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  • 特開-酸素バリア性積層フィルム 図1
  • 特開-酸素バリア性積層フィルム 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022077216
(43)【公開日】2022-05-23
(54)【発明の名称】酸素バリア性積層フィルム
(51)【国際特許分類】
   B32B 15/082 20060101AFI20220516BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20220516BHJP
【FI】
B32B15/082 Z
B65D65/40 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020187966
(22)【出願日】2020-11-11
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(72)【発明者】
【氏名】西川 健
【テーマコード(参考)】
3E086
4F100
【Fターム(参考)】
3E086AB01
3E086BA04
3E086BA13
3E086BA15
3E086BA24
3E086BA33
3E086BB02
3E086BB05
3E086BB62
3E086DA01
4F100AB01C
4F100AB10C
4F100AK01B
4F100AK07B
4F100AK42D
4F100AK69A
4F100AT00D
4F100BA03
4F100BA04
4F100BA05
4F100BA07
4F100CB00E
4F100EH46A
4F100EH66C
4F100EJ37A
4F100EJ37D
4F100JD03
(57)【要約】
【課題】金属蒸着層を有するフィルムであって、しかも、酸素バリア性に優れた積層フィルムを提供すること。
【解決手段】延伸したポリビニルアルコール系樹脂層12と、金属蒸着層14bを有する蒸着フィルム14とを積層して酸素バリア性積層フィルム10Aを構成する。金属蒸着層を有する蒸着フィルムは、水蒸気バリア性については優れているものの、酸素バリア性については十分とはいえない。これに対し、ポリビニルアルコール系樹脂層は酸素バリア性に優れており、しかも、このポリビニルアルコール系樹脂層は延伸されているのでその酸素バリア性が一層向上されており、このため、前記蒸着フィルムの酸素バリア性を補って、極めて優れた酸素バリア性を発揮するのである。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
延伸したポリビニルアルコール系樹脂層と、金属蒸着層を有する蒸着フィルムとを積層して構成されることを特徴とする酸素バリア性積層フィルム。
【請求項2】
延伸された基材フィルムに前記ポリビニルアルコール系樹脂層が積層されていることを特徴とする請求項1に記載の酸素バリア性積層フィルム。
【請求項3】
ポリビニルアルコール系樹脂を塗布した前記基材フィルムを延伸することにより、これら基材フィルム及びポリビニルアルコール系樹脂層が同一方向に延伸されていることを特徴とする請求項2に記載の酸素バリア性積層フィルム。
【請求項4】
延伸されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムと、延伸された基材フィルムとが接着剤層を介して積層されていることを特徴とする請求項2に記載の酸素バリア性積層フィルム。
【請求項5】
前記金属蒸着層がアルミニウム蒸着層で構成されていることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の酸素バリア性積層フィルム。
【請求項6】
前記蒸着フィルムが、無延伸フィルムを蒸着基材として、この蒸着基材上に金属蒸着層を積層したものから成ることを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の酸素バリア性積層フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属蒸着層を有し、しかも、酸素バリア性に優れた積層フィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
周知のように、金属蒸着層を有する蒸着フィルムは、酸素ガス、水蒸気等の各種ガスの遮断性(バリア性)に優れている(特許文献1)。
【0003】
しかしながら、このように金属蒸着層を有する蒸着フィルムは、水蒸気バリア性については極めて優れているものの、酸素バリア性については十分とはいえなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-52551号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明は、金属蒸着層を有するフィルムであって、しかも、酸素バリア性に優れた積層フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち、請求項1に記載の発明は、延伸したポリビニルアルコール系樹脂層と、金属蒸着層を有する蒸着フィルムとを積層して構成されることを特徴とする酸素バリア性積層フィルムである。
【0007】
次に、請求項2に記載の発明は、延伸された基材フィルムに前記ポリビニルアルコール系樹脂層が積層されていることを特徴とする請求項1に記載の酸素バリア性積層フィルムである。
【0008】
次に、請求項3に記載の発明は、ポリビニルアルコール系樹脂を塗布した前記基材フィルムを延伸することにより、これら基材フィルム及びポリビニルアルコール系樹脂層が同一方向に延伸されていることを特徴とする請求項2に記載の酸素バリア性積層フィルムである。
【0009】
次に、請求項4に記載の発明は、延伸されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムと、延伸された基材フィルムとが接着剤層を介して積層されていることを特徴とする請求項2に記載の積層酸素バリア性フィルムである。
【0010】
次に、請求項5に記載の発明は、前記金属蒸着層がアルミニウム蒸着層で構成されていることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の酸素バリア性積層フィルムである。
【0011】
次に、請求項6に記載の発明は、前記蒸着フィルムが、無延伸フィルムを蒸着基材として、この蒸着基材上に金属蒸着層を積層したものから成ることを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の酸素バリア性積層フィルムである。
【発明の効果】
【0012】
前述のように、金属蒸着層を有する蒸着フィルムは、水蒸気バリア性については優れて
いるものの、酸素バリア性については十分とはいえない。これに対し、ポリビニルアルコール系樹脂層は酸素バリア性に優れており、しかも、このポリビニルアルコール系樹脂層は延伸されているのでその酸素バリア性が一層向上されており、このため、前記蒸着フィルムの酸素バリア性を補って、極めて優れた酸素バリア性を発揮するのである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は本発明の酸素バリア性積層フィルムの例を示す分解断面説明図である。
図2図2は本発明の酸素バリア性積層フィルムの別の例を示す分解断面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照して、本開示の具体例を説明する。図1は本発明の酸素バリア性積層フィルムの第1の例を示す分解断面説明図である。
【0015】
この図1から分かるように、この積層フィルム10Aは、2種類のフィルムを接着剤層15で接着して積層して構成されている。
【0016】
この積層フィルム10Aを構成する2種類のフィルムのうち、一方のフィルムは、基材フィルム11、ポリビニルアルコール系樹脂層12及び印刷層13で構成されている。このフィルムは、まず、基材フィルム11にポリビニルアルコール系樹脂を塗布してポリビニルアルコール系樹脂層12を形成した後延伸することによって、基材フィルム11とポリビニルアルコール系樹脂層12とを同時に延伸したものである。このため、基材フィルム11とポリビニルアルコール系樹脂層12とは、同じ延伸方向に、しかも、同じ延伸倍率で延伸されている。なお、印刷層13は、延伸されたポリビニルアルコール系樹脂層12の表面に印刷形成されている。
【0017】
基材フィルム11は任意のプラスチックフィルムでよい。例えば、ポリエステルフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリスチレンフィルム、ナイロンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリアクリルニトリルフィルム、ポリイミドフィルム等である。
【0018】
また、ポリビニルアルコール系樹脂層12としては、ポリビニルアルコール樹脂のほか、その誘導体を使用できる。例えば、エチレンとビニルアルコールとの共重合樹脂である。
【0019】
また、フィルム10Aを構成する2種類のフィルムのうち、他方のフィルムは、蒸着基材14a上に金属蒸着層14bを積層して構成された蒸着フィルム14である。
【0020】
蒸着基材14aとしては任意のフィルムが使用できる。単層構造のフィルムであってもよいし、多層構造のフィルムであってもよい。
【0021】
単層構造のフィルムとしては、例えば、ポリエステルフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリスチレンフィルム、ナイロンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリアクリルニトリルフィルム、ポリイミドフィルム等が使用できる。延伸フィルムであってもよいが、無延伸フィルムを好ましく使用できる。例えば、無延伸ポリプロピレンフィルムである。
【0022】
また、多層構造のフィルムとしては、前述の単層フィルムを積層したフィルムを使用することが可能である。
【0023】
金属蒸着層14bとしては、その代表例として、アルミニウム蒸着層を挙げることができる。もちろん、その他の金属の蒸着層であってもよい。例えば、銅、銀等である。
【0024】
この金属蒸着層14bは、真空蒸着法、スパッタリング法、プラズマ化学気相成長法などの真空プロセスを用いて蒸着基材14aの表面に形成することができる。
【0025】
ポリビニルアルコール系樹脂層12を積層し、かつ、延伸された基材フィルム11と蒸着フィルム14とは、接着剤層15によって接着することができる。この接着剤層15を構成する接着剤としては汎用のドライラミネート用接着剤を使用することができる。なお、前記基材フィルム11は、ポリビニルアルコール系樹脂層12が蒸着フィルム14に対面するように配置することが望ましく、蒸着フィルム14は、その金属蒸着層14bがポリビニルアルコール系樹脂層12に対面するように配置することが望ましい。図示の例は、接着剤層15がポリビニルアルコール系樹脂層12と金属蒸着層14bの両者に接触するように各フィルムを配置して積層したフィルム10Aである。
【0026】
このフィルム10Aは、蒸着フィルム14にポリビニルアルコール系樹脂層12が積層されており、しかも、このポリビニルアルコール系樹脂層12が延伸されているため、蒸着フィルム14の酸素バリア性の不足を延伸されたポリビニルアルコール系樹脂層12が補う。そして、このため、蒸着フィルム14の高い水蒸気バリア性を生かしたまま、その酸素バリア性が大きく向上するのである。
【0027】
次に、図2は本発明の酸素バリア性積層フィルムの第2の例を示す分解断面説明図である。
【0028】
この酸素バリア性フィルム10Bは、ポリビニルアルコール系樹脂層として、基材フィルム11とは別個に製膜されたポリビニルアルコール系樹脂フィルム12’を使用している点で第1の例と異なっている。
【0029】
基材フィルム11は延伸されたものであり、ポリビニルアルコール系樹脂フィルム12’も延伸されたものであるが、基材フィルム11の延伸工程とポリビニルアルコール系樹脂フィルム12’の延伸工程も互に別個独立に行われる。このため、基材フィルム11の延伸方向とポリビニルアルコール系樹脂フィルム12’の延伸方向とは互いに別の方向とすることができる。また、基材フィルム11の延伸倍率とポリビニルアルコール系樹脂フィルム12’の延伸倍率も互いに異なる倍率とすることが可能である。なお、基材フィルム11の延伸方向及び延伸倍率とポリビニルアルコール系樹脂フィルム12’の延伸方向及び延伸倍率とを同じにすることもできるが、これらを厳密に同一とすることは困難である。
【0030】
これら基材フィルム11とポリビニルアルコール系樹脂フィルム12’とは、接着剤層16で接着積層することができる。接着剤層16を構成する接着剤としては汎用のドライラミネート用接着剤を使用することができる。
【0031】
なお、このほかの点については、第2の例に係る積層フィルム10Bは第1の例に係る積層フィルム10Aと同様である。
【実施例0032】
(実施例1)
基材フィルム11として未延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを使用し、この上にポリビニルアルコール樹脂を塗布してポリビニルアルコール系樹脂層12を形成した後延伸することによって、基材フィルム11とポリビニルアルコール系樹脂層12とを同時
に延伸した。
【0033】
また、蒸着基材14aとして無延伸ポリプロピレンフィルム(CPP)を使用し、この上にアルミニウムを真空蒸着して金属蒸着層14bを形成した。
【0034】
そして、このポリビニルアルコール系樹脂層12と金属蒸着層14bとが向き合うように、ドライラミネート系接着剤を使用して接着積層して、実施例1に係る積層フィルムを製造した。
【0035】
(実施例2)
基材フィルム11として二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを使用した。また、ポリビニルアルコール系樹脂層として、前記基材フィルム11とは別個独立に製膜し、延伸したポリビニルアルコール樹脂フィルム12’を使用した。そして、ドライラミネート系接着剤を使用してこれら両フィルム11,12’を互に接着積層した。
【0036】
また、蒸着フィルム14は実施例1の蒸着フィルム14と同じものを使用した。すなわち、基材14aとして無延伸ポリプロピレンフィルム(CPP)を使用し、この上にアルミニウムを真空蒸着して金属蒸着層14bを形成して、蒸着フィルム14とした。
【0037】
そして、このポリビニルアルコール系樹脂層12と金属蒸着層14bとが向き合うように、ドライラミネート系接着剤を使用して接着積層して、実施例2に係る積層フィルムを製造した。
【0038】
(比較例1)
蒸着フィルム14の代わりに、金属蒸着層のない無延伸ポリプロピレンフィルム(CPP)を使用した。その他の点については実施例1と同様に比較例1の積層フィルムを製造した。
【0039】
(比較例2)
ポリビニルアルコール樹脂を塗布せず、ポリビニルアルコール系樹脂層12のない基材フィルム11を使用した他は、実施例1と同様に比較例2の積層フィルムを製造した。
【0040】
(評価)
実施例1~2,比較例1~2の積層フィルムについて、酸素透過度測定装置(商品名:OXTRAN-2/20、MOCON社製)を用いて、酸素透過度(cm/(m・day・MPa))を測定した。測定結果を表1に示す。なお、表中「フィルム接着」は、基材フィルム11とは別個独立に製造したポリビニルアルコール樹脂フィルム12’を基材フィルム11に接着したことを意味する。
【0041】
【表1】
【0042】
この結果から分かるように、金属蒸着層を有するものの、ポリビニルアルコール系樹脂層のない比較例1においては、その酸素透過率が比較的高く、十分な酸素バリア性を発揮しない。
【0043】
これに対し、金属蒸着層と共に延伸したポリビニルアルコール系樹脂層を有する実施例1~2においては、その酸素透過率を低く抑えて、優れた酸素バリア性を示す。しかも、ポリビニルアルコール系樹脂層が基材フィルムにポリビニルアルコール系樹脂を塗布して形成したものか、基材フィルム11とは別個独立に製造したポリビニルアルコール樹脂フィルム12’を基材フィルム11に接着して形成したものか、ということに依存しない。
【0044】
なお、ポリビニルアルコール系樹脂層を有するものの、金属蒸着層のない比較例2においてはその酸素透過率が最も高いことから、十分な酸素バリア性を発揮するためには、延伸したポリビニルアルコール系樹脂層と金属蒸着層の両者が必要であることも理解できる。
【符号の説明】
【0045】
10A,10B:酸素バリア性積層フィルム
11:基材フィルム
12:ポリビニルアルコール系樹脂層
12’:ポリビニルアルコール系樹脂フィルム
13:印刷層
14:蒸着フィルム 14a:蒸着基材 14b:金属蒸着層
15:接着剤層
16:接着剤層
図1
図2