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特開2022-770243Dプリントのための表面エネルギー変調を介した抗焼結剤のパターン式堆積
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  • 特開-3Dプリントのための表面エネルギー変調を介した抗焼結剤のパターン式堆積 図1
  • 特開-3Dプリントのための表面エネルギー変調を介した抗焼結剤のパターン式堆積 図2
  • 特開-3Dプリントのための表面エネルギー変調を介した抗焼結剤のパターン式堆積 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022077024
(43)【公開日】2022-05-20
(54)【発明の名称】3Dプリントのための表面エネルギー変調を介した抗焼結剤のパターン式堆積
(51)【国際特許分類】
   B22F 10/16 20210101AFI20220513BHJP
   B22F 3/10 20060101ALI20220513BHJP
   B22F 7/00 20060101ALI20220513BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20220513BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20220513BHJP
   B29C 64/165 20170101ALI20220513BHJP
   B33Y 70/00 20200101ALI20220513BHJP
   B29C 64/209 20170101ALI20220513BHJP
   B28B 1/30 20060101ALI20220513BHJP
【FI】
B22F10/16
B22F3/10 C
B22F7/00 Z
B33Y30/00
B33Y10/00
B29C64/165
B33Y70/00
B29C64/209
B28B1/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】26
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021182941
(22)【出願日】2021-11-10
(31)【優先権主張番号】17/094,506
(32)【優先日】2020-11-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.プルロニック
(71)【出願人】
【識別番号】504407000
【氏名又は名称】パロ アルト リサーチ センター インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100136249
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 貴光
(72)【発明者】
【氏名】マハティ・チンタパリ
(72)【発明者】
【氏名】アン・プロコヴィエッツ
(72)【発明者】
【氏名】アシシュ・ヴイ.・パテッカー
(72)【発明者】
【氏名】チョンピン・ル
(72)【発明者】
【氏名】ウォーレン・ジャクソン
【テーマコード(参考)】
4F213
4G052
4K018
【Fターム(参考)】
4F213AA01
4F213AA04
4F213AA11
4F213AA19
4F213AA21
4F213AA28
4F213AA49
4F213AB07
4F213AB10
4F213AC04
4F213WA25
4F213WB01
4F213WL03
4F213WL12
4F213WL22
4F213WL32
4F213WL42
4F213WL55
4F213WL74
4F213WL75
4F213WW06
4G052DA02
4G052DB12
4G052DC06
4K018AA03
4K018AA06
4K018AA24
4K018AA33
4K018AA40
4K018AB01
4K018AB02
4K018AB07
4K018AB10
4K018BA02
4K018BA03
4K018BA14
4K018BA17
4K018BA20
4K018CA09
4K018DA03
4K018KA63
(57)【要約】      (修正有)
【課題】焼結可能な凝集性の高密度供給原料の3Dプリントシステム、および焼結可能な凝集性の高密度供給原料による三次元オブジェクトを形成する方法を提供する。
【解決手段】システムは、表面と、バインダを有する焼結可能な供給原料を表面上に堆積させるように配置された供給原料堆積ヘッドと、表面に隣接して配置されて、パターンに従って供給原料表面エネルギーを変化させて、供給原料上に選択的表面エネルギーパターンを形成するパターン化システムと、供給原料堆積ヘッドに隣接して配置されて、焼結選択性流体を堆積させる焼結選択性材料堆積ヘッドと、選択的表面エネルギーパターンに適合するように選択される焼結選択性流体と、抗焼結剤の堆積後に供給原料を焼結するための焼結チャンバと、を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
システムであって、
表面と、
バインダを有する焼結可能な供給原料を前記表面上に堆積させるように配置された供給原料堆積ヘッドと、
前記表面に隣接して配置されて、パターンに従って前記供給原料の表面エネルギーを変化させて、前記供給原料の上に選択的表面エネルギーパターンを形成するパターン化システムと、
前記供給原料堆積ヘッドに隣接して配置されて、焼結選択性流体を堆積させる焼結選択性材料堆積ヘッドであって、前記焼結選択性流体が前記選択的表面エネルギーパターンに適合するように選択される、焼結選択性材料堆積ヘッドと、
抗焼結剤の堆積後に前記供給原料を焼結するための焼結チャンバと、を備える、システム。
【請求項2】
前記パターン化システムが、パターン化レーザ、格子ライトバルブ、デジタルマイクロミラーデバイス、イオン、電子若しくは粒子衝撃システム、プラズマ処理システム、酸素プラズマ処理システム、又は化学改質剤をパターン化された様式で堆積させる堆積システムのうちの1つを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記焼結可能な供給原料が、ステンレス鋼合金、カルボニル鉄、磁気合金、銅-ニッケル合金、チタン、銅、アルミナ、ジルコニア、アルミノシリケート鉱物及びガラス、ポリマー粒子、並びに様々な金属、金属合金、セラミック、及びプラスチック/ポリマーを含む多くの他のものからなる群から選択される少なくとも1つを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記焼結可能な供給原料が高密度である、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記高密度の焼結可能な供給原料が、凝集性である、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記バインダが、疎水性熱可塑性樹脂、親水性熱可塑性樹脂、及び熱硬化性材料のうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記疎水性熱可塑性樹脂が、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリオキシメチレン、パラフィン、カルナバワックス、ポリプロピレンオキシド、及びポリブチレンオキシドからなる群から選択される少なくとも1つを含む、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記親水性熱可塑性樹脂が、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンカーボネート、ポリブチレンカーボネート、アルギネート、寒天、セルロース、メチルセルロース、メチルセルロース系化合物、リグノスルホン酸ナトリウム、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリアクリレート塩、及びポリ乳酸からなる群から選択される少なくとも1つを含む、請求項6に記載のシステム。
【請求項9】
前記熱硬化性材料が、紫外線硬化性アクリレート樹脂及び紫外線硬化性メタクリレート樹脂のうちの少なくとも1つを含む、請求項6に記載のシステム。
【請求項10】
前記バインダが、界面活性剤及び粘度調整剤のうちの少なくとも1つを更に含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
前記界面活性剤が、ステアリン酸、オレイン酸、オレイルアミン、魚油、プルロニック界面活性剤、ポリエチレンオキシド及びポリプロピレンオキシドのブロックコポリマー、ドデシル硫酸ナトリウム、リン酸塩、硫酸塩、アンモニウム、カルボキシレート、並びに他の両親媒性分子からなる群から選択される少なくとも1つを含む、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
前記粘度調整剤が、オリゴマー、グリセリン、フタル酸含有分子、フタル酸ジブチル、フタル酸ジオクチル、水、有機溶媒、トルエン、キシレン、アルカン、デカン、ヘキサン、イソパラフィン溶媒、n-メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド、及びアセトフェノンからなる群から選択される少なくとも1つを含む、請求項10に記載のシステム。
【請求項13】
三次元オブジェクトを形成する方法であって、
焼結可能な供給原料を表面上に堆積させることと、
前記焼結可能な供給原料からバインダをパターン式に脱バインダすることによって、前記焼結可能な供給原料に表面エネルギーパターンを形成することと、
焼結選択性材料を前記表面エネルギーパターンに適合させるように選択された溶媒と混合された焼結選択性流体を堆積させることと、
前記供給原料を焼結することと、を含む、方法。
【請求項14】
前記バインダをパターン式に脱バインダすることによって表面エネルギーパターンを形成することが、熱脱バインダ又は溶媒脱バインダのうちのいずれか1つを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記焼結可能な供給原料を堆積させることが、ステンレス鋼合金、カルボニル鉄;ステンレス鋼316;磁気合金、銅-ニッケル合金、チタン、銅、アルミナ、ジルコニア、アルミノシリケート鉱物及びガラス、ポリマー粒子、金属、金属合金、セラミック、プラスチック、並びにポリマーからなる群から選択される1つを堆積させることを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
表面エネルギーパターンを形成することが、ネガティブ表面エネルギーパターンを形成することを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前記焼結可能な供給原料を堆積させることが、金属を堆積させることを含み、前記焼結選択性材料を堆積させることが、アルミノシリケート鉱物;アルミナ;ジルコニア;酸化鉄;クロマイト;セリア;イットリア;炭化ケイ素;酸化カルシウム含有セラミック;酸化マグネシウム含有セラミック;カルシウム、マグネシウム、バリウム、ストロンチウム、チタン、アルミニウム、ジルコニウム、イットリウム、鉄、セリウム、バナジウム、タングステン、ランタン、ハフニウム、タンタル、ニオブ、及びクロムの元素のうちの少なくとも1つを含有するセラミック、並びにこれらの混合物からなる群のうちの少なくとも1つを堆積させることを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項18】
前記焼結選択性材料を堆積させることが、耐火性セラミック、耐火性セラミックの前駆体、焼結される前記材料をより高い焼結温度を有する材料、1500℃よりも高い焼結温度を有する材料、1500℃よりも高い焼結温度を有する材料に変換する材料、及び分解して金属酸化物を形成する、焼結される前記材料よりも高い焼結温度を有する材料に変換することができる酸化剤のうちの1つを堆積させることを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項19】
分解する前記材料が、硝酸アルミニウム、臭化アルミニウム、塩化アルミニウム、水酸化アルミニウム、ヨウ化アルミニウム、リン酸アルミニウム、乳酸アルミニウム、硫酸アルミニウム、モノステアリン酸アルミニウム、硝酸ジルコニウム、炭酸ジルコニウム、ジルコン酸アンモニウム、塩化ジルコニル、硝酸ジルコニル、炭酸イットリウム、塩化イットリウム、硝酸イットリウム、鉄アセチルアエトネート(iron acetyl aetonate)、フェロセン、クエン酸鉄、塩化鉄、臭化鉄、シュウ酸鉄、リン酸鉄、硫酸鉄、硝酸鉄、臭化セリウム、塩化セリウム、水酸化セリウム、硝酸セリウム、シュウ酸セリウム、硫酸セリウムからなる群のうちの1つを含む塩を含み、元素を含有する塩が、カルシウム、マグネシウム、バリウム、ストロンチウム、チタン、アルミニウム、ジルコニウム、イットリウム、鉄、セリウム、バナジウム、タングステン、ランタン、ハフニウム、タンタル、ニオブ、及びクロム、並びに硝酸セリウムアンモニウムを含む、請求項18に記載の流体。
【請求項20】
前記表面エネルギーパターンを形成することが、ポジティブ表面エネルギーパターンを形成することを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項21】
前記焼結可能な供給原料を堆積させることが、金属を堆積させることを含み、前記焼結選択性材料を堆積させることが、グラファイトの粒子、グラフェン、カーボンナノチューブ、フラーレン、sp2結合を有する他の形態の炭素、水素化ホウ素ナトリウム、還元糖、グルコース、スズ(II)を含有する化合物、鉄(II)を含有する化合物、シュウ酸、ギ酸、アスコルビン酸、アセトール、アルファヒドロキシケトン、リン酸、亜リン酸塩、次亜リン酸塩、ホウ砂、塩化アンモニウム、及び塩酸からなる群のうちの少なくとも1つを堆積させることを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記焼結可能な供給原料を堆積させることが、セラミックを堆積させることを含み、前記焼結選択性材料を堆積させることが、鉛、ナトリウム、カリウム、リチウム、カルシウム、マグネシウム、バリウム、亜鉛、ストロンチウム、及びマンガンの酸化物又はこれらを含有する化合物;長石;ホウ素;並びに低いガラス転移を有するガラスフリット粒子からなる群のうちの少なくとも1つを堆積させることを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
前記焼結選択性材料を堆積させることが、水、有機溶媒、揮発性溶媒、又は高沸点溶媒、極性溶媒又は非極性溶媒、トルエン、キシレン、アルカン、デカン、ヘキサン、イソパラフィン、n-メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド、及びアセトフェノンからなる群から選択される溶媒を含有する前記焼結選択性材料を堆積させることを含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記焼結選択性材料を堆積させることが、グリセリン、ポリマー;前記溶媒に可溶性であるオリゴマー;前記供給原料に使用されるバインダ;ステアリン酸;、及びドデシル硫酸ナトリウムからなる群から選択される界面活性剤及び粘度調整剤のうちの少なくとも1つを含有する前記焼結選択性材料を堆積させることを含む、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
前記焼結可能な供給原料を堆積させることが、高密度の焼結可能な供給原料を堆積させることを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項26】
前記高密度の焼結可能な供給原料を堆積させることが、凝集性かつ高密度の焼結可能な供給原料を堆積させることを含む、請求項25に記載の方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連するケース)
本出願は、2020年10月22日に出願された同時係属中の米国特許出願第17/077,062号に関連する。
【0002】
(発明の分野)
本開示は、3Dプリントに関し、より具体的には、焼結可能な凝集性の高密度供給原料の3Dプリントに関する。
【背景技術】
【0003】
選択的阻害焼結は、通常は金属粉末である金属供給原料が、関心対象の3D幾何学的形状を作り出すためにパターン式焼結を経る3Dプリント技術である。このパターン化は、供給原料の薄層上に焼結阻害剤を堆積させることによるものであり、通常は、バインダと混合された金属粉末が、関心対象の幾何学的形状の断面境界に対応するパターンで堆積される。3D部品を構築するために、このプロセスを層ごとに繰り返す。焼結阻害剤は、焼結中に粒子と粒子の接続を防止する金属粒子表面上にバリアを作り出し、その部品を周囲領域から分離するための剥離境界を作り出す。
【0004】
一般的な手法は、インクジェットを介して阻害剤をパターン化し、プリントヘッドは、所望のパターンの懸濁阻害剤の溶液を堆積させる。阻害剤の完全な浸透を可能にすることは、阻害剤がパターン式方法で塗布される前に、第1のパターン式方法で金属又は他の焼結可能な供給原料からバインダを脱バインダするための追加的機構を含み得る。このことは、脱バインダ工程と堆積工程との間の精密な位置合わせ及びアライメントを必要とする。
【0005】
一致するレーザベースの熱的脱バインダ及びインクジェットによる抗焼結剤パターンを達成する現在の手法の1つは、バインダを熱的に除去又は分解するために、金属供給原料及びバインダの層上に高強度レーザ光のオンザフライパターン化を提供する格子ライトバルブ(Grating Light Valve、GLV)又はデジタルマイクロミラーデバイス(Digital Micromirror Device、DMD)システムなどの空間光変調器を使用することである。これに続いて、パターン化された抗焼結剤溶液を熱的に脱脂されたパターンの上に追加する、インクジェットプリントヘッドの精密なアライメントが続く。しかしながら、このことは、2つのパターンを位置合わせするために、2つのパターン化システム間で精密かつ高価なアライメントを必要とし、位置合わせ又はアライメントの誤差がある場合、最終部品に欠陥をもたらす可能性がある。このことはまた、両方のプロセスが正しく機能するために同期して実装される必要があるため、プリントシステムの最終的なスピードが最も遅い工程、典型的にはレーザパターン化又はインクジェットによって制限されることになる。
【発明の概要】
【0006】
本明細書に示される態様によれば、システムが提供されており、システムは、表面と、表面上にバインダを有する焼結可能な供給原料を堆積させるように配置された供給原料堆積ヘッドと、表面に隣接して配置されて、パターンに従って供給原料表面エネルギーを変化させて、供給原料上に選択的表面エネルギーパターンを形成するパターン化システムと、供給原料堆積ヘッドに隣接して配置されて、焼結選択性流体を堆積させる焼結選択性材料堆積ヘッドと、選択的表面エネルギーパターンに適合するように選択される焼結選択性流体と、抗焼結剤の堆積後に供給原料を焼結する焼結チャンバと、を有している。
【0007】
本明細書に示される態様によれば、三次元オブジェクトを形成する方法が提供されており、本方法は、焼結可能な供給原料を表面上に堆積させることと、焼結可能な供給原料からバインダをパターン式に脱バインダすることによって、焼結可能な供給原料に表面エネルギーパターンを形成することと、焼結選択性材料を表面エネルギーパターンに適合させるように選択される溶媒と混合された焼結選択性流体を堆積させることと、供給原料を焼結することと、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、三次元円筒形堆積システムの実施形態を示す。
【0009】
図2図2は、三次元円筒形製造システム内に焼結選択性材料を堆積させるためのシステムを示す。
【0010】
図3図3は、三次元製造の方法の一実施形態のフローチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
供給原料が自立性である必要がある三次元製造状況では、供給原料が焼結工程の前に、それ自体の形状を保持し、金属粉末が、通常、ポリマーバインダと混合されていることを意味する。この状況では、バインダが、金属粒子表面へのアクセスを得るためにはみ出て移動することが重要となる。本実施形態は、焼結選択性材料を用いる。本プロセスは、材料を使用して、製造される個々の部品間の境界を作り出す。
【0012】
材料は、ネガティブパターンを形成することができ、そこで材料が焼結阻害剤として作用し、材料が適用される領域が焼結されないようにする。プロセスは、部品の周囲のネガティブスペース内に焼結阻害剤を適用する。このことは、焼結される部品が、焼結されない供給原料を分離することを可能にしている。あるいは、材料はポジティブパターンを形成することができ、そこで焼結選択性材料が焼結促進剤として作用して、部品が焼結されるようにして、境界は焼結されないようにする。
【0013】
プロセスの重要な態様は、部品間の連続的境界を提供するために、焼結選択性材料が、厚さ約100マイクロメートルであり得る供給原料層の厚さを浸透することができることである。
【0014】
焼結選択性材料の完全な浸透を可能にする追加の機構を提供することは有益である。プロセスは、初めに、例えば気化して、化学的に分解して、又は焼結選択性材料が適用される前にレーザのようなパターンエネルギー源を使用して焼くなどしてパターンに従ってバインダを熱脱バインダする。しかしながら、現行の手法では、この2工程パターン化プロセスは、複雑で高価であり得るインクジェット及びレーザ撮像システムの正確な位置合わせ及びアライメントが必要になる。
【0015】
本明細書の実施形態は、金属粉末を含有するバインダの固有の表面エネルギー及び表面張力特性を利用することによってこの位置合わせ問題を解決しており、これらの組み合わせが、供給原料及び焼結選択性材料を構成している。本実施形態は、単一のパターン化システム及び焼結選択性材料を使用し得、焼結選択性材料は、脱バインダプロセスが表面エネルギーコントラストを引き起こすときに浸透する焼結阻害剤又は焼結促進剤を担持する。このことで、別個の焼結選択性材料パターン化システムを必要ないものにしている。このことが、複雑性及びコストを低減し、境界パターンと焼結選択性材料パターンとの間の不正確な位置合わせに起因して生じる欠陥の可能性を排除している。
【0016】
実施形態は、焼結可能な、凝集性の高密度供給原料の連続的高速3Dプリントを可能にする。本明細書で使用するとき、用語「高密度」は、30%以下の気孔率を有する材料を意味する。本明細書で使用するとき、用語「凝集性」は、供給原料が、堆積又は固定された後に、100kPa以上、10kPa以上、1kPa以上、100Pa以上、又は50Pa以上の引張降伏応力を有する供給原料を意味する。「凝集性」供給原料はまた、流動性粉末ではなく、堆積された後に流動粉末ではなく、堆積直前に流動性粉末ではない。材料は、20%、10%、5%、又は1%以下の気孔率を有し得る。EHTAL(Embedded High-speed Turning for Additive Layering、造形用埋込式高速回転)と称され得る連続的高速3Dプリントは、供給原料を回転する外向きに成長する円筒上に堆積させることを伴う。この技術は、価値の高いセラミック及び金属部品を含む部品の高速製造を可能にする可能性を有する。供給原料材料がビルドプラットフォーム、タンク、ボックス、又はベッドによって支持される従来式の層状の3Dプリント技術とは異なり、ここでは、供給原料は、中央ロッド又は円筒によってのみ支持されている。このタイプの製造用の供給原料は、凝集性で、高密度で、かつ自立性である必要がある。
【0017】
実施形態は、バインダと焼結選択性材料との適切な組み合わせを使用することにより、これらの問題を解決し、それにより、パターン式熱脱バインダ工程は、方向付けられたエネルギーパターンによってバインダが熱的に除去された部分にのみ湿潤ゾーンを作り出す。したがって、熱脱バインダプロセスは、焼結選択性材料の浸透のための所望の選択性をもたらす表面エネルギーパターンを提供し、アライメント及び位置合わせを必要とする別個のパターン化工程を回避する。
【0018】
図1では、製造システム10は、堆積デバイス12によってそれに適用される供給原料を有する回転式円筒を有する。図2に関して論じたように、多くの種類の堆積デバイスが使用され得る。円筒が回転すると、最も新しく適用された供給原料層は、堆積デバイス12から焼結選択性材料のパターンを受け入れ、脱バインダ(焼結可能な材料をバインダから分離するプロセス)を受けることができる。バインダは、粉末状の焼結可能な材料が高密度の凝集形態で存在することを可能にし、これはまた、円筒14への適用のためにペースト、溶融物、エマルション、又はスラリーとも称され得る。焼結選択性材料は、部品を画定するために、ポジティブ又はネガティブのいずれかの境界をマークする。
【0019】
円筒が堆積ヘッドを通過するとき、焼結選択性材料の堆積は、次の層が適用される前に、供給原料の現行の層に作用する。ビルド18が成長するにつれて、少なくとも焼結可能な材料及びバインダの供給原料に焼結選択性材料を加えたものからなり、その中に16のような部品が画定される。右端にあるビルドが完成されると、ビルドは焼結チャンバ20内での焼結及び分離を受け、下に示す16などの個々の部品が得られる。
【0020】
ここでの実施形態では、層は依然として焼結選択性材料を受け入れるが、最も新しい層の表面エネルギーがパターン化されて、材料が適用される場所を画定する。図2では、円筒14は、供給原料を受け入れるために堆積デバイス12を通過する。16などの部品は、各層でビルドから区別され、複数回の通過後に部品を形成する。供給原料は、高密度かつ凝集性であり得るか、又はパターン化照射システム20によって処理されることができ、次いで、22で焼結選択性材料を受け入れる非バインド粉末を含み得る。非バインド粉末の場合、堆積デバイス12は、図2に示されるように位置することができ、高密度の凝集性供給原料を有する場合、図1に示されるように位置することができる。いずれの選択肢も、任意の実施形態及び全ての実施形態で使用され得る。
【0021】
材料の現行の層がパターン化照射システム20を通過するとき、システムは、レーザ光、UV光などのエネルギーを層の表面に向け、画定された表面エネルギーパターンを形成する。次いで、堆積ヘッド22は、画定されたゾーン内に焼結選択性流体を堆積させる。上述のように、画定されたゾーンは、部品間の境界を画定する部品の周りのネガティブスペース、又は部品自体を画定するポジティブスペースで構成され得る。次いで、円筒は、堆積ヘッド12から次の材料層を受け入れるために回転し続け、プロセスは、ビルドが完了するまで継続する。次いで、ビルドは焼結及び分離を受ける。
【0022】
パターン化照射システムは、光源又は他のエネルギー源と、パターンに従って現行層の表面にエネルギーを伝達するパターン式伝達デバイスと、を備え得る。エネルギー源は、レーザ、UV源、赤外線、X線などを含み得る。パターン式伝達デバイスは、格子ライトバルブ(GLV)のアレイ、デジタルマイクロミラーデバイス(DMD)、又は他のライトバルブ若しくはシャッタのアレイなどの空間光変調器を含み得る。パターンに従ってエネルギーを表面に伝達することができる任意の装置が機能する。いずれの特定のデバイスも意図されておらず、暗示されるべきではない。同様に、図1及び図2は、供給原料堆積ヘッド12をドクターブレードとして示しているが、システムは、材料堆積のいずれの手段も採用することができる。焼結選択性堆積はまた、ドクターブレード、ローラ、又は材料堆積の任意の他の手段から生じ得る。
【0023】
あるいは、表面エネルギーパターン化は、レーザ又はUV源などの光子系エネルギー源の代わりに、又はそれに加えて、パターン化された様式で表面をイオン又は粒子衝撃、プラズマ処理、酸素プラズマ処理、電子衝撃、又は化学変性剤に曝すことによって達成され得る。
【0024】
図3は、プロセスの概要を示す。30において、システムは、焼結可能な供給原料を堆積させる。表面エネルギーパターンは32で形成される。システムは、次いで34において焼結選択性材料を堆積させる。プロセスは、所望の部分形状を達成するために、必要に応じてこれらの工程を反復する。最後に、36においてプリントされた部品が焼結される。
【0025】
次に、このプロセスにおいて使用可能な材料の例を説明する。焼結され得る材料のいくつかの例は、17-4PH、カルボニル鉄、316、磁気合金、銅-ニッケル合金、チタン、銅、アルミナ、ジルコニア、アルミノシリケート鉱物及びガラス、ポリマー粒子、並びに様々な金属、金属合金、セラミック、及びプラスチック/ポリマーを含む多くの他の合金などのステンレス鋼合金である。
【0026】
供給原料用のバインダは、疎水性又は親水性であってもよく、熱可塑性又は熱硬化性成分を含有してもよい。いくつかの活性バインダ材料としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリオキシメチレン、パラフィン、カルナバワックス、ポリプロピレンオキシド、ポリブチレンオキシド(疎水性熱可塑性樹脂)、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンカーボネート、ポリブチレンカーボネート、アルギネート、寒天、セルロース、メチルセルロース、メチルセルロース系化合物、リグノスルホン酸ナトリウム、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリアクリレート塩、ポリ乳酸、(親水性熱可塑性樹脂)、並びに疎水性又は親水性の紫外線硬化性アクリレート及びメタクリレート樹脂(熱硬化性樹脂)を挙げることができる。
【0027】
バインダとしては、焼結可能な成分との接着を促進するための界面活性剤などの追加成分を含有することができ、これらは、ステアリン酸、オレイン酸、オレイルアミン、魚油、プルロニック界面活性剤、ポリエチレンオキシドとポリプロピレンオキシドとのブロックコポリマー、ドデシル硫酸ナトリウム、疎水性部分及び親水性部分を含有する分子を挙げることができる。これらの分子は、リン酸塩、硫酸塩、アンモニウム、カルボキシレート、又は他の両親媒性分子を含んでもよい。バインダは、粘度調整剤、例えば、ポリマーの短鎖ポリマーを意味するオリゴマー、典型的には5kg/mol未満又は1kg/mol未満の、グリセリン、フタル酸含有分子、フタル酸ジブチル、フタル酸ジオクチル若しくは溶媒、例えば、水、又は有機溶媒、例えば、トルエン、キシレン、アルカン、デカン、ヘキサン、アイソパー(isopar)、n-メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド、及びアセトフェノンなどを含有し得る。
【0028】
焼結選択性材料成分の選択は、焼結される活性材料に依存し、焼結選択性材料がネガティブパターン化又はポジティブパターン化されるべきかどうかに依存する。金属供給原料のネガティブパターン化では、活性焼結選択性材料は、金属よりも高い温度で焼結する材料、多くの場合、耐火性セラミック、耐火性セラミックの前駆体、又は金属を耐火性セラミックに選択的に変換する酸化剤である。阻害材料は、パターンの焼結可能な粒子の上に、又はそれらに隣接して、別の粒子を形成するいずれかである。青銅、真鍮、アルミニウム合金、及び鋼などの大部分の工学的金属を上回る温度で焼結する材料の例としては、アルミノシリケート鉱物、アルミナ、ジルコニア、酸化鉄、クロム酸塩、セリア、イットリア、炭化ケイ素、酸化カルシウム含有セラミック、酸化マグネシウム含有セラミック、元素を含有する材料又はセラミックであり、これらの元素には、カルシウム(Ca)、マグネシウム(Mg)、バリウム(Ba)、ストロンチウム(Sr)、チタン(Ti)、アルミニウム(Al)、ジルコニウム(Zr)、イットリウム(Y)、鉄(Fe)、セリウム(Ce)、バナジウム(V)、タングステン(W)、ランタン(La)、ハフニウム(Hf)、タンタル(Ta)、ニオブ(Nb)、及びクロム(Cr)、又はこれらの混合物/固溶体が挙げられる。
【0029】
活性材料は、インクに懸濁したこれらの材料のナノ粒子若しくは微粒子、又は熱脱バインダ、早期焼結、溶媒-脱バインダ工程での溶液との反応などのプロセス工程に曝されると分解して金属酸化物を形成する塩などのセラミックの化学的前駆体であってもよい。好適な塩としては、硝酸アルミニウム、臭化アルミニウム、塩化アルミニウム、水酸化アルミニウム、ヨウ化アルミニウム、リン酸アルミニウム、乳酸アルミニウム、硫酸アルミニウム、モノステアリン酸アルミニウム、硝酸ジルコニウム、炭酸ジルコニウム、ジルコン酸アンモニウム、塩化ジルコニル、硝酸ジルコニル、炭酸イットリウム、塩化イットリウム、硝酸イットリウム、鉄アセチルアエトネート(iron acetyl aetonate)、フェロセン、鉄クエン酸鉄、臭化鉄、シュウ酸鉄、リン酸鉄、硫酸鉄、硝酸鉄、臭化セリウム、塩化セリウム、水酸化セリウム、硝酸セリウム、シュウ酸セリウム、硫酸セリウム、硝酸セリウムアンモニウム、塩化バナジウム、塩化バナジウムテトラヒドロフラン、オキシ塩化バナジウム、カルシウム(Ca)、マグネシウム(Mg)、バリウム(Ba)、ストロンチウム(Sr)、チタン(Ti)、アルミニウム(Al)、ジルコニウム(Zr)、イットリウム(Y)、鉄(Fe)、セリウム(Ce)、バナジウム(V)、タングステン(W)、ランタン(La)、ハフニウム(Hf)、タンタル(Ta)、ニオブ(Nb)、及びクロム(Cr)などの元素の塩が挙げられる。
【0030】
金属塩中の非金属イオンは、焼結阻害効果を高めるために、硫酸塩、硝酸アンモニウム、塩素酸塩、亜塩素酸塩、次亜塩素酸塩、過塩素酸塩、過マンガン酸塩、過硫酸塩、又は硝酸塩などの酸化剤であるように選択することができる。いくつかの金属イオンはまた、セリウムイオンなどの酸化挙動を増強する。これらの酸化イオンはまた、金属イオンを含有しない化合物の一部であってもよく、それにより、焼結選択性材料は、阻害パターン内の焼結金属を単に酸化するように作用する。
【0031】
ポジティブパターン化された金属では、材料の活性成分は、焼結を促進するための還元剤又はフラックスである。還元剤は、グラファイトの粒子、グラフェン、カーボンナノチューブ、フラーレン、sp2結合を有する他の形態の炭素、水素化ホウ素ナトリウム、還元糖、グルコース、スズ(II)を含有する化合物、鉄(II)を含有する化合物、シュウ酸、ギ酸、アスコルビン酸、アセトール、アルファヒドロキシケトン、リン酸、亜リン酸塩、次亜リン酸塩、ホウ砂、塩化アンモニウム、及び塩酸などであり得る。
【0032】
ネガティブパターン化されたセラミックの活性焼結選択性材料は、焼結されるセラミックよりも高い焼結温度を有する材料を、粒子を通じて直接的に、又は化学的前駆体を通じて間接的にのいずれかで導入することにより、ネガティブパターン化金属と同様の活性選択的焼結剤戦略を使用することができる。焼結阻害のための酸化的戦略は、一般に使用されない。ポジティブパターン化セラミックの活性焼結選択性材料は、セラミックの種類に基づいて広く異なる。セラミックフラックス又はセラミックフラックスの前駆体の添加は、1つの戦略である。セラミックフラックスは、典型的には、鉛、ナトリウム、カリウム、リチウム、カルシウム、マグネシウム、バリウム、亜鉛、ストロンチウム、及びマンガンの酸化物又はこれらを含有する化合物、長石、ホウ素、及び低いガラス転移を有するガラスフリット粒子である。
【0033】
ポリマー供給原料の場合、焼結されるポリマーは、ガラス転移又は融点などの、より低い処理温度を有するバインダ中に埋め込まれる。焼結選択性材料は、潤滑剤、結合を防ぐ界面活性剤、ネガティブ選択性、又は供給原料ポリマーに選択的な可塑剤/溶媒、化学的リンカー、粒子間の接着を促進する選択的な接着剤であり得る。ポリマー焼結は、一般に熱可塑性材料に適用可能である。焼結に好適なポリマーの例は、フッ素化エチレンプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアミド、ポリアクリロニトリルブタジエンスチレン、ポリ乳酸、又はSLS若しくはFDMプロセスで使用される他のポリマーである。
【0034】
焼結選択性材料の他の成分は、堆積プロセスに依存する。他の成分は、他の成分を懸濁又は溶解するための溶媒、粘度調整剤、界面活性剤、安定剤であり得る。溶媒の例は、水、有機溶媒、揮発性溶媒、又は高沸点溶媒、極性溶媒、又は非極性溶媒、トルエン、キシレン、アルカン、デカン、ヘキサン、アイソパー(isopar)、n-メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド、及びアセトフェノンなどである。
【0035】
粘度調整剤及び界面活性剤は、供給原料のバインダ、界面活性剤、及び粘度調整成分として供給原料中で使用される化学物質と同じであり得る。これらのうちのいくつかは、溶媒に可溶性であるグリセリン、ポリマー又はオリゴマー、供給原料中のバインダとして使用される少量の材料、ステアリン酸、ドデシル硫酸ナトリウム、及び上記でより詳細に論じた他の物質である。例えば、圧電駆動インクジェット印刷ヘッドを使用して、焼結選択性材料をパターン化するために、10~14cPの範囲の材料粘度が望ましい。インクが緩慢に分解することができる成分を含有する場合、安定剤を使用して保存期間を延ばすことができる。いくつかの安定剤は、酸化防止剤、紫外線吸収剤、ブチル化ヒドロキシトルエン、及び4-メトキシフェノールなどである。
【0036】
以下の表は、単一の溶媒のリストを示し、50mgの塩と1ミリリットルの溶媒とが溶解するかどうかの結果を示している。単純な溶媒は、供給原料を同時に溶解せず、焼結選択性流体として使用される焼結阻害剤、この場合、Al(NOを溶解しない。NMP及びDMF(ジメチルホルムアミド)などの極性溶媒は、阻害塩を溶解する。非極性溶媒は、供給原料を溶解する。焼結選択性材料が供給原料層に浸透するためには、焼結選択性材料が両方を溶解する必要がある。
【0037】
単純な溶媒は、供給原料及びAl(NOなどの焼結阻害剤を同時に溶解しない。NMP及びDMFなどの極性溶媒は、阻害塩を溶解する。非極性溶媒は、供給原料を溶解する。焼結選択性材料が供給原料層に浸透するためには、焼結選択性材料が両方を溶解する必要がある。表1は、単純な溶媒の例を示し、表2は共溶媒の例を示す。
【表1】
【表2】
【0038】
「部分」の結果は、溶液が室温で濁っていることを意味する。NMPはn-メチルピロリドンであり、DMSOはジメチルスルホキシドであり、PCはプロピレンカーボネートである。共溶媒としてのNMP及びキシレンは、塩及び供給原料の両方を溶解することができるが、相分離された2液体系を形成する。
重複内容の最後
【0039】
ここでの実施形態は、高密度かつ凝集性の焼結可能な供給原料及び焼結選択性材料を含有するバインダの固有の表面エネルギー及び表面張力特性を利用することによって、上述の位置合わせの問題に対する解決策を提供する。熱脱バインダが表面エネルギーコントラストをもたらすとき、焼結選択性が得られる。このことが、別個の液体パターン化システムの必要性、複雑性及びコストの低減、並びに熱境界パターンと焼結選択性材料との間の不正確な位置合わせに起因して生じ得る欠陥の可能性を排除している。
【0040】
予備実験は、概念の証拠を実証した。この場合、レーザを使用して熱パターン化された脱バインダは、焼結選択性材料のパターン化を可能にする表面エネルギーコントラストを作り出した。
【0041】
実験では、レーザカッターを使用して、最大電力及び速度に対して、異なるレーザ強度及び速度設定を試験するために、17-4PH MIM(metal injection molding、金属射出成形)供給原料シートを局所的に熱脱バインダした。電力設定は、最大電力の割合として10%から0.1%へ変化させ、速度設定は1%から0.1%へと変化させた。パターン内の材料の少なくとも部分的な湿潤が観察された。
【0042】
実験のうちの1つは、パターン上に焼結選択性材料をドクターブレードで処理した。境界領域内に局所的湿潤が観察された。別の実験では、焼結選択性材料を塗布する前に、熱脱バインダ後に溶媒脱バインダ工程を追加した。局所的湿潤が再び観察された。
【0043】
実験は、供給原料を脱バインダするためにレーザベースのパターン化によって形成された表面エネルギーコントラストが、表面エネルギーの変化を達成することができ、これにより、パターンへの焼結選択性材料の堆積を可能にすることを示した。実験はまた、接触角又は湿潤角度、バインドされた供給原料と脱バインダされた供給原料との間の差の測定を可能にした。結果は以下のとおりである。
【表3】
【0044】
上記で開示されたものの変形、並びに他の特徴及び機能、又はこれらの代替物が、多くの他の異なるシステム又は用途に組み合わされ得ることは、理解されるであろう。様々な現在予期されていない、又は先行例のない代替物、修正、変形、又は改善が、その後に当業者によってなされてもよく、それらも以下の特許請求の範囲によって包含されることを意図している。

図1
図2
図3