(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022077214
(43)【公開日】2022-05-23
(54)【発明の名称】耐内容物性積層体およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
B32B 27/32 20060101AFI20220516BHJP
B32B 7/12 20060101ALI20220516BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20220516BHJP
C09J 7/29 20180101ALI20220516BHJP
B65D 65/40 20060101ALI20220516BHJP
【FI】
B32B27/32 E
B32B7/12
B32B27/00 M
C09J7/29
B65D65/40 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020187963
(22)【出願日】2020-11-11
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(72)【発明者】
【氏名】高山 雅恵
【テーマコード(参考)】
3E086
4F100
4J004
【Fターム(参考)】
3E086BA04
3E086BA15
3E086BB51
3E086BB74
3E086BB77
3E086CA01
3E086CA28
3E086DA06
4F100AA27
4F100AA27E
4F100AB10
4F100AB19
4F100AB19E
4F100AH06E
4F100AK03E
4F100AK04
4F100AK04C
4F100AK06
4F100AK06D
4F100AK42
4F100AK52E
4F100AK63
4F100AK64E
4F100AK65E
4F100AK70
4F100AK70C
4F100AL02E
4F100AL06
4F100AL06E
4F100AL07
4F100AL07C
4F100AR00B
4F100AR00E
4F100AT00A
4F100BA05
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA21C
4F100BA21D
4F100CA30E
4F100EH20
4F100EH20C
4F100EH20D
4F100GB15
4F100JA04
4F100JA04C
4F100JA04E
4F100JA06
4F100JA06C
4F100JA06D
4F100JA13C
4F100JA13D
4F100JB02
4F100JB02E
4F100JB06
4F100JB06E
4F100JC00E
4F100JD02B
4F100JL11
4F100JL11C
4F100JL11D
4F100JL12
4F100JL12E
4F100YY00C
4F100YY00D
4J004AA07
4J004BA02
4J004CA04
4J004CC03
4J004FA06
(57)【要約】
【課題】内容物と長期にわたって接触しても接着層が侵食されず、シーラント層とガスバリア層の層間剥離を引き起こさない、且つ、内容物の付着を十分に抑制することができる積層体、及びその製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】表層から、基材層、ガスバリア層、接着層、シーラント層の順に積層された耐内容物性積層体であって、
前記接着層がガスバリア層側に酸変性ポリエチレンが、シーラント層側に低密度ポリエチレンが配置されるように溶融共押出しされ、ガスバリア層とシーラント層がサンドイッチラミネートされており、
前記シーラント層が撥液層を備える撥液性フィルムからなり、
前記酸変性ポリエチレンが、無水マレイン酸グラフト重合ポリエチレンからなることを特徴とする耐内容物性積層体である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表層から、基材層、ガスバリア層、接着層、シーラント層の順に積層された耐内容物性積層体であって、
前記接着層がガスバリア層側に酸変性ポリエチレンが、シーラント層側に低密度ポリエチレンが配置されるように溶融共押出しされ、ガスバリア層とシーラント層がサンドイッチラミネートされており、
前記シーラント層が撥液層を備える撥液性フィルムからなり、
前記酸変性ポリエチレンが、無水マレイン酸グラフト重合ポリエチレンからなることを特徴とする耐内容物性積層体。
【請求項2】
前記無水マレイン酸グラフト重合ポリエチレンと低密度ポリエチレンの溶融共押出し層が、層厚比25:75~75:25であることを特徴とする請求項1に記載の耐内容物性積層体。
【請求項3】
前記無水マレイン酸グラフト重合ポリエチレンの無水マレイン酸グラフト率が0.1Wt%以上1.0Wt%以下であり、密度が0.88g/cm3以上0.90g/cm3以下であり、メルトフローレート(以下、MFRということがある)が8.5以上12.0以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の耐内容物性積層体。
【請求項4】
前記低密度ポリエチレンが、密度0.910g/cm3以上0.930g/cm3以下からなり、MFRが6.0以上8.5以下であることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の耐内容物性積層体。
【請求項5】
前記撥液性フィルムが、(A)ポリオレフィン樹脂、(B)シリル化ポリオレフィン、並びに、前記(A)ポリオレフィン樹脂と相溶する部位及び前記(B)シリル化ポリオレフィンと相溶する部位を有する(C)相溶化剤を含み、前記(B)シリル化ポリオレフィンのポリオレフィン部位が前記(A)ポリオレフィン樹脂と非相溶である樹脂組成であることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の耐内容物性積層体。
【請求項6】
前記(C)相溶化剤が、プロピレンとエチレンとのブロック共重合体、及び、エチレンとエチレン・ブチレン共重合体とのブロック共重合体からなる群より選択される少なくとも一種を含むことを特徴とする請求項5に記載の耐内容物性積層体。
【請求項7】
前記(B)シリル化ポリオレフィンの含有量に対する前記(C)相溶化剤の含有量の質量比((C)相溶化剤の質量/(B)シリル化ポリオレフィンの質量)が0.05~20であることを特徴とする請求項5または6に記載の耐内容物性積層体。
【請求項8】
前記撥液フィルムに、(A)ポリオレフィン樹脂、及び、(B)シリル化ポリオレフィンを含み、前記(B)シリル化ポリオレフィンのポリオレフィン部位が前記(A)ポリオレフィン樹脂と相溶する樹脂組成であることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の耐内容物性積層体。
【請求項9】
前記撥液性フィルムに、(D)シリコーンを更に含むことを特徴とする請求項5~8のいずれかに記載の耐内容物性積層体。
【請求項10】
前記撥夜性フィルムの一方の主面上に設けられた1層以上の樹脂層を更に備えることを特徴とする請求項9に記載の耐内容物性積層体。
【請求項11】
前記撥液フィルム中の前記(A)ポリオレフィン樹脂の融点T1(℃)と、前記1層以上
の樹脂層のうち前記撥液フィルムと接する樹脂層に含まれる樹脂の融点T2(℃)とが、T1<T2の関係を満たす、請求項10に記載の耐内容物性包材用積層体。
【請求項12】
前記無水マレイン酸グラフト重合ポリエチレンをDSC測定すると、90℃~100℃の付近に融点ピーク(1)が見られ、50℃から低温側に20℃以上連続した融点ピーク(2)が出る成分を含むことを特徴とする請求項1~11のいずれかに記載の耐内容物性包材用積層体。
【請求項13】
上記積層体において、ガスバリア層と前記無水マレイン酸グラフト重合ポリエチレンと低密度ポリエチレンからなる接着層の間にジルコニウム化合物よりなる防腐コート層をもつ請求項1~12のいずれかに記載の耐内容物性包材用積層体。
【請求項14】
請求項1~13のいずれかに記載の耐内容物性包材用積層体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包材へのアタックが強い次亜塩素酸水やヘアカラー剤、香料、次亜塩素酸塩、除草剤等の保存液に対して、優れた耐内容物性を発現する包材用積層体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
食品、医薬品等の包装に用いられる包装材料としては、一般に、内容物の変質や腐敗等を抑制し、それらの機能や性質を保持するために、水蒸気、酸素、その他の内容物を変質させる気体の進入を遮断するガスバリア性を有する積層体が用いられている。
【0003】
このような積層体は、例えば、基材層、ガスバリア層、シーラント層などから構成され、接着剤層を介して、アルミニウム箔などの金属箔あるいは金属蒸着フィルムとポリエチレン、ポリプロピレン、塩化ビニル、ポリエステル、ナイロンなどのプラスチックフィルムを多層ラミネートして作製される。
【0004】
そして、これらのプラスチックフィルムと金属箔または金属蒸着フィルムとを貼り合わせる接着剤としては、一般的にウレタン2液硬化タイプのドライラミネート用接着剤が用いられる。しかし、包装材料により包装される内容物には、アルカリ性物質、香料、界面活性剤、高沸点有機溶剤などを含有するものが多くあり、これらの内容物を包装すると、長期の保存中に内容物の成分が積層体に浸透し、特にガスバリア層とシーラント層の間の接着剤層を侵す結果、シーラント層がガスバリア層から剥離(デラミネーション)する問題があった。耐内容物性包材には、このようなデラミネーションを防ぐような物性が求められている。
【0005】
このような状況に対応するため、ラミネート加工に使用される接着剤の改良が種々行われており、アルコール耐性のあるものや(特許文献1参照)、幅広い種類の透明バリアフィルムやアルミニウム箔との接着性に優れ、耐内容物性に優れたものとして無水マレイン酸グラフト重合ポリエチレンを使った積層体が提案されている。
【0006】
しかし、透明バリアフィルムやアルミニウム箔との接着性に優れた無水マレイン酸グラフト重合ポリエチレンでは、接着強度を発現させるために、高い温度での熱処理が必要となるため、積層体にしわが入ってしまうという課題がある。さらに、無水マレイン酸グラフト共重合ポリエチレンはメルトフローレート(以下、MFRということがある)が大きく、押出し加工時のネックインが大きくなるため、押出し加工性が悪いという課題がある。樹脂の値段も一般の押出し用樹脂に比べ4倍程度高くコストがかかり好ましくない。
【0007】
また、包装材としての高機能化のひとつとして、内容物の包装材内面への付着による残存を抑制する機能が求められている。内面に内容物が付着し、内容物を全て使い切ることができずに無駄が生じることや、内容物の付着により汚れが生じること、内容物の排出作業に手間がかかることを抑制することができる高い撥液性を有するフィルムが提案されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第5915710号公報
【特許文献2】特開2019-214692号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記の従来技術の欠点を解消するものであり、優れた耐内容物性を示し、すなわち、包装材料として十分なシール強度を保持しながらも内容物中の有効成分などが浸透せず、さらに、有機化合物を含む内容物と長期にわたって接触しても接着層が侵食されず、したがってシーラント層とガスバリア層の層間剥離を引き起こさない、且つ、内容物の付着を十分に抑制することができる撥液層をシーラント層に形成可能な積層体、及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、表層から、基材層、ガスバリア層、接着層、シーラント層の順に積層された耐内容物性積層体であって、
前記接着層がガスバリア層側に酸変性ポリエチレンが、シーラント層側に低密度ポリエチレンが配置されるように溶融共押出しされ、ガスバリア層とシーラント層がサンドイッチラミネートされており、
前記シーラント層が撥液層を備える撥液性フィルムからなり、
前記酸変性ポリエチレンが、無水マレイン酸グラフト重合ポリエチレンからなることを特徴とする耐内容物性積層体である。
【0011】
上記のように内容物が影響してくる、ガスバリア層とシーラント層の間の接着層として、ドライラミネート用接着剤を使用せず、無水マレイン酸グラフト重合ポリエチレンを主成分として使用することによって耐内容物性をもたせ、MFRが低い低密度ポリエチレンとの押し出しにすることでネックインを低減し、生産性を向上させることができる。
【0012】
また、請求項2に記載の発明は、前記無水マレイン酸グラフト重合ポリエチレンと低密度ポリエチレンの溶融共押出し層が、層厚比25:75~75:25であることを特徴とする請求項1に記載の耐内容物性積層体である。
【0013】
また、請求項3に記載の発明は、前記無水マレイン酸グラフト重合ポリエチレンの無水マレイン酸グラフト率が0.1Wt%以上1.0Wt%以下であり、密度が0.88g/cm3以上0.90g/cm3以下であり、MFRが8.5以上12.0以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の耐内容物性積層体である。
【0014】
また、請求項4に記載の発明は、前記低密度ポリエチレンが、密度0.910g/cm3以上0.930g/cm3以下からなり、MFRが6.0以上8.5以下であることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の耐内容物性積層体である。
【0015】
また、請求項5に記載の発明は、前記撥液性フィルムが、(A)ポリオレフィン樹脂、(B)シリル化ポリオレフィン、並びに、前記(A)ポリオレフィン樹脂と相溶する部位及び前記(B)シリル化ポリオレフィンと相溶する部位を有する(C)相溶化剤を含み、前記(B)シリル化ポリオレフィンのポリオレフィン部位が前記(A)ポリオレフィン樹脂と非相溶である樹脂組成であることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の耐内容物性積層体である。
【0016】
また、請求項6に記載の発明は、前記(C)相溶化剤が、プロピレンとエチレンとのブロック共重合体、及び、エチレンとエチレン・ブチレン共重合体とのブロック共重合体からなる群より選択される少なくとも一種を含む、請求項5に記載の耐内容物性積層体である。
【0017】
また、請求項7に記載の発明は、前記(B)シリル化ポリオレフィンの含有量に対する
前記(C)相溶化剤の含有量の質量比((C)相溶化剤の質量/(B)シリル化ポリオレフィンの質量)が0.05~20である、請求項5または6に記載の耐内容物性積層体である。
【0018】
また、請求項8に記載の発明は、前記撥液フィルムに、(A)ポリオレフィン樹脂、及び、(B)シリル化ポリオレフィンを含み、前記(B)シリル化ポリオレフィンのポリオレフィン部位が前記(A)ポリオレフィン樹脂と相溶する、請求項1~4のいずれかに記載の耐内容物性積層体である。
【0019】
また、請求項9に記載の発明は、前記撥液性フィルムに、(D)シリコーンを更に含む、請求項5~8のいずれかに記載の耐内容物性積層体である。
【0020】
また、請求項10に記載の発明は、前記撥夜性フィルムの一方の主面上に設けられた1層以上の樹脂層を更に備える、請求項9に記載の耐内容物性積層体である。
【0021】
また、請求項11に記載の発明は、前記撥液フィルム中の前記(A)ポリオレフィン樹脂の融点T1(℃)と、前記1層以上の樹脂層のうち前記撥液フィルムと接する樹脂層に含まれる樹脂の融点T2(℃)とが、T1<T2の関係を満たす、請求項10に記載の耐内容物性積層体である。
【0022】
上記撥液層中の上記(A)ポリオレフィン樹脂の融点T1(℃)と、上記1層以上の樹脂層のうち上記撥液層と接する樹脂層に含まれる樹脂の融点T2(℃)とが、T1<T2の関係を満たしていてもよい。上記関係を満たすことにより、結晶化度の観点から、撥液層中の(B)シリル化ポリオレフィンが1層以上の樹脂層に移行することを抑制でき、撥液性をより向上させることができる。
【0023】
また、請求項12に記載の発明は、前記無水マレイン酸グラフト重合ポリエチレンをDSC測定すると、90℃~100℃の付近に融点ピーク(1)が見られ、50℃から低温側に20℃以上連続した融点ピーク(2)が出る成分を含むことを特徴とする請求項1~11のいずれかに記載の耐内容物性積層体である。
【0024】
また、請求項13に記載の発明は、上記積層体において、ガスバリア層と前記無水マレイン酸グラフト重合ポリエチレンと低密度ポリエチレンからなる接着層の間にジルコニウム化合物よりなる防腐コート層をもつ請求項1~12のいずれかに記載の耐内容物性積層体である。
【0025】
また、請求項14に記載の発明は、請求項1~13のいずれかに記載の耐内容物性積層体の製造方法である。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、優れた耐内容物性を示し、内容物中の有効成分などが浸透せず、さらに、有機化合物を含む内容物と長期にわたって接触しても接着層が侵食されず、したがってシーラント層とガスバリア層の層間剥離を引き起こさない、且つ、内容物の付着を十分に抑制することができる撥液層をシーラント層に形成可能な積層体、及びその製造方法を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明の一実施形態に係る耐内容物性積層体の概略断面図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る耐内容物性積層体の概略断面図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る耐内容物性積層体の概略断面図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る耐内容物性積層体の概略断面図である。
【
図5】無水マレイン酸グラフト重合ポリエチレンのDSC測定結果である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の一実施形態について、
図1から
図4を参照して説明する。
【0029】
図1及び
図2は、本実施形態に係る耐内容物性積層体の概略断面図である。本実施形態に係る耐内容物性積層体は、
図1に示す耐内容物性積層体1のように、基材層10、印刷層11、接着剤層12、ガスバリア層13、接着層14及びシーラント層15がこの順に積層されて構成され、シーラント層15は撥液層15aを備える撥液性フィルムからなる。また、本実施形態に係る耐内容物性積層体は、
図2に示す耐内容物性積層体2のように、基材層10、印刷層11、接着剤層12、ガスバリア層13、接着層14及びシーラント層15がこの順に積層されて構成され、シーラント層15が、撥液層15a及び樹脂層15bからなる構造を有する撥液性フィルムであってもよい。シーラント層15が樹脂層15bを備える場合、シーラント層15は、撥液層15aが内容物と接するように配置される。
【0030】
<基材層>
基材層10は、積層フィルムの支持体として機能する層である。材料としては、プラスチックを主とするフィルムが用いられ、包装体とした際の内容物の種類や充填後の加熱処理の有無など使用条件によって適宜選択される。基材層10の材料としては、一例として、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ナイロンなどが使用されるが、特に限定されるものではなく、上記材料のうちの1つの材料からなる単層でもよいし、これら単層を積層することによって上記材料のうちの複数の材料が組み合わされた層であってもよい。本実施形態において、基材層10は、ポリエチレンテレフタレートフィルムである。
【0031】
包装材料には通常印刷層11が形成されるが、外側から見ることのできるように、基材層10とガスバリア層13との間に形成することが好ましい。必要に応じて商品としてのイメージアップや、内容物についての必要な情報を表示、印刷することができる。
【0032】
印刷方法および印刷インキには特に制約を設けるものではないが、既知の印刷方法、印刷インキの中からプラスチックフィルムへの印刷適性、色調などの意匠性、密着性、食品容器としての安全性などを考慮すれば適宜選択してよく、たとえばグラビア印刷法、オフセット印刷法、グラビアオフセット印刷法、フレキソ印刷法などを用いることができる。中でもグラビア印刷法はその印刷の仕上がりや、生産性の点で好ましく用いることができる。
【0033】
印刷層11とガスバリア層13は、接着剤12を介してラミネートできる。接着剤12によるラミネート方法としては、公知のドライラミネート方法を用いることができる。これらに用いられる接着剤12としては、ウレタン2液硬化タイプの接着剤が用いられる。
【0034】
<ガスバリア層>
また、内容物の保存性を向上させることを目的として、包装材料中にガスバリア層13を設けることができる。これにより、外部への内容物のにおい漏れや、外部からの酸素及び水蒸気ガスの浸入を抑え、内容物の変質を防ぐことができる。
【0035】
ガスバリア層13は、アルミニウム箔等の金属箔、または金属酸化物の蒸着により形成される層である。金属酸化物としては、例えば、酸化珪素、酸化アルミニウム等が挙げられ、酸化アルミニウムが好ましい。酸化金属蒸着層の形成方法としては、特に限定されず
、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法等が挙げられる。本実施形態において、ガスバリア層13は、アルミニウム箔である。
【0036】
<接着層>
接着層14は、無水マレイン酸グラフト重合ポリエチレン14aと低密度ポリエチレン14bからなる層である。無水マレイン酸グラフト重合ポリエチレン14aは、ポリエチレンを無水マレイン酸によりグラフト変性したポリエチレンである。接着層14は、ガスバリア層側に無水マレイン酸グラフト重合ポリエチレン14aが、シーラント層側に低密度ポリエチレン14bが配置されるように溶融共押出しされ、ガスバリア層13とシーラント層15がサンドイッチラミネートされる。接着層14にドライラミネート用接着剤を使用せず、無水マレイン酸グラフト重合ポリエチレン14aを主成分とすることによって、接着層が侵食されず、したがってシーラント層15とガスバリア層13の層間剥離を抑制することができる。また、接着層14に低密度ポリエチレン14bを加えたのは、加工面において、無水マレイン酸グラフト重合ポリエチレン14a単層での溶融押出しラミネートだと、MFRが高いためネックインが大きく生産性が著しく劣るが、MFRが低い低密度ポリエチレン14bとの押し出しにすることでネックインを低減し、生産性を向上させるためである。そして、無水マレイン酸グラフト重合ポリエチレン14aと低密度ポリエチレン14bの溶融共押出し層の層厚比は、25:75~75:25の間であることが好ましい。
【0037】
無水マレイン酸グラフト重合ポリエチレン14aの無水マレイン酸グラフト率は、0.1~1重量%に設定されている。無水マレイン酸グラフト率が0.1重量%未満であるとガスバリアフィルム13との十分な接着強度が得られず、デラミネーションが発生する可能性が高くなる。一方、無水マレイン酸グラフト率が1重量%を超えると、形成される接着層の皮膜強度が低下し、充分な接着強度が得られないという不具合が発生する。密度は0.88g/cm3以上0.90g/cm3以下であり、MFRが8.5以上12.0以下であることが好ましい。低密度ポリエチレン14bは、密度0.910g/cm3以上0.930g/cm3以下からなり、MFRが6.0以上8.5以下であることが好ましい。
【0038】
また、無水マレイン酸グラフト重合ポリエチレン14aのDSC測定において、90℃~100℃で融解する成分を主成分とし、50℃付近から低温側に20℃以上連続して融点ピークが出る成分を加えることで、しわの入らない低い温度から接着強度が発現するようにした。
図5に無水マレイン酸グラフト重合ポリエチレンのDSC測定結果を示す。
【0039】
<撥液性フィルム>
本発明の一実施形態に係る耐内容物性積層体1のシーラント層15は撥液性フィルムからなる。撥液性フィルムは撥液性を有する撥液層15aを備える。撥液性フィルムは、加熱によりヒートシール性を発現することができる層であってもよい。ここで、撥液性とは、撥水性及び撥油性の両特性を包含する概念であり、具体的には、液体状、半固体状、もしくはゲル状の水性又は油性材料に対し撥液する特性である。また、ヒートシール性とは、一例として、100~200℃、0.1~0.3MPa、1~3秒間の条件にてヒートシールが可能である性質をいう。ヒートシールの条件は、撥液性フィルムのヒートシールに要する条件に応じて容易に変更することが可能である。撥液層15aは、下記成分を含む撥液層形成用樹脂組成物を用いて形成することができる。以下、撥液層形成用樹脂組成物について説明する。
【0040】
<撥液層形成用樹脂組成物>
本発明の一実施形態に係る撥液層形成用樹脂組成物は、(A)ポリオレフィン樹脂、(B)シリル化ポリオレフィン、並びに、(A)ポリオレフィン樹脂と相溶する部位及び(B)シリル化ポリオレフィンと相溶する部位を有する(C)相溶化剤を含み、(B)シリル化ポリオレフィンのポリオレフィン部位が(A)ポリオレフィン樹脂と非相溶である樹脂組成であり、(D)シリコーンをさらに含んでもよい。
【0041】
((A)ポリオレフィン樹脂)
(A)ポリオレフィン樹脂としては、熱融着性があればよく、例えば、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、ポリエチレン、ポリプロピレン(PP)、エポキシ樹脂(EP)、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン- メタクリル酸共重合体、エチレン-メタクリル酸エステル共重合体、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-アクリル酸エステル共重合体、及びそれらの金属架橋物等が挙げられる。なかでも、食品包装におけるレトルト殺菌適性等を考慮すると、PP及び耐熱性のLLDPEが好ましい。これら熱可塑性樹脂としては、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0042】
((B)シリル化ポリオレフィン)
シリル化ポリオレフィンは、撥液性フィルムに撥液性を付与する成分である。シリル化ポリオレフィンは、ポリオレフィンユニットにシリコーン部位を持たせたものである。
【0043】
シリル化ポリオレフィンとしては、例えば、PE-Siグラフト共重合体として東レ・ダウコーニング株式会社製の製品、PE-Siブロック共重合体として三井化学ファイン株式会社製のイクスフォーラ、PP-Siグラフト共重合体として東レ・ダウコーニング株式会社製の製品等が挙げられる。
【0044】
シリル化ポリオレフィンは、そのポリオレフィン部位が(A)ポリプロピレン樹脂と相溶するものであってもよく、相溶しない(非相溶である)ものであってもよい。但し、ポリオレフィン部位が(A)ポリプロピレン樹脂と非相溶であるシリル化ポリオレフィンを用いる場合、以下の(C)相溶化剤と併用することが好ましい。
【0045】
((C)相溶化剤)
(C)相溶化剤は、好ましくは、(B)シリル化ポリオレフィンとしてポリオレフィン部位が(A)ポリプロピレン樹脂と非相溶であるシリル化ポリオレフィンを用いる場合に用いられる。相溶化剤は、(A)ポリプロピレン樹脂と相溶する部位及び上記(B)シリル化ポリオレフィンと相溶する部位を有する成分である。(C)相溶化剤を用いることにより、ポリオレフィン部位が(A)ポリプロピレン樹脂と非相溶である(B)シリル化ポリオレフィンと(A)ポリプロピレン樹脂との相溶性を向上させることができる。
【0046】
(C)相溶化剤としては、例えば、エチレンとプロピレンとのブロック共重合体で、あるいはエチレンとエチレン・ブチレン共重合体とのブロック共重合体などを用いることが可能である。
【0047】
((D)シリコーン)
シリコーンは、撥液性フィルムの撥液性をより向上させる成分である。シリコーンとしては、例えば、シリコーンオイル、シリコーンレジン、シリコーンオリゴマー、シリコーンパウダー等が挙げられる。これらの中でも、より良好な撥液性が得られ易いことから、シリコーンオイルが好ましい。
【0048】
撥液層形成用樹脂組成物が(C)相溶化剤成分を含む場合、(B)シリル化ポリオレフィン成分の含有量に対する(C)相溶化剤成分の含有量の質量比((C)相溶化剤成分の質量/(B)シリル化ポリオレフィン成分の質量)は、0.05~20であることが好ましい。この含有量の比が上記範囲内であると良い相溶性を示し、撥液層において良好な撥液性を得ることができる。
【0049】
<撥液層15a及び樹脂層15b>
本発明の一実施形態に係る耐内容物性積層体2のシーラント層15は、撥液層15a及び樹脂層15bからなる構造を有する撥液性フィルムであってもよい。撥液層15aは、撥液層形成用樹脂組成物を用いて形成することができる層である。樹脂層15bは、ヒートシール性、耐熱性及び耐衝撃性等を向上させるために撥液層15aと接着層14との間に設けられる層である。
【0050】
樹脂層15bに用いられる熱可塑性樹脂は、ヒートシール性、耐熱性及び耐衝撃性が向上し易いことから、ポリオレフィン樹脂を含むことが好ましい。ポリオレフィン樹脂としては、撥液層15aに用いられる(A)ポリプロピレン樹脂と同様のものを用いることができる。
【0051】
樹脂層15bが撥液層15aと接している場合、撥液層15a中の(A)ポリプロピレン樹脂の融点T1(℃)と、樹脂層15b中の熱可塑性樹脂の融点T2(℃)とは、T1<T2の関係を満たすことが好ましい。上記関係を満たすことにより、結晶化度の観点から、撥液層15a中の(B)シリル化ポリオレフィンが樹脂層15bに移行することを抑制でき、撥液性をより向上できる傾向がある。
【0052】
<防腐コート層>
図3および
図4は、ガスバリア層13と接着層14の間にジルコニウム化合物よりなる防腐コート層16を設けた、本発明の一実施形態に係る耐内容物性積層体3および4の概略断面図である。ガスバリア層がアルミ箔の場合において、防腐コートすることでアルミの劣化を防ぐことが可能になる。
【実施例0053】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0054】
[実施例1]
<撥液性フィルムの作製>
(A)成分として、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE、商品名「エボリュー」、株式会社プライムポリマー製)と、(B)成分であるシリル化ポリエチレン(PE-Siのグラフト共重合体、東レ・ダウコーニング株式会社製)とを混合し、撥液層形成用樹脂組成物を調製した。ここで、各成分の含有量は、(A)成分及び(B)成分の総量を基準として、(B)成分が5質量%、残部が(A)成分となるように調整した。3層共押出し機を用いて、撥液層形成用樹脂組成物を押出し製膜し、厚さ80μmの撥液層からなる撥液性フィルムを得た。
【0055】
<積層体の作製>
ポリエチレンテレフタレート基材12μm(フタムラ化学株式会社製:FE2001とアルミニウム基材7μm(東洋アルミ株式会社製:1N30)とを、接着剤としてエステル主鎖の主剤(三井化学株式会社製:A525)と硬化剤(三井化学株式会社製:A52)を用いて、ドライラミネートした。その後、アルミニウム面にジルコニウム化合物を含む防腐コート剤(日本ぺイントサーフケミカルズ(株)製:サーフコートEC1000A/B)を塗工し、防腐コート層を形成した。そして、接着層として無水マレイン酸グラフト重合ポリエチレン(M605、三菱ケミカル株式会社製:融点ピーク:98℃、密度:0.88g/cm3、MFR10g/10分)とLC600A(日本ポリエチレン株式会社製:融点:106℃、密度:0.918g/cm3、MFR7.0g/10分)を溶融共押し出し(M605とLC600Aの層比=10μm/10μm)し、上記撥液性フィルムとをサンドイッチラミネートした。溶融押出し時のTダイ幅は360mm(エアギャップ:120mm)であり、押出し後の樹脂幅を測定したところ、M605単層での押出しでは253mmであったのに対し、低密度ポリエチレンとの共押出しにすることで303mmとなりネックインを約20%改善できた。一方、MFRが13g/10分以上、または8.5g/10分未満の樹脂との共押出しでは、溶融粘度の差が大きく、製膜時に中央部の膜厚が厚くなり平滑性が著しく低下してしまうので適さなかった。押し出し加工後、上記積層させたフィルムを140℃、15秒ヒーターロールに抱かせるように熱を加えて積層体を作製した。
【0056】
[実施例2]
撥液層形成用樹脂組成物として、(B)成分をシリル化ポリエチレン(PE-Si-PEのトリブロック共重合体、商品名「イクスフォーラ」、三井化学ファイン株式会社製)に変え、更に(D)成分であるシリコーンオイル(ジメチルシリコーン、東レ・ダウコーニング株式会社製)を添加し、各成分の含有量を調整したこと以外は実施例1と同様にして、撥液層形成用樹脂組成物、撥液性フィルム及び積層体を作製した。各成分の含有量は、(A)成分、(B)成分及び(D)成分の総量を基準として、(B)成分が5質量%、(D)成分が5質量%、残部が(A)成分となるように調整した。
【0057】
[実施例3]
実施例1と同様にして作成した撥液層形成用樹脂組成物と、(A)成分と同じ直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE、商品名「エボリュー」、株式会社プライムポリマー製)を3層共押出し機を用いて共押出し製膜し、厚さ15μmの撥液層ともう1層の厚さ85μmの樹脂層からなる撥液性フィルムを得た以外は実施例1と同様にして、積層体を作製した。
【0058】
[実施例4]
熱可塑性樹脂MZ434(タマポリ株式会社製:膜厚80μm)をシーラント層とした以外は実施例1と同様にして、積層体を作製した。
【0059】
[比較例1]
ガスバリア層とシーラント層(撥液フィルム)の接着層として、ドライラミネート用接着剤を使用した以外は実施例1と同様にして撥液層形成用樹脂組成物、撥液性フィルム及び積層体を作製した。
【0060】
<耐内容物性評価>
積層体を縦100mm×横100mmにカットし、シーラント層(撥液性フィルム)が内側となるように縦100mm×横50mmのサイズになるよう2つに折り畳み、縦方向端部の1辺と横方向端部の1辺(折り返した辺とは反対側の辺)をシールして3方パウチを作製した。内容物として、香料(いちごpH3.0~3.5)を充填した後パウチ上部をヒートシールした。50℃湿度フリーの条件下で、2週間、1ケ月、2ケ月、3ケ月保管後取り出し、サンプルを15mm巾にカットして、ガスバリア層(アルミニウム層)とシーラント層(撥液性フィルム)間の接着強度を株式会社工ー・アンド・デイ社製RTF-1250にて引張速度300m/minで測定した(JIS K7127準拠)。接着強度の結果を表1に示す。
【0061】
【0062】
<撥液性評価>
上記と同じようにして3方パウチを作製した。内容物を充填した後パウチ上部をヒートシールした。密閉したパウチの角部を寸法で縦2.5cm×横2.5cmの三角形となる部分を切断して注ぎ口を形成した。注ぎ口と対角線上にある角を持ち、パウチを逆さにし
て30秒間保持し、内容物を排出させ、排出量(g)を秤量した。秤量した排出量から、下記式により残液量(%)を求めた。残液量(%)={(100-排出量)/100]×100
◎:平均残液量が2.0%未満
〇:平均残液量が2.0%以上2.5%未満
△:平均残液量が2.5%以上3.5%未満
×:平均残液量が3.5%以上
また、撥液性評価において、フィルムに内容物を垂らし90度に傾けて、目視にてはじき性の外観評価を行った。
はじき性(悪い)1:動かない2:線状にあとが残る3:点状にあとが残る4:残らず流れる(良い)
残液量と外観評価の結果を表2に示す。
【0063】
【0064】
表1の結果から、接着層にドライラミネート用接着剤を使用せず、無水マレイン酸グラフト重合ポリエチレンと低密度ポリエチレンを溶融共押出して形成することにより、経時によって接着層が侵食されることがなく、接着強度が維持されることがわかった。したがって、シーラント層とガスバリア層の層間剥離を抑制することができる。
また、MFRの低い樹脂との共押出しにすることで、無水マレイン酸グラフト重合ポリエチレンの加工性やコスト面で改善できた。
【0065】
一方、表2の結果から、シーラント層に撥液性フィルムを使用することにより、内容物の残存率は低く、外観的にも撥液性が認められた。
【0066】
以上から、本発明によれば、優れた耐内容物性を示し、内容物中の有効成分などが浸透せず、さらに、有機化合物を含む内容物と長期にわたって接触しても接着層が侵食されず、したがってシーラント層とガスバリア層の層間剥離を引き起こさない、且つ、内容物の付着を十分に抑制することができる撥液層をシーラント層に形成可能な積層体、及びその製造方法を提供できることがわかった。