(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022077313
(43)【公開日】2022-05-23
(54)【発明の名称】建築資材
(51)【国際特許分類】
E04F 13/08 20060101AFI20220516BHJP
E04F 13/14 20060101ALI20220516BHJP
【FI】
E04F13/08 E
E04F13/14 102A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020188113
(22)【出願日】2020-11-11
(71)【出願人】
【識別番号】503367376
【氏名又は名称】ケイミュー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】特許業務法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小島 由紀
(72)【発明者】
【氏名】松下 聖三
【テーマコード(参考)】
2E110
【Fターム(参考)】
2E110AA57
2E110AB02
2E110AB04
2E110AB22
2E110BA12
2E110BB04
2E110BB13
2E110BB22
2E110GA33W
2E110GB23W
2E110GB42W
2E110GB62W
(57)【要約】
【課題】剥離しにくい塗膜が形成される建築資材を提供する。
【解決手段】建築資材1は、基材10と、基材10の表面上に形成されたシーラー塗膜12と、シーラー塗膜12の表面上に形成された表層塗膜13と、を有する。建築資材1は、表面におけるJIS A 6909で測定された水浸透率が部分的に異なる。シーラー塗膜12を形成するシーラー塗料の固形分量が前記水浸透率に基づいて設定されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、前記基材の表面上に形成されたシーラー塗膜と、前記シーラー塗膜の表面上に形成された表層塗膜と、を有し、
表面におけるJIS A 6909で測定された水浸透率が部分的に異なり、
前記シーラー塗膜を形成するシーラー塗料の固形分量が前記水浸透率に基づいて設定されている、
建築資材。
【請求項2】
前記シーラー塗料の固形分量は、前記水浸透率が20mL以下となるように設定されている、
請求項1に記載の建築資材。
【請求項3】
前記基材の表面が部分的に研磨されている、
請求項1又は2に記載の建築資材。
【請求項4】
前記基材の表面に凹部と凸部とが形成され、
前記凸部の表面が研磨されている、
請求項3に記載の建築資材。
【請求項5】
前記基材が、セメント含有粉体と、パルプと、軽量骨材と、発泡樹脂ビーズと、水とを含有する成形材料の硬化物である、
請求項1~4のいずれか1項に記載の建築資材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築資材に関する。より詳細には、基材とシーラー塗料と上塗り塗料を使用した建築資材に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、無機質板の製造方法が記載されている。この無機質板の製造方法では、セメントを主成分とする水硬性材料を成形してグリーンシートを作製し、このグリーンシートの表面にシーラーを塗布した後、オートクレーブ養生している。そして、シーラーは、分散質の平均粒子径が0.06~0.09μmの樹脂水性分散液(a)と、分散質の平均粒子径が0.10~0.20μmの樹脂水性分散液(b)とを、(樹脂水性分散液(a)の固形分)/(樹脂水性分散液(a)の固形分+樹脂水性分散液(b)の固形分)=0.6~0.8の重量比になるように配合して調製している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような無機質板を基材として建材等の建築資材を形成する場合、表面の意匠性や素材のコントラストに変化を与えるために、基材の表面に局所的に研磨を行うことがある。このため、基材の表面の場所によって、塗料の浸透率が異なる基材となり、塗膜密着を確保するために、シーラーの塗装方法を変更しないと塗膜密着性の担保が不可能である。
【0005】
本発明は、上記事由に鑑みてなされており、剥離しにくい塗膜が形成された建築資材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る建築資材は、基材と、前記基材の表面上に形成されたシーラー塗膜と、前記シーラー塗膜の表面上に形成された表層塗膜と、を有する。表面におけるJIS A 6909で測定された水浸透率が部分的に異なる。前記シーラー塗膜を形成するシーラー塗料の固形分量が前記水浸透率に基づいて設定されている。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、表面に残存するシーラー塗料の固形分が少なくなり過ぎず、表面に形成されているシーラー塗膜及び表層塗膜に剥離が生じにくい、という利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1Aは、本実施形態に係る建築資材の断面図である。
図1Bは、本実施形態に係る建築資材の一部を拡大した断面図である。
【
図2】
図2Aは、本実施形態に係る建築資材に使用する基材の平面図である。
図2Bは、本実施形態に係る建築資材に使用する基材の一部を拡大した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(実施形態)
本実施形態に係る建築資材1は、屋根材や壁材などの建材として使用される。
図1Aに示すように、本実施形態に係る建築資材1は、基材10と塗膜11とを備えている。塗膜11は、
図1Bに示すように、シーラー塗膜12と表層塗膜13とを備えている。シーラー塗膜12は基材10の表面上に形成されている。表層塗膜13はシーラー塗膜12の表面上に形成されている。
【0010】
基材10はセメントを含む水硬性の成形材料の硬化物であって、いわゆる、窯業系基材である。基材10は、例えば、押出製法で形成される。押出製法は、セメントを含む水硬性の成形材料を押出成形機の金型から所望の形状(例えば、平板状)に押出成形した後、この押出成形した成形体を養生して硬化させる。
【0011】
基材10は、セメント含有粉体と、パルプと、軽量骨材と、発泡樹脂ビーズと、水とを含有する成形材料の硬化物で形成することができる。ここで、セメント含有粉体としては、例えば、ポルトランドセメント、混合セメント(高炉セメント、シリカセメント、フライアッシュセメント等)、特殊セメント(アルミナセメント等)等を含有する粉体を用いることができる。セメント含有粉体には、珪石、フライアッシュ、シリカヒューム、マイカ、メチルセルロースや粘土系などの増粘剤のほか、成形体を粉砕して得られたスクラップ材等が含有されていてもよい。
【0012】
パルプとしては、例えば、古紙パルプ、合成繊維、バージンパルプ等を用いることができる。古紙パルプを用いれば、コストを削減し、資源の有効利用も図ることができるものである。
【0013】
軽量骨材としては、例えば、平均粒径が500~2000μmであり、かつ、圧縮強度が0.13MPa以上である発泡樹脂ビーズ(ビーズ法発泡スチロール(expanded polystyrene、EPS))を用いることができる。平均粒径が500μmよりも小さい発泡樹脂ビーズ(低発泡倍率発泡樹脂ビーズ)では、パルプのダマの隙間を通過し、ダマを粉砕する効果が低減する。平均粒径が2000μmよりも大きい発泡樹脂ビーズ(高発泡倍率発泡樹脂ビーズ)では、成形体における分布が不均一となり、成形体の強度に悪影響を及ぼすと共に、成形体の表面に大きな穴が開きやすく外観上問題となる。発泡樹脂ビーズの圧縮強度が大きいほど、発泡樹脂ビーズがパルプのダマに接触する際の抵抗力が大きくなりダマを粉砕しやすくなるので、発泡樹脂ビーズの圧縮強度の上限は、特に限定されるものではないが、実用上の上限は0.15MPaである。圧縮強度が0.13MPa未満である発泡樹脂ビーズでは、パルプのダマを粉砕しにくくパルプを均一に分散させることができない。なお、平均粒径は、レーザー回折・散乱法によって求めた粒度分布における積算値50%での粒径を意味する。また圧縮強度は、JIS K7220に基づいて、微小圧縮試験機を用いて発泡樹脂ビーズを圧縮し、荷重/面積の数値として測定することができる。
【0014】
また軽量骨材としては、さらに小さな中空樹脂ビーズ(マイクロバルーン(MB))を用いることが好ましい。中空樹脂ビーズが成形体に含有されていると、成形体の地合(外観)を改善することができるものである。なお、中空樹脂ビーズの平均粒径は、例えば、45~70μmであるが、これに限定されるものではない。
【0015】
上記のようなセメント含有粉体、パルプ、軽量骨材を乾式で配合する場合、セメント含有粉体は85~95質量部、パルプは5~10質量部であることが好ましい。また、軽量骨材である発泡樹脂ビーズの配合量は、パルプの全量に対して0.5~1.0質量%であることが好ましい。発泡樹脂ビーズの配合量が0.5質量%以上であることによって、パルプのダマを粉砕し、パルプを均一に分散させる効果をより高く得ることができる。発泡樹脂ビーズの配合量が1.0質量%以下であることによって、成形体の表面等において発泡樹脂ビーズを目立ちにくくすることができる。軽量骨材として中空樹脂ビーズを併用する場合には、中空樹脂ビーズの配合量は、パルプの全量に対して1~3質量%であることが好ましい。
【0016】
そして、セメント含有粉体、パルプ、軽量骨材を乾式で配合した後、混合物に加水してニーダー等を用いて混練することによって、粘稠性のある成形材料を調製することができる。このように加水後も混練するので、成形材料中においてパルプの繊維をさらに均一に分散させることができる。その後、上記のようにして得られた成形材料を押出成形機を用いて所定形状に押出成形し、さらに高温・高圧の水蒸気養生(オートクレーブ養生)をして硬化させることによって、基材10を製造することができる。
【0017】
基材10が発泡樹脂ビーズを含む成形材料で形成されている場合は、オートクレーブ養生時に発泡樹脂ビーズが溶融して体積が小さくなり、この結果、基材10の表面にクレータのような穴が複数形成される。これにより、発泡樹脂ビーズを含んでいない成形材料で形成される基材に比べて、基材10の表面粗さを大きくすることができる。
【0018】
基材10は凹部101と凸部102とを有している。すなわち、基材10の表面(意匠性を付与する面)は、凹凸面として形成されており、この凹凸面により凹凸模様が形成されている。凹部101は隣り合う凸部102の間に形成されている。言い換えると、凸部102は隣り合う凹部101の間に形成されている。凸部102は凹部101よりも突出している。すなわち、
図1Aにおいて、凸部102の上面103は凹部101よりも上方に位置している。基材10への凹部101及び凸部102は、例えば、シート状に押出成形された成形材料にロール等によりプレス成形して形成することができる。
【0019】
基材10は、凹凸面として形成された表面が部分的に研磨されている。このように基材10を部分的に研磨することで、研磨されている部分(以下、研磨部15ということがある)と、研磨されていない部分(以下、非研磨部16ということがある)とで、光の反射の度合いや方向が異なり、意匠性や表面のコントラストに変化を有する建築資材1が得られる。すなわち、研磨部15では、表面粗さの度合い(粗度)が、非研磨部16に比べて小さくなり、これにより、研磨部15と非研磨部16とで光の反射の度合いや方向が異なる。
【0020】
基材10に研磨部15を形成する位置は、建築資材1に要求される意匠性等に応じて、適宜設定可能である。例えば、建築資材1を外壁材として施工した際に、目立ちやすい部分となる凸部102の表面、特に、上面103に研磨部15を形成することができる。
【0021】
基材10の表面を部分的に研磨した後、基材10の表面に塗膜11を形成する。塗膜11は基材10の凹凸面の全面にわたって形成することができる。塗膜11は、シーラー塗膜12と表層塗膜13とを備えて構成されている。シーラー塗膜12は基材10の表面上に形成され、主に、基材10と表層塗膜13との密着性の向上及び基材10の表面の隠蔽性の向上を目的としている。表層塗膜13はシーラー塗膜12の表面上に形成され、主に、建築資材1の意匠性の向上を目的としている。
【0022】
シーラー塗膜12はシーラー塗料の硬化物である。シーラー塗料は基材10の表面(凹凸面)に全面にわたって塗布される。シーラー塗料は、刷毛塗り、スプレー塗装、ロールコーター、カーテンコーターなどの適宜の手段で塗布することができる。
【0023】
ここで、研磨されていない通常の基材の場合、基材に対するシーラー塗料の浸透率が部分的にほぼ変化していないため、一般的な組成のシーラー塗料を使用することができる。一方、本実施形態では、研磨部15と非研磨部16との間で、表面粗さの度合いが異なるため、基材10に対するシーラー塗料の浸透性も異なる。すなわち、研磨されている研磨部15では、研磨されていない非研磨部16と比較して、シーラー塗料の浸透性(浸透率)が高くなる。このため、基材10の表面にはシーラー塗料の浸透率が異なる部分が混在しており、シーラー塗膜12と基材10との密着性及び上塗り塗膜13とシーラー塗膜12との密着性を確保するためには、シーラー塗料の組成や塗布量を基材10の浸透率に応じて変化させることが好ましい。
【0024】
上記のように、研磨部15はシーラー塗料の浸透率が非研磨部16に比べて高いため、シーラー塗料の固形分量(NV)を上げることで基材10とシーラー塗膜12の密着性及び表層塗膜13とシーラー塗膜12との密着性を確保することが好ましい。すなわち、シーラー塗料は基材10の浸透率の高い部分に対応して配合(組成)や塗布量を設定することが好ましい。これにより、基材10内で浸透率が異なる部分(研磨部15と非研磨部16)が混在していても、基材10の表面に残存する固形分が少なくなりにくい。したがって、一定以上の強度及び膜厚のシーラー塗膜12を形成することができ、基材10とシーラー塗膜12との密着性及びシーラー塗膜12と表層塗膜13との密着性が確保しやすくなる。
【0025】
そこで、本実施形態では、シーラー塗料の固形分量が、建築資材1の水浸透率に基づいて設定されている。すなわち、建築資材1は、表面におけるJIS A 6909の「7.13 透水試験B法」に基づいて測定された水浸透率が部分的に異なっているが、いずれの部分においても、水浸透率が20mL以下となるように、シーラー塗料の固形分量が設定される。これにより、シーラー塗料の浸透率が高い部分(研磨部15)であっても、シーラー塗料の浸透率が低い箇所(非研磨部16)と同等の水浸透率(20mL以下)を有することになる。基材10とシーラー塗膜12との密着性及びシーラー塗膜12と表層塗膜13との密着性が確保しやすくなる。
【0026】
なお、シーラー塗料の固形分とは、シーラー塗料に含まれている溶媒以外の成分(ビヒクル)であって、シーラー塗料が乾燥した後に、塗膜として残る成分である。したがって、固形分量(NV)とは、シーラー塗料に含まれている溶媒以外の成分の質量であって、シーラー塗料が乾燥した後に、塗膜として残る成分の質量である。また本実施形態において、水浸透率は小さいほど好ましいので、水浸透率の下限は0mLである。
【0027】
基材10の表面上にシーラー塗膜12を形成した後、シーラー塗膜12の表面上に表層塗膜13を形成する。表層塗膜13はシーラー塗膜12の全面にわたって形成することができる。表層塗膜13は上塗り塗料の硬化物である。上塗り塗料としては、エナメル塗料又はクリア塗料を使用することができる。上塗り塗料は、刷毛塗り、スプレー塗装、ロールコーター、カーテンコーターなどの適宜の手段で塗布することができる。
【0028】
表層塗膜13は一層で形成されていてもよいが、これに限らず、表層塗膜13は複数の塗膜が積層して形成されていてもよい。表層塗膜13を二層で形成する場合、例えば、シーラー塗膜12の表面上に中塗り塗膜としてエナメル塗膜が形成され、エナメル塗膜の表面上に上塗り塗膜としてクリア塗膜が形成されていてもよい。エナメル塗膜はエナメル塗料の硬化物であり、クリア塗膜はクリア塗料の硬化物である。
【0029】
上記のように形成される建築資材1では、表面におけるJIS A 6909で測定された水浸透率が部分的に異なる。すなわち、基材10の研磨部15に対応する部分と非研磨部16に対応する部分とで、建築資材1の表面における水浸透率が異なる。そして、本実施形態の建築資材1では、シーラー塗料の固形分量が前記水浸透率に基づいて設定されている。具体的には、前記水浸透率が20mL以下となるように、シーラー塗料の固形分量が設定されている。したがって、基材10に研磨部15と非研磨部16が混在していても、基材10の表面に残存するシーラー塗料の固形分が少なくなりにくい。よって、一定以上の強度及び膜厚のシーラー塗膜12を形成することができ、基材10とシーラー塗膜12との密着性及びシーラー塗膜12と表層塗膜13との密着性が確保しやすくなる。また研磨部15と非研磨部16との光の反射率や光の反射方向の違いにより、建築資材1の意匠性を向上させることができる。
【0030】
(変形例)
実施形態1は、本開示の様々な実施形態の一つに過ぎない。実施形態1は、本開示の目的を達成できれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。
【0031】
上記では、抄造製法により基材10を形成したが、これに限らず、押出製法により基材10を形成してもよい。抄造製法は、セメントを含む水硬性の成形材料(スラリー)を抄造機の抄造シートに所望の形状に抄き上げた後、この抄き上げた成形体を養生して硬化させる。
【0032】
また、上記では、基材10の表面に凹凸が形成されているが、これに限らず、平坦面(段差状ではない微小な凹凸が形成されている面を含む)であってもよい。
【0033】
(まとめ)
以上説明したように、第1の態様に係る建築資材(1)は、表面におけるJIS A 6909で測定された水浸透率が部分的に異なる。表面にはシーラー塗料及び上塗り塗料が塗布されている。シーラー塗料の固形分量が水浸透率に基づいて設定されている。
【0034】
この態様によれば、シーラー塗料の固形分から形成されるシーラー層と、上塗り塗料から形成される上塗り塗膜との密着性を向上させることができ、剥離しにくい塗膜が形成される、という利点がある。
【0035】
第2の態様に係る建築資材(1)は、第1の態様において、シーラー塗料の固形分量は、水浸透率が20mL以下となるように設定されている。
【0036】
この態様によれば、シーラー塗料の固形分から形成されるシーラー層と、上塗り塗料から形成される上塗り塗膜との密着性を向上させることができ、剥離しにくい塗膜が形成される、という利点がある。
【0037】
第3の態様に係る建築資材(1)は、第1又は2の態様において、表面が部分的に研磨されている。
【0038】
この態様によれば、研磨された部分と研磨されていない部分とにおける光の反射率や光の反射方向の違いにより、建築資材(1)の意匠性を向上させることができる、という利点がある。
【0039】
第4の態様に係る建築資材(1)は、第3の態様において、表面に凹部(101)と凸部(102)とが形成されている。凸部(102)の表面が研磨されている。
【0040】
この態様によれば、凸部(102)の表面が研磨された部分となり、凹部(101)に対する光の反射率や光の反射方向の違いにより、建築資材(1)の意匠性を向上させることができる、という利点がある。
【0041】
第5の態様に係る建築資材(1)は、第1~4のいずれか1つの態様において、表面を有する基材(10)を備える。基材(10)が、セメント含有粉体と、パルプと、軽量骨材と、発泡樹脂ビーズと、水とを含有する成形材料の硬化物である。
【0042】
この態様によれば、シーラー塗料の固形分から形成されるシーラー層と、上塗り塗料から形成される上塗り塗膜との密着性を向上させることができ、剥離しにくい塗膜が形成される、という利点がある。
【実施例0043】
(実施例1、2)
基材として、セメント含有粉体と、パルプと、軽量骨材と、発泡樹脂ビーズと、水とを含有する成形材料の硬化物であるセメント成形板を使用した。基材の表面(凹凸面)には凹部と凸部とが形成されている。また凸部の上面には研磨が施されている。凹部には研磨が施されていない。研磨には、ダイヤモンドグラインダーが使用され、研磨番号#40で、厚み0.9mmで研磨した。
【0044】
研磨した基材の凹凸面にシーラー塗料を塗布し、乾燥させることにより、シーラー塗膜を形成した。表1において、「シーラー塗料の水比」はシーラー塗料中に含まれる水の割合であり、数値が小さいほど、シーラー塗料中の固形分量が多いことを示している。例えば、シーラー塗料の水比が270よりも150の方がシーラー塗料に含有されている固形分量が多い。表1において「塗布量g/尺2(wet)」は、液状のシーラー塗料の単位面積(尺2)あたりの塗布量(g)を示している。
【0045】
シーラー塗膜を形成した後、シーラー塗膜の表面に上塗り塗料を塗布し、乾燥させることにより、表層塗膜を形成した。表層塗膜は、シーラー塗膜の表面上の形成された中塗り塗膜と、中塗り塗膜の表面上に形成された上塗り塗膜とを有している。中塗り塗膜は中塗り塗料の乾燥硬化塗膜であり、中塗り塗料としては有機エナメル塗料を使用した。上塗り塗膜は上塗り塗料の乾燥硬化塗膜であり、上塗り塗料としては有機クリアー塗料を使用した。
【0046】
上記のようにして形成される建築資材について、表面(塗装した側の面)と裏面(塗装していない側の面)との表面透水結果を示す。表面透水結果は、JIS A 6909に基づいて測定された水浸透率である。
【0047】
また建築資材について、塗膜物性を評価した。塗膜物性はJISに基づく剥離率で示している。「初期密着」は建築資材の初期状態での塗膜の剥離率を示している。「温水試験後密着」は建築資材に温水と風乾とを交互に10回繰り返し付加した後の剥離率を示している。「凍結融解(JIS-B)」は、建築資材に凍結と融解とを付加した後の剥離率を示している。
【0048】
表1からわかるように、透水結果が小さい値ほど、塗膜物性及び耐候性に優れている。
【0049】