進めて、余分のCaを除去し、黒色の結晶を分離して、最終CaGaN化合物を合成した。上述したすべての工程は、グローブボックスで進めた。
【0069】
2)Caイオンの除去
-硝酸を用いた除去:硝酸15ml(3.5M)を0.1gのCaGaNと混合して、常温常圧で反応させた。反応時間は、10分、15分、20分、30分、60分に異ならせてサンプルを製作した。硝酸で反応後、形成されたCa(NOを除去するために、脱イオン水にさらに洗浄を進めた。
【0070】
-アイオダインを用いた除去:アイオダインとアセトニトリル溶媒を混ぜて、12ml(0.025M)溶液を作って、0.1gのCaGaNパウダーと24時間の間常温常圧で反応させた。反応が終わった後、形成されたCaI塩を除去するために、アセトニトリル溶媒で洗浄を進めた。
【0071】
このように硝酸とアイオダインを通して添加元素が除去されたサンプルを下記の表のように得ることができた。サンプルGは、Ca除去工程を進めない層状型CaGaNであった。
【0072】
【表8】
【0073】
3)ナノシート化工程
前記表8のように製造されたサンプルに対してテープ剥離方法を通してナノシートを製造した。
【0074】
前記[実施例1]~[実施例8]によって製造されたサンプルに対する分析結果を以下で説明する。
【0075】
図2a~図3bは、本発明の[実施例1]によって製造されたサンプルに対する分析結果を示す。
【0076】
図2aは、[実施例1]のサンプルAとサンプルBに対する走査電子顕微鏡イメージであって、酸から添加元素を除去した後には、層間のクラックが形成されたことが認められた。これに伴い、容易にナノシートへの剥離が可能になった。
【0077】
図2bは、層状構造のNaGaAsと本発明の[実施例1]におけるサンプルA~CのXRDデータを示す。Naが一部除去されたサンプルBおよびCにおいても、(002)、(102)、(004)、(006)等のメインピークが残っていて、母相であるNaGaAsの層状構造であるP2/cの空間群が維持されることが分かった。
【0078】
図2cは、[実施例1]のサンプルBから剥離されたナノシートのAFM(Atomic Force Microscopy)イメージおよびそれに応じたラインプロファイル(line-profile)を示す。20nm以下の厚さを有するナノシートに剥離されたことを確認することができた。
【0079】
図2dは、[実施例1]のサンプルBに対して[010]、[100]、[110]方向への断面に対するSTEM(Sanning Transmission Electron Microscopy)イメージおよびED(electron Diffraction)パターンであって、Naが一部除去された後にも、除去される前と比べて他の構造への変化や非晶質化が進行されなくて、層状構造を維持することを確認することができた。
【0080】
図3aでは、サンプルBから剥離されたナノシートに対してPFM(Piezoresponse Force Microscopy)を通して強誘電特性を測定し、測定した結果、ヒステリシスループを示した。これを通して[実施例1]により製造された化合物が強誘電類似特性を有していることを確認することができた。
【0081】
また、サンプルBから剥離されたナノシートに対して電圧による電流変化を測定し、その結果を図3bに示した。初期電圧では、高抵抗状態1を維持して低い電流の流れを示すが、一定電圧以上になると、低抵抗状態2になって、急激に電流が増加することを示し、反対電極方向でも同じ特性が現れることが認められる。これを通して本発明の[実施例1]によって製造された化合物が抵抗スイッチング特性を示すことを確認した。
【0082】
図4a~図5bは、本発明の[実施例2]によって製造されたサンプルに対する分析結果を示す。
【0083】
図4aは、[実施例2]のサンプルAからKを除去してサンプルDになり、これからテープを用いて剥離されて作製されたナノシートを示す。サンプルAは、層間の劈開面が観察されるが、サンプルDでは、Kが除去されることによって、層間隔が広がって一部区間でクラックが形成されたことが認められた。
【0084】
図4bは、[実施例2]においてK除去前と後のサンプルに対するXRDピークとその変化を示す。K除去前のサンプルAと一部除去されたサンプルBおよびサンプルCで同一に(002)面と(022)面のピークがそれぞれ11.2°±0.50°、27.5°±0.50°で現れることが認められた。したがって、K除去前と後に全部層状構造であるP2/cの空間群が維持されていることが分かった。
【0085】
図4cは、[実施例2]においてサンプルDから剥離されて作製されたナノシートに対するAFMイメージおよびそれに応じたラインプロファイルを示す。8~18nmの厚さを有するナノシートに剥離されたことを確認することができた。
【0086】
図4dは、[実施例2]におけるサンプルCに対するSTEM測定結果を示すが、これから、Kが除去された後にも、結晶構造が変わらないことが分かった。
【0087】
図5aは、[実施例2]のサンプルCから剥離されたナノシートに対してPFMを通して強誘電特性を測定し、測定した結果、ヒステリシスループ結果を示した。これから、[実施例2]によって製造された化合物も、強誘電類似特性を有していることを確認することができた。
【0088】
また、図5bでは、サンプルCから剥離されたナノシートに対して電圧による電流変化を測定し、その結果を示した。初期電圧では、高抵抗状態1を維持して低い電流の流れを示すが、一定電圧以上になると、低抵抗状態2になって急激に電流が増加することを示し、反対電極方向でも同じ特性が現れることが認められて、抵抗スイッチング特性を示すことが分かった。
【0089】
図6a~図7bは、[実施例3]によるサンプルに対する分析結果を示す。
【0090】
図6aは、[実施例3]のサンプルAからNaを除去してサンプルCになり、これからテープを用いて剥離されて作製されたナノシートを示す。サンプルAは、層間の劈開面が観察されるが、サンプルCでは、Naが除去されることによって、劈開面だけでなく、層間隔が広がってクラックが形成されたことが認められた。
【0091】
図6bは、一般的なジンクブレンド構造の非層状型AlSbの回折ピーク(3D AlSb)、[実施例3]のサンプルAの回折ピーク(サンプルA)、そしてNaが一部除去されたサンプルCに対する回折ピーク(サンプルC)を示す。サンプルCのXRD回折パターンは、Naの除去によってサンプルAと比較したとき、同じ角度範囲で主なピークを示していて、サンプルAのP2/cである単斜晶系結晶構造を依然として維持していると判断された。
【0092】
図6cは、Naを選択的に除去した後の層状型Na2-xAlSb原子構造模式図とサンプルBに対して[010]方向でのSTEMイメージ、そしてSAEDパターン イメージである。SAED分析結果、(002)面の回折パターンの面間距離は、7.79Å、(020)面の回折パターンの面間距離は、3.63Åであった。理論的な(002)面と(020)面の面間距離は、それぞれ7.776Å、3.61Åであることと比較するとき、前記測定値は、理論値と同じと認められた。このような測定値は、非層状型ジンクブレンド構造のAlSbでは出ることができない値である。また、母相構造Na2AlSbのNa比率は、28.5%であるが、測定されたNa2-xAlSbのNa比率は、13.9%であるから、一部のNaが除去されたことを確認することができる。また、測定されたパターンは、P2/c空間群にのみ現れるパターンである。SAEDパターンにおいてゾーン軸は、パターンで測定された面から外積を通して求めることができ、(002)と(020)面の外積を通して求められるベクトルは、[100]である。したがって、ゾーン軸は、[100]であることを確認することができ、[100]ゾーンから見える実際に測定されたSTEMイメージにおける格子の構造と理論上で求められた原子構造モデルの形態を比較してみると、正確に一致した。これを通して、Naを除去した物質も、母相物質NaAlSbののP2/c空間群をそのまま維持することを確認した。
【0093】
図7aは、[実施例3]のサンプルCから剥離されたナノシートに対するAFMイメージおよびそれに応じたラインプロファイルを示す。20nm以下の厚さを有するナノシートに剥離されたことを確認することができた。
【0094】
また、Naを除去したサンプルCに対してナノシートを作製した後、これに対してPFMを通して強誘電特性を測定し、それによる結果を図7bに示した。これを通して強誘電類似特性が現れていることを観察することができた。
【0095】
図8a~図9bは、[実施例4]によるサンプルの分析結果を示す。
【0096】
図8aは、[実施例4]のサンプルAからKを除去してサンプルCになり、これからテープを用いて剥離されて作製されたナノシートを示す。サンプルAは、層間の劈開面が観察されるが、サンプルCでは、Kが除去されることによって、劈開面だけでなく、層間隔が広がってクラックが形成されたことが認められた。
【0097】
図8bは、[実施例4]において一般的なジンクブレンド構造の非層状型GaSbの回折ピーク(3D GaSb)、サンプルAの回折ピーク、そしてKが一部除去されたサンプルCに対する回折ピークを示す。サンプルCのXRD回折パターンは、K除去によってサンプルAと比較したとき、同じ角度範囲で主なピークを示していて、サンプルAのCmcaである斜方晶系結晶構造を依然として維持していると判断された。
【0098】
図8cは、[実施例4]においてKを選択的に除去した後の層状型K1-xGaSb原子構造模式図とサンプルDに対して[010]方向におけるSTEMイメージ、そしてSAEDパターンイメージである。残留するKイオンの原子比率は、6.59at%であった。SAED分析結果、(004)面の回折パターンの面間距離は、7.465Å、(114)面の回折パターンの面間距離は、5.07Åであった。理論的な(004)面と(114)面の面間距離は、それぞれ7.408Å、5.10Åであることと比較するとき、前記測定値は、理論値と同じと認められた。このような測定値は、非層状型ジンクブレンド構造のGaSbでは出ることができない値である。また、母相構造KGaSbのK比率は、25%であるが、測定されたK1-xGaSbのNa比率は、6.59%であるから、一部のKが除去されたことを確認することができ、測定されたパターンは、Cmca空間群にのみ現れるパターンであった。SAEDパターンにおいてゾーン軸(Zone-axis)は、パターンで測定された面から外積を通して求めることができ、(004)と(114)面の外積を通して求められるベクトルは、[1-10]である。したがって、ゾーン軸(Zone-axis)は、[1-10]であることを確認することができ、[1-10]ゾーンから見える実際に測定されたSTEMイメージにおける格子の構造と理論上で求められた原子構造モデルの形態を比較してみると、正確に一致した。これを通してKを除去した物質も、母相物質KGaSbのCmca空間群をそのまま維持することを確認した。
【0099】
図9aは、[実施例4]のサンプルCから剥離されたナノシートに対するAFMイメージおよびそれに応じたラインプロファイルを示す。10nmの厚さを有するナノシートに剥離されたことを確認することができた。
【0100】
また、図9bでは、Kを除去したサンプルCに対してナノシートを作製した後、これに対してPFMを通して強誘電特性を測定し、それによる結果を示した。これを通して強誘電類似特性が現れていることを観察することができた。このような強誘電類似特性を利用すると、多様な電気素子への適用が可能であり、最近ニューロモーフィックメモリー素子として開発が活発に行われているメモリスタ素子に適用することができることが分かった。
【0101】
図10a~図11bは、[実施例5]によるサンプルの分析結果を示す。
【0102】
図10aは、[実施例5]のサンプルAからKを除去してサンプルCになり、これからテープを用いて剥離されて作製されたナノシートを示す。サンプルAは、層間の劈開面が観察されるが、サンプルCでは、Naが除去されることによって、劈開面だけでなく、層間隔が広がってクラックが形成されたことが認められた。
【0103】
図10bは、KInSb単結晶の基準ピーク(KInSb Ref)と[実施例5]のサンプルA、そしてサンプルAからKを一部除去したサンプルCに対するXRD結果を示すグラフである。サンプルCのXRD回折パターンは、K除去によってサンプルAに比べて結晶性が多少低くなったが、同じ角度範囲で主なピークを示していて、サンプルAのP2/cである単斜晶系結晶構造を依然として維持していると判断された。
【0104】
図10cは、[実施例5]においてKを選択的に除去した後の層状型K2-xInSb原子構造模式図とサンプルCに対して[010]方向におけるSTEMイメージ、そしてSAEDパターンイメージである。SAED分析結果、(002)面の回折パターンの面間距離は、8.3Å、(200)面の回折パターンの面間距離は、7.64Åであった。理論的な(200)面と(002)面の面間距離は、それぞれ7.6437Å、8.3946Åであることと比較するとき、前記測定値は、理論値と同じと認められた。このような測定値は、非層状型ジンクブレンド構造のInSbでは出ることができない値である。また、母相構造KInSbのK比率は、28.5%であるが、測定されたK2-xInSbのK比率は、10.1at%であるから、一部のKが除去されたことを確認することができた。また、測定されたパターンは、P2/c空間群にのみ現れるパターンである。SAEDパターンにおいてゾーン軸(Zone-axis)は、パターンで測定された面から外積を通して求めることができ、(002)と(200)面の外積を通して求められるベクトルは、[010]である。したがって、ゾーン軸(Zone-axis)は、[010]であることを確認することができ、[010]ゾーンから見える実際に測定されたSTEMイメージにおける格子の構造と理論上で求められた原子構造モデルの形態を比較してみると、正確に一致した。これを通してKを除去した物質も、母相物質KInSbののP2/c空間群をそのまま維持することを確認した。
【0105】
図11aは、[実施例5]のサンプルCから剥離されたナノシートに対するAFMイメージおよびそれに応じたラインプロファイルを示す。20nm以下の厚さを有するナノシートに剥離されたことを確認することができた。
【0106】
また、図11bは、[実施例5]においてKを除去する前であるサンプルAと除去した後であるサンプルCに対してナノシートを作製した後、これに対してPFMを通して強誘電特性を測定し、それによるヒステリシスループを示した。Kを除去する前には、強誘電特性が現れなかったが、Kが除去されたサンプルCでは、強誘電類似特性が現れていることを観察することができた。
【0107】
図12a~図14は、[実施例6]によるサンプルの分析結果を示す。
【0108】
図12aは、XRD分析においてCaGaの基準データ値によるピークとジンクブレンド構造のGaP(F-43m空間群)の基準データ値によるピーク、そして[実施例6]におけるサンプルA、C、Gに対するXRD分析結果を示す。Caの量が減少するに従って、サンプルAにはなかったジンクブレンドGaPに該当するピークが強くなることを確認することができた。これを通してエッチングの進行によって物質内Ca分率が低下し、この過程でCaGaが有するP63/mmc空間群から次第にF-43m空間群を有するジンクブレンド構造のGaPに変わることが分かった。
【0109】
しかしながら、このようにジンクブレンド構造に変換されても、層状構造はそのまま維持されるが、これは、GaP層間に位置するCaが抜け出ても、Caが位置していた面は、依然として劈開面やクラックを形成するためである。
【0110】
このような変化は、図12bに示したが、サンプルD、E、F、Gは、いずれも、ジンクブレンド構造を有するが、Caが除去される前のように層状構造を依然として有していることが分かる。特に最も多いCaが除去されたサンプルGは、層間の間隔が広がって層間にクラックが示し、これを剥離分散してナノシートを作製することができる。クラック間の層は、複数のGaP層を含むことができる。
【0111】
図13では、FT-IR(Fourier-transform infrared spectroscopy)分析結果を示したが、[実施例6]において硝酸でCaが除去されたサンプルEに対しては、1,150~950cm-1の範囲である1,080cm-1位置でP-H結合によるピークを示しているが、添加元素が除去される前の層状構造化合物であるサンプルAのグラフは、前記波長範囲で何らのピークを示さなかった。
【0112】
図14では、サンプルDから10~12nmで剥離されたナノシートに対するAFMイメージとこのナノシートでPFMを通して強誘電特性を測定し、それによる磁気履歴曲線を示した。電圧方向別に±2Vの抗電圧(coercive voltage)を有して、実際に電気素子に適用可能なほどの強誘電類似特性を有していた。
【0113】
図15a~図16bは、[実施例7]によるサンプルの分析結果を示す。
【0114】
図15aは、XRD分析によるパターンを示すグラフであって、ジンクブレンド構造のInPの基準データピーク(ZB InP)とCaInのレファレンスデータピーク(CaIn_ref)、そして[実施例7]のサンプルAのデータピーク(サンプルA)およびサンプルBのデータピーク(サンプルB)を示す。(002)面のピークは、ZB InPでは現れず、Caが除去される前のサンプルAおよびCaInのレファレンスデータにおける(002)面のピークに比べて、Caが一部除去されたサンプルBにおける(002)面のピークは、底角に移動することを示している。しかしながら、この場合にも、ピークは存在し、これを通して、Caが一部除去されても、結晶構造は維持されることが分かった。
【0115】
図15bは、[実施例7]のサンプルBから剥離されたナノシートに対するAFMイメージおよびそれに応じたラインプロファイル、TEMイメージとSAEDパターンを示す。AFMラインプロファイルとTEMイメージを通して薄い二次元ナノシートに剥離されたことが分かり、SAEDパターンを通して、ナノシートは、P63/mmc構造の[001]ゾーン軸(zone-axis)を維持していることが分かった。
【0116】
図16aでは、サンプルBから剥離されたナノシートでPFMを通して強誘電特性を測定した結果とそれによるヒステリシスループ結果を示した。実際に電気素子に適用可能なほどの強誘電特性を有していた。
【0117】
また、サンプルBから剥離されたナノシートに対して電圧による電流変化を測定し、その結果を図16bに示した。初期電圧では、高抵抗状態(1)を維持して低い電流の流れを示すが、一定電圧以上になると、低抵抗状態(2)になって急激に電流が増加することを示し、抵抗スイッチング特性を示すことが分かった。
【0118】
図17a~図25は、[実施例8]によるサンプルの分析結果を示す。
【0119】
図17aは、[実施例8]において段階別の層状構造化合物とナノシートに対するSEMイメージを示す。Ca除去前の層状構造化合物であるサンプルAは、層構造が現れるが、層は、互いにファンデルワールス結合により密着している。しかしながら、硝酸で30分間Caを除去したサンプルEは、層間の間隔が広がって層間にクラックを示しており、最終的に、ここで剥離されたナノシートを示す。クラック間の層は、複数のGaN層を含むこともできる。
【0120】
図17bにCaGaNのレファレンスデータ値によるピーク(CaGaN_reference)と層状構造CaGaNであるサンプルAに対する測定ピーク(サンプルA)、層状構造GaNに対して計算によるピーク(Layered GaN_calculation)、層状構造化合物であるサンプルDに対する測定ピーク(サンプルE)を示す。Caが除去される前のCaGaNであるサンプルAは、基準データ値とよく一致するピークを示した。Ca除去工程を実施した層状構造の化合物であるサンプルEに対してもXRD測定したときにも、同じ位置でピークを示すことが認められるが、これを通して、Caが除去されても、主なピークの位置は変わらなくて、構造が維持されることが分かった。
【0121】
図18aおよび 図18b では、[実施例8]によるサンプルA、GおよびEに対する分析結果を示す。図18aでは、本発明による層状構造化合物に対するFT-IR分析結果を示したが、酸を通してCaを除去したサンプルEのFT-IR分析結果グラフは、1,444cm-1位置でN-H結合によるピークを示しているが、添加元素が除去される前の層状構造化合物であるサンプルAのグラフと添加元素をアイオダインを通して除去して水素を含まないサンプルGのグラフは、前記波長範囲で何らのピークを示さなかった。
【0122】
また、図18bでは、XPS分析結果を示したが、添加元素が除去されずに水素を含まないサンプルAのXPS結果グラフは、1,140~1,155eVの範囲と1,115~1,125eVの範囲の結合エネルギー区間でそれぞれ一つのピークを示しているが、アイオダインを通して添加元素を除去して水素を含まないサンプルGにおいても、ピークが現れる結合エネルギー区間は多少変わったが、同一に、ピークは、前記範囲でそれぞれ一つだけが現れる。しかしながら、硝酸で30分間Caを除去して水素イオンを含むサンプルEのXPS結果グラフは、1,146.1eVで現れるピークの側方で1,149.5eVでさらに小さいピークを示し、1119.3eVで現れるピークの側方である1122.6eVで小さいピークを示した。このようなピークショルダー(Peak shoulder)は、水素の存在を示す。このような図18の結果は、層状構造化合物から作製されるナノシートにも同一に現れる。
【0123】
図19は、[実施例8]においてCaを一部除去したサンプルEに対するSTEM分析結果である。[100]と[110]ゾーン軸(zone-axis)における分析を進め、二次元層を成すCaGaN構造がよく維持されていることを確認した。定量的な元素組成比は、TEM-EDS(Transmission Electron Microscopy-Energy Dispersive Spectroscopy)マッピングを通して確認し、結果は、Caが11.8 at%と10.96at%と分析されて、略Ca0.25GaNの組成比であることが確認された。
【0124】
このように硝酸で30分間Caを除去したサンプルEを剥離して作製されるナノシートに対してSTEM分析を通して実際原子構造の結晶性を確認した。図20のように、ED(electron Diffraction)パターン分析を通して剥離前の層状構造化合物と同じ正方晶系(tetragonal)構造を有していることを確認し、原子構造も、剥離前の層状構造化合物と同一であることを確認した。
【0125】
図21では、Caが除去される前のCaGaNであるサンプルAとCaが一部除去された層状構造のサンプルEに対してPFM分析を通して圧電特性の変化有無を確認した。図23は、このようなPFMマッピング分析結果を示すが、このような分析を通して、Ca除去前のサンプルであるサンプルAでは、圧電反応が現れないが、Caが一部除去されたサンプルEでは、圧電反応が明確に現れていることが認められた。
【0126】
図22では、Caが一部除去された層状構造のサンプルEに対してPFMを通したヒステリシスループ(hysteresis loop)測定を実施し、その結果、印加される電圧によってヒステリシスループを示した。
【0127】
図23は、層状構造のサンプルEから剥離されたナノシートの厚さによって抗電圧(coercive voltage)の変化を分析して、ヒステリシスループ信号がサンプルの厚さに依存性を有することを確認することができた。
【0128】
このように図21図23における圧電特性とヒステリシスループ測定結果において層状構造のCa1-xGaN化合物は、強誘電類似特性を有することが分かった。
【0129】
このような強誘電類似特性を用いて抵抗スイッチング特性が現れることができるかについて分析を進めた。このために、図24のように、シリコン基板の上に金電極とその間にサンプルEから剥離されたナノシートを配置し、電極に電圧を印加しつつ、抵抗を測定した。
【0130】
図24から明らかなように、初期電圧では、層状構造のCa1-xGaN化合物が高抵抗状態を維持して非常に低い電流の流れを示すが、一定電圧以上になると、低抵抗状態になって、急激に電流が増加することを示した。反対電圧でも抵抗状態が転換されることを示していて、抵抗スイッチング特性を示すことが分かった。
【0131】
一方、図25は、SHG(Second-Harmonic Generation)測定を実施した結果であって、[実施例8]のサンプルEに対する測定結果と比較のために、非対称構造を有するMoS化合物に対する測定結果を示す。これによれば、MoS化合物は、非対称構造を有するが、サンプルEは、極性対称構造(polar-symmetry structure)を有することが分かる。このように[実施例8]のサンプルEは、極性対称構造を有するにも関わらず、強誘電類似特性を示していた。
図1
図2a
図2b
図2c
図2d
図3a
図3b
図4a
図4b
図4c
図4d
図5a
図5b
図6a
図6b
図6c
図7a
図7b
図8a
図8b
図8c
図9a
図9b
図10a
図10b
図10c
図11a
図11b
図12a
図12b
図13
図14
図15a
図15b
図16a
図16b
図17a
図17b
図18a
図18b
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25