(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022077430
(43)【公開日】2022-05-23
(54)【発明の名称】給水装置
(51)【国際特許分類】
F04B 49/08 20060101AFI20220516BHJP
F04D 15/00 20060101ALI20220516BHJP
【FI】
F04B49/08 311
F04D15/00 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020188293
(22)【出願日】2020-11-11
(71)【出願人】
【識別番号】000148209
【氏名又は名称】株式会社川本製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】坂谷 哲則
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 章太
【テーマコード(参考)】
3H020
3H145
【Fターム(参考)】
3H020AA01
3H020AA05
3H020BA05
3H020CA01
3H020CA04
3H020DA04
3H020DA22
3H020EA02
3H020EA03
3H020EA11
3H020EA12
3H145AA12
3H145AA23
3H145BA23
3H145BA31
3H145CA03
3H145CA06
3H145DA07
3H145EA13
3H145EA14
3H145EA37
3H145EA38
(57)【要約】
【課題】 従来と異なる手法にて目標圧力を決定する給水装置の一例を開示する。
【解決手段】 電動ポンプ3が停止している状態であって、給水量が0より大きく、かつ、予め決められた流量(本実施形態では、停止流量Qs)以下のときに圧力センサPd1により検出された圧力(最低吐出側圧力PL)及び検出流量Qを利用して目標圧力Ptを決定する。配管損失は、流量の関数値として推定可能であるので、末端圧と流量とが検出可能であれば、吐出し圧力、つまり目標圧力Ptを決定することが可能である。このため、給水装置1では、最低吐出側圧力PL及び検出流量Qを利用して目標圧力Ptを決定している。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の配水管に接続される給水装置において、
給水用のポンプと、
前記配水管に供給する給水量を検出する流量センサと、
前記配水管に供給する水の圧力を検出する圧力センサと、
前記ポンプの停止及び稼働を制御する制御部であって、前記流量センサの検出流量を利用して目標圧力を決定する目標圧力決定制御、及び前記圧力センサの検出圧力が前記目標圧力となるように前記ポンプの作動を制御する目標圧力制御を実行可能な制御部と、
前記ポンプの停止時に給水圧を保持する蓄圧装置とを備え、
前記目標圧力決定制御では、
前記ポンプが停止している状態であって、前記給水量が0より大きく、かつ、予め決められた流量以下のときに前記圧力センサにより検出された圧力(以下、最低吐出側圧力という。)、及び前記検出流量を利用して前記目標圧力を決定する決定機能
が実行可能である給水装置。
【請求項2】
前記目標圧力決定制御を実行するために必要な情報が記憶された記憶部を備え、
前記目標圧力決定制御では、
前記決定機能(以下、補正制御という。)、又は
前記最低吐出側圧力を利用することなく、前記検出流量及び前記記憶部に記憶されている情報を利用して前記目標圧力を決定する標準決定制御
が実行可能である請求項1に記載の給水装置。
【請求項3】
前記制御部は、最初に前記ポンプが起動した時からの経過日数が予め決められた所定日数以上となったときに前記補正制御を実行するとともに、前記補正制御が実行された以降は、当該補正制御にて決定された前記目標圧力にて前記目標圧力制御を実行し、
さらに、前記制御部は、前記補正制御が実行されるまでは前記標準決定制御にて決定された前記目標圧力にて前記目標圧力制御を実行する請求項2に記載の給水装置。
【請求項4】
前記ポンプを駆動する電動モータと、
前記電動モータを駆動するインバータ方式の駆動部であって、前記制御部の指令に従って当該電動モータに供給する駆動電流の周波数を予め決められた範囲で変化させる駆動部とを備え、
前記流量センサの検出流量が前記範囲の上限周波数に基づいて予め決められた流量以上となった時を補正時としたとき、
前記制御部は、最初の前記補正時又は最初の前記補正時以降のときに前記補正制御を実行するとともに、前記補正制御が実行された以降は、当該補正制御にて決定された前記目標圧力にて前記目標圧力制御を実行し、
さらに、前記制御部は、前記補正制御が実行されるまでは前記標準決定制御にて決定された前記目標圧力にて前記目標圧力制御を実行する請求項2に記載の給水装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記流量センサの検出流量が予め決められた流量以下となったときに前記ポンプを停止させる小水量停止制御を実行可能であり、
さらに、前記制御部は、前記小水量停止制御により前記ポンプが停止しているときに前記最低吐出側圧力の検出を実行する請求項1ないし4のいずれ1項に記載の給水装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記圧力センサの検出圧力が予め決められた圧力(以下、起動圧力という。)以下となったときに前記ポンプを起動させる起動制御を実行可能であり、
さらに、前記制御部は、前記最低吐出側圧力の検出を実行しているときは、前記起動制御を停止させる請求項1ないし5のいずれ1項に記載の給水装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記圧力センサの検出圧力が前記起動圧力以下のときに、前記最低吐出側圧力の検出を実行する請求項6に記載の給水装置。
【請求項8】
前記記憶部には、第1設定圧力、及び当該第1設定圧力より小さい第2設定圧力が少なくとも記憶されており、
前記標準決定制御では、前記第1設定圧力と前記第2設定圧力との圧力差及び前記流量センサの検出流量に関する関数値として前記目標圧力が決定され、
前記最低吐出側圧力を利用して予め決められたルールに従って決定された値を補正後第2設定圧力としたとき、前記補正制御では、前記第1設定圧力と前記補正後第2設定圧力との圧力差及び前記流量センサの検出流量に関する関数値として前記目標圧力が決定される
請求項2ないし4のいずれか1項に記載の給水装置。
【請求項9】
前記記憶部には、前記第2設定圧力より小さい第3設定圧力が少なくとも記憶されており、
前記補正制御では、前記最低吐出側圧力に前記第3設定圧力が加算された値が前記補正後第2設定圧力とされる請求項8に記載の給水装置。
【請求項10】
前記記憶部には、1より大きい値が補正係数として記憶されており、
前記最低吐出側圧力に前記補正係数が乗算された値を補正後第1設定圧力としたとき、前記補正制御では、前記補正後第1設定圧力と前記補正後第2設定圧力との圧力差及び前記流量センサの検出流量に関する関数値として前記目標圧力が決定される
請求項8又は9に記載の給水装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、建物の配水管に接続される給水装置に関する。
【背景技術】
【0002】
給水用ポンプは、吐出し圧力が目標とする圧力(以下、目標圧力という。)となるように制御される。目標圧力は、建物の配水管のうち最もポンプから離れた末端において、必要な圧力が確保されるように決定されることが望ましい。
【0003】
このため、目標圧力は、配水管で発生する圧力損失(以下、配管損失という。)が考慮された値として決定される。配管損失は、流量の増大に応じて大きくなるので、例えば、特許文献1においては、目標圧力制御カーブとポンプの性能曲線との交点として決定される圧力を目標圧力としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
適切な目標圧力制御カーブは、給水装置の運転状況等によって異なる。このため、特許文献1に記載の発明では、ポンプが始動された後の吐出側圧力の最低値を決定した後、当該最低値と吐出側圧力についての所定下限値との差分を算出し、当該差分に基づいて目標圧力制御カーブを補正している。
【0006】
本開示は、上記点に鑑み、特許文献1に記載の給水装置と異なる手法にて目標圧力を決定する給水装置の一例を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
建物の配水管に接続される給水装置は、例えば、給水用のポンプ(3A)と、配水管に供給する給水量を検出する流量センサ(Fs1)と、配水管に供給する水の圧力を検出する圧力センサ(Pd1)と、ポンプ(3A)の停止及び稼働を制御する制御部(10)であって、流量センサ(Fs1)の検出流量(Q)を利用して目標圧力(Pt)を決定する目標圧力決定制御、及び圧力センサ(Pd1)の検出圧力が目標圧力(Pt)となるようにポンプ(3A)の作動を制御する目標圧力制御を実行可能な制御部(10)と、ポンプ(3A)の停止時に給水圧を保持する蓄圧装置(5)とを備え、目標圧力決定制御では、ポンプ(3A)が停止している状態であって、給水量が0より大きく、かつ、予め決められた流量以下のときに圧力センサ(Pd1)により検出された圧力(以下、最低吐出側圧力(PL)という。)、及び検出流量(Q)を利用して目標圧力(Pt)を決定する決定機能が実行可能であることが望ましい。
【0008】
これにより、当該最低吐出側圧力(PL)は、ポンプ(3A)が停止している状態であって、給水量が0より大きく、かつ、予め決められた流量以下のときに検出された圧力、つまり、蓄圧装置(5)にて給水されている状態の給水圧となる。
【0009】
そして、上記状態においては、流量が極めて小さく、かつ、配管損失が流速の2乗に比例して変化することから、最低吐出側圧力(PL)は、建物の配水管のうち最もポンプから離れた末端における現実の圧力(以下、末端圧という。)とみなすことが可能である。
【0010】
そして、配管損失は、上記のように流量の関数値として推定可能であるので、末端圧と流量とが検出可能であれば、吐出し圧力、つまり目標圧力(Pt)を決定することが可能である。このため、当該給水装置では、最低吐出側圧力(PL)及び検出流量(Q)を利用して目標圧力(Pt)を決定している。
【0011】
因みに、上記各括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的構成等との対応関係を示す一例であり、本開示は上記括弧内の符号に示された具体的構成等に限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】第1実施形態に係る給水装置を示す図である。
【
図2】目標圧力決定制御の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下の「発明の実施形態」は、本開示の技術的範囲に属する実施形態の一例を示すものである。つまり、特許請求の範囲に記載された発明特定事項等は、下記の実施形態に示された具体的構成や構造等に限定されない。
【0014】
少なくとも符号が付されて説明された機器や部材等の構成要素は、「1つの」等の断りがされた場合を除き、少なくとも1つ設けられている。つまり、「1つの」等の断りがない場合には、当該構成要素は2以上設けられていてもよい。本開示に示された給水装置は、少なくとも符号が付されて説明された構成要素等を備える。
【0015】
(第1実施形態)
<1.給水装置の概要>
本実施形態は、例えば、マンションや商業ビル等の建物に適用される給水装置に本開示に係る給水装置の一例が適用されたものである。
図1に示されるように、本実施形態に係る給水装置1は、電動ポンプ3、蓄圧装置5及び制御部10等を少なくとも備える。
【0016】
電動ポンプ3は、ポンプ部3A及びモータ部3Bを有する電動式のポンプである。電動ポンプ3の吐出し側は、建物の配水管側に接続されている。そして、電動ポンプ3は、例えば受水槽7に貯留された水を配水管に供給する。
【0017】
電動ポンプ3の作動は制御部10により制御される。本実施形態に係る制御部10は、駆動回路(本実施形態では、インバータ方式の駆動回路)3Cを介して電動ポンプ3の作動を制御する。
【0018】
駆動回路3Cは、制御部10から出力される指令周波数に応じた周波数(以下、駆動周波数という。)を有する駆動電流をモータ部3Bに供給する。これにより、モータ部3Bの回転数、つまりポンプ部3Aが制御部10により可変制御される。
【0019】
なお、駆動周波数は、予め決められた上限駆動周波数と下限駆動周波数との間で変更調節される。つまり、電動ポンプ3は、上限駆動周波数に対応する吐出し圧力又は吐出し流量と下限駆動周波数に対応する吐出し圧力又は吐出し流量との間で運転する。
【0020】
蓄圧装置5は、電動ポンプ3の吐出し側に接続されて当該電動ポンプ3が停止しているときに給水圧を保持する。蓄圧装置5は、不活性ガスが充填されたガス室5Aの内圧により、電動ポンプ3が停止しているときの給水圧を保持する。
【0021】
制御部10には、流量センサFs1の検出値及び圧力センサPd1の検出値が入力されている。流量センサFs1は、配水管に供給する給水量を検出する。圧力センサPd1は、配水管に供給する水の圧力(以下、給水圧という。)を検出する。
【0022】
<2.制御部の制御>
<2.1 制御の概要>
制御部10は、電動ポンプ3の停止及び稼働を制御する。つまり制御部10は、駆動回路3Cの出力を制御する。なお、制御部10は、例えば、CPU、ROM及びRAM等を有するマイクロコンピュータ等にて構成されている。
【0023】
制御部10内又は制御部10外(本実施形態では、制御部10内)には、記憶部11及び通信部13が設けられている。記憶部11は、給水装置1の制御を実行する際に利用される各種パラメータ等の情報を記憶するための不揮発性記憶装置である。
【0024】
通信部13は、外部と有線又は無線にて通信可能である。給水装置1は警報装置15を有する。警報装置15は、制御部10からの指令を受信すると、音声や光等の作業者が認識可能な警報を発信する。
【0025】
制御部10は、電動ポンプ3の制御モードとして、小水量停止制御、起動制御、目標圧力制御、及び目標圧力決定制御等が実行可能である。目標圧力決定制御は、補正制御及び標準決定制御等を有して構成されている。
【0026】
制御部10は、上記の各制御を独立並列的に実行する。なお、各制御を実行するためのプログラムは、ROM等の不揮発性記憶部(図示せず。)に予め記憶されている。制御部10(CPU)は、それらのプログラムを読み込んで各制御を実行する。
【0027】
<小水量停止制御>
小水量停止制御は、流量センサFs1の検出流量Qが予め決められた流量(以下、停止流量Qsという。)以下となったときに、電動ポンプ3を停止させて当該電動ポンプ3による給水を停止する制御である。
【0028】
<起動制御>
起動制御は、電動ポンプ3が停止した後、圧力センサPd1の検出圧力が予め決められた圧力(以下、起動圧力Psuという。)以下となったときに、電動ポンプ3を起動させる制御である。
【0029】
なお、電動ポンプ3が停止している状態、つまり電動ポンプ3の停止後、給水圧が蓄圧装置5により起動圧力Psuより大きい状態に保持されているときには、蓄圧装置5から配水管に給水される。
【0030】
<目標圧力制御>
目標圧力制御は、圧力センサPd1の検出圧力が目標とする圧力(以下、目標圧力Ptという。)となるように電動ポンプ3を調整する制御である。つまり、制御部10は、検出圧力が目標圧力Ptに近づくように指令周波数を変化させる。
【0031】
<目標圧力決定制御>
目標圧力決定制御は、流量センサFs1の検出流量Qを利用して目標圧力Ptを決定する制御である。なお、目標圧力決定制御により決定された目標圧力Ptは、記憶部11に記憶される。制御部10は、記憶部11に記憶されている目標圧力Ptを利用して目標圧力制御を実行する。
【0032】
制御部10は、当該目標圧力決定制御による目標圧力Ptを決定するための制御として、標準決定制御及び補正制御が実行可能である。制御部10は、給水装置1の電源スイッチ(図示せず。)が最初に投入された時に標準決定制御を実行して目標圧力Ptを決定し、当該決定された目標圧力Ptを記憶部11に記憶させる。
【0033】
そして、制御部10は、標準決定制御の実行後、以下の第1条件及び第2条件のうち少なくとも一方の条件が成立したときに補正制御を実行して目標圧力Ptを決定し、記憶部11に既に記憶されている目標圧力Ptを当該決定された目標圧力Ptに更新する。
【0034】
つまり、制御部10は、補正制御が実行されるまでは標準決定制御にて決定された目標圧力Ptにて前記目標圧力制御を実行し、かつ、補正制御が実行された以降は、当該補正制御にて決定された目標圧力Ptにて目標圧力制御を実行する。
【0035】
「第1条件」
第1条件が成立したときとは、給水装置1の設置工事の完了後、最初に電動ポンプ3が起動した時からの経過日数が予め決められた所定日数(例えば、1000時間相当)以上となったときをいう。
【0036】
「第2条件」
第2条件が成立したときとは、給水装置1の設置工事の完了後、最初の補正時又は当該最初の補正時以降のときをいう。補正時とは、流量センサFs1の検出流量Qが上限駆動周波数に基づいて予め決められた流量(以下、補正開始流量という。)以上となった時をいう。
【0037】
補正開始流量は、例えば、上限駆動周波数にて電動ポンプ3が駆動されたときの最大流量Qmaxに、1未満の係数値(例えば、0.7)が乗算された値をいう。なお、本実施形態に係る制御部10は、給水装置1の設置工事時もしくは工場出荷時に最大流量Qmaxとして記憶部11に記憶された値、又は補正開始流量として記憶された値を利用する。
【0038】
<標準決定制御>
制御部10は、標準決定制御においては、第1設定圧力P1と第2設定圧力P2との圧力差ΔP、及び流量センサFs1の検出流量Qに関する関数値として目標圧力Ptを決定する。上記の関数として、本実施形態では、例えば、以下の数式を採用している。
【0039】
Pt=P2+ΔP×{(Q-Qs)/(Qmax-Qs)}^2 ・・・数1
なお、第1設定圧力P1及び第2設定圧力P2は、給水装置1の設置工事時又は工場出荷時に記憶部11に記憶された値された値である。第2設定圧力P2は第1設定圧力P1より小さい値である。
【0040】
因みに、圧力差ΔPは、上限駆動周波数にて電動ポンプ3が駆動されたときに発生すると想定される配管損失(以下、見込損失という。)に相当する圧力である。第2設定圧力P2は、建物の配水管の末端において、必要と想定される圧力(以下、想定末端圧という。)である。
【0041】
つまり、本実施形態に係る目標圧力Ptは、想定末端圧に、圧力センサPd1の圧力検出位置から末端までの間で発生する見込損失を加算した値に相当する。因みに、見込損失は、概ね、第1設定圧力P1の10%~20%程度である。
【0042】
<補正制御>
制御部10は、補正制御においては、補正後第1設定圧力P1rと補正後第2設定圧力P2rとの圧力差ΔP及び流量センサFs1の検出流量Qに関する関数値として目標圧力Ptを決定する。
【0043】
つまり、制御部10は、数式1の圧力差ΔPとして、補正後第1設定圧力P1rと補正後第2設定圧力P2rと圧力差を用いて目標圧力Ptを決定する。補正後第1設定圧力P1rと補正後第2設定圧力P2rは、最低吐出側圧力PLを利用して予め決められたルールに従って決定された値である。
【0044】
「最低吐出側圧力PL」
最低吐出側圧力PLとは、電動ポンプ3が停止している状態であって、給水量が0より大きく、かつ、予め決められた流量(本実施形態では、停止流量Qs)以下のときに圧力センサPd1により検出された圧力をいう。
【0045】
このため、制御部10は、圧力センサPd1の検出圧力が起動圧力Psu以下のときに、最低吐出側圧力PLの検出を開始する。そして、制御部10は、最低吐出側圧力PLの検出を実行しているときは、起動制御を停止させる。
【0046】
つまり、制御部10は、最低吐出側圧力PLの検出が終了するまで電動ポンプ3の停止状態を維持し、最低吐出側圧力PLの検出が終了したときに、電動ポンプ3の稼働を許可する。
【0047】
なお、制御部10は、補正時から予め決められた時間が経過したときに、最低吐出側圧力PLの検出を実行するために電動ポンプ3を停止状態とする旨の警告を発信し、かつ、最低吐出側圧力PLの検出が終了したときに、その旨を発信する。
【0048】
「補正後第1設定圧力P1r」
補正後第1設定圧力P1rとは、最低吐出側圧力PLに補正係数kが乗算された値をいう。補正係数kは、記憶部11に予め記憶された値であって、1より大きい値(例えば、1.1以上、1.2以下の値)である。つまり、補正係数kは、「圧力センサPd1の圧力検出位置における圧力と当該位置から末端までの間で発生する見込損失との比」に関連した値である。
【0049】
「補正後第2設定圧力P2r」
補正後第2設定圧力P2rとは、最低吐出側圧力PLに第3設定圧力P3が加算された値である。第3設定圧力P3は、記憶部11に予め記憶された値であって、第2設定圧力P2より小さい値である。具体的には、第3設定圧力P3は、給湯器等の給水を受けて稼働する機器において、必要とされる最低給水圧に相当する値である。
【0050】
<2.2 制御の詳細>
図2は、目標圧力決定制御の制御フローの一例を示すフローチャートである。当該目標圧力決定制御は、電源スイッチが投入と同時に起動する。目標圧力決定制御が起動すると、制御部10は、小水量停止制御により電動ポンプ3が停止したか否かを判断する(S1)。
【0051】
小水量停止制御により電動ポンプ3が停止した判断された場合には、制御部10は、測定フラグが1であるか否かを判断する(S2)。測定フラグは、補正制御が実行されたか否かを示すパラメータである。
【0052】
測定フラグが1であるときは、補正制御が既に実行されたことを意味する。なお、測定フラグの初期値は0である。そして、測定フラグが1であると判断された場合(S2:YES)、制御部10は、本制御を終了させる。
【0053】
測定フラグが1でないと判断された場合(S2:NO)、制御部10は、圧力センサPd1の検出圧が起動圧力Psu以下であるか否かを判断する(S3)。検出圧が起動圧力Psuより大きいと判断された場合には(S3:NO)、制御部10は、再び、S1を実行する。
【0054】
検出圧が起動圧力Psu以下であると判断された場合には(S3:YES)、制御部10は、第1条件が成立したか否かを判断する(S4)。第1条件が不成立の場合には(S4:NO)、制御部10は、第2条件が成立したか否かを判断する(S5)。
【0055】
第2条件が不成立の場合には(S5:NO)制御部10は、再び、S1を実行する。第1条件又は第2条件が成立した場合には(S4:YES、S5:YES)、制御部10は、起動制御を停止させた後(S6)、最低吐出側圧力PLを検出する(S7)。
【0056】
次、制御部10は、補正後第1設定圧力P1r及び補正後第2設定圧力P2rを数式1に代入して目標圧力Ptを決定するとともに(S8、S9)、その決定した目標圧力Ptを記憶部11に記憶させる。
【0057】
その後、制御部10は、測定フラグを1とするとともに、起動制御の停止状態を解除した後(S10)、本制御を終了させる。
【0058】
<3.本実施形態に係る給水装置の特徴>
制御部10は、補正制御においては、最低吐出側圧力PL及び検出流量Q等を利用して目標圧力Ptを決定する。
【0059】
当該最低吐出側圧力PLは、電動ポンプ3が停止している状態であって、給水量が0より大きく、かつ、予め決められた流量以下のときに検出された圧力、つまり、蓄圧装置5にて給水されている状態の給水圧である。
【0060】
そして、上記状態においては、流量が極めて小さく、かつ、配管損失が流速の2乗に比例して変化することから、最低吐出側圧力PLは、建物の配水管のうち最もポンプから離れた末端における現実の圧力(以下、末端圧という。)とみなすことが可能である。
【0061】
そして、配管損失は、上記のように流量の関数値として推定可能であるので、末端圧と流量とが検出可能であれば、吐出し圧力、つまり目標圧力Ptを決定することが可能である。このため、本実施形態に係る給水装置1では、最低吐出側圧力PL及び検出流量Qを利用して目標圧力Ptを決定している。
【0062】
制御部10は、補正制御が実行されるまでは、標準決定制御により目標圧力Ptを決定し、かつ、補正制御が実行された以降は、当該補正制御にて決定された目標圧力Ptにて目標圧力制御を実行する。これにより、給水装置1が設置された後に、給水負荷が変動した場合であっても、自動的に当該変動に応じた目標圧力Ptに補正され得る。
【0063】
制御部10は、電動ポンプ3が停止している状態であって、給水量が0より大きく、かつ、予め決められた流量(本実施形態では、停止流量Qs)以下のときに、最低吐出側圧力PLの検出を実行する。
【0064】
これにより、最低吐出側圧力PLの検出時に、断水状態になってしまうことが抑制され得る。また仮に、最低吐出側圧力PLの検出時に断水状態になってしまった場合であっても、その断水時間を短時間とすることが可能である。
【0065】
つまり、本実施形態では、小水量停止制御により電動ポンプ3が停止しているときに最低吐出側圧力PLの検出を実行するので、利用者が必要とする給水量が微量な状態で当該検出が実行されることになる。
【0066】
したがって、当該給水装置1では、実質的な断水状態が短くなる。さらに、制御部10は、圧力センサPd1の検出圧力が起動圧力Psu以下のときに、最低吐出側圧力PLの検出を実行するので、実質的な断水状態が回避され得る。
【0067】
補正後第2設定圧力P2rは、最低吐出側圧力PLに、給湯器等の給水を受けて稼働する機器において、必要とされる最低給水圧が加算された値である。したがって、当該給水装置1では、確実に末端まで十分な給水を実施することが可能となる。
【0068】
(第2実施形態)
上述の実施形態に係る補正制御では、補正後第1設定圧力P1rと補正後第2設定圧力P2rとの圧力差ΔP及び流量センサFs1の検出流量Qに関する関数値として目標圧力Ptを決定された。
【0069】
これに対して、本実施形態に係る補正制御では、第1設定圧力P1と補正後第2設定圧力P2rとの圧力差ΔP及び流量センサFs1の検出流量Qに関する関数値として目標圧力Ptが決定される。
【0070】
なお、上述の実施形態と同一の構成要件等は、上述の実施形態と同一の符号が付されている。このため、本実施形態では、重複する説明は省略されている。
【0071】
(その他の実施形態)
上述の実施形態に係る給水装置1は、受水槽7に貯留された水を配水管に供給する構成であった。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、受水槽が無く、電動ポンプ3の吸入側が水道に接続された構成であってもよい。
【0072】
上述の実施形態では、1台の電動ポンプ3を備える給水装置であった。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、電動ポンプ3を複数台備え、給水量の変化に応じて稼働させる電動ポンプ3の台数を増減制御可能な構成であってもよい。
【0073】
なお、当該構成においては、複数台の電動ポンプ3のうち最初に第2条件が成立したときに、補正制御が実行される構成が望ましい。因みに、当該構成においては、流量センサFs1は、各電動ポンプ3の吐出し側それぞれに設けられる。
【0074】
上述の実施形態では、流量センサFs1の検出流量Qが上限駆動周波数に基づいて予め決められた流量(補正開始流量)以上となったときに第2条件が成立する構成であった。
【0075】
しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、駆動周波数が上限駆動周波数になったとき、又は駆動周波数が上限駆動周波数より小さい予め決められた周波数となったときに第2条件が成立する構成であってもよい。
【0076】
上述の実施形態に係る補正制御では、第2設定圧力P2を補正した。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、第1設定圧力P1のみを補正する補正制御であってよい。
【0077】
上述の実施形態に係る制御部10は、数式1を用いて目標圧力Ptを決定した。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、圧力と検出流量Qとの関係が記憶されたマップ又は表を利用して目標圧力Ptが決定される構成であってもよい。
【0078】
上述の実施形態では、第1条件及び第2条件のうち少なくとも一方の条件が成立したときに補正制御が実行された。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、電源スイッチの投入と同時に補正制御が実行される構成、つまり標準決定制御が無い構成であってよい。
【0079】
上述の実施形態では、小水量停止制御により電動ポンプ3が停止しているときに最低吐出側圧力PLの検出が実行されたしかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、第1条件が成立した時に最低吐出側圧力PLの検出が実行される構成であってもよい。
【0080】
上述の実施形態では、圧力センサPd1の検出圧力が起動圧力Psu以下のときに、最低吐出側圧力PLの検出を実行され、かつ、当該検出の実行中は起動制御が停止した。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、第1条件が成立したときに、電動ポンプ3を停止させて最低吐出側圧力PLの検出を実行する構成であってよい。
【0081】
上述の実施形態に係る補正後第2設定圧力P2rは、最低吐出側圧力PLに、給湯器等において必要とされる最低給水圧が加算された値であった。しかし、本開示はこれに限定されない。
【0082】
すなわち、当該開示は、例えば、最低吐出側圧力PLをそのまま補正後第2設定圧力P2rとする構成、又は最低吐出側圧力PLに1より大きい係数を乗算した値を補正後第2設定圧力P2rとする構成等であってもよい。
【0083】
さらに、本開示は、上述の実施形態に記載された開示の趣旨に合致するものであればよく、上述の実施形態に限定されない。したがって、上述した複数の実施形態のうち少なくとも2つの実施形態が組み合わせられた構成、又は上述の実施形態において、図示された構成要件もしくは符号を付して説明された構成要件のうちいずれかが廃止された構成であってもよい。
【符号の説明】
【0084】
1… 給水装置 3… 電動ポンプ 3A… ポンプ部 3B… モータ部
3C… 駆動回路 5… 蓄圧装置 10… 制御部 11… 記憶部
13… 通信部 15… 警報装置 Fs1… 流量センサ Pd1… 圧力センサ