(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022077164
(43)【公開日】2022-05-23
(54)【発明の名称】車両のデッキボード
(51)【国際特許分類】
B60R 5/04 20060101AFI20220516BHJP
【FI】
B60R5/04 T
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020187870
(22)【出願日】2020-11-11
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】特許業務法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 秀
【テーマコード(参考)】
3D022
【Fターム(参考)】
3D022BA06
3D022BB03
3D022BC09
(57)【要約】
【課題】車両の後部の荷室に着脱可能に載置されるデッキボードにおいて、より見栄えがよく、より部品点数が少なく、よりシンプルな構造にて、ユーザがデッキボードを荷室から取り外す作業や荷室に取り付ける作業を、より容易にかつ楽に行うことができる、車両のデッキボードを提供する。
【解決手段】デッキボード40は、車両1の荷室13のボード収容位置20Zに載置され、荷室の床面13Mの後端には、ロックストライカ22が床面から突出して設けられている。デッキボード40は、板状形状を有し、ボード収容位置に着脱可能であり、ボード収容位置では車両に対する左右方向への移動を規制する規制部材に挟まれている。またデッキボードの底面には、デッキボードをボード収容位置から取り外してロックストライカに載せた際にロックストライカによって車両に対するデッキボードの前後方向の移動を案内するガイド部(42)が設けられている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の後部座席の後方の荷室の床面と同一高さあるいは前記床面よりも上方あるいは前記床面よりも下方、となる前記荷室に設けられたボード収容位置に載置される、車両のデッキボードであって、
前記荷室の前記床面の後端には、前記荷室を利用する際に開閉される後部ドアの下端に設けられたロック部材と係合するロックストライカが、前記床面から上方に突出するように設けられており、
前記デッキボードは、
板状形状を有し、前記ボード収容位置に対して着脱可能とされており、
前記ボード収容位置に載置された状態では、前記車両に対する左右方向への移動を規制する規制部材に挟まれており、
前記デッキボードの底面には、前記デッキボードが前記ボード収容位置から取り外されて前記ロックストライカに載せられた場合に前記ロックストライカに沿った前記車両に対する前記デッキボードの前後方向の移動を案内するガイド部が設けられている、
車両のデッキボード。
【請求項2】
請求項1に記載の車両のデッキボードであって、
前記ガイド部は、前記前後方向に沿って設けられた溝部である、
車両のデッキボード。
【請求項3】
請求項2に記載の車両のデッキボードであって、
前記溝部は、少なくとも前記デッキボードの前記底面の前記前後方向の中央かつ左右方向の中央、の近傍を含むように、前記デッキボードの前記前後方向の長さに対して半分以上の長さとなるように前記前後方向に沿って設けられている、
車両のデッキボード。
【請求項4】
請求項2または3に記載の車両のデッキボードであって、
前記溝部における前記車両の前方側の溝幅は、前方に向かって徐々に広げられている、
車両のデッキボード。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の後部座席の後方の荷室に設けられたボード収容位置に、着脱可能に載置される、車両のデッキボードに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、いわゆるハッチバックと呼ばれる型式の車両は、跳ね上げ式の後部トアを有し、後部座席と後部ドアの間には、広い荷室が設けられている。ユーザは、当該荷室に種々の荷物を積み込んで、レジャーや買い物等に車両を利用している。また一般的に、荷室の床下には、スペアタイヤや車載工具等が収納された床下収納部が設けられている。当該床下収納部は上方が開口して開口部がデッキボードで覆われており、デッキボードが荷室の床面とされている。デッキボードは、縦及び横の長さがそれぞれ1[m]前後もある板状形状を有しており、種々の荷物の重さに耐える強度を有し、数[Kg]もの重量を有している。
【0003】
図13に示すように、従来では、ユーザが床下収納部120を利用する際には、床下収納部120の開口部の蓋となっているデッキボード140を取り外す必要がある。ユーザが、荷室113の床面113Mであるデッキボード140を取り外す場合、まず後部ドア110を開口して腰を大きく曲げて上半身を荷室113内に入れ、重いデッキボード140を持ち上げなければならないので、腰の負担が大きく、大変な作業となっている。また、取り外したデッキボード140を荷室113の床面113Mに取り付ける際、ユーザは、重いデッキボード140を持った状態で、腰を大きく曲げて上半身を荷室113内に入れて、開口部にデッキボード140を位置決めして取り付けなければならず、やはり大変な作業となっている。
【0004】
例えば特許文献1には、ラゲージルーム(荷室)の床下に設けられた床下収納部の開口部を覆うラゲージフロア(デッキボード)を、開口部の左右に固定されたレールに沿って前後方向にスライドさせることが可能な、自動車のラゲージフロア装置が開示されている。ユーザは、ラゲージフロアの後端近傍に設けられたプルハンドル内のロック解除レバーを操作してロックを解除した後、プルハンドルを持ってラゲージフロアを後方に引き出すことができる。従って、ユーザは、床下収納部を利用する際、腰を大きく曲げて上半身をラゲージルーム(荷室)内に入れてラゲージフロア(デッキボード)を持ち上げる必要がなく、楽に、容易に床下収納部を利用することができる。またユーザは、引き出したラゲージフロアを、レールに沿って押し込むことで、ラゲージフロアを荷室内に戻すことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の自動車のラゲージフロア装置は、床下収納部の開口部の左右に固定されたレールや、ラゲージフロア(デッキボード)の前後方向のスライドを禁止するロック機構等を有しているので、部品点数が多く、構造も複雑である。また、ラゲージフロア(デッキボード)を後方に引き出した場合、床下収納部の開口部にレールが露出するので見栄えもよくない。
【0007】
本発明は、このような点に鑑みて創案されたものであり、車両の後部の荷室に着脱可能に載置されるデッキボードにおいて、より見栄えがよく、より部品点数が少なく、よりシンプルな構造にて、ユーザがデッキボードを荷室から取り外す作業や荷室に取り付ける作業を、より容易にかつ楽に行うことができる、車両のデッキボードを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明の第1の発明は、車両の後部座席の後方の荷室の床面と同一高さあるいは前記床面よりも上方あるいは前記床面よりも下方、となる前記荷室に設けられたボード収容位置に載置される、車両のデッキボードである。前記荷室の前記床面の後端には、前記荷室を利用する際に開閉される後部ドアの下端に設けられたロック部材と係合するロックストライカが、前記床面から上方に突出するように設けられている。そして前記デッキボードは、板状形状を有し、前記ボード収容位置に対して着脱可能とされており、前記ボード収容位置に載置された状態では、前記車両に対する左右方向への移動を規制する規制部材に挟まれている。また前記デッキボードの底面には、前記デッキボードが前記ボード収容位置から取り外されて前記ロックストライカに載せられた場合に前記ロックストライカに沿った前記車両に対する前記デッキボードの前後方向の移動を案内するガイド部が設けられている、車両のデッキボードである。
【0009】
次に、本発明の第2の発明は、上記第1の発明に係る車両のデッキボードであって、前記ガイド部は、前記前後方向に沿って設けられた溝部である、車両のデッキボードである。
【0010】
次に、本発明の第3の発明は、上記第2の発明に係る車両のデッキボードであって、前記溝部は、少なくとも前記デッキボードの前記底面の前記前後方向の中央かつ左右方向の中央、の近傍を含むように、前記デッキボードの前記前後方向の長さに対して半分以上の長さとなるように前記前後方向に沿って設けられている、車両のデッキボードである。
【0011】
次に、本発明の第4の発明は、上記第2の発明または第3の発明に係る車両のデッキボードであって、前記溝部における前記車両の前方側の溝幅は、前方に向かって徐々に広げられている、車両のデッキボードである。
【発明の効果】
【0012】
第1の発明によれば、荷室の床面の後端から上方に突出するように設けられている後部ドアのロック用のロックストライカを、デッキボードのスライド案内として利用する。もともと車両に設けられているロックストライカを利用するので、デッキボードの底面(裏面)に設けるガイド部だけを追加すればよい。ユーザは、デッキボードを荷室から取り外す場合、デッキボードの後端部を持ち上げてガイド部の位置をロックストライカの位置に合わせ、ロックストライカにデッキボードを載せた後、デッキボードを後方に引き出せばよい。またユーザは、デッキボードを荷室に取り付ける場合、デッキボードのガイド部の前端部をロックストライカの位置に合わせ、ロックストライカにデッキボードを載せた後、デッキボードを前方に押し込めばよい。従って、より見栄えがよく(追加したガイド部はデッキボードの底面(裏面)なので、露出していない)、より部品点数が少なく(ガイド部を追加するのみ)、よりシンプルな構造にて(ガイド部を追加するのみ)、ユーザがデッキボードを荷室から取り外す作業や荷室に取り付ける作業を、より容易にかつ楽に行うことができる。
【0013】
第2の発明によれば、ガイド部を溝部にて構成することで、非常にシンプルな構造にてガイド部を実現することができる。
【0014】
第3の発明によれば、溝部の前後方向の長さを、必要以上に長くしなくて済む。
【0015】
第4の発明によれば、取り外したデッキボードを荷室に取り付ける際、ユーザは、デッキボードの底面(裏面)の溝部の前端部をロックストライカに載せる必要があるが、ユーザからはデッキボードの底面(裏面)の溝部が見えない。しかし、溝部の前方側の端部が扇状に広げられているので、だいたいの位置が合っていればよく、ユーザは、容易にデッキボードを荷室に取る付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】車両の後部ドアを開けて車両の後方から荷室を見た図である。
【
図2】
図1の状態からデッキボードを取り外した状態を説明する図である。
【
図5】第1の実施の形態のデッキボードを下方から見た斜視図であり、デッキボードの底面(裏面)に設けられた溝部を説明する図である。
【
図6】第1の実施の形態のデッキボードを下方から見た図である。
【
図7】第1の実施の形態のデッキボードを左から見た図である。
【
図8】第1の実施の形態のデッキボードを後方から見た図である。
【
図9】荷室内のボード収容位置に載置されたデッキボードを取り外す際の手順を説明する図であり、デッキボードの後端部をロックストライカに載せた様子を説明する図である。
【
図10】
図9に続いて、後端部をロックストライカに載せたデッキボードを後方に引き出していく様子を説明する図である。
【
図11】取り外したデッキボードを荷室内のボード収容位置に取り付ける際の手順を説明する図であり、デッキボードの前端部をロックストライカに載せてデッキボードを押し込んでいく様子を説明する図である。
【
図12】
図11に続いて、デッキボードの重心がロックストライカよりも前方となり、デッキボードの前端部をボード支持部材に接触させた状態でデッキボードを押し込んでいく様子を説明する図である。
【
図13】従来のデッキボードを、荷室内のボード収容位置から取り外す、またはボード収容位置に取り付ける際の作業の様子を説明する図である。
【
図14】第2の実施の形態のデッキボードを下方から見た斜視図であり、別体の溝ユニットをデッキボードの底面に取り付け、デッキボードの底面(裏面)に溝部を設けた例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[車両1に設けられた荷室13と、デッキボード40及びロックストライカ22等の配置状態(
図1~
図4)]
以下、本発明を実施するための形態を図面を用いて説明する。
図1は、車両1の後部に設けられた跳ね上げ式の後部ドア10を開口し、車両1の後方から荷室13を見た図である。また
図2は、
図1の状態からデッキボード40を取り外して床下収納部20を露出させた状態を示している。また
図3は、
図1におけるIII-III断面図を示しており、
図4は、
図3におけるIV-IV断面図を示している。なお図中に、前、後、左、右、上、下が記載されている場合、「前」は車両1の前方向、「後」は車両1の後方向、「左」は車両1の左方向、「右」は車両1の右方向、「上」は車両1の上方向、「下」は車両1の下方向、をそれぞれ示している。
【0018】
図1に示す例では、デッキボード40は、車両1の後部座席11の後方に設けられた荷室13の床面13Mと同一高さに設けられたボード収容位置20Zに載置されている。なお、ボード収容位置20Zは、床面13Mと同一高さでなくてもよく、床面13Mよりも下方あるいは上方であってもよい。
【0019】
図1及び
図3に示すように、荷室13は、後部座席11、荷室内側面(後輪14を収容するタイヤハウス12R、12L)、荷室内天井、床面13M及びデッキボード40、後部ドア10等に囲まれた空間である。
図1に示す例では、床面13Mの少なくとも一部がデッキボード40にて形成されている。
【0020】
ロックストライカ22は、
図3に示すように、荷室13の床面13Mの後端に、床面13Mから上方に突出するように設けられている。なおロックストライカ22は、荷室13を利用する際に開閉される後部ドア10の下端に設けられたロック部材23(
図3参照)に係合する部材である。例えばロックストライカ22は、棒状の金属がU字状に曲げられて、U字の開口部が下方を向くように、床面13Mに取り付けられている(
図3参照)。
【0021】
図2~
図4に示すように、床面13Mの下方(床下)には、例えばスペアタイヤや車載工具等を収納可能な床下収納部20が設けられ、床下収納部20の上面は開口部とされている。そして当該開口部を覆うようにデッキボード40が載置されている。
図2~
図4に示すように、床下収納部20の各側面における上縁部よりも少し下方には、載置されたデッキボード40を支持するように、ボード支持部材21F、21B、21L、21Rが各側面から突出するように設けられている。床下収納部20の前側面にはボード支持部材21Fが設けられ、後側面にはボード支持部材21Bが設けられ、左側面及び右側面のそれぞれにはボード支持部材21L、21Rが設けられている。そして床下収納部20の開口部におけるボード支持部材21F、21B、21L、21Rの上側が、デッキボード40を収容する位置であるボード収容位置20Zとされている。デッキボード40は、当該ボード収容位置20Zに載置され、荷室13の床面13Mの一部とされている。
【0022】
デッキボード40は、板状形状を有し、ボード収容位置20Zに対して着脱可能とされている。そしてデッキボード40がボード収容位置20Zに載置された状態では、
図3及び
図4に示すように、デッキボード40は、床下収納部20の前側面20F、後側面20B、左側面20L、右側面20Rの上縁部に前後左右を挟まれており、車両1に対する前後方向及び左右方向への移動が規制されてガタつかないように収容されている。ボード収容位置20Zに載置されたデッキボード40の左右方向の移動を規制する規制部材は、床下収納部20の左側面20L、右側面20Rが相当している。またボード収容位置20Zに載置されたデッキボード40の前後方向の移動を規制する規制部材は、床下収納部20の前側面20F、後側面20Bが相当している。
【0023】
[第1の実施の形態のデッキボード40の構造(
図5~
図8)]
次に
図5~
図8を用いて、第1の実施の形態のデッキボード40の構造について説明する。
図5はデッキボード40を下方から見た斜視図、
図6はデッキボード40を下方から見た底面図(裏面図)、
図7はデッキボード40を左から見た側面図、
図8はデッキボード40を後方から見た背面図、である。なおデッキボード40の上面(おもて面)における後端部の近傍には、ユーザがデッキボード40を、ボード収容位置20Zから取り外す/ボード収容位置に取り付ける、ことを支援するベルト状の把持部材41が設けられている。なお、把持部材41としてベルト状の部材の代わりに、紐状部材や、凹状や凸状の取手を設けるようにしてもよいし、取手となる貫通孔を設けるようにしてもよい。
【0024】
デッキボード40は、樹脂等で形成され、板状形状を有しており、例えば前後方向の長さLDは1[m]程度であり、左右方向の長さLWは1.5[m]程度であり、厚さLHは15[mm]程度である。また荷室13の床面13Mの一部とされて種々の荷物が載せられた場合に必要な剛性を備えているので重量は、例えば3~5[Kg]程度である。従って、ユーザがボード収容位置20Zからデッキボード40を取り外す作業、及びユーザがボード収容位置20Zへデッキボード40を載置する作業は、この重量のせいで大変である。
【0025】
デッキボード40の底面40Zには、デッキボード40がボード収容位置(
図1~
図4参照)から取り外されてロックストライカ22に載せられた場合にロックストライカ22に沿った車両1に対するデッキボード40の前後方向の移動を案内するガイド部として凹状形状の溝部42が設けられている。溝部42は、デッキボード40の底面40Zに、前後方向に沿って設けられている。
【0026】
[溝幅について]
溝部42における前方側は、前方に向かって徐々に溝幅が広げられた幅広溝部43とされている。また溝部42における後方側は、溝幅がほぼ平行で一定とされた平行溝部44とされている。平行溝部44の溝幅WMは、
図5に示すようにロックストライカ22(
図2、
図3参照)の幅よりも大きな幅に設定されている。例えば溝幅WMは、ロックストライカ22の幅よりも左右それぞれが2~5[mm]程度大きな幅とされている。また幅広溝部43の前端部の溝幅WFは、平行溝部44の溝幅WMよりも大きな幅で、適宜設定された幅とされている。
【0027】
[溝深さについて]
デッキボード40の厚さLHは、例えば15[mm]程度であり、溝深さDMは例えば10[mm]程度である。なお、ロックストライカ22の上にデッキボード40の溝部42の位置を合わせ、溝部42にロックストライカ22の上端部が収容されるように、ロックストライカ22の上にデッキボード40を載せた場合に、ロックストライカ22の上端部が溝部42の底面に接触していてもよいし、接触していなくてもよい。ロックストライカ22の上端部が溝部42に収容されるように、ロックストライカ22の上にデッキボード40を載せた場合に、少なくともロックストライカ22の上端から下方に5[mm]程度までが溝部42に収容されていればよい。なお、幅広溝部43の溝深さと、平行溝部44の溝深さは、ほぼ同じとされている。
【0028】
[溝長さ(前後方向の長さ)について]
溝部42の前後方向の溝長さLM(長手方向の長さ)は、
図6に示すように、デッキボード40の前後方向の長さLDに対して半分以上の長さとなるように設定されている。つまり、「溝部42の前後方向の溝長さLM」≧「デッキボード40の前後方向の長さLD*1/2」に設定されている。また溝部42は、少なくともデッキボード40の底面40Zの前後方向の中央かつ左右方向の中央となる重心Gの近傍を含むように設けられている。幅広溝部43の前後方向の溝長さLTは、適宜設定されるが、幅広溝部43は重心Gよりも前側に設定されている。なお本実施の形態にて説明するデッキボード40の溝部42はデッキボード40の底面40Zの前端及び後端まで達していない例を示したが、溝部42がデッキボード40の底面40Zの前端と後端の少なくとも一方に達していてもよい。また、前端に達していることにより、デッキボードを搭載する際にデッキボードの一部を持ち上げる必要がなくなり、より容易にデッキボードの出し入れが可能になる。同様に後端に達している場合はデッキボードの取り出しがより容易になる。
【0029】
[溝の形状について]
また
図7に示すように、幅広溝部43の前端部である溝前面43Fは、前方に向かって溝深さが徐々に浅くなるように傾斜面とされており、平行溝部44の後端部である溝後面44Bは、後方に向かって溝深さが徐々に浅くなるように傾斜面とされている。なお、溝前面43F、溝後面44Bは、傾斜面でなくてもよく、底面40Zに直交する垂直面であってもよい。
【0030】
図8に示すように、前後方向から見た場合の幅広溝部43の溝形状(前後方向に直交する断面形状)は台形状であり、溝側面43L、43Rは、溝底面から底面40Zに向かって溝幅が徐々に広くなるように傾斜している。また、前後方向から見た場合の平行溝部44の溝形状(前後方向に直交する断面形状)も台形状であり、溝側面44L、44Rは、溝底面から底面40Zに向かって溝幅が徐々に広くなるように傾斜している。なお、前後方向に直交する断面形状は、台形状に限定されず、円弧状、三角状、矩形状などであってもよい。
【0031】
[ボード収容位置20Zに載置されたデッキボード40を取り外す手順(
図9、
図10)]
次に
図9、
図10を用いて、上述した構造を有するデッキボード40を、ボード収容位置20Zから取り外す際のユーザの作業について説明する。ボード収容位置20Zに載置されているデッキボード40を取り外す場合、ユーザは、まず
図9に示すように、把持部材41を把持してデッキボード40の後端部を持ち上げ(
図9中の(A1))、デッキボード40の底面の溝部42の後端近傍をロックストライカ22の上に載せる(
図9中の(A2))。ユーザは、デッキボード40の後端部の把持部材41を把持してデッキボード40の後端部を持ち上げればよいので、
図13に示す従来のように上半身を荷室113内に入れる必要は無く、腰を大きく曲げる必要も無いので、従来よりも非常に楽である。
【0032】
次にユーザは、
図10に示すように、溝部42の後端部をロックストライカ22に載せたデッキボード40を後方に引き出す(
図10中の(A3))。デッキボード40は、ロックストライカ22と溝部42によって左右方向にズレないように案内される。ユーザは、無理のない姿勢で、デッキボード40を楽に引き出すことができる。
【0033】
[取り外したデッキボード40をボード収容位置20Zに載置する手順(
図11、
図12)]
次に
図11、
図12を用いて、ボード収容位置20Zから取り外したデッキボード40を、ボード収容位置20Zに取り付ける際のユーザの作業について説明する。取り外したデッキボード40をボード収容位置20Zに取り付ける場合、ユーザは、まず
図11に示すように、把持したデッキボード40の底面の溝部42の先端近傍をロックストライカ22の上に載せる(
図11中の(B1))。ユーザからは溝部42の先端近傍は目視できないが、
図5及び
図6に示すように、溝部42の先端近傍は幅広溝部43とされているので、ユーザは、幅広溝部43を比較的容易にロックストライカ22に載せることができる。そしてユーザは、ロックストライカ22に載せたデッキボード40を前方に押し込んでいく(
図11中の(B2))。デッキボード40は、徐々に溝幅が狭くなる幅広溝部43とロックストライカ22によって適切な位置へ、自動的に案内される。
【0034】
図12に示すように、デッキボード40は、重心Gがロックストライカ22よりも前方となるまで押し込まれると前方が降下して、デッキボード40の右前端部がボード支持部材21Rに接触し、デッキボード40の左前端部がボード支持部材21Lに接触する(
図12中の(B3))。ユーザは、デッキボード40の右前端部をボード支持部材21Rに接触させたまま(載せたまま)、かつ、デッキボード40の左前端部をボード支持部材21Lに接触させたまま(載せたまま)、デッキボード40の後端を把持して前方へとさらに押し込んでいく(
図12中の(B4))。
図7及び
図8に示すように、デッキボード40の底面前端40F、底面左端40L、底面右端40Rは、円弧状とされているので、傷つけることなく少ない摩擦で押し込んでいくことができる。またデッキボード40を取り外しても、見栄えが悪くなるレール等を有していないので、見栄えがよい。
【0035】
押し込まれたデッキボード40は、ボード収容位置20Zの右側面20Rと左側面20L(
図4参照)に案内されて前方へ移動し、前側面20F(
図3参照)に到達すると、ボード収容位置20Zに収まる。ユーザは、
図13に示す従来のように上半身を荷室113内に入れる必要は無く、腰を大きく曲げる必要も無いので、従来よりも非常に楽である。
【0036】
[第2の実施の形態のデッキボード40Bの構造(
図14)]
次に
図14を用いて、第2の実施の形態のデッキボード40Bの構造について説明する。
図14は、板状のボード部材40Aの底面40AZに、別体として形成された溝ユニット48が取り付けられた、第2の実施の形態のデッキボード40Bを下方から見た斜視図である。
【0037】
ボード部材40Aは、板状形状を有しており、底面40AZには溝部は形成されていない。溝ユニット48は、例えば、第1の実施の形態(
図5参照)にて説明した幅広溝部43と平行溝部44が一体成形された樹脂部材であり、ボード部材40Aの底面40AZに接着等されて固定されている。なお、幅広溝部43の溝幅WF、平行溝部44の溝幅WM、溝深さDM、溝長さLM、LT、前後方向に直交する断面における溝形状(台形形状)、溝部42と重心Gとの位置関係などは、第1の実施の形態(
図5~
図8参照)と同じであるので、説明を省略する。
【0038】
デッキボード40の底面40Zに凹状形状の溝部42を形成する第1の実施の形態と比較して、第2の実施の形態では、既存のデッキボードの底面に溝ユニット48を取り付けるだけでよいので、既存のデッキボードに容易に溝部42を設けることができる。また、ボード収容位置20Zからデッキボード40Bを取り外す手順、取り外したデッキボード40Bをボード収容位置20Zに取り付ける手順は、第1の実施の形態での説明と同じであるので、説明を省略する。
【0039】
本発明の車両のデッキボード40、40Bは、本実施の形態で説明した外観、構成、構造等に限定されず、本発明の要旨を変更しない範囲で種々の変更、追加、削除が可能である。また、ボード収容位置20Zからデッキボード40、40Bを取り外す手順、取り外したデッキボード40、40Bをボード収容位置20Zへ取り付ける手順は、本実施の形態にて説明した手順に限定されるものではない。
【0040】
また、以上(≧)、以下(≦)、より大きい(>)、未満(<)等は、等号を含んでも含まなくてもよい。また、本実施の形態の説明に用いた数値は一例であり、この数値に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0041】
1 車両
10 後部ドア
11 後部座席
12L、12R タイヤハウス
13 荷室
13M 床面
14 後輪
20 床下収納部
20F 前側面(規制部材)
20B 後側面(規制部材)
20L 左側面(規制部材)
20R 右側面(規制部材)
20Z ボード収容位置
21F、21B、21L、21R ボード支持部材
22 ロックストライカ
23 ロック部材
40、40B デッキボード
40A ボード部材
40Z、40AZ 底面
41 把持部材
42 溝部(ガイド部)
43 幅広溝部
44 平行溝部
48 溝ユニット
DM 溝深さ
G 重心
LM、LT 溝長さ
WM、WF 溝幅