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特開2022-76993光硬化性樹脂組成物、硬化物および積層体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022076993
(43)【公開日】2022-05-20
(54)【発明の名称】光硬化性樹脂組成物、硬化物および積層体
(51)【国際特許分類】
   C08F 2/46 20060101AFI20220513BHJP
   C08F 290/06 20060101ALI20220513BHJP
【FI】
C08F2/46
C08F290/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021163942
(22)【出願日】2021-10-05
(31)【優先権主張番号】P 2020187535
(32)【優先日】2020-11-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000132404
【氏名又は名称】株式会社スリーボンド
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】八田国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】桑原 裕典
【テーマコード(参考)】
4J011
4J127
【Fターム(参考)】
4J011PA02
4J011PA03
4J011PA07
4J011PA08
4J011PA13
4J011PA15
4J011PA69
4J011PA90
4J011PA99
4J011PB07
4J011PB14
4J011PB22
4J011PB23
4J011PC02
4J011PC08
4J011QA03
4J011QA23
4J011QA24
4J011QA33
4J011QA34
4J011QA45
4J011QB24
4J011RA03
4J011SA01
4J011SA02
4J011SA03
4J011SA06
4J011SA14
4J011SA15
4J011SA16
4J011SA19
4J011SA21
4J011SA31
4J011SA45
4J011SA48
4J011SA51
4J011SA54
4J011SA58
4J011SA61
4J011SA64
4J011SA84
4J011SA86
4J011TA05
4J011UA01
4J011VA01
4J011WA10
4J127AA03
4J127AA04
4J127BA041
4J127BB021
4J127BB101
4J127BB221
4J127BC021
4J127BD411
4J127CB151
4J127CB372
4J127CC111
4J127CC112
4J127CC121
4J127DA12
4J127DA47
4J127DA62
4J127EA13
4J127FA14
4J127FA15
4J127FA21
(57)【要約】      (修正有)
【課題】広範囲の圧縮率(圧縮範囲)において、低反力である硬化物が得られる光硬化性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】光硬化性樹脂組成物は、当該光硬化性樹脂組成物の硬化物の10%圧縮時の反力が1~300kPaであり、硬化物の50%圧縮時の反力が1~500kPaであり、(A)成分として、中空有機樹脂フィラーを含み、水酸基を有する単官能アクリルモノマーを含まないことを特徴とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬化物の10%圧縮時の反力が1~300kPaであり、硬化物の50%圧縮時の反力が1~500kPaであり、(A)成分として、中空有機樹脂フィラーを含み、水酸基を有する単官能(メタ)アクリルモノマーを含まない、光硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
以下の(B)~(D)成分をさらに含む、請求項1に記載の光硬化性樹脂組成物;
(B)成分:単官能ウレタン(メタ)アクリレート
(C)成分:前記(B)成分以外の単官能(メタ)アクリルモノマー
(D)成分:光ラジカル重合開始剤。
【請求項3】
前記(B)成分および前記(C)成分の合計100質量部に対して、前記(A)成分を3~70質量部含む、請求項2に記載の光硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
前記(B)成分の重量平均分子量が、0.1万~30万である、請求項2または3に記載の光硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
(E)成分として、(メタ)アクリロイル基を有しない可塑剤をさらに含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の光硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
前記(B)成分、前記(C)成分および前記(E)成分が、それぞれポリエーテル骨格を含む化合物である、請求項5に記載の光硬化性樹脂組成物。
【請求項7】
前記(A)成分の平均粒径が5~300μmである、請求項1~6のいずれか1項に記載の光硬化性樹脂組成物。
【請求項8】
前記(A)成分の前記有機樹脂が、アクリロニトリル・メタクリロニトリル・メタクリル酸メチル共重合体からなる、請求項1~7のいずれか1項に記載の光硬化性樹脂組成物。
【請求項9】
(F)成分として、2官能以上の多官能(メタ)アクリルモノマーをさらに含む、請求項1~8のいずれか1項に記載の光硬化性樹脂組成物。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項に記載の光硬化性樹脂組成物の硬化物。
【請求項11】
第1の被着体と、第2の被着体と、請求項10に記載の硬化物と、を含み、前記硬化物を介して前記第1の被着体と前記第2の被着体とが貼り合わされた構成を有する、積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光硬化性樹脂組成物、硬化物および積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、多機能携帯電話、デジタルカメラなどのポータブル機器の電源として、小型化や軽量化を目的として、ラミネート型リチウムイオン二次電池が多用されている。
【0003】
特開2008-235170号公報には、長期信頼性の観点から、積層方向にある一定以上の加重を加えて電池同士が動かないように固定する、ラミネート型リチウムイオン二次電池が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特開2008-235170号公報には、ラミネート型リチウムイオン二次電池の構造として、電池同士の間に、均一に面圧が生じるように緩衝材等が挟み込まれた構成が開示されている。しかしながら、従来の緩衝材を用いた場合、圧縮率が高すぎると、緩衝材において生じる反力や電池自身の膨張により電池パックのケース表面が変形するという不具合を生じることがあった。
【0005】
本発明は、上記の状況に鑑みてされたものであり、広い範囲の圧縮率(圧縮範囲)において、低反力である硬化物が得られる光硬化性樹脂組成物を提供することを目的とする。また、本発明の他の目的は、上記光硬化性樹脂組成物を硬化して得られる硬化物を提供することにある。また、本発明のさらに他の目的は、上記硬化物を用いて被着体を貼り合わせてなる積層体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題を解決するべく鋭意検討した結果、以下で詳説する光硬化性樹脂組成物によれば、広い範囲の圧縮率(圧縮範囲)において、低反力である硬化物が得られることを見出し、本発明を発明するに至った。
【0007】
上述した目的のうち少なくとも一つを実現するために、本発明の一態様に係る光硬化性樹脂組成物は、硬化物の10%圧縮時の反力が1~300kPaであり、硬化物の50%圧縮時の反力が1~500kPaであり、(A)成分として、中空有機樹脂フィラーを含み、水酸基を有する単官能(メタ)アクリルモノマーを含まない。
【0008】
また、上述した目的のうち少なくとも一つを実現するために、本発明の他の態様に係る光硬化性樹脂組成物は、水酸基を有する単官能(メタ)アクリルモノマーを含まず、(A)成分として、中空有機樹脂フィラーを含む光硬化性樹脂組成物であって、前記光硬化性樹脂組成物の硬化物は、10%圧縮時の反力が1~300kPaであり、50%圧縮時の反力が1~500kPaである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に本発明の実施の形態を説明する。なお、本開示は、以下の実施の形態のみには限定されない。本明細書において、「X~Y」は、その前後に記載される数値(XおよびY)を下限値および上限値として含む範囲を意味し、「X以上Y以下」を意味する。また、濃度、%は、特に断りのない限りそれぞれ質量濃度、質量%を表すものとし、比は特に断りのない限り質量比とする。また、特記しない限り、操作および物性等の測定は、室温(20~25℃)/相対湿度40~55%RHの条件で行う。また、「Aおよび/またはB」は、A、Bの各々およびこれらの組み合わせを含むことを意味する。
【0010】
[光硬化性樹脂組成物]
本発明の一態様に係る光硬化性樹脂組成物(以下、「光硬化性樹脂組成物」または単に「樹脂組成物」とも称する)は、硬化物の10%圧縮時の反力が1~300kPaであり、硬化物の50%圧縮時の反力が1~500kPaであり、(A)成分として、中空有機樹脂フィラー(A)成分を含み、水酸基を有する単官能(メタ)アクリルモノマーを含まないことを特徴とする。
【0011】
本発明の一態様に係る光硬化性樹脂組成物によれば、広い範囲の圧縮率において、低反力である硬化物が得られる。すなわち、光硬化性樹脂組成物を用いて得られる硬化物を広い圧縮率で圧縮した際、当該硬化物において生じる反力を小さくすることができる。具体的には、光硬化性樹脂組成物を用いて得られる硬化物は、10%圧縮時の反力が1~300kPaであり、50%圧縮時の反力が1~500kPaである。
【0012】
このように、本発明に係る光硬化性樹脂組成物によれば、硬化物を広い圧縮率で圧縮した際、当該硬化物において生じる反力が小さい。このメカニズムの詳細は不明であるが、(A)成分として含まれる中空有機樹脂フィラーが、例えばガラスフィラー等と比較して軟質であることに加え、中空体であることにより緩衝材のような役割を果たすことから、硬化物を圧縮した際(特に、高い圧縮率で圧縮した際)、生じる反力が小さくなると考えられる。また、その詳細なメカニズムは不明であるものの、水酸基を有する単官能(メタ)アクリルモノマーを含むと、光硬化性が低下し、良好な硬化物が得られない(後述の比較例3および4参照)。
【0013】
なお、上記メカニズムは推測に基づくものであり、当該メカニズムの正誤が本発明の技術的範囲に影響することはない。
【0014】
本発明の好ましい形態に係る光硬化性樹脂組成物は、以下の(B)~(D)成分をさらに含む;
(B)成分:単官能ウレタン(メタ)アクリレート
(C)成分:前記(B)成分以外の単官能(メタ)アクリルモノマー
(D)成分:光ラジカル重合開始剤。
【0015】
また、本発明の好ましい形態に係る光硬化性樹脂組成物は、(E)成分として、(メタ)アクリロイル基を有しない可塑剤をさらに含む。
【0016】
さらにまた、本発明の好ましい形態に係る光硬化性樹脂組成物は、(F)成分として、2官能以上の多官能(メタ)アクリルモノマーをさらに含む。
【0017】
以下、本発明の一態様に係る光硬化性樹脂組成物に含まれる成分について説明する。
【0018】
<水酸基を有する単官能(メタ)アクリルモノマー>
本発明に係る光硬化性樹脂組成物は、水酸基を有する単官能(メタ)アクリルモノマーを含まない。かような構成とすることで、光硬化性樹脂組成物の光硬化性を向上させることができる。一方、光硬化性樹脂組成物が水酸基を有する単官能(メタ)アクリルモノマーを含む場合、光硬化が十分に進行せず、実用的でない(後述の比較例3および4参照)。
【0019】
なお、組成物中に水酸基を有する単官能(メタ)アクリルモノマーを含まないことは、H NMRおよび13C NMRを用いることによって判定することができる。
【0020】
なお、本明細書においてある成分を「含まない」とは、当該成分を「実質的に含まない」ことを意味し、対象となる物質をコンタミネーションにより含む態様を包含する。具体的には、組成物の総質量に対して、対象となる物質が、0.1質量%以下(下限:0質量%)の割合で存在してもよいことを意味する。
【0021】
本明細書において、「(メタ)アクリルモノマー」とは、(メタ)アクリロイル基を1個以上有する単量体をいう。また、「(メタ)アクリロイル」との語は、アクリロイルおよびメタクリロイルの双方を包含する。よって、例えば、「(メタ)アクリロイル基」との語は、アクリロイル基(HC=CH-C(=O)-)およびメタクリロイル基(HC=C(CH)-C(=O)-)の双方を包含する。また、同様に、「(メタ)アクリレート」との語は、アクリレートおよびメタクリレートの双方を包含し、「(メタ)アクリル」との語は、アクリルおよびメタクリルの双方を包含する。
【0022】
また、「水酸基を有する単官能(メタ)アクリルモノマー」とは、1個以上の水酸基(ヒドロキシル基)を有するとともに、1個のアクリロイル基または1個のメタクリロイル基を有する単量体である。かような単量体としては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0023】
<(A)成分>
光硬化性樹脂組成物に含まれる(A)成分は、中空樹脂フィラー(中空有機樹脂フィラー)である。中空樹脂フィラーとは、中空部を有する中空体であり、樹脂によって形成されている粒子をいう。かような(A)成分を含むことにより、本発明に係る光硬化性樹脂組成物を硬化させて得られる硬化物は、広い範囲の圧縮率(特に高い圧縮率)で圧縮された場合であっても、生じる反力が小さい。そして、(A)成分を、以下で説明するその他成分(好ましくは、(B)~(F)成分)と組み合わせることにより、上記のような小さい反力を生じる硬化物が得られるだけでなく、光硬化性樹脂組成物を光硬化によって速やかに硬化させることができる。
【0024】
中空樹脂フィラーの形状は特に制限されず、球状、針状、繊維状、板状等、いずれの形状であってもよいが、硬化物の圧縮時の反力を低減させるだけでなく、樹脂組成物中に均一に分散させやすいという観点から、球状であると好ましい。ここで、「球状」とは、アスペクト比が1.0~2.0、好ましくは1.0~1.5の形状であることを意味し、必ずしも真球であることを意味しない。なお、球状フィラーの場合のアスペクト比は、長径/短径比を意味する。
【0025】
(A)成分としての中空樹脂フィラーの平均粒径は特に制限されないが、好ましくは5~300μmであり、より好ましくは10~200μm、さらにより好ましくは50~150μm、特に好ましくは60~130μmであり、最も好ましくは70~100μmである。また、(A)成分の平均粒径は、レーザー光回折法等の分析手段を使用した粒度分布計により求めることができる。(A)成分の平均粒径が上記の範囲内であることで、より一層、広範囲の圧縮率(圧縮範囲)で低反力である硬化物を得ることができる。
【0026】
(A)成分は、樹脂(有機樹脂)によって形成される。(A)成分を構成する樹脂としては特に制限されないが、好ましくは熱可塑性樹脂であり、より好ましくは、塩化ビニリデン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリル酸エステル(アクリレート)およびメタクリル酸エステル(メタクリレート)からなる群から選択される少なくとも1種のモノマーの重合体(ホモポリマー)または上記から選択される2種類以上のモノマーの共重合体(コポリマー)である。これらの樹脂は単独であってもよいし、2種類以上組み合わせて用いられていてもよい。中空樹脂フィラーの強靱性(強度)の観点から、中空樹脂フィラーを構成する樹脂は、好ましくはアクリロニトリルを構成単位として含む重合体(ポリアクリロニトリル樹脂)または共重合体であり、より好ましくは、アクリロニトリルを構成単位として含む共重合体であり、特に好ましくは、アクリロニトリル-メタクリロニトリル-メタクリル酸メチル共重合体である。すなわち、中空樹脂フィラーは、アクリロニトリル-メタクリロニトリル-メタクリル酸メチル共重合体からなると好ましい。
【0027】
(A)成分としての中空樹脂フィラーは、以下で説明する(B)~(F)成分等のその他成分となじみやすくなることから、表面処理されていると好ましい。表面処理の種類は特に制限されないが、中空樹脂フィラーは、シランカップリング剤、脂肪酸等により表面処理されていてもよいし、その表面に炭酸カルシウムが付着していてもよい。なかでも、(A)成分は、表面に炭酸カルシウムが付着した中空樹脂フィラーであるとより好ましい。これらの表面処理の種類は単独であってもよいし、組み合わせて用いられていてもよい。
【0028】
また、(A)成分の真比重は、特に制限されないが、例えば、0.03~0.50g/cmであると好ましく、0.05~0.40g/cmであるとより好ましく、0.07~0.30g/cmであると特に好ましい。(A)成分の真比重は、JIS Z 8807:2012に準拠して求めることができる。(A)成分の真比重が上記の範囲内であることで、より一層、広範囲の圧縮率(圧縮範囲)で低反力である硬化物を得ることができる。
【0029】
(A)成分の含有量は特に制限されないが、光硬化性樹脂組成物の総質量100質量部に対して、3~80質量部であると好ましく、5~50質量部であるとより好ましく、8~30質量部であると特に好ましく、10~20質量部であると最も好ましい。
【0030】
また、(A)成分の含有量は特に制限されないが、後述する(B)成分および(C)成分の合計100質量部に対して、例えば、3~70質量部であると好ましく、より好ましくは5~60質量部であり、特に好ましくは10~50質量部であり、最も好ましくは20~30質量部である。
【0031】
(A)成分としての中空樹脂フィラーは、合成品または市販品のいずれを使用してもよい。(A)成分の市販品としては、例えば、EMC-40B、EMC-80B、EMC-120α(日本フィライト株式会社製)等が挙げられる。
【0032】
上記(A)成分としての中空樹脂フィラーは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。なお、2種以上が併用される場合、(A)成分の含有量は、合計量を指す。
【0033】
<(B)成分>
本発明に係る光硬化性樹脂組成物は、(B)成分として、単官能ウレタン(メタ)アクリレートを含むと好ましい。(B)成分を(A)成分と組み合わせることにより、硬化物を広範囲の圧縮率(圧縮範囲)で圧縮した場合であっても、硬化物において生じる反力をより小さくすることができる。
【0034】
ここで、ウレタン(メタ)アクリレートとは、イソシアネート基とヒドロキシ基とを反応させることにより形成されるウレタン結合、および(メタ)アクリロイル基を有するエステル化合物である。すなわち、ウレタン(メタ)アクリレートとは、ウレタン結合を有する(メタ)アクリル酸エステルである。(B)成分としての単官能ウレタン(メタ)アクリレートにおいて、ウレタン結合の数は、1分子中1個以上であればよく、(メタ)アクリロイル基の数は、1分子中で1個である。なお、(メタ)アクリロイル基は、化合物中に(メタ)アクリロイルオキシ基の形態として含まれていてもよい。(メタ)アクリロイル基を2個以上有するウレタン(メタ)アクリレートを用いた場合、光硬化性樹脂組成物の硬化物の反力が高くなってしまうことから好ましくない。また、得られる硬化物の圧縮永久歪みが小さくなるという観点から、(B)成分に含まれる(メタ)アクリロイル基は、アクリロイル基であることが好ましい。ここで、ある材料の「圧縮永久歪みが小さい」とは、その材料を長時間圧縮したときに復元する力が高いことをいう。かような性質は、例えば、上記のようなラミネート型リチウムイオン二次電池に用いられる緩衝材として本発明に係る光硬化性樹脂組成物(およびその硬化物)を用いる際に重要である。アクリロイル基はメタクリロイル基と比較して反応率が高くなることから、(B)成分に含まれる(メタ)アクリロイル基がアクリロイル基であると、上記の通り圧縮永久歪みが小さくなると考えられる。
【0035】
(B)成分としての単官能ウレタン(メタ)アクリレートは、所期の効果を向上させるため、単官能ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーであると好ましい。本明細書中、「オリゴマー」とは、モノマー単位((メタ)アクリレートモノマー以外のモノマー単位を含む)が2~数十程度繰り返された重合体であって、重量平均分子量が1000(0.1万)以上であるものをいう。
【0036】
(B)成分としての単官能ウレタン(メタ)アクリレートは、ウレタン結合および(メタ)アクリロイル基以外の構造を含んでいてもよく、例えば、ポリエステル骨格、ポリカプロラクトン骨格、ポリカーボネート骨格、ポリエーテル骨格等を含んでいても良い。これらの骨格は、1分子中に1種類であってもよいし、2種類以上が組み合わせて含まれていても良い。なかでも、所期の効果をより向上させる観点から、(B)成分は、ポリエーテル骨格を有するものが好ましい。なお、本明細書中、「ポリエーテル骨格」とは、例えば、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリブチレンオキサイドなどのアルキレンオキサイドを繰り返し単位として有する骨格を意味する。
【0037】
所期の効果をより向上させるという観点から、(B)成分は、ポリエーテル骨格を有する単官能ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー(ポリエーテル系単官能ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー)であると好ましく、ポリエーテル骨格を有する単官能ウレタンアクリレートオリゴマーであるとより好ましい。
【0038】
一方で、(B)成分は、光硬化性の観点から、水酸基を有しない単官能ウレタン(メタ)アクリレートであると好ましい。
【0039】
(B)成分としての単官能ウレタン(メタ)アクリレート(単官能ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー)は、合成品または市販品のいずれを使用してもよい。
【0040】
(B)成分の製造方法としては、特に制限されないが、例えば、水酸基を有するポリオール化合物とイソシアネート基を有する(メタ)アクリレートとを反応させる方法や、水酸基を有するポリオール化合物、ポリイソシアネート化合物および水酸基を有する(メタ)アクリレートを反応させる方法などが挙げられる。これらの反応は、触媒存在下にて行われると好ましい。
【0041】
前記水酸基を有するポリオール化合物としては、特に制限されないが、例えば、ポリエステルポリオール;ポリカーボネートポリオール;ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリブチレングリコールなどのポリエーテルポリオールなどが挙げられる。当該ポリエーテルポリオール中に含まれるアルキレンオキサイドの繰り返し単位の数は特に制限されないが、例えば、3~500であり、より好ましくは、5~100であり、特に好ましくは10~50である。
【0042】
前記イソシアネート基を有する(メタ)アクリレートとしては、特に制限されないが、例えば、2-イソシアナトエチル(メタ)アクリレート、2-(2-(メタ)アクリロイルオキシエチルオキシ)エチルイソシアナートなどが挙げられる。
【0043】
前記ポリイソシアネート化合物としては、特に制限されないが、例えば、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、1,3-キシリレンジイソシアネート、1,4-キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ナフタレン-1,5-ジソシアナート、トリフェニルメタントリイソシアネートなどの芳香族ポリイソシアネート;イソホロンジイソシアネート、ビス(4-イソシアナトシクロヘキシル)メタン、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、ノルボルナンジイソシアネート、ビシクロヘプタントリイソシアネートなどの脂環式ポリイソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート、1,3,6-ヘキサメチレントリイソシアネート、1,6,11-ウンデカトリイソシアネートなどの直鎖または分岐の脂肪族ポリイソシアネートなどが挙げられる。なかでも、柔軟性を有する硬化物が得られるという観点から、前記ポリイソシアネート化合物は、直鎖または分岐の脂肪族ポリイソシアネートおよび脂環式ポリイソシアネートから選択されると好ましい。これらは単独で使用してもよく、複数を組み合わせて使用してもよい。
【0044】
前記水酸基を有する(メタ)アクリレートとしては、特に制限されないが、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールモノ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールモノ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらの中でも柔軟性に優れる硬化物が得られるという観点から、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシシクロヘキシル(メタ)アクリレートが好ましい。これらは単独で使用してもよく、複数を組み合わせて使用してもよい。
【0045】
また、(B)成分の合成時に用いる触媒としては、例えば、オレイン酸鉛、三塩化アンチモン、トリフェニルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム、テトラブチルスズ、ジブチル錫ジラウレート、ナフテン酸銅、ナフテン酸亜鉛、オクチル酸亜鉛、オクテン酸亜鉛、ナフテン酸ジルコニウム、ナフテン酸コバルト、テトラ-n-ブチル-1,3-ジアセチルオキシジスタノキサン、トリエチルアミン、1,4-ジアザ[2,2,2]ビシクロオクタン、N-エチルモルホリンなどを挙げることができる。なかでも照射光の積算光量が小さくても速やかに硬化し、低弾性の硬化物が得られることから、ジブチル錫ジラウレート、ナフテン酸亜鉛、オクチル酸亜鉛、オクテン酸亜鉛が好ましく用いられる。これらの触媒の添加量は、反応物の総質量100質量部に対して0.0001~10質量部であると好ましい。また、反応温度は、通常10~100℃であり、特に30~90℃で行うのが好ましい。
【0046】
(B)成分の重量平均分子量は特に制限されない。光硬化により速やかに硬化物が得られ、かつ、広範囲の圧縮率(圧縮範囲)において低反力である硬化物が得られることから、(B)成分の重量平均分子量は、例えば、0.1万~30万(1000以上30万以下)であることが好ましく、さらに好ましくは0.3万~5万(3000以上50000以下)であり、特に好ましくは0.5万~4万(5000以上40000以下)である。なお、本明細書中、重量平均分子量は、特に断りがない限り、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)を用いた標準ポリスチレン換算法により算出した値を採用する。
【0047】
(B)成分の含有量は特に制限されないが、(B)成分および後述する(C)成分の合計100質量部に対して、20~90質量部であると好ましく、より好ましくは、30~85質量部であり、さらに好ましくは、40~80質量部であり、特に好ましくは、50~75質量部の範囲であり、最も好ましくは60~70質量部の範囲である。上記の範囲内であることで、より一層、光硬化によって速やかに硬化物が得られ、かつ、広範囲の圧縮率(圧縮範囲)において低反力である硬化物が得られる光硬化性樹脂組成物を得ることができる。
【0048】
上記(B)成分としての単官能ウレタン(メタ)アクリレートは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。なお、2種以上が併用される場合、(B)成分の含有量は、合計量を指す。
【0049】
<(C)成分>
本発明に係る光硬化性樹脂組成物は、(C)成分として、上記(B)成分以外の単官能(メタ)アクリルモノマーを含むと好ましい。(C)成分を(A)成分と組み合わせることにより、光硬化によって速やかに硬化物が得られ、かつ、広範囲の圧縮率(圧縮範囲)において低反力である硬化物を得ることができる。
【0050】
ここで、単官能(メタ)アクリルモノマーとは、(メタ)アクリロイル基を1個有する化合物である。(メタ)アクリロイル基は、モノマー中に(メタ)アクリロイルオキシ基の形態として含まれていてもよい。なお、1分子中、1以上のウレタン結合および1個の(メタ)アクリロイル基を有する化合物(ただし、エステル化合物)は、上記(B)成分に含まれるものであり、(C)成分には含まれないものとする。
【0051】
また、光硬化性を良好にするという目的から、(C)成分に含まれる(メタ)アクリロイル基は、アクリロイル基であることが好ましい。また、かような構成であると、反応率が高くなり、得られる硬化物の圧縮永久歪みが小さくなるという利点もある。
【0052】
(C)成分としての単官能(メタ)アクリルモノマーは、所期の効果を向上させるため、単官能(メタ)アクリレートモノマー(すなわち、(メタ)アクリロイルオキシ基を1個有するエステル化合物、(メタ)アクリル酸エステル)であると好ましい。
【0053】
(C)成分は、(メタ)アクリロイル基以外の構造を含んでいてもよい。かような構造として、所期の効果をより向上させる観点から、(C)成分は、ポリエーテル骨格を有していると好ましい。「ポリエーテル骨格」の定義は、上記(B)成分の項に記載のとおりである。ポリエーテル骨格を構成するアルキレンオキサイドの繰り返し単位の数は特に制限されないが、例えば、2~300であり、2~100であると好ましく、2~30であるとより好ましく、2~10であると特に好ましい。また、アルキレンオキサイドを構成する炭素数は特に制限されないが、1つの繰り返し単位中の炭素数は、2~10であると好ましく、2~5であるとより好ましく、2~4であると特に好ましく、2であると最も好ましい。すなわち、(C)成分に含まれるポリエーテル骨格は、ポリエチレンオキサイド骨格であると好ましい。
【0054】
(C)成分の分子量は特に制限されないが、特に制限されないが、光硬化性樹脂組成物の硬化性を良好にするという観点から、1000未満であると好ましく、より好ましくは500以下であり、特に好ましくは300以下である。また、(B)成分との相溶性に優れるという観点から、(C)成分の化合物の分子量は、100を超えるものであると好ましく、130以上であるとより好ましい。なお、本明細書において、化合物(低分子量化合物)の分子量は、ガスクロマトグラフィー-質量分析(GC-MS)法等、公知の方法で測定できる。また、当該方法で測定できない場合には、NMR等の方法により、その化合物の構造を特定し、当該構造に基づき計算を行うことにより分子量を特定することができる。
【0055】
一方で、(C)成分は、光硬化性の観点から、水酸基を有しない単官能(メタ)アクリルモノマーであると好ましく、水酸基を有しない単官能(メタ)アクリレートモノマーであるとより好ましく、水酸基を有しない単官能アクリレートモノマーであると特に好ましい。
【0056】
(C)成分としては、特に制限されないが、例えば、メトキシジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシテトラエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシペンタエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシヘキサエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシヘプタエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシヘクタエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシオクタエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシノナエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシデカエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシトリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシテトラプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシペンタプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシヘキサプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシヘプタプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシヘクタプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシオクタプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシノナプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシデカプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシトリブチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシテトラブチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシペンタブチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシヘキサブチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシヘプタブチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシヘクタブチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシオクタブチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシノナブチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシデカブチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エトキシトリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エトキシテトラエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エトキシペンタエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エトキシヘキサエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エトキシヘプタエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エトキシヘクタエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エトキシオクタエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エトキシノナエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エトキシデカエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エトキシトリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エトキシテトラプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エトキシペンタプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エトキシヘキサプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エトキシヘプタプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エトキシヘクタプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エトキシオクタプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エトキシノナプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エトキシデカプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エトキシトリブチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エトキシテトラブチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エトキシペンタブチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エトキシヘキサブチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エトキシヘプタブチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エトキシヘクタブチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エトキシオクタブチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エトキシノナブチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エトキシデカブチレングリコールモノ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。なかでも、エトキシジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エトキシトリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エトキシテトラエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エトキシペンタエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エトキシヘキサエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エトキシヘプタエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エトキシヘクタエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エトキシオクタエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エトキシノナエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エトキシデカエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エトキシトリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エトキシテトラプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エトキシペンタプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エトキシヘキサプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エトキシヘプタプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エトキシヘクタプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エトキシオクタプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エトキシノナプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エトキシデカプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エトキシトリブチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エトキシテトラブチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エトキシペンタブチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エトキシヘキサブチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エトキシヘプタブチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エトキシヘクタブチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エトキシオクタブチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エトキシノナブチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エトキシデカブチレングリコールモノ(メタ)アクリレートが好ましい。これらは単独でもしくは2種以上を混合して用いることができる。
【0057】
(C)成分の含有量は特に制限されないが、上記(B)成分および(C)成分の合計100質量部に対して、10~80質量部の範囲であると好ましく、より好ましくは、20~70質量部であり、さらに好ましくは、25~60質量部であり、特に好ましくは、30~50質量部の範囲である。上記の範囲内であることで、より一層、光硬化によって速やかに硬化物が得られ、かつ、広範囲の圧縮率(圧縮範囲)において低反力である硬化物が得られる光硬化性樹脂組成物を得ることができる。
【0058】
(B)成分および(C)成分の含有量(合計)は特に制限されないが、光硬化性樹脂組成物の総質量100質量部に対して、30~90質量部であると好ましく、40~80質量部であるとより好ましく、50~70質量部であると特に好ましい。
【0059】
上記(C)成分としての単官能(メタ)アクリレートモノマーは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。なお、2種以上が併用される場合、(C)成分の含有量は、合計量を指す。
【0060】
<(D)成分>
本発明に係る光硬化性樹脂組成物は、(D)成分として、光ラジカル重合開始剤を含むと好ましい。(D)成分としては、可視光線、紫外線、電子線等の活性エネルギー線の照射によりラジカル種を発生させる化合物を用いることができる。かような光ラジカル重合開始剤としては、アセトフェノン系光ラジカル重合開始剤、ベンゾイン系光ラジカル重合開始剤、ベンゾフェノン系光ラジカル重合開始剤、チオキサントン系光ラジカル重合開始剤、アシルホスフィンオキサイド系光ラジカル重合開始剤、チタノセン系光ラジカル重合開始剤などが挙げられ、なかでも、積算光量が小さくても硬化速度が速い光硬化性樹脂組成物が得られることから、(D)成分は、アセトフェノン系光ラジカル重合開始剤および/またはアシルホスフィンオキサイド系光ラジカル重合開始剤であると好ましく、アセトフェノン系光ラジカル重合開始剤であるとより好ましい。これらは単独でもしくは2種以上を混合して用いることができる。
【0061】
アセトフェノン系光ラジカル重合開始剤としては、例えば、ジエトキシアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン、ベンジルジメチルケタール、4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル-(2-ヒドロキシ-2-プロピル)ケトン、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン、2-メチル-2-モルホリノ(4-チオメチルフェニル)プロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)ブタノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-[4-(1-メチルビニル)フェニル]プロパノンオリゴマー等が挙げられるが、この限りではない。前記アセトフェノン系光ラジカル重合開始剤の市販品としては、Omnirad(登録商標、以下同じ)184、Omnirad1173、Omnirad2959、Omnirad127(IGM Resins B.V.社製)、ESACURE(登録商標)KIP-150(IGM Resins B.V.社製)が挙げられる。
【0062】
アシルホスフィンオキサイド系光ラジカル重合開始剤としては、例えば、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニル-ホスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-ホスフィンオキサイド等が挙げられるが、この限りではない。アシルホスフィンオキサイド系光ラジカル重合開始剤の市販品としては、Omnirad TPO、Omnirad819、Omnirad819DW(IGM Resins B.V.社製)が挙げられる。
【0063】
(D)成分の含有量は特に制限されないが、前記(B)成分および前記(C)成分の合計100質量部に対して、0.1~15質量部であると好ましく、より好ましくは、0.3~7.0量部であり、特に好ましくは、0.5~5.0質量部の範囲であり、最も好ましくは、1.0~3.0質量部である。上記の範囲内であることで、より一層、広範囲の圧縮率(圧縮範囲)で低反力である硬化物が得られる光硬化性樹脂組成物を得ることができる。
【0064】
上記(D)成分としての光ラジカル重合開始剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。なお、2種以上が併用される場合、(D)成分の含有量は、合計量を指す。
【0065】
<(E)成分>
本発明に係る光硬化性樹脂組成物は、(E)成分として、(メタ)アクリロイル基を有しない可塑剤を含むと好ましい。(メタ)アクリロイル基を有しない可塑剤を用いることで、得られる硬化物において生じる反力が、広範囲の圧縮率(圧縮範囲)において小さくなるという効果が得られる。(E)成分を(A)成分と組み合わせることにより、光硬化によって速やかに硬化物が得られ、かつ、広範囲の圧縮率(圧縮範囲)において低反力である硬化物が得られる光硬化性樹脂組成物を得ることができる。
【0066】
(E)成分としての可塑剤は、所期の効果を向上させるため、ポリエーテル骨格を有していると好ましい。「ポリエーテル骨格」の定義は、上記(B)成分の項に記載のとおりである。アルキレンオキサイドを構成する炭素数は特に制限されないが、1つの繰り返し単位中の炭素数は、2~10であると好ましく、2~5であるとより好ましく、2~4であると特に好ましく、3であると最も好ましい。すなわち、(E)成分に含まれるポリエーテル骨格は、ポリプロピレンオキサイド骨格であると好ましい。
【0067】
ポリエーテル骨格を構成するアルキレンオキサイドの繰り返し単位の数は特に制限されないが、例えば、3~300であり、より好ましくは5~100であり、特に好ましくは10~60であり、最も好ましくは20~50である。
【0068】
(E)成分の数平均分子量としては、特に制限されないが、例えば、200~30000であり、好ましくは350~10000であり、特に好ましくは、500~5000であり、最も好ましくは、1000~3000である。なお、本明細書中、数平均分子量は、特に断りがない限り、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)を用いた標準ポリスチレン換算法により算出した値を採用する。上記の範囲内であることにより、より一層、光硬化によって速やかに硬化物が得られ、かつ、広範囲の圧縮率(圧縮範囲)において低反力である硬化物が得られる光硬化性樹脂組成物を得ることができる。
【0069】
(E)成分として用いることができる可塑剤の例としては、ポリオールおよびその縮合物等が挙げられ、例えばグリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール等が挙げられる。
【0070】
(E)成分としての可塑剤は、合成品または市販品のいずれを使用してもよい。(E)成分の市販品としては、特に制限されないが、例えば、PEG#300、PEG#400、PEG#600、PEG#1000、PEG#1500、PEG#15400、PEG#2000、PEG#4000、PEG#6000、PEG#1100、PEG#2000、ユニオール(登録商標)D-700、D-1000、D1200、D2000、D4000、PB-500、PB-700、PB-1000、PB-2000(日油株式会社製)などが挙げられる。
【0071】
(E)成分の含有量は特に制限されないが、上記(B)成分および(C)成分の合計100質量部に対して、20~200質量部であると好ましく、より好ましくは、25~150質量部であり、特に好ましくは30~100質量部の範囲であり、最も好ましくは、35~70質量部である。上記の範囲内であることで、より一層、光硬化によって速やかに硬化物が得られ、かつ、広範囲の圧縮率(圧縮範囲)において低反力である硬化物が得られる光硬化性樹脂組成物を得ることができる。
【0072】
上記(E)成分としての可塑剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。なお、2種以上が併用される場合、(E)成分の含有量は、合計量を指す。
【0073】
<(F)成分>
本発明に係る光硬化性樹脂組成物は、(F)成分として、2官能以上の多官能(メタ)アクリルモノマーを含むと好ましい。(F)成分を(A)成分と組み合わせることにより、光硬化によって速やかに硬化物が得られ、かつ、広範囲の圧縮率(圧縮範囲)において低反力である硬化物が得られる光硬化性樹脂組成物が得られる。
【0074】
ここで、多官能(メタ)アクリルモノマーとは、(メタ)アクリロイル基を2個以上有する化合物である。(メタ)アクリロイル基は、モノマー中に(メタ)アクリロイルオキシ基の形態として含まれていてもよい。
【0075】
(F)成分としての多官能(メタ)アクリルモノマーに含まれる(メタ)アクリロイル基の数は2個以上であれば特に制限されないが、積算光量が小さくても硬化速度が早い光硬化性樹脂組成物が得られることから、3個以上(3官能以上)であると好ましく、4個以上(4官能以上)であるとより好ましく、5個以上(5官能以上)であると特に好ましい。一方、(メタ)アクリロイル基の数の上限は特に制限されないが、例えば、8個以下(8官能以下)である。また、光硬化性を良好にし、また、得られる硬化物の圧縮永久歪みを小さくするという目的から、(F)成分に含まれる(メタ)アクリロイル基は、アクリロイル基であることが好ましい。
【0076】
(F)成分としての多官能(メタ)アクリルモノマーは、所期の効果を向上させるため、多官能(メタ)アクリレートモノマー(すなわち、(メタ)アクリロイルオキシ基を2個以上有するエステル化合物、(メタ)アクリル酸エステル)であると好ましい。また、多官能(メタ)アクリレートモノマーに含まれる(メタ)アクリロイル基の好ましい数は、上記と同様である。
【0077】
(F)成分の分子量は特に制限されないが、光硬化性樹脂組成物の硬化性を良好にするという観点から、1000未満であると好ましく、さらに好ましくは600以下である。また、(A)成分との相溶性に優れるという観点から、(F)成分の化合物の分子量は、200を超えるものであると好ましく、300以上であるとより好ましい。
【0078】
一方で、(F)成分は、光硬化性の観点から、水酸基を有しない多官能(メタ)アクリルモノマーであると好ましく、水酸基を有しない多官能(メタ)アクリレートモノマーであるとより好ましく、水酸基を有しない多官能アクリレートモノマーであると特に好ましい。
【0079】
(F)成分は、特に制限されないが、例えば、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等の4官能(メタ)アクリレートモノマー;ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等の5官能(メタ)アクリレートモノマー;ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の6官能(メタ)アクリレートモノマー等が挙げられ、なかでも、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートが好ましい。これらのモノマーは単独でもしくは2種以上を混合して用いることができる。
【0080】
(F)成分の含有量は特に制限されないが、上記(B)成分および(C)成分の合計100質量部に対して、0.1~15質量部の範囲であると好ましく、より好ましくは、0.2~5質量部の範囲であり、特に好ましくは、0.3~3質量部の範囲である。上記の範囲内であることで、より一層、光硬化により速やかに硬化物が得られ、かつ、広範囲の圧縮率(圧縮範囲)において低反力である硬化物が得られる光硬化性樹脂組成物を得ることができる。
【0081】
上記(F)成分としての多官能(メタ)アクリルモノマーは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。なお、2種以上が併用される場合、(F)成分の含有量は、合計量を指す。
【0082】
<(G)成分>
本発明に係る光硬化性樹脂組成物は、(G)成分として、無機充填剤を含むと好ましい。(G)成分としては、特に制限されないが、例えば、ガラス、フュームドシリカ、アルミナ、タルク、マイカ、セラミックス、シリコーンゴム粉体、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、カーボン粉、カオリンクレー、乾燥粘土鉱物、乾燥珪藻土等が挙げられ、なかでも、広範囲の圧縮率(圧縮範囲)において低反力である硬化物が得られる光硬化性樹脂組成物を得るという目的から、フュームドシリカ、タルクが好ましい。これらは単独でもしくは2種以上を混合して用いることができる。
【0083】
上記フュームドシリカは、広範囲の圧縮率(圧縮範囲)において低反力である硬化物が得られる光硬化性樹脂組成物を得るという目的から、オルガノクロロシラン類、ジメチルシリコーンおよびヘキサメチルジシラザンからなる群から選択される少なくとも1種の表面処理剤によって疎水化処理したものであると好ましい。シリカの具体例としては、例えば、アエロジル(登録商標)R974、R972、R972V、R972CF、R805、R812、R812S、R816、R8200、RY200、RX200、RY200S、R202(日本アエロジル製)等が挙げられる。これらは単独でもしくは2種以上を混合して用いることができる。
【0084】
(G)成分の含有量は特に制限されないが、上記(B)成分および(C)成分の合計100質量部に対し、0.01~100質量部の範囲であると好ましく、より好ましくは、0.1~50質量部であり、特に好ましくは0.5~20質量部の範囲であり、特に好ましくは、3~10質量部の範囲である。上記の範囲内であることで、より一層、広範囲の圧縮率(圧縮範囲)において低反力である硬化物が得られる光硬化性樹脂組成物を得ることができる。
【0085】
上記(G)成分としての無機充填材は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。なお、2種以上が併用される場合、(G)成分の含有量は、合計量を指す。
【0086】
<任意成分>
本発明に係る光硬化性樹脂組成物は、本発明の目的を損なわない範囲で、エポキシ変性(メタ)アクリレートオリゴマー(ただし、ウレタン結合を有する単官能(メタ)アクリレートオリゴマーを除く)、多官能(2官能以上の)ウレタン変性(メタ)アクリレートオリゴマー;スチレン系共重合体等の各種エラストマー;有機過酸化物;ポリチオール;(メタ)アクリル基を有するシラン化合物等のシランカップリング剤;保存安定剤;酸化防止剤;光安定剤;防錆剤;溶剤;顔料;染料;難燃剤;タッキファイヤーおよび界面活性剤等の添加剤をさらに含んでいてもよい。
【0087】
<光硬化性樹脂の製造方法>
本発明の光硬化性樹脂組成物は、従来公知の方法により製造することができる。例えば、(A)成分およびその他の任意成分の所定量を秤量して、プラネタリーミキサー等の混合手段を使用して混合することにより、本発明に係る光硬化性樹脂組成物を得ることができる。このとき、製造条件は特に制限されないが、粘度が高くなってしまうことを抑制する目的から、遮光条件下で行うことが好ましい。また、混合条件も特に制限されないが、混合温度は好ましくは10~70℃、より好ましくは20~50℃、特に好ましくは常温(25℃)であり、混合時間は好ましくは0.1~5時間、より好ましくは30分~3時間、特に好ましくは60分前後である。
【0088】
[硬化物]
本発明の他の態様は、上記光硬化性樹脂組成物を硬化してなる硬化物(光硬化性樹脂組成物の硬化物)である。以下で詳説するように、硬化物は、上記光硬化性樹脂組成物に対し、光(例えば、紫外線や可視光等の活性エネルギー線)を照射することにより硬化させてなることが好ましい。より具体的には、本発明の一形態に係る硬化物は、上記光硬化性樹脂組成物を被着体へ塗布し、その後、塗布された光硬化性樹脂組成物に対して光を照射することにより得られることが好ましい。
【0089】
<塗布方法>
本発明に係る光硬化性樹脂組成物を基材等の被着体へ塗布する方法としては、特に制限されず、公知の接着剤や塗料の塗布方法を用いることができる。例えば、自動塗布機を用いたディスペンシング、スプレー、インクジェット、スクリーン印刷、グラビア印刷、ディッピング、スピンコートなどの方法を用いることができる。
【0090】
また、塗布する際の厚さは、特に制限されないが、乾燥後の膜厚が0.1~5mmとなるように調整することが好ましく、より好ましくは0.5~3mmである。
【0091】
<硬化方法>
本発明に係る光硬化性樹脂組成物は、光(例えば、紫外線や可視光等の活性エネルギー線)を照射することにより硬化させることができる。ここでいう光とは、α線やβ線等の放射線、γ線やX線等の電磁波、電子線(EB)、波長100~400nm程度の紫外線、波長400~800nm程度の可視光線等の各種活性エネルギー線を含む広義の光を意味する。
【0092】
光硬化性樹脂組成物を硬化させる際に用いられる光源は特に限定されず、例えば、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、ブラックライトランプ、マイクロウェーブ励起水銀灯、メタルハライドランプ、ナトリウムランプ、ハロゲンランプ、キセノンランプ、LED、蛍光灯、太陽光、電子線照射装置等が挙げられる。また、本発明に係る光硬化性樹脂組成物を光照射(活性エネルギー線照射)で硬化させる装置としては、上記光源(高圧水銀灯やLEDなど)を有する照射装置を用いることができる。当該装置の具体例としては、ベルトコンベアー型照射器やスポット照射器などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、積算光量の下限は特に制限されないが、0.5kJ/m以上であることが好ましく、1.0kJ/m以上であることがより好ましい。このように、本発明に係る光硬化性樹脂組成物は、積算光量が小さくても十分に硬化させることができ、得られる硬化物の特性もまた優れる。また、積算光量の上限も特に制限されないが、50kJ/m以下であることが好ましく、より好ましくは30kJ/m以下である。
【0093】
本発明に係る硬化物の圧縮時の反力は、10%圧縮時の反力が1~300kPaであり、50%圧縮時の反力が1~500kPaである。なお、本明細書中、「10%圧縮時の反力」とは、硬化物の当初の厚みに対して90%の厚さになるように硬化物を圧縮した際の反力を指す。また、同様に、「50%圧縮時の反力」とは、硬化物の当初の厚みに対して50%の厚さになるように硬化物を圧縮した際の反力を指す。なお反力の測定方法について、具体的には、以下の<硬化物の圧縮時の反力>の項に記載の方法に従う。
【0094】
そして、本発明に係る光硬化性樹脂組成物の硬化物は、特に、高い圧縮率で圧縮した際であっても、生じる反力が小さいという利点を有する。具体的には、10%圧縮時の反力が2~250kPaであると好ましく、2~100kPaであるとより好ましく、2~50kPaであると特に好ましく、2~10kPaであると最も好ましい。また、50%圧縮時の反力が2~400kPaであると好ましく、50~400kPaであるとより好ましく、110~400kPaであると特に好ましく、120~380kPaであると最も好ましい。さらに、10%圧縮時の反力と、50%圧縮時の反力とが、共に上記範囲のいずれかの組み合わせの範囲内であると好ましい。
【0095】
(光硬化性樹脂組成物の好ましい組成)
上述の反力を生じる硬化物を得るために、本発明に係る光硬化性樹脂組成物は、以下の組成を有していると好ましい。
【0096】
すなわち、本発明に係る光硬化性樹脂組成物は、水酸基を有する単官能(メタ)アクリルモノマーを含まず、(A)成分として、中空有機樹脂フィラーを含む光硬化性樹脂組成物であって、上記(B)~(E)成分をさらに含むと好ましい。そして、このとき、上記(B)成分、(C)成分および(E)成分は、それぞれポリエーテル骨格を含む化合物であると好ましい。なお、(B)成分、(C)成分および(E)成分に含まれるポリエーテル骨格はすべて同じものであってもよいし、それぞれ異なっていてもよい。また、上記形態における上記(A)~(E)成分の好ましい含有量は、上記各成分に関する説明の項に記載の含有量の範囲がそれぞれ参照され、当該好ましい範囲をそれぞれ選択し、組み合わせることができる。
【0097】
また、上述の反力を生じる硬化物を得るために、本発明に係る光硬化性樹脂組成物は、水酸基を有する単官能(メタ)アクリルモノマーを含まず、(A)成分として、中空有機樹脂フィラーを含む光硬化性樹脂組成物であって、上記(B)~(F)成分をさらに含むと好ましい。そして、このとき、上記(B)成分、(C)成分および(F)成分は、アクリロイル基を有していると好ましい。かような構成とすることにより、(B)成分、(C)成分および(F)成分のうち、1成分以上がメタクリロイル基を有する化合物を含む場合よりも、樹脂組成物の光硬化性が良好になり、また、得られる硬化物の圧縮永久歪みが小さくなるという効果が得られる。また、上記形態における上記(A)~(F)成分の好ましい含有量は、上記各成分に関する説明の項に記載の含有量の範囲がそれぞれ参照され、当該好ましい範囲をそれぞれ選択し、組み合わせることができる。
【0098】
さらに、上述の反力を生じる硬化物を得るために、本発明に係る光硬化性樹脂組成物は、水酸基を有する単官能(メタ)アクリルモノマーを含まず、上記(A)~(G)成分からなると好ましい。なお、「上記(A)~(G)成分からなる」とは、「実質的に上記(A)~(G)成分のみからなる」ことを意味し、1質量%以下の不純物の混入が許容されうる。また、上記形態における上記(A)~(G)成分の好ましい含有量は、上記各成分に関する説明の項に記載の含有量の範囲がそれぞれ参照され、当該好ましい範囲をそれぞれ選択し、組み合わせることができる。
【0099】
さらにまた、上述の反力を生じる硬化物を得るために、本発明に係る光硬化性樹脂組成物は、水酸基を有する単官能(メタ)アクリルモノマーを含まず、(A)成分として、中空有機樹脂フィラーを含む光硬化性樹脂組成物であって、水酸基を有する化合物の含有量が、前記光硬化性樹脂組成物の総質量100質量部に対して、7.6質量部未満であると好ましい。
【0100】
<硬化物の圧縮時の反力>
本明細書中、硬化物の反力は以下の手順にて測定される。
【0101】
2枚の剥離用ポリエチレンテレフタラート製フィルムの間に光硬化性樹脂組成物を挟み込み、厚さ1mmのスペ-サを用いてフィルム状にする。次に、紫外線照射装置により積算光量が15kJ/mとなるように紫外線(波長365nm)を照射し、フィルム間の光硬化性樹脂組成物を硬化させ、その後、剥離用ポリエチレンテレフタラート製フィルムを除去したもの(すなわち、硬化物)を得る。当該硬化物から試料(厚み1mm、直径35mmの円盤)を作製する。次に、引っ張り圧縮装置(株式会社島津製作所製;型番AGX-50kNV)を用い、25℃雰囲気下で、試験圧縮速度50mm/minとし、試料厚み1mmに対して10%(すなわち、試料の厚みが0.9mmとなるように圧縮した)または50%(すなわち、試料の厚みが0.5mmとなるように圧縮した)で圧縮した際の試験片(試料)からセンサーに加わる応力(単位:kPa)を反力として計測する。試料の硬化物の反力をJIS K 7181:2011に準拠し測定する。
【0102】
本発明において、硬化物の10%圧縮時の反力は、好ましくは1~300kPaであり、より好ましくは、2~250kPaである。また、硬化物の50%圧縮時の反力は、好ましくは1~500kPaであり、より好ましくは、2~400kPaである。上記の範囲内であることで、硬化物において生じる反力が小さくなることから、本発明に係る光硬化性樹脂組成物の硬化物を電池同士の間に緩衝材として挟み込んだ際、電池パックのケース表面が変形することを効果的に抑制できる。
【0103】
[積層体]
本発明の他の態様は、上記光硬化性樹脂組成物を用いて積層されてなる積層体である。具体的には、本発明の一形態に係る積層体は、第1の被着体と、第2の被着体と、上記硬化物と、を含み、前記硬化物を介して前記第1の被着体と前記第2の被着体とが貼り合わされた構成を有する、積層体である。すなわち、本発明の一形態に係る積層体は、第1の被着体と、上記光硬化性樹脂組成物の硬化物と、第2の被着体と、がこの順に積層されてなる積層体である。
【0104】
第1の被着体および第2の被着体を構成する材料は特に制限されず、例えば、後述の[用途]の項に記載の分野において用いられる材料が適用可能である。
【0105】
積層体の製造方法は特に制限されないが、例えば、第1の被着体上に本発明に係る光硬化性樹脂組成物を塗布し、その後、塗布された樹脂組成物上に第2の被着体を重ねた後に、塗布された樹脂組成物に対して光を照射する方法が挙げられる。
【0106】
[用途]
本発明に係る光硬化性樹脂組成物は、自動車分野、電気電子部品分野、航空宇宙分野等、様々な分野で使用可能である。なかでも、広範囲の圧縮率(圧縮範囲)において低反力である硬化物を得られることから、特に好ましい用途としては、液晶ディスプレイ表示部と保護パネルとの貼り合せ用樹脂;燃料電池、センサーの封止、2次電池のセルをスタックした際のセル間の積層方向にかかる面圧を調整するための弾性硬化性樹脂(例えば、特開2009-158381号公報参照)などが挙げられる。
【0107】
本発明の実施形態を詳細に説明したが、これは説明的かつ例示的なものであって限定的ではなく、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲によって解釈されるべきであることは明らかである。
【0108】
本発明は、下記形態および態様を包含する。
【0109】
[1]硬化物の10%圧縮時の反力が1~300kPaであり、硬化物の50%圧縮時の反力が1~500kPaであり、(A)成分として、中空有機樹脂フィラーを含み、水酸基を有する単官能(メタ)アクリルモノマーを含まない。
【0110】
[2]以下の(B)~(D)成分をさらに含む、[1]に記載の光硬化性樹脂組成物;
(B)成分:単官能ウレタン(メタ)アクリレート
(C)成分:前記(B)成分以外の単官能(メタ)アクリルモノマー
(D)成分:光ラジカル重合開始剤。
【0111】
[3]前記(B)成分および前記(C)成分の合計100質量部に対して、前記(A)成分を3~70質量部含む、[2]に記載の光硬化性樹脂組成物。
【0112】
[4]前記(B)成分の重量平均分子量が、0.1万~30万である、[2]または[3]に記載の光硬化性樹脂組成物。
【0113】
[5](E)成分として、(メタ)アクリロイル基を有しない可塑剤をさらに含む、[1]~[4]のいずれかに記載の光硬化性樹脂組成物。
【0114】
[6]前記(B)成分、前記(C)成分および前記(E)成分が、それぞれポリエーテル骨格を含む化合物である、[5]に記載の光硬化性樹脂組成物。
【0115】
[7]前記(A)成分の平均粒径が5~300μmである、[1]~[6]のいずれかに記載の光硬化性樹脂組成物。
【0116】
[8]前記(A)成分の前記有機樹脂が、アクリロニトリル・メタクリロニトリル・メタクリル酸メチル共重合体からなる、[1]~[7]のいずれかに記載の光硬化性樹脂組成物。
【0117】
[9]さらに、(F)成分として、2官能以上の多官能(メタ)アクリルモノマーをさらに含む、[1]~[8]のいずれかに記載の光硬化性樹脂組成物。
【0118】
[10][1]~[9]のいずれかに記載の光硬化性樹脂組成物の硬化物。
【0119】
[11]第1の被着体と、第2の被着体と、[10]に記載の硬化物と、を含み、前記硬化物を介して前記第1の被着体と前記第2の被着体とが貼り合わされた構成を有する、積層体。
【0120】
また、本発明は、以下の態様を包含する。
【0121】
[1’]水酸基を有する単官能(メタ)アクリルモノマーを含まず、(A)成分として、中空有機樹脂フィラーを含む光硬化性樹脂組成物であって、前記光硬化性樹脂組成物の硬化物は、10%圧縮時の反力が1~300kPaであり、50%圧縮時の反力が1~500kPaである、光硬化性樹脂組成物。
【0122】
さらに、本発明は、上記[1’]の態様において、上記[2]~[11]の形態をとってもよい。
【実施例0123】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。なお、特に記載がない限り、操作・試験等は25℃、55%RHの環境下で実施した。
【0124】
<光硬化性樹脂組成物の調製>
・実施例1
以下の(A)~(G)成分を秤量し、遮光環境下、25℃にてミキサーを用いて60分間混合し、25℃で液状である光硬化性樹脂組成物を得た(実施例1);
(A)成分として、(a1)成分:平均粒径80μm、真比重0.13g/cmであり、表面に炭酸カルシウムが付着した、アクリロニトリル・メタクリロニトリル・メタクリル酸メチル共重合体からなる中空フィラー(マイクロスフィア)(日本フィライト株式会社製;EMC-80B)20質量部
(B)成分として、(b1):重量平均分子量が3万である単官能ポリエーテル系ウレタンアクリレート(根上工業株式会社製)80質量部
(C)成分として、(c1):エトキシジエチレングリコールモノアクリレート(東洋ケミカルズ株式会社製;Miramer(登録商標) M170;分子量188)35質量部
(D)成分として、(d1):2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン(DOUBLE BOND CHEMICAL IND.CO.,LTD.製;ダブルキュア(登録商標)173)3質量部
(E)成分として、(e1):数平均分子量2000であり、アルキレンオキサイドの繰り返し数が34であるポリプロピレングリコール(日油株式会社製;ユニオール(登録商標)D2000)44質量部
(F)成分として、(f1):ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(ダイセル・オルネクス株式会社製;DPHA;分子量579)1.6質量部
(G)成分として、(g1)成分:ジメチルシリコーンで表面処理されたシリカ粒子(フュームドシリカ)7質量部。
【0125】
・実施例2
実施例1において、(a1)成分の含有量を20質量部から25質量部に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、25℃で液状である光硬化性樹脂組成物を得た(実施例2)。
【0126】
・実施例3
実施例2において、(a1)成分の代わりに、(a2)成分:平均粒径120μm、真比重0.10g/cmであり、表面に炭酸カルシウムが付着した、アクリロニトリル・メタクリロニトリル・メタクリル酸メチル共重合体からなる中空フィラー(マイクロスフィア)(日本フィライト株式会社製;120α)を添加したこと以外は、実施例2と同様にして調製し、25℃で液状である光硬化性樹脂組成物を得た(実施例3)。
【0127】
・実施例4
実施例3において、(b1)成分80質量部の代わりに、(b2)成分:重量平均分子量が2万である単官能ポリエーテル系ウレタンアクリレート(根上工業株式会社製)70質量部に変更し、(e1)成分の含有量を44質量部から60質量部に変更したこと以外は、実施例3と同様にして、25℃で液状である光硬化性樹脂組成物を得た(実施例4)。
【0128】
・実施例5
実施例4において、(f1)成分の含有量を1.6質量部から3.2質量部に変更したこと以外は、実施例4と同様にして、25℃で液状である光硬化性樹脂組成物を得た(実施例5)。
【0129】
・比較例1
実施例1において、(a1)成分を添加しなかったこと以外は、実施例1と同様にして、25℃で液状である光硬化性樹脂組成物を得た(比較例1)。
【0130】
・比較例2
実施例1において、(a1)成分の代わりに、(a’1)成分:平均粒径65μm、真比重0.13g/cmであるガラス製中空フィラー(3M製;グラスバブルズK1)に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、25℃で液状である光硬化性樹脂組成物を得た(比較例2)。
【0131】
・比較例3
実施例4において、(c1)成分の代わりに、2-ヒドロキシエチルアクリレート(大阪有機化学工業製)(c’1)に変更したこと以外は、実施例4と同様にして、25℃で液状である光硬化性樹脂組成物を得た(比較例3)。
【0132】
・比較例4
実施例4において、(c1)成分の含有量を35質量部から15質量部に変更し、さらに、(c’1)成分を15質量部含むことに変更したこと以外は、実施例4と同様にして、25℃で液状である光硬化性樹脂組成物を得た(比較例4)。
【0133】
以下の表1に、各実施例および比較例に係る光硬化性樹脂組成物の含有成分および含有量をそれぞれ示す。なお、空欄は、該当成分が添加されていないことを示している。
【0134】
上記各実施例および比較例に係る光硬化性樹脂組成物について、以下の試験(1)および(2)を行った。試験(1)および(2)の試験方法は、下記の通りである。
【0135】
<試験(1):硬化物の圧縮時の反力>
2枚の剥離用ポリエチレンテレフタラート製フィルムの間に各光硬化性樹脂組成物を挟み込み、厚さ1mmのスペ-サを用いてフィルム状にした。次に、紫外線照射装置により積算光量が15kJ/mとなるように紫外線(波長365nm)を照射し、フィルム間の光硬化性樹脂組成物を硬化させ、その後、剥離用ポリエチレンテレフタラート製フィルムを除去したもの(すなわち、硬化物)を得た。当該硬化物から厚み1mm、直径35mmの円盤を切り出し、これを試料とした。次に、圧縮装置(株式会社島津製作所製;型番AGX-50kNV)を用い、25℃雰囲気下で、試験圧縮速度50mm/minとし、試料厚み1mmに対して10%(すなわち、試料の厚みが0.9mmとなるように圧縮した)または50%(すなわち、試料の厚みが0.5mmとなるように圧縮した)で圧縮した際にセンサーに加わる反力(単位:kPa)を計測した。各試料の硬化物の反力をJIS K 7181:2011に準拠し測定した。得られた結果を表1に示す。なお、表中の「未硬化」とは、紫外線を照射しても、液状のままであったことを意味する。
【0136】
<試験(2):光硬化性試験>
幅25mm×長さ100mm×厚さ5mmのガラス製テストピース上に、各光硬化性樹脂組成物を0.01g滴下した。その後、紫外線照射機(コンベアUV照射装置;光源LED;UV波長365nm;ピーク照度650mW/cm)により積算光量1.5kJ/mの活性エネルギー線を照射し試験片を得た。次に、先端が尖ったガラス製棒で試験片に接触し、各光硬化性樹脂組成物の硬化性を下記基準に基づき評価した;
[評価基準]
○:棒に付着物がない
×:棒に付着物がある。
【0137】
【表1】
【0138】
表1によって示される通り、実施例1~5に係る光硬化性樹脂組成物によれば、光硬化により速やかに硬化物が得られ、かつ、広範囲の圧縮率(圧縮範囲)において低反力である硬化物が得られることが確認できた。
【0139】
一方、比較例1は、本発明における(A)成分を含まない光硬化性樹脂組成物であるが、硬化物の50%圧縮時の反力が高くなりすぎるという結果が得られた。また、比較例2は、本発明における(A)成分の代わりにガラス製中空フィラーである(a’1)成分を含む光硬化性樹脂組成物であるが、硬化物の50%圧縮時の反力が高くなりすぎるという結果が得られた。さらに、比較例3および4は、水酸基を有する単官能アクリルモノマーである(c’1)成分を含む光硬化性樹脂組成物であるが、光硬化性が著しく劣るという結果が得られた。
【産業上の利用可能性】
【0140】
本発明に係る光硬化性樹脂組成物は、広範囲の圧縮率(圧縮範囲)において低反力である硬化物を与えるため、様々な分野で使用することが可能であり、産業上有用である。また、本発明に係る光硬化性樹脂組成物は、光硬化により速やかに硬化物を与えるだけでなく、硬化前は液状(液体)であるため、硬化物を得る際、面塗布やスクリーン印刷などを選択することができ、生産性の向上に寄与することができる。
【0141】
本出願は、2020年11月10日に出願された日本特許出願番号2020-187535号に基づいており、その開示内容は、参照され、全体として、組み入れられている。