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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022077067
(43)【公開日】2022-05-23
(54)【発明の名称】会議用什器の自動配置システム
(51)【国際特許分類】
   A47C 1/12 20060101AFI20220516BHJP
【FI】
A47C1/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020187700
(22)【出願日】2020-11-11
(71)【出願人】
【識別番号】000201478
【氏名又は名称】前田建設工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】508099922
【氏名又は名称】知能技術株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100130362
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 嘉英
(72)【発明者】
【氏名】安井 利彰
(72)【発明者】
【氏名】林 清一
(72)【発明者】
【氏名】バレ バンジャマン
(72)【発明者】
【氏名】赤川 大空
【テーマコード(参考)】
3B099
【Fターム(参考)】
3B099FA00
(57)【要約】
【課題】 所望の配列パターンで会議用什器(椅子やテーブル等)を配置するとともに、低コストで多数の会議用什器を配置する。
【解決手段】 会議用什器の配列範囲において会議用什器10及び配列手段30の存在位置を撮影可能な撮影手段20と、会議用什器10を移動させる配列手段30と、会議用什器10の配列制御を行う配列制御手段40とを備える。配列制御手段40は、撮影した会議用什器10及び配列手段30の画像に基づいて、会議用什器10及び配列手段30の概略位置及び配列手段30の会議用什器10に対する方向を特定し、予め設定した配列に従って各会議用什器10の設置位置をそれぞれ指定し、会議用什器10及び配列手段30の概略位置及び配列手段30の方向(向き)に基づき、会議用什器10を保持するとともに、目的位置で会議用什器10の保持を解除するための各手段を備える。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の会議用什器を個別に目的の位置に配置するためのシステムであって、撮影手段と、配列手段と、配列制御手段とを備え、
前記撮影手段は、
会議用什器の配列範囲において会議用什器及び配列手段の存在位置を撮影可能であり、
前記配列手段は、
会議用什器を目的位置に移動させるための駆動輪と、
駆動輪を駆動するための車輪駆動手段と、
会議用什器を保持するための保持手段と、
それぞれ態様が異なる少なくとも二つの方向特定部からなる方向特定手段と、を備え、
前記配列制御手段は、
撮影手段で撮影した会議用什器の画像に基づいて、会議用什器の概略位置を特定する会議用什器概略位置特定手段と、
撮影手段で撮影した配列手段及び方向特定手段の画像に基づいて、配列手段の概略位置及び会議用什器に対する配列手段の方向を特定する配列手段概略位置特定手段と、
予め設定した配列に従って各会議用什器の設置位置をそれぞれ指定する設置位置指定手段と、
特定した会議用什器及び配列手段の概略位置及び特定した配列手段の方向に応じて、配列手段を会議用什器保持可能位置に移動させて、保持手段により会議用什器を保持するとともに、目的位置で保持手段による会議用什器の保持を解除する保持制御手段と、
を備えたことを特徴とする会議用什器の自動配置システム。
【請求項2】
前記方向特定部は、球状部材からなり、
各方向特定部は、色相、彩度、明度、大きさの少なくとも一つが、それぞれ異なる、
ことを特徴とする請求項1に記載の会議用什器の自動配置システム。
【請求項3】
前記設置位置指定手段は、
各会議用什器の現在位置情報と予め設定した会議用什器の配列との比較に基づいて、各会議用什器の最適な設置位置をそれぞれ指定する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の会議用什器の自動配置システム。
【請求項4】
前記保持手段は、会議用什器の脚部を保持するための少なくとも2つの把持アームを備えており、
把持アームは、会議用什器の脚部を把持していない場合には配列手段の本体部に接近した閉状態となり、会議用什器の脚部を把持している場合には配列手段の本体部から脚部に向かって突出した開状態となる、
ことを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の会議用什器の自動配置システム。
【請求項5】
前記配列手段を複数備えたことを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の会議用什器の自動配置システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、会議用什器の自動配置システムに関するものであり、詳しくは、予め設定した配列に従って、椅子等からなる複数の会議用什器を個別に目的の位置に自動配置(配列)するためのシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
講堂や体育館等では、大勢の人を着席させるために多数の椅子やテーブル等を配置する必要がある。また、収容する人数、会議や催し物の態様等に応じて、椅子やテーブル等の配列が異なるのが一般的である。このため、講堂や体育館等で椅子やテーブル等を配置するには、人手で多数の椅子やテーブル等を持ち運び、予め設定した配列に従って椅子やテーブル等を配置する必要がある。人手で多数の椅子やテーブル等を配置するには、手間が掛かるとともに、必ずしも正確な位置に椅子やテーブル等を配置できるとは限らない。
【0003】
そこで、人手に頼らずに多数の会議用什器(例えば、椅子)を正確な位置に配置することができる技術が種々開示されている(例えば、特許文献1~特許文献4参照)。
【0004】
特許文献1に記載された技術は、椅子を自動収納し、あるいは自動布設するために、台車上に多数のフックを少間隔の並列状態で上下両方向に移動可能に設け、各フックで順次積み重ね可能な椅子の横つなぎ材を吊り上げ、又は吊り降ろすようにしたものである。このような構成とすることにより、椅子の収納及び布設をすべて自動で行うことができるとしている。
【0005】
特許文献2に記載された技術は、車輪と取手を備え、椅子を積載案内する下部ガイドレールと、この下部ガイドレール上に平行に配置され、多数の椅子を傾倒姿勢で重ね合わせて縦列保持する上部ガイドレールとから構成され、自走用の動力車が連結される椅子自動配列・回収機用自動搬送装置に関するものである。この椅子自動配列・回収機用自動搬送装置は、取手を下部ガイドレールに傾動可能に枢着し、この取手に回動可能なブラケットを介して取手を傾動及び起立させるガスダンパーを取り付け、上部ガイドレールの一端をブラケットに固定すると共に、下部ガイドレールに回動可能なリンクを介して連結し、取手の傾動及び起立動作に追従して上部ガイドレールを下部ガイドレールと平行な状態で下降及び上昇変位可能となっている。
【0006】
このような構成とすることにより、自動搬送装置に積載保持した椅子の地上高を通常の運搬時の高さと、これよりも低く変位可能としているため、通常の地上高よりも低いステージ下等の空間内に自動搬送装置に椅子を積載したまま進入して格納することができ、ステージ下等の空間を有効に利用することができるとしている。
【0007】
特許文献3に記載された技術は、自動搬送装置本体に、椅子を積載案内する下部ガイドレールと、この下部ガイドレール上に平行に配置され、多数の椅子を傾倒姿勢で重ね合わせて縦列保持する上部ガイドレールと、走行用の車輪と、自走用の動力駆動装置とを備えている。そして、自動搬送装置本体の前端部に既に配列した椅子の脚を検出するセンサーを装備し、センサーによって既に配列した椅子の横に配列する椅子を既に配列されている椅子を基準にして整列するように自走用の動力駆動装置を制御可能としたものである。
【0008】
このような構成とすることにより、既に縦列配列された椅子の横に配列する椅子は、既に縦列配列された椅子に対し正しく位置が整合された縦列ピッチで配列することができるので、縦列の全長にバラツキがなくなるとしている。
【0009】
特許文献4に記載された技術は、椅子を配列布設するフロアに所定の配列ピッチでマーキングが施された配列用倣いテープを敷設する。そして、走行装置で駆動する駆動車輪と操舵装置で操舵する操舵車輪とを有する自動搬送装置本体の前端部に装備したセンサーによって配列用倣いテープと、この配列用倣いテープに施された配列ピッチのマーキングとを検出して自動搬送装置本体を配列用倣いテープに沿って操舵制御し、かつ所定の配列ピッチ位置で一時停止して椅子を配列布設制御するようになっている。
【0010】
このような構成とすることにより、椅子を配列する際に、直線の縦列で、しかも配列ピッチが縦列の全長に渡ってバラツキがなく自動的に配列布設することができ、自動搬送装置本体の操作経験のない人又は少ない人であっても簡単に配列布設が可能であるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開昭63-252105号公報
【特許文献2】特開平9-71308号公報
【特許文献3】特開平10-157627号公報
【特許文献4】特開平10-215972号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上述したように、特許文献1~4に記載された技術は、複数の椅子をまとめて移動させるものである。また、特許文献4に記載された技術は、予め設置したマーキングテープに沿って椅子を移動させるものである。
【0013】
しかし、会議や催し物の態様等に応じた椅子やテーブル等の配列は多種多様であり、複数の椅子やテーブル等をまとめて移動させる態様では、基本的に並行直角に配置することしかできず、きめ細かな配列に対応するには無理がある。このため、設定した配列どおりに椅子やテーブル等を配置できなかったり、配置された椅子やテーブル等の一部を回収できなかったりするおそれがあり、結局、人手に頼って椅子やテーブル等を配置したり、回収したりしなければならない。
【0014】
従来の技術で配列する椅子は、座面を重ねることにより複数個を一纏めとして収容する態様となっており、このように座面を重ねることができない態様の椅子には対応できなかった。
【0015】
また、複数の椅子やテーブル等にそれぞれ移動装置を取り付けて、所望位置に椅子やテーブル等を移動させる技術もあるが、椅子やテーブル等の数だけ移動装置が必要となり、コストが上昇するという問題があった。
【0016】
本発明は、上述した事情に鑑み提案されたもので、会議や催し物の態様等に応じた多種多様な配列パターンで会議用什器(例えば、椅子やテーブル)を配置(配列)することができるだけではなく、低コストで多数の会議用什器を配置(配列)することが可能な会議用什器の自動配置システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明に係る会議用什器の自動配置システムは、上述した目的を達成するため、以下の特徴点を有している。すなわち、本発明に係る会議用什器の自動配置システムは、複数の会議用什器を個別に目的の位置に配置するためのシステムであって、撮影手段と、配列手段と、配列制御手段とを備えたことを特徴とするものである。なお、本発明における会議とは、参加者が一堂に会して議論を行う一般的な会議だけではなく、多数の者が一堂に会する講演会やパーティ等を含むものである。また、本発明における会議用什器とは、会議等に使用する機器であり、椅子、テーブル、パネル等を含んでいる。
【0018】
撮影手段は、会議用什器の配列範囲において会議用什器及び配列手段の存在位置を撮影可能である。
【0019】
配列手段は、会議用什器を目的位置に移動させるための駆動輪と、駆動輪を駆動するための車輪駆動手段と、会議用什器を保持するための保持手段と、それぞれ態様が異なる少なくとも二つの方向特定部からなる方向特定手段とを備えている。
【0020】
配列制御手段は、撮影手段で撮影した会議用什器の画像に基づいて、会議用什器の概略位置を特定する会議用什器概略位置特定手段と、撮影手段で撮影した配列手段及び方向特定手段の画像に基づいて、配列手段の概略位置及び会議用什器に対する配列手段の方向を特定する配列手段概略位置特定手段と、予め設定した配列に従って各会議用什器の設置位置をそれぞれ指定する設置位置指定手段と、特定した会議用什器及び配列手段の概略位置及び特定した配列手段の方向に応じて、配列手段を会議用什器保持可能位置に移動させて、保持手段により会議用什器を保持するとともに、目的位置で保持手段による会議用什器の保持を解除する保持制御手段とを備えている。
【0021】
上述した構成に加えて、方向特定部は、球状部材からなり、各方向特定部は、色相、彩度、明度、大きさの少なくとも一つが、それぞれ異なるような構成とすることが可能である。
【0022】
上述した構成に加えて、設置位置指定手段は、各会議用什器の現在位置情報と予め設定した会議用什器の配列との比較に基づいて、各会議用什器の最適な設置位置をそれぞれ指定することが可能である。
【0023】
上述した構成に加えて、保持手段は、会議用什器の脚部を保持するための少なくとも2つの把持アームを備えており、把持アームは、会議用什器の脚部を把持していない場合には配列手段の本体部に接近した閉状態となり、会議用什器の脚部を把持している場合には配列手段の本体部から脚部に向かって突出した開状態となるような構成とすることが可能である。
【0024】
上述した構成に加えて、配列手段を複数備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0025】
本発明に係る会議用什器の自動配置システムによれば、複数の会議用什器(椅子やテーブル等)を個別に目的の位置に配置(配列)することができるので、会議や催し物の態様等に応じた多種多様な会議用什器(椅子やテーブル等)の配列に対してきめ細かな対応が可能となり、人手に頼ることなく、効率的に会議用什器(椅子やテーブル等)を自動配置(自動配列)することができる。
【0026】
また、配列手段に取り付けられた方向特定部により、配列手段の方向(向き)を特定しているので、画像認識が容易となり、配列手段の方向(向き)を正確かつ確実に特定することができる。
【0027】
また、各会議用什器(椅子やテーブル等)に対してそれぞれ移動装置を設ける必要がないので、一般的に普及している市販の会議用什器(椅子やテーブル等)を利用して自動配置システムを構築することができ、会議用什器(椅子やテーブル等)の配置(配列)に関するコストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明の実施形態に係る会議用什器の自動配置システムの全体構成を示す機能ブロック図。
図2】本発明の実施形態に係る会議用什器の自動配置システムのシステム構成図。
図3】本発明の実施形態に係る会議用什器の自動配置システムにおける入出力データの関係を示す模式図。
図4】本発明の実施形態に係る会議用什器の自動配置システムを構成する配列手段(搬送ロボット)の正面図。
図5】本発明の実施形態に係る会議用什器の自動配置システムを構成する配列手段(搬送ロボット)の側面図。
図6】本発明の実施形態に係る会議用什器の自動配置システムを構成する配列手段(搬送ロボット)で会議用什器(椅子)を保持する手順を示す模式図。
図7】本発明の実施形態に係る会議用什器の自動配置システムで会議用什器(椅子)を移動する手順を示す模式図(1)。
図8】本発明の実施形態に係る会議用什器の自動配置システムで会議用什器(椅子)を移動する手順を示す模式図(2)。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係る会議用什器の自動配置システムを説明する。なお、以下の説明では、会議用什器として椅子を例にとっているが、会議用什器とは、会議、講演会、パーティ等に使用する椅子、テーブル、パネル等のことであり、本発明は、これらの什器に広く適用することができる。
【0030】
図1図8は本発明の実施形態に係る会議用什器の自動配置システムを説明するもので、図1は全体構成を示す機能ブロック図、図2はシステム構成図、図3は入出力データの関係を示す模式図、図4及び図5は配列手段(搬送ロボット)の正面図、側面図、図6は会議用什器(椅子)を保持する手順を示す模式図、図7及び図8は会議用什器(椅子)を移動する手順を示す模式図である。
【0031】
<会議用什器の自動配置システムの概要>
本発明の実施形態に係る会議用什器の自動配置システムは、予め設定した配列に従って、複数の会議用什器(本実施形態では椅子10)を個別に目的の位置に配置(配列)するためのシステムである。椅子10の配置(配列)とは、既に配置(配列)されている椅子10を並べ替える場合、収納場所に収納されている椅子10を取り出して配置(配列)する場合、配置(配列)されている椅子10を回収して収納場所に収納する場合等、椅子10を個別に移動させるあらゆる態様を含んでいる。
【0032】
<会議用什器/椅子>
本実施形態で会議用什器として説明する椅子10は、いわゆるキャスター付きの椅子10であり、4つの脚部11を有するとともに、各脚部11の下端部には椅子10を床上で自由に移動させるための車輪12がそれぞれ取り付けられている。なお、脚部11の数は3つ、あるいは5つ以上であってもよいが、本実施形態では、配列手段(搬送ロボット)30を椅子10の座板の下方に潜り込ませるとともに安定性を保つため、4脚としている。また、椅子10をコンパクトに収容することを考慮して、座板の角度を調整可能(例えば、複数の椅子10を一連に重畳可能)であることが好ましいが、折りたたみ式の椅子10であることは必須条件ではない。
【0033】
この会議用什器の自動配置システムについて、まず初めに、機能手段の構成について説明する。会議用什器の自動配置システムの機能手段は、図1に示すように、撮影手段20と、配列手段30と、配列制御手段40とからなる。以下、配列手段30を搬送ロボットと称して説明を行う。各手段は、それぞれの機能を発揮する機器と、コンピュータ及びこれにインストールされたプログラムにより構成される。なお、コンピュータ及びこれにインストールされたプログラムとは、パーソナルコンピュータ、マイクロコンピュータ、PLC等の演算機能を有する機器及びこれらにインストールされたプログラムを含む広い概念である。
【0034】
また、図示しないが、各手段は通信手段(通信制御手段を含む)を備えており、相互にデータ通信可能となっている。データ通信は、有線通信又は無線通信、あるいはこれらを複合して利用することができ、通信方式はどのような方式であってもよい。一般的に、同一の機器内におけるデータ通信は通信ケーブルを用いた有線通信により実施され、離隔した機器間のデータ通信は無線通信により実施される。
【0035】
<撮影手段>
撮影手段20は、椅子(会議用什器)10及び搬送ロボット(配列手段)30の配列範囲において椅子(会議用什器)10及び搬送ロボット(配列手段)30を撮影するための手段である。撮影手段20は、例えば、椅子10の配置範囲(配列範囲)である講堂や体育館等の天井部分に取り付けた360°全方位カメラを用いることができる。360°全方位カメラは、講堂や体育館等の天井部分であって、椅子10の配置範囲(配列範囲)全体を俯瞰できる位置に取り付ける。なお、椅子10の配置範囲(配列範囲)全体を俯瞰できれば、撮影範囲が重複する複数のカメラにより撮影手段20を構成してもよい。
【0036】
この撮影手段20により、椅子10及び搬送ロボット30の映像を撮影して椅子10及び搬送ロボット30を識別し、撮影した映像を分析することにより、椅子10及び搬送ロボット30の概略位置及び椅子10に対する搬送ロボット30の方向(向き)を認識することができる。
【0037】
本実施形態では、椅子10の下に搬送ロボット30の本体部11が潜り込んで椅子10を把持して移動させるため、このような状態では搬送ロボット30が椅子10の陰になるが、後に詳述するように、搬送ロボット30に方向特定手段35を設けてあるため、方向特定手段35を撮影した映像を分析することにより、搬送ロボット30の方向(向き)を認識することができる。
【0038】
<配列手段(搬送ロボット)>
搬送ロボット30は、椅子10を所望の位置にまで移動させるための手段である。この搬送ロボット30は、本体部31に設けた駆動輪32と、駆動輪32を駆動するための車輪駆動手段33と、椅子10を保持するための保持手段34(例えば、把持アーム)と、それぞれ態様が異なる少なくとも二つの方向特定部35a、35bからなる方向特定手段35とを備えている。
【0039】
搬送ロボット30の本体部31は、図4及び図5に示すように、椅子10の下部に潜り込むことができる大きさ及び高さとなっており、一端部(本実施形態では後部)に左右一対の支柱37を設け、支柱37の上部に掛け渡した支持捍38の両端部に、方向特定手段35として機能する一対のボール(方向特定部35a、35b)を取り付けてある。すなわち、一対のボール(方向特定部35a、35b)は、左右方向に離隔している。上述したように一対のボールは、赤色、青色等、それぞれ態様が異なるように彩色されている。
【0040】
なお、搬送ロボット30は、1機に限られず、複数機とすることが可能であり、搬送ロボット30の数は、移動させる椅子10の数、椅子10を配置(配列)する場所の面積や形状、椅子10の配置(配列)を終了するまでの時間等に応じて適宜決定することができる。
【0041】
<車輪駆動手段>
車輪駆動手段33は、駆動輪32を駆動するための手段であり、例えば、モータからなる。また、駆動輪32の他に、車輪(図示せず)を備えていてもよい。駆動輪32の数は限定されないが、すべての車輪を駆動輪32としてもよいし、一部の車輪を駆動輪32としてもよい。
【0042】
<保持手段>
保持手段34は、椅子10の脚部11を保持するための手段であり、例えば、図6に示すように、一対の把持アームからなる(以下、保持手段34を把持アームと称して説明を行う)。把持アーム34は、搬送ロボット30の本体部31から側方に向かって開閉可能(あるいは進退可能)な部材であり、椅子10の脚部11を把持していない場合には搬送ロボット30の本体部31に接近した閉状態となり、脚部11を把持している場合には搬送ロボット30の本体部31から椅子10の脚部11に向かって突出した開状態となる。把持アーム34は、本体部31に取り付けたモータ39の駆動により動作する。
【0043】
具体的には、図4及び図5に示すように、搬送ロボット30の本体部31は、円板状の上板及び下板を備えており、上板と下板との間に、一対の把持アーム34を回動可能に取り付けてある。各把持アーム34は、一端が回動支点となるように本体部31に取り付けることにより、本体部31に対して他端が開閉可能となっている。また、把持アーム34の自由端側であって、開状態となった際に外側(開状態に回動させた際に回動方向の前側)には、椅子10の脚部11が嵌まり込む脚嵌合凹部34aを設けてある。詳細には図示しないが、本体部31の内部には把持アーム34を駆動するモータ39が収納されており、把持アーム34の回動支点にモータ39の駆動軸が連結されている。
【0044】
なお、把持アーム34の形状は上述した態様に限られず、椅子10の脚部11を把持できればどのような構造であってもよい。例えば、一組の半円状の把持部を回動支持部で支持して全体として円状とし、回動支持部を回動支点として開状態と閉状態となるような、いわゆる手錠型の部材としてもよい。把持部を開閉駆動するには、モータ等の駆動手段を使用すればよい。また、把持部は、開状態と閉状態とで固定(ロック)可能とする。
【0045】
また、椅子10以外の会議用什器を保持するための保持手段34については、特に説明しないが、会議用什器(テーブル等の構成部材)を保持できれば、どのような態様であってもよい。会議用什器が脚部を有する場合には、椅子10に用いた把持アーム34をそのまま使用してもよいし、脚部の形状に合わせて改造して使用してもよい。
【0046】
<方向特定手段>
方向特定手段35は、図4及び図5に示すように、搬送ロボット(配列手段)30の背部に設けた支柱37(支持桿38)に取り付けられており、それぞれ態様が異なる少なくとも二つの方向特定部35a、35bを備えている。この方向特定部35a、35bは、球状部材からなり、各方向特定部35a、35bは、色相、彩度、明度、大きさの少なくとも一つが、それぞれ異なっている。本実施形態の方向特定部35a、35bは、一般的に市販されている一組のボールからなり、各ボールはそれぞれ赤色、青色に彩色されている。
【0047】
上述したように、本実施形態の撮影手段20は、講堂や体育館等の天井部分に取り付けた360°全方位カメラからなる。この360°全方位カメラでは、講堂や体育館等の周辺部に向かうにしたがって、撮影した画像に歪みが発生する。画像の歪みは、コンピュータ処理により修正することができるが、使用するカメラの諸元に基づいてコンピュータ処理におけるパラメータが異なるため、すべての画像の歪みに適切に対応することは困難である。
【0048】
この点、球状の物体を撮影した画像は、歪みの修整が容易であるため、本実施形態では、方向特定部35a、35bとして球状のボールを用いている。また、色相、彩度、明度、大きさの少なくとも一つを異ならせることにより、一組の方向特定部35a、35b(ボール)を容易に区別することができる。
【0049】
<配列制御手段>
配列制御手段40は、撮影手段20で撮影した椅子10及び搬送ロボット30(方向特定手段35)の画像に基づいて、椅子10及び搬送ロボット30の概略位置を特定するとともに、各椅子10の設置位置(配列位置)をそれぞれ指定し、各椅子を保持するために、会議用什器概略位置特定手段41と、配列手段概略位置特定手段42と、設置位置指定手段43と、保持制御手段44とを備えている。
【0050】
<会議用什器概略位置特定手段>
会議用什器概略位置特定手段41は、撮影手段20で撮影した椅子10の画像に基づいて、椅子10の概略位置を特定するための手段である。すなわち、撮影手段20により、椅子10の配置範囲(配列範囲)の上方から椅子10を撮影し、撮影画像を解析することにより、当該椅子10が配置範囲(配列範囲)内のどこに位置しているかを特定する。椅子10が複数存在する場合には、各椅子10について概略位置を特定する。
【0051】
<配列手段概略位置特定手段>
配列手段概略位置特定手段42は、撮影手段20で撮影した搬送ロボット30及び方向特定手段35(方向特定部35a、35b)の画像に基づいて、搬送ロボット30の概略位置及び椅子10に対する搬送ロボット30の方向(向き)を特定するための手段である。すなわち、撮影手段20により、椅子10の配置範囲(配列範囲)の上方から搬送ロボット30(方向特定手段35)を撮影し、撮影画像を解析することにより、搬送ロボット30の概略位置及び搬送ロボット30の椅子10に対する方向(向き)を特定することができる。搬送ロボット30が複数存在する場合には、各搬送ロボット30について、その概略位置及び各椅子10に対する方向(向き)を特定する。
【0052】
<設置位置指定手段>
設置位置指定手段43は、予め設定した配列に従って各椅子10の設置位置(配列位置)をそれぞれ指定するための手段である。各椅子10の設置位置(配列位置)は、オペレータの指示入力に基づいて、配列プログラムが指定するようになっている。なお、椅子10の設置位置(配列位置)は、講堂や体育館等の大きさや形状、設置(配列)する椅子10の数、実施するイベント等に基づいて、予め複数種類の設置パターン(配列パターン)を用意しておき、これらの設置パターン(配列パターン)の中からオペレータ(ユーザー)の指示入力に基づいて、設置位置指定手段43が自動的に指定してもよいし、オペレータ(ユーザー)からの個別指示入力に基づいて、設置位置指定手段43が個別に指定してもよい。
【0053】
また、設置位置指定手段43は、各椅子10の現在位置情報と予め設定した椅子10の配列との比較に基づいて、各椅子10の最適な設置位置(配列位置)をそれぞれ指定することが可能である。例えば、複数の椅子10が存在する場合に、各椅子10の現在位置情報を個別に取得して、設定した設置パターン(配列パターン)に基づいて各椅子10の移動距離が最短となるように、各椅子10の設置位置(配列位置)をそれぞれ指定する。
【0054】
さらに、椅子10及び搬送ロボット30が複数存在する場合に、各椅子10の現在位置情報と各搬送ロボット30の現在位置情報を個別に取得して、設定した設置パターン(配列パターン)に基づいて各椅子10(各椅子10を移動させる搬送ロボット30)の移動距離が最短となるように、各椅子10の設置位置(配列位置)をそれぞれ指定してもよい。設置位置指定手段43による各椅子10の設置位置(配列位置)の指示は、設置位置指定手段43における演算処理により実施される。
【0055】
<保持制御手段>
保持制御手段44は、特定した椅子10及び搬送ロボット30の概略位置及び特定した搬送ロボット30の方向に応じて、搬送ロボット30の本体部31を椅子10の座板下方であって複数の脚部11を把持可能な位置に移動させて、把持アーム34により椅子10の脚部11を保持するとともに、目的位置で把持アーム34による椅子10の脚部11の把持を解除するための手段である。各椅子10の概略位置は会議用什器概略位置特定手段41により特定され、搬送ロボット30の各椅子10に対する方向(向き)は配列手段概略位置特定手段42により特定される。
【0056】
すなわち、会議用什器概略位置特定手段41、配列手段概略位置特定手段42、設置位置指定手段43が総合的に機能することにより、椅子10及び搬送ロボット30の位置と、椅子10を配置する目的位置とを特定することができる。また、保持制御手段44の制御に基づいて、把持アーム34により椅子10の脚部11を把持して目的位置にまで移動させた後に、把持アーム34による椅子10の把持を解除して、椅子10を目的位置に配置(配列)することができる。
【0057】
<システム構成>
次に、図2を参照して、会議用什器の自動配置システムの具体的なシステム構成について説明する。会議用什器の自動配置システムは上述した機能手段により構成されるが、各機能手段は以下に説明する具体的な機器により構成される。本実施形態の会議用什器の自動配置システムは、会議用什器(椅子)10及び配列手段(搬送ロボット)30の位置認識及びシステムの総合的な制御を行う管理システム100と、配列手段(搬送ロボット)30の具体的な動作制御を行う配列制御システム200とにより構成される。
【0058】
<管理システム>
管理システム100は、図2に示すように、PC(パーソナルコンピュータ)110を演算システムとしており、会議用什器(椅子)10及び配列手段(搬送ロボット)30の位置の把握を行う。PC110はPoEハブ120を介して360°全方位カメラ20、無線ルータ130と接続されている。また、PC110はユーザからのデータ入力や指示入力を受け付けるようになっている。PC110とPoEハブ120との間はUTPケーブルにより接続されており、画像データの送受信が行われる。なお、PC110は、PoEハブ120を介さずに、無線ルータ130との間で無線通信によりデータの送受信を行ってもよい。PoEハブ120と無線ルータ130との間はLANケーブルにより接続されており、各種のデータが送受信される。PoEハブ120と360°全方位カメラ20との間はUTPケーブルにより接続されており、画像データの送受信と給電が行われる。
【0059】
<配列制御システム>
配列制御システム200は、図2に示すように、マイコン(マイクロコンピュータ)210を演算システムとしており、配列手段(搬送ロボット)30に設けた各機器の制御を行う。マイコン210には、バッテリー220から給電が行われるとともに、LRF(レーザレンジファインダー)36からスキャンデータが入力される。
【0060】
<入出力データ>
図3を参照して、上述したシステム構成における入出力データの関係を説明する。上述したように、管理システム100は会議用什器(椅子)10及び配列手段(搬送ロボット)30の位置の把握を行い、配列制御システム200は配列手段(搬送ロボット)30の駆動制御を行う。
【0061】
図3に示すように、管理システム100では、ユーザが入力した配列パターンデータをPC110が受信し、PC110は360°全方位カメラ20から会議用什器(椅子)10及び配列手段(搬送ロボット)30の位置信号を受信する。配列制御システム200では、マイコン210から駆動輪32を駆動する車輪駆動手段であるモータ33と、保持手段(把持アーム)34を駆動するモータ39に対して、制御データを送信し、各モータ33、39からマイコン210に対して動作履歴データを送信する。マイコン210により各モータ33、39を制御することにより配列手段30(駆動輪32、把持アーム34)の動作を制御する。また、マイコン210は、LRF36から椅子10の向き情報を受信する。
【0062】
なお、LRF36はスキャンデータに基づいて種々の物体を認識することができるため、LRF36を障害物の認識に使用し、搬送ロボット30が障害物を避けて走行するような制御を行ってもよい。また、搬送ロボット30に、デジタルカメラ等の撮影装置と、撮影対象を照明する照明装置を搭載してもよい。
【0063】
<椅子の自動配置方法>
次に、図7及び図8を参照して、上述した椅子10の自動配置システムを用いた会議用什器(椅子)10の自動配置方法の概略を説明する。本実施形態では、講堂や体育館等の天井に設置した360°全方位カメラ20により、椅子10の概略位置及び搬送ロボット30の概略位置を認識する。そして、図7及び図8に示すように、設定した搬送手順に従って、管理システム100が搬送ロボット30に対して搬送対象となる椅子10を指示する。搬送ロボット30はLRF36で椅子10の脚部11の位置を検知し、椅子10の座板の下方に潜り込むための経路を設定する。
【0064】
なお、本実施形態の椅子10は前方に位置する一対の脚部11と後方に位置する一対の脚部11の間隔が異なるため、脚部11の間隔の相違に基づいて椅子10の向きを把握することができる。
【0065】
また、脚部11の間隔、脚部11の太さ、脚部11の長さ、脚部11の色が、前方に位置する脚部11と後方に位置する脚部11とで異なれば、LRF36による位置検出やデジタルカメラにより撮影した映像に基づいて、椅子10の向きを把握することができるが、すべての脚部11において同一の態様である場合には、椅子10に対して方向を認識させるための識別標識を取り付けておき、この識別標識をデジタルカメラ等で撮影して、その映像を分析することにより椅子10の向きを把握すればよい。
【0066】
そして、把持アーム34により椅子10の脚部11を把持できるように、認識した椅子10の向きに応じて、搬送ロボット30を旋回させて、把持アーム34で椅子10の脚部11を把持する。
【0067】
さらに、図示しないが、把持アーム34で椅子10の脚部11を把持したら、椅子10を目的位置にまで搬送し、把持アーム34による脚部11の把持を解除して、椅子10を目的位置に設置する。このような手順を繰り返すことにより、搬送ロボットによる椅子10の自動配置(自動配列)を行う。
【符号の説明】
【0068】
10 椅子
11 脚部
12 車輪
20 撮影手段(360°全方位カメラ)
30 配列手段(搬送ロボット)
31 本体部
32 駆動輪
33 車輪駆動手段(モータ)
34 保持手段(把持アーム)
34a 脚嵌合凹部
35 方向特定手段
35a、b 方向特定部
36 LRF(レーザレンジファインダー)
37 支柱
38 支持捍
39 保持手段の駆動モータ
40 配列制御手段
41 会議用什器概略位置特定手段
42 配列手段概略位置特定手段
43 設置位置指定手段
44 保持制御手段
100 管理システム
110 PC
120 PoEハブ
130 無線ルータ
200 配列制御システム
210 マイコン
220 バッテリー
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8