(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022077384
(43)【公開日】2022-05-23
(54)【発明の名称】消火栓装置
(51)【国際特許分類】
A62C 35/20 20060101AFI20220516BHJP
E03B 9/02 20060101ALI20220516BHJP
【FI】
A62C35/20
E03B9/02 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020188224
(22)【出願日】2020-11-11
(71)【出願人】
【識別番号】000233826
【氏名又は名称】能美防災株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002169
【氏名又は名称】彩雲国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】椿 大志
【テーマコード(参考)】
2E189
【Fターム(参考)】
2E189EB09
(57)【要約】
【課題】保守・点検時に作業者が誤って監査路より道路面に落下してしまう事故を防止可能な消火栓装置を提供する。
【解決手段】壁面21と、監査路20と、道路面22と、を有し、監査路20上には、壁面21側から道路面22側に向かって被摺動部材5が設けられると共に給水本管4が設けられたトンネル2に設置される消火栓装置1において、摺動機構12と、摺動規制部材13と、を、備えると共に給水本管4に可撓管6を介して連結し、摺動機構12を、消火栓装置1の底面11aに設けると共に被摺動部材5上を摺動可能に設け、摺動規制部材13を、被摺動部材5又は消火栓装置1から着脱可能に設け、摺動規制部材13を外すことで、摺動機構5を介して、監査路20上を、壁面21側から道路面22側へと移動可能に設ける。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁面と、監査路と、道路面と、を有し、該監査路には、該壁面から該道路面側に向かって被摺動部材が設けられると共に給水本管が設けられたトンネルに設置される消火栓装置であって、
摺動機構と、摺動規制部材と、を、備えると共に該給水本管に可撓管を介して連結され、
該摺動機構は、該消火栓装置の底部に設けられると共に該被摺動部材上を摺動可能に設けられており、
該摺動規制部材は、該被摺動部材又は該消火栓装置から着脱可能に設けられ、
該摺動規制部材を外すことで、該摺動機構を介して、該監査路上を、該壁面側から該道路面側へと移動可能に設けられていることを特徴とする消火栓装置。
【請求項2】
筐体と、架台と、更に備えており、
該架台は、該筐体が載置可能に設けられ、
前記摺動機構は、該架台の底面に設けられることを特徴とする請求項1に記載の消火栓装置。
【請求項3】
前記消火栓装置は、前記監査路に設けられた手摺の一部と正面視で重なり合う様に該監査路上に設けられることを特徴とする請求項1又は2に記載の消火栓装置。
【請求項4】
背面側に、作業用扉が設けられることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の消火栓装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消火栓装置に関し、より詳細には、トンネルの監査路上に設置される消火栓装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、トンネルに設置される消火栓装置がある。この様な消火栓装置は、トンネルの壁面を箱抜きして作成されたスペースに埋め込む形で設置されていたが、近年、シールド工法によってトンネルの掘削が行われる様になっており、この場合、掘削と同時に該トンネルの内壁が鋼製セグメントによって構築されるため、トンネルの壁面を箱抜きして消火栓装置の設置スペースを確保することが困難となる。
【0003】
そのため、シールド工法によって掘削されたトンネルにおいては、消火栓装置は、トンネルの壁面に埋め込まず、トンネル内の空いているスペース、例えば、監査路上に設置されることとなる(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
トンネルの監査路は、道路面よりも高い位置に設けられている。他方、火災時に消火栓装置から消火用ホースを引き出す必要がある関係上、監査路は、少なくとも消火栓装置の前方に柵等を設けることが困難である。そのため、従来の消火栓装置においては、消火栓装置を保守・点検する際に、消火栓装置の作業や操作等している作業者が、柵(手摺等)の無い空間から誤って監査路より道路面に落下しないように防止策を講じることが望まれる。
【0006】
そこで、本発明は、保守・点検時に作業者が誤って監査路より道路面に落下してしまう事故を防止可能な消火栓装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、壁面と、監査路と、道路面と、を有し、該監査路には、該壁面側から該道路面側に向かって被摺動部材が設けられると共に給水本管が設けられたトンネルに設置される消火栓装置であって、摺動機構と、摺動規制部材と、を、備えると共に該給水本管に可撓管を介して連結され、該摺動機構は、該消火栓装置の底部に設けられると共に該被摺動部材上を摺動可能に設けられており、該摺動規制部材は、該被摺動部材又は該消火栓装置から着脱可能に設けられ、該摺動規制部材を外すことで、該摺動機構を介して、該被摺動部材上を、該壁面側から該道路面側へと移動可能に設けられていることを特徴とする消火栓装置である。
【0008】
尚、本発明は、筐体と、架台と、更に備えるものとし、該架台を、該筐体が載置可能に設け、前記摺動機構を、該架台の底面に設けることが可能である。又、本発明は、前記消火栓装置を、前記監査路に設けられた手摺の一部と正面視で重なり合う様に該監査路上に設けることが可能である。又、本発明は、背面側に、作業用扉が設けることが可能である。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、消火栓装置の底部に摺動機構を設け、該摺動機構を介して、監査路上のトンネルの壁面側から道路面側へと移動可能となっているため、保守・点検時に作業者が誤って監査路より道路面に落下してしまう事故を防止可能となっている。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施形態の初期位置における正面図である。
【
図2】本発明の実施形態の点検位置における背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の第1実施形態を
図1乃至
図5に基づき説明する。先ず、本実施形態の構成について説明する。消火栓装置1は、例えば、シールド工法によって掘削されたトンネル2の監査路(監視員通路ともいう)20上に設置される。
【0012】
消火栓装置1が設置されるトンネル2には、監査路20、壁面21、道路面22が設けられている。監査路20は、トンネル2の道路面22よりも一段高い位置に設けられており、監査路20には、手摺3、給水本管4及び被摺動部材5が設けられている。給水本管4は、監査路20上に設けられ、消火栓装置1に消火用水を供給するために設けられており、後述する可撓管6を介して消火栓装置1と接続されている。
【0013】
手摺3は、監査路20上に設けられ、監査路20から人が落下するのを防止するために設けられており、消火活動の妨げとならない様に設けられている。そのため、手摺3は、筐体10から消火用ホースを引き出す際の妨げとならない様に、少なくとも、後述する消火栓扉10bの前方部分を避けて設けられている。手摺3は、好ましくは、その一部が、正面視で、消火栓装置1と重なり合う様に設けられる。
【0014】
被摺動部材5は、監査路20に埋め込まれる形でトンネル2の壁面21から道路面22に向かって設けられており、後述する摺動機構12と共に、消火栓装置1が監査路20上を壁面21側から道路面22側に向かって移動可能とするための移動手段を構成している。本実施形態において、被摺動部材5は、レール部材として設けられており、消火栓装置1を移動させた際に、十分な作業スペース7が確保可能且つ消火栓装置1が手摺3と接触しない程度の長さに設けられている。
【0015】
消火栓装置1は、監査路20の壁面21近傍に設置されており、筐体10と、架台11と、摺動機構12と、摺動規制部材13と、を備えている。
【0016】
筐体10は、その内方に消火用ホース(図示せず)や各種消火栓機器(図示せず)を収容可能に設けられており、消火栓装置1の前面に相当する前面パネル10aには、該消火用ホースを筐体10外に取り出すための消火栓扉10bが設けられると共に消火栓装置1の背面に相当する背面板10cには、消火栓装置1の組立・施工・保守・点検のために設けられた作業用扉10dが設けられている。
【0017】
又、筐体10には、可撓管6を介して給水本管4と該消火用ホースが接続される配管系統を接続するための給水配管14が貫設されている。本実施形態において、可撓管6が、消火栓装置1の点検や監査路20の通行の妨げにならない様に、給水配管14は、筐体10の側板10eに貫設されている。可撓管6は、少なくとも消火栓装置1が、監査路20上を移動する際に、支障とならない程度の長さ、可撓性に設けられている。
【0018】
架台11は、筐体10が載置可能に設けられており、消火栓装置1の底部に相当する底面11aに摺動機構12が取り付けられている。摺動機構12は、被摺動部材5上を摺動可能に設けられており、これによって、筐体10は架台11を介して、トンネル2の壁面21側から道路面22側に移動可能となっている。本実施形態において、摺動機構12は、キャスタとして設けられており、被摺動部材5であるレール部材上をその車輪12aが転がることで、摺動可能となっている。
【0019】
摺動規制部材13は、摺動機構12が、被摺動部材5上を摺動するのを規制し、常時は消火栓装置1が監査路20上を移動しない様にするために設けられている。消火栓装置1又は被摺動部材5の何れかに着脱可能に設けられている。本実施形態においては、摺動規制部材13は、被摺動部材5に着脱可能に設けられたストッパ部材であり、被摺動部材5であるレール部材に嵌着されることで、摺動機構12であるキャスタが係止される様になっている。
【0020】
次に、本実施形態における消火栓装置1の保守・点検作業について説明する。先ず、摺動規制部材13を、被摺動部材5から取り外し、摺動機構12の摺動の規制を解除する。その後、摺動機構12を、被摺動部材5上を摺動させ、筐体10を架台11ごとトンネル2の壁面21側から道路面22側へと矢印A方向に移動させ、必要に応じて、摺動機構12を被摺動部材5で再度摺動規制する(以下、該移動後の消火栓装置1を消火栓装置1Aと表記する)。そうすると、消火栓装置1Aの背面側には、作業スペース7が形成される。
【0021】
消火栓装置1の保守・点検をする作業者は、消火栓装置1Aの作業用扉10dを開扉し、消火栓装置1の保守・点検を行う。この際、該作業者は、作業スペース7で作業することとなるので、該作業者と道路面22との間には、消火栓装置1Aが存在するため、該作業者が道路面22に落下することを未然に防止することが可能となっている。本実施形態においては、更に、手摺3が、消火栓装置1と正面視で重なり合う様に設けられているため、消火栓装置1Aの左右より該作業者が道路面22に落下することも未然に防止することが可能となっている。
【0022】
従って、本実施形態においては、摺動機構12を設け、消火栓装置1を、監査路20上をトンネル2の壁面21側から道路面22側へと移動可能としたため、前記作業者が誤って監査路20より道路面22に落下してしまう事故を防止可能となっている。
【0023】
本発明を上記実施形態に基づき説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を変更しない範囲で適宜変更可能である。
【0024】
(1)上記実施形態においては、架台11を設け、架台11の底面11aの摺動機構12を設けたが、架台11を設けずに、筐体10の底板に摺動機構12を設けることも可能である。
【0025】
(2)上記実施形態においては、摺動機構12をキャスタとして設けたが、摺動機構12は、消火栓装置1をトンネル2の壁面21側から道路面22側へと移動できればよく、輪軸(図示せず)その他のものを適宜採用可能である。
【0026】
(3)上記実施形態において、給水配管14を筐体10の側板10eに貫設したが、給水配管14を設ける位置は、適宜選択可能であり、例えば、給水本管4を、消火栓装置1の初期位置において、消火栓装置1の底部側に位置する様に設け、筐体10の底板及び/又は架台11を貫くように設けてもよい。この様にすることで、可撓管6が、より監査路20の通行等の妨げにならない様にすることが可能である。
【0027】
(4)上記実施形態においては、摺動機構12と摺動規制部材13とを別体として設けたが、摺動機構12そのものにブレーキやストッパを設け、摺動機構12と摺動規制部材13とを一体物として設けることも可能である。
【0028】
(5)上記実施形態においては、被摺動部材5を監査路20に埋め込んだが、被摺動部材5を監査路20上に設けることも可能である。
【0029】
(6)被摺動部材5に、被摺動部材5内にゴミや異物(例えば、石等)が侵入することを防止するカバー部(図示せず)を設けてもよい。該カバー部は、該ゴミや異物により、消火栓の移動に支障の出ない様に、被摺動部材5の全体に設けられることが好ましい。該カバー部は、必要に応じて様々なものを採用可能であるが、例えば、摺動機構12の摺動の邪魔とはならない様に中央部に穴の開いた又は1対で設けられたゴムシート等の柔軟性のあるシート様のものを採用可能である。又、この様にすることで、通常時において、監査路20を歩く際に被摺動部材5によるつまずきを防止することも可能である。
【符号の説明】
【0030】
1 消火栓装置 10 筐体 10a 前面パネル
10b 消火栓扉 10c 背面板 10d 作業用扉
10e 側板 11 架台 11a 底面
12 摺動機構 12a 車輪 13 摺動規制部材
14 給水配管 2 トンネル 20 監査路
21 壁面 22 道路面 3 手摺
4 給水本管 5 被摺動部材 6 可撓管
7 作業スペース A 矢印