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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022077136
(43)【公開日】2022-05-23
(54)【発明の名称】猫の爪の研磨・研削器
(51)【国際特許分類】
   A01K 15/02 20060101AFI20220516BHJP
【FI】
A01K15/02 G
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020187820
(22)【出願日】2020-11-11
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-06-23
(71)【出願人】
【識別番号】520441981
【氏名又は名称】合同会社NeCoNe
(74)【代理人】
【識別番号】100141472
【弁理士】
【氏名又は名称】赤松 善弘
(72)【発明者】
【氏名】庄田 優
(72)【発明者】
【氏名】山田 貴弘
(57)【要約】
【課題】猫が爪を研磨するとともに爪先を効率よく研削することができる猫の爪の研磨・研削器を提供する。
【解決手段】猫の爪を研磨するための研磨面と猫の爪を研削するための複数の研削部3とが研磨・研削器1の表面に形成されてなり、研磨面3が、複数のライナー4と複数の波形形状を有する中芯5とが交互に隣接して積層されてなる積層段ボール6の中芯5の波形形状が存在している、ライナー4と中芯5との積層面であり、研削部3に、上面の平面形状が線状であり、積層段ボール6と接する少なくとも一方の側面に研削面を有する研削部材7が積層段ボール6と隣接して設けられ、研削部材7の上面が研磨・研削器1の表面に露出していることを特徴とする。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
猫の爪を研磨するための研磨面と猫の爪を研削するための複数の研削部とが研磨・研削器の表面に形成されてなり、前記研磨面が、複数のライナーと複数の波形形状を有する中芯とが交互に隣接して積層されてなる積層段ボールの中芯の波形形状が存在している、ライナーと中芯との積層面であり、前記研削部に、上面の平面形状が線状であり、積層段ボールと接する少なくとも一方の側面に研削面を有する研削部材が当該積層段ボールと隣接して設けられ、当該研削部材の上面が研磨・研削器の表面に露出していることを特徴とする猫の爪の研磨・研削器。
【請求項2】
積層段ボールの表面に凹部または貫通孔が形成され、当該凹部または貫通孔内に研削部材が配設されているか、または複数の積層段ボールが用いられ、積層段ボールと積層段ボールとの間に研削部材が配設されている請求項1に記載の猫の爪の研磨・研削器。
【請求項3】
研削部材の研削面が、猫が爪で引掻く方向に対して交差する方向に設けられている請求項1または2に記載の猫の爪の研磨・研削器。
【請求項4】
積層段ボールのライナーが、猫が爪で引掻く方向に対して平行となる方向に設けられている請求項1~3のいずれかに記載の猫の爪の研磨・研削器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、猫の爪の研磨・研削器に関する。さらに詳しくは、本発明は、猫の爪の研磨と爪の研削とを同時に行なうことができる猫の爪の研磨・研削器に関する。
【背景技術】
【0002】
猫は、古くなった爪の外層を取り除くために爪を磨く習性を有しており、このように猫が爪を磨くことは、一般に猫の爪研ぎ、猫の爪の研磨などと称されている。猫の爪研ぎは、猫の習性であるため、一般家庭内で猫を飼育しているとき、猫が部屋内の壁面、柱、家具などに爪を立てて爪を研ぎ、当該壁面などが猫によって傷つけられることがある。
【0003】
猫が部屋内の壁面、柱、家具などに爪を立てて爪を研ぐことを防止するために、近年、爪を研ぐための猫の爪研ぎ器として、例えば、複数枚の段ボール紙を積層接着して形成された積層段ボールの積層断面または波状の折曲部を爪研ぎの研磨部とし、当該研磨部が外側に露出するようにして前記積層段ボールが着脱自在にケースに収納されているとともに、当該ケース内に紙片収納部を備えている猫の爪研ぎ器が提案されている(例えば、特許文献1の請求項1参照)。
【0004】
しかし、前記猫の爪研ぎ器を用いた場合、猫の爪を研ぐことができたとしても、猫の鋭い爪先を研削することができないため、猫が部屋内の壁面、柱、家具などに爪を立てて爪研ぎをして当該壁面などに傷をつける行為を完全には抑制することができない。
【0005】
したがって、前記猫の爪研ぎ器を使用するにしても猫の爪研ぎとは別に猫の爪を切ることが必要であるが、猫は、習性的に爪を切られることを嫌がるため、無理に猫の爪を切ろうとすると猫に引掻かれたり、噛みつかれたりして怪我をすることがある。
【0006】
そこで、近年、猫の爪を研磨することによって減少させることができる爪研ぎ器として、爪磨き素材積層段ボールまたは麻生地の裏側に研磨材を塗布した素材を木製板または積層段ボールなどの芯台の間に挟んで固着させて爪の研磨をすることができる機能を有する研磨材付き猫の爪研ぎ器が提案されている(例えば、特許文献2の請求項1参照)。
【0007】
しかし、前記研磨材付き猫の爪研ぎ器は、特許文献2の図1および図2に示されているように、表面から順に積層段ボールまたは麻生地4、研磨材2、木製板または積層段ボール1、研磨材3、および積層段ボールまたは麻生地5が設けられていることから、猫が表面層である積層段ボールまたは麻生地4を引掻いて破らなければ爪研ぎ器に内蔵されている研磨材2が外部に露出しないため、常態の使用では爪を研削することができず、また猫が表面層である積層段ボールまたは麻生地4を引掻いて破ることによって研磨材2が外部に露出したとしても、ざらざらしている研磨材2の付着面で前足の肉球(掌球)および爪先が擦れるため、猫は、当該爪研ぎ器を本能的に忌避し、使用しなくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2003-333951号公報
【特許文献2】実用新案登録第3112443号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、前記従来技術に鑑みてなされたものであり、猫が爪を研磨するとともに爪先を効率よく研削することができる猫の爪の研磨・研削器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、
(1) 猫の爪を研磨するための研磨面と猫の爪を研削するための複数の研削部とが研磨・研削器の表面に形成されてなり、前記研磨面が、複数のライナーと複数の波形形状を有する中芯とが交互に隣接して積層されてなる積層段ボールの中芯の波形形状が存在している、ライナーと中芯との積層面であり、前記研削部に、上面の平面形状が線状であり、積層段ボールと接する少なくとも一方の側面に研削面を有する研削部材が当該積層段ボールと隣接して設けられ、当該研削部材の上面が研磨・研削器の表面に露出していることを特徴とする猫の爪の研磨・研削器、
(2) 積層段ボールの表面に凹部または貫通孔が形成され、当該凹部または貫通孔内に研削部材が配設されているか、または複数の積層段ボールが用いられ、積層段ボールと積層段ボールとの間に研削部材が配設されている前記(1)に記載の猫の爪の研磨・研削器、
(3) 研削部材の研削面が、猫が爪で引掻く方向に対して交差する方向に設けられている前記(1)または(2)に記載の猫の爪の研磨・研削器、および
(4) 積層段ボールのライナーが、猫が爪で引掻く方向に対して平行となる方向に設けられている前記(1)~(3)のいずれかに記載の猫の爪の研磨・研削器
に関する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の猫の爪の研磨・研削器によれば、猫が爪を研磨するとともに爪先を効率よく研削することができるという優れた効果が奏される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の猫の爪の研磨・研削器の一実施態様を示す概略平面図である。
図2図1に示される本発明の猫の爪の研磨・研削器の円Xで囲まれている部分の概略拡大図である。
図3】本発明の猫の爪の研磨・研削器において、積層段ボールの凹部または貫通孔に研削部材が挿入されているときの研磨・研削器の縦断面における概略説明図である。
図4】本発明の猫の爪の研磨・研削器において、積層段ボールと積層段ボールとの間に研削部材が配設され、研磨・研削器の上面および下面の両面に研削部が形成されている研磨・研削器の縦断面における概略説明図である。
図5】本発明の猫の爪の研磨・研削器を猫に用いる前後における猫の前足の爪先の状態を示す概略説明図である。
図6】本発明の実施例1において、猫の爪の研磨・研削器を猫に使用した後の当該研磨・研削器の表面状態を示す図面代用写真である。
図7】本発明の実施例1において、本発明の猫の爪の研磨・研削器を使用した後の猫の爪先を示す図面代用写真である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の猫の爪の研磨・研削器は、猫の爪の研磨および研削を同時に行なうことができるという画期的な猫の爪の研磨・研削器である。本発明の猫の爪の研磨・研削器は、その表面に猫の爪を研磨するための研磨面および猫の爪を研削するための研削部を有する。なお、本発明の猫の爪の研磨・研削器の表面は、猫が爪を研磨し、研削する面を意味する。また、猫の爪の研磨・研削は、猫の爪の研磨および研削を意味する。
【0014】
本発明の猫の爪の研磨・研削器は、研磨面が、複数のライナーと複数の波形形状を有する中芯とが交互に隣接して積層されている積層段ボールの中芯の波形形状が存在している、ライナーと中芯との積層面であり、研削部に、上面の平面形状が線状であり、積層段ボールと接する少なくとも一方の側面に研削面を有する研削部材が当該積層段ボールと隣接して設けられ、当該研削部材の上面が研磨・研削器の表面に露出している点に特徴の1つがある。
【0015】
本発明の猫の爪の研磨・研削器は、積層段ボールの中芯の波形形状が存在している面を猫が爪で引掻くという猫の習性を利用したものであり、当該研磨・研削器の研磨面は、複数のライナーと複数の波形形状を有する中芯とが交互に隣接して積層されている積層段ボールの中芯の波形形状が存在している、ライナーと中芯との積層面であり、前記研削部に、上面の平面形状が線状であり、積層段ボールと接する少なくとも一方の側面に研削面を有する研削部材が当該積層段ボールと隣接して設けられ、当該研削部材の上面が研磨・研削器の表面に露出していることから、猫が本発明の研磨・研削器の表面を引掻いたときに猫の爪を研磨することができるとともに、猫の爪先を研削することができる。
【0016】
したがって、本発明の猫の爪の研磨・研削器を猫に用いることにより、猫が自ら爪を研磨するとともに爪先を研削するので、従来のようにヒトが爪切りで猫の爪を切るという煩雑でかつ猫が嫌がる作業が不要となることから、本発明の猫の爪の研磨・研削器は、猫を飼育している飼い主にとって非常に有用なものである。
【0017】
以下に本発明の猫の爪の研磨・研削器を図面に基づいて説明するが、本発明は、当該図面に記載の実施態様のみに限定されるものではなく、本発明の範囲内で当該図面に記載の実施態様以外の実施態様を有していてもよい。
【0018】
図1は、本発明の猫の爪の研磨・研削器1の一実施態様を示す概略平面図である。図2は、図1に示される本発明の猫の爪の研磨・研削器1の円Xで囲まれている部分の概略拡大図である。
【0019】
本発明の猫の爪の研磨・研削器(以下、単に「研磨・研削器」ともいう)1の表面には、図1に示されるように、猫の爪を研磨するための研磨面2と猫の爪を研削するための研削部3とが形成されている。研磨面2および研削部3は、研磨・研削器1の表面のみに形成されていてもよく、その裏面にも形成されていてもよい。
【0020】
研磨面2および研削部3が研磨・研削器1の表面のみに形成されている場合、その裏面に猫の爪を研磨するための研磨面2が形成されていてもよく、研磨面2および研削部3がいずれも形成されていない面であってもよい。研磨・研削器1の表面に研磨面2および研削部3が形成されており、その裏面に研磨面2が形成されている場合、猫の爪を研磨・研削する際には研磨面2および研削部3が形成されている表面で猫の爪を研磨・研削し、猫の爪を研磨・研削する必要がないときには研磨・研削器1を裏返しにし、研磨・研削器1の裏面の研磨面2で猫の爪を研磨することができる。
【0021】
また、猫の爪の研磨・研削器1の表面および裏面の双方に研磨面2および研削部3が形成されている場合、表面が猫の爪によって傷んだときに表面と裏面とをひっくり返すことにより、研磨・研削器1の裏面を有効に利用することができるので、研磨・研削器1の長寿命化を図ることができる。
【0022】
研磨面2は、図2に示されるように、複数のライナー4と複数の波形形状を有する中芯5とが交互に隣接して積層している積層段ボール6によって形成される。したがって、例えば、3層の中芯5を有する積層段ボールでは、ライナー4、中芯5、ライナー4、中芯5、ライナー4、中芯5およびライナー4の順序でライナー4と中芯5とが積層される。ライナー4と中芯5との接触部分は、一般に使用されている段ボールと同様に接着剤によって接着されている。ライナー4は、通常、平面形状を有するが、本発明の目的を阻害しない範囲内で、湾曲していてもよく、波型形状などの形状を有していてもよい。中芯5は、波型形状を有する。中芯5の波型形状としては、例えば、JIS Z1516(2003)に規定の段ボールに使用される中芯が有する波型形状などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0023】
積層段ボール6には、例えば、JIS Z1516(2003)に規定されている段ボールを用いることができる。段ボールの種類には、主として両面段ボールおよび複両面段ボールがあるが、本発明では、いずれも用いることができる。段ボールの段の種類としては、例えば、JIS Z1516(2003)に規定されているA段(記号:AF)、B段(記号:BF)、C段(記号:CF)などがあるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。積層段ボール6におけるライナー4および中芯5の数は、研磨・研削器1の形状およびその大きさなどによって異なるので一概には決定することができないことから、研磨・研削器1の形状およびその大きさなどに応じて適宜決定することが好ましい。
【0024】
研磨面2は、中芯5の波形形状が存在し、ライナー4と中芯5とが積層している積層面である。研磨面2には、ライナー4と中芯5との間で中芯5の波形形状に基づく空隙が存在している。猫が爪を立てて研磨・研削器1の表面を引掻いたとき、爪が当該空隙部分を形成しているライナー4および中芯5に引っかかり、爪がライナー4および中芯5と擦れることから爪が磨かれる。
【0025】
猫の爪の研磨・研削器1の表面の研削部3には、猫の爪を効率よく研磨・研削する観点から、上面の平面形状が線状であり、積層段ボール6と接する少なくとも一方の側面に研削面を有する研削部材7が積層段ボール6と隣接して設けられ、研削部材7の上面が研磨・研削器1の表面に露出している。
【0026】
研削部3には、後述する図3および図4に示されるように、研削面を有する研削部材7が設けられている。研削部材7の研削面は、研磨材が付着している面を意味するが、研磨材を使用しないで研磨可能な凹凸を有する面であってもよい。
【0027】
研削部材7としては、例えば、JIS R6010に規定されている研磨材が基材に付着している研削面を有する研削部材などが挙げられる。研削部材7としては、例えば、基材として紙が使用されているJIS R6252に規定の研磨紙(紙やすり)、基材として布が使用されているJIS R6251に規定の研磨布(布やすり)、JIS R6253に規定の耐水研磨紙(耐水ペーパー)、木板、塩化ビニル樹脂、アクリル樹脂、ポリプロピレンなどの樹脂板、アクリルフォーム、ポリウレタンフォームなどの発泡樹脂(スポンジ)板、クロロプレンゴム、スチレン-ブタジエンゴムなどのゴム板、金属板などの基材の表面に研磨材を付着させた板状の研削部材などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのなかでは、耐久性および軽量化の観点から研磨布および耐水研磨紙が好ましい。研削部材7として、例えば、研磨紙、研磨布、耐水研磨紙などの研削部材を用いる場合、研磨材の付着面が外部に露出するように2つ折りにしたものを用いてもよく、当該2つ折りにした研削部材の内面に両面粘着テープを挟んで内面同士を貼り合わせたもの、当該2つ折りにした研削部材の内面に樹脂板、厚紙などの補強材を挟んだものを用いてもよい。研削部材7は、猫の爪を効率よく研磨・研削する観点から、板状(プレート状)の形状を有することが好ましい。
【0028】
研削部材7の表面に付着している研磨材のJIS R6010に規定の粗さは、特に限定されないが、猫の爪を効率よく研磨・研削するとともに猫に不快感を与えないようにする観点から、60~1000番程度であることが好ましく、80~600番程度であることがより好ましく、100~240番程度であることがさらに好ましい。
【0029】
研削部材7は、猫の爪が研削部材7に引っ掛かることによって猫の爪を効率よく研磨・研削する観点から、積層段ボール6と接する少なくとも一方の側面(積層段ボール6との隣接面)に研削面(図示せず)を有する。研削部材7は、さらに上面に研削面を有していてもよく、両側面に研削面を有していてもよい。これらの研削部材7の実施態様のなかでは、研磨・研削器1の前後を逆にしたときでも猫の爪を効率よく研磨・研削する観点から、研削部材7の両側面に研磨材が付着していることが好ましく、猫の爪をさらに効率よく研磨・研削する観点から、研削部材7の上面および両側面に研磨材が付着していることがより好ましい。
【0030】
なお、研削部材7と積層段ボール6とは、両者を押圧することにより、猫が爪を立てて研磨・研削器1の表面を引掻いたときに両者が動かないように固定してもよく、両者を強固に固定するために接着剤で一体化してもよい。研削部材7と積層段ボール6とを接着剤で一体化させる場合、猫の爪を効率よく研削部材7で研磨・研削する観点から、研削部材7の猫の爪が接触する部分に接着剤が付着しないようにすることが好ましい。
【0031】
研削部3の平面形状は、猫に不快感を与えずに猫の爪を効率よく研磨・研削する観点から線状である。線状には、例えば、直線状、曲線状、波線状などが挙げられるが、本発明は、かかる線状の形態によって限定されるものではない。研削部3の平面形状のなかでは、研磨・研削器1の製造が容易であり、猫の爪を効率よく研磨・研削する観点から直線状であることが好ましい。線状の研削部3の線幅は、研削部材7の種類にもよるが、猫が引掻いたときの研削部材7の機械的強度を維持し、猫の爪を効率よく研磨・研削するとともに猫に不快感を与えないようにする観点から、0.5~5mmであることが好ましく、0.5~3mmであることがより好ましく、0.8~1.5mmであることがさらに好ましい。研削部3の長さは、研磨・研削器1の形状およびその大きさなどによって異なるので一概には決定することができないことから、研磨・研削器1の形状およびその大きさなどに応じて適宜決定することが好ましい。
【0032】
研削部3は、図1に示されるように、研磨・研削器1の全幅にわたって形成されていてもよく、研磨・研削器1の中央部分に形成されていてもよく、所々に点在して形成されていてもよく、本発明は、研磨・研削器1における研削部3の配置によって限定されるものではないが、猫の爪を効率よく研磨・研削する観点から、猫の爪の研磨・研削器1の全幅またはその近傍まで研削部3が形成されていることが好ましい。
【0033】
隣接している研削部3同士の間隔Lは、猫の爪を効率よく研磨・研削するとともに猫に不快感を与えないようにする観点から、10~100mm程度であることが好ましく、20~50mm程度であることがより好ましい。猫の爪の研磨・研削器1に設けられる研削部3の数は、猫の爪の研磨・研削器1の形状およびその大きさなどによって異なるので一概には決定することができないことから、猫の爪の研磨・研削器1の形状およびその大きさなどに応じて適宜決定することが好ましい。研削部3の数は、猫の爪を効率よく研磨・研削する観点から、好ましくは5以上、より好ましくは10以上であり、その上限値は、研磨・研削器1の大きさなどによって異なるので一概には決定することができないが、通常、好ましくは100以下、より好ましくは50以下、さらに好ましくは30以下である。
【0034】
研削部材7は、研削部3で研磨・研削器1の表面に露出するように設けられる。研削部材7は、例えば、図3に示されるように積層段ボール6の表面に凹部(図示せず)を設けるか、または図4に示されるように貫通孔(図示せず)を設け、当該凹部または貫通孔内に配設してもよく、複数の積層段ボール6を用い、積層段ボール6と積層段ボール6との間に研削部材7を配設してもよい。これらの研削部材7が配設される実施態様のなかでは、積層段ボール6の機械的強度を高める観点から、積層段ボール6の表面に凹部または貫通孔を設け、当該凹部または貫通孔内に研削部材7を挿入することが好ましい。また、研磨・研削器1の生産効率を高める観点から、積層段ボール6と積層段ボール6との間に研削部材7を設けることが好ましい。猫の爪を効率よく研磨・研削する観点から、研削部材7として板状(プレート状)の研削部材を用い、例えば、図3および図4に示されるように、研磨・研削器1の平面に対して垂直方向となるように研削部材7を研磨・研削器1に配置することが好ましい。
【0035】
研削部3は、例えば、積層段ボール6の凹部または貫通孔の内面、または研削部材7に接着剤を付着させた後、研削部材7を当該凹部または貫通孔に挿入することにより、積層段ボール6と接着させてもよく、複数の積層段ボール6を用い、積層段ボール6と研削部材7との界面に接着剤を塗布し、積層段ボール6と研削部材7とを接着させてもよい。
【0036】
なお、図3は、積層段ボール6の凹部または貫通孔に研削部材7が挿入されているときの研磨・研削器1の縦断面における概略説明図であり、図4は、積層段ボール6と積層段ボール6との間に研削部材7が配設され、研磨・研削器1の上面および下面の両面に研削部3が形成されている研磨・研削器1の縦断面における概略説明図である。
【0037】
図3において、(a)は研磨・研削器1の上面から研削部材7が突出しているときの猫の爪の研磨・研削器1の縦断面における概略説明図、(b)は研磨・研削器1の表面よりも内部に研削部材7が設けられているときの猫の爪の研磨・研削器1の概略縦断面図、(c)は研磨・研削器1の表面と同一平面となるように研削部材7が設けられているときの研磨・研削器1の縦断面における概略説明図である。
【0038】
本発明においては、研削部材7は、図3(a)に示されるように研磨・研削器1の上面から突出していてもよく、図3(b)に示されるように研磨・研削器1の表面よりも内部に研削部材7が設けられていてもよく、図3(c)に示されるように研磨・研削器1の表面と同一平面となるように形成されていてもよい。これらの研磨・研削器1の実施態様のなかでは、猫の爪を効率よく研磨・研削するとともに猫に不快感を与えないようにする観点から、図3(b)および(c)に示されるように、研削部材7が研磨・研削器1の表面と同一平面となるように形成されているかまたは研磨・研削器1の表面よりも内部に設けられていることが好ましい。なお、図3に示される研磨・研削器1では、ライナー4および中芯(図示せず)によって研磨面2が形成されており、研削部材7によって研削部3が形成されている。
【0039】
図3(a)に示される研磨・研削器1の実施態様において、研磨・研削器1の上面から突出している研削部材7の高さは、猫の爪を効率よく研磨・研削するとともに猫に不快感を与えないようにする観点から、0~1mm程度であることが好ましく、0~0.5mm程度であることがより好ましい。また、図(b)に示される研磨・研削器1の実施態様において、研磨・研削器1の表面から研削部材7が存在している位置までの深さは、猫の爪を効率よく研磨・研削するとともに猫に不快感を与えないようにする観点から、0~3mm程度であることが好ましく、0~1mm程度であることがより好ましい。
【0040】
図4に示される研磨・研削器1では、積層段ボール6と積層段ボール6との間に研削部材7が配設されている。図4に示される研磨・研削器1では、研削部材7が研磨・研削器1の表面と同一平面上に存在しているが、研削部材7は、上面および/または下面から突出していてもよく、研磨・研削器1の表面よりも内部に設けられていてもよい。これらの研磨・研削器1の実施態様のなかでは、猫の爪を効率よく研磨・研削するとともに猫に不快感を与えないようにする観点から、研削部材7は、研磨・研削器1の表面と同一平面となるように形成されているかまたは研磨・研削器1の表面よりも内部に設けられていることが好ましい。なお、図4に示される研磨・研削器1では、ライナー4および中芯5によって研磨面2が形成されており、研削部材7によって研削部3が形成されている。
【0041】
図4に示される研磨・研削器1の実施態様において、研磨・研削器1の表面から突出している研削部材7の高さは、猫の爪を効率よく研磨・研削するとともに猫に不快感を与えないようにする観点から、0~1mm程度であることが好ましく、0~0.5mm程度であることがより好ましい。また、研磨・研削器1の表面から研削部材7が存在している位置までの深さは、猫の爪を効率よく研磨・研削するとともに猫に不快感を与えないようにする観点から、0~3mm程度であることが好ましく、0~1mm程度であることがより好ましい。
【0042】
猫が好んで研磨・研削器1の研磨面2および研削部3を爪で引掻く方向に個性差がある。猫の爪の研磨・研削器1の研削部3の研削面は、猫の爪を効率よく研磨・研削する観点から、猫が好んで研磨・研削器1の研磨面2および研削部3を爪で引掻く方向に対して交差する方向に配置することが好ましい。
【0043】
また、研磨・研削器1の積層段ボール6のライナー4に関しても、猫が好んで研磨・研削器1の研磨面2および研削部3を爪で引掻く方向に個性差があることから、猫の爪を効率よく研磨・研削する観点から、猫が爪で引掻く方向に対して平行となる方向に設けられていることが好ましい。猫が爪で引掻く方向に対して平行となる方向は、猫が爪で引掻く方向と平行となる方向および猫が爪で引掻く方向に対してやや斜めの方向(猫が爪で引掻く方向に対して鋭角をなす方向)を意味する。
【0044】
以上のようにして本発明の猫の爪の研磨・研削器1が構成される。本発明の猫の爪の研磨・研削器1の大きさおよび形状には特に限定がなく、研磨・研削器1の大きさおよび形状は、用途などに応じて適宜調整することができる。
【0045】
本発明の猫の爪の研磨・研削器1の大きさの一例として、縦が20~80cmであり、横幅が10~30cmである直方体などが挙げられる。猫の爪の研磨・研削器1が直方体を有する場合、研磨・研削器1の厚さは、特に限定されないが、研磨・研削器1の使用性および機械的強度を考慮して、例えば、1~10cm程度であることが好ましい。
【0046】
本発明の猫の爪の研磨・研削器1の平面形状は、例えば、図1に示されるように長方形であってもよく、円形、楕円形、三角形、他の多角形、不定形などの形状であってもよい。また、本発明の猫の爪の研磨・研削器1の立体形状は、特に限定されず、例えば、標準的な直方体状であってもよく、立方体状であってもよく、断面形状がアルファベットのS字状、U字状等の形状である立体形状であってもよく、円柱状、球状などの形状であってもよい。また、本発明の猫の爪の研磨・研削器1は、猫用のベッドを用意し、そのソファ面に配設することができるようにしてもよい。
【0047】
本発明の猫の爪の研磨・研削器1は、例えば、図1に示されるように、型枠8内に固定して使用することができる。型枠8は、猫の爪の研磨・研削器1を固定し、補強するために用いることができる。また、図1に示される型枠8以外にも、猫の爪の研磨・研削器1が存在する箇所に研磨・研削器1を外部に露出させるための露出窓が設けられ、側面に研磨・研削器1を挿入または離脱させるための開口部を有する筒状の型枠であってもよい。型枠8は、例えば、段ボールで作製することができるほか、ポリプロピレン、スチロール樹脂、ABS樹脂などの樹脂製の型枠であってもよく、木製の型枠であってもよい。
【0048】
図1に示されるように、本発明の猫の爪の研磨・研削器1を型枠8内に固定して使用する場合、使用済みの研磨・研削器1を型枠8から取り外し、新たな研磨・研削器1と交換して型枠8に組み込むことができるので、型枠8を再利用することができる。
【0049】
また、本発明の猫の爪の研磨・研削器1を複数のブロックに分割して作製しておき、傷んだ研磨・研削器1のブロックを新しい研磨・研削器1のブロックと交換することができるようにしてもよい。
【0050】
また、本発明の猫の爪の研磨・研削器1には、起立状態で使用することができるようにするために、研磨・研削器1の底部に転倒防止用スタンドが取り付けられていてもよく、柱、壁などに取り付けて使用することができるようにするために、フックなどの取付け具が設けられていてもよく、研磨・研削器1の裏面に両面粘着テープが貼付されていてもよい。
【0051】
以上説明したように、本発明の猫の爪の研磨・研削器1は、猫が積層段ボール6の表面を爪で引掻くという猫の習性を利用したものであり、研磨面2が、複数のライナー4と複数の波形形状を有する中芯5とが交互に隣接して積層されている積層段ボール6の中芯5の波形形状が存在している、ライナー4と中芯5との積層面2であり、研削部3に、上面の平面形状が線状であり、積層段ボール6と接する少なくとも一方の側面に研削面を有する研削部材7が積層段ボール6と隣接して設けられ、研削部材7の上面が研磨・研削器1の表面に露出していることから、猫が本能的に研磨・研削器1の表面を引掻いたときに爪を研磨すると同時に爪先を研削するので、従来のようにヒトが爪切りで猫の爪を切るという煩雑でかつ猫が嫌がる作業が不要となる。
【0052】
したがって、本発明の猫の爪の研磨・研削器1は、猫を飼育している猫の飼い主、猫の愛好家などにとって非常に有用なものとして使用することが期待される。
【実施例0053】
次に、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はかかる実施例のみに限定されるものではない。
【0054】
実施例1
図1に示される実施態様の猫の爪の研磨・研削器を作製した。より具体的には、段ボールとしてB段(記号:BF)を用意し、縦の長さが50cmであり、横の長さが12cmであり、高さが3cmである直方体状の猫の爪の研磨・研削器を作製した。また、研削部材として耐水ペーパー(100番)の研削面が外部に位置するように2つ折りに折り曲げ、折り曲げた内面同士を両面粘着テープ〔(株)ニトムズ製、品番:T4010〕で貼付した研削部材(縦:10.8cm、横:2.8cm、厚さ:約2mm)を用いた。研磨・研削器の表面には、長手方向に対して直角方向に2.5cmの等間隔で幅が11cm、深さが3cmの切り込み(凹部)18本を入れ、研磨・研削器の上面から研削部材が突出しないようにして各切り込みにそれぞれ研削部材を挿入することにより、研削部を形成させた。
【0055】
前記で得られた猫の爪の研磨・研削器を型枠内に入れた後、その表面(研磨面および研削部が存在する面)を上向きにして床の上に置き、前記猫の爪の研磨・研削器を飼い猫に5日間自由に使用させた。その結果、猫の前足の爪先は、研磨・研削器の使用前では図5(a)に示されるように尖っていたのに対し、研磨・研削器の使用後には図5(b)に示されるように爪の先端部分が研削されていることが確認された。なお、図5は、本発明の猫の爪の研磨・研削器を猫に用いる前後における猫の前足の爪先の状態を示す概略説明図であり、図5中の符号9は、猫の前足の爪を示す。
【0056】
また、猫に5日間自由に使用させた後の猫の爪の研磨・研削器の表面の図面代用写真を図6に、猫の前足の爪を研磨・研削した後の爪の図面代用写真を図7に示す。図6に示されるように、研磨・研削器1の表面には猫の爪による引掻き傷が見受けられた。また、猫の前足の爪先は、図6の丸印で囲まれている部分に示されているように、前記研磨・研削器を使用することにより、効率よく研削されていることがわかる。
【0057】
実施例2
実施例1において、研削部材として、耐水ペーパー(80番)の研削面が外部に位置するように2つ折りに折り曲げ、折り曲げた内面に厚さが0.15mmであるポリプロピレン製シートを挟んで接着させた研削部材(縦:10.8cm、横:2.8cm、厚さ:約0.5mm)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして猫の爪の研磨・研削器を作製した。
【0058】
前記で得られた研磨・研削器を型枠内に入れた後、実施例1と同様にしてその表面(研磨面および研削部が存在する面)を上向きにして床の上に置き、前記猫の爪の研磨・研削器を飼い猫に5日間自由に使用させた。その結果、猫の前足の爪は、実施例1と同様に、研磨・研削器の使用前では図5(a)に示されるように尖っていたのに対し、研磨・研削器の使用後には図5(b)に示されるように爪の先端部分が研削されていることが確認された。このことから、猫の前足の爪先は、当該研磨・研削器を使用することにより、効率よく研削されていることがわかる。
【0059】
以上の結果から、本発明の猫の爪の研磨・研削器を猫に用いることにより、猫の爪を研磨することができるとともに、爪切りなどを使用しなくても猫の爪先を効率よく研削することができるいう優れた効果が奏されることがわかる。
【符号の説明】
【0060】
1 猫の爪の研磨・研削器
2 研磨面
3 研削部
4 ライナー
5 中芯
6 積層段ボール
7 研削部材
8 型枠
9 猫の前足の爪

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【手続補正書】
【提出日】2021-01-19
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
猫の爪を研磨するための研磨面と猫の爪を研削するための複数の研削部とが研磨・研削器の表面に形成されてなり、前記研磨面が、複数のライナーと複数の波形形状を有する中芯とが交互に隣接して積層されてなる積層段ボールの中芯の波形形状が存在している、ライナーと中芯との積層面であり、前記研削部に、上面の平面形状が線状であり、積層段ボールと接する少なくとも一方の側面に研削面を有する研削部材が当該積層段ボールと隣接して設けられ、当該研削部材の上面が研磨・研削器の表面に露出しており、当該研削部材が積層段ボールのライナーの面に対して交差する方向に設けられ、当該研削部材と当該研削部材に隣接しているライナーおよび中芯との間で空隙が存在していることを特徴とする猫の爪の研磨・研削器。
【請求項2】
積層段ボールの表面に凹部または貫通孔が形成され、当該凹部または貫通孔内に研削部材が配設されているか、または複数の積層段ボールが用いられ、積層段ボールと積層段ボールとの間に研削部材が配設されている請求項1に記載の猫の爪の研磨・研削器。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0010
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0010】
本発明は、
(1) 猫の爪を研磨するための研磨面と猫の爪を研削するための複数の研削部とが研磨・研削器の表面に形成されてなり、前記研磨面が、複数のライナーと複数の波形形状を有する中芯とが交互に隣接して積層されてなる積層段ボールの中芯の波形形状が存在している、ライナーと中芯との積層面であり、前記研削部に、上面の平面形状が線状であり、積層段ボールと接する少なくとも一方の側面に研削面を有する研削部材が当該積層段ボールと隣接して設けられ、当該研削部材の上面が研磨・研削器の表面に露出しており、当該研削部材が積層段ボールのライナーの面に対して交差する方向に設けられ、当該研削部材と当該研削部材に隣接しているライナーおよび中芯との間で空隙が存在していることを特徴とする猫の爪の研磨・研削器、および
(2) 積層段ボールの表面に凹部または貫通孔が形成され、当該凹部または貫通孔内に研削部材が配設されているか、または複数の積層段ボールが用いられ、積層段ボールと積層段ボールとの間に研削部材が配設されている前記(1)に記載の猫の爪の研磨・研削
関する。