IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社プロテックエンジニアリングの特許一覧

<>
  • 特開-捕捉構造物のロープ連結具 図1
  • 特開-捕捉構造物のロープ連結具 図2
  • 特開-捕捉構造物のロープ連結具 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022077162
(43)【公開日】2022-05-23
(54)【発明の名称】捕捉構造物のロープ連結具
(51)【国際特許分類】
   E02B 7/02 20060101AFI20220516BHJP
   E01F 7/04 20060101ALI20220516BHJP
【FI】
E02B7/02 B
E01F7/04
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020187868
(22)【出願日】2020-11-11
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-05-12
(71)【出願人】
【識別番号】398054845
【氏名又は名称】株式会社プロテックエンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】100082418
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 朔生
(74)【代理人】
【識別番号】100167601
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 信之
(74)【代理人】
【識別番号】100201329
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 真二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100220917
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 忠大
(72)【発明者】
【氏名】西田 陽一
(72)【発明者】
【氏名】山本 満明
(72)【発明者】
【氏名】石井 太一
【テーマコード(参考)】
2D001
【Fターム(参考)】
2D001PA06
2D001PD11
(57)【要約】
【課題】直交する2本のロープ材を滑動や強度低下を防ぎつつ確実に連結可能な捕捉構造物のロープ連結具を提供すること。
【解決手段】本発明の捕捉構造物のロープ連結具1は、2枚の支圧プレート10と複数の締結具20とを備え、支圧プレート10はそれぞれプレート本体11と、プレート本体11の底面を横断する1本の第1溝12とプレート本体11の底面の外縁から底面の中心に向かって第1溝11と直交する向きに延在しプレート本体11の底面の中心で分断される2本の第2溝12とプレート本体11の両面を貫通する複数の挿通孔14とを有し、第1溝12はプレート本体11の底面の外縁から中心に向かって深くなり、第2溝12はプレート本体11の底面の外縁から中心に向かって浅くなり、2枚の支圧プレート10の底面を相対的に90度回転させた状態で対向させることで対向する第1溝12と第2溝13との間にロープ材Bを内周面で面状に支圧可能な面状支圧孔30を構成したことを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
透過型捕捉構造物において、捕捉用ネットを構成する複数のロープ材を交点で連結する、ロープ連結具であって、
2枚の支圧プレートと、複数の締結具と、を備え、
前記支圧プレートはそれぞれ、プレート本体と、前記プレート本体の底面を横断する1本の第1溝と、前記プレート本体の底面の外縁から底面の中心に向かって、前記第1溝と直交する向きに延在し、前記プレート本体の底面の中心で分断される2本の第2溝と、前記プレート本体の両面を貫通する複数の挿通孔と、を有し、
前記第1溝は、前記プレート本体の底面の外縁から中心に向かって深くなり、
前記第2溝は、前記プレート本体の底面の外縁から中心に向かって浅くなり、
前記2枚の支圧プレートの底面を、相対的に90度回転させた状態で対向させることで、対向する前記第1溝と前記第2溝との間に、前記ロープ材を内周面で面状に支圧可能な面状支圧孔を構成したことを特徴とする、
ロープ連結具。
【請求項2】
前記第1溝及び/又は前記第2溝の内周面に、突起状、溝状、又は段差状の滑り止め手段を設けたことを特徴とする、請求項1に記載のロープ連結具。
【請求項3】
前記第1溝が前記プレート本体の外縁と接する縁部を、曲面で構成したことを特徴とする、請求項1又は2に記載のロープ連結具。
【請求項4】
前記複数の挿通孔が、前記第1溝及び前記第2溝によって区画した4つの区域にそれぞれ設けた4つの挿通孔であることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか一項に記載のロープ連結具。
【請求項5】
前記締結具がボルトとナットの組合せからなることを特徴とする、請求項1乃至4のいずれか一項に記載のロープ連結具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロープ連結具に関し、特に透過型捕捉構造物において、捕捉用ネットを構成するロープ材を交点で連結する、捕捉構造物のロープ連結具に関する。
【背景技術】
【0002】
砂防堰堤等の透過型捕捉構造物では、山間の渓谷や河川の間に、土石流による流下物を捕捉するための捕捉用ネットを横架する。捕捉用ネットはワイヤロープ等のロープ材を連結具によって縦横に連結して構成する。
特許文献1には、縦横に連続するロープ材を、凹状の溝を有する平板と2本のU字ボルトの組合せによって交点で挟み込んで連結する連結具が開示されている。
特許文献2には、縦横に配列した複数の短ロープを、端部のループに通した4本の係留ピンで連結する連結具が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009-299321号公報
【特許文献2】特許第6579553号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来技術には以下のような問題点がある。
<1>ロープ材の滑動。
特許文献1の技術は、縦横のロープ材が交点のみで接する点接触となる。平板を支圧してロープ材を圧縮することで部分的に面接触させることができるが、依然として摩擦面積は僅かであるため、連結後にもロープ材が滑動しやすい。
<2>ロープ材の強度低下。
特許文献1の技術は、平板を支圧することによってロープ材の交点に圧縮荷重が集中するためロープ材の断面が潰れやすい。ロープ材が潰れると断面積が小さくなるため、ロープ材の設計上の断面強度を発揮することができなくなる。
<3>施工性と材料コスト。
特許文献2の技術は、全ての短ロープを端部で連結するため、連結箇所が多く施工性が低い。また、端部をループ加工した短ロープを多数本使用するため、部品数が多く材料コストが嵩む。
【0005】
本発明の目的は、以上のような問題点を解決できる、捕捉構造物のロープ連結具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の捕捉構造物のロープ連結具は、2枚の支圧プレートと、複数の締結具と、を備え、支圧プレートはそれぞれ、プレート本体と、プレート本体の底面を横断する1本の第1溝と、プレート本体の底面の外縁から底面の中心に向かって、第1溝と直交する向きに延在し、プレート本体の底面の中心で分断される2本の第2溝と、プレート本体の両面を貫通する複数の挿通孔と、を有し、第1溝は、プレート本体の底面の外縁から中心に向かって深くなり、第2溝は、プレート本体の底面の外縁から中心に向かって浅くなり、2枚の支圧プレートの底面を、相対的に90度回転させた状態で対向させることで、対向する第1溝と第2溝との間に、ロープ材を内周面で面状に支圧可能な面状支圧孔を構成したことを特徴とする。
【0007】
本発明の捕捉構造物のロープ連結具は、第1溝及び/又は第2溝の内周面に、突起状、溝状、又は段差状の滑り止め手段を設けてもよい。
【0008】
本発明の捕捉構造物のロープ連結具は、第1溝がプレート本体の外縁と接する縁部を曲面で構成してもよい。
【0009】
本発明の捕捉構造物のロープ連結具は、複数の挿通孔が、第1溝及び第2溝によって区画した4つの区域にそれぞれ設けた4つの挿通孔であってもよい。
【0010】
本発明の捕捉構造物のロープ連結具は、締結具がボルトとナットの組合せからなってもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の捕捉構造物のロープ連結具は、以上の構成を備えるため、次の効果のうち少なくとも一つを備える。
<1>交差する2本のロープ材を、交点における点接触ではなく、湾曲した面状支圧孔によって面状に挟持する。このため、ロープ材の摩擦面積が広くロープ材が滑動しにくい。
<2>ロープ材を周面で均等に支圧するため断面が潰れにくい。このため、ロープ材本来の断面強度を発揮することができる。
<3>ロープ材の交点を両側から挟んでボルト締結するだけで連結できるため、施工性が極めて高い。
<4>連続した1本のロープ材を複数箇所で連結できるため、部品数が少なく材料コストが安い。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の捕捉構造物のロープ連結具の説明図。
図2】透過型捕捉構造物の説明図。
図3】(a)は支圧プレートの斜視図。(b)は(a)の面bに沿った支圧プレートの断面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら本発明の捕捉構造物のロープ連結具について詳細に説明する。
【実施例0014】
[ロープ連結具]
<1>全体の構成(図1)。
本発明のロープ連結具1は、主に砂防堰堤等の透過型捕捉構造物Aにおいて、捕捉用ネットを構成する複数のロープ材Bを交点で連結する部材である。
ロープ連結具1は、2枚の支圧プレート10と、2枚の支圧プレート10を締結する複数の締結具20と、を少なくとも備える。締結具20は、本例では4組のボルト21とナット22の組合せとする。
ロープ連結具1は、底面を対向させた2枚の支圧プレート10によって、第1溝12と第2溝13の間に、ロープ材Bを内周面で面状に支圧する面状支圧孔30を構成可能な点に一つの特徴を備える。
【0015】
<1.1>透過型捕捉構造物(図2)。
透過型捕捉構造物Aは、例えば、渓床に設けた基礎上に間隔を隔てて立設した複数の剛構造体の間、及び剛構造体と渓岸の間に捕捉用ネットを展設してなる。
捕捉用ネットは、複数のロープ材Bをネット状に編成してなる。本例ではロープ材Bとして金属製のワイヤロープを採用する。
本例では、複数のロープ材Bを剛構造体の間に横架し、横架したロープ材Bを複数のロープ材Bで縦に連結して、透過部の捕捉用ネットを構成し、縦横のロープ材Bの交点をロープ連結具1によって連結する。
なお、透過型捕捉構造物Aの構造は上記に限らず、本発明のロープ連結具1は、他の構造の透過型捕捉構造物Aにも適用できる。また、ロープ連結具1の設置個所も透過部の捕捉用ネットに限らず、袖部の捕捉用ネットにも適用できる。
【0016】
<2>支圧プレート(図1)。
支圧プレート10は、ロープ材Bの交点を挟み込んで支圧する部材である。
支圧プレート10は、プレート本体11と、プレート本体11の底面に形成した1本の第1溝12と、プレート本体11の底面に第1溝12と直交する向きに形成した2本の第2溝13と、プレート本体11の両面を貫通する複数の挿通孔14と、を少なくとも備える。
本例ではプレート本体11として、平面視円形の鋼製プレートを採用する。ただしプレート本体11の素材や形状はこれに限らず、例えば平面視矩形、平面視八角形、その他の多角形状を採用してもよい。
本例では挿通孔14を4つ設ける。挿通孔14の位置は、プレート本体11の底面視において、第1溝12及び第2溝13によって十字状に区分した4つの区域の中心付近にそれぞれ1つずつ設ける。
【0017】
<2.1>第1溝。
第1溝12は、他の支圧プレート10の第2溝13と組み合わせて、面状支圧孔30を構成する溝である。
第1溝12は、プレート本体11の中心を通って、プレート本体11の底面を横断するように設ける。
第1溝12は、プレート本体11の底面の外縁から中心に向かって深くなる。
透過型捕捉構造物Aの供用時、第1溝12がプレート本体11の外縁と接する縁部には、ロープ材Bの引っ張りによる応力が集中する。そこで本例では、応力集中によるロープ材Bの損傷を避けるため、第1溝12とプレート本体11の外縁との縁部を曲面で構成する(不図示)。
また本例では、第1溝12の内周面に滑り止め手段15を形成する。ただし滑り止め手段15は必須の構成要素ではない。
【0018】
<2.2>第2溝。
第2溝13は、他の支圧プレート10の第1溝12と組み合わせて、面状支圧孔30を構成する溝である。
第2溝13は、プレート本体11の外縁から中心に向かって、第1溝12と直交する向きに設ける。
第2溝13は、プレート本体11の底面の外縁から中心に向かって浅くなり、プレート本体11の中心で2本に分断される。
第2溝13の形状及びプレート本体11の底面に対する傾斜角は、第1溝12の形状及びプレートの本体11の底面に対する傾斜角に対応させる。すなわち、第1溝12と第2溝13との組み合わせによって、後述する面状支圧孔30が、ロープ材Bの径に対応した単一径となるように構成するのが望ましい。
【0019】
<2.3>滑り止め手段。
滑り止め手段15は、ロープ材Bの面状支圧孔30内における滑りを防止するための手段である。
本例では滑り止め手段15として、第1溝12の内周面に周方向に沿って形成した複数の突起を採用する。
滑り止め手段15によって、支圧プレート10の支圧に係る摩擦抵抗力を高めて、ロープ材Bの滑動を抑止することができる。
滑り止め手段15の構造は突起に限らず、第1溝12の内周面に沿って設けた溝又は段差であってもよい。また、第1溝12に加えて第2溝13にも設けてもよい。あるいは第1溝12に設けず、第2溝13にのみ設けてもよい。
【0020】
<3>面状支圧孔(図3)。
面状支圧孔30は、交差するロープ材Bの交点への応力集中を回避しつつ、ロープ材Bを面状に支圧する孔である。
面状支圧孔30は、2枚の支圧プレート10の底面を対向させることで、第1溝12と第2溝13の間に構成する。すなわち、第1溝12の内面と第2溝13の内面とによって、第1溝12の底面側に湾曲した筒状の空間である面状支圧孔30が構成される。
直交する2本の面状支圧孔30は、交点で僅かに連通する。
本発明のロープ連結具1は、2枚の支圧プレート10内を湾曲しながら直交する2本の面状支圧孔30で、ロープ材Bを面状に支圧して挟持することによって、直交する2本のロープ材Bを、交点において接触させることなく(又は僅かしか接触させることなく)確実に連結することができる。
【0021】
<4>ロープ材の連結。
まず、交差する2本のロープ材Bの交点を、2枚の支圧プレート10で両側から挟む。
詳細には、例えばロープ材Bの交点の前面側に支圧プレート10の底面を当接し、前面側のロープ材Bを第1溝12内に嵌め込む。続いて、ロープ材Bの交点の背面側に、前面側の支圧プレート10に対して底面を90度回転させた支圧プレート10の底面を当接し、背面側のロープ材Bを第1溝12内に嵌め込む。
これによって、対向する第1溝12と第2溝13の間に、面状支圧孔30が構成され、各ロープ材Bが面状支圧孔30内に保持される。
続いて、2枚の支圧プレート10を、締結具20で締結する。
詳細には、例えば2枚の支圧プレート10の対応する挿通孔14内にボルト21を連通し、先端にナット22螺着して締結する。
以上の簡易な手順によって、直交する2本のロープ材Bを交点で確実に連結することができる。
【符号の説明】
【0022】
1 ロープ連結具
10 支圧プレート
11 プレート本体
12 第1溝
13 第2溝
14 挿通孔
15 滑り止め手段
20 締結具
21 ボルト
22 ナット
30 面状支圧孔
A 透過型捕捉構造物
B ロープ材
図1
図2
図3