(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022076994
(43)【公開日】2022-05-20
(54)【発明の名称】セラミック電子部品
(51)【国際特許分類】
H01G 4/228 20060101AFI20220513BHJP
H01G 4/236 20060101ALI20220513BHJP
H01G 4/30 20060101ALI20220513BHJP
【FI】
H01G4/228 F
H01G4/228 W
H01G4/236
H01G4/30 513
H01G4/30 201H
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021165075
(22)【出願日】2021-10-06
(31)【優先権主張番号】202011244620.1
(32)【優先日】2020-11-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】513144855
【氏名又は名称】厦門ティーディーケイ有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110001494
【氏名又は名称】前田・鈴木国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】森 雅弘
(72)【発明者】
【氏名】増田 朗丈
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 信弥
(72)【発明者】
【氏名】安藤 ▲徳▼久
【テーマコード(参考)】
5E001
5E082
【Fターム(参考)】
5E001AB03
5E001AF02
5E001AJ03
5E082AB03
5E082BC31
5E082GG08
5E082HH25
5E082HH47
(57)【要約】
【課題】セラミック素体に生じるクラックを低減したセラミック電子部品を提供すること。
【解決手段】第1軸に沿う端面と、端面に交わり第2軸に沿う側面とを有するセラミック素体と、セラミック素体の端面に形成してある端面電極と、ハンダにより端面電極に接合してあるリード端子と、を有するセラミック電子部品である。リード端子は、第2軸に沿う方向からの側面視において端面電極と重複する隣接部と、隣接部の端部から側面を含む面から離反する方向へ向かって延びる延出部と、を有する。そして、延出部には、端面を含む面から離反する方向に凹む第1凹部が形成してあり、当該第1凹部が、隣接部の端部と近接する位置に存在している。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1軸に沿う端面と、前記端面に交わり第2軸に沿う側面とを有するセラミック素体と、
前記セラミック素体の前記端面に形成してある端面電極と、
ハンダにより前記端面電極に接合してあるリード端子と、を有し、
前記リード端子は、
前記第2軸に沿う方向からの側面視において、前記端面電極と重複する隣接部と、
前記隣接部の端部から、前記側面を含む面から離反する方向へ向かって延びる延出部と、を有し、
前記延出部には、前記端面を含む面から離反する方向に凹む第1凹部が形成してあり、
前記第1凹部が、前記隣接部の前記端部と近接する位置に存在する、セラミック電子部品。
【請求項2】
前記第1軸および前記第2軸と垂直な軸を第3軸として、
前記第1凹部は、前記第3軸の方向において、閉塞されずに開放してある請求項1に記載のセラミック電子部品。
【請求項3】
前記第2軸方向において、前記隣接部の最大幅をWx1とし、前記第1凹部の最深部における前記延出部の最大幅をWx2として、
Wx2/Wx1が、0.4~0.8である、請求項1または2に記載のセラミック電子部品。
【請求項4】
前記セラミック素体の前記第1軸方向の高さをL0とし、
前記第1凹部の前記第1軸方向の下端から前記側面を含む面までの垂線距離をL1として、L1/L0が0.3以上である請求項1~3のいずれかに記載のセラミック電子部品。
【請求項5】
前記第1凹部の一部が、前記第1軸方向において、前記延出部の上端から前記隣接部の一部に跨って存在しており、
前記第1凹部の上端が、前記側面よりも前記第1軸方向の上方に位置する請求項1~4のいずれかに記載のセラミック電子部品。
【請求項6】
前記第1凹部の一部が、前記第1軸方向において、前記延出部の上端から前記隣接部の一部に跨って存在しており、
前記第1凹部の上端が、前記側面よりも前記第1軸方向の上方に位置しており、
前記セラミック素体の前記第1軸方向の高さをL0とし、
前記第1凹部の前記第1軸方向の下端から前記側面を含む面までの垂線距離をL1とし、
前記第1凹部の前記第1軸方向の上端から前記側面を含む面までの垂線距離をL2として、
L1とL2の関係が、L1>L2である請求項1~4のいずれかに記載のセラミック電子部品。
【請求項7】
L1/L2が、1.2~4.0である請求項6に記載のセラミック電子部品。
【請求項8】
前記第1凹部の前記第1軸方向の上端から前記側面を含む面までの垂線距離L2が、L0の0.2倍以下である請求項6または7に記載のセラミック電子部品。
【請求項9】
前記隣接部には、前記端面電極と向き合う対向面が存在し、
前記対向面には、前記端面電極から離反する方向に凹む第2凹部が形成してある請求項1~8のいずれかに記載のセラミック電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リード端子付きのセラミック電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
回路基板などに実装される電子部品として、特許文献1に示すような、リード端子付きのセラミック電子部品が知られている。このセラミック電子部品においては、端子電極が形成してあるセラミック素体に、ハンダを用いて、リード端子を接合することが一般的である。具体的に、リード端子のハンダ付けは、特許文献1で開示されているように、セラミック素体を一対のリード端子で挟持し、その状態でハンダ浴に浸漬(ディッピング)することで行う。
【0003】
この際、リード端子と端子電極との間には、ハンダが濡れ広がることによりフィレットが形成される。このフィレットと接触しているセラミック素体の端部においては、ハンダの凝固時に収縮応力が発生することなどにより、素体内部にクラックが生じやすい。素体内部にクラックが存在すると、耐湿性や機械的強度などの電子部品としての特性が劣化するため、問題である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記の実情を鑑みてなされ、その目的は、セラミック素体に生じるクラックを低減したセラミック電子部品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係るセラミック電子部品は、
第1軸(Z軸)に沿う端面と、前記端面に交わり第2軸(X軸)に沿う側面とを有するセラミック素体と、
前記セラミック素体の前記端面に形成してある端面電極と、
ハンダにより前記端面電極に接合してあるリード端子と、を有し、
前記リード端子は、
前記第2軸に沿う方向からの側面視において、前記端面電極と重複する隣接部と、
前記隣接部の端部から、前記側面を含む面から離反する方向に向かって延びる延出部と、を有し、
前記延出部には、前記端面を含む面から離反する方向に凹む第1凹部が形成してあり、
前記第1凹部が、前記隣接部の前記端部と近接する位置に存在する。
【0007】
ディッピングによりリード端子をハンダ付けした場合、セラミック素体の側面とリード端子との交差角の内側にハンダフィレットが形成され、当該ハンダフィレットが、セラミック素体のクラック発生に影響を及ぼす。本発明のセラミック電子部品では、延出部の所定位置に第1凹部が形成してあることで、ハンダ付けの際に、ハンダフィレットの形成箇所に滞留する溶融ハンダが、第1凹部側に引き寄せられる。その結果、素体側面に対するハンダフィレットの角度が小さくなり、セラミック素体の内部にクラックが発生することを抑制できる。
【0008】
好ましくは、前記第1凹部は、第3軸(Y軸)の方向において、閉塞されずに開放してある。なお、第3軸は、前記第1軸および前記第2軸と実質的に垂直な軸である。
第1凹部が上記の特徴を有することで、ハンダフィレットの形成箇所に滞留する溶融ハンダが、第1凹部側に引き寄せられやすくなり、ハンダフィレットの角度がより小さくなる。また、第1凹部が第3軸方向において閉塞されずに開放していることで、ハンダによる接合領域に発生する応力を低減することができる。その結果、セラミック素体の内部に生じるクラックをより好適に抑制することができる。
【0009】
前記第2軸方向において、前記隣接部の最大幅をWx1とし、前記第1凹部の最深部における前記延出部の最大幅をWx2とする。この場合、好ましくは、Wx2/Wx1が、0.4~0.8である。
第1凹部の内側には、ハンダフィレット側から引き寄せられた溶融ハンダが充填されて、ハンダ溜りが形成される。Wx2/Wx1が上記の条件を満足する場合、ハンダ溜りの容積を十分に確保することができ、ハンダフィレット側から溶融ハンダが引き寄せられやすくなる。その結果、ハンダフィレットの角度がより小さくなり、セラミック素体の内部に生じるクラックをより好適に抑制することができる。
【0010】
前記セラミック素体の前記第1軸方向の高さをL0とし、前記第1凹部の前記第1軸方向の下端から前記側面を含む面までの垂線距離をL1とすると、好ましくは、L1/L0が、0.3以上であり、より好ましくは0.3~0.7であり、さらに好ましくは0.4~0.6である。
第1凹部の下端位置を上記の条件に従って設定することで、ハンダフィレット側の溶融ハンダが、第1凹部側に引き寄せられやすくなり、ハンダフィレットの角度がより小さくなる。その結果、セラミック素体の内部に生じるクラックをより好適に抑制することができる。
【0011】
好ましくは、前記第1凹部の一部が、前記第1軸方向において、前記延出部の上端から前記隣接部の一部に跨って存在しており、前記第1凹部の上端が、前記側面よりも前記第1軸方向の上方に位置する。
第1凹部の第1軸方向の上端は、隣接部と延出部との境界に位置していてもよいが、第1凹部の上端が、セラミック素体の側面よりも第1軸方向の上方に位置することで、ハンダフィレット側の溶融ハンダが、第1凹部側に引き寄せられやすくなる。その結果、ハンダフィレットの角度がより小さくなり、セラミック素体の内部に生じるクラックをより好適に抑制することができる。また、端面電極に対するリード端子の接合強度が向上する。
【0012】
さらに、前記第1凹部の前記第1軸方向の下端から前記側面を含む面までの垂線距離をL1とし、前記第1凹部の前記第1軸方向の上端から前記側面を含む面までの垂線距離をL2とすると、好ましくは、L1とL2の関係が、L1>L2であり、より好ましくは、L1/L2が1.2~4.0である。
第1軸方向において、第1凹部の上端がセラミック素体の側面よりも上方に位置する場合、第1凹部の内側に形成されるハンダ溜りは、延出部から隣接部に跨って存在する。このような場合において、L1とL2の関係をL1>L2とすると、延出部におけるハンダ溜りの容積が、隣接部におけるハンダ溜りの容積よりも大きくなる。その結果、ハンダフィレットの角度がより小さくなり、セラミック素体の内部に生じるクラックをより好適に抑制することができる。
【0013】
また、好ましくは、前記第1凹部の前記第1軸方向の上端から前記側面を含む面までの垂線距離L2が、L0の0.2倍以下である。
第1凹部の上端位置を上記の条件に従って設定することで、ハンダフィレット側の溶融ハンダが、第1凹部側に引き寄せられやすくなり、ハンダフィレットの角度がより小さくなる。その結果、セラミック素体の内部に生じるクラックをより好適に抑制することができる。
【0014】
また、前記隣接部には、前記端面電極と向き合う対向面が存在する。そして、前記対向面には、前記端面電極から離反する方向に凹む第2凹部が形成してあってもよい。対向面にも凹部が存在することで、端面電極に対するリード端子の接合強度が向上する傾向となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係るセラミック電子部品を示す簡略斜視図である。
【
図4】
図4は、本発明の一実施形態におけるリード端子の先端形状を示す、概略斜視図である。
【
図5】
図5は、リード端子の先端形状の変形例を示す、概略斜視図である。
【
図6】
図6は、従来のリード端子の先端形状を示す、概略斜視図である。
【
図7】
図7は、
図6に示すリード端子を使用したセラミック電子部品の要部拡大断面図である。
【
図8】
図8は、参考例で使用したリード端子の先端形状を示す、概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を図面に示す実施形態に基づき説明するが、本発明は下記の実施形態に限定されない。
【0017】
図1および
図2に示すように、本発明の一実施形態に係るリード端子付きセラミック電子部品2は、セラミック素体4と、一対のリード端子8とを有する。本実施形態では、セラミック電子部品の一例として、セラミック素体4が、積層セラミックコンデンサで構成してある場合について説明する。
【0018】
図2に示すように、セラミック素体4の全体と、リード端子8の一部とは、二点鎖線で示す外装20で覆われている。外装20の被覆範囲は、特に限定されないが、少なくとも、セラミック素体4の全体と、セラミック素体4とリード端子8との接合部分(すなわち後述するハンダ10が存在する箇所)とを覆っていればよい。外装20の材質は、絶縁性を有していればよく、特に制限されないが、ハロゲンフリーの絶縁樹脂であることが好ましく、たとえば、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂が例示される。
【0019】
図1および
図2示すセラミック素体4は、X軸方向で対向する2つの端面4aと、2つの端面4aを連結する4つの側面4bとを有する。本実施形態では、4つの側面4bのうち、X軸に沿う面で、かつ、Z軸方向の下方に位置する面を底面4b1と記す。また、底面4b1に対向する側面を上面4b2と記す。セラミック素体4の寸法は、特に限定されず、目的や用途に応じて適宜決定すればよい。たとえば、セラミック素体4の寸法は、X軸方向の長さを0.6~6.5 mm、Y軸方向の幅を0.3~5.0mm、Z軸方向の高さ(
図2Aに示すL0)を0.2~3.5mmとすることができる。
【0020】
なお、各図面において、X軸とY軸とZ軸とは、相互に実質的に垂直であり、端面4aがZ軸に実質的に平行であり、底面4b1がX軸に実質的に平行である。本実施形態において、「実質的に平行(もしくは垂直)」とは、ほとんどの部分が平行(または垂直)であるが、多少平行(または垂直)でない部分を有していてもよいことを意味する。例えば、端面4aや底面4b1に、多少、凹凸があったり、傾いていたりしてもよいという趣旨である。また、本実施形態において、「上,下」の概念は、基板への実装状態を基準として定義する。つまり、実装状態において、セラミック素体が位置する側を「上方側(Z軸上方)」とし、セラミック素体から延出して基板に接続されるリード端子の末端側を「下方側(Z軸下方)」とする。
【0021】
セラミック素体4の内部には、内部電極層16,18が、セラミック層14を介して交互に積層してある。内部電極層16は、セラミック素体4のX軸方向の一方の端面4aに露出しており、内部電極層18は、セラミック素体4の他方の端面4aに露出している。
【0022】
また、セラミック素体4のX軸方向の両端には、一対の端子電極6が形成してある。より具体的に、端子電極6は、セラミック素体4の端面4aから側面4bの一部に回り込んで形成してあり、端面4aを覆う端面電極6aと、端面電極6aから連続して側面4bの一部を覆う側面電極6bとを有する。内部電極16,18は、露出した端面4aにおいて、それぞれ、端面電極6aに電気的に接続してある。なお、一対の端子電極6は、互いに絶縁してあり、一対の端子電極6と、内部電極層16,18とで、コンデンサ回路を形成している。
【0023】
本実施形態において、セラミック層14は、誘電体組成物で構成してある。使用する誘電体組成物としては、特に限定されず、公知の材質を用いればよい。たとえば、チタン酸バリウム(BaTiO3)、チタン酸カルシウム(CaTiO3)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO3)、ジルコン酸カルシウム(CaZrO3)、ニオブ酸カリウム(KNbO3)などを主成分として用いることができる。また、これら主成分の他に、希土類の酸化物、アルカリ土類金属の酸化物、遷移金属の酸化物、酸化マグネシウムなどを副成分として添加してもよい。なお、セラミック層14の厚み、および積層数も、特に限定されず、一般的な厚みおよび積層数とすることができる。
【0024】
内部電極層16,18は、導電性金属を主成分として含有する。使用する導電性金属は、特に限定されず、公知の材質を用いればよい。たとえば、ニッケル、銅、銀、金、パラジウム、または、これら金属元素のうち少なくとも1種を含む合金などが例示される。内部電極層16,18の厚みも、特に限定されず、一般的な厚みを採用できる。また、内部電極層16,18の積層数は、セラミック層14の積層数に応じて決定される。
【0025】
端子電極6についても、導電性金属を主成分として含有していればよく、材質は特に限定されない。端子電極6の主成分としては、通常、銅や銅合金、ニッケルやニッケル合金などが用いられるが、銀や銀とパラジウムの合金なども使用することができる。端子電極6には、導電性金属の他に、ガラスフリットや樹脂が含まれていてもよい。端子電極6の厚みは、特に限定されず、通常、10~50μm程度である。なお、端子電極6の表面には、ニッケル、銅、錫などから選ばれる少なくとも1種のメッキ層が形成してあってもよい。この場合、メッキ層の1層当たりの厚みは、1~10μmであることが好ましく、メッキ層は多層構造であってもよい。例えば、端子電極6は、Cu焼結電極層/Niメッキ層/Snメッキ層の複数層構造とすることができる。
【0026】
本実施形態では、
図2に示すように、一対のリード端子8が、セラミック素体4の2つの端面4aに対応して設けられている。各リード端子8は、Z軸方向に沿って延在しており、それぞれ、隣接部8aと、延出部8eとを有する。本実施形態において、リード端子8の各部位は、導電性線材を加工することで、一体的に形成してある。ただし、リード端子8は、導電性の金属板を加工して形成してもよい。
【0027】
リード端子8を構成する導電性線材としては、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、鉄(Fe)、銀(Ag)などを含む金属線を用いることができる。特に、リード端子8は、銅を含むことが好ましい。より具体的には、芯材が純銅、もしくは銅を主成分として含む銅合金である銅系の金属線(以下、Cu線と呼ぶ)を用いることが好ましい。もしくは、表面に銅の被覆層を形成した銅被覆鋼線(以下、CP線と呼ぶ)を用いることが好ましい。CP線の場合、芯材は、純鉄、もしくは鉄を主成分として含む鉄合金である。また、CP線を用いる場合、芯材の表面に形成してある銅被覆層の厚みは、5μm~10μmであることが好ましい。
【0028】
なお、リード端子8を構成する導電性線材の線径は、セラミック素体4の寸法に応じて適宜決定される。たとえば、0.5mm~1.0mmの線径とすることができ、好ましくは、0.5mm~0.6mmである。
【0029】
次に、リード端子8の各部位の特徴について、詳細を説明する。なお、以降の説明では、一対のリード端子8のうちの片方について例示するが、他方のリード端子8も同様の特徴を有する。
【0030】
図2に示すように、リード端子8の先端側(Z軸上方側)は、セラミック素体4に隣接する隣接部8aとなっている。具体的に、隣接部8aは、X軸に沿う方向からの側面視において、端面電極6aと重複する部位であり、隣接部8aは、ハンダ10を介して端面電極6aに接合してある。
【0031】
この隣接部8aは、導電性線材の先端側のみを潰し加工することで形成してあり、全体として、半円柱に似た形状を有する。より具体的に、
図2および
図4に示すように、隣接部8aの下方側には、後述する第1凹部9の一部が存在し、隣接部8aの上方側が半円柱状となっている。そして、隣接部8aの半円柱状の箇所には、潰し加工により、対向面8aaが形成してある。この対向面8aaは、Y軸およびZ軸に実質的に平行であり、端面電極6aと向き合っている。
【0032】
本実施形態において、隣接部8aのX軸方向における最大幅Wx1は、潰し加工が施されていない延出部8eのX軸方向における最大幅Wx3よりも小さくなっている。より具体的に、最大幅W3に対する最大幅W1の比(Wx1/Wx3)は、1/2~7/10とすることが好ましい。Wx1/Wx3を上記の範囲内とすることで、リード端子8の弾性力を十分に確保することができる。なお、X軸方向における延出部8eの最大幅Wx3とは、導電性線材の直径と同義である。
【0033】
また、対向面8aaのY軸方向の幅Wy1は、セラミック素体4のY軸方向の幅に対して、0.7倍~1.1倍程度の範囲であることが好ましい。さらに、対向面8aaのZ軸方向の長さL4は、セラミック素体4のZ軸方向の高さL0と同程度か、L0よりも長くても短くてもよく、たとえば、L0に対して0.6倍~0.9倍の範囲とすることができる。隣接部8aに存在する対向面8aaの寸法を上記の範囲に設定することで、一対のリード端子8でセラミック素体4をしっかりと挟持することができるとともに、端子電極6とリード端子8との接合強度が向上する傾向となる。
【0034】
図3に示すように、対向面8aaと端面電極6bとの間には、ハンダ10が介在する隙間86が存在する。この隙間86は、セラミック素体4の内部電極層16(18)と近接しているため、隙間86ではハンダ10の介在量が適正な範囲に制御されていることが好ましい。具体的に、隙間86のX軸方向の幅Wx4は、100μm以下であることが好ましく、30μm以下であることがより好ましい。隙間86の幅が上記の条件を満たすことで、ハンダ接合部の電気抵抗を小さくすることができると共に、セラミック電子部品2の放熱性が良好となる。
【0035】
リード端子8の延出部8eは、隣接部8aの下端から、底面4b1を含む面から離反する方向へ延びている。ここで、「底面4b1を含む面」とは、底面4b1をX軸およびY軸に沿って延長した仮想面を意味し、「底面4b1を含む面から離反する方向」には、当該仮想面の垂線方向(すなわちZ軸方向)が含まれ、垂線方向よりも傾いて実装基板(図示せず)へ向かう方向も含まれる。
【0036】
また、延出部8eは、
図2に示すように、上方側支持部8eaと,下方側支持部8ebと、脚部8ecとで構成されており、延出部8eにおける各部位は、一体的に連続している。上方側支持部8eaは、隣接部8aの下端からZ軸方向の下方に向けて、Z軸に略平行に伸びている。一方、下方側支持部8ebは、上方側支持部8eaの下端から連続して存在しており、一対のリード端子8がX軸方向で離間する方向へ折れ曲がっている。この上方側支持部8ea,下方側支持部8ebは、基板実装後の状態で、電子部品本体を基板上で支持する役割を担う。さらに、下方側支持部8ebは、セラミック電子部品2の基板実装時に、立付け高さを規制するキンクとして作用する。
【0037】
脚部8ecは、下方側支持部8ebのZ軸方向の下端側に一体的に形成してあり、Z軸と略平行に、直線状に延びている。脚部8ecは、プリント基板やフレキシブル基板などの実装基板に接続され、実装部を構成する。セラミック電子部品2の基板への実装方法は、特に限定されないが、たとえば、ハンダや溶接、カシメなどの実装技術を適用できる。
【0038】
なお、延出部8eでは、後述する第1凹部9が形成してある箇所を除いて、潰し加工が施されておらず、延出部8eのX-Y断面の形状は、円形状となっている。また、延出部8eのZ軸方向の長さは、特に限定されない。たとえば、上方側支持部8eaおよび下方側支持部8ebの長さは、基板実装後の立て付け高さを考慮して適宜決定すればよい。
【0039】
本実施形態のセラミック電子部品2では、
図2および
図3に示すように、リード端子8の一部に、第1凹部9が形成してある。この第1凹部9は、端面4aを含む面から離反する方向に凹んでおり、第1凹部9の内側は、ハンダ10が充填されてハンダ溜りとなっている。なお、「端面4aを含む面」とは、端面4aをY軸およびZ軸に沿って延長した仮想面であり、
図3では符号YZで示してある。そして、「端面4aを含む面から離反する方向に凹む」とは、リード端子8のX軸方向の幅が小さくなる方向に凹むことを意味し、第1凹部9の形成箇所におけるリード端子8の幅は、隣接部8aの幅よりも小さくなっている。
【0040】
また、第1凹部9は、ハンダフィレット10aの形成位置を考慮した位置に形成してある。具体的に、第1凹部9は、延出部8eにおいて、隣接部8aの下端と近接する位置に形成してあり、延出部8eのZ軸方向における最上部に存在する。このような位置に第1凹部9を形成した場合、第1凹部9は、X軸方向において、ハンダフィレット10aの側方に位置し、第1凹部9の壁面9aがハンダフィレット10aに向かい合うこととなる。
【0041】
ここで、ハンダフィレット10aとは、リード端子8と端面電極6aとの間から、余剰なハンダ10がはみ出して、滞留した部分を意味する。リード端子8をディッピングによりセラミック素体4にハンダ付けした場合、ハンダフィレット10aは、側面電極6bの外側(Z軸下方)で、端面4aを含む面YZと底面4b1とで区切られた空間に形成される(
図3参照)。
【0042】
ディッピングにより製造する従来のセラミック電子部品では、ハンダフィレットの近傍で収縮応力が発生し、セラミック素体の内部にクラックが発生し易い。また、ハンダが滞留しているハンダフィレットでは、ハンダの凝固に伴い、歪みが蓄積される。そのため、ハンダ凝固後においても、リード端子に外力が加わると、セラミック素体の内部(特にハンダフィレットの近傍)にクラックが発生し易い。特に、ハンダフィレットの容積が大きく、セラミック素体に対するハンダフィレットの接触角度が大きくなると(鈍角になると)、クラックがより発生し易くなる。
【0043】
本実施形態では、前述した所定位置に第1凹部9が形成してあることで、リード端子8のハンダ付け時に、側面電極6bの外側に滞留する溶融ハンダが、第1凹部9側に引き寄せられる。その結果、側面電極6bのZ軸下方にはハンダが滞留し難くなり、セラミック素体4に対するハンダフィレット10aの接触角度θが、少なくとも40度未満、好ましくは35度未満と小さくなる。そして、接触角度θが小さくなることで、ハンダフィレット10aがセラミック素体4に及ぼす応力が小さくなり、セラミック素体4の内部にクラックが発生することを抑制できる。つまり、本実施形態のセラミック電子部品2では、第1凹部9による接触角度θの低減効果により、セラミック素体4の内部にクラックが発生することを抑制できると考えられる。
【0044】
なお、ハンダフィレット10aの接触角度θとは、X軸方向におけるハンダフィレット10aの先端部10aaにおいて、セラミック素体4の底面4b1と、ハンダフィレット10aの外縁10abとがなす角の角度を意味する。この接触角度θは、SEMもしくは光学顕微鏡により
図3に示すX-Z断面の断面写真を撮影し、その断面写真を画像解析することで測定することができる。この際、観察用の試料は、X-Z断面が、リード端子8のY軸方向の略中央位置となるように、セラミック電子部品2を切断し、鏡面研磨することで得る。
【0045】
上記のとおり、本実施形態では、第1凹部9により素体内部にクラックが発生することを抑制できるが、第1凹部9の形態や寸法を最適化することで、当該クラック抑制効果をさらに高めることができる。以下、第1凹部9の最適な様態について説明する。
【0046】
まず、
図1および
図4に示すように、第1凹部9は、Y軸方向に沿って延在しており、Y軸の方向において、閉塞されずに開放してあることが好ましい。この場合、第1凹部9のY軸方向における開放部分は、底面4b1を含む面XYよりもZ軸下方に位置する。第1凹部9が上記の特徴を有していることで、ハンダ付けの際に、余剰な溶融ハンダがリード端子8の外側に流れ出し易くなり、第1凹部9側に溶融ハンダが引き寄せられ易くなる。その結果、ハンダフィレット10aの接触角度θがより小さく(鋭角に)なり、クラック抑制効果をより高めることができる。また、第1凹部9がY軸方向において閉塞されていないことで、第1凹部9の内側に存在するハンダ溜りでは、ハンダ10の凝固に伴い発生する歪が蓄積され難くなると考えられる。Y軸方向の開放部分からリード端子8の外側に向かって、歪が分散するためである。上記のようにハンダ溜りの歪が低減された結果、第1凹部9によるクラック抑制効果がより向上する。
【0047】
また、第1凹部9の最深部における延出部8eのX軸方向の最大幅をWx2とすると、隣接部8aの最大幅Wx1に対する最大幅Wx2の比(Wx2/Wx1)は、0.4~0.8であることが好ましい(
図3参照)。Wx2/Wx1を上記の範囲内に設定することで、第1凹部9のX軸方向における深さが、十分に深くなり、第1凹部9によるハンダ溜りの容積を十分に確保することができる。そして、ハンダフィレット10aの形成箇所に滞留する溶融ハンダが第1凹部9側に引き寄せられやすくなり、ハンダフィレット10aの接触角度θをより小さくすることができる。なお、
図2および
図3に示すように、第1凹部9の壁面9aは、円弧状に湾曲していることが好ましい。壁面9aに直角の角部が存在するよりも、壁面9aがなだらかに湾曲していることで、第1凹部9の内側にハンダ10が充填されやすくなり、ハンダフィレット10aの接触角度θをより小さくすることができる。
【0048】
また、本実施形態では、Z軸方向における第1凹部9の下端9bおよび上端9cが、所定の位置に存在することが好ましい。ここで、第1凹部9の下端9bとは、潰し加工の端縁であり、下端9bよりもZ軸方向の下方には、円形の断面形状を有する上方側支持部8eaがZ軸と略平行に延在している。一方、第1凹部9の上端9cとは、第1凹部9と対向面8aaとの境界縁であり、X軸と略平行に延在している。以下、下端9bおよび上端9cの好ましい様態について、詳述する。
【0049】
第1凹部9の下端9bの位置は、以下の条件を満足することが好ましい。第1凹部9のZ軸方向の下端9bから、底面4b1を含む面XYまでの垂線距離をL1とすると、セラミック素体4の高さL0に対する垂線距離L1の比(L1/L0)は、0.3以上であることが好ましく、0.3~0.7であることがより好ましく、0.4~0.6であることがさらに好ましい。L1/L0を上記の範囲内に設定することで、第1凹部9のX軸方向における開口面を、ハンダフィレット10aの形成箇所に対して十分に広くとることができる。そのため、ハンダフィレット10aの形成箇所に滞留する溶融ハンダが第1凹部9側に引き寄せられやすくなり、接触角度θをより小さくすることができる。
【0050】
また、第1凹部9の下端9bは、Z軸方向において、ハンダフィレット10aの下端10acと一致していることが好ましい。このような条件を満たすことで、溶融ハンダが第1凹部9側に引き寄せられやすくなり、接触角度θをより小さくすることができる。
【0051】
なお、前述したいように、第1凹部9の下端9bは、潰し加工の端縁となっているため、下端9bにおける延出部8eのX軸方向の最大幅は、リード端子を構成する導電性線材の直径と同程度(すなわち、Wx3と同程度)となっている。そのため、第1凹部9の下端9bは、端面4aを含む面YZよりもX軸方向の内側に存在している。
【0052】
一方、第1凹部9の上端9cは、Z軸方向において、隣接部8aと延出部8eとの境界に位置していてもよいし、底面4b1よりもZ軸下方に位置していてもよい。ただし、
図3に示すように、第1凹部9の一部が、Z軸方向において、延出部8eの上端から隣接部8aの一部に跨って存在していることが好ましい。この場合、第1凹部9の上端9cは、底面4b1を含む面XYよりもZ軸方向の上方に位置する。リード端子8をディッピングによりハンダ付けする際、リード端子8の隣接部8a側を、重力方向の下方に向けてハンダ浴に浸漬させる。第1凹部9の上端9cが底面4b1よりもZ軸上方に位置する場合、ディッピング時において、ハンダフィレット10aの形成箇所より重量方向の下方にも、第1凹部9によるハンダ溜りが形成されることとなる。そのため、ハンダフィレット10aの形成箇所に滞留する溶融ハンダが第1凹部9側に引き寄せられやすくなる。
【0053】
また、第1凹部9の上端9cが底面4b1よりもZ軸上方に位置する場合、端面電極6aと側面電極6bとの交差角6abは、第1凹部9によるハンダ溜まりに覆われた状態となる。つまり、第1第1凹部9の内側に形成されるハンダ溜りは、延出部8eの上端から隣接部8aの一部に跨って存在する。隣接部8aの下端側にも、第1凹部9によるハンダ溜りが存在することで、セラミック素体4に対するリード端子8の接合強度が向上する。
【0054】
また、上端9cから底面4b1を含む面XYまでの垂線距離をL2とすると、L1とL2の関係性は、L1>L2であることが好ましい。さらに、L2に対するL1の比(L1/L2)は、1.2~4.0であることが好ましく、1.5~2.0であることがより好ましい。上記の条件を満たす場合、延出部8eにおけるハンダ溜りの容積が、隣接部8aにおけるハンダ溜りの容積よりも大きくなる。このように、延出部8e側のハンダ溜まりの容積のほうが大きくなることで、第1凹部9側に溶融ハンダが引き寄せられ易くなり、ハンダフィレット10aの接触角度θをより小さくすることができる。また、クラック抑制効果をさらに高めることができる。
【0055】
さらに、セラミック素体4の高さL0に対する垂線距離L2の比(L2/L0)は、0~0.2であることが好ましい。また、第1凹部9のZ軸方向の長さL3は、L0に対して0.5倍~1.0倍であることが好ましい。
【0056】
なお、第1凹部9の下端9bおよび上端9cの位置は、潰し加工で使用する金型の寸法により調整できる。また、ハンダ付けの際に、リード端子に対するセラミック素体4の固定位置を制御することでも調整できる。
【0057】
第1凹部9の形態や寸法が、上記の条件を満たす場合、セラミック素体4の内部にクラックが発生することをより効果的に抑制することができる。
【0058】
なお、ハンダフィレットによるクラックを抑制する方法として、従来では、リード端子の一部に、ハンダ濡れ性の悪い非親和層を形成することが知られている。この非親和層は、たとえば、リード端子の一部の表面を酸化することで形成できる。また、非親和層は、リード端子表面のメッキ層(ハンダ濡れ性が良好な被覆層)を、機械研磨やレーザー加工により除去することでも形成できる。つまり、当該従来技術では、リード端子の一部にハンダが濡れない部分を形成することで、ハンダフィレットが形成されることを抑制する。当該従来技術でも、クラック抑制効果が期待できる。ただし、リード端子に対して、局所的に非親和層を形成することは、必ずしも容易ではなく、特に、セラミック素体4のサイズが小さくなると、非親和層の形成が困難となる。また、非親和層によりハンダの接合領域が狭められることで、セラミック素体に対するリード端子の接合強度が低下してしまう。
【0059】
これに対して、本実施形態の場合、第1凹部9は、金型を用いた潰し加工により容易に形成することができる。そのため、セラミック素体4のサイズが小型化した場合であっても、確実にクラックを抑制することができ、製造コストも抑えられる。また、本実施形態のセラミック電子部品2では、第1凹部9の内側がハンダ溜まりとなっているため、クラックを抑制したうえで、リード端子8を上記の従来技術よりも強固に接合することができる。
【0060】
なお、本実施形態において、リード端子8の接合に使用するハンダ10の材質は、特に限定されない。たとえば、錫-アンチモン系、錫-銀-銅系、錫-銅系、錫-ビスマス系の鉛フリーハンダを用いることができる。
【0061】
また、
図2および
図3では図示していないが、リード端子8の表面には、金属メッキ層などの被覆層が形成してあってもよい。被覆層の種類は、特に限定されず、リード端子8の先端側(隣接部側)と後端側(脚部側)とで、種類が異なる被覆層が形成してあってもよい。特に、リード端子8の表面のうちハンダ10と接触する箇所(隣接部8a、第1凹部9を含む上方側支持部8eaの一部)には、リード端子8の芯材よりもハンダ濡れ性が良好な被覆層が形成してあることが好ましい。「ハンダ濡れ性が良好な被覆層」とは、たとえば、銅および錫を含む合金層が挙げられ、より具体的には、Cu
6Sn
5を含む合金層であることが好ましい。このような被覆層をハンダ10との接触表面に形成しておくことで、ハンダフィレット10aの接触角度θをより小さくすることができる。
【0062】
上記のように被覆層を形成する場合、被覆層の厚みは、0.5μm~10μm程度とすることができ、1.0μm~7.0μmであることが好ましく、1.0μm~3.0μmであることがより好ましい。被覆層の厚みは、走査型電子顕微鏡(SEM)等による断面観察により測定でき、被覆層を構成する成分は、電子プローブマイクロアナライザ(EPMA)や、電子線回折等の手法により確認することができる。
【0063】
続いて、セラミック電子部品2の製造方法の一例について、以下に説明する。
【0064】
まず、セラミック素体4として、コンデンサチップを準備する。コンデンサチップは、公知の方法により製造すればよい。たとえば、ドクターブレード法やスクリーン印刷等の手法により、電極パターンが形成されたグリーンシートを積層し、積層体を得る。その後、得られた積層体を加圧・焼成することで、コンデンサチップが得られる。
【0065】
次に、準備したコンデンサチップに対して、一対の端子電極6を形成する。端子電極6の形成方法は、特に限定されない。たとえば、コンデンサチップを、電極用の導電性ペーストに浸漬し、その後、焼き付け処理を施すことで形成できる。もしくは、熱硬化性樹脂をふくむ導電性ペーストを塗布し、その後、加熱処理により樹脂を硬化させることで端子電極6を形成してもよい。また、焼き付け電極もしくは樹脂電極の表面には、適宜、メッキ処理を施してもよい。
【0066】
次に、リード端子8の製造方法について説明する。リード端子8の製造では、まず、導電性線材を準備する。本実施形態において、準備する導電性線材としては、表面に錫メッキ層が形成してあるCu線、もしくは、Cuメッキ層の表面にさらに錫メッキ層が形成してあるCP線を用いることが好ましい。ここで、Cu線もしくはCP線の表面に形成してある錫メッキ層は、錫が90mol%以上含まれていることが好ましく、厚みが、1μm~10μmであることが好ましい。
【0067】
ただし、導電性線材の表面は、錫メッキ層に代えて、銀メッキ層や、金メッキ層、パラジウムメッキ層、銅-錫メッキ層などを形成してもよい。さらに、金メッキ層もしくはパラジウムメッキ層を形成する場合には、下地にニッケルメッキ層が形成してあってもよい。
【0068】
準備した導電性線材は、所定の長さに切断し、その後、全体としてU字形状となるように曲げ加工を施す。次に、U字形状の導電性線材を、キャリアテープに張り付けて固定する。この際、導電性線材は、U字形状の両端がキャリアテープから飛び出すようにして固定される。
【0069】
このように、導電性線材をキャリアテープに張り付けた状態で、導電性線材の先端を、
図4に示す形状に加工する。具体的には、まず、導電性線材の両端に折り曲げ加工を施し、上方側支持部8ea,下方側支持部8ebを形成する。その後、導電性線材の先端を潰し加工(プレス加工)し、対向面8aaを有する隣接部8aの形状と第1凹部9とを形成する。なお、折り曲げ加工と潰し加工とは、順序が逆であっても良い。量産時においては、キャリアテープ上に複数の導電性線材を張り付けて、上記の先端加工を同時に行えばよい。
【0070】
次に、上記のような手順で作製したセラミック素体4とリード端子8とを接合し、リード端子付きのセラミック電子部品2を得る。たとえば、リード端子8の表面(特にハンダと接触する部分)にハンダ濡れ性の良い銅および錫を含む合金層を形成する場合は、以下に示す手順で、セラミック素体4にリード端子8を接合する。
【0071】
まず、キャリアテープに張り付けてあるリード端子8の先端部のみをハンダ浴に浸漬し、リード端子8の表面に銅および錫を含む合金層を形成する(リード端子8の浸漬工程)。
【0072】
上記の浸漬工程において、使用するハンダ浴の種類は、後述するセラミック素体4のハンダ付け工程で使用するハンダ浴と同じでもよいが、異なっていてもよい。また、使用するハンダ浴の温度は、ハンダの組成によっても異なるが、たとえば、錫-アンチモン系のハンダの場合、270℃~320℃とすることができる。特に、浸漬工程におけるハンダ浴の温度は、後述するハンダ付け工程におけるハンダ浴の温度に対して、0.9~1.1倍程度とすることが好ましい。
【0073】
また、浸漬工程におけるハンダ浴への浸漬時間は、後述するハンダ付け工程での浸漬時間に対して、10~60倍程度と長くすることが好ましく、より具体的には、10秒~60秒程度とすることが好ましい。
【0074】
なお、上記の浸漬工程において、ハンダ浴に浸漬した箇所では、導電性線材の表面に形成してある錫メッキ層が、ハンダ浴に溶解され、銅および錫を含む合金層が生成する。ハンダ浴に浸漬していないリード端子8の脚部8ec、下方側支持部8eb、上方側支持部8eaの一部では、表面に錫メッキ層が残った状態となる。
【0075】
上記の浸漬工程を行った後、一対のリード端子8の隣接部8aの間に、端子電極6を形成したセラミック素体4を配置し、一対の対向面8aaでセラミック素体4を挟持することで、セラミック素体4を仮固定する。なお、仮固定に際して、隣接部8aの上端(リード端子8の先端)と、セラミック素体4の上端(上面4b2)とは、Z軸方向で位置ズレしていてもよいが、隣接部8aの上端とセラミック素体4の上端とを揃えることが好ましい。このような方法で仮固定を行うことで、リード端子8がセラミック素体4に対して適切な位置に配置され、製造誤差を低減することができる。
【0076】
次に、リード端子8で挟持したセラミック素体4を、ハンダ浴に浸漬し、端子電極6とリード端子8とをハンダ付けする(ハンダ付け工程:ディッピング)。この際、リード端子8の先端側(隣接部8aのZ軸上端側)を、重力方向の下方に向けて、ハンダ浴に浸漬させる。このハンダ付け工程において、ハンダ浴への浸漬時間は、0.5秒~2程度であり、特に、0.8秒~1.5秒程度と短くすることが好ましい。ハンダ付け工程での浸漬時間を上記の範囲内とすることで、セラミック素体4への熱影響を最小限に抑制することができる。
【0077】
ハンダ付け工程の後には、ハンダ浴に浸漬させた部分を、液状の絶縁性樹脂の浴槽に浸漬する。この際、少なくとも、セラミック素体4およびリード端子8のハンダ接合部分が、絶縁性樹脂の浴槽に浸るように浸漬する。その後、使用する絶縁性樹脂の種類に応じて、適宜、熱処理や冷却乾燥処理を施すことで、セラミック素体4およびリード端子8の一部を覆うように外装20が形成される。
【0078】
なお、上述した一連の接合工程は、リード端子8をキャリアテープに張り付けて固定した状態で行えばよい。外装20を形成した後、一対のリード脚部8dの連結部分(すなわち、U字形状の円弧部分)を切断し、キャリアテープからリード端子8を取り外すことで、
図1および
図2に示すセラミック電子部品2が得られる。
【0079】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で種々に改変することができる。
【0080】
(変形例)
たとえば、リード端子8は、
図5に示すような形態であってもよい。
図5に示すリード端子81では、隣接部8aの対向面8aaに第2凹部91が形成してある。この第2凹部91は、Z軸に沿って、対向面8aaの上端から下端まで延在している。また、第2凹部91のZ軸方向の下端は、第1凹部9と接続されており、第2凹部91と第1凹部9とは連通している。
図5に示すリード端子81を使用した場合であっても、クラック抑制効果が期待できる。また、リード端子81を使用した場合、対向面8aaと端面電極6aとの隙間86に介在するハンダ10の量が多くなり、リード端子81の接合強度が向上する傾向となる。
【0081】
また、
図2および
図3に示すリード端子8では、上方側支持部8eaが、Z軸と略平行に延びているが、上方側支持部8eaの延長方向は当該様態に限定されない。たとえば、上方側支持部8eaは、第1凹部9の下端9bから、X軸方向の外側に向かって曲折していてもよい。X軸方向の外側とは、一対のリード端子が互いに離反する方向である。このように、上方側支持部8eaが曲折することで、ハンダフィレット10aの接触角度θがより小さくなる傾向となる。
【実施例0082】
(試料1)
試料1では、
図4に示す先端形状を有するリード端子8を使用して、コンデンサ試料を30個作製し、そのクラック発生率を評価した。
【0083】
まず、セラミック素体4として、X軸方向の長さが1.6mm、Y軸方向の幅が0.8mm、Z軸方向の高さL0が0.8mmであるコンデンサチップを準備した。そして、当該コンデンサチップに、Cu焼結電極層とNiメッキ層とSnメッキ層とからなる端子電極6を形成した。
【0084】
また、リード端子8の原材料として、線径が0.5mmで、表面に錫メッキ層が形成してあるCu線を準備した。そして、このCu線を、
図4に示す形状に加工し、実施形態で示した手順に従って、コンデンサチップにハンダ付けした。実際に使用したリード端子8の詳細な寸法を以下に示す。なお、以下の寸法は、平均値であり、完成したコンデンサ試料30個の断面をSEMで観察し、得られた断面写真を画像解析することで測定した。
Wx1/Wx3=0.75
Wx2/Wx1=0.72
L1/L0=0.50
L2/L0=0.20
【0085】
(クラック発生率の評価)
上記の手順で作製したコンデンサ試料について、クラックが発生しているか否かを調査した。クラックの有無は、コンデンサ試料の断面を光学顕微鏡で観察することで確認し、素体(コンデンサチップ)の内部に少しでもクラックが存在するサンプルをNGとした。当該調査を30個のサンプルに対して行い、クラックが存在するサンプルの割合をクラック発生率として算出した。
【0086】
(比較例1)
比較例1では、
図6,7に示す従来のリード端子82を使用した。ここで、
図6,7に示すリード端子82の特徴について説明しておく。リード端子82では、隣接部8aに潰し加工が施されており、対向面8aaが形成されているが、当該リード端子82には、第1凹部9が形成されていない。リード端子82において、隣接部8aと延出部8e(上方側支持部8ea)との境界位置には、潰し加工によって、X軸およびY軸と実質的に平行な段差面11が形成されている。当該段差面11は、ハンダ付けの際に側面電極6bに当接され、リード端子82とコンデンサチップとの位置関係を調整する役割を果たす。
【0087】
上記の特徴を有するリード端子82を、試料1と同じ方法で、コンデンサチップにハンダ付けし、比較例1に係るコンデンサ試料を得た。そして、試料1と同じ方法で比較例1のクラック発生率を算出した。
【0088】
(試料2:参考例)
試料2では、
図8に示すリード端子83を使用した。ここで、
図8に示すリード端子83の特徴について説明しておく。リード端子83では、
図7に示す従来のリード端子82と同様に、隣接部8aに潰し加工が施してあり、隣接部8aと延出部8eとの境界に段差面11が形成してある。このリード端子83では、段差面11に、第3凹部92が形成してあり、対向面8aaに第4凹部93が形成してある。第3凹部92はX軸方向に延在しており、第4凹部93はZ軸方向に延在している。そして、第3凹部92と第4凹部93とは、対向面8aaと段差面11との交差角で連通している。
【0089】
上記の特徴を有するリード端子83を、試料1と同じ方法で、コンデンサチップにハンダ付けし、試料2に係るコンデンサ試料を得た。なお、ハンダ付け後の状態において、第3凹部92の下端から底面4b1を含む面までの垂線距離L1を測定したところ、当該垂線距離は、コンデンサチップの高さL0に対して、0.2倍程度(0.2×L0)であった。試料2のコンデンサ試料についても、試料1と同じ方法で、クラックの有無を評価した。
【0090】
評価結果
比較例1のクラック発生率は、63%であり、比較例1では、半数以上のサンプルにクラックが発生していた。
図7は、比較例1のコンデンサ試料を示す要部拡大断面図である。
図7に示すように、従来のリード端子82には、ハンダフィレット10aに対応する箇所に凹部が形成されていない。そのため、比較例1のコンデンサ試料では、素体の底面4b1とリード端子82の延出部との間に、ハンダが多く滞留し、ハンダフィレット10aの接触角度θが50度超過と鈍角になった。比較例1では、鈍角なハンダフィレット10aの影響で、クラックが多く発生したと考えられる。
【0091】
なお、
図7に示すように、段差面11と側面電極6bとの間には、ハンダが充填される隙間61が存在する。ただし、この隙間61の幅Wx5は、最大でも20μm程度であり、当該隙間61は、ハンダフィレット10aに滞留するハンダを引き寄せて、接触角度θを小さくする機能を有していない。したがって、隙間61を凹部とみなすことはできない。
【0092】
一方、
図8に示すリード端子83を使用した試料2(参考例)では、クラック発生率が、40%であり、比較例1よりもクラックを低減することができた。また、試料2では、ハンダフィレット10aの接触角度θが比較例1よりも鋭角になっていた。リード端子83では、段差面11に形成してある第3凹部92が、ハンダフィレット10aの側方に位置するため、溶融ハンダが第3凹部92に引き寄せられて、接触角度θが鋭角になったと考えられる。
【0093】
さらに、
図4に示すリード端子8を使用した試料1では、クラック発生率を最も低減することができた。具体的に、試料1では、ハンダフィレット10aの接触角度θが、比較例1よりも鋭角であり、試料2よりもさらに鋭角となった。そして、試料1では、クラック発生率が13%であり、試料2よりもクラックの発生を抑制することができた。試料1のクラック発生率が試料2よりも向上した理由として、以下のような事由が考えられる。
【0094】
まず、凹部の大きさの違いが関係していると考えられる。試料2の第3凹部92は、L1/L0が0.2程度であることに対して、試料1の第1凹部9は、L1/L0が0.5である。そのため、試料2の第3凹部92よりも試料1の第1凹部9のほうが、溶融ハンダを引き込む作用が強くなったと考えられる。
【0095】
また、凹部の開口方向が関係していると考えられる。試料2の第3凹部92は、X軸方向に延在しており、Y軸方向においては、凹部壁面により閉塞された状態となっている。つまり、第3凹部92の内側は、ハンダ溜まりとなるが、第3凹部92によるハンダ溜まりは、第3凹部92の壁面および第4凹部93の壁面により囲われている。一方、試料1の第1凹部9は、Y軸方向において開放してあるため、第1凹部9のハンダ溜まりは、Y軸方向で第1凹部9の壁面に拘束されない。そのため、試料1では、ハンダ凝固時に発生する歪みが、リード端子8の外側に分散し易く、第1凹部9のハンダ溜まりには蓄積され難くなっていると考えられる。その結果、試料1では、試料2よりも、クラックを効果的に抑制できたと考えられる。
【0096】
なお、上記の実施例では、リード端子の導電性線材としてCu線を使用したが、CP線でも上記と同様の実験を行った。CP線を使用した場合でも、上記の実施例と同様の結果が得られ、
図4に示すリード端子形状で最もクラック発生率を低減することができた。