(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022077429
(43)【公開日】2022-05-23
(54)【発明の名称】給水装置
(51)【国際特許分類】
F04B 49/10 20060101AFI20220516BHJP
F04D 15/00 20060101ALI20220516BHJP
F04B 49/02 20060101ALI20220516BHJP
F04B 49/08 20060101ALI20220516BHJP
【FI】
F04B49/10 311
F04D15/00 J
F04D15/00 F
F04B49/02 311
F04B49/08 311
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020188292
(22)【出願日】2020-11-11
(71)【出願人】
【識別番号】000148209
【氏名又は名称】株式会社川本製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】坂谷 哲則
(72)【発明者】
【氏名】高橋 仁志
【テーマコード(参考)】
3H020
3H145
【Fターム(参考)】
3H020AA01
3H020BA02
3H020BA03
3H020BA04
3H020CA01
3H020CA03
3H020DA02
3H020DA04
3H020EA09
3H020EA11
3H020EA12
3H145AA12
3H145AA23
3H145BA03
3H145BA07
3H145BA20
3H145CA02
3H145CA03
3H145CA25
3H145DA02
3H145DA07
3H145EA13
3H145EA14
3H145EA35
3H145EA37
3H145EA38
(57)【要約】
【課題】 電動ポンプの吸入側が水道配管に接続された給水装置の一例を開示する。
【解決手段】 吸入側の圧力を検出する吸入圧センサPs1と、吸入圧センサPs1の検出信号が入力されるとともに、電動ポンプ2の停止及び稼働を制御可能な制御部4とを備え、制御部4は、吸入圧センサPs1の検出圧力が予め決められた圧力以上となるように電動ポンプ2を制御する吸入圧制御、並びに電動ポンプ2の稼働中において吸入圧センサPs1に異常が発生した場合に、予め決められたルールに従って電動ポンプ2の稼働及び停止を制御する異常時制御を実行可能である。これにより、当該給水装置では、電動ポンプ2の稼働中において吸入圧センサPs1に異常が発生した場合であっても、当該異常発生に対応した電動ポンプ2の制御が実行可能となり得る。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動ポンプの吸入側が水道配管に接続される給水装置において、
前記吸入側の圧力を検出する吸入圧センサと、
前記吸入圧センサの検出信号が入力されるとともに、前記電動ポンプの停止及び稼働を制御可能な制御部とを備え、
前記制御部は、
前記吸入圧センサの検出圧力が予め決められた圧力以上となるように前記電動ポンプを制御する吸入圧制御、並びに
前記電動ポンプの稼働中において前記吸入圧センサに異常が発生した場合に、予め決められたルールに従って前記電動ポンプの稼働及び停止を制御する異常時制御
を実行可能である給水装置。
【請求項2】
前記異常時制御時において、前記制御部は、前記吸入圧センサに異常が発生した時から予め決められたルールに従った時間(以下、運転継続可能時間という。)内に限り、前記電動ポンプの稼働を許可し、かつ、当該運転継続可能時間が経過したときに、当該電動ポンプを停止状態とする請求項1に記載の給水装置。
【請求項3】
給水圧を検出する給水圧センサを備え、
前記制御部は、
前記給水圧センサの検出圧力が目標とする圧力(以下、目標圧力という。)となるように前記電動ポンプを制御する目標圧力制御、並びに
前記異常時制御時に実行される異常時目標圧力制御であって、当該異常時制御が実行される前の前記目標圧力に比べて小さい圧力を前記目標圧力として前記電動ポンプを制御する異常時目標圧力制御
を実行可能である請求項1又は2に記載の給水装置。
【請求項4】
前記電動ポンプを駆動するインバータ方式の駆動部と、
前記電動ポンプの吐出し流量を検出する流量センサと備え、
前記制御部は、
前記駆動部から前記電動ポンプに供給される駆動電流の周波数を予め決められた範囲内で変化させることにより当該電動ポンプを制御する駆動部制御、
前記電動ポンプの吐出し流量が予め決められた流量(以下、停止流量という。)以下となったときに前記電動ポンプを停止させる小水量停止制御、
前記電動ポンプが停止している状態において、給水圧が予め決められた圧力(以下、起動圧力という。)以下となったときに当該電動ポンプを起動させる起動制御、並びに
前記範囲の周波数であって、予め決められた周波数を緊急停止周波数としたとき、前記周波数が前記緊急停止周波数以上となり、かつ、給水圧が前記起動圧力以下となっている状態で、前記電動ポンプの吐出し流量が前記停止流量未満となる状態が予め決められた時間継続したときに、前記電動ポンプを停止させる緊急停止制御
を実行可能である請求項1ないし3のいずれか1項に記載の給水装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記緊急停止制御により前記電動ポンプを停止させた時から予め決められたルールに従った時間が経過したときに、前記電動ポンプの稼働を許可する請求項4に記載の給水装置。
【請求項6】
前記吸入側の圧力を検出する第2の吸入圧センサを備え、
前記制御部は、前記吸入圧センサに異常が発生した場合には、前記第2の吸入圧センサを利用して前記吸入圧制御を実行するとともに、前記吸入圧センサに異常が発生した旨の報知作動を実行する請求項1ないし5のいずれか1項に記載の給水装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記吸入圧センサの出力電圧が定格電圧範囲外となり、かつ、当該状態が予め決められた時間継続した場合に、当該吸入圧センサに異常が発生したと判断する請求項1ないし6のいずれか1項に記載の給水装置。
【請求項8】
情報を記憶する記憶部を備え、
前記制御部は、前記吸入圧センサに異常が発生したときに、その異常が発生した日付を前記記憶部に記憶させる請求項1ないし7のいずれか1項に記載の給水装置。
【請求項9】
外部と無線通信可能な通信部を備え、
前記制御部は、前記吸入圧センサに異常が発生したときに、前記通信部を介して前記吸入圧センサに異常が発生した旨、及びその異常が発生した日付を発信する請求項1ないし8のいずれか1項に記載の給水装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電動ポンプの吸入側が水道配管に接続された給水装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、「電動ポンプの吐出し圧力を検出する圧力センサの異常を検知したとき、前記ポンプを停止させることなく、運転を継続する」旨が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1には、吸入圧センサに異常が発生した場合についての記載が一切ない。本開示は、当該点に鑑み、電動ポンプの吸入側が水道配管に接続された給水装置において、吸入圧センサに異常が発生した場合に対処可能な給水装置の一例を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
電動ポンプの吸入側が水道配管に接続された給水装置は、例えば、吸入側の圧力を検出する吸入圧センサ(Ps1)と、吸入圧センサ(Ps1)の検出信号が入力されるとともに、電動ポンプ(2)の停止及び稼働を制御可能な制御部(4)とを備え、制御部(4)は、吸入圧センサ(Ps1)の検出圧力が予め決められた圧力以上となるように電動ポンプ(2)を制御する吸入圧制御、並びに電動ポンプ(2)の稼働中において吸入圧センサ(Ps1)に異常が発生した場合に、予め決められたルールに従って電動ポンプ(2)の稼働及び停止を制御する異常時制御を実行可能であることが望ましい。
【0006】
これにより、当該給水装置では、電動ポンプ(2)の稼働中において吸入圧センサ(Ps1)に異常が発生した場合であっても、当該異常発生に対応した電動ポンプ(2)の制御が実行可能となり得る。
【0007】
因みに、上記各括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的構成等との対応関係を示す一例であり、本開示は上記括弧内の符号に示された具体的構成等に限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1実施形態に係る給水装置を示す図である。
【
図2】第1実施形態に係る給水装置の作動を示すフローチャートである。
【
図3】第1実施形態に係る給水装置の作動を示すフローチャートである。
【
図4】第2実施形態に係る給水装置を示す図である。
【
図5】第2実施形態に係る給水装置の作動を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下の「発明の実施形態」は、本開示の技術的範囲に属する実施形態の一例を示すものである。つまり、特許請求の範囲に記載された発明特定事項等は、下記の実施形態に示された具体的構成や構造等に限定されない。
【0010】
少なくとも符号が付されて説明された機器や部材等の構成要素は、「1つの」等の断りがされた場合を除き、少なくとも1つ設けられている。つまり、「1つの」等の断りがない場合には、当該構成要素は2以上設けられていてもよい。本開示に示された給水装置は、少なくとも符号が付されて説明された構成要素等を備える。
【0011】
(第1実施形態)
<1.給水装置の概要>
本実施形態は、例えば、マンションや商業ビル等の建物に適用される給水装置に本開示に係る給水装置の一例が適用されたものである。
【0012】
図1に示されるように、本実施形態に係る給水装置1は、電動ポンプ2、駆動部3、給水圧センサPd1、吸入圧センサPs1、流量センサFs及び制御部4等を少なくとも備える。
【0013】
電動ポンプ2は、ポンプ部2A及びモータ部2Bを有する電動式のポンプである。当該電動ポンプ2の吸入側は水道配管に接続される。つまり、電動ポンプ2は、水道水を水道配管から直接的に吸引して建物に供給する。
【0014】
電動ポンプ2は、制御部4より制御される。具体的には、当該制御部4は、電動ポンプ2のモータ部2Bを駆動する駆動部3を介して電動ポンプ2制御する。駆動部3は、モータ部2Bに供給する駆動電流の周波数を予め決められた範囲内で変化させるインバータ回路を有する。
【0015】
すなわち、駆動部3は、制御部4から出力される指令周波数に応じた周波数の駆動電流をモータ部2Bに供給する。これにより、モータ部2Bの回転数が制御部4により可変制御される。なお、駆動部3からモータ部2Bに供給される駆動電流の周波数を駆動周波数という。
【0016】
つまり、制御部4は、駆動部3の駆動周波数を制御することにより、電動ポンプ2の停止及び稼働を制御する。制御部4には、吸入圧センサPs1の検出値、給水圧センサPd1の検出値及び流量センサFsの検出値が入力されている。
【0017】
吸入圧センサPs1は、電動ポンプ2の吸入側の圧力を検出する。給水圧センサPd1は、給水圧、つまり電動ポンプ2の吐出し側の圧力を検出する。流量センサFsは電動ポンプ2の吐出し流量を検出する。
【0018】
<2.制御部>
<2.1 制御部等の概要>
制御部4は、例えば、CPU、ROM及びRAM等を有するマイクロコンピュータ等にて構成されている。当該制御部4は、ROM等の不揮発性記憶部(図示せず。)に予め記憶されたプログラムに従って下記の(a)~(e)の各制御を実行する。
【0019】
制御部4内又は制御部4外(本実施形態では、制御部4内)には、記憶部5及び通信部6が設けられている。記憶部5は、電動ポンプ2の制御等に利用される各種のパラメータ及びその他情報を記憶するための不揮発性記憶装置である。
【0020】
通信部6は、無線及び有線のうち少なくとも一方の通信手法(本実施形態では、無線)にて外部機器と通信可能な機器である。外部機器とは、例えば、携帯型の通信機器や給水装置1を遠隔監視する管理装置等である。
【0021】
制御部4は、少なくとも吸入圧センサPs1に異常が発生したと判断された場合に、当該異常が発生した旨、及び予め決められた項目についての情報を通信部6を介して送信するとともに、当該項目についての情報を記憶部5に記憶させる。
【0022】
なお、当該項目とは、例えば、吸入圧センサPs1に異常が発生したときの吸入圧センサPs1の検出値、給水圧センサPd1の検出値及び流量センサFsの検出値、並びに、異常が発生した日付及び時刻等である。
【0023】
警告装置7は、給水装置1の構成機器に異常が発生したときに、その旨の警告を発する装置である。当該警告装置7は、制御部4から信号を受けて、いずれの機器に異常が発生したかを作業者が認識可能な態様の警告を発する。
【0024】
<2.2 制御の内容>
<制御の概要>
制御部4は、電動ポンプ2の制御モードとして、(a)吸入圧制御、(b)小水量停止制御、(c)目標圧力制御、(d)起動制御、及び(e)異常時制御等を少なくとも実行可能である。異常時制御は、(e1)継続稼働制御、(e2)異常時目標圧力制御、(e3)緊急停止制御、及び(e4)停止解除制御等にて構成されている。
【0025】
吸入圧制御、小水量停止制御、目標圧力制御、起動制御、及び異常時制御それぞれは、原則として、独立並列的に実行される。しかし、異常時制御のうち異常時目標圧力制御、緊急停止制御、及び停止解除制御は、吸入圧制御、小水量停止制御、及び目標圧力制御対して優先的に実行される。
【0026】
<(a)吸入圧制御>
吸入圧制御は、吸入圧センサPs1の検出圧力(以下、吸入圧という。)が予め決められた圧力(以下、設定吸入圧という。)以上となるように電動ポンプ2を制御する制御である。設定吸入圧は、定数値として予め決められた値(例えば、0.07MPa)である。
【0027】
<(b)小水量停止制御>
小水量停止制御は、流量センサFsの検出流量が予め決められた圧力(以下、停止流量Qsという。)まで低下したときに、電動ポンプ2を停止させる制御である。なお、停止流量Qsは、予め決められた固定値、又は給水装置1の運転状況に応じて変化する変数である。本実施形態に係る停止流量Qsは固定値である。
【0028】
<(c)目標圧力制御>
目標圧力制御は、給水圧センサPd1の検出圧力が目標とする圧力(以下、目標圧力Ptという。)となるように電動ポンプ2を調整する制御である。つまり、制御部4は、給水圧センサPd1の検出圧力が目標圧力Ptに近づくように指令周波数を変化させる。
【0029】
なお、目標圧力Ptは、予め決められた固定値、又は給水装置1の運転状況に応じて変化する変数である。本実施形態に係る目標圧力Ptは、給水流量の関数値として与えられる変数値である。
【0030】
<(d)起動制御>
起動制御は、電動ポンプ2が停止している状態において、給水圧センサPd1の検出圧力(以下、給水圧という。)が予め決められた圧力(以下、起動圧力Psuという。)以下となったときに電動ポンプ2を起動させる制御である。
【0031】
なお、起動圧力Psuは、予め決められた固定値、又は給水装置1の運転状況に応じて変化する変数である。本実施形態に係る起動圧力Psuは固定値である。
【0032】
<(e)異常時制御>
異常時制御は、電動ポンプ2の稼働中において吸入圧センサPs1に異常が発生した場合に、予め決められたルール(本実施形態では、上記(e1)~(e4)のうち少なくとも1つの制御)に従って電動ポンプ2の稼働及び停止を制御する制御である。
【0033】
本実施形態に係る制御部4は、吸入圧センサPs1の出力電圧が定格電圧範囲外となり、かつ、当該状態が予め決められた時間(例えば、3秒)以上継続した場合に、当該吸入圧センサPs1に異常が発生したと判断する。
【0034】
<2.3 異常時制御の詳細>
<(e1)継続稼働制御>
継続稼働制御は、吸入圧センサPs1に異常が発生した時から予め決められた時間(以下、運転継続可能時間Ctという。)内に限り、電動ポンプ2の稼働を許可し、かつ、運転継続可能時間Ctが経過したときに、電動ポンプ2を停止状態させる制御である。
【0035】
運転継続可能時間Ctは、予め決められた固定値、又は給水装置1の運転状況に応じて変化する値である。本実施形態に係る運転継続可能時間Ctは、固定値(例えば、24時間)である。
【0036】
<(e2)異常時目標圧力制御>
異常時目標圧力制御は、異常時制御が実行される前の目標圧力Ptに比べて小さい圧力を目標圧力Pt(以下。異常時目標圧力Pteという。)として電動ポンプ2を制御する制御である。
【0037】
本実施形態に係る制御部4は、吸入圧センサPs1に異常が発生した時の目標圧力Ptから予め決められた値を減じた値を異常時目標圧力Pteとする。なお、吸入圧センサPs1が正常な状態に復帰したとき、制御部4は、異常時目標圧力制御を停止させる。
【0038】
本実施形態に係る制御部4は、異常時目標圧力Pteを目標圧力Ptとして継続稼働制御を実行する。つまり、制御部4は、吸入圧センサPs1に異常が発生した時から運転継続可能時間Ct内に限り、電動ポンプ2の稼働を許可する。
【0039】
そして、運転継続可能時間Ct内に起動制御により電動ポンプ2が起動された場合、制御部4は、給水圧が異常時目標圧力Pteとなるように電動ポンプ2を制御する。なお、運転継続可能時間Ct内において、電動ポンプ2が停止した後、再び、電動ポンプ2が起動された場合も、制御部4は、異常時目標圧力Pteにて目標圧力制御を実行する。
【0040】
<(e3)緊急停止制御>
緊急停止制御は、継続稼働制御の実行中に実行され得る制御であって、駆動周波数が緊急停止周波数fes以上となり、かつ、給水圧が起動圧力Psu以下となっている状態で、電動ポンプ2の吐出し流量が停止流量Qs未満となる状態が予め決められた時間継続したときに、電動ポンプ2を停止させる制御である。
【0041】
緊急停止周波数fesとは、駆動周波数の下限周波数と上限周波数との間の駆動周波数であって、予め決められた駆動周波数をいう。当該緊急停止周波数fesは、予め決められた固定値、又は給水装置1の運転状況に応じて変化する変数である。なお、本実施形態に係る緊急停止周波数fesは上限周波数である。
【0042】
<(e4)停止解除制御>
停止解除制御は、緊急停止制御により電動ポンプ2を停止させた時から予め決められた時間(以下、解除時間Retという。)が経過したときに、電動ポンプ2の稼働を許可する制御である。
【0043】
解除時間Retは、予め決められた固定値、又は給水装置1の運転状況に応じて変化する変数である。なお、本実施形態に係る解除時間Retは、予め決められた固定値である。
【0044】
<異常時制御のフローチャート>
図2及び
図3は、異常時制御の制御フローの一例を示すフローチャートである。異常時制御は、給水装置1の電源スイッチ(図示せず。)が投入されたときに起動し、電源スイッチが遮断されたときに停止する。
【0045】
異常時制御が起動されると、制御部4は、吸入圧センサPs1に異常が発生しているか否かを判断する(S1)。吸入圧センサPs1に異常が発生していると判断された場合には(S1:YES)、制御部4は、異常が発生した状態が予め決められた時間(例えば、3秒)以上継続したか否かを判断する(S2)。
【0046】
異常が発生した状態が3秒以上継続したと判断された場合には(S2:YES)、制御部4は、警告を発するとともに、その旨及び予め決められた項目についての情報を通信部6を介して送信する(S3)。
【0047】
次に、制御部4は、継続稼働制御を開始するとともに、吸入圧センサPs1に異常が発生した時、つまり異常が発生した状態が3秒以上継続したと判断された時から経過時間の計時を開始する(S4)。
【0048】
その後、制御部4は、目標圧力Ptを異常時目標圧力Pteとするとともに(S5)、S4にて計時を開始した経過時間が運転継続可能時間Ctを経過したか否かを判断する(S6)。経過時間が運転継続可能時間Ctを経過した判断された場合には(S6:YES)、制御部4は、異常時制御を終了させた後(S13)、再び、S1を実行する。
【0049】
経過時間が運転継続可能時間Ctを経過していないと判断された場合には(S6:NO)、制御部4は、駆動周波数が緊急停止周波数fes以上であるか否かを判断する(S7)。駆動周波数が0(電動ポンプ2が停止している状態)、又は駆動周波数が緊急停止周波数fes未満であると判断された場合には(S7:NO)、制御部4は、再び、S6を実行する。
【0050】
駆動周波数が緊急停止周波数fes以上であると判断された場合には(S7:YES)、制御部4は、給水圧が起動圧力Psu以下であるか否かを判断する(S8)。給水圧が起動圧力Psu以下であると判断された場合には(S8:YES)、制御部4は、流量センサFsの検出値が停止流量Qs以下であるか否かを判断する(S9)。
【0051】
流量センサFsの検出値が停止流量Qs以下であると判断された場合には(S9:YES)、制御部4は、電動ポンプ2を停止させる(S10)。なお、給水圧が起動圧力Psu以下でないと判断された場合(S8:NO)、又は流量センサFsの検出値が停止流量Qsより大きいと判断された場合(S9:NO)、制御部4は、再び、S6を実行する。
【0052】
そして、S10(緊急停止制御)により電動ポンプ2が停止すると、制御部4は、その停止した時からの経過時間が解除時間Ret以上となったか否かを判断する(S11)。経過時間が解除時間Ret以上となったと判断された場合には(S11:YES)、制御部4は、緊急停止制御を解除し、電動ポンプ2の稼働を許可する(S12)。
【0053】
<3.本実施形態に係る給水装置の特徴>
本実施形態に係る制御部4は、吸入圧センサPs1に異常が発生した場合には、異常時制御を実行する。これにより、電動ポンプ2の稼働中において吸入圧センサPs1に異常が発生した場合であっても、当該異常発生に対応した電動ポンプ2の制御が実行可能となり得る。
【0054】
本実施形態に係る給水装置1では、電動ポンプ2の吸入側が水道配管に接続されるので、吸入圧は、ほぼ水道圧となる。したがって、吸入圧が大きく低下する可能性は極めて低い。したがって、吸入圧センサPs1に異常が発生した場合であっても、水道圧が大きく低下しない限り、吸入圧は設定吸入圧を下回らない。
【0055】
このため、制御部4は、吸入圧センサPs1に異常が発生した時(S2:YES)から運転継続可能時間Ct内に限り、電動ポンプ2の稼働を許可し、かつ、運転継続可能時間Ctが経過したときに、電動ポンプ2が稼働している場合には、当該電動ポンプ2を停止状態とする。これにより、吸入圧センサPs1に異常が発生した場合であっても、給水装置1が即座に停止してしまうことが抑制される。
【0056】
異常時制御時には、制御部4は、異常時目標圧力Pteを目標圧力Ptとして電動ポンプ2を制御する。これにより、運転継続可能時間Ct内、つまり、異常時制御を実行中に、他の給水装置等に大きな影響が発生してしまうことが抑制され得るとともに、緊急停止制御により電動ポンプ2が早期に停止してしまうことが抑制され得る。
【0057】
制御部4は、継続運転制御中に、駆動周波数が緊急停止周波数fes以上となり、かつ、給水圧が起動圧力Psu以下となっている状態で、電動ポンプ2の吐出し流量が停止流量Qs未満となる状態が予め決められた時間継続したときに、電動ポンプ2を停止させる。これにより、電動ポンプ2の吸入側でキャビテーションが発生することが抑制され得る。
【0058】
制御部4は、緊急停止制御により電動ポンプ2を停止させた時から解除時間Retが経過したときに、電動ポンプ2の稼働を許可する。これにより、給水装置1が長時間に亘って停止することが抑制され得る。
【0059】
制御部4は、吸入圧センサPs1に異常が発生したときに、その異常が発生した日付を記憶部5に記憶させる。これにより、吸入圧センサPs1の異常発生原因の究明及び対策に要する工数が低減され得る。
【0060】
制御部4は、吸入圧センサPs1に異常が発生したときに、通信部6を介して吸入圧センサPs1に異常が発生した旨、及びその異常が発生した日付を発信する。これにより、吸入圧センサPs1の異常について早急な対策が可能となり得る。
【0061】
(第2実施形態)
本実施形態に係る給水装置1は、
図4に示されるように、電動ポンプ2の吸入側圧力を検出する第2の吸入圧センサPs2を備える。以下、吸入圧センサPs1を第1吸入圧センサPs1と記し、第2の吸入圧センサPs2を第2吸入圧センサPs2と記す。
【0062】
そして、制御部4は、第1吸入圧センサPs1に異常が発生した場合には、第2吸入圧センサPs2を利用して吸入圧制御を実行するとともに、第1吸入圧センサPs1に異常が発生した旨の報知作動を実行する。これにより、給水装置1が長時間に亘って停止してしまうことが抑制され得る。
【0063】
以下、上記の制御をセンサ補完制御という。なお、第1吸入圧センサPs1に異常が発生した否かの判断手法は、第1実施形態と同じである。なお、
図5は、センサ補完制御の制御フローを示す一例である。
【0064】
センサ補完制御を実行するためのプログラムは、ROM等の不揮発性記憶装置に予め記憶されている。当該センサ補完制御は、電源スイッチが投入されると、上記の各制御に対して独立並列的に実行される。
【0065】
センサ補完制御が起動されると、制御部4は、先ず、第1吸入圧センサPs1に異常が発生しているか否かを判断する(S21)。第1吸入圧センサPs1に異常が発生していると判断された場合には(S21:YES)、制御部4は、異常が発生した状態が所定時間(例えば、3秒)以上継続したか否かを判断する(S22)。
【0066】
異常が発生した状態が3秒以上継続したと判断された場合には(S22:YES)、制御部4は、第1吸入圧センサPs1に異常が発生した旨の報知作動及び異常が発生した日時等の情報を発信するとともに(S23)、第2吸入圧センサPs2を利用した吸入圧制御に移行する(S24)。
【0067】
なお、上述の実施形態と同一の構成要件等は、上述の実施形態と同一の符号が付されている。このため、本実施形態では、重複する説明は省略されている。
【0068】
(その他の実施形態)
上述の実施形態では、運転継続可能時間Ct内において、電動ポンプ2が停止した後、再び、電動ポンプ2が起動された場合も、制御部4は、異常時目標圧力Pteにて目標圧力制御を実行した。しかし、本開示はこれに限定されない。
【0069】
すなわち、当該開示は、例えば、継続稼働制御の開始後に電動ポンプ2が停止した場合には、運転継続可能時間Ct内であっても、継続稼働制御を中止し、吸入圧センサPs1が復帰するまで、又は第2吸入圧センサPs2に移行するまでは電動ポンプ2の稼働を禁止する構成であってもよい。
【0070】
上述の実施形態に係る制御部4は、吸入圧センサPs1に異常が発生した状態が所定時間以上継続した場合に、異常時制御及びセンサ補完制御を実行した。しかし、本開示はこれに限定されない。
【0071】
すなわち、当該開示は、例えば、吸入圧センサPs1に異常が発生した場合に、異常状態が所定時間以上の継続することを計時することなく、異常時制御及びセンサ補完制御を実行する構成であってもよい。
【0072】
上述の実施形態に係る運転継続可能時間Ctは、予め決められたルールに従った時間として固定値を採用した。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、吸入圧センサPs1に異常が発生する前の給水装置1の運転状態を応じて決まる変数値であってもよい。
【0073】
上述の実施形態に係る緊急停止周波数fesは上限周波数であった。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、緊急停止周波数fesが上限周波数より小さい構成であってもよい。
【0074】
上述の実施形態に係る解除時間Retは、予め決められたルールに従った時間として固定値を採用した。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、吸入圧センサPs1に異常が発生する前の給水装置1の運転状態を応じて決まる変数値であってもよい。
【0075】
上述の実施形態に係る異常時制御は、継続稼働制御、異常時目標圧力制御、緊急停止制御、及び停止解除制御等を有して構成されていた。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、それら制御のうち少なくとも1つの制御、又はそれら制御と異なる制御であってもよい。
【0076】
上述の実施形態では、吸入圧センサPs1の出力電圧が定格電圧範囲外となり、かつ、当該状態が予め決められた時間継続した場合に、当該吸入圧センサPs1に異常が発生したと判断した。しかし、本開示はこれに限定されない。
【0077】
上述の実施形態に係る給水装置は、1台の電動ポンプ2を備える構成であった。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、2台以上の電動ポンプ2を備える構成であってもよい。
【0078】
さらに、本開示は、上述の実施形態に記載された開示の趣旨に合致するものであればよく、上述の実施形態に限定されない。したがって、上述した複数の実施形態のうち少なくとも2つの実施形態が組み合わせられた構成、又は上述の実施形態において、図示された構成要件もしくは符号を付して説明された構成要件のうちいずれかが廃止された構成であってもよい。
【符号の説明】
【0079】
1… 給水装置
2… 電動ポンプ
3… 駆動部
4… 制御部
5… 記憶部
6… 通信部
7… 警告装置
Pd1… 給水圧センサ
Ps1… 吸入圧センサ
Fs… 流量センサ