(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022077191
(43)【公開日】2022-05-23
(54)【発明の名称】アイリス機構を用いた多指ハンドによる把持装置、ロボットアーム及び飛行体
(51)【国際特許分類】
B25J 15/00 20060101AFI20220516BHJP
【FI】
B25J15/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020187926
(22)【出願日】2020-11-11
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り (1)令和2年5月27日に、「ロボティクス・メカトロニクス講演会2020」の講演論文集にて発表 (2)令和2年5月29日に、「ロボティクス・メカトロニクス講演会2020」にてポスター講演により発表
(71)【出願人】
【識別番号】592218300
【氏名又は名称】学校法人神奈川大学
(74)【代理人】
【識別番号】100098626
【弁理士】
【氏名又は名称】黒田 壽
(74)【代理人】
【識別番号】100134728
【弁理士】
【氏名又は名称】奥川 勝利
(72)【発明者】
【氏名】江上 正
(72)【発明者】
【氏名】谷田貝 凌太
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707BS06
3C707ES06
3C707HS27
3C707NS02
(57)【要約】
【課題】把持することが不得手な被把持物を減らし、汎用性の高い把持装置を提供する。
【解決手段】把持中心軸Oの周囲に配置される3以上の可動部材21A~21Fのそれぞれが駆動源26の駆動力により該把持中心軸Oに向けて近づくように移動することで、該3以上の可動部材により被把持物の外側面を把持する把持装置20であって、前記被把持物の外側面に対向する前記可動部材の対向部21aは、前記把持中心軸に対して略平行で、かつ、該把持中心軸に沿って長尺である。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
把持中心軸の周囲に配置される3以上の可動部材のそれぞれが駆動源の駆動力により該把持中心軸に向けて近づくように移動することで、該3以上の可動部材により被把持物の外側面を把持する把持装置であって、
前記被把持物の外側面に対向する前記可動部材の対向部は、前記把持中心軸に対して略平行で、かつ、該把持中心軸に沿って長尺であることを特徴とする把持装置。
【請求項2】
請求項1に記載の把持装置において、
前記3以上の可動部材は、前記把持中心軸から離れるように移動することで、該3以上の可動部材により被把持物の内側面を把持することを特徴とする把持装置。
【請求項3】
把持中心軸の周囲に配置される3以上の可動部材のそれぞれが駆動源の駆動力により該把持中心軸から離れるように移動することで、該3以上の可動部材により被把持物の内側面を把持する把持装置であって、
前記被把持物の内側面に対向する前記可動部材の対向部は、前記把持中心軸に対して略平行で、かつ、該把持中心軸に沿って長尺であることを特徴とする把持装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の把持装置において、
前記3以上の可動部材は、お互いが前記把持中心軸の周方向に離間した状態で前記移動をすることを特徴とする把持装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の把持装置において、
前記3以上の可動部材を前記移動が可能なように保持する保持部材を有し、
前記3以上の可動部材は、前記保持部材よりも前記把持中心軸から離れた位置まで移動可能であることを特徴とする把持装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の把持装置において、
前記対向部は、弾性材によって構成されていることを特徴とする把持装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の把持装置において、
前記3以上の可動部材は、1つの前記駆動源の駆動力によって移動することを特徴とする把持装置。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか1項に記載の把持装置において、
前記駆動源は、前記把持中心軸が通る位置に配置されることを特徴とする把持装置。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか1項に記載の把持装置において、
前記3以上の可動部材は、前記把持中心軸に略平行となるように該把持中心軸の周囲に配置される各回転軸の回りをそれぞれ回転することにより前記移動をすることを特徴とする把持装置。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか1項に記載の把持装置において、
前記可動部材は、前記把持中心軸に沿って長尺な把持部材と、該把持部材の一端側を支持する支持部材とを備え、前記駆動源の駆動力によって前記支持部材を移動させることにより前記把持部材が前記移動をすることを特徴とする把持装置。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれか1項に記載の把持装置において、
前記3以上の可動部材に前記駆動源からの駆動力を伝達する駆動伝達部材を前記把持中心軸の軸方向から挟み込んで支持する2つの支持部材を有し、
前記2つの支持部材のうちの一方は、前記駆動伝達部材を支持する側とは反対側で、前記3以上の可動部材を前記移動が可能なように保持する保持部材であることを特徴とする把持装置。
【請求項12】
被把持物を把持する把持装置を備えたロボットアームであって、
前記把持装置として、請求項1乃至11のいずれか1項に記載の把持装置を用いたことを特徴とするロボットアーム。
【請求項13】
被把持物を把持する把持装置を備えた飛行体であって、
前記把持装置として、請求項1乃至11のいずれか1項に記載の把持装置を用いたことを特徴とする飛行体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被把持物を把持する把持装置並びにこれを備えたロボットアーム及び飛行体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、把持中心軸の周囲に配置される3以上の可動部材のそれぞれが駆動源の駆動力により把持中心軸に向けて近づくように移動することで、これらの可動部材により被把持物の外側面を把持する把持装置が知られている。例えば、特許文献1には、把持中心軸の周囲で互いに隣接するように配置される6つの平板状の可動ブレード(可動部材)の各板面が同一平面をなすように配置され、隣り合う可動ブレード間の隣接面(端面)同士を互いに摺動させて把持中心軸に向けて移動する把持装置が開示されている。この把持装置は、各可動ブレードの端面(被把持部と対向する対向部)で、把持中心軸付近に配置される被把持物の周囲を全方向から把持する。そのため、6つの可動ブレードの端面(対向部)が被把持物の外側面に当接したとき、被把持物の逃げ場がなく、被把持物が適切に把持される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の把持装置は、把持することが不得手な被把持物が多く存在する。被把持物が、例えば、把持中心軸方向に向かって先細るような錐体形状などの特殊な外側面形状であったり、高さの低い物であったりすると、従来の把持装置では適切な把持が難しい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した課題を解決するために、本発明は、把持中心軸の周囲に配置される3以上の可動部材のそれぞれが駆動源の駆動力により該把持中心軸に向けて近づくように移動することで、該3以上の可動部材により被把持物の外側面を把持する把持装置であって、前記被把持物の外側面に対向する前記可動部材の対向部は、前記把持中心軸に対して略平行で、かつ、該把持中心軸に沿って長尺であることを特徴とする。
本把持装置においては、把持中心軸の周囲に配置される3以上の可動部材が把持中心軸に向けて近づくように移動することで、これらの可動部材により被把持物の外側面を把持する。よって、被把持物をその周囲から把持することができるので、3以上の可動部材の対向部が被把持物の外側面に当接したとき、被把持物を把持することが可能である。
ここで、従来の把持装置では、可動部材が平板状の部材(可動ブレード)であったため、被把持物が、例えば、特殊な外側面形状であったり、高さの低い物であったりすると、適切な把持が難しい場合があるなど、把持することが不得手な被把持物が多く存在する。
具体例で説明すると、例えば、高さの低い被把持物を把持する場合、従来の把持装置では、可動ブレードを移動可能なように保持する保持部材が、可動ブレードの板面よりも外側へ突出している。そのため、載置面上に載置された高さの低い被把持物を把持しようとすると、保持部材が載置面に干渉してしまい、可動ブレードの端面(対向部)を被把持物に対向させることができず、把持することができない。
これに対し、本把持装置では、被把持物の外側面に対向する可動部材の対向部が、把持中心軸に対して略平行で、かつ、把持中心軸に沿って長尺である。このような長尺形状であることから、対向部の長尺方向先端部分は、可動部材の保持部材を含む他の構成部材よりも、把持中心軸方向外側へ突出するように構成できる。よって、載置面上に載置された高さの低い被把持物を把持しようとするときに、他の構成部材が載置面に干渉せず、可動部材の対向部の先端部分を被把持物に対向させることができ、適切に把持することができる。
【0006】
また、本発明は、前記把持装置において、前記3以上の可動部材は、前記把持中心軸から離れるように移動することで、該3以上の可動部材により被把持物の内側面を把持することを特徴とする。
本把持装置においては、前記3以上の可動部材を把持中心軸から離れるように移動させて、これらの可動部材により被把持物の内側面を把持することもできるようになる。例えば、被把持物に設けられた孔の開口から、前記3以上の可動部材における長尺な対向部を挿入し、前記3以上の可動部材を把持中心軸から離れるように移動させることで、これらの可動部材の対向部を被把持物の内側面に当接させ、被把持物を保持(把持)することができる。よって、前記3以上の可動部材を当接させて把持可能な内側面をもつ被把持部であれば、被把持部の外側面形状がどのような形状であっても、当該被把持部を把持することができる。
【0007】
また、本発明は、把持中心軸の周囲に配置される3以上の可動部材のそれぞれが駆動源の駆動力により該把持中心軸から離れるように移動することで、該3以上の可動部材により被把持物の内側面を把持する把持装置であって、前記被把持物の内側面に対向する前記可動部材の対向部は、前記把持中心軸に対して略平行で、かつ、該把持中心軸に沿って長尺であることを特徴とする。
本把持装置においては、前記3以上の可動部材を把持中心軸から離れるように移動させて、これらの可動部材により被把持物の内側面を把持することもできるようになる。例えば、被把持物に設けられた孔の開口から、前記3以上の可動部材における長尺な対向部を挿入し、前記3以上の可動部材を把持中心軸から離れるように移動させることで、これらの可動部材の対向部を被把持物の内側面に当接させ、被把持物を保持(把持)することができる。よって、前記3以上の可動部材を当接させて把持可能な内側面をもつ被把持部であれば、被把持部の外側面形状がどのような形状であっても、当該被把持部を把持することができる。
加えて、本把持装置においては、被把持物の外側面に対向する可動部材の対向部が、把持中心軸に対して略平行で、かつ、把持中心軸に沿って長尺である。そのため、例えば、被把持物の内側面形状が把持中心軸方向に向かって先細るような錐体形状を有する形状であっても、可動部材の対向部は錐体形状の最外周部(縁部)に真っ先に当接し、その最外周部(縁部)で摺動することなく、当該被把持物を把持することができる。
また、例えば、高さの低い被把持物を把持する場合でも、本把持装置では、可動部材の対向部が長尺であることから、その対向部の長尺方向先端部分は、可動部材の保持部材を含む他の構成部材よりも、把持中心軸方向外側へ突出するように構成できる。よって、載置面上に載置された高さの低い被把持物を把持しようとするときに、他の構成部材が載置面に干渉せず、可動部材の対向部の先端部分を被把持物の内側面に対向させることができ、適切に把持することができる。
【0008】
また、本発明は、前記把持装置において、前記3以上の可動部材は、お互いが前記把持中心軸の周方向に離間した状態で前記移動をすることを特徴とする。
本把持装置においては、可動部材の対向部に対向する被把持物の壁部(外側面や内側面)が、例えば非対称形状あるいは不定形形状などの特殊な形状であっても、可動部材の対向部で適切に把持することができる。例えば、壁部上に突出部分を有するような特殊形状をもつ被把持物の場合、可動部材間に隙間が無い従来の把持装置では、その突出部分にいずれかの可動部材が当接してしまうことで、他の可動部材の多くが被把持物の壁部に当接できない状態になってしまう。これに対し、本把持装置によれば、その突出部分が可動部材間の隙間に入り込むことができるので、より多くの可動部材を被把持物に当接させることができ、より適切に被把持物を把持することができる。
また、本把持装置によれば、各可動部材が把持中心軸に近づくにつれてお互いの離間距離が小さくなり、可動部材間の隙間が狭くなっていくので、可動部材間の隙間で被把持物を把持することも可能となる。これにより、例えば、把持中心軸が直交する方向に長尺な被把持物が、把持中心軸から外れる位置に位置していいても、これを例えば2つの可動部材間の隙間で把持するということも可能である。
【0009】
また、本発明は、前記把持装置において、前記3以上の可動部材を前記移動が可能なように保持する保持部材を有し、前記3以上の可動部材は、前記保持部材よりも前記把持中心軸から離れた位置まで移動可能であることを特徴とする。
本把持装置においては、前記3以上の可動部材が保持部材よりも把持中心軸から離れた位置まで移動可能であるので、把持中心軸に直交する面において保持部材よりも大きな寸法をもつ被把持物を把持することができる。
【0010】
また、本発明は、前記把持装置において、前記対向部は、弾性材によって構成されていることを特徴とする。
この把持装置においては、対向部が弾性変形可能であるため、例えば、被把持物が壊れやすいものであっても、弾性変形により当接圧を適度に分散しつつ、当該把持物を把持することができる。また、載置面上の被把持物を把持するような場合、対向部が載置面に衝突しても載置面や対向部が破損しにくい。しかも、載置面に沿って対向部が弾性変形した状態で載置面上の被把持物を把持することができるので、載置面上に載置された高さの低い被把持物を、より適切に把持することができる。
【0011】
また、本発明は、前記把持装置において、前記3以上の可動部材は、1つの前記駆動源の駆動力によって移動することを特徴とする。
この把持装置によれば、3以上の可動部材を複数の駆動源で移動させる構成よりも、軽量化、小型化が容易である。
【0012】
また、本発明は、前記把持装置において、前記駆動源は、前記把持中心軸が通る位置に配置されることを特徴とする。
把持中心軸の周囲に配置される3以上の可動部材を把持中心軸に対して近づけたり離したりするように移動する把持装置では、把持装置の中心部が把持中心軸におおよそ一致する。そのため、把持中心軸の付近に把持装置の重心が位置するようにすると、重量バランスのよい把持装置が得られる。
ところが、従来の把持装置では、平板状の可動ブレードで比較的長尺な被把持物の側面を把持できるように、把持中心軸を通る位置には被把持物を通すための空間を確保する必要がある。そのため、従来の把持装置では、比較的重量のある駆動源を把持中心軸から外れる位置に配置せざるを得ず、そのため、把持装置の重心位置が把持中心軸から大きく外れ、重量バランスが悪い。
これに対し、本把持装置は、上述したように、可動部材の対向部が長尺であるため、比較的長尺な被把持物の端部を可動部材の基端部(保持部材に保持される側の端部)まで入り込ませなくとも、可動部材の先端側部分の対向部で当該被把持物の側面を把持することが可能である。したがって、本把持装置のように、駆動源を把持中心軸が通る位置に配置することが可能である。そして、比較的重量のある駆動源を把持中心軸が通る位置に配置できることで、重量バランスの偏りの少ない構成を実現できる。
【0013】
また、本発明は、前記把持装置において、前記3以上の可動部材は、前記把持中心軸に略平行となるように該把持中心軸の周囲に配置される各回転軸の回りをそれぞれ回転することにより前記移動をすることを特徴とする。
本把持装置によれば、各可動部材の前記移動(把持中心軸に対して近づいたり離れたりする移動)を、簡易な構成で実現することができる。
【0014】
また、本発明は、前記把持装置において、前記可動部材は、前記把持中心軸に沿って長尺な把持部材と、該把持部材の一端側を支持する支持部材とを備え、前記駆動源の駆動力によって前記支持部材を移動させることにより前記把持部材が前記移動をすることを特徴とする。
本把持装置においては、把持部材の他端側(先端側)を自由端とすることができるので、把持部材の先端側の対向部で被把持部を把持することができる。これにより、把持部材の先端側が他の構成部材に接続されている構成と比較して、当該他の構成部材が邪魔にならずに、被把持物を把持することができる。
【0015】
また、本発明は、前記把持装置において、前記3以上の可動部材に前記駆動源からの駆動力を伝達する駆動伝達部材を前記把持中心軸の軸方向から挟み込んで支持する2つの支持部材を有し、前記2つの支持部材のうちの一方は、前記駆動伝達部材を支持する側とは反対側で、前記3以上の可動部材を前記移動が可能なように保持する保持部材であることを特徴とする。
従来の把持装置では、可動部材が平板状の部材(可動ブレード)であり、その可動ブレードを、駆動源からの駆動力を伝達する駆動伝達部材(ギヤやプーリ)と一緒に、把持中心軸の軸方向から2つの支持部材で挟み込んで支持する構成である。この構成においては、例えば、駆動速度の伝達比率(ギヤ比等)などを変えるために駆動伝達部材の大きさ等を変更する場合、この変更に合わせて、可動部材や支持部材の大きさ等も変更する必要がある。
本発明においては、2つの支持部材の間には、駆動伝達部材だけが挟み込まれ、可動部材が挟み込まれていない。このように2つの支持部材の外側に可動部材を保持する構成としたことで、駆動速度の伝達比率などを変えるために駆動伝達部材の大きさ等を変更する場合でも、この変更に合わせて、可動部材や支持部材の大きさ等を変更しないで済む。
【0016】
また、本発明は、被把持物を把持する把持装置を備えたロボットアームであって、前記把持装置として、上述した把持装置を用いたことを特徴とする。
このロボットアームによれば、把持することが不得手な被把持物の種類を減らし、より汎用性の高いロボットアームを提供することが可能となる。
【0017】
また、本発明は、被把持物を把持する把持装置を備えた飛行体であって、前記把持装置として、上述した把持装置を用いたことを特徴とするものである。
この飛行体によれば、把持することが不得手な被把持物の種類を減らし、より汎用性の高い飛行体を提供することが可能となる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、把持することが不得手な被把持物を減らし、汎用性の高い把持装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】実施形態1における部品組立システムの概要を示す説明図。
【
図2】部品組立システムにおけるロボットアームを斜め上方から見た外観斜視図。
【
図3】同ロボットアームのエンドエフェクタとして用いられるアイリス多指ロボットハンドを説明するための斜視図。
【
図4】同アイリス多指ロボットハンドを、
図3とは別の角度から見た斜視図。
【
図5】(a)~(e)は、同アイリス多指ロボットハンドの把持動作を説明するために、同アイリス多指ロボットハンドを第二保持部材側から見たときの説明図。
【
図6】同アイリス多指ロボットハンドにおけるフィンガー部材の把持部材の構成を示す説明図。
【
図7】同アイリス多指ロボットハンドを用いて、把持中心軸に直交する方向の寸法が小さな被把持物を把持する例を示す説明図。
【
図8】同アイリス多指ロボットハンドを用いて、外側面形状が把持中心軸の方向に向かって先細るような錐体形状を有する被把持物を把持する例を示す説明図。
【
図9】同アイリス多指ロボットハンドを用いて、把持中心軸と平行な方向の長さが非常に短い被把持物を把持する例を示す説明図。
【
図10】同アイリス多指ロボットハンドを用いて、把持中心軸に直交する仮想面において保持部材よりも大きな寸法をもつ被把持物を把持する例を示す説明図。
【
図11】(a)及び(b)は、同アイリス多指ロボットハンドを用いて、把持中心軸に直交する方向に長尺な被把持物を把持する例を示す説明図。
【
図12】同アイリス多指ロボットハンドを用いて、6つのフィンガー部材の把持部材を被把持物の孔の内側面に当接させ、被把持物を保持(把持)する例を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
〔実施形態1〕
以下、本発明に係る把持装置を、ロボットアームのエンドエフェクタとして適用した一実施形態(以下、本実施形態を「実施形態1」という。)について説明する。
なお、本実施形態1は、部品の組み立てを行う組み立て工場において、被把持物である部品が積載された運搬ケースから、ロボットアームを用いて部品をピックアップし、これを組み立てラインの部品搬送コンベア上の所定位置に配置する。ただし、本発明に係る把持装置について、このようなロボットアームに適用されるものは一例にすぎず、他のシステムに用いられるロボットアームに適用してもよいし、ロボットアーム以外の把持装置として用いられるものであってもよい。
【0021】
図1は、本実施形態1における部品組立システムの概要を示す説明図である。
本実施形態1の部品組立システム1は、部品取出位置2aに置かれた運搬ケース50内の部品をロボットアーム10により部品組立システムの搬送コンベア45上の所定位置に配置し、この搬送コンベア45で搬送された部品を後段の組み立て工程での組み立てに用いるものである。なお、空になった運搬ケース50は、ケース回収位置2bへ移される。
【0022】
図2は、ロボットアーム10を斜め上方から見た外観斜視図である。
ロボットアーム10は、土台部11、土台部11に対して昇降可能に支持される昇降部12、昇降部12に対して第一回動軸13aの回りで回動可能に支持される第一腕部13、第一腕部13に対して第二回動軸14aの回りで回動可能に支持される第二腕部14、第二腕部14に対して第三回動軸15aの回りで回動可能に支持される手先部15などを有している。
【0023】
昇降部12は、土台部11のスライドレールに対して昇降可能に取り付けられ、昇降モータ12bの駆動力により、土台部11のスライドレールに沿って図中矢印Aで示す方向に上下動可能に構成されている。また、第一腕部13の根本側端は、土台部11の中心を通る鉛直軸である第一回動軸13aを中心にして、図中矢印Bで示す方向に360[°]回転が可能なように、昇降部12に取り付けられている。また、第二腕部14の根本側端は、第一腕部13の先端側端を通る鉛直軸である第二回動軸14aを中心にして、図中矢印Cで示す方向に360[°]回転が可能なように、第一腕部13の先端側端に取り付けられている。
【0024】
手先部15の根本側端は、第二腕部14の先端側端を通る鉛直軸である第三回動軸15aを中心にして、図中矢印Dで示す方向に360[°]回転が可能なように、第二腕部14の先端側端に取り付けられている。手先部15には、様々な種類のエンドエフェクタを着脱することが可能であり、本実施形態1では、アイリス多指ロボットハンド20が取り付けられる。
【0025】
図3は、ロボットアーム10のエンドエフェクタとして用いられるアイリス多指ロボットハンド20を説明するための斜視図である。
図4は、本実施形態1のアイリス多指ロボットハンド20を、
図3とは別の角度から見た斜視図である。
図5(a)~(e)は、本実施形態1のアイリス多指ロボットハンド20の把持動作を説明するために、アイリス多指ロボットハンド20をフィンガー部材の先端側から見たときの説明図である。
なお、
図3及び
図4において、アイリス多指ロボットハンド20の内部構成を示すために、後述する第一保持部材22が透明のものとして記述されている。
【0026】
本実施形態1のアイリス多指ロボットハンド20は、把持中心軸Oの周囲に配置される複数の可動部材として、6つのフィンガー部材21A,21B,21C,21D,21E,21Fを備えている。本実施形態1のフィンガー部材21A~21Fは、いずれも同一構成からなる。なお、異なる構成の可動部材を組み合わせて用いることも可能である。また、フィンガー部材の数は3つ以上で任意に設定することができるが、好ましくは5つ以上である。
【0027】
本実施形態1のアイリス多指ロボットハンド20は、2枚の円盤状の保持部材22,23が所定の間隔をもって互いに対向するように設けられている。アイリス多指ロボットハンド20は、2枚の保持部材22,23のうちの第一保持部材22を介して、ロボットアーム10の手先部15に取り付けられる。
【0028】
本実施形態1の第一保持部材22上のモータ固定部22aには、
図3及び
図4に示すように、駆動源としての1つの駆動モータ26が取り付けられている。駆動モータ26は、正逆回転可能なもので、例えばサーボモータを利用することができる。駆動モータ26は、把持中心軸Oが通る位置に配置されている。このように、比較的重量のある駆動モータ26を把持中心軸Oが通る位置に配置することで、アイリス多指ロボットハンド20の重心が把持中心軸Oの付近に位置し、重量バランスの偏りの少ない構成が実現される。
【0029】
また、本実施形態1において、駆動モータ26のモータ軸26aは、把持中心軸O上に位置するように配置されている。そのため、1つの駆動モータ26からの駆動力を、把持中心軸Oの周囲に配置される6つのフィンガー部材21A,21B,21C,21D,21E,21Fへ伝達するための駆動伝達機構は、モータ軸26aを中心とした点対称の構成とすることができ、部品点数の削減、部品の共通化、構成の簡素化などを実現しやすい。
【0030】
第一保持部材22上に配置された駆動モータ26のモータ軸26aは、第一保持部材22と第二保持部材23とによって回転可能に軸支されている。このモータ軸26aには、第一保持部材22と第二保持部材23との間の部分に、駆動伝達機構を構成するモータギヤ26bが固定されている。
【0031】
また、第一保持部材22と第二保持部材23との間の空間には、このモータギヤ26bと噛み合うように、駆動伝達機構を構成する3つのアイドラギヤ25が配置されている。3つのアイドラギヤ25は、モータ軸26aを中心とした点対称に配置され、各アイドラギヤ25の軸25aは、第一保持部材22と第二保持部材23とによって回転可能に軸支されている。
【0032】
また、第一保持部材22と第二保持部材23との間の空間には、各アイドラギヤ25とそれぞれ2つずつ噛み合うように、駆動伝達機構を構成する6つの駆動ギヤ24A~24Fが配置されている。6つの駆動ギヤ24A~24Fも、モータ軸26aを中心とした点対称に配置され、各駆動ギヤ24A~24Fの軸24aも、第一保持部材22と第二保持部材23とによって回転可能に軸支されている。
【0033】
なお、本実施形態1では、駆動伝達機構がギヤを用いた構成であるが、これに限らず、例えばベルトを用いた構成などの他の構成であってもよい。
また、本実施形態1では、1つの駆動源からの駆動力で6つのフィンガー部材21A~21Fを移動させる構成であるが、2つ以上の駆動源からの駆動力で6つのフィンガー部材21A~21Fを移動させる構成であってもよい。
【0034】
6つの駆動ギヤ24A~24Fの各軸24aは、第二保持部材23の外面に延出しており、その延出部分に6つのフィンガー部材21A~21Fがそれぞれ取り付けられている。具体的には、6つのフィンガー部材21A~21Fは、把持中心軸Oに沿って長尺な把持部材21aと、把持部材21aの一端側を支持する支持部材である支持ブレード21bとから構成されている。
【0035】
支持ブレード21bは、長尺な平板状部材であり、第二保持部材23の外面に対して板面が平行になるように配置される。この支持ブレード21bの一端部には、駆動ギヤ24A~24Fの軸24aが固定され、その支持ブレード21bの他端部には、把持部材21aが取り付けられている。これにより、駆動ギヤ24A~24Fが回転駆動すると、支持ブレード21bが当該一端部を中心に軸24aの回りを回転し、この回転に伴って、支持ブレード21bの他端部に固定された把持部材21aが軸24aの回りを回転移動する。
【0036】
各フィンガー部材21A~21Fの把持部材21aは、長尺な棒状部材であり、その長尺方向が把持中心軸Oに略平行となるように、支持ブレード21bによって支持されている。本実施形態1の把持部材21aは、その側面部分が被把持物の外側面や内側面に対向する対向部となる。したがって、本実施形態1におけるフィンガー部材21A~21Fの対向部(把持部材21aの側面部)は、把持中心軸Oに対して略平行で、かつ、把持中心軸に沿って長尺である。
【0037】
図6は、本実施形態1におけるフィンガー部材21A~21Fの把持部材21aの構成を示す説明図である。
本実施形態1の把持部材21aは、その長尺方向に延びる剛性の高い1又は2以上の芯材21cと、その芯材の周囲を覆うように成形された弾性材21dとから構成される。芯材21cは、アルミニウムなどの金属製であるのが好ましく、支持ブレード21bには把持部材21aの芯材21cが接続、支持される。弾性材21dは、例えばシリコーンゴムなどのゴム材によって形成されるが、その材料は適宜選定される。把持部材21aの弾性材21dの弾性を調整する方法は、材料を調整するだけでなく、切り欠きや内部空間を設けるような方法を採用してもよい。
【0038】
また、本実施形態1の把持部材21aの形状は、
図5(a)~(e)に示すように、底面が台形形状をなした四角柱形状であるが、その形状は適宜決定される。
特に、本実施形態1では、6つのフィンガー部材21A~21Fは、上述したように、各軸24aの回りをそれぞれ回転することで、把持中心軸Oに対して把持部材21aを近づけたり離れさせたりするように移動する。そのため、その移動中にお互いの把持部材21aが干渉(接触)することがないように、形状が決定されている。
【0039】
また、本実施形態1の把持部材21aの形状は、
図5(e)に示すように、把持中心軸Oに最近接したときに各把持部材21aの側面(対向部)が互いに接触して隙間が生じないように、形状が決定されている。この隙間が生じるような構成であると、その隙間よりも小さな寸法の被把持物を把持することができない。これに対し、本実施形態1のように、把持中心軸Oに最近接した各把持部材21aの側面(対向部)が互いに接触して隙間が生じない構成であれば、
図7に示すように、把持中心軸Oに直交する方向の寸法が小さな被把持物T1であっても把持することが可能となる。
【0040】
次に、
図5(a)~(e)を用いて、6つのフィンガー部材21A~21Fの動きを、より詳しく説明する。
本実施形態1において、駆動モータ26が駆動すると、その駆動力がモータギヤ26b、アイドラギヤ25、駆動ギヤ24A~24Fを介して、6つのフィンガー部材21A~21Fに伝達される。これにより、6つのフィンガー部材21A~21Fの各支持ブレード21bが各駆動ギヤ24A~24Fの軸24aの回りで回転し、各支持ブレード21bの他端部に取り付けられた各把持部材21aが軸24aの回りで回転移動する。
【0041】
本実施形態1では、駆動モータ26が逆転方向に駆動することで、6つのフィンガー部材21A~21Fの各把持部材21aが、軸24aの回りを、
図5中時計回り方向へ回転移動する。その結果、6つのフィンガー部材21A~21Fは、
図5(a)に示すように、各把持部材21aが把持中心軸Oから最も離れた地点に位置するまで移動する。
【0042】
このように6つのフィンガー部材21A~21Fが開いた状態において、駆動モータ26が正転方向に駆動すると、6つのフィンガー部材21A~21Fの各把持部材21aが、軸24aの回りを、
図5中反時計回り方向へ回転移動する。その結果、6つのフィンガー部材21A~21Fは、
図5(b)~(e)に示すように、各把持部材21aが把持中心軸Oに近づくように移動する。そして、最終的には、
図5(e)に示すように、6つのフィンガー部材21A~21Fの各把持部材21aは、その把持部材21aの側面の一辺が把持中心軸O上で互いに接触する位置まで移動し、6つのフィンガー部材21A~21Fが完全に閉じた状態になる。
【0043】
ロボットアーム10により運搬ケース50内の部品を把持する場合、例えば、
図5(a)に示すように6つのフィンガー部材21A~21Fが開いた状態のアイリス多指ロボットハンド20を、ロボットアーム10の各軸の回転を制御して、運搬ケース50内の部品を把持できる位置まで移動させる。そして、駆動モータ26を駆動して、6つのフィンガー部材21A~21Fを、その把持部材21aが把持中心軸Oに近づくように移動させる。このように移動させると、当該部品の側面に6つのフィンガー部材21A~21Fの把持部材21aの側面が当接し、当該部品が把持される。
【0044】
ここで、例えば、
図8に示すような被把持物T2、すなわち、外側面形状が把持中心軸Oの方向に向かって先細るような錐体形状を有する被把持物T2を把持する場合を考える。このような被把持物T2は、従来の把持装置(6つの可動ブレードの端面で把持中心軸付近に配置される被把持物の周囲を全方向から把持する構成)では、その可動ブレードの端面が被把持物T2の錐体形状をなす外側面に当接したとき、外側面上を摺動してしまう。そのため、被把持物T2の錐体形状の外側面が可動ブレードの端面を押し続けても、被把持物T2は把持中心軸Oの方向へ逃げてしまい、適切に把持できない。
【0045】
これに対し、本実施形態1のアイリス多指ロボットハンド20は、被把持物T2の外側面に対向する6つのフィンガー部材21A~21Fの把持部材21aの側面(対向部)が、把持中心軸Oに対して略平行で、かつ、把持中心軸Oに沿って長尺である。そのため、被把持物T2の外側面形状が
図8に示すような錐体形状を有する形状であっても、各把持部材21aの側面(対向部)は錐体形状の最外周部(縁部)に真っ先に当接し、その最外周部(縁部)で摺動することなく、被把持物T2を適切に把持することができる。
【0046】
また、例えば、
図9に示すように高さの低い被把持物T3、すなわち、把持中心軸Oと平行な方向の長さが非常に短い被把持物T3を把持する場合を考える。このような被把持物T3は、従来の把持装置では、その可動ブレードを移動可能なように保持する保持部材が、可動ブレードの板面よりも把持中心軸の方向へ突出している。そのため、載置面上に載置された高さの低い被把持物T3を把持しようとすると、その保持部材が載置面に干渉してしまい、可動ブレードの端面(対向部)を被把持物T3の側面外側面に対向させることができず、把持することができない。
【0047】
これに対し、本実施形態1のアイリス多指ロボットハンド20は、6つのフィンガー部材21A~21Fの把持部材21aの側面(対向部)が把持中心軸Oに沿って長尺である。このような長尺形状であることから、把持部材21aの長尺方向先端部分は、保持部材22,23を含む他の構成部材よりも、把持中心軸Oの方向へ突出するように構成される。よって、載置面上に載置された高さの低い被把持物T3を把持しようとするとき、他の構成部材が載置面に干渉するようなことはなく、6つのフィンガー部材21A~21Fの把持部材21aの先端部分を被把持物T3の側面外側面に対向させることができ、当該被把持物T3を適切に把持することができる。
【0048】
また、本実施形態1のアイリス多指ロボットハンド20は、
図5(a)に示すように、6つのフィンガー部材21A~21Fが、これらを保持する保持部材22,23よりも把持中心軸Oから離れた位置まで移動可能である。そのため、
図10に示すように、把持中心軸Oに直交する仮想面において保持部材22,23よりも大きな寸法をもつ被把持物T4を把持することが可能である。
【0049】
また、本実施形態1のアイリス多指ロボットハンド20において、6つのフィンガー部材21A~21Fは、お互いが把持中心軸Oの周方向に離間した状態で、把持中心軸Oに近づくように移動する。そのため、6つのフィンガー部材21A~21Fが把持中心軸Oに近づくにつれてお互いの離間距離が小さくなっていく。その結果、例えば、
図11(a)や
図11(b)に示すように、各フィンガー部材21A~21Fの把持部材21a間の隙間に、把持中心軸Oに直交する方向に長尺な被把持物T5を挟み込むようにして把持することも可能となる。特に、本実施形態1によれば、
図11(b)に示すように、長尺な被把持物T5が把持中心軸Oから外れる位置に位置していても、これを2つのフィンガー部材21D,21Eの間に挟み込むようにして把持することができる。
【0050】
また、本実施形態1のアイリス多指ロボットハンド20は、上述したように、駆動モータ26を逆転方向に駆動することで、6つのフィンガー部材21A~21Fの各把持部材21aが把持中心軸Oから離れるように6つのフィンガー部材21A~21Fを移動させることができる。これにより、例えば、
図12に示すように、被把持物T6に設けられた孔Taの開口から、閉じた状態の6つのフィンガー部材21A~21Fの把持部材21aを挿入し、各把持部材21aが把持中心軸Oから離れるように6つのフィンガー部材21A~21Fを移動させれば、6つのフィンガー部材21A~21Fの把持部材21aの側面(対向部)を被把持物T6の孔Taの内側面に当接させ、被把持物T6を保持(把持)することができる。
【0051】
また、本実施形態1においては、上述したように、把持部材21aの側面部(対向部)が弾性材21dによって形成されているため、把持部材21aの側面部(対向部)が弾性変形可能である。これにより、例えば、被把持物が壊れやすいものであっても、弾性変形により把持力を適度に分散させつつ、当該把持物を把持することができる。また、載置面上の被把持物を把持する場合、把持部材21aの先端部分が弾性材21dで形成されていることで、載置面に衝突しても載置面や把持部材21aが破損しにくい。しかも、載置面に沿って把持部材21aの先端部分が弾性変形した状態で載置面上の被把持物を把持することができるので、例えば、
図9に示したような載置面上の高さの低い被把持物T3を適切に把持することができる。
【0052】
また、従来の把持装置では、可動部材が平板状の部材(可動ブレード)であり、その可動ブレードが、駆動伝達部材(ギヤやプーリ)と一緒に2つの支持部材で挟み込まれている。この場合、例えば、駆動速度の伝達比率(ギヤ比)などを変えるために駆動伝達部材の大きさ等を変更するとき、この変更に合わせて、可動ブレードや支持部材の大きさ等も変更する必要がある。
【0053】
これに対し、本実施形態1においては、2つの支持部材である第一保持部材22と第二保持部材23との間には、駆動伝達部材としての駆動伝達機構だけが挟み込まれ、可動部材としてのフィンガー部材21A~21Fが挟み込まれていない。このように第一保持部材22及び第二保持部材23の外側にフィンガー部材21A~21Fを保持する構成としたことで、駆動速度の伝達比率(ギヤ比)などを変えるために駆動伝達部材の大きさ等を変更する場合でも、この変更に合わせて、フィンガー部材21A~21Fや保持部材22,23の大きさ等を変更しないで済む。
【0054】
更に、従来の把持装置では、可動部材が平板状の部材(可動ブレード)であり、隣り合う可動ブレード間の隣接面(端面)同士を互いに摺動させて把持中心軸に向けて移動する構成である。この構成では、摺動による駆動負荷が大きく、動作速度を速くすることが難しいというデメリットがある。これに対し、本実施形態1では、このような摺動による駆動負荷が生じない構成であるため、動作速度を速くすることが容易であるというメリットがある。
【0055】
一方で、本実施形態1では、長尺なフィンガー部材21A~21Fで被把持物を把持する構成であるため、フィンガー部材21A~21Fの撓み等により把持力が逃げやすく、平板状の部材(可動ブレード)の端面(対向部)で被把持物を把持する従来の把持装置よりも、把持力が弱くなりやすい。この点については、例えば、駆動伝達部材の伝達比率(ギヤ比等)を調整することで、所望の把持力を得ることが可能である。
【0056】
以上、本実施形態1のアイリス多指ロボットハンド20によれば、上述したように、従来の把持装置では不得手であった被把持物を含め、様々な形状や様々な寸法の被把持物を適切に把持することができる。
【0057】
〔実施形態2〕
次に、本発明に係る把持装置を、被把持物を把持する把持装置を備えた飛行体の把持装置として適用した他の実施形態(以下、本実施形態を「実施形態2」という。)について説明する。
本実施形態2は、飛行体としてのドローンに搭載される把持装置として、上述した実施形態1のアイリス多指ロボットハンド20を採用したものである。したがって、アイリス多指ロボットハンド20の説明は省略する。
【0058】
図13は、本実施形態2に係るドローン100を示す模式図である。
本実施形態2のドローン100は、公知のドローン本体101の下部に、上述した実施形態1のアイリス多指ロボットハンド20を取り付けた構成となっている。本実施形態2のドローン100によれば、例えば、飛行状態又は着地した状態において、ドローン本体101の下方に存在する搬送対象物(被把持物)をアイリス多指ロボットハンド20の6つのフィンガー部材21A~21Fの把持部材21aで把持することができる。そして、搬送対象物を把持した状態でドローン100が飛行することで、搬送対象物を搬送先まで搬送することができる。
【0059】
本実施形態2のドローン100に用いられているアイリス多指ロボットハンド20は、上述した実施形態1で説明したとおり、これまでの把持装置では適切に把持することが困難であった様々な被把持物を把持することが可能となる。よって、本実施形態2によれば、搬送対象物の制限が少なく、汎用性の高い搬送用ドローンを実現することができる。
【0060】
また、本実施形態2のドローン100に用いられるアイリス多指ロボットハンド20は、構造が単純で、1つの駆動源(アクチュエータ)で駆動できるので軽量である。そのため、軽量であることが重要なドローン100のロボットハンドとして好適に利用することができる。特に、本実施形態1のアイリス多指ロボットハンド20は、上述したように重量バランスに偏りが少ないことから、ドローン100の機体の水平方向中央位置に搭載可能であり、被把持物の把持時における重心変化の影響を受けにくいという効果もある。
【0061】
更に、本実施形態2のドローン100において、アイリス多指ロボットハンド20の6つのフィンガー部材21A~21Fが開いた状態とすることで、6つのフィンガー部材21A~21Fをドローン100の着陸脚として機能させることができる。この場合、アイリス多指ロボットハンド20の6つのフィンガー部材21A~21Fを閉じることにより、ドローン100を着陸状態にしたまま、被把持物を把持することも可能である。
【符号の説明】
【0062】
1 :部品組立システム
10 :ロボットアーム
11 :土台部
12 :昇降部
13 :第一腕部
14 :第二腕部
15 :手先部
20 :アイリス多指ロボットハンド
21A~21F:フィンガー部材
21a :把持部材
21b :支持ブレード
21c :芯材
21d :弾性材
22 :第一保持部材
23 :第二保持部材
24A~24F:駆動ギヤ
25 :アイドラギヤ
26 :駆動モータ
26a :モータ軸
26b :モータギヤ
45 :搬送コンベア
50 :運搬ケース
100 :ドローン
101 :ドローン本体
O :把持中心軸
T1~T6:被把持物