(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022077390
(43)【公開日】2022-05-23
(54)【発明の名称】回路基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
H05K 3/00 20060101AFI20220516BHJP
H05K 1/03 20060101ALI20220516BHJP
H05K 3/16 20060101ALI20220516BHJP
【FI】
H05K3/00 R
H05K1/03 610H
H05K1/03 630B
H05K3/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020188233
(22)【出願日】2020-11-11
(71)【出願人】
【識別番号】000000066
【氏名又は名称】味の素株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡崎 大地
【テーマコード(参考)】
5E343
【Fターム(参考)】
5E343AA02
5E343AA13
5E343AA17
5E343AA18
5E343AA33
5E343BB24
5E343BB71
5E343DD32
5E343EE56
5E343GG02
(57)【要約】
【課題】めっき焼けを抑制しつつ、微細配線を形成することができる、新規な回路基板の製造方法を提供する。
【解決手段】(X)絶縁層表面にめっきシード層を形成する工程を含み、めっきシード層の厚さが250nm以下であり、絶縁層表面の算術平均粗さ(Ra)が100nm以下である、回路基板の製造方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(X)絶縁層表面にめっきシード層を形成する工程
を含み、
めっきシード層の厚さが250nm以下であり、絶縁層表面の算術平均粗さ(Ra)が100nm以下である、回路基板の製造方法。
【請求項2】
めっきシード層の厚さをDs(nm)、絶縁層表面のRaをRai(nm)としたとき、1≦Ds/Raiを満たす、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程(X)において、スパッタリング法によりめっきシード層を形成する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
電解めっき法によりめっきシード層上に導体層を形成する工程を含む、請求項1~3の何れか1項に記載の方法。
【請求項5】
導体層のライン/スペース比(L/S)が5/5μm以下である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
工程(X)の前に、
(1)支持体と該支持体上に設けられた熱硬化性樹脂組成物層とを含む樹脂シートを、該熱硬化性樹脂組成物層が基材と接合するように、基材に積層する工程、
(2)熱硬化性樹脂組成物層を熱硬化させて絶縁層を形成する工程、
(3)絶縁層を穴あけ加工する工程、及び
(4)絶縁層をデスミア処理する工程
を含む、請求項1~5の何れか1項に記載の方法。
【請求項7】
熱硬化性樹脂組成物層が、活性エステル系硬化剤を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
回路基板が、ウェハレベルパッケージ又はパネルレベルパッケージである、請求項1~7の何れか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ウェハレベルパッケージ(WLP)やパネルレベルパッケージ(PLP)といった回路基板の製造において、再配線層は、一般に、感光性材料をスピンコート法によりウェハやパネル基板上に設け硬化させて絶縁層を形成した後、スパッタリング法等で導体層を形成し、これを繰り返して多層化することにより形成される。
【0003】
電子機器の高性能化に伴い、回路基板には更なる微細配線化が求められている。しかし感光性材料は、熱硬化性材料に比して絶縁性や熱膨張率等の物性に劣る傾向にあり、絶縁層の更なる薄型化は困難で更なる微細配線化(配線の微細化・高密度化)には限界が生じている。よって、絶縁性や熱膨張率等の物性に優れる熱硬化性材料を用いて絶縁層を形成することが期待されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
更なる微細配線化を実現するにあたっては、導体層の薄型化も必要となり、導体層を形成する際にベースとなるめっきシード層の薄型化も必要となる。また、熱硬化性材料を用いて絶縁層を形成する場合、レーザー等による穴あけ加工と、穴あけ加工で生じた樹脂残差(スミア)を除去するデスミア処理とが必要となる。
【0006】
デスミア処理においては、絶縁層の表面も粗化されるが、絶縁層表面の粗度が高くなると、そこに形成されるめっきシード層の厚さが絶縁層表面の凹凸により不均一となる。そして、めっきシード層の薄い部分は電気抵抗値が高くなるため、その後の電解めっき工程において、めっきの成長が遅れ導体層の形成が不十分になり、均一な導体層の形成が困難になるという問題が生じることを本発明者らは見出した。斯かる問題は、更なる微細配線化を実現すべく薄いめっきシード層の形成を試みた場合にはじめて知見された課題である。
【0007】
また、スパッタリング法にてめっきシード層を形成する場合、めっきシード層の材料である導体は、絶縁層表面に対し上方から付着するため、絶縁層表面の凹凸構造によっては導体を付着させることが難しい部分が生じ、部分的にめっきシード層が形成され難くなる。これにより、均一な導体層の形成がさらに困難になるという問題が生じる。
【0008】
このように、更なる微細配線化を実現すべく、熱硬化性材料を用いて絶縁層を形成し、その表面に薄型の導体層を形成する場合においては、形成される導体層が不均一となる、いわゆるめっき焼けという現象が起こることを本発明者らは見出した。
【0009】
本発明は、めっき焼けを抑制しつつ、微細配線を形成することができる、新規な回路基板の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、下記構成を有する回路基板の製造方法によれば上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明は以下の内容を含む。
[1] (X)絶縁層表面にめっきシード層を形成する工程
を含み、
めっきシード層の厚さが250nm以下であり、絶縁層表面の算術平均粗さ(Ra)が100nm以下である、回路基板の製造方法。
[2] めっきシード層の厚さをDs(nm)、絶縁層表面のRaをRai(nm)としたとき、1≦Ds/Raiを満たす、[1]に記載の方法。
[3] 工程(X)において、スパッタリング法によりめっきシード層を形成する、[1]又は[2]に記載の方法。
[4] 電解めっき法によりめっきシード層上に導体層を形成する工程を含む、[1]~[3]の何れかに記載の方法。
[5] 導体層のライン/スペース比(L/S)が5/5μm以下である、[4]に記載の方法。
[6] 工程(X)の前に、
(1)支持体と該支持体上に設けられた熱硬化性樹脂組成物層とを含む樹脂シートを、該熱硬化性樹脂組成物層が基材と接合するように、基材に積層する工程、
(2)熱硬化性樹脂組成物層を熱硬化させて絶縁層を形成する工程、
(3)絶縁層を穴あけ加工する工程、及び
(4)絶縁層をデスミア処理する工程
を含む、[1]~[5]の何れかに記載の方法。
[7] 熱硬化性樹脂組成物層が、活性エステル系硬化剤を含む、[6]に記載の方法。
[8] 回路基板が、ウェハレベルパッケージ又はパネルレベルパッケージである、[1]~[7]の何れかに記載の方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、めっき焼けを抑制しつつ、微細配線を形成することができる、新規な回路基板の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。ただし、本発明は、下記実施形態及び例示物に限定されるものではなく、本発明の特許請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施され得る。
【0014】
[回路基板の製造方法]
本発明の回路基板の製造方法(以下、単に「本発明の製造方法」ともいう。)は、
(X)絶縁層表面にめっきシード層を形成する工程
を含み、
めっきシード層の厚さが250nm以下であり、絶縁層表面の算術平均粗さ(Ra)が100nm以下であることを特徴とする。
【0015】
WLPやPLPといった回路基板において、再配線層を形成するにあたって、導体層のベースとなるめっきシード層の厚さは、一般的に600nm~1000nm程度とされている。このように比較的厚いめっきシード層を形成する場合には、該めっきシード層上に電解めっき法にて導体層を形成する際にめっき焼けが生じるといった問題は生じていなかった。
【0016】
本発明者らは、近年の更なる微細配線化(配線の微細化・高密度化)の要求に応えるべく、熱硬化性材料を用いて絶縁層を形成すると共に、該絶縁層の表面に薄いめっきシード層の形成を試みた結果、該めっきシード層上に電解めっき法にて形成される導体層の厚さにばらつきが生じ、めっき焼けが生じるという問題が発現することを見出した。熱硬化性材料を用いて絶縁層を形成する場合、穴あけ加工後に行うデスミア処理などに起因して絶縁層表面の粗度が高い傾向にあり、斯かる絶縁層表面に薄いめっきシード層を形成すると、絶縁層表面の凹凸に起因してめっきシード層の厚さが不均一となり易い。この場合、めっきシード層が薄い部分の電気抵抗値はめっきシード層が厚い部分に比し高く、その上に電解めっき法にて導体層を形成すると、めっきシード層が薄く電気抵抗値が高い部分では他の部分に比しめっきの成長が遅れ導体層の形成が不十分となる。このようなめっきシード層の厚さの不均一さに起因して、めっき焼けが生じるものと推察される。
【0017】
これに対し、算術平均粗さ(Ra)が100nm以下である絶縁層表面に厚さ250nm以下のめっきシード層を形成する工程を含む本発明の製造方法では、めっき焼けを著しく抑制しつつ、ライン/スペース比(L/S)が5/5μm以下にて薄型の導体層を形成することが可能であり、近年求められている更なる微細配線化に著しく寄与するものである。
【0018】
本発明の製造方法において、めっきシード層の厚さをより薄くしても、めっき焼けを抑制することが可能であり、所期の効果を実現し得る。例えば、めっきシード層の厚さは、好ましくは240nm以下、220nm以下又は200nm以下としてよく、より好ましくは180nm以下、160nm以下又は150nm以下としてよく、さらに好ましくは140nm以下、120nm以下又は100nm以下としてもよい。めっきシード層は、その上に所望のパターンにて導体層を形成した後、導体層形成部以外の不要部分はエッチングなどにより除去される。このとき、めっきシード層の厚さが小さいほど、めっきシード層の不要部分を容易に除去することが可能であり、不要部分を除去する際の導体パターンの浸食を最低限に抑えることができるため微細配線化を実現する上で有利である。
【0019】
めっきシード層は、少なくとも導電シード層を含む。導電シード層は、電解めっき法で電極として機能する層である。導電シード層を構成する導体材料としては、十分な導電性を呈する限り特に限定されないが、好適な例としては、銅、パラジウム、金、白金、銀、アルミニウム及びそれらの合金が挙げられる。めっきシード層はまた、拡散バリア層を含んでもよい。拡散バリア層は、導電シード層を構成する導体材料が絶縁層に拡散して絶縁破壊を生じることを防止する層である。また、拡散バリア層を構成する材料としては、導電シード層を構成する導体材料の拡散を抑制・防止し得る限り特に限定されないが、好適な例としては、チタン、タングステン、タンタル及びそれらの合金が挙げられる。めっきシード層が拡散バリア層を含む場合、本発明における「めっきシード層の厚さ」とは、導電シード層のみならず拡散バリア層も含めためっきシード層全体の平均厚さをいう。
【0020】
めっきシード層が拡散バリア層を含む場合、該拡散バリア層の厚さは、導電シード層を構成する導体材料の拡散を抑制・防止し得る限り特に限定されないが、微細配線化に寄与する観点から、好ましくは20nm以下、より好ましくは15nm以下、さらに好ましくは10nm以下である。拡散バリア層の厚さの下限は特に限定されず、例えば、1nm以上、3nm以上、5nm以上などとし得る。この場合、めっきシード層の残部は、導電シード層であることが好ましく、該導電シード層の厚さは、拡散バリア層の厚さとの関連でめっきシード層全体の厚さが上記の好適範囲となるように決定してよい。
【0021】
めっき焼けを抑制しつつ、更なる微細配線化を実現し得る観点から、めっきシード層の厚さをDs(nm)、絶縁層表面のRaをRai(nm)としたとき、1≦Ds/Raiを満たすことが好ましい。斯かる条件を満たす場合、めっきシード層の厚さが、90nm以下、80nm以下、70nm以下、60nm以下又は50nm以下と小さい場合であっても、めっき焼けを抑制しつつ、L/Sが小さく薄型の導体層を形成することができるため好適である。Ds/Rai比の上限は、密着強度が良好な微細配線を実現できる観点から、好ましくは8以下、より好ましくは6以下、さらに好ましくは5以下、4以下、3.5以下又は3以下である。
【0022】
本発明の製造方法において、工程(X)は、上記のめっきシード層の厚さや絶縁層表面のRaを達成し得る限り、特に限定されない。
【0023】
例えば、工程(X)において、めっきシード層は、乾式めっきにより形成してもよく、湿式めっきにより形成してもよい。乾式めっきとしては、例えば、スパッタリング法、イオンプレーティング法、真空蒸着法等の物理気相成長(PVD)法、熱CVD、プラズマCVD等の化学気相成長(CVD)法が挙げられる。また、湿式めっきとしては、無電解めっき法が挙げられる。より均一な厚さを有する薄いめっきシード層を形成できる観点から、乾式めっき法が好ましく、中でも、密着強度に優れる微細配線を実現できる観点から、スパッタリング法が特に好ましい。したがって好適な一実施形態では、工程(X)において、スパッタリング法によりめっきシード層を形成する。
【0024】
本発明の製造方法は、工程(X)の後に、電解めっき法によりめっきシード層上に導体層を形成する工程を含む。
【0025】
本発明の製造方法では、工程(X)において厚さの均一な薄いめっきシード層を形成することができ、該めっきシード層上に電解めっき法により導体層を形成する際にめっき焼けを著しく減じることができる。これにより、本発明の製造方法は、めっき焼けを抑制しつつ、微細配線を形成することができる。
【0026】
導体層の形成は、いわゆるセミアディティブ法により実施してよい。すなわち、工程(X)で形成しためっきシード層上に、所望の配線パターンに対応してめっきシード層の一部を露出させるめっきレジストを形成する。次いで、露出しためっきシード層上に、電解めっき法により導体層を形成した後、めっきレジストを除去する。その後、導体層形成部以外の不要なめっきシード層をエッチングなどにより除去して、所望の配線パターンを有する導体層(以下、「導体パターン」ともいう。)を形成することができる。
【0027】
薄いめっきシード層を均一な厚さで形成し得る本発明の製造方法によれば、めっき焼けを抑制しつつ、L/Sが小さく且つ薄型の導体パターンを形成することができる。
【0028】
本発明の製造方法によれば、めっき焼けを抑制しつつ、L/Sが、好ましくは5/5μm以下、より好ましくは4/4μm以下、さらに好ましくは3/3μm以下又は2/2μm以下の導体パターンを形成することができ、L/Sが1/1μmの導体パターンであってもメッキ焼けなしに形成可能である。本発明の製造方法によれば、斯かるL/Sが小さい導体パターンを、好ましくは2μm以下、1.5μm以下又は1μm以下の厚さにて形成することができる。導体パターンの厚さの下限は、例えば、0.5μm以上、0.6μm以上などとし得る。
【0029】
本発明の製造方法は、熱硬化性材料を用いて絶縁層を形成する際に本来的にもたらされる優れた効果(すなわち、諸特性に優れる薄型の絶縁層を形成し得ること)を享受しつつ、めっき焼けの問題なしに微細配線を形成し得るため、回路基板の微細配線化に著しく寄与するものである。
【0030】
以下、熱硬化性材料を用いて絶縁層を形成する特に好適な態様に即して、本発明の製造方法を説明する。
【0031】
好適な一実施形態において、本発明の製造方法は、工程(X)の前に、
(1)支持体と該支持体上に設けられた熱硬化性樹脂組成物層とを含む樹脂シートを、該熱硬化性樹脂組成物層が基材と接合するように、基材に積層する工程、
(2)熱硬化性樹脂組成物層を熱硬化させて絶縁層を形成する工程、
(3)絶縁層を穴あけ加工する工程、及び
(4)絶縁層をデスミア処理する工程
を含む。
【0032】
<樹脂シート>
各工程について説明する前に、本発明の製造方法において好適に使用される樹脂シートについて説明する。
【0033】
好適な一実施形態において、樹脂シートは、支持体と該支持体上に設けられた熱硬化性樹脂組成物層とを含む。
【0034】
支持体としては、例えば、プラスチック材料からなるフィルム、金属箔、離型紙が挙げられ、プラスチック材料からなるフィルム、金属箔が好ましい。
【0035】
支持体としてプラスチック材料からなるフィルムを使用する場合、プラスチック材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル、ポリカーボネート(PC)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)等のアクリル、環状ポリオレフィン、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリエーテルサルファイド(PES)、ポリエーテルケトン、ポリイミドなどが挙げられる。中でも、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートが好ましく、安価なポリエチレンテレフタレートが特に好ましい。
【0036】
支持体として金属箔を使用する場合、金属箔としては、例えば、銅箔、アルミニウム箔等が挙げられ、銅箔が好ましい。銅箔としては、銅の単金属からなる箔を用いてもよく、銅と他の金属(例えば、スズ、クロム、銀、マグネシウム、ニッケル、ジルコニウム、ケイ素、チタン等)との合金からなる箔を用いてもよい。
【0037】
支持体は、熱硬化性樹脂組成物層と接合する側の表面にマット処理、コロナ処理を施してあってもよい。また、支持体としては、熱硬化性樹脂組成物層と接合する側の表面に離型層を有する離型層付き支持体を使用してもよい。離型層付き支持体の離型層に使用する離型剤としては、例えば、アルキド樹脂、オレフィン樹脂、ウレタン樹脂、及びシリコーン樹脂からなる群から選択される1種以上の離型剤が挙げられる。離型剤の市販品としては、例えば、アルキド樹脂系離型剤である、リンテック(株)製の「SK-1」、「AL-5」、「AL-7」などが挙げられる。
【0038】
支持体の厚さは、特に限定されないが、5μm~75μmの範囲が好ましく、10μm~60μmの範囲がより好ましい。なお、支持体が離型層付き支持体である場合、離型層付き支持体全体の厚さが上記範囲であることが好ましい。
【0039】
樹脂シートにおいて、熱硬化性樹脂組成物層(以下、単に「樹脂組成物層」ともいう。)は、樹脂として、熱硬化性樹脂を含む。熱硬化性樹脂としては、回路基板を形成する際に使用される従来公知の熱硬化性樹脂を用いることができ、中でも、デスミア処理後に表面粗度の小さい絶縁層を形成し易い観点から、エポキシ樹脂を含むことが好ましい。
【0040】
-エポキシ樹脂-
エポキシ樹脂とは、エポキシ基を有する硬化性樹脂を意味する。エポキシ樹脂は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0041】
エポキシ樹脂としては、例えば、ビキシレノール型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリスフェノール型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、tert-ブチル-カテコール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、線状脂肪族エポキシ樹脂、ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂、スピロ環含有エポキシ樹脂、シクロヘキサン型エポキシ樹脂、シクロヘキサンジメタノール型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、トリメチロール型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂、イソシアヌラート型エポキシ樹脂、フェノールフタルイミジン型エポキシ樹脂、フェノールフタレイン型エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0042】
樹脂組成物層は、エポキシ樹脂として、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂を含むことが好ましい。エポキシ樹脂の不揮発成分100質量%に対して、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂の割合は、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、特に好ましくは70質量%以上である。
【0043】
エポキシ樹脂には、温度25℃で固体状のエポキシ樹脂(以下、「固体状エポキシ樹脂」ともいう。)と、温度25℃で液状のエポキシ樹脂(以下、「液状エポキシ樹脂」ともいう。)とがある。樹脂シートにおいて、樹脂組成物層は、エポキシ樹脂として、固体状エポキシ樹脂のみを含んでいてもよく、或いは液状エポキシ樹脂のみを含んでいてもよく、或いは固体状エポキシ樹脂と液状エポキシ樹脂とを組み合わせて含んでいてもよい。
【0044】
固体状エポキシ樹脂としては、1分子中に3個以上のエポキシ基を有する固体状エポキシ樹脂が好ましく、1分子中に3個以上のエポキシ基を有する芳香族系の固体状エポキシ樹脂がより好ましい。
【0045】
固体状エポキシ樹脂としては、ビキシレノール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ナフタレン型4官能エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリスフェノール型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂、フェノールフタルイミジン型エポキシ樹脂、フェノールフタレイン型エポキシ樹脂が好ましい。
【0046】
固体状エポキシ樹脂の具体例としては、DIC社製の「HP4032H」(ナフタレン型エポキシ樹脂);DIC社製の「HP-4700」、「HP-4710」(ナフタレン型4官能エポキシ樹脂);DIC社製の「N-690」(クレゾールノボラック型エポキシ樹脂);DIC社製の「N-695」(クレゾールノボラック型エポキシ樹脂);DIC社製の「HP-7200」、「HP-7200HH」、「HP-7200H」、「HP-7200L」(ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂);DIC社製の「EXA-7311」、「EXA-7311-G3」、「EXA-7311-G4」、「EXA-7311-G4S」、「HP6000」、「HP6000L」(ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂);日本化薬社製の「EPPN-502H」(トリスフェノール型エポキシ樹脂);日本化薬社製の「NC7000L」(ナフトールノボラック型エポキシ樹脂);日本化薬社製の「NC3000H」、「NC3000」、「NC3000L」、「NC3000FH」、「NC3100」(ビフェニル型エポキシ樹脂);日鉄ケミカル&マテリアル社製の「ESN475V」(ナフタレン型エポキシ樹脂);日鉄ケミカル&マテリアル社製の「ESN485」(ナフトール型エポキシ樹脂);日鉄ケミカル&マテリアル社製の「ESN375」(ジヒドロキシナフタレン型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YX4000H」、「YX4000」、「YX4000HK」、「YL7890」(ビキシレノール型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YL6121」(ビフェニル型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YX8800」(アントラセン型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YX7700」(フェノールアラルキル型エポキシ樹脂);大阪ガスケミカル社製の「PG-100」、「CG-500」;三菱ケミカル社製の「YX7760」(ビスフェノールAF型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YL7800」(フルオレン型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「jER1010」(ビスフェノールA型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「jER1031S」(テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂);日本化薬社製の「WHR991S」(フェノールフタルイミジン型エポキシ樹脂)等が挙げられる。これらは、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0047】
液状エポキシ樹脂としては、1分子中に2個以上のエポキシ基を有する液状エポキシ樹脂が好ましい。
【0048】
液状エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、エステル骨格を有する脂環式エポキシ樹脂、シクロヘキサン型エポキシ樹脂、シクロヘキサンジメタノール型エポキシ樹脂、及びブタジエン構造を有するエポキシ樹脂が好ましい。
【0049】
液状エポキシ樹脂の具体例としては、DIC社製の「HP4032」、「HP4032D」、「HP4032SS」(ナフタレン型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「828US」、「828EL」、「jER828EL」、「825」、(ビスフェノールA型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「jER807」、「1750」(ビスフェノールF型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「jER152」(フェノールノボラック型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「630」、「630LSD」、「604」(グリシジルアミン型エポキシ樹脂);ADEKA社製の「ED-523T」(グリシロール型エポキシ樹脂);ADEKA社製の「EP-3950L」、「EP-3980S」(グリシジルアミン型エポキシ樹脂);ADEKA社製の「EP-4088S」(ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂);日鉄ケミカル&マテリアル社製の「ZX1059」(ビスフェノールA型エポキシ樹脂とビスフェノールF型エポキシ樹脂の混合品);ナガセケムテックス社製の「EX-721」(グリシジルエステル型エポキシ樹脂);ダイセル社製の「セロキサイド2021P」(エステル骨格を有する脂環式エポキシ樹脂);ダイセル社製の「PB-3600」、日本曹達社製の「JP-100」、「JP-200」(ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂);日鉄ケミカル&マテリアル社製の「ZX1658」、「ZX1658GS」(1,4-グリシジルシクロヘキサン型エポキシ樹脂)、三菱ケミカル社製の「YX8000」(水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂)、信越化学社製「KF-101」(エポキシ変性シリコーン樹脂)等が挙げられる。これらは、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0050】
エポキシ樹脂は、固体状エポキシ樹脂、液状エポキシ樹脂、又はそれらの組み合わせの何れであってもよいが、デスミア処理後に表面粗度の小さい絶縁層を実現し易い観点から、固体状エポキシ樹脂を単独で、又は、固体状エポキシ樹脂と液状エポキシ樹脂とを組み合わせて含むことが好ましい。
【0051】
エポキシ樹脂として、固体状エポキシ樹脂と液状エポキシ樹脂とを組み合わせて用いる場合、それらの質量比(固体状エポキシ樹脂:液状エポキシ樹脂)は、好ましくは40:1~1:10、より好ましくは30:1~1:5、特に好ましくは20:1~1:1である。
【0052】
エポキシ樹脂のエポキシ当量は、好ましくは50g/eq.~5,000g/eq.、より好ましくは60g/eq.~1,000g/eq.、さらに好ましくは80g/eq.~500g/eq.、さらにより好ましくは100g/eq.~300g/eq.である。エポキシ当量は、エポキシ基1当量あたりの樹脂の質量である。このエポキシ当量は、JIS K7236に従って測定することができる。
【0053】
エポキシ樹脂の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは100~5,000、より好ましくは250~3,000、さらに好ましくは400~1,500である。樹脂の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により、ポリスチレン換算の値として測定できる。
【0054】
樹脂組成物中の樹脂成分を100質量%としたとき、エポキシ樹脂の含有量は、好ましくは30質量%以上、より好ましくは40質量%以上、さらに好ましくは50質量%以上であり、好ましくは95質量%以下、より好ましくは90質量%以下、さらに好ましくは85質量%以下である。本発明において、「樹脂成分」とは、樹脂組成物層を構成する不揮発成分のうち、後述する無機充填材を除いた成分をいう。
【0055】
樹脂シートにおいて、樹脂組成物層は、さらに他の成分を含有してもよい。斯かる他の成分としては、例えば、硬化剤、無機充填材、熱可塑性樹脂、硬化促進剤、その他の添加剤等が挙げられる。以下、各成分について詳細に説明する。
【0056】
-硬化剤-
樹脂組成物層は、硬化剤を含有してよい。硬化剤は、エポキシ樹脂と反応して樹脂組成物を硬化させる機能を有する。硬化剤は1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0057】
硬化剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、活性エステル系硬化剤、フェノール系硬化剤、ナフトール系硬化剤、カルボジイミド系硬化剤、酸無水物系硬化剤、アミン系硬化剤、ベンゾオキサジン系硬化剤、シアネートエステル系硬化剤、チオール系硬化剤等が挙げられる。デスミア処理後に表面粗度の小さい絶縁層を実現し易い観点から、硬化剤は、活性エステル系硬化剤を含むことが好ましい。したがって好適な一実施形態において、樹脂シートにおける熱硬化性樹脂組成物層は、活性エステル系硬化剤を含む。
【0058】
活性エステル系硬化剤としては、1分子中に1個以上の活性エステル基を有する化合物を用いることができる。中でも、活性エステル系硬化剤としては、フェノールエステル類、チオフェノールエステル類、N-ヒドロキシアミンエステル類、複素環ヒドロキシ化合物のエステル類等の、反応活性の高いエステル基を1分子中に2個以上有する化合物が好ましい。当該活性エステル系硬化剤は、カルボン酸化合物及び/又はチオカルボン酸化合物とヒドロキシ化合物及び/又はチオール化合物との縮合反応によって得られるものが好ましい。特に、耐熱性向上の観点から、カルボン酸化合物とヒドロキシ化合物とから得られる活性エステル系硬化剤が好ましく、カルボン酸化合物とフェノール化合物及び/又はナフトール化合物とから得られる活性エステル系硬化剤がより好ましい。
【0059】
カルボン酸化合物としては、例えば、安息香酸、酢酸、コハク酸、マレイン酸、イタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ピロメリット酸等が挙げられる。
【0060】
フェノール化合物又はナフトール化合物としては、例えば、ハイドロキノン、レゾルシン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フェノールフタリン、メチル化ビスフェノールA、メチル化ビスフェノールF、メチル化ビスフェノールS、フェノール、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール、カテコール、α-ナフトール、β-ナフトール、1,5-ジヒドロキシナフタレン、1,6-ジヒドロキシナフタレン、2,6-ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシベンゾフェノン、トリヒドロキシベンゾフェノン、テトラヒドロキシベンゾフェノン、フロログルシン、ベンゼントリオール、ジシクロペンタジエン型ジフェノール化合物、フェノールノボラック等が挙げられる。ここで、「ジシクロペンタジエン型ジフェノール化合物」とは、ジシクロペンタジエン1分子にフェノール2分子が縮合して得られるジフェノール化合物をいう。
【0061】
活性エステル系硬化剤の好ましい具体例としては、ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル系硬化剤、ナフタレン構造を含む活性エステル系硬化剤、フェノールノボラックのアセチル化物を含む活性エステル系硬化剤、フェノールノボラックのベンゾイル化物を含む活性エステル系硬化剤が挙げられる。中でも、ナフタレン構造を含む活性エステル系硬化剤、ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル系硬化剤がより好ましい。「ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造」とは、フェニレン-ジシクロペンチレン-フェニレンからなる2価の構造単位を表す。
【0062】
活性エステル化合物の市販品としては、ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル化合物として、「EXB9451」、「EXB9460」、「EXB9460S」、「EXB-8000L」、「EXB-8000L-65M」、「EXB-8000L-65TM」、「HPC-8000L-65TM」、「HPC-8000」、「HPC-8000-65T」、「HPC-8000H」、「HPC-8000H-65TM」、(DIC社製);ナフタレン構造を含む活性エステル化合物として「EXB-8100L-65T」、「EXB-8150-60T」、「EXB-8150-62T」、「EXB-9416-70BK」、「HPC-8150-60T」、「HPC-8150-62T」(DIC社製);リン含有活性エステル化合物として、「EXB9401」(DIC社製)、フェノールノボラックのアセチル化物である活性エステル化合物として「DC808」(三菱ケミカル社製)、フェノールノボラックのベンゾイル化物である活性エステル化合物として「YLH1026」、「YLH1030」、「YLH1048」(三菱ケミカル社製)、スチリル基及びナフタレン構造を含む活性エステル化合物として「PC1300-02-65MA」(エア・ウォーター社製)等が挙げられる。
【0063】
フェノール系硬化剤及びナフトール系硬化剤としては、耐熱性及び耐水性の観点から、ノボラック構造を有するものが好ましい。また、導体層との密着性の観点から、含窒素フェノール系硬化剤、含窒素ナフトール系硬化剤が好ましく、トリアジン骨格含有フェノール系硬化剤、トリアジン骨格含有ナフトール系硬化剤がより好ましい。
【0064】
フェノール系硬化剤及びナフトール系硬化剤の具体例としては、例えば、明和化成社製の「MEH-7700」、「MEH-7810」、「MEH-7851」、「MEH-8000H」;日本化薬社製の「NHN」、「CBN」、「GPH」;日鉄ケミカル&マテリアル社製の「SN-170」、「SN-180」、「SN-190」、「SN-475」、「SN-485」、「SN-495」、「SN-495V」、「SN-375」、「SN-395」;DIC社製の「TD-2090」、「TD-2090-60M」、「LA-7052」、「LA-7054」、「LA-1356」、「LA-3018」、「LA-3018-50P」、「EXB-9500」、「HPC-9500」、「KA-1160」、「KA-1163」、「KA-1165」;群栄化学社製の「GDP-6115L」、「GDP-6115H」、「ELPC75」等が挙げられる。
【0065】
カルボジイミド系硬化剤は、1分子中に2個以上のカルボジイミド構造を有する硬化剤であり、例えば、テトラメチレン-ビス(t-ブチルカルボジイミド)、シクロヘキサンビス(メチレン-t-ブチルカルボジイミド)等の脂肪族ビスカルボジイミド;フェニレン-ビス(キシリルカルボジイミド)等の芳香族ビスカルボジイミド等のビスカルボジイミド;ポリヘキサメチレンカルボジイミド、ポリトリメチルヘキサメチレンカルボジイミド、ポリシクロヘキシレンカルボジイミド、ポリ(メチレンビスシクロヘキシレンカルボジイミド)、ポリ(イソホロンカルボジイミド)等の脂肪族ポリカルボジイミド;ポリ(フェニレンカルボジイミド)、ポリ(ナフチレンカルボジイミド)、ポリ(トリレンカルボジイミド)、ポリ(メチルジイソプロピルフェニレンカルボジイミド)、ポリ(トリエチルフェニレンカルボジイミド)、ポリ(ジエチルフェニレンカルボジイミド)、ポリ(トリイソプロピルフェニレンカルボジイミド)、ポリ(ジイソプロピルフェニレンカルボジイミド)、ポリ(キシリレンカルボジイミド)、ポリ(テトラメチルキシリレンカルボジイミド)、ポリ(メチレンジフェニレンカルボジイミド)、ポリ[メチレンビス(メチルフェニレン)カルボジイミド]等の芳香族ポリカルボジイミド等のポリカルボジイミドが挙げられる。
【0066】
カルボジイミド系硬化剤の市販品としては、例えば、日清紡ケミカル社製の「カルボジライトV-02B」、「カルボジライトV-03」、「カルボジライトV-04K」、「カルボジライトV-07」及び「カルボジライトV-09」;ラインケミー社製の「スタバクゾールP」、「スタバクゾールP400」、「ハイカジル510」等が挙げられる。
【0067】
酸無水物系硬化剤は、1分子中に1個以上のカルボン酸無水物基(-CO-O-CO-)を有する硬化剤であり、例えば、無水フタル酸、ピロメリット酸二無水物、1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ベンソフェノンテトラカルボン酸二無水物、オキシジフタル酸二無水物、3,3’,4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、メチレン-4,4’-ジフタル酸二無水物等の芳香族酸無水物系硬化剤;テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルナジック酸無水物、水素化メチルナジック酸無水物、トリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸、ドデセニル無水コハク酸、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、シクロヘキサン-1,2,4,5-テトラカルボン酸二無水物等の脂肪族酸無水物系硬化剤;スチレン/無水マレイン酸共重合体、(メタ)アクリル酸アルキル/スチレン/無水マレイン酸共重合体等の重合体無水物系硬化剤などが挙げられる。酸無水物系硬化剤の市販品としては、新日本理化社製の「HNA-100」、「MH-700」、「MTA-15」、「DDSA」、「OSA」、三菱ケミカル社製の「YH-306」、「YH-307」、日立化成社製の「HN-2200」、「HN-5500」等が挙げられる。
【0068】
アミン系硬化剤は、2個以上のアミノ基を有する硬化剤であり、例えば、脂肪族アミン類、ポリエーテルアミン類、脂環式アミン類、芳香族アミン類等が挙げられ、中でも、本発明の所望の効果を奏する観点から、芳香族アミン類が好ましい。アミン系硬化剤は、第1級アミン又は第2級アミンが好ましく、第1級アミンがより好ましい。アミン系硬化剤の具体例としては、4,4’-メチレンビス(2,6-ジメチルアニリン)、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、m-フェニレンジアミン、m-キシリレンジアミン、ジエチルトルエンジアミン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジヒドロキシベンジジン、2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、3,3-ジメチル-5,5-ジエチル-4,4-ジフェニルメタンジアミン、2,2-ビス(4-アミノフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-(4-アミノフェノキシ)フェニル)プロパン、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス(4-(4-アミノフェノキシ)フェニル)スルホン、ビス(4-(3-アミノフェノキシ)フェニル)スルホン、等が挙げられる。アミン系硬化剤は市販品を用いてもよく、例えば、セイカ社製「SEIKACURE-S」、日本化薬社製の「KAYABOND C-200S」、「KAYABOND C-100」、「カヤハードA-A」、「カヤハードA-B」、「カヤハードA-S」、三菱ケミカル社製の「エピキュアW」等が挙げられる。
【0069】
ベンゾオキサジン系硬化剤の具体例としては、JFEケミカル社製の「JBZ-OP100D」、「ODA-BOZ」;昭和高分子社製の「HFB2006M」;四国化成工業社製の「P-d」、「F-a」などが挙げられる。
【0070】
シアネートエステル系硬化剤としては、例えば、ビスフェノールAジシアネート、ポリフェノールシアネート(オリゴ(3-メチレン-1,5-フェニレンシアネート))、4,4’-メチレンビス(2,6-ジメチルフェニルシアネート)、4,4’-エチリデンジフェニルジシアネート、ヘキサフルオロビスフェノールAジシアネート、2,2-ビス(4-シアネート)フェニルプロパン、1,1-ビス(4-シアネートフェニルメタン)、ビス(4-シアネート-3,5-ジメチルフェニル)メタン、1,3-ビス(4-シアネートフェニル-1-(メチルエチリデン))ベンゼン、ビス(4-シアネートフェニル)チオエーテル、及びビス(4-シアネートフェニル)エーテル等の2官能シアネート樹脂、フェノールノボラック及びクレゾールノボラック等から誘導される多官能シアネート樹脂、これらシアネート樹脂が一部トリアジン化したプレポリマーなどが挙げられる。シアネートエステル系硬化剤の具体例としては、ロンザジャパン社製の「PT30」及び「PT60」(いずれもフェノールノボラック型多官能シアネートエステル樹脂)、「BA230」、「BA230S75」(ビスフェノールAジシアネートの一部又は全部がトリアジン化され三量体となったプレポリマー)等が挙げられる。
【0071】
チオール系硬化剤は、2個以上のメルカプト基を有する硬化剤であり、例えば、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)、トリス(3-メルカプトプロピル)イソシアヌレート等が挙げられる。
【0072】
硬化剤の反応基当量は、好ましくは50g/eq.~3000g/eq.、より好ましくは100g/eq.~1000g/eq.、さらに好ましくは100g/eq.~500g/eq.、特に好ましくは100g/eq.~300g/eq.である。反応基当量は、反応基1当量あたりの硬化剤の質量である。反応基は、例えば、活性エステル系硬化剤であれば活性エステル基であり、フェノール系硬化剤であればフェノール性水酸基である。酸無水物系硬化剤の場合はカルボン酸無水物基(-CO-O-CO-)1当量で反応基2当量に相当する。
【0073】
樹脂組成物中の樹脂成分を100質量%としたとき、硬化剤の含有量は、好ましくは3質量%以上、より好ましくは5質量%以上、さらに好ましくは10質量%以上であり、好ましくは40質量%以下、より好ましくは30質量%以下、さらに好ましくは25質量%以下又は20質量%以下である。
【0074】
-無機充填材-
樹脂シートにおいて、樹脂組成物層は、無機充填材を含んでもよい。無機充填材を含むことにより、熱特性の良好な絶縁層を実現することができる。
【0075】
無機充填材の材料としては、例えば、シリカ、アルミナ、ガラス、コーディエライト、シリコン酸化物、硫酸バリウム、炭酸バリウム、タルク、クレー、雲母粉、酸化亜鉛、ハイドロタルサイト、ベーマイト、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化マンガン、ホウ酸アルミニウム、炭酸ストロンチウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸ビスマス、酸化チタン、酸化ジルコニウム、チタン酸バリウム、チタン酸ジルコン酸バリウム、ジルコン酸バリウム、ジルコン酸カルシウム、リン酸ジルコニウム、及びリン酸タングステン酸ジルコニウム等が挙げられる。これらの中でも、シリカが特に好適である。シリカとしては、例えば、無定形シリカ、溶融シリカ、結晶シリカ、合成シリカ、中空シリカ等が挙げられる。また、シリカとしては球状シリカが好ましい。無機充填材は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0076】
無機充填材の市販品としては、例えば、電化化学工業社製の「UFP-30」;日鉄ケミカル&マテリアル社製の「SP60-05」、「SP507-05」;アドマテックス社製の「YC100C」、「YA050C」、「YA050C-MJE」、「YA010C」;デンカ社製の「UFP-30」;トクヤマ社製の「シルフィルNSS-3N」、「シルフィルNSS-4N」、「シルフィルNSS-5N」;アドマテックス社製の「SC2500SQ」、「SO-C4」、「SO-C2」、「SO-C1」;デンカ社製の「DAW-03」、「FB-105FD」などが挙げられる。
【0077】
無機充填材の平均粒径は、デスミア処理後に表面粗度が小さい絶縁層を実現し易い観点から、好ましくは3μm以下、より好ましくは2μm以下、さらに好ましくは1μm以下、0.8μm以下、0.6μm以下、0.5μm以下、0.4μm以下又は0.3μm以下である。該平均粒径の下限は、特に限定されるものではないが、好ましくは0.01μm以上、より好ましくは0.05μm以上、さらに好ましくは0.07μm以上、0.1μm以上又は0.2μm以上である。無機充填材の平均粒径は、ミー(Mie)散乱理論に基づくレーザー回折・散乱法により測定することができる。具体的には、レーザー回折散乱式粒径分布測定装置により、無機充填材の粒径分布を体積基準で作成し、そのメディアン径を平均粒径とすることで測定することができる。測定サンプルは、無機充填材100mg、メチルエチルケトン10gをバイアル瓶に秤取り、超音波にて10分間分散させたものを使用することができる。測定サンプルを、レーザー回折式粒径分布測定装置を使用して、使用光源波長を青色及び赤色とし、フローセル方式で無機充填材の体積基準の粒径分布を測定し、得られた粒径分布からメディアン径として平均粒径を算出した。レーザー回折式粒径分布測定装置としては、例えば堀場製作所社製「LA-960」等が挙げられる。
【0078】
無機充填材の比表面積は、特に限定されるものではないが、好ましくは0.1m2/g以上、より好ましくは0.5m2/g以上、さらに好ましくは1m2/g以上、3m2/g以上又は5m2/g以上である。該比表面積の上限は、特に限定されるものではないが、好ましくは100m2/g以下、より好ましくは80m2/g以下、さらに好ましくは60m2/g以下、50m2/g以下又は40m2/g以下である。無機充填材の比表面積は、BET法に従って、比表面積測定装置(マウンテック社製Macsorb HM-1210)を使用して試料表面に窒素ガスを吸着させ、BET多点法を用いて比表面積を算出することで得られる。
【0079】
無機充填材は、適切な表面処理剤で表面処理されていることが好ましい。表面処理されることにより、無機充填材の耐湿性及び分散性を高めることができる。表面処理剤としては、例えば、ビニル系シランカップリング剤、エポキシ系シランカップリング剤、スチリル系シランカップリング剤、(メタ)アクリル系シランカップリング剤、アミノ系シランカップリング剤、イソシアヌレート系シランカップリング剤、ウレイド系シランカップリング剤、メルカプト系シランカップリング剤、イソシアネート系シランカップリング剤、酸無水物系シランカップリング剤等のシランカップリング剤;メチルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン等の非シランカップリング-アルコキシシラン化合物;シラザン化合物等が挙げられる。表面処理剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0080】
表面処理剤の市販品としては、例えば、信越化学工業社製「KBM403」(3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「KBM803」(3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「KBE903」(3-アミノプロピルトリエトキシシラン)、信越化学工業社製「KBM573」(N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「SZ-31」(ヘキサメチルジシラザン)等が挙げられる。
【0081】
表面処理剤による表面処理の程度は、無機充填材の分散性向上の観点から、所定の範囲に収まることが好ましい。具体的には、無機充填材100質量%は、好ましくは0.2~5質量%の表面処理剤で表面処理されていることが好ましい。
【0082】
表面処理剤による表面処理の程度は、無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量によって評価することができる。無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量は、無機充填材の分散性向上の観点から、0.02mg/m2以上が好ましく、0.1mg/m2以上がより好ましく、0.2mg/m2以上がさらに好ましい。一方、樹脂組成物層の溶融粘度やシート形態での溶融粘度の上昇を防止する観点から、1.0mg/m2以下が好ましく、0.8mg/m2以下がより好ましく、0.5mg/m2以下がさらに好ましい。無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量は、表面処理後の無機充填材を溶剤(例えば、メチルエチルケトン(MEK))により洗浄処理した後に測定することができる。具体的には、溶剤として十分な量のMEKを表面処理剤で表面処理された無機充填材に加えて、25℃で5分間超音波洗浄する。上澄液を除去し、固形分を乾燥させた後、カーボン分析計を用いて無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量を測定することができる。カーボン分析計としては、堀場製作所社製「EMIA-320V」等を使用することができる。
【0083】
樹脂組成物層が無機充填材を含む場合、樹脂組成物層中の無機充填材の含有量は、低い線熱膨張係数など熱特性の良好な絶縁層を実現する観点から、樹脂組成物層中の不揮発成分を100質量%としたとき、好ましくは30質量%以上、より好ましくは40質量%以上、さらに好ましくは45質量%以上、50質量%以上、55質量%以上、60質量%以上又は65質量%以上である。無機充填材の含有量の上限は、特に限定されるものではないが、好ましくは85質量%以下、より好ましくは80質量%以下又は75質量%以下である。
【0084】
-熱可塑性樹脂-
樹脂シートにおいて、樹脂組成物層は、熱可塑性樹脂を含有してもよい。熱可塑性樹脂は、1種単独で用いてもよく、又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0085】
熱可塑性樹脂としては、例えば、フェノキシ樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、アクリル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエステル樹脂が挙げられ、中でも、フェノキシ樹脂、アクリル樹脂及びポリフェニレンエーテル樹脂から選ばれる樹脂が好ましい。
【0086】
フェノキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA骨格、ビスフェノールF骨格、ビスフェノールS骨格、ビスフェノールアセトフェノン骨格、ノボラック骨格、ビフェニル骨格、フルオレン骨格、ジシクロペンタジエン骨格、ノルボルネン骨格、ナフタレン骨格、アントラセン骨格、アダマンタン骨格、テルペン骨格、及びトリメチルシクロヘキサン骨格からなる群から選択される1種以上の骨格を有するフェノキシ樹脂が挙げられる。フェノキシ樹脂の末端は、フェノール性水酸基、エポキシ基等のいずれの官能基でもよい。フェノキシ樹脂は1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。フェノキシ樹脂の具体例としては、三菱ケミカル社製の「1256」及び「4250」(いずれもビスフェノールA骨格含有フェノキシ樹脂)、「YX8100」(ビスフェノールS骨格含有フェノキシ樹脂)、及び「YX6954」(ビスフェノールアセトフェノン骨格含有フェノキシ樹脂)、日鉄ケミカル&マテリアル社製の「FX280」及び「FX293」、三菱ケミカル社製の「YX7200B35」、「YX7500BH30」、「YX6954BH30」、「YX7553」、「YX7553BH30」、「YL7769BH30」、「YL6794」、「YL7213」、「YL7290」及び「YL7482」等が挙げられる。
【0087】
ポリビニルアセタール樹脂としては、例えば、ポリビニルホルマール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂が挙げられ、ポリビニルブチラール樹脂が好ましい。ポリビニルアセタール樹脂の具体例としては、例えば、電気化学工業社製の「電化ブチラール4000-2」、「電化ブチラール5000-A」、「電化ブチラール6000-C」、「電化ブチラール6000-EP」、積水化学工業社製のエスレックBHシリーズ、BXシリーズ(例えばBX-5Z)、KSシリーズ(例えばKS-1)、BLシリーズ、BMシリーズ等が挙げられる。
【0088】
アクリル樹脂とは、(メタ)アクリル酸エステル系モノマーを含むモノマー成分を重合してなる重合体を意味する。アクリル樹脂を構成するモノマー成分には、(メタ)アクリル酸エステル系モノマーに加えて、(メタ)アクリルアミド系モノマー、スチレン系モノマー、官能基含有モノマー等が共重合成分として含まれていてもよい。アクリル樹脂の具体例としては、東亜合成社製の「ARUFON UP-1000」、「ARUFON UP-1010」、「ARUFON UP-1020」、「ARUFON UP-1021」、「ARUFON UP-1061」、「ARUFON UP-1080」、「ARUFON UP-1110」、「ARUFON UP-1170」、「ARUFON UP-1190」、「ARUFON UP-1500」、「ARUFON UH-2000」、「ARUFON UH-2041」、「ARUFON UH-2190」、「ARUFON UHE-2012」、「ARUFON UC-3510」、「ARUFON UG-4010」、「ARUFON US-6100」、「ARUFON US-6170」などが挙げられる。これらは、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0089】
ポリオレフィン樹脂としては、例えば、低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-アクリル酸エチル共重合体、エチレン-アクリル酸メチル共重合体等のエチレン系共重合樹脂;ポリプロピレン、エチレン-プロピレンブロック共重合体等のポリオレフィン系エラストマー等が挙げられる。
【0090】
ポリブタジエン樹脂としては、例えば、水素化ポリブタジエン骨格含有樹脂、ヒドロキシ基含有ポリブタジエン樹脂、フェノール性水酸基含有ポリブタジエン樹脂、カルボキシ基含有ポリブタジエン樹脂、酸無水物基含有ポリブタジエン樹脂、エポキシ基含有ポリブタジエン樹脂、イソシアネート基含有ポリブタジエン樹脂、ウレタン基含有ポリブタジエン樹脂、ポリフェニレンエーテル-ポリブタジエン樹脂等が挙げられる。
【0091】
ポリイミド樹脂の具体例としては、新日本理化社製の「リカコートSN20」及び「リカコートPN20」が挙げられる。ポリイミド樹脂の具体例としてはまた、2官能性ヒドロキシル基末端ポリブタジエン、ジイソシアネート化合物及び四塩基酸無水物を反応させて得られる線状ポリイミド(特開2006-37083号公報記載のポリイミド)、ポリシロキサン骨格含有ポリイミド(特開2002-12667号公報及び特開2000-319386号公報等に記載のポリイミド)等の変性ポリイミドが挙げられる。
【0092】
ポリアミドイミド樹脂の具体例としては、東洋紡績社製の「バイロマックスHR11NN」及び「バイロマックスHR16NN」が挙げられる。ポリアミドイミド樹脂の具体例としてはまた、日立化成工業社製の「KS9100」、「KS9300」(ポリシロキサン骨格含有ポリアミドイミド)等の変性ポリアミドイミドが挙げられる。
【0093】
ポリエーテルスルホン樹脂の具体例としては、住友化学社製の「PES5003P」等が挙げられる。
【0094】
ポリスルホン樹脂の具体例としては、ソルベイアドバンストポリマーズ社製のポリスルホン「P1700」、「P3500」等が挙げられる。
【0095】
ポリフェニレンエーテル樹脂の具体例としては、三菱ガス化学社製のオリゴフェニレンエーテル・スチレン樹脂「OPE-2St1200」、「OPE-2St2200」、SABIC製「Noryl(登録商標)SA90」等が挙げられる。ポリエーテルイミド樹脂の具体例としては、GE社製の「ウルテム」等が挙げられる。
【0096】
ポリカーボネート樹脂としては、ヒドロキシ基含有カーボネート樹脂、フェノール性水酸基含有カーボネート樹脂、カルボキシ基含有カーボネート樹脂、酸無水物基含有カーボネート樹脂、イソシアネート基含有カーボネート樹脂、ウレタン基含有カーボネート樹脂等が挙げられる。ポリカーボネート樹脂の具体例としては、三菱瓦斯化学社製の「FPC0220」、旭化成ケミカルズ社製の「T6002」、「T6001」(ポリカーボネートジオール)、クラレ社製の「C-1090」、「C-2090」、「C-3090」(ポリカーボネートジオール)等が挙げられる。ポリエーテルエーテルケトン樹脂の具体例としては、住友化学社製の「スミプロイK」等が挙げられる。ポリエステル樹脂としては、例えばポリエチレンテレフタレート樹脂等が挙げられる。
【0097】
熱可塑性樹脂の重量平均分子量は、好ましくは8,000以上、より好ましくは10,000以上、さらに好ましくは20,000以上であり、好ましくは100,000以下、より好ましくは70,000以下、さらに好ましくは60,000以下である。樹脂の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により、ポリスチレン換算の値として測定できる。
【0098】
樹脂組成物層が熱可塑性樹脂を含む場合、樹脂組成物層中の熱可塑性樹脂の含有量は、樹脂組成物層中の樹脂成分を100質量%としたとき、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、さらに好ましくは30質量%以下、20質量%以下又は10質量%以下であり、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、さらに好ましくは1質量%以上である。
【0099】
-硬化促進剤-
樹脂シートにおいて、樹脂組成物層は、硬化促進剤を含んでもよい。
【0100】
硬化促進剤としては、例えば、リン系硬化促進剤、アミン系硬化促進剤、イミダゾール系硬化促進剤、グアニジン系硬化促進剤、金属系硬化促進剤、過酸化物系硬化促進剤等が挙げられる。硬化促進剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0101】
樹脂組成物層が硬化促進剤を含む場合、樹脂組成物層中の硬化促進剤の含有量は、樹脂組成物中の樹脂成分を100質量%としたとき、好ましくは0.001質量%以上、より好ましくは0.005質量%以上、さらに好ましくは0.01質量%以上であり、好ましくは1質量%以下、より好ましくは0.8質量%以下、0.6質量%以下又は0.4質量%以下である。
【0102】
-その他の添加剤-
樹脂シートにおいて、樹脂組成物層は、その他の添加剤をさらに含んでもよい。このようなその他の添加剤としては、例えば、有機銅化合物、有機亜鉛化合物、有機コバルト化合物等の有機金属化合物;ゴム粒子等の有機充填材;フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、アイオディングリーン、ジアゾイエロー、クリスタルバイオレット、酸化チタン、カーボンブラック等の着色剤;ハイドロキノン、カテコール、ピロガロール、フェノチアジン等の重合禁止剤;シリコーン系レベリング剤、アクリルポリマー系レベリング剤等のレベリング剤;ベントン、モンモリロナイト等の増粘剤;シリコーン系消泡剤、アクリル系消泡剤、フッ素系消泡剤、ビニル樹脂系消泡剤等の消泡剤;ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤等の紫外線吸収剤;尿素シラン等の接着性向上剤;トリアゾール系密着性付与剤、テトラゾール系密着性付与剤、トリアジン系密着性付与剤等の密着性付与剤;ヒンダードフェノール系酸化防止剤、ヒンダードアミン系酸化防止剤等の酸化防止剤;スチルベン誘導体等の蛍光増白剤;フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤等の界面活性剤;リン系難燃剤(例えばリン酸エステル化合物、ホスファゼン化合物、ホスフィン酸化合物、赤リン)、窒素系難燃剤(例えば硫酸メラミン)、ハロゲン系難燃剤、無機系難燃剤(例えば三酸化アンチモン)等の難燃剤;リン酸エステル系分散剤、ポリオキシアルキレン系分散剤、アセチレン系分散剤、シリコーン系分散剤、アニオン性分散剤、カチオン性分散剤等の分散剤;ボレート系安定剤、チタネート系安定剤、アルミネート系安定剤、ジルコネート系安定剤、イソシアネート系安定剤、カルボン酸系安定剤、カルボン酸無水物系安定剤等の安定剤等が挙げられる。その他の添加剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。それぞれの含有量は当業者であれば適宜設定できる。
【0103】
樹脂シートは、例えば、液状の樹脂組成物をそのまま、或いは有機溶剤に樹脂組成物を溶解した樹脂ワニスを調製し、これを、ダイコーター等を用いて支持体上に塗布し、更に乾燥させて樹脂組成物層を形成させることにより製造することができる。
【0104】
有機溶剤としては、公知のものを適宜用いることができ、その種類は特に限定されるものではない。有機溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸イソアミル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、γ-ブチロラクトン等のエステル系溶剤;テトラヒドロピラン、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジフェニルエーテル等のエーテル系溶剤;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、エチレングリコール等のアルコール系溶剤;酢酸2-エトキシエチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチルジグリコールアセテート、γ-ブチロラクトン、メトキシプロピオン酸メチル等のエーテルエステル系溶剤;乳酸メチル、乳酸エチル、2-ヒドロキシイソ酪酸メチル等のエステルアルコール系溶剤;2-メトキシプロパノール、2-メトキシエタノール、2-エトキシエタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルカルビトール)等のエーテルアルコール系溶剤;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン等のアミド系溶剤;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド系溶剤;アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル系溶剤;ヘキサン、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶剤;ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、トリメチルベンゼン等の芳香族炭化水素系溶剤等を挙げることができる。有機溶剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0105】
乾燥は、加熱、熱風吹きつけ等の公知の方法により実施してよい。乾燥条件は特に限定されないが、樹脂組成物層中の有機溶剤の含有量が10質量%以下、好ましくは5質量%以下となるように乾燥させる。樹脂組成物(樹脂ワニス)中の有機溶剤の沸点によっても異なるが、例えば30質量%~60質量%の有機溶剤を含む樹脂組成物(樹脂ワニス)を用いる場合、50℃~150℃で2分間~10分間乾燥させることにより、樹脂組成物層を形成することができる。
【0106】
一実施形態において、樹脂シートは、さらに必要に応じて、その他の層を含んでいてもよい。斯かるその他の層としては、例えば、樹脂組成物層の支持体と接合していない面(即ち、支持体とは反対側の面)に設けられた、支持体に準じた保護フィルム等が挙げられる。保護フィルムの厚さは、特に限定されるものではないが、例えば、1~40μmである。保護フィルムを積層することにより、樹脂組成物層の表面へのゴミ等の付着やキズを抑制することができる。樹脂シートが保護フィルムを有する場合、保護フィルムを剥がすことによって使用可能となる。
【0107】
以下、各工程について説明する。
【0108】
-工程(1)-
工程(1)において、支持体と該支持体上に設けられた熱硬化性樹脂組成物層とを含む樹脂シートを、該熱硬化性樹脂組成物層が基材と接合するように、基材に積層する。
【0109】
樹脂シートは上記<樹脂シート>欄にて説明したとおりである。
【0110】
工程(1)において用いる「基材」は、回路基板をチップ1st(Chip-1st)工法で製造する場合には、所定の機能を有する回路素子およびこの回路素子上に電気的に接続されている複数の電極パッドを形成した半導体ウェハを用いればよい。半導体ウェハとしては、シリコン(Si)系ウェハが好適に挙げられるが、それに限定されるものではなく、例えば、ガリウムヒ素(GaAs)系、インジウムリン(InP)系、ガリウムリン(GaP)系、ガリウムナイトライド(GaN)系、ガリウムテルル(GaTe)系、亜鉛セレン(ZnSe)系、シリコンカーバイド(SiC)系などのウェハを用いてもよい。チップ1st工法とは、最初に半導体チップを設け、その電極パッド面に再配線層を形成する工法である(例えば、特開2002-289731号公報、特開2006-173345号公報など)。斯かるチップ1st工法において、特にファンアウト(Fan-out)構造のパッケージを製造する場合には、まず半導体ウェハを個片化し、各半導体チップをキャリア(ガラス基板、金属基板、プラスチック基板等)に互いに離間させて配置した後、樹脂封止し、露出した電極パッド面とその周囲の封止樹脂層の上に再配線層を形成すればよい(例えば、特開2012-15191号公報、特開2015-126123号公報など)。斯かる態様では、工程(1)でいう「基材」は、個片化した半導体チップがその電極パッド面が露出するように周囲を封止樹脂で封止されてなる基板を用いればよい。
【0111】
また、回路基板を再配線層1st(RDL-1st)工法で製造する場合には、工程(1)において用いる「基材」は、剥離層付き基板(剥離層付きガラス基板、剥離層付き金属基板、剥離層付きプラスチック基板等)を用いればよい。再配線層1st工法とは、最初に再配線層を設け、該再配線層に、その電極パッド面が再配線層と電気接続し得るような状態にて、半導体チップを設ける工法である(例えば、特開2015-35551号公報、特開2015-170767号公報など)。再配線層1st工法では、再配線層に半導体チップを設けた後、剥離層付き基板を剥離することにより、再配線層が露出する。斯かる再配線層1st工法は、とりわけファンアウト構造のパッケージを製造する場合に適している。
【0112】
基材と樹脂シートの積層は、例えば、支持体側から樹脂シートを基材に加熱圧着することにより行うことができる。樹脂シートを基材に加熱圧着する部材(以下、「加熱圧着部材」ともいう。)としては、例えば、加熱された金属板(SUS鏡板等)又は金属ロール(SUSロール)等が挙げられる。なお、加熱圧着部材を樹脂シートに直接プレスするのではなく、基材の表面凹凸に樹脂シートが十分に追随するよう、耐熱ゴム等の弾性材を介してプレスするのが好ましい。
【0113】
基材と樹脂シートの積層は、真空ラミネート法により実施してよい。真空ラミネート法において、加熱圧着温度は、好ましくは60℃~160℃、より好ましくは80℃~140℃の範囲であり、加熱圧着圧力は、好ましくは0.098MPa~1.77MPa、より好ましくは0.29MPa~1.47MPaの範囲であり、加熱圧着時間は、好ましくは20秒間~400秒間、より好ましくは30秒間~300秒間の範囲である。積層は、好ましくは圧力26.7hPa以下の減圧条件下で実施する。
【0114】
積層は、市販の真空ラミネーターによって行うことができる。市販の真空ラミネーターとしては、例えば、名機製作所社製の真空加圧式ラミネーター、ニッコー・マテリアルズ社製のバキュームアップリケーター、バッチ式真空加圧ラミネーター等が挙げられる。
【0115】
積層の後に、常圧下(大気圧下)、例えば、加熱圧着部材を支持体側からプレスすることにより、積層された樹脂シートの平滑化処理を行ってもよい。平滑化処理のプレス条件は、上記積層の加熱圧着条件と同様の条件とすることができる。平滑化処理は、市販のラミネーターによって行うことができる。なお、積層と平滑化処理は、上記の市販の真空ラミネーターを用いて連続的に行ってもよい。
【0116】
-工程(2)-
工程(2)において、熱硬化性樹脂組成物層を熱硬化させて絶縁層を形成する。
【0117】
樹脂組成物層の硬化条件は特に限定されず、回路基板の絶縁層を形成するに際して通常採用される条件を使用してよい。
【0118】
例えば、樹脂組成物層の熱硬化条件は、樹脂組成物の種類等によっても異なるが、一実施形態において、硬化温度は好ましくは120℃~250℃、より好ましくは150℃~240℃、さらに好ましくは180℃~230℃である。硬化時間は好ましくは5分間~240分間、より好ましくは10分間~150分間、さらに好ましくは15分間~120分間とすることができる。
【0119】
樹脂組成物層を熱硬化させる前に、樹脂組成物層を硬化温度よりも低い温度にて予備加熱してもよい。例えば、樹脂組成物層を熱硬化させるのに先立ち、50℃~120℃、好ましくは60℃~115℃、より好ましくは70℃~110℃の温度にて、樹脂組成物層を5分間以上、好ましくは5分間~150分間、より好ましくは15分間~120分間、さらに好ましくは15分間~100分間予備加熱してもよい。予備加熱を行うことにより、デスミア処理後に表面粗度の低い絶縁層を実現し易いため有利である。
【0120】
-工程(3)-
工程(3)において、絶縁層を穴あけ加工する。
【0121】
これにより絶縁層にビアホールを形成することができる。工程(3)は、絶縁層の形成に使用した樹脂組成物の組成等に応じて、例えば、ドリル、レーザー、プラズマ等を使用して実施してよい。ホールの寸法や形状は、回路基板のデザインに応じて適宜決定してよい。
【0122】
-工程(4)-
工程(4)において、絶縁層をデスミア処理する。
【0123】
これにより穴あけ加工によってビアホール内に生じたスミアを除去することができる。デスミア処理は、特に限定はされず、公知の各種方法により行うことができる。一実施形態において、デスミア処理は、乾式デスミア処理、湿式デスミア処理又はこれらの組み合わせとし得る。
【0124】
乾式デスミア処理としては、例えば、プラズマを用いたデスミア処理等が挙げられる。プラズマを用いたデスミア処理は、プラズマ発生装置内にガスを導入して発生させたプラズマを用いて絶縁層を処理することで、ビアホール内に生じたスミアを除去する。プラズマの発生方法としては特に制限はなく、マイクロ波によりプラズマを発生させるマイクロ波プラズマ、高周波を用いた高周波プラズマ、大気圧下で発生させる大気圧プラズマ、真空下で発生させる真空プラズマ等が挙げられ、真空下で発生させる真空プラズマが好ましい。また、デスミア処理で用いるプラズマは、高周波で励起するRFプラズマであることが好ましい。
【0125】
プラズマ化するガスとしては、ビアホール内のスミアを除去し得る限り特に限定されず、例えば、SF6を含むガスを用いてよい。この場合、プラズマ化するガスは、SF6に加えて、例えばAr、O2等の他のガスを含んでもよい。中でも、デスミア処理後に表面粗度の小さい絶縁層を実現し易い観点から、プラズマ化するガスとしては、SF6と、Ar及びO2の少なくとも一方とを含む混合ガスが好ましく、SF6、Ar及びO2を含む混合ガスがより好ましい。
【0126】
SF6と他のガスとの混合ガスを用いる場合、その混合比(SF6/その他のガス:単位はsccm)としては、デスミア処理後に表面粗度の小さい絶縁層を実現し易い観点から、好ましくは1/0.01~1/1、より好ましくは1/0.05~1/1、さらに好ましくは1/0.1~1/1である。
【0127】
プラズマを用いたデスミア処理の時間は特に限定されないが、好ましくは30秒間以上、より好ましくは60秒間以上、90秒間以上又は120秒間以上である。該デスミア処理の時間の上限は、デスミア処理後に表面粗度の小さい絶縁層を実現し易い観点から、好ましくは10分間以下、より5分間以下である。
【0128】
プラズマを用いたデスミア処理は、市販のプラズマデスミア処理装置を使用して実施することができる。市販のプラズマデスミア処理装置の中でも、回路基板の製造用途に好適な例として、オックスフォード・インストゥルメンツ社製のプラズマドライエッチング装置、ニッシン社製のマイクロ波プラズマ装置、積水化学工業社製の常圧プラズマエッチング装置等が挙げられる。
【0129】
乾式デスミア処理としてはまた、研磨材をノズルから吹き付けて処理対象を研磨し得る乾式サンドブラスト処理を用いてもよい。乾式サンドブラスト処理は、市販の乾式サンドブラスト処理装置を用いて実施することができる。研磨材として、水溶性の研磨材を使用する場合には、乾式サンドブラスト処理後に水洗処理することにより、研磨材がビアホール内部に残留することもなく、スミアを効果的に除去することができる。
【0130】
樹脂組成物層の組成等によらず、表面粗度の小さい絶縁層を実現し易い観点から、デスミア処理は、乾式デスミア処理が好ましく、中でもプラズマを用いたデスミア処理がより好ましい。したがって好適な一実施形態において絶縁層を乾式デスミア処理し、特に好ましくは絶縁層をプラズマを用いてデスミア処理する。
【0131】
湿式デスミア処理としては、例えば、酸化剤溶液を用いたデスミア処理等が挙げられる。酸化剤溶液を用いてデスミア処理する場合、膨潤液による膨潤処理、酸化剤溶液による酸化処理、中和液による中和処理をこの順に行うことが好ましい。膨潤液としては、例えば、アトテックジャパン(株)製の「スウェリング・ディップ・セキュリガンスP(Swelling Dip Securiganth P)」、「スウェリング・ディップ・セキュリガンスSBU(Swelling Dip Securiganth SBU)」等を挙げることができる。膨潤処理は、ビアホールの形成された基板を、60℃~80℃に加熱した膨潤液に5分間~10分間浸漬させることにより行うことが好ましい。酸化剤溶液としては、アルカリ性過マンガン酸水溶液が好ましく、例えば、水酸化ナトリウムの水溶液に過マンガン酸カリウムや過マンガン酸ナトリウムを溶解した溶液を挙げることができる。酸化剤溶液による酸化処理は、膨潤処理後の基板を、60℃~80℃に加熱した酸化剤溶液に10分間~30分間浸漬させることにより行うことが好ましい。アルカリ性過マンガン酸水溶液の市販品としては、例えば、アトテックジャパン(株)社製の「コンセントレート・コンパクトP」、「コンセントレート・コンパクトCP」、「ド-ジングソリューション・セキュリガンスP」等が挙げられる。中和液による中和処理は、酸化処理後の基板を、30℃~50℃の中和液に3分間~10分間浸漬させることにより行うことが好ましい。中和液としては、酸性の水溶液が好ましく、市販品としては、例えば、アトテックジャパン(株)製の「リダクションソリューション・セキュリガンスP」が挙げられる。
【0132】
湿式デスミア処理としてはまた、研磨材と分散媒とをノズルから吹き付けて処理対象を研磨し得る湿式サンドブラスト処理を用いてもよい。湿式サンドブラスト処理は、市販の湿式サンドブラスト処理装置を用いて実施することができる。
【0133】
好適な一実施形態において絶縁層を湿式デスミア処理し、特に好ましくは絶縁層を酸化剤溶液を用いてデスミア処理する。
【0134】
乾式デスミア処理と湿式デスミア処理を組み合わせて実施する場合、乾式デスミア処理を先に実施してもよく、湿式デスミア処理を先に実施してもよい。
【0135】
樹脂シートの支持体は、工程(1)と工程(2)の間に除去してもよく、工程(2)と工程(3)の間に除去してもよく、工程(3)と工程(4)の間に除去してもよく、工程(4)の後に除去してもよい。デスミア処理後に表面粗度の小さい絶縁層を実現し易い観点から、支持体は、工程(2)の後に除去することが好ましく、工程(4)の後に除去することがより好ましい。
【0136】
本発明の製造方法では、これら工程(1)~工程(4)を実施した後、先述の工程(X)や導体層形成工程を実施することにより、めっき焼けを抑制しつつ、L/Sが小さく且つ薄型の導体パターンを形成することができる。これらの工程を総称して再配線形成工程ということもでき、本発明の製造方法は、再配線形成工程が、Raが100nm以下である絶縁層表面に厚さ250nm以下のめっきシード層を形成する工程を含むことを特徴とするものである。
【0137】
再配線形成工程を繰り返し行うことで、多層構造の再配線層を形成することができる。本発明の製造方法によれば、熱硬化性材料を用いて諸特性に優れる薄型の絶縁層を形成すると共に、薄いめっきシード層を用いてめっき焼けなしにL/Sが小さく且つ薄型の導体パターンを形成することができるため、極めて微細かつ高密度に配線を設けることができる。
【0138】
本発明の製造方法によれば、L/Sが小さく且つ薄型の導体パターンを有する、WLP、PLPといった回路基板を実現することができる。
【0139】
WLPやPLPといった回路基板の製造方法は、特許文献を示しつつ先述したとおりである。例えば、ファンイン構造のWLPを製造する場合、「基材」として、所定の機能を有する回路素子およびこの回路素子上に電気的に接続されている複数の電極パッドを形成した半導体ウェハを用いて、その電極パッド面と熱硬化性樹脂組成物層が接合するように、工程(1)を実施すればよい。そして、工程(2)、工程(3)、工程(4)、工程(X)、導体層形成工程を順に実施し、半導体ウェハの電極パッド面に再配線層を形成することができる。これらの工程を繰り返し実施することにより、多層の再配線層を形成することも可能である。そして、再配線層の半導体ウェハとは反対側の面にバンプ等のボード接続端子を形成し、個片化することにより、ファンイン構造のWLPを製造することができる。
【0140】
例えば、ファンアウト構造のWLPを製造する場合、所定の機能を有する回路素子およびこの回路素子上に電気的に接続されている複数の電極パッドを形成した半導体ウェハをまず個片化する。そして各半導体チップをキャリア(ガラス基板、金属基板、プラスチック基板等)に互いに離間させて配置した後、樹脂封止することにより、個片化した半導体チップがその電極パッド面が露出するように周囲を封止樹脂で封止されてなる基板を得る。斯かる基板を「基材」として用い、その電極パッド面が露出した側の基板の表面と熱硬化性樹脂組成物層が接合するように、工程(1)を実施すればよい。そして、工程(2)、工程(3)、工程(4)、工程(X)、導体層形成工程を順に実施し、露出した電極パッド面とその周囲の封止樹脂層の上に再配線層を形成することができる。これらの工程を繰り返し実施することにより、多層の再配線層を形成することも可能である。そして、再配線層の基板とは反対側の面にバンプ等のボード接続端子を形成し、改めて個片化することにより、ファンアウト構造のWLPを製造することができる。
【0141】
特に、本発明の製造方法で得られたファンアウト構造のWLPやPLPは、再配線層を大面積で形成し得るというファンアウト構造の本来的な特長も相俟って、極めて微細かつ高密度の配線を大面積にて形成し得ることから有利である。したがって、好適な一実施形態において、本発明の製造方法では、ファンアウト構造のWLP又はPLPを製造する。
【0142】
本発明は、絶縁層表面にめっきシード層を形成する工程を含む回路基板の製造に広く適用し得る。WLPやPLPといった回路基板の製造方法は、先述のチップ1st工法、再配線層1st工法の観点をはじめ、チップ搭載方向(Face-down型、Face-up型)の観点からも、多種多様な発展を遂げているが、本発明は、その製造過程において、絶縁層表面にめっきシード層を形成する工程を含む回路基板の製造に広く適用可能であり、極めて汎用性の高い技術に関するものである。
【実施例0143】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、以下において、量を表す「部」及び「%」は、別途明示のない限り、それぞれ「質量部」及び「質量%」を意味する。特に温度の指定が無い場合の温度条件及び圧力条件は、室温(25℃)及び大気圧(1atm)である。
【0144】
<使用した無機充填材>
無機充填材1:球状シリカ(電気化学工業社製「UFP-30」、平均粒径0.3μm、比表面積30.7m2/g)100部に対して、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業社製「KBM573」)2部で表面処理したもの。
無機充填材2:球形シリカ(アドマテックス社製「SO-C2」、平均粒径0.5μm、比表面積5.8m2/g)100部に対して、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業社製、KBM573)1部で表面処理したもの。
無機充填材3:球形シリカ(アドマテックス社製「SO-C4」、平均粒径1.1μm、比表面積4.5m2/g)100部に対して、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業社製「KBM573」)1部で表面処理したもの。
【0145】
<調製例1>(樹脂組成物1の調製)
ビキシレノール型エポキシ樹脂(三菱ケミカル社製「YX4000HK」、エポキシ当量約185)6部、ナフタレン型エポキシ樹脂(日鉄ケミカル&マテリアル社製「ESN475V」、エポキシ当量約332)5部、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂(三菱ケミカル社製「YX7760」、エポキシ当量約238)15部、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂(DIC社製「HP6000L」、エポキシ当量約213)2部、シクロヘキサン型エポキシ樹脂(三菱ケミカル社製「ZX1658GS」、エポキシ当量約135)2部、フェノキシ樹脂(三菱ケミカル社製「YX7500BH30」、固形分30質量%のシクロヘキサノン:メチルエチルケトン(MEK)の1:1溶液、Mw=44000)2部を、ソルベントナフサ20部及びシクロヘキサノン10部の混合溶剤に撹拌しながら加熱溶解させた。室温にまで冷却した後、そこへ、トリアジン骨格含有クレゾールノボラック系硬化剤(DIC社製「LA-3018-50P」、水酸基当量約151、固形分50%の2-メトキシプロパノール溶液)4部、活性エステル系硬化剤(DIC社製「EXB-8000L-65TM」、活性基当量約220、不揮発成分65質量%のトルエン溶液)6部、無機充填材1を60部、アミン系硬化促進剤(4-ジメチルアミノピリジン(DMAP))0.05部を混合し、高速回転ミキサーで均一に分散した後に、カートリッジフィルター(ROKITECHNO社製「SHP020」)で濾過して、樹脂組成物1を調製した。
【0146】
<調製例2>(樹脂組成物2の調製)
(1)活性エステル系硬化剤(DIC社製「EXB-8000L-65TM」、活性基当量約220、不揮発成分65質量%のトルエン溶液)の配合量を6部から12部へと変更した点、(2)60部の無機充填材1に代えて90部の無機充填材2を使用した点、(3)フェノキシ樹脂(三菱ケミカル社製「YX7500BH30」、固形分30質量%のシクロヘキサノン:メチルエチルケトン(MEK)の1:1溶液、Mw=44000)に代えてフェノキシ樹脂(三菱ケミカル社製「YX7553BH30」、固形分30質量%のシクロヘキサノン:メチルエチルケトン(MEK)の1:1溶液、Mw=35000)を使用した点以外は、調製例1と同様にして、樹脂組成物2を調製した。
【0147】
<調製例3>(樹脂組成物3の調製)
(1)活性エステル系硬化剤(DIC社製「EXB-8000L-65TM」、活性基当量約220、不揮発成分65質量%のトルエン溶液)の配合量を6部から12部へと変更した点、(2)60部の無機充填材1に代えて90部の無機充填材3を使用した点、(3)フェノキシ樹脂(三菱ケミカル社製「YX7500BH30」、固形分30質量%のシクロヘキサノン:メチルエチルケトン(MEK)の1:1溶液、Mw=44000)に代えてフェノキシ樹脂(三菱ケミカル社製「YX7553BH30」、固形分30質量%のシクロヘキサノン:メチルエチルケトン(MEK)の1:1溶液、Mw=35000)を使用した点以外は、調製例1と同様にして、樹脂組成物3を調製した。
【0148】
樹脂組成物1~3の調製に用いた成分とその配合量を下記表1に示す。
【0149】
【0150】
[実施例1]
(1)樹脂シートの作製
支持体として、アルキド樹脂系離型剤(リンテック社製「AL-5」)で離型処理したPETフィルム(東レ社製「ルミラーR80」、厚さ38μm、軟化点130℃、「離型PET」)を用意した。樹脂組成物1を支持体の離型剤上に、乾燥後の樹脂組成物層の厚さが20μmとなるように、ダイコーターにて均一に塗布し、70℃から95℃で2分間乾燥することにより、離型PET上に樹脂組成物層を設けた。次いで、樹脂組成物層の支持体と接合していない面に、保護フィルムとしてポリプロピレンフィルム(王子エフテックス社製「アルファンMA-411」、厚さ15μm)の粗面を、樹脂組成物層と接合するように積層した。これにより、離型PET(支持体)\樹脂組成物層\保護フィルムの層構成を有する樹脂シートを得た。
【0151】
(2)評価用回路基板の製造
下記手順で、評価用の回路基板を製造した。
【0152】
(2-1)基材の準備
基材として、片面に銅層を積層したシリコンウェハ(銅層の厚さ1μm、ウェハの厚さ0.8mm、8インチサイズ)を用意し、130℃のオーブンに投入して30分間乾燥した。
【0153】
(2-2)樹脂シートの積層
樹脂シートから保護フィルムを剥離し樹脂組成物層を露出させた。そして、バッチ式真空加圧ラミネーター(ニッコー・マテリアルズ社製2ステージビルドアップラミネーター「CVP700」)を用いて、樹脂組成物層が基材の銅層と接するように、基材の片面に積層した。この積層は、30秒間減圧して気圧を13hPa以下とした後、130℃、圧力0.74MPaにて45秒間圧着することにより実施した。次いで、120℃、圧力0.5MPaにて75秒間熱プレスして平滑化した。
【0154】
(2-3)樹脂組成物層の熱硬化
樹脂シートの積層後、積層体を、100℃のオーブンに投入して30分間加熱し、次いで180℃のオーブンに移し替えて30分間加熱し、樹脂組成物層を熱硬化した。その後、支持体を剥離した。こうして、基材上に樹脂組成物層の硬化物(絶縁層;厚さ20μm)が設けられた基板Aを得た。
【0155】
(2-4)デスミア処理
基板Aについて湿式デスミア処理を行った。詳細には、基板Aを、膨潤液(アトテックジャパン社製「スウェリング・ディップ・セキュリガンスP」、ジエチレングリコールモノブチルエーテル及び水酸化ナトリウムの水溶液)に60℃で5分間、次いで粗化液(アトテックジャパン社製「コンセントレート・コンパクトP」、KMnO4:60g/L、NaOH:40g/Lの水溶液)に80℃で15分間、最後に中和液(アトテックジャパン社製「リダクションソリューション・セキュリガンスP」、硫酸水溶液)に40℃で5分間、浸漬した後、80℃で30分間乾燥した。得られた基板を基板Bと称する。
【0156】
(2-5)めっきシード層の形成
基板Bの絶縁層の表面にめっきシード層を形成した。詳細には、基板Bの絶縁層の表面に、スパッタリング装置(キャノンアネルバ(株)製「E-400S」)を用いて、厚さ10nmの拡散バリア層(Ti層)を形成し、次いで厚さ50nmの導電シード層(Cu層)を形成することにより、厚さ60nmのめっきシード層を形成した。
【0157】
(2-6)導体層の形成
得られた基板を、150℃にて30分間加熱してアニール処理を行った。次いで、セミアディティブ法に従って、めっきレジストを形成し、露光・現像によるL/S=2/2μm(線幅1mm)の櫛刃パターンの形成後に、硫酸銅電解メッキを行い、2μmの厚さで導体層(導体パターン)を形成した。導体パターン形成後、200℃にて60分間加熱してアニール処理を行った。得られた基板を基板Cと称する。
【0158】
[実施例2]
実施例1と同様にして、樹脂シートを作製し、基板A、基板Bを製造した。そして、めっきシード層の形成において、導電シード層(Cu層)の厚さを50nmから100nmに変更し厚さ110nmのめっきシード層を形成した以外は、実施例1と同様にして、基板Cを形成した。
【0159】
[実施例3]
実施例1と同様にして、樹脂シートを作製し、基板A、基板Bを製造した。そして、シード層の形成において、導電シード層(Cu層)の厚さを50nmから150nmに変更し厚さ160nmのめっきシード層を形成した以外は、実施例1と同様にして、基板Cを形成した。
【0160】
[実施例4]
樹脂組成物1に代えて樹脂組成物2を使用した以外は、実施例1と同様にして、樹脂シートを作製した。得られた樹脂シートを用いて、実施例1と同様にして、基板Aを製造した。
【0161】
実施例4では、基板Aについて乾式デスミア処理を行った。詳細には、プラズマドライエッチング装置(オックスフォード・インストゥルメンツ社製「PlasmaPro100」)を使用して、Ar/SF6/O2を混合比10:40:8(sccm)にて、真空度:50mTorr、RF電力:120W、ICP電力:0Wの条件にて、基板Aを2分間処理して、基板Bを得た。
【0162】
そして、めっきシード層の形成において、導電シード層(Cu層)の厚さを50nmから100nmに変更し厚さ110nmのめっきシード層を形成した以外は、実施例1と同様にして、基板Cを形成した。
【0163】
[比較例1]
樹脂組成物1に代えて樹脂組成物2を使用した以外は、実施例1と同様にして、樹脂シートを作製し、基板A、基板Bを製造した。そして、めっきシード層の形成において、導電シード層(Cu層)の厚さを50nmから100nmに変更し厚さ110nmのめっきシード層を形成した以外は、実施例1と同様にして、基板Cを形成した。
【0164】
[比較例2]
樹脂組成物1に代えて樹脂組成物3を使用した以外は、実施例1と同様にして、樹脂シートを作製し、基板A、基板Bを製造した。そして、めっきシード層の形成において、導電シード層(Cu層)の厚さを50nmから200nmに変更し厚さ210nmのめっきシード層を形成した以外は、実施例1と同様にして、基板Cを形成した。
【0165】
[参考例1]
樹脂組成物1に代えて樹脂組成物2を使用した以外は、実施例1と同様にして、樹脂シートを作製し、基板A、基板Bを製造した。そして、めっきシード層の形成において、導電シード層(Cu層)の厚さを50nmから300nmに変更し厚さ310nmのめっきシード層を形成した以外は、実施例1と同様にして、基板Cを形成した。
【0166】
各種測定方法・評価方法について説明する。
【0167】
<厚さの測定>
樹脂組成物層等の厚さは、接触式膜厚計(ミツトヨ社製「MCD-25MJ」)を用いて、測定した。
【0168】
<絶縁層表面の粗度の測定>
実施例、比較例及び参考例で製造した基板Bについて、絶縁層表面の算術平均粗さ(Ra)を測定した。測定には、非接触3次元表面形状粗さ測定システム(ブルカー・エイエックス社製「Wyko GT-X3」)を用いた。
【0169】
<配線形状(めっき焼け)の評価>
実施例、比較例及び参考例で製造した基板Cについて、形成した導体パターンを、光学顕微鏡(ハイロックス社製「KH8700」)で観察した。詳細には、導体パターンを、光学顕微鏡(CCD)を用いて拡大し、形状の確認を行った。L/S=2/2μmの櫛刃パターンについて、無作為に高さ2μm、長さ1mmの配線を20本観察した。20本の配線における異常析出部の個数をカウントし、50個以上の異常析出部が観察される場合は「×」(不良)、異常析出部が50個より少ない場合は「〇」(良)とした。
【0170】
実施例、比較例及び参考例の測定結果、評価結果を下記表2に示す。
【0171】
【0172】
厚さが250nm超であるめっきシード層を形成する参考例1は、めっきシード層自体の厚さ等に起因して微細配線化への寄与は限定的である。斯かる参考例1のように比較的厚いめっきシード層を形成する場合は、算術平均粗さ(Ra)が100nm超である絶縁層の表面に導体パターンを形成する場合であっても、めっき焼けはさほど生じない(従来技術において本発明が解決しようとする課題は知見されていなかったことの証左である)。
更なる微細配線化を実現すべく、厚さが250nm以下と薄いめっきシード層を形成する場合、絶縁層表面のRaが100nm超であると、めっき焼けが著しく生じることが確認された(比較例1、2)。
これに対し、Raが100nm以下である絶縁層表面に厚さ250nm以下のめっきシード層を形成する工程を含む実施例1~4では、めっき焼けを著しく抑制しつつ、L/S=2/2μmにて薄型の導体パターンを形成できることが確認され、回路基板の微細配線化に著しく寄与することが実証された。