(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022077428
(43)【公開日】2022-05-23
(54)【発明の名称】給水装置
(51)【国際特許分類】
F04B 49/08 20060101AFI20220516BHJP
F04D 15/00 20060101ALI20220516BHJP
F04B 49/02 20060101ALI20220516BHJP
【FI】
F04B49/08 311
F04D15/00 F
F04D15/00 J
F04B49/02 311
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020188291
(22)【出願日】2020-11-11
(71)【出願人】
【識別番号】000148209
【氏名又は名称】株式会社川本製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】坂谷 哲則
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 章太
【テーマコード(参考)】
3H020
3H145
【Fターム(参考)】
3H020AA05
3H020BA02
3H020BA03
3H020BA21
3H020CA02
3H020CA04
3H020DA01
3H020EA02
3H020EA03
3H020EA11
3H020EA12
3H020EA17
3H145AA16
3H145AA23
3H145BA03
3H145BA07
3H145BA22
3H145BA41
3H145CA04
3H145CA06
3H145CA25
3H145DA01
3H145EA13
3H145EA14
3H145EA37
3H145EA38
3H145EA50
(57)【要約】
【課題】 蓄圧装置に異常が発生したか否かを特許文献1に比べて精度よく判断することが可能な給水装置の一例を開示する。
【解決手段】 給水装置1は、現実に計時した停止時間Tsを利用して決定された基準停止時間Tsoと停止時間Tsとを比較して蓄圧装置5の異常を判断する。したがって、精度よく蓄圧装置5の異常を判断することが可能となり得る。なお、停止時間Tsとは、電動ポンプ3が停止した時から起動制御により当該電動ポンプ3が起動した時まで時間をいう。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
給水用の電動ポンプと、
前記電動ポンプの吐出し流量を検出する流量センサと、
給水圧を検出する圧力センサと、
前記電動ポンプの吐出し側に接続され、当該電動ポンプが停止しているときに給水圧を保持する蓄圧装置と、
前記電動ポンプの停止及び稼働を制御する制御部であって、前記電動ポンプの吐出し流量が予め決められた流量(以下、停止流量という。)以下となったときに前記電動ポンプを停止させる小水量停止制御、及び前記電動ポンプが停止している状態において、給水圧が予め決められた圧力以下となったときに当該電動ポンプを起動させる起動制御を少なくとも実行可能な制御部とを備え、
前記電動ポンプが前記小水量停止制御により停止した時から前記起動制御により当該電動ポンプが起動した時まで時間を停止時間としたとき、
前記制御部は、
前記停止時間を計時する停止時間計時機能、
前記停止時間と基準停止時間との比較を利用して前記蓄圧装置に異常が発生したか否かを判断する異常判断機能、並びに
電源投入後、前記小水量停止制御により前記電動ポンプが停止したときに計時した前記停止時間を利用して前記基準停止時間を決定・記憶する基準停止時間決定機能
を実行可能である給水装置。
【請求項2】
給水用の電動ポンプと、
前記電動ポンプの吐出し流量を検出する流量センサと、
給水圧を検出する圧力センサと、
前記電動ポンプの吐出し側に接続され、当該電動ポンプが停止しているときに給水圧を保持する蓄圧装置と、
前記電動ポンプの停止及び稼働を制御する制御部であって、前記電動ポンプの吐出し流量が予め決められた流量(以下、停止流量という。)以下となったときに前記電動ポンプを停止させる小水量停止制御、及び前記電動ポンプが停止している状態において、給水圧が予め決められた圧力以下となったときに当該電動ポンプを起動させる起動制御を少なくとも実行可能な制御部とを備え、
前記電動ポンプが前記小水量停止制御により停止した時から前記起動制御により当該電動ポンプが起動した時まで時間を停止時間としたとき、
前記制御部は、
前記停止時間を計時する停止時間計時機能、
前記停止時間と基準停止時間との比較を利用して前記蓄圧装置に異常が発生したか否かを判断する異常判断機能、並びに
電源投入後、前記小水量停止制御により最初に前記電動ポンプが停止したときに計時した前記停止時間(以下、初回停止時間という。)を利用して前記基準停止時間を決定・記憶する基準停止時間決定機能
を実行可能である給水装置。
【請求項3】
1より小さい予め決められた値を係数値としたとき、
前記基準停止時間決定機能の実行時において、前記制御部は、前記初回停止時間に前記係数値を乗算した値を前記基準停止時間として決定・記憶する請求項2に記載の給水装置。
【請求項4】
前記異常判断機能の実行時において、前記制御部は、予め決められた時間内に前記停止時間が前記基準停止時間以下となった回数が予め決められた回数以上となったときに、前記蓄圧装置に異常が発生したと判断する請求項1ないし3のいずれか1項に記載の給水装置。
【請求項5】
前記制御部は、作業者により操作されたときに前記停止時間計時機能により計時された前記停止時間を利用して前記基準停止時間を再決定する基準停止時間再決定機能を実行可能である請求項1ないし4のいずれか1項に記載の給水装置。
【請求項6】
前記蓄圧装置の吐出し側に設けられた手動式の開閉バルブと、
前記制御部から発信された警告信号を受信したときに、警告を発する警告器とを備え、
前記制御部は、予め決められた時間内に、前記停止時間が予め決められた第2の基準停止時間以下となった回数が予め決められた回数以上となったときに、前記開閉バルブが閉じている旨の警告信号を発信する請求項1ないし5のいずれか1項に記載の給水装置。
【請求項7】
外部と無線通信可能な通信部を備え、
前記制御部は、前記蓄圧装置の異常を判断したときに、前記通信部を介して前記蓄圧装置に異常が発生した旨を発信する請求項1ないし6のいずれか1項に記載の給水装置。
【請求項8】
給水用の電動ポンプと、
前記電動ポンプの吐出し流量を検出する流量センサと、
給水圧を検出する圧力センサと、
前記電動ポンプの吐出し側に接続され、当該電動ポンプが停止しているときに給水圧を保持する蓄圧装置と、
前記電動ポンプの停止及び稼働を制御する制御部と、
情報を記憶可能な記憶部とを備え、
前記電動ポンプが停止した時から当該電動ポンプが起動した時まで時間を停止時間としたとき、
前記制御部は、
前記停止時間を計時する停止時間計時機能、
前記停止時間と基準停止時間との比較を利用して前記蓄圧装置に異常が発生したか否かを判断する異常判断機能、並びに
前記基準停止時間が前記記憶部に記憶されていない状態において、前記電動ポンプが停止したときに計時した前記停止時間を利用して前記基準停止時間を決定し、当該決定された前記基準停止時間を前記記憶部に記憶させる基準停止時間決定機能
を実行可能である給水装置。
【請求項9】
前記停止時間が予め決められた時間より長い場合には、前記制御部は、当該停止時間を前記異常判断機能に利用しない請求項1ないし8のいずれか1項に記載の給水装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電動ポンプ及び蓄圧装置等を備える給水装置に関する。
【背景技術】
【0002】
蓄圧装置は、電動ポンプが停止しているときに給水圧を保持する。そして、制御部は、給水圧が予め決められた圧力以下となったときに電動ポンプを起動させる。このため、蓄圧装置に異常が発生すると、給水圧を保持可能な時間が短くなるので、電動ポンプが頻繁に起動及び停止してしまう。
【0003】
そこで、例えば、特許文献1に記載の給水装置では、電動ポンプが停止している時間を予め決められた所定時間と比較し、当該停止している時間が所定時間以下となる回数が所定回数以上となったときに、蓄圧装置に異常が発生したとみなしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の給水装置では、予め決められた固定値である所定時間と現実に電動ポンプが停止している時間と比較するので、蓄圧装置の異常を正確に判断できない可能性がある。
【0006】
本開示は、上記点に鑑み、蓄圧装置に異常が発生したか否かを特許文献1に比べて精度よく判断することが可能な給水装置の一例を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
給水装置は、例えば、給水用の電動ポンプ(3)と、電動ポンプ(3)の吐出し流量を検出する流量センサ(Fs1~Fs3)と、給水圧を検出する圧力センサ(Ps)と、電動ポンプ(3)の吐出し側に接続され、当該電動ポンプ(3)が停止しているときに給水圧を保持する蓄圧装置(5)と、電動ポンプ(3)の停止及び稼働を制御する制御部(10)と、情報を記憶可能な記憶部(11)とを備え、制御部(10)は、停止時間(Ts)を計時する停止時間計時機能、停止時間(Ts)と基準停止時間(Tso)との比較を利用して蓄圧装置(5)に異常が発生したか否かを判断する異常判断機能、並びに電動ポンプ(3)が停止したときに計時した停止時間を利用して基準停止時間(Tso)を決定・記憶する基準停止時間決定機能を実行可能であることが望ましい。
【0008】
なお、停止時間(Ts)とは、電動ポンプ(3)が停止した時から起動制御により当該電動ポンプ(3)が起動した時まで時間をいう。
【0009】
これにより、当該給水装置では、現実に計時した停止時間を利用して決定された基準停止時間(Tso)と停止時間(Ts)とを比較して蓄圧装置(5)の異常を判断するので、特許文献1に比べて精度よく蓄圧装置(5)の異常を判断することが可能となり得る。
【0010】
因みに、上記各括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的構成等との対応関係を示す一例であり、本開示は上記括弧内の符号に示された具体的構成等に限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】第1実施形態に係る給水装置を示す図である。
【
図2】第1実施形態に係る給水装置のブロック図である。
【
図5】基準停止時間再決定機能を示すフローチャートである。
【
図6】バルブ閉判定機能を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下の「発明の実施形態」は、本開示の技術的範囲に属する実施形態の一例を示すものである。つまり、特許請求の範囲に記載された発明特定事項等は、下記の実施形態に示された具体的構成や構造等に限定されない。
【0013】
少なくとも符号が付されて説明された機器や部材等の構成要素は、「1つの」等の断りがされた場合を除き、少なくとも1つ設けられている。つまり、「1つの」等の断りがない場合には、当該構成要素は2以上設けられていてもよい。本開示に示された給水装置は、少なくとも符号が付されて説明された構成要素等を備える。
【0014】
(第1実施形態)
<1.給水装置の概要>
本実施形態は、例えば、マンションや商業ビル等の建物に適用される給水装置に本開示に係る給水装置の一例が適用されたものである。
図1に示されるように、本実施形態に係る給水装置1は、電動ポンプ3、蓄圧装置5及び制御盤7等を少なくとも備える。なお、本実施形態では、複数(例えば、3つ)の電動ポンプ3が設けられている。
【0015】
各電動ポンプ3は、全て同一構造である。具体的には、各電動ポンプ3は、
図2に示されるように、ポンプ部3A及びモータ部3Bを有する電動式のポンプである。各電動ポンプ3の吐出し口から吐出された水は、
図1に示されるように、各連結管4Aを介して合流管4Bに集合する。
【0016】
合流管4Bは建物の配水管(図示せず。)に接続される。以下、給水装置1の給水量とは、合流管4Bから配水管に供給される流量をいう。合流管4Bには、蓄圧装置5が設けられている。蓄圧装置5は、電動ポンプ3が停止しているときに給水圧を保持する。当該蓄圧装置5の吐出し側には、手動式の開閉バルブ5Aが設けられている。
【0017】
なお、本実施形態に係る蓄圧装置5は、ガス室を構成する容器及びダイヤフラム等を有するアキュムレータにて構成されている。ガス室には、窒素ガス等の不活性ガスが充填されている。ダイヤフラムは、容器内の空間をガス室と給水圧が作用する空間とに仕切る変形可能な膜材である。
【0018】
各電動ポンプ3の作動は制御部10により制御される。制御部10は制御盤7内に収納されている。なお、本実施形態に係る制御部10は、
図2に示されるように、駆動回路(本実施形態では、インバータ方式の駆動回路)3Cを介して各電動ポンプ3を制御する。
【0019】
各駆動回路3Cは、制御部10から出力される指令周波数に応じた周波数を有する駆動電流を対応するモータ部3Bに供給する。これにより、モータ部3Bの回転数、つまりポンプ部3Aが制御部10により可変制御される。
【0020】
制御部10には、流量センサFs1~Fs3それぞれの検出値及び圧力センサPsの検出値が入力されている。各流量センサFs1~Fs3は、対応する電動ポンプ3の吐出し流量を検出する。圧力センサPsは、給水装置1の給水圧を検出する。具体的には、圧力センサPsは、合流B管内の水圧を検出する(
図1参照)。
【0021】
<2.制御部の制御>
<2.1 制御の概要>
制御部10は、各電動ポンプ3の停止及び稼働を制御する。つまり制御部10は、各駆動回路3Cの出力を制御する。制御部10は、例えば、CPU、ROM及びRAM等を有するマイクロコンピュータ等にて構成されている。
【0022】
制御部10内又は制御部10外(本実施形態では、制御部10内)には、記憶部11及び通信部13が設けられている。記憶部11は、給水装置1の制御を実行する際に利用される各種パラメータ等の情報を記憶するための不揮発性記憶装置である。
【0023】
通信部13は、外部と有線又は無線にて通信可能である。給水装置1は警報装置15を有する。警報装置15は、制御部10からの指令を受信すると、音声や光等の作業者が認識可能な警報を発信する。
【0024】
制御部10は、各電動ポンプ3の制御モードとして、小水量停止制御、起動制御、目標圧力制御、増台制御及び減台制御等が実行可能である。制御部10は、それらの制御を独立並列的に実行する。
【0025】
つまり、例えば、本実施形態では、小水量停止制御の実行後に起動制御が実行される構成ではなく、小水量停止制御と起動制御とは、それぞれ独立して並列的に実行される。なお、制御部10は、ROM等の不揮発性記憶部(図示せず。)に予め記憶されたプログラムに従って各制御を実行する。
【0026】
<小水量停止制御>
小水量停止制御は、流量センサFs1~Fs3の検出流量が予め決められた流量(以下、停止流量Qsという。)まで低下したときに、検出した流量が停止流量Qs以下となった流量センサに対応する電動ポンプ3を停止させる制御である。
【0027】
なお、下記の減台制御により、稼働している電動ポンプ3の台数が漸次減少し、最後の1台の電動ポンプ3から吐き出される流量が停止流量Qsまで低下すると、複数の電動ポンプ3の全てが停止する。
【0028】
<起動制御>
起動制御は、全ての電動ポンプ3が停止した後、圧力センサPsの検出圧力が予め決められた圧力(以下、起動圧力Psuという。)以下となったときに、予め決められた規則に従って、複数の電動ポンプ3のうちいずれかの電動ポンプ3を起動させる制御である。
【0029】
なお、本実施形態に係る制御部10は、全ての電動ポンプ3が停止した状態から最初に起動させる電動ポンプ3(以下、先発ポンプという。)を、例えば、次のルールに従って決定する。
【0030】
すなわち、
図1に示された3つの電動ポンプ3のうち、左側から順に1号機、2号機、3号機としたとき、制御部10は、1号機→2号機→3号機→1号機→2号機→3号機→・・・・の順に先発ポンプを変更する。
【0031】
<目標圧力制御>
目標圧力制御は、圧力センサPsの検出圧力が目標とする圧力(以下、目標圧力Ptという。)となるように稼働している1つ又は複数の電動ポンプ3を調整する制御である。つまり、制御部10は、検出圧力が目標圧力Ptに近づくように指令周波数を変化させる。
【0032】
なお、目標圧力Ptと起動圧力Psuとは、同一の圧力又は異なる圧力のいずれであってもよい。本実施形態では、目標圧力Ptは起動圧力Psuより大きい圧力である。目標圧力Ptは、固定値又は給水量の関数値等であってもよい。
【0033】
<増台制御 減台制御>
増台制御は、稼働している電動ポンプ3のみで十分な給水量を確保できなくなったときに、停止している電動ポンプ3を稼働させる制御である。減台制御は、増台制御と逆に、稼働している電動ポンプ3の台数を漸次減らしていく制御である。
【0034】
なお、十分な給水量を確保できなくなったときとは、例えば、稼働している電動ポンプ3に対する指令周波数が予め決められた上限周波数に到達している状態で、圧力センサPsの検出圧力が目標圧力を下回っているとき等である。
【0035】
<2.2 蓄圧装置の異常判定制御>
<異常判定制御の概要>
制御部10は、蓄圧装置5の異常判定制御も実行可能である。異常判定制御は、蓄圧装置5の給水圧を保持する能力(以下、蓄圧能力という。)に異常が発生したか否か、つまり蓄圧能力が大きく低下したか否かを判定する制御である。
【0036】
異常判定制御は、少なくとも、停止時間計時機能、異常判断機能及び基準停止時間決定機能等の機能が制御部10にて実行されることにより実現される。なお、それら機能を実行するためのプログラムは、ROM等の不揮発性記憶部(図示せず。)に予め記憶されている。
【0037】
<停止時間計時機能>
停止時間計時機能は、停止時間Tsを計時する機能である。停止時間Tsとは、電動ポンプ3が停止した時から当該電動ポンプ3が起動した時まで時間をいう。そして、本実施形態では、電動ポンプ3が小水量停止制御により停止した時から起動制御により電動ポンプ3が起動した時まで時間を停止時間Tsとしている。
【0038】
本実施形態に係る制御部10は、停止時間計時機能の実行時において、電動ポンプ3が停止した時からの経過時間が予め決められた時間(以下、休止時間Tpという。)を経過した場合には、停止時間Tsの計時を停止する。つまり、計時された停止時間Tsが休止時間Tpより長い場合には、制御部10は、当該停止時間Tsを異常判断機能に利用しない。
【0039】
換言すれば、本実施形態に係る停止時間Tsは、休止時間Tpより短い時間である。休止時間Tpとは、給水需要が0となり、蓄圧装置5からの吐出し流量も0となって給水装置1が休止状態になったとみなすことが可能な時間である。本実施形態に係る休止時間Tpは、約10秒である。
【0040】
<異常判断機能>
異常判断機能は、停止時間Tsと基準停止時間Tsoとの比較を利用して蓄圧装置5に異常が発生したか否かを判断する機能である。基準停止時間Tsoとは、蓄圧装置5に異常が発生していない場合の停止時間Tsである。
【0041】
なお、基準停止時間Tsoは、給水装置1が設置された建物の給水環境の影響を強く受けるパラメータである。つまり、同一の給水装置であっても、当該給水装置が設置された建物の給水環境が異なると、起動圧力Psuが異なるため、基準停止時間Tsoも異なる値となる。このため、予め適切な基準停止時間Tsoを決定することは難しい。
【0042】
具体的には、異常判断機能の実行時において、制御部10は、予め決められた時間(以下、監視時間という。)内に停止時間Tsが基準停止時間Tso以下となった回数(以下、異常計数値という。)が予め決められた回数(例えば、10回)以上となったときに、蓄圧装置5に異常が発生したと判断する。なお、本実施形態に係る監視時間は、約10分である。
【0043】
<基準停止時間決定機能>
基準停止時間決定機能は、基準停止時間Tsoを決定し、その決定された停止時間Tsを記憶部11に記憶させる機能である。制御部10は、蓄圧装置5に異常が発生していないとみなすこと可能なときに基準停止時間決定機能を実行する。
【0044】
蓄圧装置5に異常が発生していないとみなすことが可能なときとは、例えば、(a)給水装置1の設置後、最初の電源スイッチ(図示せず。)が投入されたとき、(b)小水量停止制御による停止回数が予め決められた回数(例えば、10回)以下のとき、又は(c)給水装置1の設置後の経過日数が予め決められた日数(例えば、1日)以下のとき等である。
【0045】
そして、制御部10は、電動ポンプ3が停止したときに計時した停止時間を利用して基準停止時間Tsoを決定し、その決定された基準停止時間Tsoを記憶部11に記憶させる。なお、本実施形態に係る制御部10は、基準停止時間Tsoが記憶部11に記憶されていないときに、基準停止時間決定機能を実行する。
【0046】
その理由は、基準停止時間Tsoが記憶部11に記憶されていないときは、最初の電源スイッチが投入されたとき、又は最初の小水量停止制御による停止時とみなすことが可能だからである。
【0047】
このため、本実施形態では、多くの場合、小水量停止制御により最初に電動ポンプ3が停止したときに計時した停止時間(以下、初回停止時間Ts1という。)が利用されて基準停止時間Tsoが決定される。
【0048】
具体的には、制御部10は、基準停止時間決定機能の実行時において、初回停止時間Ts1に係数値kを乗算した値(=Ts1×k)を基準停止時間Tsoとして決定する。なお、係数値kは、1より小さい予め決められた値(例えば、0.6)である。
【0049】
<異常判定制御の詳細>
図3及び
図4は、異常判定制御の制御フローの一例を示すフローチャートである。異常判定制御は、給水装置1の電源スイッチが投入されたときに起動し、電源スイッチが遮断されたときに停止する。
【0050】
給水装置1の電源スイッチが投入されと、制御部10は、小水量停止制御により全ての電動ポンプ3が停止したか否かを判断する(S1)。小水量停止制御により全ての電動ポンプ3が停止したと判断された場合には(S1:YES)、制御部10は、停止時間Tsの計時を開始する(S2)。
【0051】
次に、制御部10は、起動制御により先発ポンプが起動したか否かを判断する(S3)。先発ポンプが起動したと判断された場合には(S3:YES)、制御部10は、停止時間Tsの計時を停止した後(S4)、基準停止時間Tsoが記憶部11に記憶されているか否かを判断する(S5)。
【0052】
なお、本実施形態に係る制御部10は、基準停止時間Tsoが記憶部11に記憶されていることを示すフラグが1の場合には、基準停止時間Tsoが記憶されていると判断し、当該フラグが0の場合には、基準停止時間Tsoが記憶されていないと判断する。
【0053】
基準停止時間Tsoが記憶部11に記憶されていないと判断された場合には(S5:NO)、制御部10は、その計時された停止時間Tsが休止時間Tp以下であるか否かを判断する(S6)。
【0054】
停止時間Tsが休止時間Tp以下であると判断された場合には(S6:YES)、当該停止時間Tsを利用して基準停止時間Tsoを決定した後(S7)、その決定した基準停止時間Tsoを記憶部11に記憶させるとともに、上記のフラグを1とする(S8)。
【0055】
なお、上記のフラグの初期値は0である。つまり、給水装置1が据え付けられた時点のフラグは0である。したがって、基準停止時間Tsoが記憶されていない場合(S5:NO)の停止時間Tsは、初回停止時間Ts1に該当する。
【0056】
制御部10は、基準停止時間Tsoを記憶部11に記憶した後、S11を実行する。なお、停止時間Tsが休止時間Tp以下でない、つまり停止時間Tsが休止時間Tpより長い場合には(S6:NO)、制御部10は、再び、S1を実行する。
【0057】
また、基準停止時間Tsoが記憶されていると判断された場合には(S5:YES)、制御部10は、停止時間Tsが基準停止時間Tso以下であるか否かを判断する(S9)。停止時間Tsが基準停止時間Tso以下であると判断された場合には(S9:YES)、制御部10は、異常計数値を1だけ増加させる(S10)。
【0058】
停止時間Tsが基準停止時間Tso以下でないと判断された場合(S9:NO)、又はS9が実行された後、制御部10は、監視時間が0又は所定時間(本実施形態では、10分)を越えたか否かを判断する(S11)。
【0059】
監視時間が0でない所定時間以下であると判断された場合には(S11:NO)、制御部10は、異常計数値が所定値(本実施形態では、10)以上であるか否かを判断する(S12)。異常計数値が所定値以上でないと判断された場合には(S12:NO)、制御部10は、再び、S1を実行する。
【0060】
異常計数値が所定値以上であると判断された場合には(S12:YES)、制御部10は、通信部13を介して蓄圧装置5に異常が発生した旨を発信するとともに、警報装置15に警報指令を送信する(S13)。
【0061】
また、監視時間が0又は所定時間を越えたと判断された場合には(S11:YES)、制御部10は、異常計数値を0に再設定するとともに(S14)、監視時間の計時を開始した後(S15)、再び、S1を実行する。
【0062】
<3.本実施形態に係る給水装置の特徴>
本実施形態に係る給水装置1では、現実に計時した停止時間Tsを利用して決定された基準停止時間Tsoと停止時間Tsとを比較して蓄圧装置5の異常を判断する。したがって、特許文献1に比べて精度よく蓄圧装置5の異常を判断することが可能となり得る。
【0063】
蓄圧装置5に異常が発生した場合には、通信部13を介してその旨が送信される。したがって、給水装置1の管理会社や、その担当者に、早期のメンテナンスを促すことが可能となる。
【0064】
なお、蓄圧装置5に異常が発生した場合に、異常が発生した旨に加えて、異常が発生した日付、時刻、及び給水圧等の運転情報を管理会社等に送信する構成が望ましい。その理由は、当該情報は、異常発生原因等の調査に資するからである。
【0065】
本実施形態では、停止時間Tsが予め決められた時間より長い場合には、制御部10は、当該停止時間Tsを異常判断機能に利用しない。これにより、蓄圧装置5に異常が発生したか否かを精度良く判断でき得る。
【0066】
すなわち、電動ポンプ3が停止した状態で蓄圧装置5からの吐出し流量が0より大きい状態とは、給水装置1は休止状態となっておらず、蓄圧装置5から建物に給水している状態である。電動ポンプ3が停止した状態で蓄圧装置5からの吐出し流量が0になった状態では、給水装置1は休止状態となり、建物への給水が停止している状態である。
【0067】
蓄圧装置5に異常が発生した場合には、蓄圧装置5から建物に給水している時間が短くなる。そして、本実施形態では、この「蓄圧装置5から建物に給水している時間」が停止時間Tsに相当する。
【0068】
電動ポンプ3が停止し、かつ、蓄圧装置5から建物に給水している状態を検出するには、微量な流量(例えば、10L/min以下)を検出可能な流量センサが必要である。しかし、そのような流量センサは、給水装置の製造原価上昇を招く。
【0069】
そこで、本実施形態では、電動ポンプ3の停止した時からの経過時間が所定時間(休止時間Tp)を越えた場合には、給水装置1は休止状態になったとみなして、その際に計時した停止時間Tsを異常判断機能に利用しない。
【0070】
したがって、本実施形態は、「現実に蓄圧装置5から建物に給水している時間」と基準停止時間Tsoとを比較した場合と同等の結果を得ることが可能となるので、蓄圧装置5に異常が発生したか否かを精度良く判断でき得る。
【0071】
(第2実施形態)
本実施形態に係る給水装置1、つまり制御部10は、基準停止時間Tsoを再決定する基準停止時間再決定機能が実行可能である。
【0072】
すなわち、本実施形態では、制御盤7内に再設定スイッチ(図示せず。)が設けられている。制御部10は、作業者により再設定スイッチが操作されたときに、停止時間計時機能により計時された停止時間Tsを利用して基準停止時間Tsoを再決定する。
【0073】
これにより、蓄圧装置5が修理又は交換等がされた場合に、作業者は、基準停止時間Tsoを容易に再設定することができる。
【0074】
なお、
図5は、基準停止時間再決定機能を実行するための制御フローの一例を示すフローチャートである。当該制御は、上記の各制御に対して独立並列的に実行される。当該機能を実行するためのプログラムは、ROM等の不揮発性記憶部(図示せず。)に予め記憶されている。
【0075】
基準停止時間再決定機能は、給水装置1の電源スイッチが投入されたときに起動し、電源スイッチが遮断されたときに停止する。当該機能が起動されると、制御部10は、再設定スイッチが投入されたか否かを判断する(S21)。
【0076】
再設定スイッチが投入されたと判断された場合には(S21:YES)、制御部10は、上記のフラグを初期値(=0)とし(S22)、記憶部11に記憶されている基準停止時間Tsoを消去し(S23)、異常計数値を0とし(S24)、かつ、監視時間を0とする(S25)。
【0077】
そして、フラグが初期値とされ、記憶部11に記憶されている基準停止時間Tsoが消去される状態で、上記した
図2及び
図3に示された制御が実行されるため、基準停止時間Tsoが自動的に再設定される。
【0078】
なお、上述の実施形態と同一の構成要件等は、上述の実施形態と同一の符号が付されている。このため、本実施形態では、重複する説明は省略されている。
【0079】
(第3実施形態)
本実施形態に係る給水装置1は、蓄圧装置5の吐出し側に設けられた手動式の開閉バルブ5A(
図1参照)が閉じているか否かを判断する機能(以下、バルブ閉判定機能という。)が実行可能である。
【0080】
なお、開閉バルブ5Aが閉じていると、ガス室の圧力が合流管4B内の水に作用しないので、蓄圧装置5の給水圧を保持することができない。このため、給水装置1は、蓄圧装置5に異常が発生した状態と同様な挙動状態となる。
【0081】
そこで、制御部10は、予め決められた第2の監視時間内に、停止時間Tsが予め決められた第2の基準停止時間Tso2以下となった回数が予め決められた回数(例えば、2回)以上となったときに、開閉バルブ5Aが閉じている旨の警告信号を発信する。
【0082】
第2の監視時間は、第1実施形態に係る監視時間以上の時間(例えば、10分)である。第2の基準停止時間Tso2は、基準停止時間Tsoに比べて十分に短い時間(例えば、1秒)である。
【0083】
なお、
図6は、バルブ閉判定機能を実行するための制御フローの一例を示すフローチャートである。当該制御は、上記の各制御に対して独立並列的に実行される。当該機能を実行するためのプログラムは、ROM等の不揮発性記憶部(図示せず。)に予め記憶されている。
【0084】
バルブ閉判定機能は、給水装置1の電源スイッチが投入されたときに起動し、電源スイッチが遮断されたときに停止する。当該機能が起動されると、制御部10は、第2の監視時間が0又は所定時間を越えているか否かを判断する(S31)。
【0085】
第2の監視時間が0でない所定時間(本実施形態では、10分)以下であると判断された場合には(S11:NO)、制御部10は、S2~S4にて計時された停止時間Tsが第2の基準停止時間Tso2以下であるか否かを判断する(S32)。
【0086】
停止時間Tsが第2の基準停止時間Tso2以下であると判断された場合には(S32:YES)、制御部10は、第2の異常計数値を1だけ増加させた後(S33)、第2の異常計数値が所定値(本実施形態では、2)以上であるか否かを判断する(S34)。
【0087】
第2の異常計数値が所定値以上でないと判断された場合(S34:NO)、又は停止時間Tsが第2の基準停止時間Tso2以下でないと判断された場合には(S32:NO)、制御部10は、再び、S31を実行する。
【0088】
第2の異常計数値が所定値以上であると判断された場合には(S34:YES)、制御部10は、通信部13を介して開閉バルブ5Aが閉状態である旨を発信するとともに、警報装置15に警報指令を送信する(S35)。
【0089】
また、第2の監視時間が0又は所定時間を越えたと判断された場合には(S31:YES)、制御部10は、第2の異常計数値を0に再設定するとともに(S36)、第2の監視時間の計時を開始した後(S37)、再び、S31を実行する。
【0090】
なお、上述の実施形態と同一の構成要件等は、上述の実施形態と同一の符号が付されている。このため、本実施形態では、重複する説明は省略されている。
【0091】
(その他の実施形態)
上述の実施形態では、休止時間Tpより短い停止時間Tsのみを異常判断機能に利用した。これは、蓄圧装置5からの吐出し流量も0となって給水装置1が休止状態になった場合に計時された停止時間Tsを除外するためである。
【0092】
したがって、本開示は、蓄圧装置5からの吐出し流量も0となって給水装置1が休止状態になった場合に計時された停止時間Tsを除外可能であれば、十分であり、上記の構成に限定されない。
【0093】
すなわち、当該開示は、例えば、監視時間内に停止時間Tsが基準停止時間Tso以下となり、かつ、当該停止時間Ts中に蓄圧装置5から吐き出される流量が停止流量Qs以下の所定範囲の流量となる回数が予め決められた回数以上となったときに、蓄圧装置5に異常が発生したと判断する構成であってよい。
【0094】
つまり、当該開示は、停止流量Qs未満の流量を下限流量Qmとしたとき、(a)停止時間Tsの計時が開始された時以降において、合流管4B内を流通する流量が下限流量Qm未満となった時には、起動制御により電動ポンプ3が起動する前であっても停止時間Tsの計時を途中終了する構成、又は(b)合流管4B内を流通する流量が下限流量Qm未満となる状態で、計時された停止時間Tsを異常判断機能に利用しない構成であってもよい。
【0095】
上述の実施形態では、3台の電動ポンプ3を備える給水装置であった。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、少なくとも1台の電動ポンプ3を備える給水装置にも適用可能である。
【0096】
上述の実施形態では、1台の駆動回路で1台の電動ポンプ3を駆動する給水装置であった。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、1台の駆動回路で複数の電動ポンプ3を駆動する給水装置であってもよい。
【0097】
上述の実施形態では、1台の制御部10で複数の駆動回路を制御する給水装置であった。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、駆動回路毎に1台の制御部10を備える給水装置であってもよい。
【0098】
上述の実施形態では、初回停止時間Ts1を利用して基準停止時間Tsoを決定した。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、10回目の停止時間Ts、又は給水装置1の設置後、24時間以上経過したときの停止時間Tsを利用して基準停止時間Tsoを決定してもよい。
【0099】
上述の実施形態では、初回停止時間Ts1に係数値kを乗算した値を基準停止時間Tsoとした。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、初回停止時間Ts1をそのまま基準停止時間Tsoとしてもよい。
【0100】
上述の実施形態では、小水量停止制御により停止した時から起動制御により電動ポンプ3が起動した時まで時間を停止時間Tsとした。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、電動ポンプ3が初めて停止した時から電動ポンプ3が起動した時まで時間を停止時間Tsとしてもよい。
【0101】
上述の実施形態では、監視時間内に停止時間Tsが基準停止時間Tso以下となった回数が予め決められた回数以上となったときに、蓄圧装置5に異常が発生したと判断した。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、停止時間Tsが基準停止時間Tso以下となったときに、蓄圧装置5に異常が発生したと判断してもよい。
【0102】
さらに、本開示は、上述の実施形態に記載された開示の趣旨に合致するものであればよく、上述の実施形態に限定されない。したがって、上述した複数の実施形態のうち少なくとも2つの実施形態が組み合わせられた構成、又は上述の実施形態において、図示された構成要件もしくは符号を付して説明された構成要件のうちいずれかが廃止された構成であってもよい。
【符号の説明】
【0103】
1… 給水装置 3… 電動ポンプ 4A… 連結管 4B… 合流管
5… 蓄圧装置 5A… 開閉バルブ
10… 制御部 11… 記憶部 13… 通信部 15… 警報装置
Fs1~Fs3… 流量センサ Ps… 圧力センサ